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元スレ勇者「もうがんばりたくない」
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・・・2ヶ月後
勇者「……」ザッザッ
ガラガラッ
勇者「……」ザッザッ
勇者(脆いな、かなり風化してる)
勇者(いや違う……この惨状は風化じゃないんだ)
勇者(そう、これは『燃やされた』跡にも見える)
勇者(確か2ヶ月前にスライム娘が言っていた)
スライム娘『あ……来てくれたんですね』
スライム娘『妹の心を受け取って私達の言葉が聞こえるようになったんですよ』
スライム娘『え? どうしてあの時襲われていたのか?』
スライム娘『えーと……今までは命令に従っていれば安全だったのですが、突然怒り狂って来たんです』
スライム娘『何度も呟いてました……確か』
スライム娘『 何者かに配下を燃やされたとか 』
勇者「………」
勇者(あの話が本当ならば、ぼくのいた世界のスライム娘も同じ理由だったのかもしれない)
勇者(……四天王の炎使いは違う……だとしたらおかしい)ガラガラッ
ザッザッ
勇者「どうしてこの『 魔 王 城 』が朽ちているんだ……?」
勇者(ここは過去の世界じゃないのか?)
勇者(全てに絶望して、魔王が与えてくれた秘宝に願って辿り着いた優しい世界じゃないのか?)
勇者(だったら……ここはどこ? ぼくにどうしろと言うんだ?)
勇者「・・・」
勇者「……………誰か………誰か教えて…よ………」
勇者「ただいま」
勇者(……いない、のかな)
勇者(思えばあの子とも3ヶ月近い付き合いなのかな…早いや)
勇者(国中から来る討伐依頼を完了しつつ、お金は要らない分は全部あの子にあげて)
勇者(てっきり遊びに使ってるのかと思ってたら……いつの間にかこんな一軒家を買ってて)
勇者「ふぅ…… ん?」
カサッ
『帰ってきたら近所の果物屋に迎えに来て』
『多分、雨降るだろうから』
勇者「……」
勇者(そしていつの間にか……本当にあの子はぼくの奥さんになったつもりらしい)
勇者(…ぼくは、どうしたら良いんだろう)
店主「お嬢さん、傘貸そうか?」
「ありがとうおばさん、でも平気だよ」
ザァアアア・・・
「こんな雨でも、迎えに来てくれる優しい人がいるから」
「だから、私は待ってるの」
店主「ふぅん彼氏かい?」
「えへへ……だったら良いのにね」
店主「違うのかい」
「うん、きっと…彼は私がそばにいても気休めだから」
「だから私は全ての人に代わって優しくいたい、彼を好きでいたい」
「……なんてね」
パシャッ
勇者「おまたせ」スタッ!
「ちょっと遅いよ、雨風で体が冷えちゃった」
勇者「あ、ごめん…」
「いいよ、来てくれたのは嬉しかったんだから」
「勇者もお疲れ様……どこに行って来たの?」
勇者「帰ったら話すよ、寒いでしょ?」
「………うん♪」
ギュッ
勇者(……)
勇者「帰ったら温めてあげるね、部屋」
「えへへ……って部屋か」
「東の朽ちた城……」
勇者「何か知ってる?」
「………」
「どうだろ、分からないかな」
勇者「君でも分からないのか……」
「うん」
勇者(以前の世界なら魔王城は誰でも知っていた、つまり忘れ去られている?)
