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    元スレ巫女「来たれ!異界の勇者よ!」

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    201 : 創る名無しに見る - 2012/05/11(金) 00:40:12.57 ID:OXIsj4HD.net (+33,+30,+0)

     ◆◇◆◇ ファラオ王のピラミッド:2F ◆◇◆◇

     テンションの高い国王に連れられて、マオ達はピラミッドを
    捜索し続ける。
     通路の奥にいかにも何かがあると言わんばかりの、
    分厚い岩の扉があったものの。
     壁にあった、小さいボタンを押すと重い音を立てて開く。

     部屋の中央には装飾された宝箱があり、
    宝箱を開いてみると、その中には。

    マオ「鍵?」

    カンダタ「まっ……魔法の鍵じゃねぇか!」

    国王「話には聞いた事があるの…
       呪文で施錠された扉を無条件で開く事が
       出来る、古代のマジックアイテムじゃ」

    マオ「なんだかよーわからんけど、凄いモノだっつーなら
       貰っていくか」

     無造作に鍵を手に取り、道具袋の中に放り込むマオ。

    カンダタ「おめぇよぅ…そいつがどれだけすげぇもんか
         全然わかっちゃいねぇだろ
         いいか?そいつはな…世界中の盗賊が──…」

     語り始めたカンダタはひとまずスルーして置く事にする。

    マオ「で?
       黄金の爪とやらはここは無いのか?」

    202 : 創る名無しに見る - 2012/05/11(金) 00:40:49.85 ID:OXIsj4HD.net (+33,+30,+0)
    国王「ここは墓室じゃないようだしのぅ
       古文書には財宝は王の遺体と共に墓室に
       埋められたと記されておるが」

    マオ「その墓室はどこにあるんだよ」

    国王「分かれば、とっくに誰かがみつけだしておるわい」

    カンダタ「なぁ、帰ろうぜ?
         この鍵一つが見つかれば十分だろ?」

    国王「いーや、ここまで来て引き下がれるかい!
       行くぞ!お主ら!」

    マオ「やれやれ…」

    カンダタ「とほほ…」

     さらにピラミッドを捜索し続け、だから箱を幾つか
    見つけるも国王の満足する宝は見つからなかった。
     すでに外は日も暮れ、マオ達の装備も心許なくなって来たが、
    目的の墓室は見つからなかった。
     すでに時間にして10時間ぐらいピラミッドの中を捜索している
    事になる。

    マオ「…ここら辺でタイムアウトだな」

    国王「いやじゃ!ワシはまだ探す!
       元手がかかっているんじゃから、まだ探す!」

    カンダタ「おっさんよ、ミイラ取りがミイラになるって
       言葉を知ってるか?」

    国王「知っているが、それがどうした!
       このまま帰るくらいならミイラになった方がマシ…
       うわぁぁぁぁぁぁぁああぁぁっ!?」

    プックル「きゃわぁん!」

     突如、歩いていた通路の床に穴が空いて、
    国王と国王の横を歩いていたプックルが穴の中に
    落ちてゆく。

    203 : 創る名無しに見る - 2012/05/11(金) 01:25:18.30 ID:OXIsj4HD.net (+30,+30,-295)

    マオ「………国王!プックル!」

    カンダタ「あのバカ!」

     マオとカンダタは穴を覗き込むが、穴はそう深くもなく
    国王達は下のフロアに落ちただけのようだ。

    国王「うおっ!?新しいフロアに出たぞ?」

    マオ「無事か!?」

    国王「少し足を捻挫したくらいじゃ、
       それよりもお主達も降りて来てくれ、
       ランプが壊れてしもうた」

    カンダタ「仕方ねぇな、あのクソジジイは
         ちょっと行ってくら」

     文句を言いながらもロープを取り出して柱に括り付け、
    カンダタは手慣れた感じで落とし穴の下のフロアへと降りて行く。

     ややあって、落とし穴の下からカンダタの声が聞こえる。

    カンダタ「OKだマオ、降りて来てくれ
         このフロアは外にも繋がっているみてぇだ」

    204 : 創る名無しに見る - 2012/05/11(金) 01:25:48.30 ID:OXIsj4HD.net (+33,+30,+0)

     ◆◇◆◇ 地下一階 ◆◇◆◇

     ロープを伝ってピラミッドの地下に降りると、そこには
    大量の人間の屍が打ち捨てられていた。
     色々な装備品を見る限り、侵入者達のなれの果てのようだ
    立派な鎧を来た冒険者から、盗掘へとやってきた盗賊…
    国王と同じような商人の姿まであった。

     その全てに共通しているのが…。

    マオ「体中がバラバラだな…
       モンスターにでもやられたのか?」

    カンダタ「みてぇだな…
        あーあ、こんな無残な姿になっちまってよう
        うげぇ…ひでぇ臭いだ」

     マオは慣れたものだが、カンダタや国王達にとって、
    打ち捨てられた屍達の死臭に顔を歪め、口に布を押し当てる。

    国王「お主…よく平気じゃの…」

     顔色一つかえないマオに国王が言うが、マオにとっては
    死臭の一つや二つは全然大したことは無い、むしろもっと酷い臭いを
    放つモンスターが部下だった事もある。

    プックル「ガウ!!」

    マオ「隠し階段………のようだな。」

    国王「でかしたわい!プックル!」

     全然懲りない国王はプックルが見つけ出した隠し階段を
    降りて、止める間も無く奥へと進んでいく。

    205 : 創る名無しに見る - 2012/05/13(日) 02:22:35.61 ID:ijN2DfVK.net (+35,+30,+0)

    カンダタ「おい!待て!テメェ
         また罠があったらどうするんでぇ!」

     慌ててカンダタが国王を追いかけ、マオとプックルもそれに
    続く。
     隠し階段の奥は豪華な装飾が施された部屋に通じており…
    その中央には大きな古い石棺が置いてあった…。

    国王「これじゃーっ!!」

    カンダタ「……すっげー!……マジかよ…
         これが、ファラオ王の棺か…!?」

     さしものカンダタも驚きを隠せないようで、
    国王と協力して石棺の蓋を押し退ける。
     棺の中には黄金のマスクを被ったミイラが横たわっており、
    金や宝石が散りばめられた装飾品も共に納められていた。、

     そしてその左手に装着されているのが。

    マオ「これが…黄金の爪って奴か?」

    国王「ひゃっほぅ!
       見つけた!黄金の爪じゃぁ!」

     国王が嬉々として、装飾品を外して袋に詰め
    黄金の爪をミイラから外すと…。

     ───黄金の爪を奪う者に災いを───。

     何者かの声が響いたような気がした。

    206 : 創る名無しに見る - 2012/05/13(日) 02:23:04.84 ID:ijN2DfVK.net (+35,+30,-291)
    カンダタ「……お…おい…今…
         何か聞こえたか!?」

    国王「んー…なんじゃぁ?」

     怯えるカンダタに国王は何も聞こえなかったのか
    袋に財宝を詰め込み続ける。

    プックル「フゥウウー!!」

    マオ「…囲まれているか…」

     プックルがいち早く気が付き、マオは剣を
    抜き放つ…。
     辺りに広がっていく魔物の気配…
    通路の奥から、ミイラ男やマミー、大王ガマ達
    といった膨大な魔物の大群がゾロゾロ現れる…。

     ピラミッド中の魔物全てが押し寄せてきたのかも
    しれない。

    カンダタ「戻せ!早く!」

    国王「いやじゃ!いやじゃ!
       苦労して手に入れたんじゃ」

    カンダタ「命あっての物だねだろうが!」

     カンダタは国王から黄金の爪を奪い取り、
    棺の中に戻すが…

    207 : 創る名無しに見る - 2012/05/13(日) 02:27:09.38 ID:ijN2DfVK.net (+35,+30,+0)

    マオ「どうやら…許してくれる気は無いみたいだな」

     集まったモンスター達は散る様子も無く

     ───黄金の爪を奪う者に災いを───。

     ───黄金の爪を奪う者に災いを───。

     ミイラ男やマミー達は口ぐちにつぶやき、
    間合いを詰めて来る…。

    プックル「ガウ!」

     先に動いたのはプックルだった…
    近くに居たミイラ男の頭をかみ砕き、吐きだす。

    カンダタ「おめぇ…良くもまぁ
         そんなモノを食う気になるな」

     呆れつつもカンダタは鉄の斧を大王ガマに
    叩き付ける。

    マオ「隠し通路の外にあった大量の屍は
       この黄金の爪を盗掘に来てこいつらにやれたって事か」

    カンダタ「上等だ!テメェらまとめて
       地獄に叩き落してやらぁ!使え!プックル!」

     カンダタはプックルに棺から再度取り出した
    黄金の爪を放り投げると、プックルは空中右手に装着し、
    ミイラ男を叩き斬る!

