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    元スレ巫女「来たれ!異界の勇者よ!」

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    151 : 創る名無しに見る - 2012/04/18(水) 23:50:36.58 ID:T6L6+4uI.net (+33,+30,-156)

    商人?「あなたのために
      珍しい武器や防具を仕入れました」

     まどうしの杖:24000G
     ホーリーランス:36800G
     鉄の斧:40000G
     マジカルスカート:24000G
     黒装束:38400G
     鉄の兜:16000G

    マオ「なんだ、この価格設定は
       ふざけているのか?」

    カンダタ「悪いが時間の無駄だ…
         他を当たんな」

    商人?「おお、お客さんちょっと待ってください
       今のはほんの冗談ですよ」

     まどうしの杖:12000G
     ホーリーランス:18400G
     鉄の斧:20000G
     マジカルスカート:12000G
     黒装束:19200G
     鉄の兜:8000G

    152 : 創る名無しに見る - 2012/04/18(水) 23:51:23.59 ID:T6L6+4uI.net (+33,+30,+0)
    カンダタ「オヤジ…ふざけているのか?
         この街の税金がどれくらいかしらねぇが
         2万ゴールドもあれば、ドラゴンだって
         殺せる武器も買えるぜ?」

    商人?「お客さん、本当に買い物上手ね
        これ以上まけると、ウチは大損ですよ
        けど貴方、トモダチ・・こんな感じでどうでしょう?」

     まどうしの杖:6000G
     ホーリーランス:9200G
     鉄の斧:10000G
     マジカルスカート:6000G
     黒装束:9600G
     鉄の兜:4000G

    カンダタ「……………………………。」

    マオ「……………………………。」

    商人?「こ…この価格でも不満ですか…
        これ以上まけると、私首つり自殺ですよ
        わかりました、これが最後の価格です!」

     まどうしの杖:3000G
     ホーリーランス:4600G
     鉄の斧:5000G
     マジカルスカート:3000G
     黒装束:4800G
     鉄の兜:2000G

    マオ「……………………………。」

    カンダタ「………まだ…高いな。
         オヤジ、俺の目効きを舐めているんじゃないか?
         これでもまだ市場価格の倍はしやがるだろ?」

    商人?「そんな事ないですよ!
        少なくともこの街では一番安い価格ですよ」

    カンダタ「そうかい?
         行こうぜ?マオ……………マオ?」

     マオは…商人の顔をじーっと見つめる…
    どこかで見た覚えのあるような顔だ…、随分昔…
    どこかで…。
    153 : 創る名無しに見る - 2012/04/18(水) 23:54:44.35 ID:T6L6+4uI.net (+33,+30,-123)
    ………と、行った所で
    今日はここまでです、わざわざアイテム価格を調査するために
    DQ3を立ち上げてしまったと言う。

    ちなみに、俺はこのアッサラームの商人からモノを買った事は無いが、
    FC版では「鉄の兜」
    SFC版では「金のブレスレット」を買うために、この商人を
    利用する必要があるとかなんとか。

    喉がまだ治らない・・ではまた。
    154 : 創る名無しに見る - 2012/04/20(金) 00:34:15.84 ID:5PbcNKHw.net (+24,+29,-9)
    遂に、備蓄が無くなってしまったと言う
    さて、どう続けるか
    155 : 創る名無しに見る - 2012/04/24(火) 01:07:59.14 ID:PQwGwqNP.net (+24,+29,-5)
    おいついた。気長に楽しみにしてるよ?
    156 : 創る名無しに見る - 2012/04/24(火) 22:37:12.22 ID:6fd03c1S.net (+24,+29,-16)
    ありがとうございます、
    最近ちょっと、遅筆ですが頑張りたいと思います。
    157 : 創る名無しに見る - 2012/04/25(水) 01:27:28.84 ID:zglJJY/R.net (+33,+30,-292)

     あれは……随分昔…まだ魔王だった頃…。

    マオ「あーっ!!アリアハン国王!!」

    商人?「っ!?な…ななななななにを…
        突然何を言うんですかお客さん!?
        そんな訳ないじゃないですか?」

    カンダタ「アリアハン国王!?
        こいつがか!?」

     黒く日に焼けたり、アッサラームの民族衣装を
    着ていて、少し太ったとは言え、商人の男には
    確かにアリアハン王の面影がある。

    マオ「貴様!こんな所で何をしている!
       巫女はどこに居る!バラモス城か!?」

    国王「うぐ…ぐぐぐぐぐぐぐ…
       ぐるじい…だじげて…」

     胸倉を掴み上げ、尋問する…国王は
    息が出来ないのか顔を紫色にして口をパクパクする。

    カンダタ「まてまて…マオ
         そいつ、死んじまうぞ?」

     カンダタの仲裁に、マオはやや力を緩めて
    息をさせる。
    158 : 創る名無しに見る - 2012/04/25(水) 01:29:18.99 ID:zglJJY/R.net (+33,+30,+0)

     ◆◇◆◇ アッサラーム(夜)アリアハン国王の家 ◆◇◆◇

     市場の一件から1時間後、マオとプックルはアリアハン
    国王が住んでいる家に訪れていた。

     ちなみに、カンダタはアッサラームの夜の街へと
    遊びに行った、良いぱふぱふ屋があるとか言っていたが
    マオに気を使っての事なんのかもしれない。

    国王「まぁ、座りなされ」

     椅子を勧められ、アッサラームで有名なお茶とやらを
    出されたが、口を付ける気は起きなかった。

     国王は苦笑しつつも、自分の茶に口を付ける
    黒い猫を飼っているらしく、国王が落ち着いて座ると
    彼の膝元に猫が座って丸くなる。
     砂漠の猫の相応しく、毛が短い種類のようだ。

    国王「何から、話そうかの」

     猫の体をなでながら、国王が話を切り出す。

    マオ「何もかもだ、私を召喚した事
       私の体を奪う事を企てていた事、
       何故こんな所にいるのか、それに
       巫女はどこに行ったのか?
       洗いざらい、全てを吐いてもらうぞ?」

    国王「わかった、わかった
       そう急かすな」

    159 : 創る名無しに見る - 2012/04/29(日) 09:58:36.80 ID:JLoHgqxn.net (+24,+29,-13)
    まだかなぁ
    結構楽しみにしてんだが…
    体調でも崩したか?
    160 : 創る名無しに見る - 2012/04/29(日) 13:40:48.80 ID:C5XyOdo5.net (+29,+29,-7)
    どうにも、続きが納得いかなくて
    何度も書き直していた・・すまん。
    161 : 創る名無しに見る - 2012/04/29(日) 22:19:22.38 ID:C5XyOdo5.net (+35,+30,+0)