「勇者、図書館に行ってみたらどうかな」ギュッ
勇者「図書館?」
「何か……見つかるかも」
勇者「分かった、明日行ってみるよ」
「……」
勇者「ありがとう」
「うん……!」
王立図書館
勇者「こんにちは、重要閲覧室に入りたいんだけど」
女「これはこれは勇者様! 朝から歴史に興味を持つなんて……え」
勇者「あっ」
女「あの時の……あー、覚えてます? ちょっとぶつかりましたよね!」
勇者「覚えてるよ、凄い偶然」
女「あはは、あの後試験に合格してこの王立図書館の責任者になったんです」
勇者(やっぱり…)
女「まさかあの時の人が勇者様だったなんて、もしかしたら勇者様が応援してくれたから 合格出来たかもしれないですね」
女「それはそうと、何でしたら閲覧室を私が案内しますよ」
勇者「助かるよ、お願いしようかな」
勇者「………」パラパラ
勇者(これじゃない)パタン
女「うーん、東の朽ちた城についてって、ちょっと情報不足ですねぇ」
勇者「地域別の歴史書だと付近のものばかりだしね」
女「『雷帝の年』・『水の月』より以前の歴史書なんて幾らでもありますからねー」
勇者「え?」
女「お忘れですか、今年の中でも今月は最悪ですよきっと」
勇者「そうじゃなくて、年号ってそんな呼び方だっけ」
女「はい?」
勇者「・・・いや、なんでもない」
勇者(そういえば『雷帝の年』って聞いたことあるなぁ)
勇者(何年も旅してると勉強してきた知識が全部うろ覚えみたいになるから・・・)
勇者「ありがとう、また来るよ」
女「はい!」
勇者(やっぱり……ぼくはこの世界でやり直すしかないのか)
勇者(……)ピタッ
勇者(魔王城が、魔王がいないなら……)
勇者(違う、そもそもこの世界に『魔王が存在した形跡が無い』んだ)
勇者(ここにずっと粘りつくような異物感があるのは、多分それが関係してる)
勇者「と思うんだけどな……」
「何が思うの?」
勇者「うわっ……いたの」
「今来たの、そろそろ勇者が出てくるかなーって」
勇者「いつも勘が良いね」
「うん、はい討伐依頼の紙」
勇者「うん?」カサッ
西城下町
勇者(……依頼内容は水溜まりに潜む魔物ってなってたっけ)
勇者(既に数人犠牲者が出てるとも書いてあった)
勇者(届いたのはついさっき)
勇者(なのに・・・)
「助けてくれぇ!」
「イヤァァァ!!」
「だれか、誰かぁ!! ぁあ!?」
ゲルスライム【・・・】ビタッ
ゲルスライム【・・・】ビタッ
勇者(数が多い……!!)
勇者(騎士団は何をしていたんだ……西城下町がこんなになるまで放置するなんて!)チャキッ
商人「うわぁぁあ!!」
ゲルスライム【・・・】ビュルルッ
ズバンッ
ゲルスライム【?】ビチャァ
勇者「近くの建物に入って下さい」スタッ!
商人「は、はいぃ!」
勇者「……!」
モコモコモコモコ……
ゲルスライム【・・・】ビタッ
ゲルスライムB【・・・】ビタッ
勇者(分裂再生……? いや、似てるけど違う)
勇者(短時間で増殖したのは、これのせいか)
ゲルスライム【・・・】シュルッ
勇者(移動なんてさせない……!)ヒュッ!!
トプンッ
ゲルスライム【?】
ゲルスライムB【・・・!】
ドパァアアアン!!
勇者(……)
勇者(『やっぱり』、か)
勇者(四天王の水使いも似たような戦術だから分かる、このゲル状の人形はパーツだ)
モコモコモコモコ………
モコモコモコモコ………
勇者(一体を形作っていた集合体の一部……のはず)
モコモコモコモコ……
アームスライム【………】ミシィッ
勇者(腕…?)
勇者「!!」ヒュッ!!
ガァンッッ
アームスライムB【……】ガラガラァッ
フットスライム【………】スタッ!
フットスライムB【……】スタッ!
勇者(……ぼくの実力を見抜いて集まって来たか、これで周りに被害は無くなるかな)
勇者「来い、私が相手をしてやる」チャキッ
「……♪」ザァーカチャカチャ
「・・・?」
モコモコモコモコ………
「……!」
モコモコモコモコ………
水魔王「くすくすくす、こんにちはぁ」モコモコモコ
「………」
水魔王「昨夜の雨で私、知ってるわぁ? あなた勇者とかいう奴の大切な番いらしいわねぇ?」
水魔王「ちょっと来てもらうわよ、あの男には借りがあるのぉ」
「………」
「乱暴はしないよ……ね」
水魔王「さぁ、どぉかしらぁ?」
勇者「・・・」スタッ!