     普通に考えれば黄金なんかで斬り付ければ、
    黄金はひしゃげてしまうのだろうが、黄金の爪は物凄い強度なのか
    傷付く様子は全くなかった。

    マオ「行くぞ!こいつらを叩き潰して
       突破する!」

    208 : 創る名無しに見る - 2012/05/13(日) 02:31:17.71 ID:Xr/rxkjF.net (+25,+27,-6)
    保守
    がんばって1000いってくれ
    応援してる
    209 : 創る名無しに見る - 2012/05/13(日) 02:35:57.71 ID:ijN2DfVK.net (+37,+30,-107)
    やっと夜勤が終わって、書けるようになった

    >>1000まで投下するつもりでって事だけど、
    ここまでつなげて書くと
    逆に頭から読もうって人も居なくなるのでは?って思う。
    もう、ここらで結末に向けて収束しちまおうかな、
    下手に長く続けると、読み手も飽きるだろうし、

    他のスレ主様達は話の展開とか読み手に飽きさせずに
    >>1000までやっているんだろうか、そう考えると
    皆の技量ってすげぇんだなぁ。

    今日はここまでで。
    210 : 創る名無しに見る - 2012/05/13(日) 10:02:23.74 ID:ybjqxyrZ.net (+13,+23,-2)
    楽しみにしてる!
    211 : 創る名無しに見る - 2012/05/13(日) 10:53:48.82 ID:Xr/rxkjF.net (+17,+29,-1)
    まってるおっお
    212 : 創る名無しに見る - 2012/05/13(日) 12:16:14.37 ID:ijN2DfVK.net (+35,+30,+0)

     そう言ってくれる人が居るなら
    頑張るのよ。

    //---------------------------------------------

     ◆◇◆◇ 地下一階(数時間後) ◆◇◆◇

     戦って、何時間ほど過ぎたのだろうか、
    いまだピラミッドの地下でずっと戦っているから
    時間の感覚が鈍っている。

    カンダタ「往生しやがれぇ!」

    マオ「このっ!」

     マオとカンダタの武器が交互に火炎ムカデを斬り落とす
    すでに手の感覚が無くなってきた。
     それに加えて──────。

    マオ「……つっ!」

     足が痛み、マオはその場にうずくまる、
    普段ならこの程度はホイミで治せるのだが。

    国王「足を痛めたのか、これを使えぃ」

    マオ「助かる」

     マオは国王が差し出した薬草をすり潰して足に
    貼り付けると、痛みが引く。

    マオ「厄介なのはこのフロアだ…どういう作りだか
       呪文が使えない」

     呪文が使えれば、一網打尽に出来るのだろうが、
    いや…それ以前にリレミトの呪文で瞬時に脱出できるのだろうが
    何度呪文を唱えても効果は全くなかった。
    213 : 創る名無しに見る - 2012/05/13(日) 12:17:00.54 ID:ijN2DfVK.net (+35,+30,+0)

    カンダタ「逃がさねぇってコトだろ…
       にしても、大した爪だぜあれ…
       これだけ戦っているのに刃こぼれ一つしてねぇ」

     カンダタは前線で暴れているプックルをみて関心する、
    すでにカンダタの鉄の斧は刃がボロボロだ。
     さて…いつまでもプックルだけに戦わせている訳にはいかない。

    マオ「交代だ!プックル」

    プックル「わう!」

     マオがプックルと代って前衛に立ち、カンダタがそのバックアップ
    プックルが受けた傷を国王が治療する。
     何時間もぶっ通しでずっと戦っていると、自然と役割分担も
    できるようになってくる…。

     ───黄金の爪を奪う者に災いを───。

     ───黄金の爪を奪う者に災いを───。

    カンダタ「ったくよ…何時間もまぁ
         飽きもせずに…働き者たぜ、俺達も」

    マオ「死してなお、大した忠誠心だよ
       お前達は…」

     ◆◇◆◇ 地下一階(さらに数時間後) ◆◇◆◇

     無限に湧き出してくる魔物達を押し退け、
    どれだけの数を倒したのだろうか…。
     ふと…背後を見ると膨大な魔物の死骸が転がっていた。

    カンダタ「…この建物のどこに、
         こんだけの魔物が住んでいたんだろうな」

    214 : 創る名無しに見る - 2012/05/13(日) 12:17:47.79 ID:ijN2DfVK.net (+35,+30,+0)
    国王「……………………」

    マオ「……………………」

    プックル「……………………」

     眠気と疲労で誰もカンダタの声に応える者は居ない、
    ただ黙々と魔物と戦っていた。

     ふと…魔物の奥に光が見えた気がした…。
    魔物の隙間から差し込む自然の明かりは。

    マオ「……外か!?」

     一向の魔物を倒すペースが上がり、カンダタの拳が
    最後のマミーを殴り飛ばすと。

    国王「外じゃぁっ!」

    カンダタ「…走れ!お前ら!」

    マオ「わかっているっ!」

     ピラミッドを抜け出し、外へ向かって全力で走り出す、
    残った魔物達が追いかけてくるかとおもったが…、ピラミッドから
    数メートル出た所で魔物達の足が止まる。

    カンダタ「追って…こねぇのか?」

    国王「みたいだな、連中にはピラミッドを
       盗掘者から守る使命があるみたいじゃな」

    マオ「さすがに…疲れた…
       もう体が動かん…」

    215 : 創る名無しに見る - 2012/05/14(月) 04:08:57.99 ID:KPYC2g0F.net (-28,-29,-5)
    更新乙!
    続きまってるお(^-^)/
    216 : 創る名無しに見る - 2012/05/14(月) 12:47:44.33 ID:6Rf/hlr9.net (+28,+29,-16)
    乙です、楽しみにしてるけど自分のペースで頑張って!
    217 : 創る名無しに見る - 2012/05/14(月) 23:05:53.38 ID:DXRDaAZp.net (+35,+30,+0)
    >>215>>216
    ありがとう、平日仕事だからペースがバラバラだけど
    出来る限り頑張ってみるお
    //---------------------------------------------
     マオは砂の上に大の字になって転がり、プックルがその横に
    座り込む。
     昼なら砂漠の砂で火傷してしまったかもしれないが、
    すでに早朝…。

    国王「朝までずっと、戦っておったのか」

    カンダタ「……は…ははははは…。」

     しばらく…各自が砂の上で倒れていると
    イシスの方向から馬車がやってくる…。

    国王「あれは…イシス軍の馬車かの」

     やがて…馬車はマオ達の前で止まり、
    見覚えのあるイシス兵達が降りてくる。

    兵士A「マオどの!ご無事でしたか?」

    マオ「イシスの兵…一体どうして」

    兵士B「ピラミッドに向かって3日…
        女王陛下の命令で探しに来たんです」

    カンダタ「……悪ぃな…助かったぜ
         正直なんとか外に出れたけど…もう動けねぇ…」

    兵士A「マオ殿達を保護しろ!」

    兵士C「ハッ!」

     イシス兵の命令の元、マオ達を馬車の中に回収して行く。

    218 : 創る名無しに見る - 2012/05/14(月) 23:08:37.18 ID:DXRDaAZp.net (+33,+30,+0)

    カンダタ「……ったく…ひどい目にあったぜ…
         この馬鹿のせいで。」

     カンダタは馬車の中で倒れていた国王に、
    ボロボロになった鉄の斧の柄で頭を叩く。

    国王「痛い!なにをするんじゃ!」

    カンダタ「るっせー!、一体だれのせいで
         俺達がこんな目に…………」

    プックル「グルルルルルル…………!」

     抗議する国王に、カンダタが声を荒げようとした
    その時、プックルが馬車の外…砂漠に向けて唸り声を上げる。

    マオ「どうした?プックル…」

    カンダタ「おいおい…止めてくれよな
       お前さんのそれが出ると、ロクな事がねぇんだからよ」

     カンダタが嫌そうに愚痴を吐くと同時に。

     ギシッ!!

