元スレ男「お前があのハエトリグモだって……?」 女「借りを返しに来たぞ」
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51 = 42 :
>>48
変わりました
52 = 42 :
女「――帰ったぞ」
男「あぁ、お疲れ様です」
男(結局答えは見つからないまま、時間は無常にも過ぎていく)
男(あの夜から数日…… どこか気まずい雰囲気)
男(気まずい…… まあ、そう感じているのはどうやら俺だけのようだけど)
男(あの夜…… 女さんは何を思っていたのか)
男(俺と恋人―― 別に問題ないとか言ってたし)
男(いやいや……! 何考えているんだ俺は!)
男(あの夜、女さんは酔っ払っていただけだ……)
男(正常な判断ができなかった、それだけだ)
男(何より相手は謎だらけの人間だぞ!)
女「どうした? 難しい顔をしているぞ」
男「いや、何でもないです」
女「お、ご飯を炊いてくれたのか」
男「まあ、いつものことですし」
女「今すぐ夕飯の仕度をしよう」
男「いつも…… すみません」
53 :
クモとセックスした後って食われそう
54 = 42 :
女「出来たぞ。さあ、いただけ」
男「はい…… いただきます」
女「……」
女「どうした? 今日はやけに難しい顔をしているじゃないか。これ、まずかったか?」
男「いや、美味しいです……!」
女「そうか。良かった」
男(しかし、よくよく考えてみると――)
男(今の女さんなら、別にここにいる必要ってないよな……)
男(時々抜けている点を除けば、後は全部完璧だ。恐ろしいほどに)
男(それに、バイトとはいえ収入源もある)
男(安い部屋を見つければなんとかやりくりできるかもしれないし)
男(そうじゃなくても…… 正社員の仕事だって、探せば何かしらあるかもしれない)
男(完璧人間の女さんなら、これからの人生をなんとか上手く渡っていけるだろう)
男(それに比べて…… 俺は)
55 = 42 :
男(今でこそ親しい人はできたけど…… それは女さんのおかげだ)
男(自分でも『このままではいけない』と思っていたのに、そこに留まり続けている)
男(だから大学に友人はいないわけだし)
男(それに…… こんな感じで彼女に頼りきっている自分がいる)
男(家事や、それにバイトのことだって)
男(あの時自分でもなんとかすると言っておいて、彼女がバイトを始めたら安心しきって)
男(なんとかなるだろうと、現実から逃げて)
男(行動をしない理由を作って逃げたんだ…… いつだってそうだ、行動するのを恐れているんだ)
男(俺は…… 女さんの負担になっているのではないか)
男(もう…… 彼女が言う『恩返し』は十分なほどに達成されている)
男(これ以上はもう―― 女さんの負担になってしまう)
56 :
蜘蛛ってコーヒー飲むと酔うらしいね
57 = 42 :
男(女さんには、俺がいなくても大丈夫だろう)
男「あの―― ちょっといいですか?」
女「何だ、突然改まって」
女「もしかして、困ったことがあるのか!?」
男「いや、あの……」
女「む―― 上空に小バエ発見!!」ピョーン ブチィ!!