     …国王の話を、全部そのまま書くと長くなるので
    要点だけ。
     アリアハン王はこの世界も魔王、バラモスに脅され
    異世界から召喚する儀式をとり行ったと言う。
     軍事力を持たないアリアハンは戦う力など無く、
    魔王軍の脅しに屈するしかなかった。

     魔王バラモスが送り込んだ巫女(血はつながっておらず、
    バラモスに育てられただけで人間だったと言う)の元、
    異世界の魔王の召喚は行われた。

     やがて、魔王の召喚に成功し…知っての通り、よび出した
    魔王を騙して、予定通りに全ての力を奪い取った。

     その後、用済みのアリアハン国王は途中のアッサラーム近郊で
    放り棄てられ、アリアハンへ帰るのも怖くなり、アッサラームで
    商人として暮らしていたと言う。

    国王「魔王どもの言いなりになって、お前さんを呼び出して以降
       ワシは逃げ回る毎日じゃよ…
       今でも夢に見るんじゃ、アリアハンの民達の
       魔物に屈したワシを責める顔を毎日な…」

    マオ「それが、アリアハンに帰らなかった理由か…」

    国王「魔王バラモスに脅迫され、ワシは民の命を護る為とはいえ、
       異世界から魔王を呼び出すなどと言う、
       禁術に手を出した……あわよくば、この世界の魔王と
       潰しあってくれるだろうと…だが結果はこのザマじゃ」

    国王「アリアハン王は魔王に屈したと、世界中の連中から
       後ろ指をさされている、ワシはもう疲れた
       殺すなら殺せ、お主にはその権利があるだろう」

    マオ「…………そうか、覚悟は出来ているようだな」

     マオは剣の柄に手を掛け、腰を落とす…殺気を放っても
    アリアハン王は抵抗する素振りすら見せなかった。
     恐怖で顔をゆがめる事すらない。
    162 : 創る名無しに見る - 2012/04/29(日) 22:20:07.57 ID:C5XyOdo5.net (+35,+30,+0)
    マオ「………………………くだらない…。」

     剣の柄から手を放し、マオは吐き棄てる。

    マオ「一生ずっとそうして後ろを向いて後悔いろ、
       私が手を下すまでも無く
       お前は生きていない、ただ死んでいないだけだ」

     うつむいたままの国王を部屋に残して、
    マオは部屋を出て扉を閉じる。

     ◆◇◆◇ 翌日 ◆◇◆◇

     キラーマシンの応急修理が完了し、旅に必要な物資は
    馬車に詰め込んだ…。

    カンダタ「こいつで、最後だぜ…」

     カンダタは水が入った大きな樽を荷台に乗せて、ロープで
    ぐるぐる巻きに固定する。

    カンダタ「…随分大荷物になっちまったな…」

    プックル「…ばう!…」

    マオ「仕方が無いだろ…これから行く砂漠は
       危険な所だからな…」

     とりあえず…キラーマシンで軽く牽引して、問題なく
    動ける事を確認する。

     砂漠の中央に存在するイシスへ向かう為には、当然
    装備がそれだけ多くもなる…、特に水や食料は欠かせず
    万一に備えてキャンプ用品なども搭載した。
     水や食料は余裕をもって、往復できるぐらいの量を
    搭載している。

    マオ「よし、出発する」

     キラーマシンのエンジンを始動し、一歩踏み出した時。

    国王「………待ってくれーっ!
       ワシも乗せてくれーっ!」

     国王の言葉が聞こえて、キラーマシンを停止する…。
    荷物を大量に抱えたアリアハン国王が転げるかのように、
    走って来る。

    カンダタ「…こいつ…昨日の元アリアハン国王じゃねぇか」

    国王「ワシも!一緒に行く!
       連れて行ってくれ」

    カンダタ「連れて行けっていったってよぉ?」

    プックル「わふ?」

     困ったようにマオを見るカンダタとプックル、
    マオはキラーマシンのハッチを空けて顔を出す。
    163 : 創る名無しに見る - 2012/04/29(日) 22:20:44.31 ID:C5XyOdo5.net (+35,+30,-129)

    マオ「……アリアハン国王?
       どういうつもりだ?」

    国王「許してくれとはいわん、じゃが
       何かをしたいんじゃ、せめてワシに
       何か出来る事を見つけ出したいんじゃ」

    カンダタ「だってよ?どうする?」

     こいつが巫女に通じている可能性もあるし、
    昨日の話も全て本当の事かどうかもわからない。

    マオ「勝手にしろ!!」

    国王「感謝する…!」

    164 : 創る名無しに見る - 2012/04/29(日) 22:21:03.53 ID:C5XyOdo5.net (+33,+30,+0)
     ◆◇◆◇ 砂漠 ◆◇◆◇

     砂の海の世界…砂漠、太陽は容赦無く照り付け
    気温は軽く50度はあるようだ……。
     …馬車は砂漠を越えて
    オアシスの国、イシスへと向かっていた…、

     基本は朝と夕方の日が高くないウチに距離を稼ぎ、
    一番気温が高くなる時間帯は外す。

    カンダタ「……あつい………」

    プックル「……わふぅ…」

     カンダタの声に、プックルは声を絞り出すように
    応える…。
     こちらは純毛100%なせいだろうか、砂漠の暑さが
    一際応えているようだった。

    カンダタ「……アッサラームを出て一週間ぐらいか?
         いつになったら、イシスに着くんだよ」

    国王「もう、そろそろじゃと思うんだが」

     地図とコンパスに線を引きながら国王が答える、
    こちらはアッサラームからイシスへと買い付けに行くために
    何度もイシスへ渡った経験があるらしい。

    国王「大丈夫か?」

    マオ「……まぁ、なんとかな……」

     伝声管でキラーマシンの中のマオに声を掛ける国王。
    キラーマシンの中にクーラーが有る訳でも無く、しかも
    熱が籠るため、定期的に声を掛けて様子を伺わないと
    脱水症状で倒れかねない。
    165 : 創る名無しに見る - 2012/04/29(日) 22:21:36.80 ID:C5XyOdo5.net (+35,+30,+0)
    国王「まぁ、あともう少しすれば
       イシスも見えて来る頃じゃろう」

    マオ「…………?」

     遠くに見えて来たのはイシスの街…、だが…そこから立ち上るのは…。
    黒い煙…、マオはキラーマシンを止めてカメラをズームモードに切り替える。

    カンダタ「………………どした?…」

     なんか、不穏な空気を感じたのだろう…暑さで横に転がっていた
    カンダタは身を起こし、単眼鏡を取り出す。

    国王「…火事…かの?…」

    プックル「グルルルルル………」

     カンダタと同じく暑さでダレていたプックルも身を起こし、
    背中の毛を逆立てていた。

     ふと…、遠くに見えるイシスで光が瞬いたように見える。

    マオ「…呪文の光!…戦闘だ!」

     それも冒険者が魔物に襲われたなんて、小規模な戦闘じゃない…
    魔物の大群がイシスと戦うような、大規模な襲撃のようだ。

    カンダタ「……イシスが…、魔物の大群に襲われてやがる!」

    国王「……なんじゃと!?」

    カンダタ「急げ!マオ!」

    マオ「わかった!」

     カンダタの話を聞いて、マオは
    キラーマシンをイシスへと急がせる。
    166 : 創る名無しに見る - 2012/04/29(日) 22:22:15.62 ID:C5XyOdo5.net (+35,+30,-245)