     空間が軋むような嫌な音が辺りに響く。

    マオ「これ…は?」

     マオが重い腰を上げて馬車の外を見ると、
    砂漠の上に…まるで別空間を切り取られたかのような
    黒い闇が浮かんでいた…。

    兵士A「な!なんだ!」

    兵士B「どうしたんだ…突然!」

    219 : 創る名無しに見る - 2012/05/14(月) 23:09:21.54 ID:DXRDaAZp.net (+35,+30,+0)

     状況の分からないイシス兵達は右往左往と混乱する。
    黒い闇は赤い電気を放電し続け…、やがて闇の中から
    赤く丸太のような太い腕が付き出して来る…。

     まずは…右腕、そして…左腕。

     何者かが出てこようとしているのは明白だった。


    マオ「下がれ!早く馬車に乗れ!」

     マオは兵達に叫び、兵達は大慌てで馬車に乗り込み
    マオは代りに剣を持って馬車から飛び出す。

     やがて…赤い顔に青い髪と青い髭を蓄え、
    頭に二本のヤギのような角をもった顔が出て来る。


    国王「……なんなんじゃ!あやつは…」

    カンダタ「わかんねぇ…
         だが、ヤバそうなのは分かるぜ」

    マオ「………………アンクルホーン…。」

     アンクルホーンはマオの姿を確認すると、ニヤリと
    不敵な笑みを浮かべる。

     やはり確定だ…異世界からこの世界に魔物が送り込まれている、
    キラーマシンもプックルも、キングスライムも…
    そして、このアンクルホーンも。

    アンクル「…ウォオオオヲヲヲヲヲヲヲ!!!」

     空に向かって吠えると、アンクルホーンはマオを敵とみなしたのか、
    丸太のように太い腕を振り下ろして来る!
     マオは腕を躱して飛び退こうとするが、体が重くて反応が
    遅れる。

    220 : 創る名無しに見る - 2012/05/14(月) 23:10:07.94 ID:DXRDaAZp.net (+35,+30,+0)

    マオ「……くっ!」

     回避は無理と判断し、ガードしようとするが、
    アンクルホーンの腕が届く直前にプックルが横切り…
    マオの鎧を咥えて飛び退く。

    マオ「すまない、プックル
       助かった」

    プックル「ガウ!」

     プックルは当然とばかりに吠え、自分の背中に乗れとばかりに
    腰を下ろす。

     疲労で足が動かず、さらに砂漠の砂で動きが鈍る以上
    言葉に甘えた方がよさそうだ。

     プックルの背中に乗り、剣を構えようとするが…背中の上からじゃ
    剣の間合いを掴む事が出来ない。

    国王「これを使えぃ!」

     国王は自らが使っていたホーリーランスを馬車から外に投げ、
    ランスが砂漠の砂の上に上手くささる…。
     マオは剣を収めてホーリーランスを手に取り、正面に構える。

    マオ「……騎兵戦、一度もやった事ないけど
       プックル!準備は良いか?」

    プックル「ガウ!」

    マオ「行くぞ!突撃!」

     掛け声と同時にプックルは砂漠の砂を蹴り、物凄いスピードで
    アンクルホーンに突進する。

    221 : 創る名無しに見る - 2012/05/14(月) 23:27:03.34 ID:DXRDaAZp.net (+35,+30,+0)

     プックルに乗ってアンクルホーンと戦うマオを見て、
    カンダタは苛立ちを感じていた。

    カンダタ「くそったれ!
         また俺は何もできねぇのかよ!!」

     カンダタの拳が馬車の床に叩き付けられ、馬車が
    揺れる…。

     プックルと戦った時も、マオは一人で戦ったようなものだ
    巫女の時に至っては、気の圧されて体を動かす事すら出来なかった。
     マオのようにキラーマシンを動かして戦う事も出来ない、
    国王のように財力からマオの旅をフォローする事も出来ない。

     イシスでの巫女との戦いの時は、目の前でマオが無残に殺される
    瞬間を見せつけられた、国王の商才と財力から奇跡的にも
    世界樹の葉を入手したおかげで、なんとか生き返る事は出来たが
    国王の財力が無かったら、マオは今頃墓の下の埋められていただろう。

     旅をするには資金が必要だ、今回の国王が無茶苦茶やっているように見えて、
    それもまた、マオの旅の為になる事なのだ。

     カンダタと言えば、ロマリアでは知らぬ者は居ない程の
    大盗賊だ…それが、中身は魔王とは言え、戦い始めて1年程の
    小娘をサポートする事さえできないのだ。

     ──…プライドはズタズタ…屈辱も良い所だ…。
     せめて…俺も呪文の一つも使えたら、マオを助ける事が
     出来るだろうに。

    国王「焦るな…」

     そんなカンダタの様子を知ってか知らずか、国王はカンダタに
    語りかける。

    カンダタ「けどよ!!」

    国王「焦るとロクな事にはならぬよ」

    カンダタ「悔しいんだよ、俺は
        毎度毎度…大一番の時に見ているしかねぇってのがよ!」

    222 : 創る名無しに見る - 2012/05/15(火) 00:13:09.64 ID:rwjtop9/.net (+33,+30,+0)

    マオ「プックル!右!」

    アンクル「…バギマ!!」

     マオの声と同時に、プックルは右に跳躍する、
    一瞬前にマオ達が居た辺りを激しい砂嵐が巻き起こる。

     アンクルホーンが呪文を放った隙には背後へと回り込み、
    マオの手にしたホーリーランスが、背中の右翼を
    プックルの手にした黄金の爪が背中の左翼を切り刻む。

    アンクル「…ウオォオオオオォウ!!」

     アンクルホーンが怒りの雄叫びを上げると…、赤い体が
    さらに赤く染まり、筋肉が全身の筋肉が大きく膨れ上がった
    かのように見える。

     砂漠の上だと言うのに一度距離を取ろうとしたマオとプックルを追撃し、
    そのスピードに追い付く。

    マオ「なっ!!」

     スピードの上では有利と踏んでいたマオ達に迫り、
    勢い任せにプックルの背に乗ったマオに拳を叩き付ける。

     普段なら、プックルがスピード負けするはずもなかったのだろうが、
    ピラミッドの中の連戦に加え、マオを背に乗せたプックルは、
    予想以上に足が鈍っていたようだ。

    マオ「ぐあっ!!!」

     太い拳の攻撃を肩に受けて、マオはプックルの背中から跳ね飛ばされ
    砂の上を7回転ぐらいしてからようやくとまる…。

    プックル「ヲォオオン!!」

     プックルはアンクルホーンの背中に飛びつき、首をかみ切ろうとするが
    アンクルホーンはプックルの胴を掴み、砂漠の上に力任せに叩き付ける。

    プックル「ギャイン!!!」

    223 : 創る名無しに見る - 2012/05/15(火) 00:16:26.36 ID:rwjtop9/.net (+33,+30,+0)

