のくす牧場
コンテンツ
牧場内検索
カウンタ
総計:127,062,843人
昨日:no data人
今日:
最近の注目
人気の最安値情報

    元スレ勇者「もうがんばりたくない」

    SS+覧 / PC版 /
    スレッド評価: スレッド評価について
    みんなの評価 :
    タグ : - 勇者 + - 魔王 + 追加: タグについて ※前スレ・次スレは、スレ番号だけ登録。駄スレにはタグつけず、スレ評価を。荒らしタグにはタグで対抗せず、タグ減点を。
    ←前へ 1 2 3 4 5 6 7 次へ→ / 要望・削除依頼は掲示板へ / 管理情報はtwitter

    251 = 246 :



    天界兵「勇者は雷の魔法を使っているぞ!」バサァッ

    天界兵「防護結界を展開せよ!!」バサァッ



    バシュンッッ!!

    勇者「【】」ボソッ




    ーーーーーーーーーー キィィィィ・・・ンッ


    ーーーーーーーーーー カッッッ!




    ズ┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨ッッ!!




    252 = 246 :



    ゴオオオオオオ!!


    勇者B「っ!? なんだ今のは」

    天界兵「い、今の魔法で半数が落とされました……!」バサァッ

    勇者B「何をしてるんだお前達は!!」

    天界兵「し、しかし……」


    勇者B「埒があかない……私が勇者を仕留める、お前達は魔神を討ちなさい!!」

    バシュンッッ


    天界兵「……っ」チラッ



    ドドドド……………


    天界兵「あんな魔法……初めて見た」ゾクッ

    253 :

    何かこう……核っぽいな

    254 = 246 :




    ザザザザザザザザザァァァア・・・・・・ッ!!



    勇者(!)

    勇者(天使達がぼくを避けて……?)

    勇者(直接王女を討つ気なら、ここは心配ない)


    勇者(それよりもまずは……)


    勇者B「こんばんは、愚かな罪人さん」ゴォオゥッッ


    勇者「……君をどうにかしないと、だね」

    勇者B「剣を抜いてはどうです? 無駄ですが」ギュオォォォンッッ

    勇者「あぁ、無駄だろうさ」スッ



    勇者「私も、そのつもりで今ここに来たのだからな」バリバリィッ



    勇者B(? 雷……)

    255 = 246 :



    勇者B「行きますよ……」ググッ

    勇者「・・・」



    バシュンッッ!!



    勇者「……」バリバリィッ

    バシュンッッ

    勇者B(! 動かない!?)シャッッ


    バヂィンッッ!!

    勇者B「・・・は?」


    勇者「……やっぱりな、お前は私に攻撃を当てる事も叶わないよ」バリバリィッ

    勇者B「ッ・・・なんだ、今のは!!」

    勇者「『雷になって移動した』だけだ、四天王の雷帝と戦った事はあるだろう?」

    256 = 246 :



    勇者B(……雷帝? 確か奴は確かに雷の体ではありましたが)ゴォオゥッッ

    勇者B(…………)

    勇者B「何故……あなたが雷の体を!?」


    勇者「それは君が一番よく知っていると私は思うがな」バリバリィッ

    勇者「『前兆』から予測される読み合いでの戦いは無い、下手な戦術は自分が不利になるだけだぞ?」バヂィッッ


    勇者B「・・・!!」ギリッ


    ヒュッッ!!

    勇者B「なら正面から、真っ向から勇者を焼き斬るまでッ!!」ギュオォォォンッッ!!


    勇者「……」

    勇者(もう私はお前に負けないよ)


    257 = 246 :





    ヒュッ




    ゴバッガァァンッッ!!



    勇者B「ガハッ…………っ?」ビチャァ



    勇者B「・・・・・・・・・え?」ゴフッ





    勇者B(な、な・・・何が、今………?)ガラガラァッ


    258 = 246 :



    勇者「・・・」ザッ!


