私的良スレ書庫
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元スレ八幡「心の声が聞こえる様になった」
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陽乃「……この原因が雪乃ちゃんであることは伏せたかった」
陽乃「雪乃ちゃんが原因だって知れば」
陽乃「雪乃ちゃんが気持ちを知って欲しいと思わないように」
陽乃「比企谷君は雪乃ちゃんと距離を取る」
陽乃「そう思った」
八幡「………………」
(雪ノ下さんはらしからぬ表情で話す)
(悲しげで辛そうで)
(でもきっと)
(それは自分ではなく雪ノ下のための感情なのだと)
(俺は感じた)
八幡「陽乃さんは思ったんじゃない。見限ったんだ」
八幡「俺が雪ノ下や由比ヶ浜との関係を停滞させているから」
八幡「この男はつまらない。と」
(雪ノ下と距離を取る)
(確かにそれは選択肢の一つだろう)
(雪ノ下に失望させ、比企谷八幡との関わりを絶てば解消するかもしれない)
(でも、それじゃダメなんだ)
(雪ノ下も由比ヶ浜も小町も……)
(傷つくからだ)
(だから)
八幡「俺は雪ノ下と距離なんて取らない」
八幡「雪ノ下のいない奉仕部はありえないからだ」
陽乃「ならどうするの?」
陽乃「(こんな力が発現するほど)」
陽乃「(雪乃ちゃんの思いは強い)」
陽乃「(簡単なことじゃ……)」
八幡「そうでもないんですよ」
陽乃「?」
八幡「雪ノ下が気持ちを知られたくなくなればいい」
陽乃「どうやって?」
八幡「俺が雪ノ下の心に従うんです」
八幡「そうすれば雪ノ下の事ですから」
八幡「自分の心が見透かされてるとでも考えて」
八幡「隠そうとするはずです」
陽乃「………………」
(雪ノ下雪乃はひねくれている)
(罵倒しながらも、心の中では俺を気遣うくらいに)
(だからこそ、それは最良の選択肢となる)
八幡「まずは明日、買い物にでも誘うとしますよ」
陽乃「デートするんだ?」
八幡「デートって……まぁ、二人で買い物って点では反論は出来ないっすけど」
八幡「(作戦に由比ヶ浜はいない方がいい)」
八幡「(下手すればあいつを傷つけかねないからな)」
陽乃「(お姉さんが見守っててあげようか?)」
八幡「!」
陽乃「邪魔が入りそうなら鉢合わせしないように」
陽乃「何か困ったら助言出来るように」
八幡「何を考えて……」
陽乃「やだなぁ、そんな疑わなくても良いんじゃないかなー?」
陽乃「……無理ないっか」
陽乃「でも、私も同じだから」
八幡「………………」
(雪ノ下さんの心は全く同じだった)
(言葉や表情と、違うことがなかった)
(だから、きっと)
(雪ノ下さんの見せる、すがるような悲しい瞳は)
(演技なんかじゃないのだろう)
陽乃「比企谷君を……手伝いたい」
八幡「……解りました」
(雪ノ下さんがどう変化しているのか)
(今の俺には解らなくて)
(でも)
(それは悪いことではないだろうと)
(簡単に信じそうな自分がいる)
八幡「引っ掻き回すのだけは勘弁してください」
(だから牽制を口にする)
(自分に対して、雪ノ下さんに対して)
(信じすぎるなと)
(信じてはいないと)
陽乃「……今はそれで十分だよ」
八幡「っ」
(けれど俺は)
(その時見せた雪ノ下さんの儚さに)
(感じてはいけない何かを感じていた)
八幡「明日、来てくれるそうです」
陽乃「聞いてたよー」
八幡「まぁ、俺のためって言うより小町のためですけど」
陽乃「って言う建前で。ね」
(さっきまで雪ノ下と繋がっていた俺の携帯を見つめ)
(雪ノ下さんはいつもの笑顔でそう言った)