    マオ「プックル!…くそ!ベホイミ!」

     マオは複雑骨折したであろう自らの肩にベホイミを掛けて治療し、
    プックルに駆け寄り、さらにベホイミを唱える。

    兵士A「マオどの!下がっていて下さい」

    マオ「何をしている!早く逃げろ!!」

     駆け寄ってくるイシス兵にマオは怒鳴り付けるが、兵士は首を
    横に振り。

    兵士A「ラリホー!!」

     マオに向かって睡眠の魔法を放つ。

    マオ「…な…にを…」

     不意を突かれて呪文を受けてしまい、疲労も限界に達していた事もあって
    強力な眠気がマオを襲う。

    兵士A「貴女達はイシスにとって、いや世界にとって必要な人達です、
        もう、二度と失う訳には参りません。」

     他の兵士達がアンクルホーンの足を止めている間に、兵士Aはラリホーの呪文で
    倒れたマオをプックルの背に乗せる。
     マオに敬礼する兵士Aの腕に装着された腕輪を見て、マオは兵士Aの覚悟を知った。

    マオ「…よせ…やめ…ろ…」

     辛うじて意識を繋ぎ止めつつ、マオは声を絞り出すが
    兵士Aはアンクルホーンに向かって走り出す。

    兵士A「魔物め…我らがイシス兵の覚悟をとくと見よ!
        うおおおおおおっ!イシス王国ならびに女王陛下!万歳!!」

     アンクルホーンが兵士Aを叩き潰すと同時に、その腕輪が激しく光を放ち…
    激しい閃光と爆風がイシス兵達とアンクルホーンを粉々に消し飛ばした。

     ───メガンテの腕輪───。

     兵士Aの腕に付けら得た腕輪は自己犠牲呪文、メガンテ封じ込めた腕輪であり
    自らの命が奪われると同時に、全ての敵を消し飛ばす腕輪だった。

    //---------------------------------------------
    と、いう訳で今晩はここまで。
    224 : 創る名無しに見る - 2012/05/15(火) 00:56:20.56 ID:PJqZ2sJ5.net (+19,+29,-4)
    更新乙!
    兵士△
    225 : 創る名無しに見る - 2012/05/16(水) 00:05:22.03 ID:DlEM2xTE.net (+35,+30,+0)

     ◆◇◆◇ イシス王国 ◆◇◆◇

     カラン…カラン…。

     城の塔に備え付けられた鐘が鳴る、鐘の音はイシスの城下町へと
    鳴り響く。
     イシス城の中央広場、王国の紋章が入った棺桶を中心に
    イシス兵の全てが集まっていた。

    イシス軍の偉い人「敬礼!」

     ザッ!

     良く通る声の男が叫ぶと、城の広場に整列した兵士達が敬礼し、
    墓場へと向かう棺桶を見送る。

     棺桶の中には遺体は無く、爆発した後に残った僅かな鎧の破片や
    武器の破片が入っているだけだった。
     城のテラスに居るイシス女王がレクイエムを歌い、兵士達がそれに続く。

     参列しているのはイシスの兵だけではなく、その家族や友人達、
    葬儀にはイシスの市民達も多く参列していた。

     棺桶の前で遺影を持って、泣き崩れているの老婆は兵士の母親だろうか?

     マオもまた、女王の横で名も知らぬ兵達の棺桶が墓へ向かう様を
    仲間達と共に見送っていた。

     以前に巫女に襲撃された際も、こんな感じの葬式だったのだと言う。

    226 : 創る名無しに見る - 2012/05/16(水) 00:06:28.75 ID:rwjtop9/.net (+33,+30,+0)

     ◆◇◆◇ イシス王国:謁見の間 ◆◇◆◇

     イシス兵達の葬儀の後、イシス女王は
    葬儀の後で疲れていると言うのに、嫌な顔一つせずに
    謁見を受けてくれた。

    マオ「すまない、イシス女王…
       私達のせいで」

    イシス「いえ…ご無事で何よりです
       マオ殿になにかあっては、オルテガ殿に顔向けできません」

     勇者オルテガのため…か、
    この女王は、いや世界中の人間は全て勇者オルテガを助け
    オルテガが魔王を討伐する事を信じている。

    マオ「迷惑ついでに一つ頼みたい…
       イシスには外海を渡る船はあるか?」

    イシス「船を…ですか?
       一体なぜ」

    マオ「私も…師匠…オルテガを追って…
       バラモス城へ向かう」

    イシス「それは、魔王バラモス討伐の旅に出る
         と言う事ですか?」

     女王の問いかけにマオは頷く。

    マオ「……………はい。」

     結局はあの娘が言った通り、バラモス城へ向かう事になるのは
    気に入らないが。
     この世界の魔王が何を成そうとしているのか、
    気になる事は多々ある…。

     そして…異世界から魔物が多々呼び出されている事件、
    確証は無いが魔王バラモスや巫女がその裏に関わっている公算が高い、

    227 : 創る名無しに見る - 2012/05/16(水) 00:06:54.62 ID:DlEM2xTE.net (+35,+30,+0)

     そう仮定するならば、何故異世界の魔王を呼び出し力を奪った後も、
    異世界から魔物を呼び出し続ける必要があるのだろうか?

     ひょっとしたら、魔王の力を奪うのは過程の一つでしかないのかもしれない、
    本命が居るとすれば、それを呼び出しこの世界で何をしようとしているのか、
    魔王バラモスが全てを知っているのは確かだ、恐らくそこには
    巫女も居るだろう、そうなる以上は正面から衝突は避けられない。

     イシス女王はマオの瞳を見て暫く、黙り
    決意を決めたのか、小さくうなずく。

    イシス「それではポルトガ国王に親書を書きましょう」

    マオ「ポルトガ?」

    カンダタ「ポルトガって、ロマリアから海側の
         最強の海軍を持つ王国だよな」

    イシス「そうです、残念ながら我が国イシスには
         外海を旅して魔物と戦う軍艦はありません、
         しかし、ポルトガ海軍の船ならば、貴方達の
         旅に役立つでしょう」

    国王「しかし、ポルトガは
       ロマリアとの国境を扉で施錠し、ここ数年
       鎖国していると聞くが?」

    カンダタ「そこで、こいつの出番だろ」

     カンダタは魔法の鍵を懐から取り出し、指先でくるくると
    器用に回す。

    228 : 創る名無しに見る - 2012/05/16(水) 00:39:18.95 ID:DlEM2xTE.net (+35,+30,+0)

    イシス「それと…マオ殿にはこれを」

    イシス「女王様!それは!」

     イシス女王が取り出した小箱を見て、女官が声を上げるが
    女王はそんな女官を手で制する。

    イシス「構いません、貴女なら
          イシス王家に伝わるこれを託す事に、なんら不満は
          ありません」

     マオが小箱を開けると、そこには緑色の鱗を金色の金属と青い宝石で
    装飾したような腕輪が入っていた。

    イシス「古代よりイシスに伝わる秘宝、
          星降る腕輪です…きっと貴女のお役に立つでしょう。」

    マオ「ありがとうございます、女王陛下」

    イシス「ご武運を、そして無事に帰ってきてください」

     イシス女王からポルトガへの親書を受け取り、砂の国イシスを後にする、
    向かう先は海の街ポルトガ、一度ロマリアへ戻った後に少し北上し、
    閉鎖された海底洞窟を越えて西へ向かう事になる。

     馬車に荷物を詰め込んで準備を整える、イシスから砂漠を越えて、アッサラーム
    そしてロマリアへと、今までの道順を戻る必要は無く、今度はマオの取得した
    瞬間移動呪文、ルーラで一気にロマリアまで戻るため、荷物は少なかった。
    229 : 創る名無しに見る - 2012/05/16(水) 00:39:51.02 ID:DlEM2xTE.net (+35,+30,+0)