男(なんて跳躍力、早さだ―― さすが元ジャンピングスパイダー)
女「掃除はキッチリしているはずだが…… 生ゴミも密閉容器にいれている」
女「しかし…… どこかに取りこぼしがあるようだな」
女「奴らは皆○しだ。生かしておけん……」
女「それで―― 何だったっけ?」
男「いや…… 何でもないです」
女「そうか」
58 = 3 :
みてるの
59 = 42 :
女「そういえば、今日は嬉しいことがあったぞ」
男「嬉しいこと……?」
女「ああ。うちに新しい店員が入った」
男「へえ…… 新人ですか」
女「そうだな。なんでもマスターの孫娘らしいぞ」
女「高校生のようだが、バイトを探していたらしい」
女「それでマスターの誘いがあったとのことだ」
男「へえ……」
女「店の仕事もだいぶ慣れてきたし、しばらくは新人教育に徹することにする…… というか頼まれた」
男「あんまり厳しくしちゃダメですよ……?」
女「問題ない。私は害虫以外にはおおむね友好的だ」
男「は、はあ…… 頑張ってください」
女「ありがとう。頑張るぞ」
60 = 42 :
女「後輩か…… いい響きだ」
男(もう歴戦の先輩って雰囲気だな)
女「あ、そうだ―― それと変わったことがあってな」
男「変わったこと……?」
女「ああ…… うちの店はマスターの友人とか、近所のお年寄りとか、そういった年齢層のお客が多いんだ」
女「しかし、最近若者も見受けられるようになった」
男「いや、お店としてはいいことじゃないですか」
女「もちろんだ…… しかし」
女「自意識過剰かもしれない…… しかし、何やら私に視線が集まっている気がしてな」
男「え……?」
女「私は前方のほか、真横、斜め後ろまで見ることができる」
男「――えっ」
女「クモ時代の名残なのか…… 今でも真後ろ以外はだいたい見えるのだ」
男「それ、どうやって見えているんですか? どこからどう見ても目は二つしかついてないじゃないですか」
女「Don't think,Feelだ」
女「心の眼ってやつだ。私にも分からないが、細かいことは気にするな」
男「え……」
61 = 42 :
女「だから分かるんだ」
女「そういう若者はだいたい数人で来る。そして私がフロアを周っているときや、背中を見せたとき」
女「そういうときに好奇の目で彼らに見られている気がするのだ」
男「それは……」
女「それにだな…… その」
女「そこまでなら別になんとか我慢できるが……」
女「最近一人で来る若い男がいるんだ」
男「はあ……」
女「その男がよく話しかけてくるんだ」
女「いや、常連客とはよく会話するから慣れているが」
女「それはあくまでも仕事に支障をきたさない程度だ。向こうも分かってくれているからな」
女「しかし―― その男は隙あらば会話をしかけてくるのだ」
62 = 42 :
女「はっきり言って迷惑だ」
女「しかし立場上、あまり強く言うことができない」
女「まるで拒絶しているのに求愛行動を続けるオスグモのようだったぞ」
男「生々しい……」
女「どうするべきか―― 葬ってやりたいのだが」
男「いや、それはいけません!!」
女「まあ、冗談だ冗談」
男(冗談に聞こえないんだって……)
女「んむ…… まあ、それを除けば充実している」
男「はあ…… でも、はっきり言っておいた方がいいんじゃないですか?」
女「向こうは客だぞ?」
男「そうですけど―― マスターに相談してみるのはどうですか?」
女「だが…… こちら側の立場としても、なかなか客に強く言えないのではないか?」
男「うーん…… 確かにそう言われればそうですけど」
男「もしこれ以上エスカレートしたら店側の不利益にも繋がるし、来店を拒否することは不可能ではないとも思いますけど」
女「そうだ」
男「どうしたんですか?」
女「男くん―― うちへ様子を見に来てくれないか?」
63 = 42 :
男「えっ!?」
女「君には迷惑ばかりかけて本当に申し訳ない……」
男「いや、そんなことは……」
女「だが、この姿になってから…… 知識があるとはいえ、全知全能というわけではないのでな」
女「感情的なやり取りはまだ不慣れな点が多いのだ」
女「だから、もし私が暴走して迷惑をかけたらいけないし」
女「君がいれば心強いのだ」
男「でも、俺が行ったところでどうこうできるわけでは……」
女「いや、助けてくれとは言わない……」
女「あくまで、君にいて欲しいだけだ」
男(それって――)
女「もし私が暴走したら大変だからな」
女「私は恐らく、並大抵の人間なら簡単に葬ることができるだろう」
女「経験があるわけではないが…… 妄信や過信と言えるほどでもないと思う」
女「だから、君がいればもしものことがあっても踏みとどまれる気がするのだ」
男(いや、食われかけましたけど―― あの時は酔ってたからだけどさ)
女「借りばかり作ってしまい、申し訳ない」
男「いや……」
男(俺は女さんの負担になっている)
男(借りがあるのは俺の方だ…… だから)
男「まあ、それぐらいなら…… 大丈夫です」
女「本当か……! ありがとう……!」
男(あっ―― 笑った)
64 = 42 :
女「その男は週に一、二回ほど来ている」
女「今週はまだ姿を見せていない」
女「だから明日か、それ以降に来るだろう」
男「時間帯はだいたいどれくらいですか?」
女「そうだな…… 平日だが、だいたい君が四限や五限を終えるくらいの時間帯な印象だ」
男「なるほど」
女「明日は確か、四限までだったな?」
男「はい」
女「すまないが…… お願いしてもいいだろうか」
男「分かりました、授業が終わり次第向かいます」
女「ありがとう……」
女「お詫びにはならないが…… 気持ちとして、このエビフライをやろう」
男「あ、ありがとうございます……」
女「からあげもやるぞ」
男「は、はあ……」
女「あとマッサージもしてやる」
男「それはいいです…… お酒飲んでませんよね?」
女「何を言う…… 私のマッサージはなかなかうまいとお年寄りの間で専らの噂だ」
男「いや、そうじゃなくて…… なんでもないです」
男(どうなることやら――)
65 = 42 :
男(ふぅ…… 緊張するな)
男(あれから翌日、約束通りにお店へ来た)
男(トラブルが起こらないことを祈ろう……)
後輩「いらっしゃいませ!」
男(ん? もしかしてこの人がマスターのお孫さんかな?)
