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元スレ勇者「もうがんばりたくない」
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騎士「『青年』を連れて参りました、国王」ザッ!
国王「御苦労」
勇者(……な、なんだ? この状況)
ジャラッ
勇者「この手枷…外して貰えますか」
騎士「駄目だ」
勇者(まるで犯罪者扱い……)
国王「青年よ、そなたにはこのワシから話があって呼び出したのだ」
勇者「……国王陛下が私のような職にもついていない若僧にどの様なお話しが?」
国王「ふむ、実はな」
国王「 そなたは選ばれし勇者だと神託があったのだ 」
勇者「………え?」
国王 「魔物共の脅威に晒されている我が国をどうか救ってほしい、勇者よ!!」
勇者「な……………な、………」
勇者(なに……これ、昨日が書記官試験日ならぼくが勇者になるのはまだ2年は先のはず)
勇者(何故いま勇者に……!?)
国王「勇者よ、引き受けてくれるな?」
勇者「ぁ…………」
勇者(……………)
勇者「……」
騎士「フン、明日再び城まで来い」
騎士「改めて貴様の使命を確認させるのと、国王から資金が与えられる」
勇者「100Gぽっちの資金でしょう」
騎士「…貴様、切り捨てられたいか」
勇者「・・・」
「いたいた、勇者おかえりなさい」
騎士「っ、ち……命拾いしたな」ボソッ
勇者「では改めてまた明日」
騎士「フン……」ザッザッ
「今の人は?」
勇者「……騎士団長だよ」
「偉そうだったね、勇者の方が凄いのに」
勇者「どうかな、ぼくなんて………」
勇者「……」
『 「勇者は殺人鬼だー!!」』
『「国王はお前たちを切り捨てた、新たな勇者も見つかったそうだし な」』
『 「話は終わりだ、ここでお前達には死んでもらう」 』
勇者「・・・」
勇者(何一つ、報われない)
「……」
「おめでとー勇者っ、明日から頑張らなきゃね」
勇者「……ありがとう」
「えへへ」
「勇者、今夜泊まる所ないでしょ」
勇者「え……うん」
「噴水広場に行こう? 泊めてくれる親切な人がいるかも」
勇者「??」
ウェイトレス「……」
ウェイトレス(アタシが……アタシが……)
ウェイトレス(親には何て言えば良いのかな)
ウェイトレス(・・・)
勇者「誰もいないよ、もう日が暮れて来たしね」
「えー?」
勇者「どうしようかな」
「ね、あの人は?」
ウェイトレス「………」ウーン
勇者「えーと、すいません」
ウェイトレス「はい!?」ビクッ
勇者「わっ……あの、この辺りで一泊させてもらえる場所ってあるかな」
ウェイトレス「一泊? ……宿屋があるわよ」
勇者「お金なくて…」
「勇者、警戒されてない?」
ウェイトレス「お金ないなら諦めた方がいいわ、余程親切な人でないと」
勇者「ですよね、すいません」
「元気出して勇者、仕方ないよ」
勇者「ああ、うん……撫でなくていいから」
ウェイトレス(……えっ)
ウェイトレス(『勇者』?)
ウェイトレス「ちょっと待って、勇者って…明日正式な任命を受ける勇者よね!」
勇者「? そうだよ」
ウェイトレス「……本物の勇者様ですね?」ボソッ
勇者「・・・」
勇者(この子、まさか)
女戦士『がんばり屋だなぁ…おまえ』
ウェイトレス「?」
勇者「女……戦士」
ウェイトレス「! 騎士様から私の話が伝わってたんですね!!」
勇者「じゃあやっぱり君が女戦士さん!?」
ウェイトレス「は、初めまして勇者様! 今夜泊まる所が無いなら私の家に来てください!!」
勇者「・・・」
「ほら、ね」クスクス
ウェイトレス「スゥ・・・スゥ・・・」
勇者「……」
「寝ちゃったね」
勇者「楽しそうだったしね、きっと色々想像したら疲れちゃったんだよ」
パサッ
勇者(お休みなさい、女戦士さん……)
勇者「……っ」ポロポロ
「………」
「泣いていいと思うよ、勇者にとって大切な人だったもんね」ボソッ
翌日
国王「これより任命式を行う」
騎士「勇者とその使命に付き従う者達は前へ」
ザンッ!!
勇者「……」
僧侶(ゆ、勇者様ってこの間の……!?)
女戦士(こ、この防具何でこんなに露出してるのよ……!!)