    ロンギヌスを持った勇者には、何が起きたか分からなかった。

    何故に自身の体が大地に叩きつけられたのか。

    何故に【神の槍】は勇者を貫けなかったのか。


    実際には彼でも避けられた一撃が、完全に彼の身体と誇りを粉砕していた。



    正面から灼熱の焔である槍を一閃して勇者を貫こうと、もう一人の勇者は突いた。

    その速度も纏う魔翌力も、魔王ですら一撃で致命傷を負うのは必至。

    そして勇者も本来ならば間違いなく胴体を吹き飛ばされてもおかしくはなかったのだ。




    だが、勇者は神撃の槍を掴み取り。

    交錯させるように左拳がもう一人の勇者を殴り飛ばした。




    259 = 246 :



    勇者B(た、ただ殴っただけとは思えない……)

    勇者B(現に勇者は私のロンギヌスを掴み取った! おまけにたった一撃で私が…っ)ガラガラァッ


    思案、思索、思考。

    突如襲った『未知の事態』にひたすら抗う、目の前の事実を覆し自身のプライドを再び生き返らせる。

    そうすれば今まで同様にもう一人の勇者は負けない筈だった。

    ・・・筈だった。


    バヂィンッッ!!

    勇者「………」ヒュッ


    勇者B「【ロンギヌス】ッッ!!」ゴォオゥッッ


    ガシィィッ


    勇者B「ッ……!!?」

    勇者「……」グググ…



    まるで掴まれる度に思考回路を焼き切られているかのように、もう一人の勇者の呼吸が止まる。


    260 = 246 :



    勇者B(……!!)バシュンッッ

    バヂィンッッ


    勇者B「はぁああああああッッ!!」ギュオォォォンッッ!!

    勇者「・・・ッ」シャッッ!!



    ガガガッ・・・バヂィンッッ

    ドゴォォォォォッ!!!


    勇者B「ぅぶァガ……ッぐ!?」ズシャァア


    勇者B(ま、また……まただ)


    勇者B(私よりも、また早くなって……)


    261 = 246 :




    ・・・・・・・・・



    水帝「主、ご無事ですか」モコモコモコモコモコ

    「うん……ちょっと擦りむいただけかな」

    水帝「軽傷ですね」


    天界兵「覚悟ぉぉ!!」バサァッ


    「っ」バシュンッッ

    水帝「っと」バシュンッッ


    スカッ

    天界兵「!?」


    バシュンッッ!!

    水帝「ご無事ですか主」シュピッッ


    ドサッ


    バシュンッッ

    「うん、えっと……一々確認しなくていいよ」

    水帝「主の心象に私は影響されるのでな、仕方ありません」

    水帝「心配なんでしょう、あの男が」

    「心配…だよ、相手は私達が何千年も逃げ続けて来た勇者だよ」


    水帝「でも今は、その勇者が貴女の味方だ」

    水帝「奴は『三度』負ける事は絶対に無い、それは私達四天王が保証する」


    「・・・え?」


    262 :

    何か、知っているのか……?

    263 = 246 :



    勇者B(・・・何故)


    ガガガガガガガガガガガガガガガガッッッッッ!!!!!!


    勇者B(な、ぜ・・・ッ!!)



    力の衝突。

    そこに技量は存在しない、技量や技術は僅か前に相手によって消滅した。

    そう、技術や技量では最早勝てないのだ。


    勇者B(何だ!? 何でだぁ!!)


    大地を煙の如く砕き上げ、土を炭に、空気を焼き尽くし生まれた真空波が辺りを蹂躙する。

    【神の槍】という名は伊達ではなく、その一振り一振りがまさに天下無双。

    対抗し得る武器は存在せず、矛先に貫かれた者は如何なる法を用いても治癒は不可。


    自らの武器に加えて自身が授かった『勇者』の力が合わされば敵など皆無の筈だった。



    勇者「ッ……!!」ガガガガッッ



    しかし、ならば素手で拮抗してくるこの男は・・・何だと言うのか。

    勇者B(ああああああああああああああああ!!!!)