後輩「あ、もしかして男さんですか?」
男「ど、どうしてそれを……!?」
後輩「おじいちゃんがバーベキューの時に撮った写真を見せてくれて、その時男さんのことを話してくれたので」
後輩「確か女さんのお友達、なんですよね?」ニヤ
男「いや…… ただの友達だから!」
後輩「あれ? 私も『友達』としか言ってないですけど…… どうしたんですかぁ?」ニヤッ
男(こやつ―― できるっ!!)
男「あー、それじゃ……」
後輩「アイスコーヒーですよね! すぐにお持ちしますねぇ!」
男(こやつ―― できるっ!!)
66 = 42 :
男(それにしても…… 確かに若い客もチラホラいるな)
男(以前訪れた時はほとんどが常連っぽい人とか、あとは中年とかお年寄りが多かったが)
男(女さんの言ったとおりだ)
男(女さんはどこだ……?)
男(む…… あれは……)
後輩「お待たせしましたぁ! アイスコーヒーです!」
男「あっ、ありがとう」
後輩「あれ? どうしたんですか?」
男「いや、何でもないよ…… うん」
後輩「あ…… なるほどぉ」ニヤッ
後輩「もしかしてあのお客さんのことですか?」
男(まさか来てすぐに遭遇してしまうとは……)
後輩「女さんから聞いたんですけど、最近よく来るようになった人らしいですね……」
男「そうなんだ……」
後輩「まさに今もですけど、ああやって隙あらば女さんに絡んでるらしいですよ?」
後輩「なんかいかにも軽そうな外見してますよね…… 私もあんまりああいう人って好きになれません」
後輩「男さん……?」
男「ああ、ごめんごめん」
男(ん……? あの男見たことあるぞ!?)
男(っていうか…… 普通に見てるぞ!!)
男(あいつ、もしかして――)
後輩「もしかして、男さん…… 妬いちゃってます?」
男「な…… そんなんじゃないしっ!」
男「し、新人は早く仕事に戻りなさい!!」
後輩「はぁーい!」
後輩「男の人は、行くときは行かないとダメですよ……?」ヒソッ
後輩「それではごゆっくりどうぞー」
67 = 42 :
男(それは分かってるけど……)
男(分かってて、俺は行動に移せないんだよな)
男(今回は様子を見るだけだ―― それを理由にして正当化している自分が情けない)
男(でも…… やっぱりあの男)
男(あいつは、『チャラ男』だよな?)
男(大学で同じ学年、学部、学科の奴だ…… クラスは違うけど)
男(よくすれ違ったりもする)
男(今では学部でも有名な、いわゆる『リア充』グループの筆頭にいる奴だ)
男(まさかあいつが…… これは厄介だ)
男(現時点でも誰と付き合ったとか別れたとかそういうゴシップ話が後を絶たない)
男(ぼっちの俺でも知っているのだから実際はもっとエグいのかもしれない…… 火のないところに煙は立たないってやつだ)
男(あいつ…… やっぱり手馴れてるな)
男(フロアを周る女さんに注文したり、注文を装って絡んでるな)
男(女さん…… すげー困ってる)
男(でもあいつも金を落としてる客だからな…… あまり強く出ることもできないだろうし)
男(どうしてあいつが…… どうしよう)
69 = 42 :
女「……」
男(あっ―― 一瞬俺を見た!?)
男(助けてくれってことか……?)
男(いや、でも…… いるだけでいいって)
男(ああ…… もう!)