国王「王としてそなた達に与える権限は・・・」
勇者(やっぱり話が長いなぁ)
勇者(……)
勇者「王様」
国王「……何か」
勇者「何故に彼女達も同行させる必要があるのですか」
国王「それについては今から言おうと思っていたのだ」
騎士「勇者、貴様がやるのは魔物狩り……つまりモンスターハンターになる事だ」
勇者「…!」
勇者(モンスターハンター? どういう事だ)
国王「近年我が王国の周辺や内部では多数の魔物が増えている」
国王「今回そなたは勇者を名乗り、我が王国の秩序を守る為に戦い続けるのだ」
騎士「薄汚い魔物共の親玉も探し出して……な」
勇者(・・・)
勇者「王様、私には仲間という存在は不要です」
僧侶(!)
女戦士(え…)
国王「……勇者よ、まだそなたは未熟だ」
国王「今のそなたでは騎士団長にも敵うまい」
騎士「全くですな」
国王「そなた一人では魔物に太刀打ち出来ぬ、その者達がいるだけでもマシになろう」
勇者「彼女達は貴方の兵士でも駒でもないッ!!」
国王「!?」ビクッ
勇者「僧侶さんは今まで孤児だった自分を拾ってくれた教会で、沢山の人を自分のように困っていれば救いたい」
勇者「そんな想いで誠実に優しく生きて来たんだ!!」
勇者「女戦士さんもだ! 彼女は貧しい暮らしをしている両親の為に必死で働いていた!」
勇者「それが、ぼくのような人間の為に両親への仕送りを止めるなんて間違ってる!!」
騎士「口が過ぎるぞ小僧ッ!! 国王に謝罪せよ!!」
勇者「断る」
騎士「貴様……国王、抜刀の許可を!!」
国王「落ち着け騎士団長、相手は若い未熟者だぞ?」
国王「勇者よ、今ならば若さゆえの過ちと見逃そう……だが尚の事撤回せぬというのならば」
国王「騎士団長、ここはそなたの実力を見せてやれ」
騎士「御意に」ザッ!
勇者「……」
勇者(これが……本質)
勇者(これが………ぼくがあの日勇者として忠誠を誓ったら人間、がんばる意味の象徴)
ヒュッ……ガツンッッ!!
勇者「……」スタッ!
騎士「ッ……!?」ドサッ
国王「…………?」
勇者「王様、騎士団長など私が瀕死時でない限りは敵にすらなりません」
国王「ば、馬鹿な・・・」
勇者「彼女達は私には必要ない、彼女達を巻き込む必要なんてない」
勇者「……勇者は一人で戦っていれば誰も傷つかなくて良いのです」
僧侶(勇者様……なんて誠実な方なんでしょう)
女戦士(……)
国王「……」
国王「良かろう、ではそなた一人でこれからも頼んだぞ」
国王「期待させてもらおう」
勇者「ありがとうございます」ザッ
勇者「……はぁ」
「おかえりなさい勇者」
勇者「え、待ってたの?」
「うん」
「!」
女戦士「勇者様……」
勇者「……」
(私はお邪魔かな)ソソッ
女戦士「どうして……ですか、昨夜はあんなに楽しそうな冒険の話をしたのに」
勇者「6年だからだよ」
女戦士「6年…?」
勇者「そう、6年」
勇者「6年間という長い旅で楽しかった思い出は、あれしかないんだよ」
女戦士「…………」
勇者「僕は今……『本来は』24になる、それでも昨日話したのが楽しい冒険譚の全てなんだよ?」
女戦士「何を言っているのか、わからないです……」
勇者「君は必ず死ぬ、そう言ってるんだ」
女戦士「っ!!」ビクッ
勇者「僕は君一人守れない、絶対に」
女戦士「あんなに、あんなに強いのに……?」
勇者「そうだよ」
勇者「僕は回復魔法が使えない、もしも君が毒に侵されても僕は見ている事しか出来ない」
女戦士「だったら絶対に私は毒に侵されたりしません!!」
勇者「なら君はメデューサの石化で死ぬ、エルフの幻覚魔法で死ぬ、魔王の配下に殺される!!」
勇者「ぼくにはもう二度と君を守る気力は無い!! 大切な人が死ぬ姿から目をそらしてがんばる事なんて出来ない!!」
勇者「君はもう忘れろよ!! 日常に戻って平凡で幸せな毎日を作れよ!!」
女戦士「ひ……」ビクッ
勇者「もうがんばりたくないんだよぼくは!!」
女戦士「……っ」ビクビク
女戦士「……ごめんなさい」ボソッ
タタッ!