モコモコモコモコ……ッッ!!!!
水魔人【………】
勇者(実力は大した事は無い、でも周囲の家屋に被害を出さずに奴は倒せない)
勇者(『水』である奴に物理攻撃は時間稼ぎにしかならない!)
水魔人【ッ!!】ブォンッ
勇者「……」ヒュッ
ズバンッ! スパスパスパパパパパンッッ
水魔人【……!】バシャァ
モコモコモコモコ……ッッ!!!!
水魔人【………】
勇者(キリがない……)
水魔人【……!】ビュルルッ
勇者(しまっ……地面に溶け込んで…!)
ガシィッ
勇者「うぁ!」ガクッ
ビュルルッ!!
ブォンッ!!
勇者「!?」
ドゴンッ・・・!
勇者(ぐあ……っ、コイツ思ったよりキツい一撃を……)
勇者「破ァッ!!」
水魔人【!?】バシャァ
勇者「……!」ヒュッ
スタッ!
勇者(四天王には程遠い……でもコイツは新しい意味で苦戦しそうだ)
水魔人【・・・】モコモコモコモコ
勇者「……」
モコモコモコモコ………
勇者「?」
勇者(なんだ? 新手?)
モコモコモコモコ………
水魔王「はぁーい?」
「・・・勇者」
勇者「なっ……!?」
水魔王「状況が理解できたなら武器は捨てなさいなぁ?」
勇者(なんで、なんであの子が……)ガシャン
勇者「………」
水魔王「こんにちはぁ、私が誰か分かるかしら?」
勇者「さぁ、水の魔王ってところかな」
水魔王「それだけじゃないわよぉ! あなたが2ヶ月前に殺した『雷帝』のとーっても大切な友達よぅ!」
勇者「目的は復讐?」
水魔王「その通り」
勇者「………」
勇者(それで、あの子を……)
「勇者、勇者」
勇者「なんだい」
「さっき聞いたの、あの女の弱点は……」ボソッ
勇者(……なるほど)
「どのタイミングで逃げたらいいかな」
勇者「……」
勇者(待ってて、すぐに迎えに来るから)
「うん、分かった」
水魔王「何をひそひそ話してたのかしら?」
勇者「何だろうね」
水魔王「まぁいいわ、どうせあんたは動けないし」
勇者「そうかもね」
ヒュッ!! スタッ!
水魔王「は?」
水魔人【!】
勇者「……『本体が出てきたのは失敗だったな』」
バシュンッッ
バシュンッッ
ヒュルルルルル・・・
水魔王(なっ!? なんで私、空から落ちてるの!?)
水魔人【……!?】
勇者「破ァッッ!!」
バチュンッッ!!
水魔王(嘘……私の分身が一撃で………)ゾク
水魔王「こ、の……ォッ!!」ザシュンッッ
バシュンッッ
水魔王(また瞬間移動…っ)
バシュンッッ
勇者「・・・」ピトッ
水魔王「ひっ……」
西城下町
「んしょんしょ……うぁ、ぬるぬるするよ」ニュルニュル
(・・・私を拘束してるスライムより、勇者大丈夫かな)
(大丈夫、だよね)
ニュルニュル……ッ
(あ、外れそう)
ニュル!