     ◆◇◆◇ イシス城門 ◆◇◆◇

    イシス兵A「正門!破られます!」

    イシス兵B「なんとか持ちこたえろ!
          民間人を城まで避難させるんだ!うわぁっ!」

     イシスを守護する兵の一人が、巨大な緑色のカニのような魔物
    じごくのハサミに胴を掴まれ。そのままその巨大なハサミに
    胴体が両断されてしまう…。

    イシス兵A「くそっ!まさか、いきなり王都を襲撃してくるなんて」

     以前から散発的に魔物達と小競り合いはあったものの、大群を
    連れて襲撃して来るとは。
     勇者オルテガがバラモス討伐に向かおうと言う、このタイミングを
    狙って来たようだ。

    イシス兵A「オルテガ殿は!?」

    イシス兵C「すでに、出発されました!」

    イシス兵A「それだけが、せめて救いか…」

     勇者オルテガはすでに熱気球に乗って、魔王バラモス退治に
    出発したようだ、人類の希望たる勇者が殺されると言う
    最悪のシナリオだけは回避できた。
    167 : 創る名無しに見る - 2012/04/29(日) 22:22:42.66 ID:C5XyOdo5.net (+35,+30,-198)

    イシス兵D「小隊長!
         南からキャットフライと人食い蛾の群れです!」

    イシス兵A「くそ!ここまでか!」

     イシスの小隊長が諦めようとしたその時、遠くから光がキャットフライ達の
    群れに突き刺さり、切り裂いた。

    イシス兵C「なっ!?なんじゃありゃ!?」

     兵の一人が光の立ち上った元を見て、驚愕の声を上げる。
    右手に剣を持ち、左手が無い代わりにマントで肩を覆い隠された
    一つ目の鉄の化け物がそこに立っていた。

     人も魔物も動揺している間に、斧を持った男が大きな牙を持った
    デカい豹に跨って突撃してくる。

    カンダタ「……往生しやがれぇ!」

     叫ぶなり、豹の上の男が投擲した鉄の斧が、火炎ムカデの頭に直撃し、
    頭をぶっ潰す。

    カンダタ「よう!イシスってのはここで間違いねぇか!?
         ウチのオルテガがここに世話になっているはずだがよ」

     豹から飛び降りた男が火炎ムカデの頭から斧を抜きながら
    ニヤリと笑う。

    168 : 創る名無しに見る - 2012/04/29(日) 22:27:53.97 ID:C5XyOdo5.net (+35,+30,-49)
     なんども書き直したのに、この程度のクオリティ
    文才が無いなー、俺。
     練習も兼ねているのでクオリティの低さはご容赦。
    あまり連投すると、バイバイさるさんを食らうので
    とりあえず、今日はこの辺りで。

     しかし、そろそろ2か月が過ぎてしまう、
    1000を目指したら1年ぐらい過ぎてしまうのではないか?

    その前に、ネタが枯れそうな気もするけど。
    169 : 創る名無しに見る - 2012/04/30(月) 01:28:49.60 ID:HwrDwFB9.net (+35,+30,+0)

    イシス兵A「アンタら、オルテガ様の知り合いか?」

    カンダタ「まぁ、そんなもんよっ!」

     話しながらも、カンダタは近くに居た地獄のハサミに斧を振り下ろす…が。
    岩のようなカニの装甲に斧が弾き返される。

    カンダタ「硬ってぇ!
         なんじゃこりゃ!?」

    国王「そいつは地獄のハサミじゃ!
       スクルトの呪文を使う!
       一度装甲を固められたら、厄介じゃぞ!」

    カンダタ「ちっ!くそったれ
         厄介な魔物を連れてきやがって!」

    マオ「誘惑の剣よ!」

     キラーマシンから飛び出したマオが剣を翳し、誘惑の剣から放たれた赤い光が
    地獄のハサミ達を包み込む。
     混乱した地獄のハサミ達は方向転換し、キャットフライの群れに襲いかかる。

    カンダタ「ったく、マジで便利な
         その魔剣…たった一本で戦況をひっくり返しやがった」

    マオ「関心するのは後だ、その蟹どもを利用しろ!
       国王は怪我人達を城の中に運び込め!」

    国王「りょうかいじゃ!
       ほれ、貴様等ら!感謝しろよ!
       今日は薬草を原価で売ってやるわい」

    カンダタ「善意でくれてやれよ」

     呆れている間に今度は誘惑の剣で火炎ムカデを味方に付けて行くマオ、
    魔物達を混乱させて味方に付けたおかげで、絶望的だったイシス軍の戦況は
    息を吹き返していた。
     魔物の数は徐々に減りはじめ、戦況が好転した事によりイシス軍の
    士気も戻ってきていた。
    170 : 創る名無しに見る - 2012/04/30(月) 01:30:00.16 ID:HwrDwFB9.net (+35,+30,+0)

     だが…。

    マオ「はぁ…はぁ…はぁ…。」

     元々慣れない砂漠の旅に体力を奪われていた所に、魔物との大群の戦闘だ、
    マオの体力も限界に近づきつつあった、回復呪文などで怪我を治す事は出来ても
    気力と魔力は回復する事は出来ない…。

    カンダタ「どうするよ…長期戦になると
         こっちがジリ貧だぜ?」

    プックル「わふぅ…」

     特に、全身毛皮で包まれたプックルの体力は著しく消耗していた。

    カンダタ「しんどいなら下がってろや、プー公
         後は俺が引き継いでやるよ」

    プックル「ガウ!!」

    カンダタ「怒るなよ!冗談だって、冗談」

    マオ「…………?…」

     ふと…魔物達の襲撃が止まっている事に気が付くマオ…
    今戦っているのは誘惑の剣で混乱させた魔物ばかりだ、
    正気を保っている魔物達はこの騒ぎに乗じて撤退したようだ。

    マオ「…─────ッ!全員!下がれっ!!!」

     直感のようなものだった、マオはその場にいる全員に怒鳴ると
    自らもプックルの背に乗り、カンダタもマオに続いてプックルの背に乗る。
    171 : 創る名無しに見る - 2012/04/30(月) 01:30:33.47 ID:HwrDwFB9.net (+35,+30,+0)