(いつもなら。知らないままなら)
(俺はきっとそれが雪ノ下陽乃という)
(魔王のような人の本性だと思っていただろう)
(でも今は、それが悪戯心ではなく)
(妹思いの姉としての笑顔だと思える)
(紛れもなく、雪ノ下陽乃は人間だと思える)
八幡「(……柄にもないことすると)」
八幡「(本気で疲れを感じるな)」
八幡「(まぁ、永遠にこのままなのを考えれば)」
八幡「(仕方ないかもしれないが……)」
陽乃「せっかく喫茶店なんだし、何か奢るよ?」
八幡「自分で払えますよ」
八幡「(あんまり貸しはつくりたくないからな)」
八幡「(後がこわ……っ)」
八幡「ぁっ」
(きっと、疲れていたから)
(俺は心の中を偽ることを忘れていたのだろう)
(すぐに気づいて、雪ノ下さんを見る)
陽乃「……あはは。うん、気にしないで」
(ならそんな悲しそうな顔)
陽乃「(相当、嫌われちゃってるなー……馬鹿な私)」
(そんな悲しい自嘲は止めてくれと)
(俺は読まれないように誤魔化しながら、思った)
陽乃「なら、ここは私の話を聞くお礼として。ね?」
八幡「……まぁ、そういう理由なら」
(雪ノ下さんを疑っている)
(そう匂わせていたからだろう)
(雪ノ下さんは俺の雪ノ下さんに気がある演技を疑ってはいなそうだ)
(……改めて思う)
(比企谷八幡は最低のクズだと)
陽乃「私達のこの力は相手の内面が分かる」
陽乃「例えば比企谷君がごく普通のありふれた男子高校生のように」
陽乃「女の子の体を見て大きいなって考えたり」
陽乃「良い匂いだなって思っていることが分かる」
八幡「オモッテナイデスヨ」
八幡「(意識しないようにしてたのに)」
陽乃「あははっ、まあそんな風に嘘と本当が分かるわけだ」
八幡「っ」
(雪ノ下さんの何かが変化してから)
(何故か雪ノ下さんが普通の女の人のように思えてしまう)
(だから)
(笑顔ひとつ、仕草ひとつ)
(動く度に鼻腔を擽る清潔な甘さに)
(俺はごく普通のありふれた男子高校生になっていた)
陽乃「だから私は沢山見てきた」
陽乃「社交辞令の裏で、この体を舐め回す本性を」
(雪ノ下さんは体を抱き締めて、俯く)
八幡「!」
(いつから、雪ノ下さんの力の発現が俺と同時期だと思っていた)
(始めからだ)
(雪ノ下さんは家の関係で偉い人達と会っている)
(そしてそういう奴らの中には)
(なまじ大人なせいで男子高校生よりも不純な考えの人間が少なからずいるだろう)
八幡「雪ノ下さん……」
陽乃「陽乃って呼んでも良いんだよ?」
八幡「………………」
(今なら分かる)
(あの張り付いた笑顔)
(交流のための強化外骨格)
(あれは雪ノ下さんの……強がりでもあったのだと)
八幡「………………」
八幡「苦いな」
(目の前のブラックコーヒーをそのまま飲む)
(けど、その苦さでは雪ノ下さんの苦しさを語れない)
(雪ノ下さんの比企谷君は何でも分かるんだね。という言葉が)
(今さらになって、響き出す)
(俺は何も分かってなかったんだ)
八幡「……だから、雪ノ下に厳しかったんですか?」
八幡「そういうやつらと対峙したとき」
八幡「雪ノ下雪乃が傷つかないように」
八幡「雪ノ下雪乃が生きていけるように」
陽乃「……どうかな。私はどう思ってる?」
陽乃「こんなそぶりを見せてても」
陽乃「迫真の演技かもしれないよ?」
八幡「今の俺は普段やらないことをやる自分を心掛けてるんで」
陽乃「?」
陽乃「!?」
(雪ノ下さんの手を握る)
(大きいと思っていた手は小さく)
(冷たいと思っていた手は温かい)
八幡「その震えを信じますよ」
八幡「震動を信じるどう。的な」