男(あ、女さんなんとか振り切った…… 良かった)
男(それにしても、本当に厄介なことになった)
男(厄介―― 厄介か)
男(そもそも、どうして厄介なんだ?)
男(いや、女さんが困ってることだ)
男(彼女に何かあったら…… 何かあったら?)
男(別に犯罪に巻き込まれるってわけでもないだろう)
男(だったら何で、俺がこんなに悩む必要がある)
男(いやいや……! 女さんが困ってるんだ)
男(友達の頼みなんだ……)
男(友達…… 友達?)
男(そもそも―― 俺は彼女にとって、彼女は俺にとってどのような存在なんだ?)
男(友達? 同居人?)
男(厄介な同居人……)
70 = 3 :
みてるの
71 = 42 :
男(もしかすると…… もしかしなくても)
男(俺は干渉できるような立場じゃない……?)
男(そうだ、あくまでも噂は噂。俺が実際にこの目で見たわけではない)
男(それにあの男の恋路を邪魔する権利なんて俺にはないんだ)
男(だって、女さんともただの同居人…… なんだから)
男(でも、実際に困っていると相談されたわけだし。突き放すわけにもいかない)
男(あ゛ー! もうどうすればいいんだよ!)
男(元はハエトリグモの彼女に何を悩んでいるんだ俺はっ!! ハエトリグモだぞ!!)
女「男くん…… すまないな」
男「あっ―― ああ、いえ」
女「彼が例の男だ……」
女「それで――」
チャラ男「すみませーん!」
女「あ……」
後輩「私が注文とります」ヒソッ
女「ああ…… すまない」
マスター「女さん、調理頼んでもいいかい? そのうちに彼も帰るだろう」ヒソ
女「すみません……」
マスター「何もしてやれずにごめんねぇ……」
女「いえ……」
女「男くん、すまない…… また後で」
男「あ、はい――」
72 = 42 :
女「今日はすまなかったな……」
男「いえ……」
男(結局、あの後チャラ男は帰った)
男(俺は何もできなかった……)
女「さすがにマスターも『従業員の支障になるようなことは――』と注意してくれたみたいだが」
女「あの男も客だからな…… 無闇に出てけとも言えない」
男「そうですね…… 今はそれこそネットに拡散されたりしたら怖いですし」
男「いわれのない情報でも流されて、注目されたら風評被害で終わりです」
男「客という立場を利用して、自分のいいような完璧を求める輩が多いですしね」
男「自分はそこまでの立場じゃないのに…… しかも昔と違ってそれが多くの人の目にとまりやすい」
男「本当に厄介ですよね……」
男「俺も何もできずにすみません……」
女「いや、いいんだ…… 君が来てくれて安心した」
女「それに、もしこれ以上酷くなるようだったら出入り禁止を言い渡すとマスターが私に言ってくれた」
女「迷惑をかけたな……」
男「いや…… あの、あの様子だとこれからも懲りずに店に来るんじゃないですか?」
女「そうだな…… 出入り禁止になるだろう」
男(でも…… それがかえって火に油を注ぐような結果になったら)
男(もしストーカーまがいにまで発展したら……)
男(いくら女さんでも―― 女さんはああ言っていたけど、実際に力も強かったけど)
男(チャラ男はいかにも血気盛んなオラオラタイプに見える)
男(ガタイもそれなりにいい……)
男(もしそんな事態になったら、さすがの女さんでも危ない)
73 = 42 :
男「実は俺…… あの男を知ってます」
女「ほ、本当か!?」
男「はい、『チャラ男』って言って…… いかにもオラオラしてる人です」
女「ぱーりーぴーぽーというやつか!?」
男「はい―― いや、その言葉どこで知ったんですか」
女「知り合いなのか?」
男「いえ、学年や学部、学科は同じですがクラスは違いますし…… すれ違った程度です」
男「恐らく向こうは俺のことを認知していないでしょう…… 多分」
女「そうか…… しかし君と同じ学校だなんてな」
女「世間は狭いな……」
男「感心してる場合じゃないです……」
女「む、出入り禁止になれば―― いや、それだとまずいのか」
女「君が言ったように『あそこは最悪な店だ』なんて話を流されたら店じまいになる危険もあるようだしな」
女「常連客がいるといっても…… それより多い、国中の悪意や間違った正義感を持つ人間に粘着されたら終わりだ」
女「人間は流されやすいようだからな」
男「そうです…… だから下手にできないんですよね」
男「こちらが被害者だと主張しても、大衆を味方にできなければ終わりです」
男「数には勝てませんから」
女「人間の世界は難しいな…… ある部分では理性というものはない方が幸せなのかもしれない」
女「虫のように、本能の指令に忠実であった方が……」
74 = 42 :
男「いや、本能に忠実の方がまずいんじゃ」
女「下手に思考だけ高次元に発達するのは厄介なのかもしれない…… という意味だ」
女「だから虫や野生動物のように本能が占める割合が多きい生物の方がある意味幸せなのかもしれない」
男「そうですね……」
男(元はクモの人間が言うとなんかスゲー重みを感じる)
男(とか感心してる場合じゃない俺も)
男(俺が干渉できる立場じゃないかもしれないが)
男(こうして女さんは困って、俺に相談するほどの状態なのだ)
男(人事ではないし…… 家族や恋人じゃなくても、同じ部屋に住む者同士だ)
男(それに考えすぎかもしれないが、もしストーカーまがいにまで発展したら)
男(これは…… 俺も何かしなくては!)