    技量は四天王のそれを操り、技術は半日前の戦闘が嘘だったように増していく。


    一撃。

    二撃。

    三撃。



    勇者B「ぉぉオオオァァァアああああああああああああッ!!!!」



    264 = 246 :



    衰えない、萎えない、止まらない。


    神速の領域で打ち合う両者は最高頂から疲労で減速する。

    それこそが力のみの戦い、己の持つ限界を繰り出す事が今の戦い。

    つまり勇者達は互角でなければならない。


    神は勇者達に『魔王を討つ』力を与えた。


    故に。

    どちらかと言えば、神に早々に処分せよと命が下った出来損ないの勇者よりも『勇者』の方が力の総量は上なのだ。




    ズドンッッ

    勇者B「ゴァ!!」ズザッ

    勇者「……!!」ヒュッ!!



    ガガガガガガガガガガガガガガガガッッッッッ!!!!!!




    ・・・止まらない。


    勇者の力が。

    勇者の速度が。


    まるで雛鳥が凄まじい速度で一羽の鷹へと成長するかの如く、未だ上昇し続けているのだ。

    265 :



    勇者B(ハァ…ハァ……ハァ………ハァッッ・・・)


    知らず知らず、『勇者』は遠い昔を思い出していた。

    王国と名乗るようになった母国で彼は執事を勤めている。

    王国は戦争が終わったばかりで、毎日敵国の民が奴隷として市場で売られていた。


    『東の国』の王族すら、ある者は慰み者となり、ある者はいたぶられ、そして『魔族』と呼ばれた。


    余りにも惨いと彼は思った。

    もしも彼等が救われる事があったなら、きっと神の救済しかあり得ないだろうと。

    手を指し延べる訳でもなく、これが現実なのだと納得していた。



    その二年後、神に『勇者』の力を与えられて魔神となった王女の追跡者となってからも、

    彼はその考えが変わることは無かった。



    勇者B「【ファイアヴォール】!!」ドゴォッッ

    勇者「……ただの火炎で、私を仕留められるとでも?」


    ゴンッッッッッ!!!!!!!!!!


    勇者B「・・・!!」グシャッ



    今更、なぜ思い出してしまったのか。

    何故にあの頃を思い出してしまったのか。

    『勇者』は分からなかった、己の中で爆発していた恐怖を拭う事が出来ずにいたから。


    266 :



    確実に迫る死。


    勇者B「……グゥゥウウウッッ!!」ギュオォォォンッッ

    勇者「・・・」クイッ


    コポコポコポ……!!

    バシャァァァッ!!


    勇者B「!? ゴボァ……!?」ズシャァア


    対処出来るものも出来なくなり、焦る。

    ただ、焦る。


    死への恐怖は数千年の時を経て彼の中で芽吹いていた。


    その芽は勇者の力に怯える度に、大きく。




    勇者「……」ザッザッ

    バリバリィッ!!




    大きく。



    勇者B「ぁは…っ」




    脳裏に浮かぶ、『魔神』が生まれた頃に見た奴隷達の末路。

    痛ぶられる恐怖と死の恐怖に顔を歪ませ、震えていた・・・あの男女達。

    そして王女。



    勇者B「……わ、私は……死ぬのか」

    勇者「まだ殺さない」

    勇者「『神』はどこにいる、どうすれば行ける?」


    267 = 266 :



    勇者B「・・・・・・」


    『………』


    勇者B(思い、出せない……)

    勇者B(神は私になんと言って下さった?)

    勇者B(私は……何にそんな忠誠を誓っていたのだろう)


    勇者「教えてくれ、どうすれば行けるんだ」


    勇者B「……はは」

    勇者B「ははは、はははははは……」


    勇者B「何となく、理由が分かった気がしたんだ」


    勇者「……?」

    勇者B「僕は、勇者にはなれないってこと……だよ」

    勇者B「君もだよ、『勇者』」にこっ

    勇者「・・・」


    勇者B「神は君が何らかの理由があって邪魔になったんだ…」

    勇者B「だから君も僕も、おかしくなっていく……勇者になってしまった」

    勇者「…何を言ってるんだ」



    勇者B「君は、人間の敵であり、人間の象徴なんだ」


    268 = 266 :




    ・・・・・・・・・


    バシュンッッ

    勇者「ただいま」スタッ!