「ふぅ、まだペタペタする」
「………」クスクス
(かっこよかったな……私が人質になってるの見た勇者……)
(早く戻って来ないかな、勇者)
水魔王「ほ、本当よぉ!! 『マオウ』なんて見たことも聞いたこともないわぁ!!」
水魔王「もう許して……もうあんたには関わらないからぁ!」
勇者「………」
水魔王「ひぐ……痛いよぉ……なんで急に再生出来なくなったの……」
勇者「今の君は半分凍りついてるからだよ、 だから液体化出来ないんだ」
水魔王「凍りついてる……?」
勇者「最後に質問に答えてもらう、いいね?」
水魔王「は、はいぃ」
勇者「・・・他に、君達みたいな知能を持った魔物はどのくらいいる?」
ズバンッ
バシャァ……ジュゥゥ
勇者「……」チャキッ
勇者(いる、後二人……)
勇者(いずれも水魔王と変わらないらしいけど、能力は炎と大地)
勇者(四天王もそうだった、『雷帝』『水帝』『炎帝』『地帝』の四人だ)
勇者(となると……もしかしたら彼らはぼくの知る四天王の祖先に当たる存在なのだろうか)
勇者(でも……)
勇者(分からない事だらけだ)
「おかえり勇者」
勇者「ただいま、大丈夫? 怪我はないね?」
「うん」
「……かっこよかったよ、さっきの」
勇者「さっきの?」
「ずっとあの魔物に圧力をかけてたでしょ、私に危害を加えないように」
勇者「そりゃ…そうだよ、君はほら……」
勇者「・・・えーと」
「ふふん、勇者として弱い女の子は守らなきゃ?」
勇者「そう、それ」
「ふーん」
「とりあえずお風呂入ってからご飯にしよ? あなた」
勇者(……)
(……思ったより恥ずかしいや)
数日後
勇者「ねぇ、大丈夫?」
「え、へぇ?」
勇者「ここ最近顔が赤いから」
「えー…大丈夫、だよっ」
勇者「本当に?」
「…………」
「ちょっと風邪気味です」
勇者「もう……待ってて、すぐに薬買ってくるから」
「行ってらっしゃい、勇者」フラフラ
(……勇者、私のために………………)
「うれしい…な」キュン
炎魔王「……ガハッ」ガクッ
勇者「……命は奪わない、急いでる」チャキッ
炎魔王「き、貴様は一体……」
勇者「死にたいならいつでも勝負は受ける、でも今は急いでるんだ」
炎魔王「くっ……」
勇者(薬草……確かこの先にあったはず)
勇者(あぁもう! どうして今日に限って薬屋が閉まってるんだ!!)ヒュッ!!
炎魔王(……ウ、ぐ)ヨロッ
炎魔王(噂通りの強さか、物理攻撃の効かない俺を一撃で仕留めて来るとはな)
炎魔王(俺も帰って一族の者達と鍛え直そう、でなければ水帝と雷帝に顔向け出来ん)
フラフラ
勇者B「どちらへ行かれるのですか」ドズンッ
炎魔王「!!?」ビチャッッ
炎魔王「ゴフッ…!! 貴様、見逃すと言っただろう!?」
勇者B「『私』が言ったのではありませんので、その契約は無効です」ヒュッ
ズバンッ
ボトッ
勇者B「・・・」オオオオ
バシュンッッ
勇者「ただいま! 薬草持ってきたからまっててね」
「……」
勇者「……どうかした?」
「勇者、私昨日勇者に何した?」
勇者「何って」
勇者「………なんだろう、沢山感謝するような事はしてもらったかな」
「!」
「おかえり! どこに行ってたのかな?」パァァ
勇者「く、薬屋だよ」
「ここの裾が焦げてるんだけどなーー」
勇者「う……」
「えへへ、甘い甘い」
勇者(ほんとこの子、勘が良いよね)
数日後・図書館
勇者「………」パラッ
勇者(・・・見つけた)
女「見つかりましたか?」
勇者「うん、悪いけど一人にしてもらって良いかな」
女「はい! 何かあれば呼んで下さいね?」
勇者(……歴史書第2の巻)
勇者(殆どこの国が出来た頃の話だ)
勇者(『かつてこの大陸には2つの国が存在し、同じく2つの城が存在した』)
勇者(『西の国』と『東の国』……『現在王国と呼ばれているのは西の国である』)
勇者(・・・じゃあ魔王城があったのは、『東の国』?)
勇者(『西の国と東の国の力は均衡しており、当時の戦力では決着はつかなかった』)
勇者(『しかしその後、神と契約した伝説の戦士が誕生』)
勇者(『戦士一人に東の国は成す術はなく陥落、その後数年間も東の国の王族は奴隷として使われた』)
勇者(まさかこの戦士って……『勇者』なのか)
パラパラ
勇者(……?)