男「女さん―― 俺、ちょっと彼に接触してみます」
75 :
1レスが長すぎだろ
76 = 42 :
女「な……! さすがにそこまでは……」
男「いや、もし彼が粘着質の人間だったら…… 大変です」
男「俺と女さんが同居してるのもバレるかもしれないし」
男「女さん自身も危ないです」
男「もし『出入り禁止』を言い渡したら―― そうなる可能性もゼロではないと思うんです」
女「店に迷惑はかけたくない…… ならば」
女「私があの男と個人的に決着をつけよう!!」
男「それもまずいですから!!」
女「なぜだ?」
男「そもそも決着って…… 命を奪うつもりですか!?」
女「いや、そうではないぞ…… 拳と拳で語り合うという意味だ。命までは奪わない」
男(圧倒的脳筋…… ポンコツ……!!)
男「いやいや……! それでもダメです!!」
女「何故だ!?」
男「もしその男か、もしくは第三者に通報されて警察沙汰にでもなったら…… それこそ全てが終わりです!」
男「アパートの不法滞在から女さんの身元から、何もかも洗いざらい明るみにされておしまいです!」
女「ならば…… どうすればいいのだ」
男「だから、なんとか俺が諦めてもらうように仕向けるしかありません」
78 :
女「でも、どうやって……」
男「う…… そ、それは」
男「なんとか、なんとかします!!」
女「しかし…… 君が言うような最悪な事態になったら、君自身も狙われるだろう?」
男「そ、そうですけど……! 店や女さんが被害を受けるよりは……!」
女「ダメだ!!」
男「――えっ」
女「それでは…… それでは私が困るのだ」
女「君がいなくなってしまったら…… 私はどうすればいいのだ?」
男「そ、それは――」
女「孝行しようと思ったときに限って、相手はいない」
女「そのような言葉があるようだな」
男「……」
女「私はまだ君に恩を返していないだろう」
男「そんなことは……」
女「だから…… いなくなってしまっては、困るのだ」
男「は、はい……」
男「それでも、なんとか…… できることはやってみます」
女「本当にすまないな……」
79 = 78 :
男(俺がいなくなったら困る…… か)
男(それは同居人としてってことだよな)
男(生活の負担が増えるだろうし)
男(あくまでも役に立つ同居人として、だ)
男(まあ、それは一旦置いておこう)
男(思い立ったらなんとやら。鉄は熱いうちに)
男(翌日、少ない勇気をなんとか振り絞り行動に移すことにした)
男(以前の俺だったらありえないことだ)
男(しかし…… 人の痛みに鈍感になるような人間にだけは…… なりたくないと思う)
男(よし―― まずは情報収集だ)
男(敵を知り、己を知らば…… 昔の人もそう言っている)
男(不幸中の幸いか、同じ学科の人間だ)
男(他の学部、学科の人間よりかは情報を知っている者は多いだろう)
男(ということで…… 聞き込みだ!)
男(昼休みが終わり、必修授業の前だ)
男(同じクラスの見知った面々が多いし、ここならまだハードルは高くない)
男(ぼっちと言っても、避けられているわけではない…… だろう!)