    水帝「早かったな」

    勇者「そうかな」

    水帝「主の話しを聞いた限り、半日前に殺されたばかりだそうだな」

    勇者「まぁね」


    「おかえり、勇者……」

    ギュッ

    勇者「……」

    「勝ったの?」

    勇者「勝ったよ」


    勇者「……最後、彼を救えなかったけどね」


    「救う?」

    勇者「・・・」ギュッ




    勇者「今から、私は神のいる所へ行こうと思う」


    269 :

    戦闘シーンを擬音だけで描かれても理解できない

    270 :


    271 :

    勇者と勇者Bに分けてるのになんで『』の中は勇者Bと分けないの?
    正直分かりにくい

    272 :

    >>269
    SSならそんなもんだろ
    考えるんじゃない感じろ

    273 :

    バカが多いな

    274 :

    とりあえずメール欄にsagaは入れといて欲しいな

    275 :

    このスレは、教養が低いから当然分からないことでも口にすれば馬鹿にされるぞ。

    276 :

    わかれば頭がいいってわけでもないしなー

    277 :

    ケンカしたいなら他のとこでやれよ
    >>1が来なくなったらどうするんだ

    278 :



    「……かみ?」

    水帝「どうするつもりだ」


    勇者「王女を見逃して貰えないか、私が直接交渉しに行く」

    水帝「数千年かけて私達を追跡させてたのだぞ、向こうは主を殺さなければ満足しないだろう」

    勇者「満足はもう出来ないさ」

    水帝「?」


    「……勇者」


    勇者「王女、君に伝えなきゃいけないことがある」


    279 = 278 :


    「なに?」

    勇者「許して欲しい」

    「許すって、なにを?」

    勇者「……」


    勇者「私が明日明後日に戻る事は、無い」

    勇者「帰れるのは恐らく……気の遠くなるような年月がかかるだろう」


    「っ!?」


    勇者「先代の勇者が、最期の瞬間話してくれた」

    勇者「天界では、神に認められていない者は現世よりも時間の流れが大きく違う」

    勇者「数分で数年、数十年って経ってしまうんだ」


    280 = 278 :



    水帝「何故だ! 貴様は主を再び独りにするつもりか!!」ガシッ


    勇者「独りじゃない、魔力さえ回復すれば魔王達をまた召喚出来るんだろう?」

    「・・・」

    勇者「・・・」


    「……帰ってくる?」

    勇者「必ず」


    「戻ってきたら抱き締めてくれる?」

    勇者「絶対に」


    「・・・えっと」ポロポロ

    勇者「…泣かないでくれ」


    281 = 278 :



    勇者「愛してる、そんな言葉を言える私達でもないしな」

    「でも私は勇者が好きだよ」ポロポロ

    勇者「私もだ」



    勇者「……だが私は……『私』なんだ」



    水帝「!」

    水帝「まさか、貴様はあの頃の……!」

    「水帝やめて」

    水帝「主はこれで良いのですか!! 貴女はこんな結末・・・」

    「いいの」


    勇者「………」

    「……私は…『二人』を救えたのかな」



    勇者「…………………」


    282 = 278 :












    勇者「そうだな……『私』も、『彼』も、君に救われたんだ」

    「えへへ、あなたも好きだよ……『私』って言うの少しかっこいいし」

    勇者「・・・」

    勇者「行ってきます、王女」

    「行ってらっしゃい、勇者」









    283 = 278 :






    ――― 天界・神殿 ―――




    「……」


    「入り口にいた『四天使』はどうした」



    「勇者よ」

    勇者「……」ザッ



    「戦闘らしい音が聞こえなかった、どうしたのだ」

    勇者「先代の勇者に比べれば大した相手ではなかった」

    「文字通りの瞬殺か」

    「……やはりお前は生まれるべきではなかった」


    勇者「『失敗作』だからか」


    284 = 278 :



    「如何にも」キィンッ


    ズ┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨ッッ!!


