元スレ上条「俺がジャッジメント?」初春「2です!」
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251 :
我慢するつもりだった。
自分に自信が持てるようになるまで、この想いはまだ胸の奥にしまっておくつもりだった。
でも。
優しい彼に触れ、温めてくれて助けてくれて守ってくれて。
近くにいるだけで、大好きで頭がパンクしそうなほど心の奥底から想いが膨れ上がっていた。
温かくて、強くて、優しくて、カッコよくて。
公園の街灯が彼の優しい笑顔を照らし、それが自分の視界を埋め尽くす。
涙を拭ってくれたその行為は、何回目だっただろうか。
この世界に一人だけしかいない、自分の特別な人。
狂おしいほど想いが溢れ出し、心に課した制約も打ち破って初春は上条の首元に腕を回し。
唇を、重ね合わせていた。
上条「んぐっ!? んんん~~~~~~っ!!」
初春「…………………………」ギュッ
脳が溶けてしまいそうな、甘美な柔らかさ。
重なった唇からも想いを滲み出し、少しでも多く強く想いが伝わればいい。
離れたくない、離したくない。
目を閉じたこの世界にあるのは、自分を満たす温もりだけであった。
252 = 1 :
御坂妹「こここここら、離れなさいっとミサカは慌てふためきながら二人を引きはがします!」グイッ
上条「んんー…………ぷはぁっ! う、初春さん…………!?」
初春「ん…………………………ぷは」
公園内の街灯が一つに重なった影を写し出していたが、場に現れた三人目の登場によりそれは二つの影へと姿を戻していた。
後ろから御坂妹に羽交い締めをされる形で少し後方へと引き下がり、息を何とか整える。
胸が。
胸の動悸がやばい。
それと唇に残る柔らかさと、甘さと香りと。
視界がぐるぐる回るような、そんな感覚だったが何とか意識を保っていた。
上条「う、初春さん………………」
初春「……………………」
離れてから、目の前で下を向く少女に声をかける。
突然の事で戸惑った。
戸惑いというか焦りというか落ち着けないというか、そんな感じ。
この唇に触れた柔らかさと、彼女がその直前に呟いた言葉と。
まさか、と思った。
253 = 1 :
初春「……………………」
上条「初春、さん……………………?」
しかし引きはがされ、あれから動かなくなった彼女の様子が気にかかる。
俯いてピクリとも動かない彼女に声をかけるが、返答はない。
上条「ど、どうしたんだ………………?」
初春「……………………ふ」
上条「…………ふ?」
初春「ふぁっ」フラ
上条「のわっ、う、初春さーん!?」ダキ
突然前のめりに倒れそうになった彼女を正面から抱き止める。
その小さな感触が上条に再び胸の動悸を呼び覚ますが放っておく事などできるはずもない。
どうしたのか、と初春の顔を確認すると。
初春「当麻、しゃぁん…………」グルグル
ぐるぐると目を回していた。
254 = 1 :
初春「す、すみません………………」
上条「大丈夫か?」
初春「は、はい///」
御坂妹「……………………」
とりあえずと公園のベンチにて落ち着かせる為に並んで座る。
初春の頭は上条の肩にこつんともたれ掛かっており、上条はギュッと彼女の手を握っていた。
彼女がいる方とは逆の方向から何やらドス黒いオーラが感じるのだが今はそれよりも彼女を介抱する事が先決なのだろう。
とはいっても、上条自身も落ち着けていない。
まあそれもそうだ、初めての経験のあんな事をしたのだ仕方のない事なのだろう。
上条「だ、大丈夫ならいいけど」