81 :
まだかね
82 = 78 :
男(友達まではいかないが、顔見知り…… そんな認識のはずだ!)
男(と信じつつ―― 行け!!)
男「あ、あのさ……」
男(隣の席になったAくん! 非常にすまない!)
A「ん? どした?」
男「あの…… Aくんはサークルとか入ってるんだっけ?」
A「んぁ? 急にどした?」
男「いや…… 俺、まだサークルに入ってなくてさ。どこかいいところないかなって思ってて」
A「もう入学から結構経ってるし、ぶっちゃけ馴染むのキツイと思うぞー?」
A「ちなみに俺はオールアクトってとこ入ってる。名前そのままでオールラウンドサークルだ」
男「なるほど…… だよねぇ…… 今からじゃキツいよね」
A「あ、でもあそこなら――」
男「あそこ?」
A「ああ、チャラ男グループが入ってるとこだよ」
男「そ、それって……」
A「なんだ知らねーのか? ホーネットってサークル」
83 = 78 :
男「それはどんなサークル?」
A「俺たちのとこも大概だけど、変な名前だよな…… まぁ、オールラウンドっていってなんでもやってるとこだ」
A「一応、表では運動系サークルってなってるけど、噂ではいわゆる『飲みサー』らしいぜ?」
A「チャラ男を見れば分かるだろうが…… あんな感じの人間がつるんでるとこさ」
A「あそこなら…… 人数多くて、だけど出入りが結構激しいみたいだから」
A「自分がああいう系の雰囲気が好きなら、今からでもノリでいけるかもな」
男「なるほど、ありがとう…… あ、そういえばさ」
男「そのチャラ男くんなんだけど……」
A「おお」
男「なんか彼女をとっかえひっかえしてるって…… あの噂本当なのかな?」
A「ああ…… まあ、俺もあくまで噂しか聞いたことないけど」
A「俺の友達があいつと同じクラスらしいが、結構女遊び激しいらしいぜ?」
A「あいつ関係で女が辞めることが何回かあったようだしな」
男(やっぱり…… そういう人間なのか……)
84 = 78 :
A「そんなことしてたら内部分裂起こったり先輩からのお叱りを受けそうだけどな……」
A「あいつはサークル内の偉い先輩から気に入られてるらしい。女の子を勧誘して入会させてる実績があるから」
A「だからまあ、あいつはお咎めなしってことさ」
A「勧めといてあれだけど…… いいところではなさそうだな。俺みたいな人間からすれば」
男「そうなんだ…… ありがとう」
キーンコーン
A「ま、もし今からでもマジで入りたいなら、うちのサークルへ掛け合っておくか? うちでいいならな」
男「あ…… ありがとう、考えておくわ! ははっ」
講師「はーい、こんにちわー!!」
男(ふぅ……)
85 = 68 :
この時間は何分だ
87 = 78 :
男(今日の日程は終わった…… コミュニケーションってスゲー疲れるな)
男(まあ、有益な情報は得られたから良しとしよう)
男(やはりチャラ男は危ない人間の可能性が高い…… ということだ)
男(あくまで噂だが…… 同じクラスの人間が言うことなら、信憑性は高いだろう)
男(そんな人間がどういうわけか女さんを発見してしまった)
男(このままではベッコウバチよろしくクモは狩られてしまう)
男(どうにかして彼と接触し、なんとか止めさせてもらわないと)
男(しかし接触といっても…… どうする!?)
男(わざわざ相手のホームへ行くのは無謀すぎる)
男(強者に対して弱者が勝つためには…… 考えろ)
男(数か―― いや、ぼっちには無理だ)
男(ならば…… 相手の足元をすくうような奇襲しかない!!)
88 = 78 :
男(奇襲…… そう、相手があの店へ行くことは分かっている)
男(100パーセントとは言い切れないけど、一度の忠告で諦めるような人間とも思えないし)
男(なら、相手が店に来る前…… もしくは、帰るときに仕掛けるしかない)
男(奇襲という奇襲でもないが…… 接触のチャンスはそこぐらいしかないだろう)
男(なら…… 放課後になった今、すぐにでも店へ向かわなければ!!)
男(急げ……!!)
90 = 78 :
後輩「いらっしゃいませー!」
後輩「あ、男さん! いつもありがとうございまぁす!」
男「あの、あの客は来てるかな……?」
後輩「今日はまだお見えになってないみたいですよー?」
男(よし……!)