    ・・・ブォォンッ!!

    勇者「……」ザッ


    「やはりな、既に耐…

    勇者「【シャイニング・レイ】」ボソッ

    「!?」




    ーーーーーーーーーー キィィィィ・・・ンッ

    ーーーーーーーーーー カッッッ!!



    ズ┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨ォオッッ!!!



    「ぐぉおお……!!」ガクッ

    勇者「……」

    「ま、まさか……神の魔法すら会得するとは」

    勇者「…なるほど、どうりで凄まじい威力だ」


    285 = 278 :



    「フンッ」バシュッッ

    ゴガァッ!!

    勇者「……素手の破壊力だけなら【ロンギヌス】並みか」ガシィッ

    「!?」


    「おのれェ…!!」キィンッ

    勇者「やめておけ」

    「ッ・・・」ピタリ

    勇者「今ので分かった、貴様は私に勝てない」


    「……ぐ」


    286 = 278 :



    「……」

    勇者「…」


    「ふ、予想外にも程がある」

    「この神を以てしても、お前の欠陥に気づいた時は戦慄したものだ」

    勇者「……欠陥」

    「然り」


    「勇者、お前は正真正銘本物の……『不老不死』になったのだ」


    「感じておるだろう? 自身の中で渦巻く魔力は無尽蔵に、力は無限に成長していくのが」


    勇者「ああ、感じるよ」

    「だろう? 貴様に与えた力は『耐性強化』だったからな」

    「たしか貴様が生まれたのは『前回』だったか」

    勇者「…!」

    「ん、なんだその反応は」

    勇者「・・・神ならよく知ってるんじゃないか? 私の記憶を事ある毎に操作していたろう」


    「ふん、てっきり貴様の記憶が蘇ったのかと思っていた…そこまで気づいているならな」


    勇者「……」

    勇者「話せ、真実の全てを」


    287 = 278 :



    「……そうだな、3ヶ月前を『今回』として」

    「『前回』とは勇者、お前を私が改めて生み出した時代の戦いだ」

    勇者「……」



    「私はこれまでの勇者が中々魔神を討たない事に苛立っていてな、もしやこの男では魔神を討つに及ばないのではないか?」

    「そんなことを考えていた」

    「そして再び魔神を数ある平行世界の中で見つけた時、私は決断した」



    「二人目の……『勇者』を造ろう、と」



    勇者「……それが私か」

    「然り」

    「だが貴様は最初から私の期待を裏切る男だった」

    勇者「?」


    288 = 278 :




    「……四天王まで辿り着いたのは良かった、だが貴様はその時点から突然精神的不安定に陥ったのだ」


    勇者「仲間が死ねば当たり前だ」


    「それまでの貴様は先代の勇者と同じように従順だったのにか」

    勇者「…そうなのか?…」

    「少し思い出してみろ、お前の口調はいつ変わっていた?」

    勇者「??」


    「ふん、まあいい」

    「貴様は四天王の一人目である『地帝』にいきなり敗北した」


    勇者「なっ…!?」


    「私も心底驚いたものだ、半殺しで追い出された等と情けない報告を聞いた時はな」

    「先代の勇者に貴様の手当てをさせ、再び四天王に挑ませたが……『地帝』を倒した次は『炎帝』に敗北した」


    「次は『雷帝』、その次は『水帝』……流石の私も気づいた、貴様は一度戦った相手には決して敗北しないとな」


    「・・・戦術、魔術、腕力、脚力、魔力」

    「お前は敗北した相手に合わせて急激な成長を遂げたのだ」


    勇者「…」


    289 = 278 :




