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    元スレ唯「憂ー。脳みそが少しこぼれちゃったから、掻き集めてくれない?」

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    1 :

    4月4日。午前4時。

    ぱっくりと割れた隙間からその身を零れ落としながら、
    物言わぬ脳みそは朝を待ち続けていた。

    2 = 1 :

    4月2日。午後4時。

    コンコン。
    病室にノックの音が響く。
    その数秒後、恐る恐ると言った様子でドアは開かれた。

    「お姉ちゃん。体調の方はどう?」

    ドアの隙間から身を滑り込ませ、憂が姉である唯へと声をかける。
    ほんの六畳ほどの個室は、壁もカーテンもシーツも全てが真っ白で、
    それらが大きな窓から差し込む西日を反射させていて、眩しいくらいだった。

    4 :

    期待してる

    5 = 1 :

    「……」

    ベッドの上で上体を起こし、こちらに背を向け、
    電源の入っていないテレビをぼんやりと眺めている唯の反応を、
    憂は根気強く待っていた。

    「……」

    焦っちゃダメだ。憂は自分に言い聞かせる。

    しかし、こうして、変わってしまった姉を目の当たりにすると、
    どうしても思い出してしまう。

    あの日の”事故”のことを。

    7 = 1 :

    ピンク色のパジャマを着た唯の上体が、ゆっくりとこちらへ向けて回り始める。
    まるで、ゼンマイの切れかかった機械仕掛けの人形のような、緩慢な動きだ。

    焦点の合っていない瞳が憂を少し通り過ぎたところで、唯は体の向きを固定させる。

    「憂ー。来てたんなら声かけてよー」

    「ごめんね、お姉ちゃん。起こしたらいけないと思って」

    無理に笑顔を作った憂の言葉に、唯は首を傾げた。

    8 = 1 :

    「私、寝てないよ? 今だってずっとテレビ見てて」

    背後を指さしながら、先程とは打って変わって素早く上体を回転させた唯は、
    途中で言葉を止めた。

    「……」

    そして、何も映っていない真っ黒な画面を十数秒ほど眺め、
    そのまま視線を戻すこともなく、憂へと疑問を投げる。

    「あれえ……。憂、テレビ消した?」

    9 :

    面白い

    10 = 1 :

    「……カードの度数が、切れちゃったんじゃないかな」

    この病院では、通常の病室と違って、個室のテレビはカードなど無くとも見ることができる。
    しかし、憂は姉に対して嘘をついていた。

    「そっかぁ。……憂、悪いんだけど、後でカード買ってきてもらえる?
     テレビでも見てないと、退屈で退屈で死んじゃいそうなんだよぉ」

    「うん。分かったよ、お姉ちゃん」

    うんざりとした様子を気取られないように、憂は努めて明るくそう言った。
    実は、以前にも似たようなことが何度かあって、困ったことがあったのだ。

    11 = 1 :

    その時は『最初からテレビなんてついてなかったよ』とか、
    『お姉ちゃんと話したいから私が消したんだよ』とか、

    憂もこんな風に答えていた。それに対して、唯は突然怒りをあらわにしたのだった。

    『憂! 何言ってるの!? 私は今まで見てたんだよ!?』
    『勝手なことしないで! ここは私の部屋なのに!』

    狂ったように暴れる姉をなだめる方法が思いつかず、
    憂は嘘をつくことに決めたのだった。
    どうせ、リモコンの使い方も分からないのだろうから。
    憂はそう考えていた。

    12 = 1 :

    「じゃあ、私はそろそろ帰るね」

    1時間ほど他愛のない話をした後、憂はそう切り出した。
    (もっとも、会話をしている時間よりも、唯が沈黙していた時間の方が圧倒的に長かったが)

    「あ、そうだ」

    相変わらず、焦点の合っていない瞳を上の方へと向けながら、
    何かを思いついたように唯が手を打った。

    「さっきね、律ちゃん達が来た時に、おいしそうなお菓子を置いていったんだけど」

    その言葉に、憂の心臓が大きく跳ねた。
    反射的に胸に手を当て、苦しげに呻く。

    ――お姉ちゃん。律さん達は、もう……。

    「あっれぇ。おっかしいなぁ」

    そんな憂の様子には目もくれず、
    唯はサイドテーブルの引き出しや戸棚をガサゴソと漁っている。
    しばらくして、探すのを諦めた唯は顔を上げ、困ったように笑った。

    「憂ごめんねぇ。どうしても見つからないや」

    13 = 9 :

    りっちゃん達どうなったんだよ

    14 = 1 :