    カンダタ「走れ!プー公!」

     カンダタが叫ぶまでも無く、プックルも何かを感じ取ったのだろう
    二人を乗せてその場から慌てて飛び退く。

     感じたのは殺気と魔力の高まり…、マオ達やイシス兵が慌てて逃げ出すと、
    その場に取り残された魔物達の群れに天から降り注いだ光が突き刺さる。

    ???「ビッグバン!!」

     背後から、何者かの声が聞こえたような気がした…
    直後に巻き起こった爆発が残った魔物達を消し飛ばし、
    衝撃波がマオ達を弾き飛ばす…。

     やがて…光と爆風が収まり…
    その場に居た魔物達が綺麗に消滅していた。

    マオ「…生きているか?」

    カンダタ「なんとか…な…」

    プックル「ガフ!」

     身を起こして、ホイミを掛けて怪我を治療するマオ…
    先ほどまで戦っていた場所は砂漠の砂が大きく抉れて
    クレーターのようになっていた。

    マオ「…………………………。」

     そのクレータの中央に佇んだ人物にマオは見覚えがあった、
    自分自身と同じ顔をした人間の女、いや…魔王の力を奪った
    元人間。

    マオ「……………………巫女…。」
    172 : 創る名無しに見る - 2012/04/30(月) 01:32:10.24 ID:HwrDwFB9.net (+35,+30,+0)

    「へぇ…生きていたんだ
       まさか、人間の味方をしていたなんて、思いもよりませんでしたよ
       異世界の魔王サマ。」

    カンダタ「…マオが…もう一人…」

     自らと同じ顔…自らと同じ体…そして声
    まるで生き写しのように自分と瓜二つ、それは双子でも何でもなく
    モシャスの呪文によって自らと同じ形を保っているに過ぎない。

     着ている服は異なり、覚えのある白を基調とした巫女服ではなく
    それに反するかのような黒の巫女服だった…。
     手にした武器は以前持って居たような粗末な銅剣ではなく、
    髑髏があしらわれた禍々しい剣だった…。
     以前、魔王時代に見た事がある呪いの剣、皆殺しの剣…。

    「てっきり、自殺でもして死んだと思っていた
       まさか、まだ生きていたなんてね…キャハハハハ」

     ───さて─どうする?
    相手の力は絶対的な強さがある、最上に考慮してかつて自分がもっていた
    強さと同等のものがあると仮定する…。

     正面からは絶対に勝てない…、Lv99の相手にLv20で挑むようなものだ、
    だが…付け入る隙があるとすれば。
     相手が絶対的な力に過信している今がチャンス、全身全霊の
    一撃で仕留める。

    「しかも…その様子…この1年の間
       健気にもアタシと戦う為に鍛えたんだ、ウケル…キャハハハハ」

     何がおかしいのか、たった一人で笑い続ける巫女…
    ふっとその体が浮き上がり、宙を飛んでマオの方にゆっくりと近寄ってくる。

    173 : 創る名無しに見る - 2012/04/30(月) 01:34:20.44 ID:HwrDwFB9.net (+35,+30,-301)

    カンダタ「…は…ははは…やべぇ…
         足が全然動かねぇ…頭じゃ動けって言っているのに
         腰が抜けて全然うごけねぇ…」

     その場にへたり込んで動かないカンダタとプックル、いや…
    その二人に限らずイシスの兵達も全く動けないようだった。

     むしろ、声が出せるだけカンダタはまだマシなようだ。

    マオ「…………二人とも
       動けないならそのまま、死んだふりしていろ。」

     集中してある呪文を唱えるマオ、かつてロマリアの図書館で見た事のある
    最高難易度の呪文……修行を極めた賢者か、あるいは高名な魔法使いにしか
    唱える事はゆるされず、集中を切らした瞬間に呪文が失敗してしまうだろう。

     勝負は一瞬、わざわざ巫女の方から間合いを詰めてくれるのは好都合だ。

     ───あと…3メートル。

    「…まぁ、父様の命令でね…
       勇者オルテガを殺しに来たんだけど、素直におしえてくれない
       かしら?魔王様?」

     巫女は息がかかりそうな距離で、マオの頬を手で撫でる…

    174 : 創る名無しに見る - 2012/04/30(月) 01:35:06.46 ID:HwrDwFB9.net (+35,+30,+0)

    今だ!!

    マオ「…………ペッ!!」

     マオは巫女の目に唾を吐き掛け、巫女が怯んだ隙に唱えた呪文を
    解き放つ!

    マオ「レムオル!」

     キィン!!!

     巫女が目を擦った瞬間に、マオの姿が一瞬にして掻き消え、
    完全に見失う。
     姿をかき消す超高等呪文"レムオル"、先ほども言った通り
    高名な魔法使いにしか使えない呪文であり、マオにはたった数秒
    姿を一瞬消すだけしかの不完全な呪文としてしか使えなかったが、
    その数秒程度もあれば攻撃の隙を作るには充分だった。

    「…貴様ァ!!!」

     ザンッ!!!

     巫女が状況を理解する前に、マオの剣が巫女の首を跳ね飛ばす。
    ここまでたった2秒の出来事だった。

    マオ「ウアアァァァァァァァァァ!」

     さらに、マオの誘惑の剣が巫女の心臓を串刺しにし
    剣が背中まで貫通する…。
     頭を失った首が大量の血を吹き出し…マオの体を染める…
    噴出した血は赤ではなく、魔族の血と同じ紫の血だった…。
    175 : 創る名無しに見る - 2012/04/30(月) 01:36:10.24 ID:HwrDwFB9.net (+35,+30,+0)

     マオは剣を巫女の体から抜き…ケリを放つと巫女の体は
    力無く地面に横たわる…。

    マオ「………ははは…これで、完全に元の体には
       戻れなくなったな……。」

     だが、倒すにはこれしかなかった…
    相手を捕獲して自らの体と交換させるなど無理な話だと思っていた。


    『やってくれるじゃない……ベホマ…!』

     砂漠に転がった巫女の首が目を開き…
    やがて時が戻るかのように、巫女の体が起き上がり、
    首が元の位置に戻っていく。

    マオ「………くっ!……。」

     失敗か…、一撃で魔王クラスを倒すなんぞ
    人間の力では無理な話だったようだ…。

    「まさか…首を跳ね飛ばされるなんて
       おもってもみなかったわよ」

     巫女は憎悪の表情のまま、マオの首を右手で掴み
    そのままひねり上げる。

    マオ「………うっぐぐぐぐぐぐ…。」

     マオの顔が苦しそうに歪み、赤からやがて
    紫色に変わっていく。

    176 : 創る名無しに見る - 2012/04/30(月) 01:38:04.43 ID:HwrDwFB9.net (+35,+30,-178)
    カンダタ「…やめ…ろっ!…」

     カンダタが止めようとするが、動けない…
    魔王の力に気圧されて体が意志に従わないのだ。

    「苦しい?そりゃぁ…苦しいわよね
       人間は首を絞められると息ができないものね」

     巫女は狂気の笑みをマオの向ける。
    ───恐怖…、魔王時代に感じた事の無い感情を
    マオは感じていた。

    「人間は首が無くなると死んじゃうから
       とりあえず、右腕で我慢してあげる!」

     ブッ!!!