    国王「こっちの準備はOKだ、そっちはどうじゃ?」

    マオ「済まないが、話しかけないでくれ
       もう一度確認したい」

    カンダタ「不安だな、大丈夫かよ…オイ」

     イシスの魔法使いから貰った、ルーラの呪文書を何度も見て
    復習するマオに、カンダタは不安気な表情をみせる。

    マオ「そのな、術自体は、そこそこ難しいぐらいなんだが
       コントロールがな…」

    カンダタ「失敗すると、どうなるんだよ」

    マオ「馬車ごと海に落下するか、最悪の場合、
       高度を間違えて空中に転移して落下するか、地面に激突するかもな」

    カンダタ「ちょっ!」

     マオは覚悟を決めてルーラの呪文書を閉じて、立ち上がる。

    マオ「よし!準備OKだ
       皆、馬車に乗り込め!」

     マオの言葉にプックルば馬車に乗り込み。

    カンダタ「やっぱやめようぜ、そんな怪しい呪文
         時間かかっても歩いて行った方が…」

    国王「四の五の言わずに、来いや」

     カンダタは国王に引っ張られて馬車へと押し込められる。

    マオ「ルーラ!!」

    カンダタ「いいいやぁぁぁぁぁ!!」

     マオが呪文を唱えると、カンダタの悲鳴と共に
    光の軌跡を残して、砂漠の国イシスを後にする。
    230 : 創る名無しに見る - 2012/05/16(水) 01:24:19.45 ID:DlEM2xTE.net (+35,+30,+0)

     ◆◇◆◇ バラモス城 ◆◇◆◇

     イシスより南東、ネクロゴンド地方に浮かぶ
    魔物の王が済む城、バラモス城。

     その奥の祭壇で呪文を唱える女の姿があった。

     今まで何百回と唱え続けた異世界から魔物を呼び出す召喚魔術、
    魔術書の内容は既に暗記してしまった…。

     呪文を唱え終わり、巫女は呪文そのものが成功した手ごたえを感じる。

    「…終わったわ、例によって
       どこに何が呼び出されたか分からないけど。」

     召喚呪文を唱え終わり、巫女は背後に居た巨大な体躯を持つ
    魔物の王に報告する。
     体長にして10メートルぐらいの恐竜のような頭を持ち、
    緑のローブと赤いマントを来た魔物の王、バラモスだ。

    バラモス「……大凡の見当は付くか?」

    「…今回はダーマ地方の辺りね。」

    バラモス「……行け!確認して来い!」

     バラモスが命令を下すと、キャットフライやガルーダなど
    空を飛べる魔物達が一斉にダーマ地方へ向けて飛び立つ。

     飛び立った魔物達を見届け、バラモスは玉座に
    腰を下ろす。

    バラモス「……やはり、精度が落ちておるな、
         人間だった頃に一度行った、最初の召喚が
         一番近かったか」

    「……ごめんなさい、父様。」
    231 : 創る名無しに見る - 2012/05/16(水) 01:25:45.87 ID:DlEM2xTE.net (+35,+30,+0)

    バラモス「……よい、気にするな
         召喚魔術は、人の身で行うには負担が大きすぎた
         回数を熟す事が出来ると言う意味では
         その体を手に入れたのは正解だった…」

     バラモスはその大きな手で巫女の頭を軽くなでる。


    ???『悠長な事だな…バラモスよ』

    バラモス「……!!…ゾーマ様!!」

     突如広場に響いた声に、バラモスは大きく体を震わせ
    玉座から降りて、床に跪く。

     闇がある一転に集まり…、オレンジ色のローブを纏った
    魔族の男の姿をかたどる。

     一瞬…ゾーマの声に巫女が不満の表情を見せるが、
    バラモスもゾーマもその顔に気が付く事が無かった。

    ゾーマ『計画の成否は貴様次第だと言う事を忘れるな』

    バラモス「……承知しております。
         ゾーマ様がご所望の品、このバラモス
         かならずや入手してご覧に入れます」

    ゾーマ『貴様には期待している…ワシを失望させるなよ』

     様子を見に来ただけなのか、それだけ言い放つと
    ゾーマの姿は再び掻き消える。

    バラモス「……精度の件は、ワシも調べている
         とにかく、お前は召喚魔術を続けろ」

    「………はい…。」

     バラモスが部屋を後にすると、巫女は再び
    召喚呪文を唱え始めた。

    //---------------------------------------------
    と、いう訳でイシスの話が終了
    回数を重ねる毎に話を考えるのが難しくなるせいか、
    どんどん文章が乱雑になって来る。
    233 : 創る名無しに見る - 2012/05/18(金) 01:20:38.42 ID:/QbbvWQY.net (+35,+30,+0)
     可能な限り頑張ってみるけど、色々あるから書けない日も
    あるのよ、読んでくれているのは本当に嬉しいけど
    実に申し訳ない。
    //---------------------------------------------

     ◆◇◆◇ ロマリア北部:ポルトガへの地下道 ◆◇◆◇

     ロマリアの北にポルトガ王国へと続く、川底の古いトンネルがある、
    かつてはポルトガとロマリアの間を数多くの商人や旅人が行き来していた
    らしいが
     今となってはポルトガ王国とロマリア王国の国交が断絶されており、
    互いに地下道の入口を施錠の魔術で封印している………との事。

     大陸側のロマリアからポルトガへの物資の流通が滞ると言う事は、
    普通ならばポルトガにとっては大きな損失だったのだろうが、
    数多くの戦艦や武装商船をもつポルトガは国交断絶した後でも
    問題なく繁栄を続けている……らしい。

    マオ「しかし、なんだってわざわざお互い損をするのに、
       国交断絶なんてしたんだ?」

    国王「それを語るとなると
       1000ページぐらいの分厚い本になるぐらいだが
       聞きたいかのう?」

    マオ「…………遠慮しておく」

    カンダタ「平たく言うと、
         百年ぐらい前に喧嘩して絶交した」

    マオ「あーそぉ…」

     そんな歴史ある鍵をロマリア国に許可取らずに開けてしまって
    良いのかとも思うが、気にしない事にする。

     第一、魔王討伐を命令したのはロマリアだ。
    (引き受けたのはオルテガだけど)
    人間同士の争い何て、人間と魔物との争いに比べれば
    大事の前の小事………と、言う事にしておく。

    234 : 創る名無しに見る - 2012/05/18(金) 01:26:21.02 ID:/QbbvWQY.net (+35,+30,+0)

     魔法の鍵を鍵穴に差し込むと、百年ぐらい閉じられていたという
    鍵穴は難無く開き、軽い音が響く。

     そのまま扉を押すが…長い間ずっと閉ざされていた扉は、
    完全に錆びついてマオの力では全く動かない。

    カンダタ「どいてな…
         ふんぬぉおおおおおおぉっ!」

     カンダタが顔を真っ赤にして、扉を全力で押すと
    扉も観念したのか、重い音を立てながらゆっくりと開く。

    プックル「きゃいん!」

     扉を開くと扉の奥からするカビ臭いが流れはじめ、
    見事に風の直撃を受けたプックルが悲鳴を上げる。

    国王「まさに、100年分のカビじゃの
       プックル…しんどいなら馬車に下がっておれ」

     扉の先は長い長い地下道となっており、
    幸い馬車やキラーマシンが問題なく通り抜けられる程の幅があり、

    地下道を抜けた先の扉を開けると、川の先に繋がっており、
    そこはすでにポルトガ王国領だった。

    カンダタ「さーて、ポルトガ国王陛下は
         素直に船を譲ってくれりゃいいんだけどよ」

    マオ「どうだろうな、いくらイシス女王の紹介状があるとは言え
       気前よく船をくれるとも思えないが」

     カンダタの声にマオが応えると、カンダタも同じことを考えていたのが
    溜息をつく、そのまま国王に振り返り。

    カンダタ「おめぇは国王だろ?
         ポルトガ国王とコネとかねぇのかよ」

    国王「期待されても、ワシは今やアリアハンの国王じゃないしの、
       ポルトガ国王に会った事も無いし、期待には応えれぬよ」

    235 : 創る名無しに見る - 2012/05/18(金) 01:28:30.06 ID:/QbbvWQY.net (+35,+30,+0)