初春「あ、ありがとうございます」
御坂妹「………………………………」
はぁ、と左隣から溜息を吐く音が聞こえる。
そちらの方を見ると、御坂妹はなんだか不機嫌そうにしていてむすっと頬を膨らませていた。
上条「そ、それで。御坂妹はどうしてここに」
御坂妹「ミサカはお邪魔虫だったみたいですねとミサカは自嘲気味に溜息を吐きます、はぁ」
上条「いや…………そ、その、あれはだな…………み、見たのか?」
御坂妹「ええそれはもうバッチリと。MNWにも接続しっぱなしでしたから今妹達はお祭り状態ですとミサカは答えます」シレッ
上条「げっ…………ま、まじかよおおぉぉ」
初春「ど、どういう事なんですか?」
御坂妹「ええ、妹達の嫉妬と羨望により今後あなたの唇を奪いに来る輩が恐らく増える事になるだろうと思いますはい、とミサカは危険である事を匂わせます」
上条「はぁっ!?」
255 = 1 :
御坂妹「という訳ですので、ミサカもむちゅー」
上条「お、落ち着けって御坂妹!」
初春「だだだだだダメです!」ギュ
上条「ぬおおおおおお頭を抱え込まないで色々感触がやばいいいいいいい!!」
御坂妹「…………あなたが一番落ち着いてない様ですが、とあなたの言葉に反論します」
初春「むー」ギュギュ
上条「」チーン
柔らかい温かな感触に上条が言葉を無くしていると、ふっと御坂妹は視線を上条から初春に移す。
その何かを捉えているような、捉えていないような目の光にちょっぴり怯えるがこの腕の中は渡したくはない。
先程自分がしてしまった事と、今彼を挟んで向かい合う美琴の顔そっくりな妹と。
頭の中が色々ごっちゃになっていて、彼の頭を抱く腕に込めるしか出来ないでいた。
上条「ぎ、ぎぶ…………そろそろ息ががが」ポンポンポンポン
初春「わっ、と、当麻さんすみませんっ」
上条「ぷはっ、あ、焦った………………」
初春「…………」シュン
御坂妹「冗談です、とミサカはしぶしぶながらも引き下がります」
苦しそうに初春の腕を叩いた上条の頭を離し、反省するようにシュンと頂垂れる初春。
それでも彼の腕は離したりはしないのだが。
上条としても嫌な気分なんか全っ然なく寧ろ初春の身体の甘い香りに溶けそうになった頭を必死に立て直していた所であった。
256 = 1 :
御坂妹「先程のあなたの質問に答えます。ミサカがここにいる理由としては、お二人が帰る頃にちょうどアルバイトが終わり偶然帰り道にお二人の姿を見かけたのです、とミサカはここにいる理由を明かします」
上条「そ、そうだったのか」
御坂妹「ついでに言うとそちらの方にも用がありましたので、とミサカは付け加えます」
初春「わ、私、ですか…………?」
御坂妹「はい、とミサカは頷きます」コクン
ふとそこで御坂妹が話題を変えた事によって、場の空気が変わる。
二人の間に挟んだ上条越しに、御坂妹はペコリと初春に頭を下げていた。
御坂妹「あの時はお世話になりました、とミサカはお礼を告げます」
初春「え……………………?」
初春の聞き返すような声が響く。
それは本当に心当たりがないようで、突然下げられた頭に戸惑っていた。
初春「え、え…………す、すみません。何の事でしょうか…………」
御坂妹「はい。あなたが身を通して守ってくださった…………ミサカの『妹』の事です、とミサカは教えます」
上条「『妹』…………? ってもしかして、打ち止めの事か?」
初春「…………打ち止めちゃんの事、ですか?」
御坂妹「はい。上位こt…………『妹』から聞いたのですが、命を助けて下さったようで」
初春「あ」