    マオ「……ッ!!!??」

     何があったか理解は出来なかった…、しかし
    自らの右腕が砂漠の上に転がっているのを見た時、
    右肩から激痛がほどばしった。

    177 : 創る名無しに見る - 2012/04/30(月) 01:38:43.58 ID:HwrDwFB9.net (+35,+30,+0)
    「次は左っ!!!」

     先ほどと同じように、左腕が跳ね飛ばされ、
    マオが気を失いかけた時、再び右手で首を掴み…持ち上げ。

     左腕を腹に突き立て、背中から突き出す。

    「まだまだ…気を失われちゃ困るのよ!
       アタシの痛みはこんなものじゃすまなかったんだから!!
       アハハハハハハハハハハハハ…………」

     正気を失ったような狂った高笑いをする巫女、ひとしきり笑い…
    ふと…マオが死んでいる事に気が付く…。

    「ちぇ…死んじゃった………つまんないの…」

     子供が飽きた玩具を投げ捨てるように、マオを放りだす
    無残に惨殺された体は砂漠の砂の上に投げ捨てられる。
     ふと…カンダタと目が合う。

    カンダタ「…っ!!!…」

     恐怖の表情に顔が歪むカンダタ、新しい玩具をみつけたかのように
    不敵な笑みを浮かべる巫女。
     カンダタに手を伸ばそうとし───────。

    ????『何を遊んでいる、巫女よ』

    「!!…父様………………いえ、バラモス様」

     突如、空から聞こえた声に巫女の手が止まり、片膝を付く。

    バラモス『オルテガはもはやその国には居ない
        お前の任務はオルテガを殺す事だ…追え!』

    「はっ!」

     巫女は砂漠に転がったマオを一瞥すると、
    まるで興味が無くなったかのように鼻で笑い。

    「ルーラ!」

     ルーラの呪文を唱えると同時に、光の尾を残してその場から
    消えて行った。

    178 : 創る名無しに見る - 2012/04/30(月) 01:43:05.08 ID:HwrDwFB9.net (+35,+30,-60)
    と、言う訳で主人公が死んだ所で区切って寝ます、
    GW中はお出かけする上に、休み明けは仕事が夜間対応なので
    もしかしたら、すぐには続きが書けないかもしれません。
    (ので、手持ちの備蓄を良い所まで投下してみました)

    プライベートな事情で申し訳ないです、でも続きは考えておきます。
    179 : 創る名無しに見る - 2012/04/30(月) 08:43:17.34 ID:9V88yUFy.net (+19,+29,-4)
    面白いよ
    待ってるよ
    180 : 創る名無しに見る - 2012/05/03(木) 10:40:42.76 ID:NhrKGbs5.net (+29,+29,-12)
    サンクス、そう言ってもらえると嬉しい
    頑張って完結させたいけど、このペースだと
    いつになるやら。
    181 : 創る名無しに見る - 2012/05/03(木) 11:02:34.27 ID:NhrKGbs5.net (+35,+30,-242)
     ◆◇◆◇ ????? ◆◇◆◇

     人も魔物も死んでしまうとどこに行くのだろうか?
    天国?それとも地獄か?

     人は善行を重ねると天国へ導かれ、悪行を重ねると
    地獄へ落とされると言う。

     しかしだ、人や魔物にとってどこまでが善行で
    どこからが悪行なんだろうか?

     例えば、今夜の晩御飯に鶏肉を食べた、
    鶏を殺すのは善行か?悪行か?

     人間が飼っている鶏を殺すのは悪行にカウントされないのか?
    悪行だと言うならば、人間は食べる事すら否定されてしまう。

     では、食べる事は悪行にカウントされないのか?
    だったら、食べる為に何をしても良い事になってしまう。

     私の出した答えは、死後の世界は無いと言う事だ
    人間も魔物も、死んでしまったら無に帰る。
     天国や地獄も…ましてや転生して生き返る事も無い、
    そうだと思っていたのだが…。

     そうだとするのなら、私が目を覚ましたこの部屋は
    一体なんなのだろうか?

     目をさまし…右手で目を擦る…。

    182 : 創る名無しに見る - 2012/05/03(木) 11:03:04.58 ID:NhrKGbs5.net (+35,+30,-240)
    マオ「あれ?」

     右腕がある、それどころか左腕もあり…そして腹に開けられた
    風穴が無くなっている。

     見渡すと棺桶の中に入れられていたようだ…死後の世界は
    棺桶ごと送られるらしい…、初めて知った。

     しかし神様と言う奴は、サービスが良いらしい…
    確かに天国にせよ、地獄にせよ…両腕が無いと不便極まりない。
     けど、服ぐらい着せて欲しい所ではあるが。

    ???「もうよろしいのですか?…マオ様」

     顔立ちが整った女性が声を掛けて来る、天国の住人だろうか?
    とりあえず体を起こして─────。

    ???「あ、無理をなさらないで下さい…
        貴女は死んでいたんですから」

    マオ「ぶえっくしょい!………あんたは?」

    ???「私はイシスの女王…
        貴女の事はオルテガ様より伺っています」

     イシスの女王と名乗った女は、マオに服を渡しながら
    にっこりとほほ笑んだ。
    183 : 創る名無しに見る - 2012/05/03(木) 11:03:36.69 ID:NhrKGbs5.net (+35,+30,-279)

     どうやら…私…ことマオは巫女に完膚無きまでに
    見事に負けてしまったらしく、巫女
    ─イシスでは彼女の事は魔女と呼ばれているようだが─
    の逆鱗に触れ、それはそれは酷い殺され方をしたらしい。

     では、どうして今はまた生きているかと言うと。

    イシス「それは…アリアハン国王陛下
         いえ、元国王陛下のおかげなのです」

     どうにも、死んでしまった私はイシスの墓に埋められる
    予定だったらしいのだが、アリアハン国王はアッサラームで稼いだ
    全財産をはたいて、秘薬『世界樹の葉』を手に入れてくれたらしい。

     その『世界樹の葉』を探す為に、国王どころかカンダタまでも
    アッサラーム中の店からブラックマーケットまで、足を棒にして
    探し回ってようやく見つけてくれたのだとか。

    イシス「…マオ様は…良いお仲間に恵まれましたね」

    マオ「まったく、死んでもコキつかってくれるとはね」

    184 : 創る名無しに見る - 2012/05/03(木) 11:47:52.80 ID:4M+on+Pl.net (+19,+29,-3)
    おっ!おかえり楽しみにしてたよ
    185 : 創る名無しに見る - 2012/05/03(木) 13:25:21.76 ID:NhrKGbs5.net (+35,+30,+0)
    ありがと、でも出かけるのは一応これからなんだけどね、
    雨だから1日先送りしただけで。
    //---------------------------------------------