    4月2日。午後5時半。

    憂は病室を出ると、足早に病院を後にした。
    姉や、姉の友人たちのことを思うと、今にも泣き出してしまいそうだったためである。

    「……」

    陰鬱に沈み込んだ気持ちがそうさせるのか、
    ここへ来る時よりも重くなった体を引きずるように、憂はノロノロと家路につく。

    冬に比べれば日が長くなったとは言っても、
    この時間になるともう太陽もその役目を終えようとしていて、
    夜の足音がそろりそろりと近づいてきていた。
    ひんやりとした春風が、頬を撫でつける。

    ふと、憂は立ち止まり、顔を上げた。
    電球が切れかかっているのか、等間隔に並んだ街灯のひとつがしきりに明滅を繰り返している。

    ――ああ、あの時もそうだったな。

    憂は思い出した。

    ――律さんの運転する車が突っ込んで、真ん中より下部分がひしゃげた街灯も、
    こんな風にチカチカとみんなを照らしていたっけな。

    15 :

    なんだこれレベルたけぇな

    16 = 9 :

    小説みたいな

    17 = 1 :

    10月5日。午後4時。

    「すっごーい! 律ちゃん、車の免許取ったの!?」

    「おう! いいだろー?」

    「いいなぁ、律ちゃん」

    「こ、怖くないのか? 運転とか」

    「なんだー? 澪ちゅわんは怖がりですなー」

    「わ、私はだな。律、お前のことを心配して」

    「澪ちゃんは律ちゃんのこと大好きだねぇ」

    「な、な、な……」

    「平気だよ。オートマ限定だし、あんなのおもちゃみたいなもんだ。
     走らないようにドラム叩く方がよっぽど難しいぜ」

    19 :

    読みやすい

    20 = 1 :

    「律先輩!」

    「ん? どうした梓。目ぇキラキラさせて」

    「私、ドライブ行きたいです!」

    「あー! いいね、いいねぇ! 今度の連休にでも、みんなでどこか行こうよぉ!」

    「私も賛成!」

    「じゃあ親父に車借りないとだなあ」

    「……」

    「澪は行かないのか?」

    「……く」

    「んん?」

    「……私も行く」

    21 = 15 :

    去年の話になったのか

    22 :

    面白い

    23 = 1 :

    10月10日。午前10時。

    「ひゃっほーい!」

    「ちょ、ちょっと律ちゃん! 飛ばし過ぎよ!」

    「ひぃぃ……」

    「ムギ、固いこと言うなって! 高速なんて飛ばしてナンボだろ」

    「そうだよぉ。あ、律ちゃん! あの黒い車抜かそう!」

    「オーケー! 私のドライビングテクしっかり見とけよ!」

    「降ろして降ろして降ろして降ろしてぇ……」

    「もう……」

    「いえーい!」

    「かっこいい……」

    24 :

    この時期にあってるな

    25 :

    戦犯 律

    26 = 1 :

    10月10日。午後12時。

    「この馬鹿律! なんであんなに危険なことをするんだ!」

    「な、なんだよ。サービスエリア来た途端元気になりやがってよお」

    「澪ちゃんの言う通りよぉ……。さすがに160キロは出し過ぎじゃない……?」

    「まだまだだよ! 黒い車に追いつけなかったし!」

    「そうです! まだ行けますよ!」

    「二人も煽るようなことを言うな! 交通法規を守らずに事故起こしたら、
     誰も同情なんてしてくれないんだぞ!」

    「澪ちゅわんは頭が固いでちゅねぇ」

    「なんだとっ!」

    「コンパクトカーであの速度はさすがに自殺行為よ……」

    27 = 1 :

    10月10日。午後4時。

    「はぁ……。ようやく帰れるのか……」

    「……」

    「律ちゃん大丈夫? 半日も一人で運転したから、さすがに疲れたんじゃないかしら」

    「疲れたけど……、私以外に運転できるやついないしな」

    「私、代わろうか!?」

    「私も運転してみたいです!」

    「馬鹿! やめろ!」

    「う……、冗談なのに……」

    「す、すいません」

    「……お前ら少し黙ってろ。気が散る」

    28 :

    不幸にも黒塗りの高級車に追突してしまう・・・

    29 = 1 :

    10月10日。午後5時半。

    「高速降りたからもう安心だな」

    「律ちゃん、適当なところで降ろしてくれて平気よ。
     私達、電車で帰るから」

    「……いいよ。全員家まで送る」

    「ここからだと唯先輩の家が一番近いですかね。
     ちょうど助手席にいるんだし、ナビしてあげたらいいんじゃないでしょうか」

    「あ、じゃあそこの信号右ね」

    「……無理。今左車線いるし」

    「なんでよー。ケチー」

    「……」

    「律ちゃん。イライラしないで、落ち着いてね……?」

    30 :