    「その後、お前は四天王の戦術と魔術で魔王と互角の戦いを繰り広げた」

    勇者「結果は?」

    「貴様が殺される瞬間に先代勇者が魔王を倒した」

    「もっとも、直後に魔神は平行世界の彼方に逃亡してしまったがな」


    「……貴様が先代勇者と共に戻った時」

    「お前の目は先代の勇者とは違っていた、『異質』な物になっていた」



    「その刹那に私は痛感したのだ、生み出した新たな勇者の末恐ろしい気配に」



    勇者「……それで、私は…」

    「仲間が殺された記憶がお前を変異させたと考えた私は、貴様の記憶のみをリセットさせて平行世界に送り込んだ」



    「・・・だがそれこそが最大の過ちであったなぁ」


    290 = 278 :



    「覚えはあろう、お前は旅の中で時折記憶が戻りかけては突然パワーが増していた」


    勇者「・・・ッ」ビクッ




    『 7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[]2012/11/23(金) 18:17:12.39 ID:s6vh qwG0 』

    『 エルフ「・・・」 』

    『 勇者「……あの」 』

    『 エルフ「疲れてる、休め、寝る? 食事?」 』

    『 勇者「え、えっと、あの」 』

    『 僧侶「この娘、エルフみたいです、私達を村か何かに案内してくれるの かも」 』

    『 女戦士「そりゃーいい、休みたいな」 』

    『 勇者「・・・」 』

    『 勇者(何だろう、何度か見た事ある気がする) 』



    勇者「・・・ッ」

    勇者「もっと、もっと早く鮮明に思い出していれば僧侶はッ」ギリッ



    291 = 278 :








    「……貴様は消した筈の記憶に沿うように、再び運命を辿り出した」

    「まるで記憶が無くとも、何かを信じるように」

    「何より、『前回』以上にお前はどこか幼く、反面絶望した『勇者としての面』が見え隠れするようにもなったが」

    「貴様も流石に覚えていよう、四天王が余りにも 弱い と感じた筈だ」




    292 = 278 :



    勇者「・・・」

    「後は、大体貴様も分かっているのではないか?」

    勇者「そうだな……」

    「魔王を打ち破り、地下で魔神と対面した時に私は先代勇者に魔神を殺せと命じた」

    「だがそこで貴様は魔神の味方をしたが故に先代勇者と戦いになった」

    「そしてお前が殺された瞬間に私はお前の記憶を消そうとしたのだ」


    勇者「……? 何故中途半端に消すような真似をした、消えたのは地下での事だけだ」

    「中途半端だったわけではない、勇者が『記憶改竄』に対する耐性を早くも身に付けていたのだ」

    「故に記憶を消し損ねた上に、貴様は魔神と共に平行世界へ消えた」


    勇者「それが真実?」


    「然り」


    勇者「………」


    勇者「私……私が…くそ、なんて言えば良い」

    勇者「……『前回』の記憶を消される前、私は自分を『私』と呼んでいたか? …」

    勇者「・・・それとも」


    293 = 278 :





    「……」

    「よく思い出してみるといい、貴様は今や神である私を越える存在なのだ」

    「一度消した記憶位なら、もう貴様の意思で取り戻せるだろう」



    勇者「………」


    『 水帝「初恋のエルフに騙されても尚、人間の味方を何故する!!」 』


    勇者「………」




    『「エルフ……私は……それでも…………」』

    『「……勇者様?」』



    勇者「……」

    勇者(なるほど…『ぼく』じゃなかったんだね)

    勇者(という事はやっぱり……『前回』と『今回』の人格が……)


    294 = 278 :



    「私が知っている事はこれで全てだ」

    「……それで、貴様はどうする? 私を殺すか」


    勇者「生かして置いたら、どうする?」

    「どうもできぬ」

    「お前はもう『勇者』等という枠に納まらん……この私ですら殺せないのだから」

    勇者「!」

    「『死への耐性』、『時間概念への耐性』、『魔法への耐性』、お前をどうやって殺せるのか」

    勇者「……」


    勇者「もう……王女に関わらないんだな?」


    「魔神か、出来ることなら消したい存在だ」

    勇者「あの子はもう魔神じゃない」

    「魔神じゃない? なら問おうか」



    「・・・戦争はどうして起き、王女達は迫害を受けたと思う?・・・」



    勇者「!?」


    295 = 278 :