勇者「…」
勇者「………」
ガサゴソ
勇者「…」
勇者(僧侶と女戦士さん……三人の絵)
「がんばったねぇ勇者」
勇者「!」
「お疲れ様、帰ろう?」
勇者「…帰る?」
「うん、帰ろ」
宿屋
勇者「……」
「当分はここで良いんじゃないかな」
勇者「5日しかもたないと思う」
「一部屋10Gだよ? 十日もあれば直ぐに勇者にお金一杯はいるよ!」
勇者「……君も同じベッドで寝る気?」
「うん」
勇者「…」
「……」
「………」ニコリ
勇者「……」
勇者(…何でだろう、この子)
勇者(ぼくと同じ……同じ目をしてる)
数日後
リザードマン【 …… 】
ドサッ
勇者「……」スタッ!
勇者(これで西城下町周辺の魔物は最後)
勇者(数は大したことはない、でも……数日前の早すぎる勇者任命の時と同じで『おかしい』)
勇者(リザードマンは魔王城に仕える、言わばドラゴン族の精鋭だ)
勇者(そんな大物がこんな城下町周辺を襲ってるなんて……)
勇者(この世界はぼくのいた世界とは違う世界なのか?)
町長「も、もう魔物を退治されたのですか!?」
勇者「リザードマンが首領の魔物集団も活動を止めるでしょう」
町長「素晴らしい……流石は神託の勇者様ですなぁ」
町長「どうぞ、今回の謝礼金です」
ジャラッ
勇者「……町長さん」
勇者「ぼくは200Gあれば充分です……お金よりぼくは」
町長「感謝の気持ちならあるよ、君の奥さんからは話を聞いた」
勇者「すいませんその奥さんの特徴を教えて下さい」
勇者「君ね……」
「?」
勇者「ぼくの奥さんだって言った上に泣いたでしょ」
「うん」
勇者「町長さんが同情して700Gくれた」
「凄い凄い! 強い魔物が出たの!?」
勇者「分かるの?」
「国王は勇者が倒した魔物に比例して報酬を払うように呼び掛けまわってるんだと思う」
勇者「……」
「勇者は優しいから、お金いらないって言うとも思ってた」
「だからちょっと泣いてみたの」
「それじゃ今日の夕御飯の材料買ってくるねー!」
勇者「……気をつけてね」
勇者(あの子、初めて会った時からそろそろ一週間だけど)
勇者(日を重ねる毎にぼくになついてる気がする)
勇者「……」
勇者(疑いたくはない、でもあの子はあまりにも……ぼくに従順というか優し過ぎる)
勇者(………)
更に数日後
勇者「……」
勇者(いよいよ半月になるけど、決定的にぼくの世界と違う点が見つかった)ガサゴソ
勇者(この世界には…『この国しか存在していない』ということ)
勇者(その代わりにぼくのいた世界の王国よりも領土も城下町の広さも、想像を絶するものだ)
勇者(以前ならば少し離れた位置に存在した村や町も『南城下町』、『北西城下町』という風になってる)
勇者(……ここは、どこなんだろう)
勇者(一体ぼくはどこに来てしまったんだろう)
勇者「……と」パタン
「勇者、南南西の城下町の町長さんが勇者に討伐依頼だって」
勇者「今行くよ」
南町長「おお、あなたが勇者様ですかな」
勇者「!?」
勇者「あなたは……」
『 「どうかこの村を救って下され!」 』
『 「勇者様はお急ぎの旅をしているのでしょう? 早く旅立ってはいか がか」 』
勇者(あの時の村長……ッ)
南町長「早速ですが頼みたい、小さな区画である私の町に何度も荒らしに来るスライムがおりまして……」
勇者「受けましょう、その依頼」
南町長「なんと、本当ですかな!」
勇者「ただし条件があります」
勇者「報酬は要りません」
「報酬、いらなかったの?」
勇者「いらない」
「そっか、まあスライムだしね」
勇者「普通の人間からしたらスライムだって恐ろしい魔物だよ」
「スライムは涙を象徴した精霊なんだよ? 怖くないのに」
勇者「精霊?」
「うん、スライムは一粒の涙から生まれた原初にして最古の魔物なんだからね」
勇者「よく知ってるね」
「歴史に詳しいの」
勇者「……じゃあスライムが人間になつく事ってあるのかな」
「なつかないよ」
勇者「えっ? なつかないの?」
「スライム達には共通して基準があるの、他者を『敵』かもしくは……」
勇者「もしくは味方?」
「『大切な家族』、って認める事」
勇者「……」
王国から東の森
勇者「……」ザッザッ
勇者(そろそろスライムが出るはず)ピタッ
勇者「・・・」
勇者「・・・」
勇者「・・・」
勇者「……そこッ」
ヒュッ!!
ガゴンッッ!!
ゴーレム【 …!? 】バラバラ
勇者「ゴーレム……? 何故四天王直属の配下がここに!?」ヒュッ!!