そういえば以前にも病室で打ち止めと一方通行からその事について感謝を告げられていた事を思い出した。
打ち止めを『妹』と呼んだ彼女は、やはり打ち止めとは姉妹関係なのだろう。
257 = 1 :
とはいっても、こうして礼を告げられる為にやった事ではない。
自分でも知らぬ内にそうしていただけだったから。
ジャッジメントとして、自分の掲げる正義を通したまでの事で。
御坂妹「あなたの事は『妹』から聞かされていました。この人と仲がいい事も、とミサカはあの幼女が喜々として言っていた事を思い出します」
上条「あの幼女って…………」ハハ
初春「い、いえ、当たり前の事をしただけですよ」
御坂妹「それが結果ミサカ達の大事な『妹』の命を助ける事に繋がったんですから、やはり『姉』としてお礼は告げておきたかったのです、とミサカは改めて感謝の意を告げます」
先程のレストランでの意味深なあの視線は、これだったのかと初春は感じた。
その言動から彼女も彼に好意を向けている事がなんとなくわかるのだが、それは自分に対する敵意ではなく寧ろそういう事だったのかと驚いていた。
御坂妹「まあ、ミサカはそれだけを言いに来ました、とミサカは立ち上がります」
そして立ち上がって、再度頭を下げる。
初春もそれにつられて立ち上がり、咄嗟に頭を下げていた。
初春「そんな、わざわざ」
御坂妹「まだまだ調整中の身ですのでそろそろ戻らなければカエル医者に注意されてしまいます、とミサカは帰宅しますと告げます」
初春「あ、は、はい。それでは…………というか調整、って?」
御坂妹「それでは、失礼します」スタスタ
上条「…………あいつなぁ」
258 = 1 :
言うだけ言って背を向けて歩き出した御坂妹の背中を見て、初春と上条はただ眺めていた。
言葉の節々に気になるワードはいくつかあったのだが、なんとなく聞けずじまいのままその背中に初春は一礼する。
初春は思いもしないのだろう、御坂妹の様な妹達がまさか一万人近くいるだろうとは。
ふぅ、と息を吐く声が上条から響くと初春は上条の方に振り向く。
初春「…………当麻さん」
上条「ん?」
周りを見る。
この公園内は御坂妹が立ち去ってから、人の気配はもう何もない。
名前を呼んだ彼のキョトンとした顔が、何だか妙に可愛らしく感じた。
先程の御坂妹の言動といい、今日の黒子の様子といい、ハッキリと自分に彼が好きだと言った美琴といい、インデックスといい。
彼に好意を向ける者は、驚くほどたくさんいる。
でも、負けたくない。
自分がここでそうするのは卑怯なのかもしれない。
それでも、もし彼が他の誰かに取られるのならば、と考えると身が震えるほど怖い。
だから、もう一度首に腕を回して驚く彼のその唇に自身の唇を重ねていた。
時が止まったかの様な時間、幸せの愛の感触。
初春は気付いたのだろうか、その時彼の腕が初春の背中に無意識で回されていた事に。
259 = 1 :
「おい、本当にやるのかよ…………」
「ちーっとコピーを拝借させていただくだけだ、別に取り上げたりしねーよ」
「俺はしらねーぞ…………」
明かりが消えたあるビルの中で、そわそわしている様な三人の静かな話し声が響く。
一人がその頑丈に閉められた扉の前でごそごそ鞄から何かのカードの様な物を取り出すと、扉の横に取り付けられた 機械にそっと当てる。
ピピッ──────ガチャ。
「おい、お前それどうした」
「ん? あー、ちょっとなー」
「ここジャッジメント駐在所なんだろ? いいのかよ…………」
こういう事に慣れているのか、妙に手慣れた手付きで一人が入室するとその後ろにいた二人も入っていく。