     ◆◇◆◇ イシス王国:謁見の間 ◆◇◆◇

     巫女の襲撃以降、大体二週間ほど経過したらしい
    モンスター達の襲撃によって、ボロボロにされた街は
    人々の手によって、随分綺麗に修復されていた。

     人間とは逞しい生き物である。
    しかし…。

    マオ「魔物が襲撃して来たのは、やはり
       師匠を狙ってか?」

    イシス「そのようです、魔王バラモス討伐に向かう
          オルテガ様を旅立つ前に倒そうとしたのでしょう」

    カンダタ「よう!マオ!」

    国王「死んでも生き返らせられるなんて、お主も難儀な奴よ」

    プックル「ガウ!」

    マオ「お前達…」

     謁見の間で女王と話し込んでいると、仲間達が現れる、
    どうやら、イシスの街で色々と復興の手伝いをしていたらしい。

    マオ「すまないな
       心配を…掛けたか?」

    カンダタ「その…な…
         謝るのはこっちの方だ、奴の気に当てられて
         俺達はお前がやられているのに、何もできなかった」

     それは仕方が無い話でもある、並みの人間の精神力では
    あの魔王の力を持つ人間の前では、立つことすら出来ないだろう。
    186 : 創る名無しに見る - 2012/05/03(木) 13:26:02.80 ID:NhrKGbs5.net (+35,+30,+0)
    カンダタ「無敵と思っていたお前さんが、目の前で…
         あんな死に方されるとな…
         しかし…すげぇ魔物だったな、あいつ
         この俺が一歩もうごけねぇとは」

    国王「ワシは…直接見ていないが…
       どんな奴なんじゃ?」

    マオ「巫女だよ…」

    国王「なっ!」

     二週間も過ぎたのに、カンダタに聞いていなかったのか
    国王が驚愕の声を上げる、蘇生させる為に『世界樹の葉』を探して
    それどころではなかったのかもしれないが。

    国王「奴が現れおったのか!?
       なるほど、お前さんが殺される訳じゃ」

    マオ「………しかも、随分性格が変わっていた
       アレが素なのかもしれないが」

    カンダタ「なんだ、なんだ?
         あの化け物女の事を知っているのか?おめぇら」

     いい加減カンダタには話しておくべきだろう、それに
    魔王の力をもって巫女がイシスを襲撃したりした以上、
    イシスの女王も無関係ではない。

    マオ「話しても良いか?アリアハン国王?」

    国王「構わぬよ、ワシには止める理由も権利もない」

     国王が頷くと、マオは今までの経緯をカンダタやイシスの女王に
    説明する、異世界から召喚された魔王で有る事、そして魔王の力を
    奪われ死にたいと思っていた所をカンダタに助けられた事。
     魔王の力を奪ったのは巫女であり、その力を使って
    イシスを襲撃して来た事。
    187 : 創る名無しに見る - 2012/05/03(木) 13:26:48.69 ID:NhrKGbs5.net (+35,+30,+0)
    イシス「なるほど…大体の事情は分かりました」

    カンダタ「おめぇさん
         ただの女じゃねぇとは思っていたが…
         中身は魔王だったとはな」

    マオ「幻滅したか?」

    カンダタ「いや、納得した…
         お前さんだけがキラーマシンを動かせる理由
         俺達が知らない知識や、レムオルなんて高等な
         呪文が使える事…確かに、普通の女とは思ってなかったがな…」

    イシス「それで…
         マオ様はどうされるつもりですか?
         元の体を取り戻されるおつもりですか?」

    イシス「それとも、元の世界に戻られるおつもりですか?」

    マオ「………………………それなんだよなぁ…」

    国王「と、言うと?」

     軽く国王の頭を小突きながら、マオは答える。

    マオ「最初はこのタコ助どもにこの世界に無理矢理呼ばれたものの
       実は、元の世界に戻ろうってつもりはあまり無い」

    イシス「では、この世界を支配するおつもりで?」

    マオ「魔王=支配って考え方がどうも偏見臭いけど
       だからと言って、この世界をどうこうって気分でも無いんだよな
       支配するって事は、人民を導いて統治するって面倒な事もコミだし」

    イシス「魔王としての意識は薄れている…って事ですか」
    188 : 創る名無しに見る - 2012/05/03(木) 13:28:26.79 ID:NhrKGbs5.net (+35,+30,+0)

    マオ「多分…私よりマズイ事になっているのは
       あの巫女の方でしょうね、本人は気が付いていないみたいだけど」

    カンダタ「どういう事だ?」

    マオ「これは私の仮説だけど………」

     人間でも魔族でも魔物でも、体と心と言うのは表裏一体のものだ、
    実際生まれた生物は何年もの長い時間をかけて、体と共にそれに見合うように
    心も成長させて行く。

     魔王が巫女の体を動かせているのは、魔族の膨大な精神力と経験があるからこそ
    なんとかなっているのではないだろうか?

     心に合わせてここ1年でオルテガの授業の元、体の方も鍛えてきたつもりだ。
    さらに、言うなれば巫女の体は若く成長しやすいと言う点も魔王には
    有利に働いたのだろう。

     逆に14年間、人間の女として生きてきた小娘が、数千年もの間生きてきた魔族の
    男の体を簡単に動かせるのだろうか?
     自分で言うのもなんだが、『魔王』の体には成長する余地は無い。

     魔術の知識があるみたいだから、魔術で無理やり体を扱うような事も
    出来るのかもしれないが、それにしても限度がある…。

     体に心を適合させようと、心の形を体に合わせて捻じ曲げようとする…
    無理矢理な成長のツケは心のエラー…、最悪の場合は精神崩壊すら
    ありあるのではないか?
    189 : 創る名無しに見る - 2012/05/03(木) 13:28:44.45 ID:NhrKGbs5.net (+35,+30,+0)

    カンダタ「それじゃ、巫女さんは放っておけば死ぬって事か?」

    マオ「もしくは…時間を掛けて精神が壊れずに体に合わせて成長すれば
       立派な魔族になるかもしれないな、その頃にはこの体は
       寿命を迎えて居そうだが」

    国王「仮に……仮にじゃ…
       お主が元の体に戻る事が出来たらどうなる?」

    マオ「多分、元サヤって事は無いだろうな…
       少なくとも『魔王』は戻る事があっても『マオ』は
       死ぬだろうな。」

     無理矢理捩じって形を整えたものを、もう一度互いの心と体を捩じって
    元の体に入れようとするのだ、数日…最悪数週間ぐらいならまだしも、
    もう1年以上も過ぎているから、…………多分手遅れ。