ガガガガ!!
ゴシャァアッッ・・・
勇者「ふっ……!」ザッ!
勇者(あの後さらにゴーレムが四体…)
勇者(……この森、どうやらぼくが知る森とは違うみたいだ)
勇者(あのスライム娘がぼくになついたきっかけを考えるなら…急いだ方が良いかもしれない)
『勇者様、このスライム怪我を……!』
『何があったのかな』
『さぁ……』
『……この傷、転んだ訳じゃないみたいだぜ勇者』
『じゃあ、誰が?』
『この森を仕切ってる主……つまりアタシ達にとっては、 バ ケ モ ノ に値するヤツだな』
スライム娘『なぜ、なぜです……! 私達は貴方のために人間の国に侵入までしたのにっ』
スライム娘B『い、痛いよ…痛いよお姉ちゃん』
「黙りなさいな」バリィッ!!
バヂバヂィッ!!
スライム娘B『ぅあ''あ '' あ ''っッ!! 』
スライム娘『や、やめて! やめてぇ!!』
「身の程知らずが、この私に謀反の気を起こしたのが間違いよ」
スライム娘『しらない! 私達は貴方達に敵対するつもりなんて……』
「あら? じゃあ教えて貰おうかしら、一体誰が私の配下を燃やしたのかしら」
スライム娘『知らない!! お願いだから妹をこれ以上苦しめないで!!』
スライム娘B『お……お姉ちゃん』
スライム娘『お願いだから、お願いだから……っ』
勇者「……」ザッ!
「!?」
ヒュッ!!
ズバンッ!
バヂバヂィッ!!
「……なに、今の? もう少しで死んでたわぁ」
勇者「……」
勇者(この『女』……【魔王】にそっくりだ)
女魔王「アンタ、何者? 良い度胸してるわね」バリィッ
勇者「……雷が本体か」
女魔王「そうよ、だからどうするのかしら人間」
勇者(……)チラッ
スライム娘「……っ」
スライム娘B「…っ……」
勇者「…………私がお前の相手をしてやる」
女魔王「アンタがこの私の相手?」
女魔王「ハッ! 身の程知らずが、よっぽど死にたいようねッ!!」 バリバリィッッッ
バヂバヂィッ!!
ヒュッ
勇者「……」ザッ!
女魔王(なっ……雷を避けた!?)
女魔王「なら放電で!!」バジィンッッ
勇者「……」ヒュヒュッ
ゴガガッッ
女魔王「ぐぁァッ!!」ドゴォ
女魔王(う、嘘……なぜ私に物理攻撃が……)
勇者「・・・」チャキッ
女魔王「待っ……」
スパッ
ゴトンッ
勇者「……」
勇者(四天王よりも遥かに弱かった……ならゴーレム達はなんで居た?)
勇者(……それよりも今はスライム達が先か)
スライム娘「……!」バッ
勇者「?」
スライム娘「・・・!」パクパク
『こ な い で』
勇者「大丈夫だよ、そっちのスライムの傷を手当てするだけだから」
スライム娘「?」
勇者「……だめかな」
スライム娘「……」
スライム娘B「??!」ダキッ
スライム娘「! っ♪」ギュッ
勇者「・・・」
勇者(この娘、妹か娘がいたんだ)
勇者(でもぼくが知ってるスライムはあの時………)
勇者(……一人だったのは、ぼくがこの娘達を見つけるのが遅かったから?)
スライム娘「…」トントン
勇者「え?」
スライム娘「……っ」パクパク
『あ り が と う』
勇者「……」
勇者「もう町に近づいたらダメだよ」
スライム娘「……」コクンコクン
・・・
「それで、どうしたの」
勇者「どうもしないよ、そこでお別れしてきた」
「そうなんだ」
勇者「あ、でも」ガサゴソ
「?」
勇者「小さいスライムの娘がくれたんだよ、このピンク色のガラス玉」
「……ふーん」
勇者「何だろうこれ、ちょっと温かいんだよ」
「勇者の胸に押し当ててみて」
勇者「これを?」
「うん、そうしたら分かるから」
勇者「・・・」ギュッ
ポワンッ
勇者「!!」
勇者「は、入っちゃったけど……」
「やっぱりね」
「それ、その小さいスライムの『心』だよ」
勇者「ココロ……?」
「スライムが本当に信頼する相手にだけ渡す、何て言うか……通訳?」
「とにかくこれで勇者はスライム達が何を言っているか全部分かるよ」
勇者「……」
勇者(あったかい……)
「じゃ、勇者が雷を使う女魔王からスライムを助けた記念にパーッとご馳走にしますか!」
勇者「ほどほどにね」
「はいはいっ」タッ
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