自分達の様な人間からしてみればまさに敵地の様な場所になかなか落ち着かない。
そわそわした様子の二人とは違い、口でくわえたライトの光を手掛かりに一人は悠々と目的の物へと向かった。
260 = 1 :
それにUSBステイックを挿し、コンピュータを立ち上げる。
見た事もないそのOS?に少々面食らったが基本操作はまあさほど変わりはないのだろう。
「ど、どうだ?」
「おk、妙なセキュリティの物は設定されていないようだ」
「早くしてくれよー、俺は一刻も早くこんな所から出たい気分だ」
カチカチ、とマウスを動かしてシステムファイルをUSBの中にぶち込む。
「ここをこうして、と」
「お、腕章がある…………へへ、ジャッジメントだ! ってな」
「ジャッジメントですの! の方がよくね?」
「まんま白井だな、それ」
「あーそうそう白井っつったっけ? あの子も可愛かったよな」
「お前昨日芳川サン芳川サン言ってたんじゃねえか。さっきも木山サンがどうのこうの言ってたのは誰だったか?」
「うるせえ。あんな可愛い子達に囲まれていつも遊んでいるお前に言われたかねーよ」
「あの恐ろしさの前じゃ手も足も出やしねえがな」
「……………………それは納得だ」
261 = 1 :
コツン、コツン────────
「「「!!」」」
そこで廊下の方から誰かの足音が響き、三人は咄嗟に息を殺す。
二人は物影に隠れ、一人はコンピューターのディスプレイにそこにあった膝掛けを被せ光を消した。
コツン、コツン、コツン、コツン、コツ……………………────
「「「………………ほっ」」」
その足音がこの部屋を通り過ぎたの確認すると、三人は胸を撫で下ろす。
二人は自分の口に手を当てて少しでも音が漏れないように必死になっており、その胸の動悸から如何に焦っていたかを物語っていた。
「まだか?」
「おう、今終わった」
「おっしゃ、んじゃさっさとずらかろうぜ」
「ああ」
コンピューターの電源を落とし、USBスティックを抜いてそれをポケットにしまう。
咄嗟に取った膝掛けを元の通りに畳み直し、それを椅子の上に置いた。
ふう、と一息ついて三人は部屋から抜け出して行った。
「しかし、本当にそんなんでいいのかよ?」
「ん? ああ、木山サンの言葉に間違いはないと思う。普通のやり方では存在しない物、別次元の構築プログラム、守護神。恐らくビンゴ………………だといいんだがなぁ」
「「そこは自身持って言い切ろうぜ」」
そしてビル内から抜け出した三人はビルの裏手に横付けしてあった車に乗り込む。
果たしてこれが合っているのだろうか、その解答が得られるのは明日になりそうだ。
合っている事をその車を運転する男・浜面は願っていた。
262 = 1 :
初めてのキスの経験?俺には聞かないでほしいなん
春もこない俺に誰かplz
大きくないちっぱいが
好みです
きくらげ
次から展開動かそうと思いますん、また次回!
264 :
乙
五和は俺がry
265 :
乙
きくらげwww
266 :
乙
甘すぎて砂糖吐きそう
佐天さんは俺がもらいますね
267 :
ではお姉さまはわたくしがもらいますの
268 :
初春大好き……だが初春はお前一人だけの物じゃないぞ、おつ。
269 :
テレスティーナは渡さん
270 :
>>1縦読み超乙です。
超付き合ってもいないのにコレって、くっ付いた後は超どうなるんですかね。
271 :
>>1乙
>>270
教えてあげるからこっちにおいで最愛たん
273 :
まとめからきました
275 :
お前おっぱいの素晴らしさ知らないの?