     心体共に、人生の15分の1が他人として過ごした経験値になるのだ、
    数千年生きた『魔王』の自我は確率するのかもしれないが、『巫女』の方は
    今よりも心が壊れるか、やはり精神崩壊する事になるだろう。

    カンダタ「なんだか、難しい話になって来たな」

    マオ「とにかく、話を戻すと…
       私としては恩義のあるオルテガ師匠に報いたいとは思うが
       魔王討伐の任務を受けた訳でも無い
       これからどうしたいか、少し考えさせてくれないか?」

    イシス「良いでしょう…、貴女が答えを見出すまで
          客室はご自由にお使いください。」

    190 : 創る名無しに見る - 2012/05/03(木) 13:30:48.12 ID:NhrKGbs5.net (+35,+30,+0)

     ◆◇◆◇ イシス王国:城下町 ◆◇◆◇

     砂漠のオアシスを囲むように作られた街、今日もまた商人達のキャラバンが
    アッサラームの街へと向かっていくのを、マオは城壁の上から見下ろしていた。
     自由に滞在してくれとは言われた物の、タダ飯を食らうのは性に合わないので
    モンスター討伐などに手を貸していたが、これからどうするか全然見いだせなかった。

    マオ「魔王討伐か…オルテガはなんで魔王討伐なんてしようと…
       思ったんだろうな…」

    ????「魔王が魔王討伐とは…随分と面白い事を考えるものね」

     突如、背後から声を掛けられ…マオは慌てて振り返る…
    青い鎧を着こんだ若い女、1年程前に見た事がある…。

    マオ「……あの時のローブ女…いや…オルテガの娘…
       勇者だったか、今度は一体何の用だ」

    勇者「随分と可愛らしい姿になったわね、魔王」

     以前はローブを被っていたが、今回は顔を見せていた…
    どことなくオルテガの面影を持ち・・そして、かつて魔王だった頃の
    自分と同じぐらいの強さを持った人間だと言うのを感じ取れる。

    マオ「……私を殺しにでも来たか?
       殺すなら巫女の方を殺せよ、今や私は魔王は廃業したんだ
       世界の脅威とやらになるのはあっちの方なんだからな」

    勇者「今のお前を殺す意味もつもりもないわ…
       巫女も魔王バラモスも大魔王ゾーマも」

     なんとも、勇者らしくもない言い方だ…
    勇者であるのに魔王を討伐するつもりもない?
    191 : 創る名無しに見る - 2012/05/03(木) 13:31:31.34 ID:NhrKGbs5.net (+35,+30,+0)

    マオ「…どういう事だ?
       お前の父オルテガは魔王を討伐するらしいが、お前は
       そのつもりは無いのか?」

    勇者「父さん…か……」

     初めて…勇者の表情に感情のようなものが浮かぶ、悲しみのような
    表情が一瞬現れ…そして消える。

    勇者「………バラモス城へ行け、
       お前の疑問は全てそこで分かる」

     思わせぶりな事を言ってくれる、しかし…何かを知っている風ではあるが
    この場でしばき倒せる相手ではない…。
     勇者は懐から笛のようなものを取り出し、マオに放り投げる。

    マオ「……笛?」

    勇者「やまびこの笛だ、その笛が六つのオーブがある場所を示す…
       オーブを集め…不死鳥ラーミアを復活させろ」

    マオ「不死鳥…ラーミア?」

    勇者「心正しき者のみが乗れる、伝説の不死鳥だ
       ラーミアのみがバラモス城への道を開くことができる」

     心正しき者…ねぇ…
    魔王の心を持った人間が、果たして正しいと言えるのだろうか?
    ─────それ以前に。

    マオ「お前の言う事を…この私が聞くとでも?」

    勇者「異世界からお前が呼び出された理由、この世界の魔王が
       何を成そうとしているのか、すべてはそこにある
       お前は必ずバラモス城へ向かう…必ずな
       ………ルーラ!!」

     光の尾を引いて空の彼方に消えてゆく勇者を見送りながら、
    マオは溜息をつく…。

    マオ「ったく…勝手な事ばかりいいやがって」
    192 : 創る名無しに見る - 2012/05/03(木) 13:39:44.15 ID:NhrKGbs5.net (+37,+30,-58)
    とりあえず、今日はここまで。

    自分でやっておいてなんだけど
    話がどんどん難しくなってきた、

    >>1000・・と、言うより>>800-900ぐらいで終わり予定だけど
    ちゃんと狙って落とせるのか、ペース配分が難しい。
    あまり間延びすると話もダレるし。
    >>19の言う通り、>>1000を狙って話を落とせる奴居るのか?

    ここらで>>300-400ぐらいの予定だったのに、まだ>>200にすら
    届いていない。

    それじゃ、雨も止んだので今度こそ旅行にお出かけ。
    193 : 創る名無しに見る - 2012/05/07(月) 21:01:54.65 ID:zQif5VtI.net (+11,+21,-1)
    >>1

    期待してます
    194 : 創る名無しに見る - 2012/05/08(火) 00:04:33.37 ID:beQ4eSOj.net (+33,+30,+0)
    ありがとう、不定期だけと頑張っていくお
    //---------------------------------------------
    国王「お…いたいた…
       こんな所に居おったか、探したぞ!」

    プックル「ガウ!!」

     街の外れで勇者から受け取った
    やまびこの笛を調べていると、マオを探していたらしい
    国王とプックルに声を掛けられる。

    マオ「国王、プックルも…
       いったどうかしたのか?」

    国王「すまんが少しキラーマシンを出してくれぬか?」

    マオ「キラーマシンを?何故?」

     一体どういう事だろうか?
    何か緊急事態が発生した…といった感じには見えないが。
    見ると、国王やプックルまでも背中に荷物を背負って
    旅支度を整えていた。

    マオ「どこか出かけるのか」

    国王「ふふふふふ…これじゃよ、これ!」

     国王は荷物の中から何やらボロボロの巻物のようなものを
    取り出し、広げて見せる。
     随分と古い物らしく、何度も補修した後がある。
    絵柄と共に記載されている文字を読んでいくと。

    195 : 創る名無しに見る - 2012/05/08(火) 00:05:19.31 ID:beQ4eSOj.net (+35,+30,+0)

    マオ「………………黄金の爪?」

    国王「そうじゃ!黄金じゃ!お・う・ご・ん!
       ふふふふふ…世界樹の葉をブラックマーケットで
       手に入れた時に、この古文書も手に入ったのじゃ」

     読み上げると国王は興奮して騒ぎ出す。

    国王「この書物によるとな、イシスからずっと北にある
       ピラミッド…ファラオ王の墓所にこやつが隠されている
       らしいのじゃ!」

    プックル「わう!!」

     国王に釣られてかプックルまで騒ぎ出す。


    マオ「落ち着けって」

    国王「これが落ち着いていられるか!?
       黄金の爪のみならず、この書によるとファラオ王の
       隠し財宝が───────。」

    マオ「そんな隠し財宝の話を大声でする奴があるか
       それに、よく知らないがこの国の王族の墓所なら
       イシス王家に許可を貰なわないと色々マズイんじゃないか?」