八幡「(なにそれつまらない。八幡的に即死刑レベルっ)」
陽乃「………………」
陽乃「……あははっ、あははははっ」
陽乃「あははははははっ!」
(雪ノ下さんは笑う。大笑いする)
(その震えが)
(目元に浮かぶ落ちかけているものが)
(爆笑のせいだと、誤魔化すように)
出来たらまたあとで
どんな話を組んでたか忘れたので即興
なので話の辻褄が合わないかもしれません。スミマセン
どんな話を組んでたか忘れたので即興
なので話の辻褄が合わないかもしれません。スミマセン
陽乃「比企谷君は酷い人だね」
陽乃「弱った隙に漬け込むのが上手なんだから……」
(ひとしきり笑った雪ノ下さんは)
(俺を馬鹿にしているのか褒めているのか)
(わからないことを言う)
(けど)
八幡「俺は空気になるのが得意なんで」
八幡「真空以外なら入り込めますよ」
(重要なのは雪ノ下が誉めたか否かではなく)
(弱った隙に……と、自分が弱っていると)
(素直に言った。というところだ)
陽乃「……空気、かあ」
八幡「何か?」
陽乃「うーん。だとしたら、比企谷君は私の体の一部なんだなって思って」
八幡「何言ってるんですか」
(俺はただの冗談で)
(雪ノ下さんも、冗談で)
(きっと、ごく普通ならそこで終わっていただろう)
(けど、俺達には心が読めてしまうから)
陽乃「冗談だよー」
陽乃「(空気はないと生きていけない。なら、私は比企が…………っ!)」
陽乃「ぁ、えっと!」
(雪ノ下さんのつい、思ってしまったことは筒抜けで)
(慌てた仕草や赤い表情が)
陽乃「か、からかう言葉を考えただけだよ?」
(それが嘘だと物語っていて)
八幡「分かってます」
八幡「(心臓に悪いな……)」
(あんなに嫌だった人が)
(とても好意的に、見えてしまう)
(比企谷八幡は)
(雪ノ下陽乃に気があるという嘘ではなく)
(雪ノ下陽乃への偽物を抱いておけばと悔やむ)
(偽物は本物にはなれないが)
(嘘は本物に、なれてしまうからだ)
八幡「……失敗した」
(雪ノ下さんとの話を終え、俺は家に直帰した)
(デートの予行練習に誘われたが)
(どう考えてもリアルデートとしか思えず)
(断ってしまった)
八幡「雪ノ下さんの優位性の破壊」
八幡「それは完璧だったが……余計な部分も壊したな……」
(魔王のような恐怖が消えたかと思えば)
(雪ノ下さんはうっかり惚れてしまいそうな恐さを生み出し始めたのだ)
八幡「……雪ノ下さんに気がある素振り。か」
八幡「まだ嘘だとバレたくない。バレたくない」
八幡「そうやって、俺は先伸ばしにするのかもしれない」
八幡「……………………」
(考えて、考えて)
(ついさっきの鮮明な記憶を思い出しながら)
(俺は決意する)
八幡「明日、雪ノ下とのデート……を、終わらせたら告白しよう」
八幡「(……俺は、陽乃さんが好きではないって)」
八幡「……………………」
(きっと、俺達は傷つく)
(関係は修復出来ないほどに砕け散り)
(絶縁することになるだろう)
八幡「(でも、それで良い)」
八幡「(俺の気持ちなんて嘘だ)」
八幡「(だから)」
八幡「……………………っ」
(雪ノ下さんの)
(陽乃さんの笑顔が俺の思考を阻害する)
八幡「ちくしょう……なんなんだ」
八幡「俺はもう騙されないって決めたはずだ」
八幡「女子の気のあるような言動はフェイクだと知ってるだろ。比企谷八幡」
(言い聞かせてもなお)
(記憶は陽乃さんをリピートしていた)
小町「どうかしたの?」
八幡「……いや、何でもねぇよ」
小町「陽乃さんに何か言われた?」
小町「(絶対言ってるよね)」
小町「(じゃなきゃ、雪乃さんからあんなメール来ないし)」