276 = 275 :
すいません誤爆しました
277 :
>>275
知ってるぞ
278 = 277 :
上条「……………………」
草木も眠る静かな夜の中、上条は寝床としているバスタブの中でただ静かに佇んでいた。
静寂が耳を劈くほどの静けさの中、毛布に包まってじっと目を閉じているのだが。
上条「……………………眠れねぇ…………」
上条の頭の中に去来するは数時間前の出来事。
唇に残る彼女の感触と、言葉と柔らかさと温かさと。
その全てが上条の思考を埋め尽くし、何も考えられなくしていた。
顔に熱が帯びているのが手に取る様に分かる。
ふぅ、と一息吐き手の甲で額に当てて落ち着きを図ってみるが、効果の方はどうなのだろうか。
上条「……………………」
まさか、と思った。
経験した事のない、味わった事のない感触。
甘い香りと、極上の柔らかさと。
あれからずっと、胸の動悸が止む気配はない。
何度も何度もフラッシュバックして再生されるあの出来事が、いまだに信じられないかの様だ。
279 = 1 :
『大好き、です…………当麻さん────────』
上条「(ふわぅあああああああああああああ!!)」ゴロゴロ
のたうち回る様に器用にバスタブの中を左右に転がる。
両手で頭を抱え、それはもう端から見れば辛そうだという彼の様子なのだが、上条の顔を見ればそんな事は全くない。
ぽーっとした様な、恍惚した様な、口元が緩んでいる様な、照れまくっている様な。
その心情はきっと彼だけにしかわからないのだろう。
別れてからほんの数時間だというのに、彼女の顔が見たい、彼女に会いたい。
いつしか、心はもう彼女に奪われていた。
280 = 1 :
時を同じくして、こちらも布団に包まり横向きに寝そべってもじもじ身体を動かす少女の姿があった。
初春「はぅぅ………………///」モゾモゾ
時折動きを止め、その感触を思い出す様に唇に自身の指を当てる。
その度に、あの感触をよりリアルに再現する様に目も閉じる。
自分と、彼の唇。
触れ合って重なって。
その柔らかさ、温かさを直に感じて。
胸の動悸が、あれからずっと止まらない。
眠ろうとしても眠れる訳もない。
夢にまで見た、彼とのキス。
初春「当麻、さん……………………///」
日に日に増していく想い。
昨日よりも、先程よりも。
時間が経つに連れ、どんどん膨れ上がっている。
限界知らずなその想いは、まるで破裂する事を知らない風船みたいだった。
本当は、我慢するつもりだった。
でも、我慢ができなかった。
彼と一緒にいると、どこまでも知りたい、触れ合いたい、その思いが心の枷を外すかの様に初春をつい突き動かしてしまう。
拒まれたりしたら──────と今になって思うのだが、彼はそれを受け入れるようにしてくれた。
また、彼からも抱きしめたりしてくれた。
初春「会いたいです………………」
抱きまくらにしているぬいぐるみをギュッと抱きしめる。
昔から就寝を共にしているそのぬいぐるみに彼の温もりを重ねる様に。
温かい体温を求める様に、ギュッとそれを抱きしめていた。
281 = 1 :
上条「………………寝れない」
チュンチュン────という小鳥の囀りが恐らく聞こえ出してくるのだろう時間帯に閉じていた目をパチッと開け、上条は独りごちた。
とは言ってもこの浴室内にはその小鳥の囀りなど届きやしないが為にあくまで予想であるのだが、あながち間違ってもいないのだろう。
時計に目をやるとディスプレイは07:00と表示されており普段ならそろそろと学校へ向かう、準備をする時間帯だ。
ただ本日は日曜日で、有事がなければジャッジメントの仕事もお休みの日だ。
特に用事もある訳でもなく、眠気が胸の動悸を超えれば眠れるだろうと動き出す事もせずにただ目を再び閉じていた。
「か、上条さん…………起きてますか?」
すると、コン、コンという控え目に浴室の扉をノックする音と声が届いた。
上条「ん? あー、五和か。おはよう」