    マオ「いざとなれば、盗むと言う手もあるしな…」

    カンダタ「…………………………」

    国王「……………………………」

    プックル「……………………………」

     さらりとマオのいった言葉に、三人とも押し黙る。

    カンダタ「……盗むって、ポルトガの軍艦を…3人でか?…」

    マオ「最悪の最悪な場合はな」

     カンダタと国王は深々と溜息をつく。

    カンダタ「……外洋航海が出来る大型の軍艦なんて
         人間3人だけじゃうごかせねーよ…」

    マオ「……なん…だと…?」

     割と本気で驚いているマオに、国王とカンダタは
    かたをすくめる。

     などと話しながら、今は使われていないであろう
    草だらけの荒れた街道を南下して行く…。

     街道は海まで続き、やがて大きな港町が見えて来る…。
    港にはいくつもの大きな帆船が停泊しており、
    商人の武装貨物船だろうか、木箱を満載した船が
    ポルトガの港をを出航して行くのが見える。

    マオ「……潮風が気持ちいいな。」

     キラーマシンのハッチを開けて顔を出すと、心地の良い
    潮風がマオの顔をなでる。

    国王「ええのぅ…ワシも…自分の船団を持ちたいのぅ。」

     商船を見て国王はしみじみとつぶやく。

    236 : 創る名無しに見る - 2012/05/18(金) 01:29:30.14 ID:/QbbvWQY.net (+35,+30,+0)

    カンダタ「……ここまでくれば、もうポルトガは目と鼻の先だ
         一気にいっちまおうぜ?」

    プックル「ばう!」

    マオ「そうだな、休むのはその後だ」

     マオは再びハッチを閉じて、キラーマシンに馬車を引かせる、しかし
    スロットルを踏み込むも、キラーマシンの動きがどうも鈍い。

    国王「どうした?MP切れか?」

     伝声官から国王の声が聞こえる。

    マオ「いや…MPはまだ残っているが
       どうもキラーマシンの様子がおかしい
       制御系で幾つかエラーが出ているようだ」

    カンダタ「ここの所、ずっと無茶させ過ぎていたからなぁ」

     ノアニールの洞窟に始まり、カザーブを越えてロマリア…
    その後にアッサラームへ向かう途中にプックルとの激闘、
    モンスターと戦いながら砂漠を越えてイシスへ。
     そしてロマリアからポルトガ。

     以前失った左腕を除いても、キラーマシンの全身はボロボロの
    傷だらけ、可能な限りメンテナンスはしているつもりだが
    この世界ではオイル交換すら出来ないのが現状だった。

    国王「ポルトガは造船技術が栄えているだけあって
       機械技術も長けておると聞いた事がある」

    カンダタ「もしかしたら
       コイツも少しはマシな修理ができるかもな」

    マオ「だってよ…相棒…
       もう少し我慢してくれよ」

     マオが言うとキラーマシンに通じたのか、機嫌が直ったかの
    ように再び前へと進み始める。
    237 : 創る名無しに見る - 2012/05/18(金) 01:33:00.62 ID:/QbbvWQY.net (+35,+30,+0)

     ◆◇◆◇ ポルトガ王国:城下町 ◆◇◆◇

     ポルトガの街に入ると、例によってプックルやキラーマシンを見て
    住民達は驚き、ポルトガの兵までもが出て来る。

    ポルトガ兵A「止まれぃ!何者だ?お前達は
          どうやってこのポルトガに来た!」

     ポルトガ兵達は手にした剣を抜き放ち、マオ達へと向ける。

    マオ「私はマオ、イシス国からロマリアを越えて旅をして来た者だ
       イシス女王陛下からポルトガ国王陛下への親書を預かっている
       ポルトガ国王陛下へのお目通りを願いたい。」

     マオの言葉にポルトガ兵達は顔を見合わせるが、マオがイシス女王の
    親書を兵士に渡し、兵士が親書の封筒に記されたイシス王国の印を見ると
    剣を鞘に納め頭を下げる。

    ポルトガ兵A「これは、失礼しました…
          陛下に確認してまいりますので、少々お待ちください
          おい!この方達を宿へとお連れしろ!」

    ポルトガ兵B「ハッ!こちらへどうぞ!」

     ポルトガ兵の一人(おそらく一番偉い人)が親書を持って、王城へと向かい、
    とたんに態度が軟化した兵に連れられて、マオ達はそのままポルトガの
    宿へと向かう。

    238 : 創る名無しに見る - 2012/05/18(金) 01:33:46.41 ID:/QbbvWQY.net (+35,+30,+0)

     ◆◇◆◇ ポルトガ王国:城 ◆◇◆◇

    ポルトガ国王「なるほど…バラモス討伐の旅…か」

     ポルトガ国王から声が掛かったのは夜になってから、
    アリアハン国王、カンダタ、マオそしてプックルまでも
    ポルトガ国王との会食の場に呼び出されていた。

     ポルトガ国王と名乗った男は予想よりも若く、そして
    鍛えこんだ体をしているようにも見受けられる。

     年の頃は40そこそこだろうか?アリアハン国王やロマリア国王と
    違って随分若い…、もっともイシス女王はさらに若かったが。

    ポルトガ国王「たしかに…我が国には魔物と戦い
           外洋を航海する事の出来る船もあるにはある…
           我が国にとっても、魔王バラモスの脅威は
           無視できないし、協力するのもやぶさかではない…が」

     国王はスプーンでスープをすくい、口に運ぶ…。

    国王「まわり諄いのう…一体何が言いたいのじゃ?」

    ポルトガ国王「…そう、あせるなアリアハン元国王陛下
           要するにじゃ、イシス女王陛下はお主らを
           信頼しているようじゃが、ワシはお主らが
           信用に値する人物かどうか分からんと言う事だ」

    マオ「…………書状一つでは、信頼していただけませんか?」

    ポルトガ国王「極端な事を言ってしまえば
           この書状がニセモノって可能性もある
           おっと…今のは言っちゃマズイな、イシス王国を
           信用してないって事になっちまう」
    239 : 創る名無しに見る - 2012/05/18(金) 01:41:09.70 ID:/QbbvWQY.net (+33,+30,+0)
    カンダタ「つまるところ…その書状がホンモノか
         見分ける手段がねぇって事だろ?
         けどよ、そいつはそっちの都合じゃねぇか」

    国王「…………カンダタ…お主、ド直球にモノ言うのぅ」

    ポルトガ国王「かまわねーよ、そいつに関しては
           ウチの落ち度だ」

     随分とフランクな物言いをする国王だ、
    色々交渉する立場だと硬い言い回しよりも、こっちの方が
    楽で喋りやすいが……もしかして、合わせてくれているんだろうか?