    紫煙

    31 = 1 :

    「えっとぉ、それでぇ」

    「もうナビはいい。なんとなく道に見覚えあるから」

    「わっ!?」

    「な……。おい律! なんでアクセル踏み込んで……」

    「うっせぇ。どうせ人なんて通らねぇだろ」

    「ちょっと……、ここ住宅街よ!?」

    「きゃっほー!」

    「さっさとお前ら送って、早く家に帰りたいんだよ。私は」

    「危……っ! 危ないわよ! 律ちゃん!」

    「……」

    32 :

    これは神スレの伊予柑

    33 = 15 :

    なんだこの律の初心者リアリティwww

    34 = 1 :

    「律! いい加減にしろ!」

    「なんだよ! 触るな! 放せ!」

    「わわわわわ……」

    「律ちゃん! 前見て! 澪ちゃんも律ちゃんから手を放して!」

    「だってこいつが……」

    「こっちは運転中なんだぞ!? いいから放せよ!」

    「わああああああーーー! まえー!!! 前ーーーー!!!!!!!」

    「あ……っ。うおお……っ!?」

    「きゃあああああああああああっ!!!!!」

    「……っ!」

    35 :

    (あれ?ジャクリーンかよって書き込もうと思ったのに)

    36 :

    やってしまいましたねえ

    37 :

    この澪

    38 = 1 :

    4月2日。午後6時半。

    どれだけ時間が過ぎただろうか。
    ほんのりと明るかった空も、完全に夜の闇へと落ちている。

    薄ぼんやりとした頭の中を占めている、嫌な思い出を断ち切るように、憂は首を軽く横に振った。
    意を決したように、再びのそのそと歩き始める。

    あの時、外から聞こえたただならぬ激しい物音に、憂は弾かれたように家を飛び出した。

    そこで見たものは、原型を留めないほどに大破した車と、ひしゃげた街灯。
    そして、血塗れで動かないみんなの姿。

    39 :

    なんでこんな描写がリアルなんだよ

    40 :

    やっぱりむぎちゃん以外クソだな
    デコカスは許さん

    41 = 1 :

    憂が慌てて救急車を呼んでいる間に、
    比較的軽症だった紬と梓の二人は、自力で車の後部座席から這い出してきた。
    運転席に座っている律も、痛みで動けないだけで、意識はあるようだった。

    しかし、真に憂が案じていたのは残りの二人。
    フロントガラスを突き破り、車外に投げ出されている唯と澪のことだった。
    服があちこち破け、血塗れで、死んだように動かない二人の姿を、
    倒れかかった街灯が、頼りない明かりでチカチカと照らしていた。

    42 = 22 :

    生きてしまった律が可哀想すぎる

    43 = 1 :

    10月10日。午後6時半。

    「大丈夫ですか!? 二人とも……」

    「私は、平気だけど……。みんなが……」

    「ゆ、唯先輩……。み、みお……」

    「触らないで!」

    「ひっ……!」

    「お姉ちゃんも、澪さんも、頭を打っているかも知れないから……。
     下手に動かさない方が、いいと思う」

    「憂……、ごめん……」

    「ううん。私の方こそ怒鳴ってごめん。
     もうすぐ救急車が来るから、それまではそっとしておこう」

    44 = 40 :

    むぎちゃん生きてたのかよかった

    46 = 1 :

    「ねえ、憂ちゃん。梓ちゃん」

    「なんでしょうか」

    「? なんですか?」

    「あれって……、何かしら」

    「あれ? あれとは……」

    「……!」

    「唯ちゃんの、頭から出てるの……」

    「お姉ちゃんっ!」

    「ダメだよ! 憂!」

    「放して……。放してよおっ! お姉ちゃんが……! お姉ちゃんがぁ……っ!」

    「動かしたらダメなんでしょ!? 救急車が来るのを待たないと……!」

    47 :

    こわいよお

    48 = 15 :

    このスレが気になって筋トレできねぇ

    49 = 1 :

    4月2日。午後8時。

    憂は気付くと、電気もつけていない自室の隅で一人、背中を丸めていた。
    どうやら、記憶を辿っているうちに、いつのまにか家に帰っていたらしい。

    「あー……。あー、あー」

    意識的に声を出すことによって、憂は現実の世界に無理やり自分を引き戻した。
    もやがかかったような頭の中が覚醒するにつれ、
    まるで、思い出そうとしても思い出せない夢から覚めたばかりのような、妙な喪失感に襲われる。

    「……喉、渇いたな」

    時間の感覚もはっきりしないまま憂は立ち上がると、
    喉の渇きを癒すため、キッチンのある階下へと降りていった。

    50 = 9 :

    すげえ


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