    国王「無論…もらっておるわい!
       『魔王討伐の為にお役にたてるならどうぞお持ちください』
       とか言っておったぞ」

     国王は親指を立ててニヤリと笑う…
    何と言うか、暑苦しいスマイルだ。
    196 : 創る名無しに見る - 2012/05/08(火) 00:06:07.78 ID:beQ4eSOj.net (+33,+30,+0)

    マオ「別に私は、魔王討伐に強力すると決めた訳じゃ──────。」

    国王「世界樹の葉を買う為に、全財産をはたいたからのぅ
       魔王討伐するにせよ何にせよ、まずは先立つモノが必要なんじゃよ」

    マオ「うっ───。」

     それを言われると弱い所でもある、別に死にたくて死んだ訳でもないが、
    マオの事情で国王に全財産を使わせたのは事実ではある。

     ◆◇◆◇ ファラオ王のピラミッド:入口 ◆◇◆◇

     イシスより北方向へ数日進むと、イシス王家の墓…ファラオ王が築いたと言う
    巨大な三角錐の意志の建造物が見えて来る…。
     砂漠の砂の中に佇むそれは、大昔に人や魔物の奴隷を使って作り上げたもの
    だと言う。
     大昔、イシス王家が力を持って居た頃の時代の墓であるため、このピラミッドに
    財宝があると信じ、盗掘に訪れる者も少なくは無い…。
     しかし、このピラミッドを荒らす者はファラオ王の呪いに阻まれ、ことごとく
    命を落とすのだと言う。

    カンダタ「俺も盗賊の端くれだからよ、ピラミッドの噂は聞いた事あるけどよ
         ここに手を出す奴は余程の自信家か、ただのバカだぜ?」

     ピラミッドを見上げて、カンダタは気が乗らないような表情で言う。

    マオ「珍しいな、お前が尻込みするとは」

    国王「おばけがこわいのかのぅ?
       無理せずにここで番をしておって良いぞ?」

    プックル「がう!」

    カンダタ「わーったよ!行くよ
         俺も行くって」

    197 : 創る名無しに見る - 2012/05/08(火) 00:06:35.57 ID:beQ4eSOj.net (+35,+30,+0)

     マオ達は荷物を纏めて、ランプに火をつけてピラミッドの入り口を
    潜り抜ける。
     ピラミッドは外も内側の石造りのようであり、しかもその石の一つ一つが
    均等の大きさであり、人に動かせるような代物ではない…。

     基本的に建物の中は通路ばかりで、十字路を繋ぐ小さな部屋が
    ところどころにある、そんな感じの作りだった。

    マオ「ここを作るのに…どれだけの労力がかかったんだろうな」

    国王「さぁのう…ただ…数千か
       数万の魔物がここを作り上げる為に命を落としたと聞くのぅ」

    カンダタ「しかも…完成した後も王を守る為に
       多くの人々が一緒に埋められたって聞くぜ…
       そいつらが…盗掘者を阻むんだとよ」

     カンダタは青ざめた顔で言葉を繋いだ時…、
    ふと…何かの音がした…

    プックル「フゥーッ!!」

     プックルが通路の奥の闇に向けて唸り声を上げる。
    …カサ…カサ…カサ…。

     布が擦れるかのような微かな音が聞こえる…。

     ───ファラオの眠りを妨げる者は誰じゃ───。

     重々しい声が通路の奥から聞こえ…そして、全身を
    ボロボロの包帯で包んだ男達がゆっくりと姿を現す。

    198 : 創る名無しに見る - 2012/05/08(火) 00:07:34.00 ID:beQ4eSOj.net (+35,+30,+0)

    カンダタ「で…で…でででででで…
         でたぁぁぁぁああぁっ!」

     カンダタが体に合わない悲鳴を上げる。

    国王「ミイラじゃ!これが古文書にある
       ミイラ男じゃ!」

     ───賊どもに…死を!───。

     全部で4体のミイラ達は、意外に素早い動きでマオ達に
    襲いかかって来る。

     マオは誘惑の剣を抜き放ち、プックルと共に前に
    飛び出し…ミイラ男に斬り付ける!

    マオ「死人は大人しく寝てろっての!」

     かくいう、先日まで自分もその死人と同じだったからして
    あまり人の事を言えないのだが…。
     マオの剣がミイラ男を深く斬り付けるが…、手ごたえは無い。

    マオ「な…なんだ!?」

    カンダタ「そいつは元から死んでいるだろうが
         どうやって殺すんだよ!?」

    マオ「殺すまでもなく…
       破壊すれば良いんだろ!!」

     カンダタの悲鳴に応えるように、マオはミイラ男の胴を
    全力で蹴り放ち、倒れた所をプックルの爪が襲いかかり
    ミイラ男の胴を二つに引き裂く。

    199 : 創る名無しに見る - 2012/05/08(火) 00:13:36.87 ID:beQ4eSOj.net (+35,+30,+0)

     なんとかミイラ男を撃退しかけた所で。

     ───死を!賊どもに死を!───。

     ミイラ男の一体が国王に掴みかかろうと飛びつく。

    マオ「国王!」

    国王「これでも喰らえぃ!」

     国王は懐から聖水を取り出すとミイラ男に向かって
    投げつける。
     たまらず苦しそうにのたうち回るミイラ男に、ホーリーランスを
    突き立てると、ミイラ男はそのまま動かなくなる。

    国王「ナメるんじゃないわ!ワシでも
       これぐらい出来るわ!」

     国王は親指を立てると、例の暑苦しいスマイルで
    マオ達に応えた。

     ◆◇◆◇ ファラオ王のピラミッド:1F ◆◇◆◇

     通路の先に宝箱などがあったが…先に入った盗掘者達の
    被害によるものか、宝箱はカラッポだった…。
     残っているものは宝箱の形をしたモンスター、人食い箱ぐらい
    しか残っていない。

    カンダタ「こいつは…あまり期待できないんじゃないか?
         すでに盗掘されちまった可能性もあるぞ?」

    国王「はっ!まだ入り口じゃないかい!
       価値ある宝ってのは奥にあるものと相場が決まっておるんじゃ」

    カンダタ「勘弁してくれよなぁ…」

     テンションの高い国王に比べて、カンダタやげんなりしたような
    表情で応じる。
    200 : 創る名無しに見る - 2012/05/08(火) 00:22:28.68 ID:beQ4eSOj.net (+46,+29,-36)
    今日はここまで、
    やっと……やっと>>200達成……
    先日書いた通り、夜間勤務が暫くはいるのでペースが落ちます。
    (元々、そんなに早くもありませんけど)
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