男「悪いけど…… 店の前に立っててもいいかな?」
後輩「もしかして…… 決闘するんですか!?」
男「そんな物騒なことはしない…… けど」
男「それに近いことはするかもしれない…… あ、話し合いね!」
後輩「男さん…… 男ですね!」
後輩「何かあったらすぐに来てくださいね……」
男「ありがとう…… それじゃ、行ってくる」
後輩「ご武運を祈ってます」
91 = 78 :
男(クソ…… 今は何時何分だっ!?)
男(待機を始めてから30分は過ぎた…… まあ、さすがにすぐには来ないか)
男(なにより、向こうがサークルの日だったらとんだ無駄足だしな)
男(これは徒労だったか)
男(コーヒーでも飲んで帰るかな…… 今朝はあまり女さんと話せてなかったし)
男(って…… 何でそんなことを気にかけてるんだ俺は)
男(ともかく、さすがに注意されてからすぐには来ないか……)
男(焦り過ぎだったな。焦りは禁物だった――)
チャラ男「あー、今日はごめんねー! ちょっと用事あったんだわ!」
チャラ男「いやー、マジごめんって! 後で埋め合わせすっからさ!」
男(うるさいな。いくら外でももっと控えめな声で電話に……)
チャラ男「おごっから! マジ、マジ! じゃあねーうぃっすー!」
男(――って、来たああああああああ!?)
92 = 78 :
男(ヤベェヤベェヤベェ!!)
男(生まれてこの方喧嘩とは縁のない人生を送ってきた)
男(そう、俺のモットーは『平和が一番』だ。ラブアンドピースだ)
男(そう言い聞かせつつ、いじられる自分を正当化したときもあったが――)
男(それは昔の話…… これ以上はよそう。関係ない)
男(だけど…… さすがにもう悠長なことを言っていられる状況ではない)
男(窮鼠だって猫を噛むんだ)
男(やってやる……!! 後には引けない)
チャラ男「あ、すんませーん。どいてもらっていいっすか?」
男(間近で見るとデカい……!! だがここでどくわけには……!!)
男「あ、あにょ……」
男(試合の前から負けているッ!?)
チャラ男「……?」
男「あにょ…… チャラ男さんですよね!?」
チャラ男「そーっすけど、すんません…… 誰っすか?」
男「お、お話があるんですっ!!」
93 = 78 :
チャラ男「話? なら店の中でお願いしますというか…… 用件はなんっすか?」
男「用件…… あの」
チャラ男「長くなりそうなら、申し訳ないっすけど後でお願いしますというか」
男「その……」
男(行け、男なら……!!)
男「あの…… ここの店員の女さんのことです!!」
チャラ男「店員―― もしかして、ここの店の人っすか?」
男「そ、そうではないですけど…… 彼女の友人です!」
チャラ男「へぇー、それで…… 俺ってやっぱりまずいことしちゃったんすかねー?」
男(ん……?)
チャラ男「いやー、ほんとにそれは申し訳ないっていうか……」
男(あれ…… 意外といい人!?)
チャラ男「もう、しつこく絡まないんで―― 彼女の連絡先教えて欲しいんですけどぉ」
男(やっぱりダメな人だった)
男「それはプライベートなことなんで…… それに、彼女自身も迷惑していると言っています」
チャラ男「へぇー、それじゃ自分の力で頑張るから。応援して欲しいというかぁ、ははっ」
男(は、はああああああああ!?)
チャラ男「あ、もちろんお店には迷惑かけないんで! お願いします!」
男(この男…… 色々とずれている!?)
94 = 78 :
男「いや、だから…… 彼女本人が迷惑しているとのことなので」
男「それは即ち店の迷惑にもなる…… ってことですよね?」
チャラ男「あー、なるほどぉ」
チャラ男「でも、ぶっちゃけ俺…… あの人にゾッコンなんすよ!!」
男(知るか!!)
チャラ男「どーしてもダメっすか?」
男「あ、はい…… 申し訳ないですが」
チャラ男「でも、俺も後には引けないっつーか」
チャラ男「ぶっちゃけ、あなたも友人ですよね?」
男「は、はい……」
チャラ男「ここの店の人じゃないってことだし」
チャラ男「店の人に言われたならまだしも、あまり強制できないっていうかー」
男(ぐ…… しまった)
男「でも、ここのマスターが以前あなたに注意をしたという話は聞いています」
チャラ男「なら、とりあえず店に入らせてよ」
男(クソ…… 話がまるで通じない!)