五和「お、おはようございます。すみません、起こしてしまいましたか?」
上条「いや、大丈夫、起きてたから。はは」
これから寝ようとする所だけど、とは言えずにそう言っておく。
それにしても朝のこんな早い時間帯に起きているとは、普段からの規則正しい生活ぶりが窺える。
んー、と耳を澄ませれば何やら既に五和以外からも物音が 響き、既に神裂やらオルソラやらが起きているのだろうという事に気付いた。
…………神に信仰心を捧げる面々はこんなに早く起きるものなのかと生活ぶりに舌を巻く。
まあこの部屋に住むインデックスはまだ寝ているとは思うが。
282 = 1 :
五和「あの、今日はお休みでしたよね?」
上条「ん、もうちょい寝てようかななんて思ってたけど」
五和「あ…………すみません、まだお休みになられるのでしたr 「上条当麻、起きましたか?」 ………………」
上条「う…………」
神裂「おはようございます。朝食の準備はもう出来ています、朝餉にしましょう」
五和「……………………」
上条「……………………」
規則正しさを重んじる大和撫子の有無をも言わさない様な声でビシッと言い切る声が響くと、上条はちょっぴり言葉を詰まらせる。
五和の声で、頭を覆い尽くしたものから何となくだがようやく眠気を感じ取れた正にその瞬間であった。
寝てはダメ、とは言われてもないのだが何となく起きなければいけない気がしてきた。
寝たいのにー。
283 = 1 :
インデックス「とうま、目の隈がすごいよ?」
上条「そうかー?」
オルソラ「あらあら。お休みになられなかったのでございますか?」
上条「んー…………何となく寝れなくてな、はは」
五和「す、すみません…………私が起こしたりしたから」
神裂「全くあなたという人は。寝れる時にしっかりと睡眠を取っておくべきです。困るのはあなたですよ?」
上条「これは手厳しい」
五人で食卓を囲みながらそんな話が飛び出す。
朝食もオルソラ特製の上条宅ではなかなか味わえない和食の数々がテーブルに並んでいた。
オルソラは和食でさえも作れるのか、とある意味逃避するかの様に味噌汁を喉に流し込む。
まあその絶品具合にはやはり脱帽ものなのだが。
インデックス「何か考え事してるの? なんだかとうま、昨日の夜から変だよ?」
上条「ぶほっ!」
五和「だ、大丈夫ですか上条さん!?」
咳込む上条に五和が心配そうに声をかけるが、上条が手で制する。
逃避行もどうやらここまでで、インデックスのその言葉には反応せざるを得なかった様だ。
284 = 1 :
昨晩から様子がおかしい、ね。
気丈に振る舞ったつもりだが、見破られていた事に心臓がドキリと反応しておりまた頭からとりあえずと取り除こうとしていた事案が再び上条の脳裏に去来し始めていた。
『当麻さん』
あの甘い感触が、甘い香りが。
温もりが、気持ちが。
そのどれもが頭から離れない。
上条「なんでもないうぬあああああああぉぉぉぉっ!!」ガンッ ガンッ
インデックス「」
オルソラ「」
五和「」
神裂「」
唐突にテーブルに頭を打ち付けはじめた上条に一同絶句しながらも、「あ、絶対何かあったな」と感づいたという。
285 = 1 :
佐天「ういはるーんってあれ、寝てる?」
初春「すぅ…………すぅ…………」
佐天「珍しい、いつもならもう起きてる時間なのに」
午前10:00になった所で、佐天は初春の部屋に忍び込んでいた。
本日はせっかくの日曜日。
天気もいいし、初春と遊ぼうとこうして誘いに来たのはいいのだが、肝心の初春はいまだに夢の中であった。
基本的に初春は規則正しい生活を送っている。
ジャッジメントとしての面目もあるのだろうが、比較的真面目で健康的な生活をずっとしていた。
そんな彼女がこの時間までまだ睡眠を貪っている事に佐天は驚いていた。
調子が悪いのか、と過ぎるが初春のその寝顔はというと。
初春「むにゃ………………とうま、しゃぁん…………」zzz
佐天「……………………」
かなり幸せそうであった。
佐天「えい」ツンツン