    ポルトガ国王「で、だ…
           一つ仕事をひきうけてくれねーか?」

    マオ「…………仕事…ですか?」

    ポルトガ国王「そーよ…今まで何人もに人間がトライしたけど
           誰も成功せず、それどころか死体になってくるのが
           殆どって、すげぇ面倒でかつ危険な仕事って奴よ」

     歯に衣着せぬ奴である…。

    ポルトガ国王「命の危険もあるが、魔王に喧嘩を売ろうってーんだ
           どうってこともないだろ」

    カンダタ「それで?一体何をさせてぇんだ?」

    ポルトガ国王「こいつよ」

     ポルトガ国王はスープ皿をスプーンで軽くたたく。

    ポルトガ国王「ロマリアと国交断絶して以降
           ウチの国じゃ、香辛料が馬鹿みたいに高騰してやがってな
           安く入手できるって話の東大陸へ言って、香辛料を入手し
           レポートに纏めて欲しい」

    国王「東大陸って…アッサラーム山脈よりも東って事かの?
       確かに…山脈を越えようとした者は何人も居たが
       誰も辿り着いたものは居ないと言う」

    ポルトガ国王「やってくれるってんなら、ウチの国が責任をもって
           魔物と戦える外洋航海船をウチで新造してやるぜ?
           オマケで、ウチの港を自由に使って船の修理・メンテも
           引き受けてやる…悪い話じゃねぇだろ?」

    マオ「…………確かに…悪い話ではないな、
       いいだろう、その話…受けよう。」

    //---------------------------------------------
    明日が終われば休日なのです、
    ゲームしてネタ集めて、書き溜めして、
    ビール園行って、そしてRPGツクールが進まない。
    そんな訳で、今日はここまで。
    240 : 創る名無しに見る - 2012/05/20(日) 00:18:42.69 ID:d8XH3xT/.net (+35,+30,-270)

     ◆◇◆◇ ポルトガ王国:城下町 ◆◇◆◇

    カンダタ「よう、待たせたな」

    カンダタ子分「姐さん~」

    マオ「お前達…久しぶりだな」

     キメラの翼を使ってロマリアやカザーブから
    子分達を引き連れてきたカンダタ、その数はざっと
    20名程。

    マオ「すまないな、突然呼び出して」

    カンダタ子分「いいんすよ、姐さんの頼みとあれば
           帆船を動かすぐらい訳ないですぜ」

    国王「こやつらは?」

    カンダタ「俺の子分達よ…
         元々盗賊をしてただけあって、力だけは
         有り余っているぜ」

     ポルトガに帆船を貰ったり、港を提供してもらったり
    するのは良いのだが、帆船を動かすためには多数の人員が
    必要となる。

     どれぐらいの期間旅をするか分からない以上、ずっと
    ポルトガの船員を借りる訳にもいかない。

     船に関しては素人だが、マオが東の国に行っている間に
    ポルトガで船の建造を手伝いつつ、帆船の動かし方を
    学んでもらうという訳だ。

    241 : 創る名無しに見る - 2012/05/20(日) 00:20:25.78 ID:d8XH3xT/.net (+35,+30,+0)

     それはともかくとして。

    マオ「あいつらの勉強が無駄にならないように
       私達もしっかり働かないとな」

    国王「じゃのぅ、アッサラームから山を越える
       探検隊を何度も見た事があるが、帰ってきたと言う話は
       一度も聞いた事が無い…無事に帰ってこれると良いのじゃが」

    カンダタ「なーに、なんとかなるってもんよ
         俺達はポルトガ国王に抜け道を教えてもらったしな」

     対するカンダタは気楽なものである、
    ポルトガ国王はアッサラーム山脈から東へと抜ける山のトンネル
    バーンの抜け道を知っているらしく、抜け道を守っている
    ホビット族へと紹介状を書いてもらったのだ。

    カンダタ「楽しみだぜ、東の大陸
         いったいどんなもんがあるんだろうな」

     ◆◇◆◇ アッサラーム山脈、バーンの抜け道 ◆◇◆◇

     アッサラームから東に抜けると、山の麓に大きい洞窟がある
    ホビット族の気難しい中年男がそこに住んでいた。

     中年男の名はノルドと言うらしいく、アッサラームでは随分有名な
    人間嫌いらしい。

     マオ達の顔を見るなり、物凄く不機嫌そうな顔をみせたものの
    ポルトガ王の使いである事を告げると一気に態度が軟化した。

    ノルド「するってぇと、お前さんがたは
        バーンの抜け道を通りたいのかい?」

     ポルトガ王の紹介状を渡すと、ノルドは紹介状を一読して
    マオ達に言う。

    マオ「ああ、すまないが頼めるか」

    ノルド「ポルトガ王の頼みだってーんなら
        しゃーねーか」

     ノルドは立ち上がり、通路にある大岩をどかすと、
    人がギリギリ通れる程の大きさの穴が現れる。
     奥は細い通路になっているのか、風が奥から流れ込んでくる。
    242 : 創る名無しに見る - 2012/05/20(日) 00:21:48.62 ID:d8XH3xT/.net (+35,+30,+0)

    ノルド「こいつがバーンの抜け道だ…」

    マオ「随分狭い通路だ…
       こいつぁ…キラーマシンを置いてきて
       正解だったな」

    国王「幾多の人間が山脈を越えようとして命を落としたのに
       こんなあっさりと抜け道があるなんてな。」

    カンダタ「ぐお…狭ぇ」

    プックル「がふぅ。」

     小柄なマオや国王はともかく、大柄なカンダタやプックルは
    なんども通路に突っかかりながら、なんとか抜け穴を抜ける…。

     元々大きな洞窟だったのが、一部落盤したようで
    地盤の弱い落盤した箇所を回避するように抜け道を
    掘り進めたようだった。

    ノルド「洞窟の出口から南まで行けば聖なる河の街
        バハラタだが、強いモンスターが出るぜ…気を付けな」

     ノルドに見送られながら、一向は山脈の下を貫くトンネルをひたすら
    歩き続ける。
     どれぐらい歩き続けただろうか、山脈を貫く程の長い洞窟を進み続けると
    やがて洞窟の先から太陽の光が差し込んでいる。
     一向が長い洞窟を潜り抜けると、そこはアッサラーム山脈の反対側
    山の中腹だった。

    カンダタ「っかー!!
         外の空気がうめぇぜ!」

    マオ「さすがに疲れた…
       ずっと歩き続けていたからな」

     馬車があれば楽だったのだが、キラーマシンがいつ止まっても
    おかしくない状態だったので置いて来たのだ。
     どちらにせよ、抜け道を通り抜ける事は出来なかったんだろうが。

    国王「今日はここらでキャンプにするかの?」

    243 : 創る名無しに見る - 2012/05/20(日) 03:42:52.70 ID:d8XH3xT/.net (+35,+30,+0)

     国王が道具袋からテントを取り出そうとした時。

     グルルルルルルル…………。

    カンダタ「プー公よ、メシは後だ…
         先にテントをはっちまわねぇとな」

    プックル「ガウ!!」

    マオ「カンダタ!違う!
       後ろだ!」

     マオが叫び武器を抜き放つ、ゾンビの様に全身ばボロボロになった大きな
    赤い犬のモンスター…。
     全部で四頭の腐った犬のモンスターは、見かけによらず俊敏な動きで
    走り回る。

    国王「デスジャッカルじゃ!!」

     国王がモンスターの名を叫ぶ。

    カンダタ「犬野郎が!!」

     カンダタが新調した武器、おおばさみを袋から取り出し腕に装着する。
    巨大なハサミが肘の動きに連動して閉じるようになっており、
    突き刺した後に肘を曲げるとハサミが閉じると言う凶悪な武器だ。

     上手く当たれば犬の首ぐらい一撃で落とせそうなのだが、
    カンダタはデスジャッカルの唱えたマヌーサの呪文包まれてしまう。

    カンダタ「くそったれ!」

     カンダタは手当り次第におおばさみを振り回すが、デスジャッカルの
    幻影に振り回された当たらない。
    244 : 創る名無しに見る - 2012/05/20(日) 03:43:24.79 ID:d8XH3xT/.net (+35,+30,+0)

    国王「うひぃ!危ない!」

    マオ「皆!一度下がれ!」

     カンダタの振り回すハサミに巻き込まれないよう逃げ回る国王と
    プックルに下がるように命じ、マオは素早く呪文を唱える。

    マオ「バギマ!!」

     唱えた呪文を放つと、豪風が幻ごとデスジャッカルを巻き込み、
    実体のデスジャッカルのみ上空に吹き飛ばす。

    カンダタ「そこか!!」

     跳ね飛ばされて身を起こそうとするデスジャッカルにカンダタは
    駆け寄り、右腕のハサミがデスジャッカルの首を跳ね飛ばす。
     さらに、プックルも右手の黄金の爪でデスジャッカルを仕留め、
    国王も同時にホーリーランスで止めをさす。