チャラ男「それで注意されたら、しょうがないから諦めますわー」
男(嘘つけ!)
チャラ男「だから入れてくださいというか…… 呼んできてくださいというか」
男「それは……」
男(どうする…… マスターに助力をお願いするか!?)
95 = 24 :
まだやってたのかw
96 = 78 :
男「それなら…… ちょっと近くの公園で話しませんか?」
チャラ男「え? それは必要ないっしょ?」
男(しまった―― 俺は何を!!)
チャラ男「とりあえず店に入れてよ」
男「あ……! 待ってくださいダメです!!」
チャラ男「だから何で……!! あんたに関係ないっしょ?」
男「関係あるんです……!!」
チャラ男「ちょっと、どいてくんね!?」
男「ダメッたらダメです……!!」
チャラ男「……!!」
チャラ男「分かったよ!」
男「……!?」
チャラ男「話し合いしますよ、すればいいんでしょ?」
男(や、やった……!!)
男「それでは、そこの公園で――」
97 = 78 :
チャラ男「ふぅー……」
男(み、未成年だよなこいつ…… 平気でタバコ吸ってるし)
男「あの…… タバコは……」
チャラ男「それは今関係なくね?」
男「す、すみません……」
男(怖ぇえええええ)
チャラ男「てかさ、店に入るくらいはいいじゃん。何でダメなわけ?」
チャラ男「店員でもないあんたにそんな権限なくね?」
男(そして圧倒的正論―― だが負けるわけには!)
男「それは…… 正直言いますと、彼女から『あなたには来て欲しくない、怖い』と相談を受けたのです」
男「マスターにも相談しています」
男「このままだと、最悪通報されますよ?」
チャラ男「……」
チャラ男「だったらさ、尚更会わせてくんね?」
チャラ男「本人から直接言われないと諦めきれないじゃん?」
男「それは……」
チャラ男「だいたいあんたさ、友達とか言ってるけど」
チャラ男「あの人と付き合ってるの?」
男「それは―― いや、付き合ってはいません」
チャラ男「それじゃあ、好きなわけ?」
男(それは……)
男「いえ…… 彼女は友達です」
98 = 78 :
チャラ男「だったら尚更じゃん」
男「それとこれとは関係ないと思います…… 友達から相談されてほうっておけるわけがないじゃないですか」
チャラ男「でも、彼氏だったらまだしも…… 友達のあんたに俺の恋愛を邪魔できる権利はないよね!?」
男「だから……!!」
男(くそ…… 本当に話が通じない!!)
男「あなたは本人から『会いたくない』と言われているんですよ……!?」
男「それに…… あなたについては、女性関係の良くない噂を聞きます」
男「尚更会わせるわけにはいきません……!」
チャラ男「ああー…… なるほどね」
男「……?」
チャラ男「どこかで見たことあると思ったら、同じ大学だっけ?」
男(まさか…… 覚えられていた!?)
チャラ男「あのね、一つ言っておくけど―― 俺たちにあんま立てつかない方がいいよ?」
99 :
ぷいきゅあーがんばれー
100 = 78 :
男(な、大学生でそのセリフッ!?)
チャラ男「それに俺、今回は本気(マジ)だから」
男(あなたのような人間の言うマジは信用できませぇぇん!!)
男「未成年の喫煙、それに飲酒も…… ば、ばれたら大学にいられなくなりますよ!?」
チャラ男「へぇー、脅すんだ」
男(ああああ怖いいいいいいい!!!!!!)
チャラ男「見たところ―― 君って友達いないよね?」
男(それだけはやめろください)
チャラ男「別にチクッてもいいよー?」
男「え…… それって……」
チャラ男「でも、それでうちが解散させられたら―― 後は分かるよね?」
男「き、脅迫するつもりですか!?」
チャラ男「別に俺は脅迫するつもりなんてないよ?」
チャラ男「でも、俺以外の大勢の人間の怨みを買っちゃうってことは事実だけど」
チャラ男「まあ、好きにしな。俺はあんたにどうこうするつもりはないけど」
チャラ男「でも、あんたが俺以外の誰かから何かされても責任は負えないからさ…… ごめんねー」
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