こいつめ、こいつめとほっぺたをつんつんする。
なんだか癖になりそうな柔らかい弾力感が指に感じ、そのまま二・三回突っつく。
初春がここまでこんなに幸せそうにしているのを見て、こりゃ昨日何かあったのかなと感じた。
昨日は食事に行くとだけ聞いたのだが、それから何かあったのかは聞いていない。
それをまとめて全部聞いてやろうと、今日のやる事の一つの中にそれを織り込みながら初春の寝顔を見つめた。
初春「うにゅ…………とうましゃん…………ほっぺじゃなくて…………おくちに……もういっかい……ちゅーしてくださぁい………」zzz
佐天「」
ちょ、本当に昨日何があったんだ。
286 = 1 :
浜面「さて、ブツは手に入れた訳だが」
「おー」
浜面「どうすればいいんだ? これ」
ご用達のファミレスにて、テーブルの上に置かれたスティックタイプのUSBメモリーに目をやりながら浜面が呟く。
コーヒーに口をやりながら再びテーブルに並んでいたサンドイッチに手を伸ばした。
「…………そういや、どうすりゃいいんだ?」
浜面「お前なぁ………………」
昨晩忍び込んだ風紀委員の支部室内にあったコンピューターから抜き出したデータ。
それをどうすればいいんだという質問に対して聞き返す様な質問型の返事が返ってくると、浜面は眉を釣らせた。
本日は半蔵は用事があるらしく、この場にはいない。
三人の中で唯一頭の切れる者がここで欠けてしまい、これからどうすればよいのかわからなくちょっぴりお手上げ状態になっていた。
というか、見つけた場合の事も考えてその研究者の連絡先も聞いておくべきだったのではないかという質問を浴びせるが、肝心の相手もごめんごめんと手を合わせて悪びれる仕草を見せると渋々浜面は言葉を飲み込む。
というか、本当にこれはどうすればいいのだろうか。
こういう時にこそ半蔵にはいてほしかったのだが、いないのだから仕方がないのだろう。
というか今日の用事って何だろう。
まあ大方、浜面の『仲間』のまだ幼い妹の世話をするという予想はつくのだが。
「木山サンに聞けばいいんじゃないか?」
浜面「それしかねえよなぁ」
頼んできたという本人に話を聞くのが一番なのだろうが連絡先を知らない以上どうしようもない。
だがまあ事情を知っていそうな木山に会えればなんとかなるのだろう。
287 = 1 :
時刻も昼近くになり、浜面達はとりあえずと昨日木山に会ったあの病院へ向かおうと席を立つ。
レジで会計を済ませ、ファミレスから出て停めてあった車に乗り込み、走らせた。
浜面「………………ん?」
病院への道中、信号待ちをしていた浜面の車の後ろに黒塗りのセダンがビタ付けをする。
やけに近ぇな、とルームミラーから後ろの車の様子を窺うが妙に黒くはっきりと中の様子は見えなかった。
「おいおい、ヤーさんかなんかか?」
助手席からもサイドミラーを確認しながらそう呟く声がする。
なんか、妙な予感がするのは気のせいだろうか。
キキッ──────!!
浜面「!?」
「なんだ!?」
すると、前方に現れたもう一台の黒のセダンがドリフトをしながら浜面の車の真正面で横向きに止まる。
浜面の車の進路を妨害する形で止まり、そのセダンのドアが開くと。
黒いスーツにサングラスをした男達が続々と車から降り浜面の車の周りを取り囲んだ。
288 = 1 :
浜面「ちっ、なんだ!?」
「動くな!」
するとスーツの男達は一斉に浜面達の方向に銃口を向ける。
それに浜面は舌打ちをして静止すると、前方のセダンからもう一人男が降りてくるのが目に写った。
「あいつは…………!」
浜面「…………知ってるのか?」
「あいつだよ………………俺達に探してくれと頼んだ男ってのは、あいつだ」
浜面「!?」
それを呟くと、こちらの会話は届いたのかはわからないがその男は愉快そうに口を歪めた。
そして、その男も銃口を浜面達に向けてはじめていた。
289 = 1 :
時間空いちゃった、ごめんなさい
次は早めに投下できるように頑張るー
また次回!