    国王「後一頭じゃ!」

    マオ「油断するなよ!」

     残りの一頭…だが、
    残った一頭が空に向かって高らかに遠吠えすると、森の奥から
    何体ものデスジャッカルが現れる。

    カンダタ「あれま。」

    国王「あらら-!団体さんのお着きだぁ」

     声に呼ばれて、さらに現れたデスジャッカル達
    全部で合わせて8頭。
     振出に戻るどころか、最初よりも悪い状況だ。

    245 : 創る名無しに見る - 2012/05/20(日) 03:43:45.23 ID:d8XH3xT/.net (+35,+30,+0)
    マオ「くっ!」

     4頭同時に飛びかかられるが、マオはなんとか身をかわす
    すり抜けざまに剣でデスジャッカルの一体を捕えるが
    斬り付けが浅く、致命傷は通らない。

     本能的にマオがリーダーと感じたのだろうか、戦力の半数を使って
    マオに襲いかかるとは、ゾンビとは言え大した犬だ。

     マオは再び精神を集中させて呪文を唱える、普通なら絶対
    間に合わなかったのだろうが…。
     マオの腕に着けられた星降る腕輪が淡い光を放ち、マオを包む。

     ──ガウ!!

    カンダタ「マオ!!」

    国王「えぇぃ!貴様等どかぬか!」

    プックル「ガウ!ウーガウ!」

     呪文が完成する前にマオに飛びかかるデスジャッカル
    普通なら絶対に間に合わず、マオはデスジャッカルの
    牙の餌食になる所だったのだろうが。

    マオ「バギマ!!」

     二度目の豪風がマオに飛びかかろうとしていたデスジャッカル
    達を吹き飛ばす。

    国王「お次はヒートギズモに、ハンターフライじゃ!」

     戦いの音を聞きつけたのか、魔物達がさらに現れる。
    オレンジの雲のような形をした、火を噴く魔物
    ヒートギズモに、ギラの呪文を使う厄介な虫型モンスター、
    ハンターフライだ。
    246 : 創る名無しに見る - 2012/05/22(火) 02:07:54.91 ID:pMC2Hhxw.net (+33,+30,-305)

     ヒートギズモは参戦するなり大きく息を吸い込み、
    炎の息を吹きだす。

    国王「うひぃ!」

     狙われたのは一番足の遅いアリアハン国王であり、
    襲いかかる炎から逃げ回る。
     背中の荷物に火が引火し、あたふたと逃げ回る。

    マオ「国王!」

    カンダタ「動くんじゃねぇって!」

     プックルがヒートギズモの前に立ちはだかり、黄金の爪で
    ヒートギズモを切り裂く。
    その隙にカンダタとマオが引火した国王の荷物を消火する。

    国王「数が多すぎるわい!」

     上空にはハンターフライの群れ、地上にはデスジャッカルの
    群れに囲まれている、逃げようにも完全囲まれて
    逃げ道は塞がれている。

     大陸の東に入って早々…随分と手荒い歓迎を
    受けた者である。

    マオ「だったら一気に吹き飛ばす!
       バギマ!」

    カンダタ「燃え尽きろ!
         ベギラマァ!!」
    247 : 創る名無しに見る - 2012/05/22(火) 02:27:18.16 ID:pMC2Hhxw.net (+33,+30,+0)
     マオの放った風の呪文が竜巻を起し、
    間髪入れずにカンダタの放った炎の呪文が帯状に伸び上がり、
    そのままマオのバギマに巻き込まれる。

     風に煽られたベギラマは炎の竜巻となり、デスジャッカル達を纏めて
    消し炭にしてゆく。

    国王「呪文が合体したじゃと!?」

    カンダタ「このまま右だ!マオ!」

    マオ「わかっている!」

     呪文を放出したまま、マオとカンダタは方向転換し
    空に逃げようとしたハンターフライも炎の竜巻に巻き込んでいく。
     ややあって呪文炎がおさまり、消し炭になったデスジャッカルや
    ハンターフライの死骸が転がっていた。
     大量に居た魔物の群れは綺麗に全て全滅していた。

    マオ「カンダタ…まさか、こうなるって知ってて
       狙ってやったのか?」

    カンダタ「まさか、偶然だよ…偶然」

    国王「にしても、この様子じゃ
       落ち着いてキャンプする事も出来んのぅ」

    カンダタ「確かに…な」

     いつもならば、聖水をばら蒔いてモンスターを遠ざけ
    見張りを立ててキャンプするのだが、ここまで
    モンスターが多いと、ゆっくり休む事も出来ない。

    マオ「このまま街へ行こう、
       南にバハラタの街があるとか言っていたな」

    カンダタ「仕方が無いか…そう遠くなければ
        良いんだけどな。」

     キャンプを諦めて荷物を分担し、
    一向はそれぞれ重い足取りでバハラタの街を目指す。
    //---------------------------------------------
     平日だから大して書けない、と言うより平凡すぎる展開
    読み手の方々も飽きるだろうな、なんとかしたいけど
    スキルが無い、磨くための練習でもあるけど
    とりあえず、平日でもあるので、今日はこの辺まで。
    249 : 創る名無しに見る - 2012/05/23(水) 02:32:25.61 ID:OROJ3Okh.net (+35,+30,-279)
    さんくす、気張って続行させて
    もらいます。
    //---------------------------------------------

     ◆◇◆◇ 東大陸、バハラタ ◆◇◆◇

     バーンの抜け道を越えて南に進むと、やがて大きく
    綺麗な川が見えて来る。

     川沿いに綺麗な石造りの家が立ち並び、街の外には
    広い畑が広がっている。

     畑には縦に細長い木が整然とならんでおり、
    それぞれ小さな実を付けている。

    国王「胡椒の木じゃ、
       どうやら、ポルトガ国王との約束は果たせそうじゃの」

    プックル「ガウ!!」

    カンダタ「…………そうだと良いんだけどよ」

     カンダタは浮かない顔をしてポルトガの街を指差す。
    カンダタの指差した方向から幾つもの黒い煙が上がっていた。

    マオ「火事…か?」

    カンダタ「どうやら、また面倒事に巻き込まれそうだぜ?」

    国王「やれやれ、息つく暇もないのう」

     バハラタの街に入ると、そこかしこに人が倒れていた、
    幸いにして死んでいる人間は居ないようだが、まるで魔物にでも
    襲われたかのように、酷い有様だった…。

    若い娘「………う…うう…」

     街の入り口に頭から血を流して倒れている、瀕死の重傷を負った
    若い娘が倒れている。

    250 : 創る名無しに見る - 2012/05/23(水) 02:34:44.94 ID:OROJ3Okh.net (+33,+30,+0)

    国王「しっかりせんかい!」

    マオ「馬鹿!動かすな!
       皆は他の奴らを頼む」

     娘を動かそうとする国王を制止し、マオは
    カンダタ達に指示する。

    カンダタ「わかったぜ!そいつは任せた!
         いくぜ、国王!プー公!」

    国王「よしきた!」

    プックル「わう!」

     カンダタ達は荷物を道路の脇に置いて、その中から薬草や
    傷薬など、治療に役立ちそうなもの以外をその場に置いて
    それぞれバハラタの街の中へ散っていく。

     マオもまた治療の呪文を口にし、手のひらを娘の頭に翳す…。

    マオ「ベホイミ!」

     癒しの光が娘の頭の傷を癒して行き、頭の傷口から血の流出が止まり
    致命傷の傷が塞がっていく。

    若い娘「…………う…うぅ………」

    マオ「気が付いたか」

     マオは娘を仰向けに起こしてやろうとするが…、娘の胴に触れると
    べったりと手に血が付く。
     仰向けに起こすと…肩口から腰に掛けて、一刀で斬られた後があった。

     頭の傷に加えて重度の傷だ、これで死なずに生きていたとは
    この娘の随分と運が良いようだ。

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