八幡「少し話しただけだ。ほんと、何でもないんだよ」
(小町と雪ノ下のやり取り)
(興味はあったが聞くことはできず)
(俺は適当に誤魔化して小町を遠ざける)
八幡「本当に……何でもないからな……」
(そう、願う)
小町「早く行くのが基本テクなんだよーお兄ちゃん!」
(雪ノ下との買い物当日)
(小町に叩き起こされ、服装を決められ)
(まぁつまり、作:比企谷小町の比企谷八幡は出来上がり)
(作者によって家からたたきだされたのだった)
八幡「………雪ノ下はまだ来てないか」
八幡「(当たり前か。30分前だし……)」
(キョロキョロと見渡して溜め息をつく)
(その目は雪ノ下を探した)
(雪ノ下雪乃か、雪ノ下陽乃か)
(それは、分からなかった)
八幡「…………」
八幡「ん?」
(約束まであと20分)
(携帯が震え、メールの受信を知らせる)
(差出人は雪ノ下陽乃。と、なっていた)
八幡「(……なんなんだろうな)」
(今までは面倒ごとだろうからと開きたくなくて)
(今は内容が気になりすぎて、開きたくない)
八幡「出かける相手は雪ノ下なんだ」
八幡「雪ノ下さんが来なくても、恐怖のドタキャンにはならねぇだろ」
八幡「(そもそも、そんなことされた記憶はないが)」
八幡「(前は一緒に出かけてくれる女子なんて小町だけだったからな)」
八幡「なんだ?」
(雪ノ下さんのメールは添付ファイルが一枚と)
(題のところに、ひゃっはろー)
(完)
八幡「……雪ノ下さんとは思えないほど簡潔なんだが」
(デートの予定コースでも作ってくれたのかもしれない)
(そう思ってファイルを開くと、努力が見える着飾った男子高校生が写った写真が表示された)
八幡「格好つけやがって」
(罵倒し、見つけ出して影で笑ってやろうかと思ったが)
(よく見たら今朝鏡で見た人だった)
八幡「えっと」
(写真に写る自分の角度から推測して)
(写真を撮ったであろう方角を見てみると)
(これまた綺麗な人が、笑顔で可愛らしく手を振ってきた)
八幡「誰だよあの人とデートするやつ」
八幡「(俺の後ろは確か銅像だったはずなんだが)」
(振り返ってみるとその記憶は正しく、)
(もう一度雪……綺麗な人を見てみると)
(少しムッとしていた)
八幡「(なんだよあれ一色だったらあざとすぎて批判されてるぞ)」
八幡「(というかうっかり惚れそうだからヤメテっ)」
八幡「……………………」
八幡「(なにこれ恥ずかしい)」
(雪ノ下さんがいることは雪ノ下に知られるわけにはいかず)
(近寄れない俺は離れたまま、手を降返す)
(メールで催促されたからな。仕方がない)
陽乃「(ねぇ知ってる?)」
陽乃「(これだけ離れてても、相手を思ってると心の声が届くって)」
八幡「(えっ?)」
陽乃「(ただ、声が届き合う状態または視界に入る状態じゃないといけない)」
陽乃「(なんだか不倫してるみたいだねっ)」
(雪ノ下さんは満面の笑みで、そう伝えてきた)
八幡「(な、何言ってるんですか)」
陽乃「(あははっ、冗談冗談)」
八幡「冗談じゃないですよ」
(無意識に髪を掻いて目をそらす)
(見えなくなった瞬間から声は聞こえなくなって)
(雪ノ下さんがそれで気が緩んだのかもしれないし)
(能力の感度が良すぎたのかもしれない)
(チラッと横目で雪ノ下さんを見ると)
陽乃「(私の時より、気合い入ってるなぁ……)」
(そんな声が、聞こえてきてしまった)
またあとでになるかと
もう(陽乃さんがヒロインで)いいんじゃないかな
もう(陽乃さんがヒロインで)いいんじゃないかな
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