292 :
ずっと待ってた、おつ。
293 :
294 :
良かったよぉ~
もう続き読めないかと思っちゃった…
ともあれ、更新お疲れ様です
295 = 292 :
>>293
そこに気付くとはやはり天才か……
296 :
>>1おかえりー、そして乙
297 :
このSSに一番期待してる
298 :
「随分手荒い歓迎だなー」
浜面「参ったな、こりゃ」
前後方を固められ、更には銃口を突き付けられて手の打ち様がない状況に溜息を吐きながらそのまま手を上げる。
今まさに車から降りた長髪の男が、その『研究者』らしいのだが。
浜面「どう見てもヤーさんだな、おい」
「うわ、前の車のナンバープレート見てみろよ、『・8-93』だってよ。狙いすぎだろ…………」プークスクス
浜面「ぶは、もはや紛いモンにも見えるぜ」ケラケラ
あからさまなそのナンバープレートを見て二人は吹き出す。
自分達が置かれている状況にも関わらず、なぜか楽しそうにしている雰囲気だ。
しかしその様子を見てその研究者は突き付けた銃をチャキッと鳴らすと、さすがにそこで笑みを浮かべるのはまずかろうと二人とも揃ってフッと笑みを消していた。
パワーウィンドウを開けて、声をかける。
「あ、どもっす。しかし『これ』は何スかね」
「君らが持っているモノを渡してもらおうか」
「持っているモノって言うと?」
「惚けるつもりか? 君らが今持っているモノだ」
「いやそれはわかるんスけど。普通に手渡そうと思ってたけどこうされちゃぁねぇ…………」
やれやれ、と深い溜息を吐く。
そりゃ頼まれたモノを探して渡すという事に異議はなかったのだが、こうして来られるとどうにもきなクサく感じてしまうのは仕方のない事だろう。
299 = 1 :
「それなら早く渡したまえ」
「質問なんスけど、これは一体どういう状況なんスか?」
「それさえ渡してくれれば手荒な真似はしない、そういう事だよ」
浜面「……………………」
おかしい。
どうにもおかしい。
銃口を突き付けているのだが、どうにも有無をも言わさない、といった様子でもないらしい。
何をしようとしているのだろうか、何が目的なのだろうか。
そしてコレを手に入れたという事をどこで嗅ぎ付け、そしてそれならばなぜ自分らで手に入れようとしなかったのか。
考える。
考えるが、やはりわからない。
浜面「まあ元々渡すつもりでいたし、不穏な動き、というのがどういう事かわからないんスけど。どういう事か説明してもらえませんかね?」
「……………………」
研究者は少々の沈黙を作り、そして再び口を開く。
「いいだろう、ついて来たまえ。それが合っているのならば、報酬は渡そう」
研究者はそう言うと突き付けた銃を懐にしまい、黒服の男達にも下げさせると「ついて来い」と言わんばかりに車に乗り込んだ。
それに続いて黒服達も次々に車に乗り込み、車を発進させる。
浜面「……………………」
「……………………」
お互いに見合い、首を捻る。
どういう事なんだ、と目で会話をしながらとりあえずと走り出した黒のセダンの後ろをついていくように浜面も車を動かした。
300 = 1 :
研究者と付き人の黒服二人、そして浜面達の五人がエレベーターに乗り込む。
場所は第十九学区、この学園都市の中では比較的寂れてしまっている学区のあるビルの建物の中だ。
行き先は研究室なのだろうか、それにしてもやけに汚れの目立つ古びたビル。
しかもエレベーターにて向かった先は、15階建てのビルの表示にはない地下3階。
エレベーターを動かしたのも付属してあるボタンではなく、研究者が手にしていたリモコンであった。
浜面「……………………」
「……………………」
沈黙が包む。
浜面達は緊張からか、それとも別にここで話す内容がないのかその口を閉じていた。
いや、恐らく後者の方なのだろう、彼らの心臓は先程の落ち着きぶりからみて驚くほど図太い。
研究者はタブレット式の通信機をしきりに操作しており、画面を見せないようにそれを黒服の男達が囲んでいる。
余程の機密事項か、その様子から如何にそれが秘匿としているかが感じ取れていた。
チーン──────
と少々古めかしいエレベーター特有の到着を示す音が鳴ると、研究者とそれについていくように黒服達が降りて行った。
「こっちだ」
歩きながら顔だけをこちらに向け、後をついて来るように促す研究者の後ろを浜面達は歩き出した。
周りを見る。
映画館の様な薄暗さの中、無数のコンピューターのディスプレイの光が明かりの代わりの様になっていて歩く分には問題はない。
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