    「王女が居たのは『東の国』というのは知っているな?」

    勇者「………」


    「あの国は当時…戦争が始まる前から不穏な噂があったのだ」

    「そして、人間達の間で『魔法』が出回るきっかけとなったのもあの国だった」

    「……『魔神』はいたのだ、ずっとあの国の中で」


    勇者「王女……が、そうだと?」


    「否」

    勇者「!」

    「私が思うに『魔神』とは、平行世界とは違って全く異なる世界から来た力だと思っている」

    「人と人との間で受け継がれ、決して絶える事の無いまるで生物のような存在」


    勇者「……王女は、どうしてそんなものに」

    「大体想像はつくであろうよ?」


    296 = 278 :



    「不穏な噂が人間の間で大きくなり、邪悪さを増し、魔法という知恵を生み出した国を魔だと言った」

    「……そして『正義』を翳して戦争が起きた」

    「珍しい展開ではない、数多の平行世界でも人間は争いを生み、悲劇を生み、歴史を作り上げた」

    「執拗に『正義』を喚きながら女を犯して、男を切り捨て、王族は斬首される」


    「あの王女もまた、人間であった頃は餓死という結末を迎えていた」

    「その結果、本来ならば悲劇の歴史に埋もれる筈だった少女は新たな悲劇を生む種を宿してしまった」



    勇者「・・・」

    「さて、絶望と憎悪の中で芽吹いた種は何を咲かせるか」

    「人間の敵になる事と引き換えに生を選んだ少女は、お前は、どんな結末を辿るのだ?」


    勇者「……王女とぼくなら、きっと正しい道を行ける」ボソッ


    「ふん、なら勝手にするといい」

    「どうせお前達二人を別つ者など居はしない」


    勇者「ああ、いざというときは『私』がいるしな」


    「……」

    「肝に命じておけ、『勇者』」



    297 = 278 :






    勇者「……何だ」

    「貴様もその状態がいつまでも続くとは思わない事だ」

    「『失った記憶の勇者』と『今の記憶の勇者』、二つの人格がお前の中にあるが」

    「いつか必ずどちらかが消える、その前にどうにかしないとな」


    勇者「…そうだね」

    「そしてこれは『神として』の助言だ」

    勇者「?」



    298 = 278 :








    「人間の敵は、『正義』であって『悪』ではない」

    「………覚えておけ」






    勇者「…ああ、覚えておく」

    勇者「去らばだ、神」キィンッ


    バシュンッッ!!



    299 = 278 :




    「………」

    「……ふん」


    (果たしてお前達は報われる日が来るだろうか?)





    「答えは 否 」






    300 = 278 :




    ・・・【1500年後】、王国・・・



    バシュンッッ!!

    勇者(………)スタッ!


    勇者「!」


    「……おかえり、勇者」

    勇者「ただいま」


    魔王「……久しいな」

    炎帝「遅過ぎだ、何をしていたのだ」

    雷帝「主が泣いた回数なんて800越えてんだからねっ!!」


    水帝「久しぶりだな、勇者」

    スライム娘「世界はずっと私達が管理していたので問題は有りませんよ!」


    勇者「・・・ぼくと別れてどのくらい経ってるのかな」

    「1500年ちょっとかな」


    勇者「…変わらないね、王女」

    「……ほんと?」

    勇者「うん、後ろの皆も含めてね」


    勇者「……」

    「?」



    ←前へ 1 2 3 4 5 6 7 次へ→ / 要望・削除依頼は掲示板へ / 管理情報はtwitterで / SS+一覧へ
    スレッド評価: スレッド評価について
    みんなの評価 :
    タグ : - 勇者 + - 魔王 + 追加: タグについて ※前スレ・次スレは、スレ番号だけ登録。駄スレにはタグつけず、スレ評価を。荒らしタグにはタグで対抗せず、タグ減点を。

    類似してるかもしれないスレッド


    トップメニューへ / →のくす牧場書庫について