勇者「あれ……この先のページが切り取られてる」
女「えぇ? ページが破れてる?」
勇者「そうなんだ、どうにかならないかな」
女「わぁ酷い……貴重な本なのに」
勇者「え、写本はないの?」
女「無いですよ、それだけ歴史的価値があるのに……」
勇者(……)
勇者「因みに、この破れてる先の内容と同じ時期の歴史書はあるかな」
女「あると思いますよ、今探して見ますね」
女「ありました、一冊しかないですけど」
勇者「ありがとう」
パラパラ
勇者「……!」
勇者「これって……『魔物図鑑』だよね」
女「実際に冒険家が旅をしながら魔物をスケッチしたそうです」
勇者「あのさ、ここの冒頭に書いてある事は…本当かな」
女「多分そうですよ、何でですか?」
勇者「・・・」
勇者(東の国が王国に支配されて二年後に、魔物が突然世界中で現れた……?)
勇者(これは偶然? 東の国の怨念が魔物になったとか?)
勇者(・・・)
「おかえり勇者、今日のお昼はサンドイッチだよ」
勇者「包んでくれるかな? ちょっと今日も東の方に行って来る」
「東の……?」
勇者「前に話した朽ちた城だよ」
「………」
ギュッ
勇者「え、あの……」
「行かないで」
「あそこには……もう、行かないで……」ギュゥゥ
勇者「……ぁ」
勇者「………っ」
勇者(この子の名前が言えないぼくって…!)
勇者「・・・分かった、もう行かないよ」
勇者「でも今夜ぼくのお願いを聞いてくれるって約束、してくれるかな」
「……分かった」
キマイラ【バキャァアッ】
勇者「……」ヒュッ!!
ゴシャァッ
キマイラ【】ドサッ
リザードマン【・・・!】
勇者「……」バシュンッッ
スタッ!
リザードマン【!?】
勇者「……」ザシュンッッ
リザードマン【】ゴトンッ
勇者(…今日の討伐依頼は終わり)チャキッ
中央城下町・噴水広場
勇者「………」
勇者(昼間は咄嗟にあんなこと言ってしまったけど)
勇者(何をお願いしたら良いんだろう)
勇者(……それに、あの子のあの嫌がりようも)
勇者(・・・)
『こんなところで何してるの、勇者』
『………』くすくすくす
勇者(思えば、あの子はこの噴水広場で会ったんだよね)
勇者(あの時、彼女は突然話しかけてきて……)
勇者(……ぼくの隣でお疲れ様って、言ってくれた)
勇者(・・・)
勇者(いつも不思議な雰囲気を持ってて、いつもぼくの為に小さな事を頑張ってくれる)
……ズキッッ
勇者「っ……ぁ」ガクッ
勇者(な、何……? なんで胸の辺りがこんな……)
ジワッ
勇者「!? 血が……」
勇者(服を脱いで止血魔法をしないとまずい……)ビリッ
勇者「・・・えっ」
勇者(傷なんてどこにもない……)
勇者(……今のって、一体…)
勇者(………)
勇者(帰ろう、疲れてるのかも)
勇者「……っ」ピタリ
勇者(そう言えば、あの子がぼくの隣で居るようになって感じた事があった)
勇者(あの子の近くにいると……疲れが癒えて行くんだ)
勇者(心も、体も、何かに満たされていくような………)
勇者「…ただいま」
「おかえり!」パタパタ
勇者「うん、何かあった? 嬉しそう」
「ううん、今日も勇者が帰って来てくれたから」
勇者「そっか」
「あのね、今日は商店街で珍しいニューヨクザイっていう……」
ムギュッ
「………!!」ビクッ
勇者「……」ギュゥゥ
「ゆ、ゆうしゃ……?」
勇者「……これが幻でないなら」
勇者「君が本当にぼくの腕に抱かれてるなら」
勇者「今までの君が本物なら・・・」
勇者「どうか応えて欲しい」
「……」
勇者「ぼくに君の名前を呼ばせて欲しい……君の名前を教えて欲しい……」
勇者「もっと君の近くに、一緒に居たいんだ」
「・・・っ」
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