元スレ男「サラリーマンとは、闘い也!」
SS覧 / PC版 /みんなの評価 : ★★
1 :
< 自宅 >
ジリリリリ……!
男「起床ッ!」バッ
起床とは、闘い也!
布団をすみやかに脱出し、目覚めから0.15秒未満で直立すべし!
夢への未練、目覚めから0.25秒未満で断ち切るべし!
辛く険しい現(うつつ)と、向き合わねばならぬのだから……。
男「完全覚醒ッ!」キリッ
2 = 1 :
男「洗顔ッ!」
洗顔とは、闘い也!
妻が用意せし熱く煮えたぎった湯の摂氏、限界突破の800℃!
これを躊躇なく顔面に浴びせられる漢でなくば、サラリーマンは務まらない!
バシャッ! バシャッ! バシャッ!
男「適温ッ!」
3 = 1 :
妻「ヒゲを剃りましょうね、あなた」チャキッ
男「頼むよ」
ヒゲ剃りとは、闘い也!
エプロン姿の新妻が持ちし、金剛石をも断ち切る名刀『愛妻』!
これを秒速500kmを超える速度で振り回し、ヒゲを剃るのである!
むろん、妻の手元が僅かでも狂わば、男の首が飛ぶことスペースシャトルの如し!
サラリーマンとは常に死と隣り合わせである!
たとえ不慮の事故で命失おうとも、一片の悔いなし!
ヒュバババババッ!
妻「ヒゲ剃り完了」チン…
男「剃り残し、無しッ!」ツルツルッ
5 = 1 :
男「いただきます」
妻「バターを塗ったトーストと玉露は、よく合いますのよ」
男「ありがとう」
朝食とは、安らぎ也!
朝のニュースを眺めながらの、ブレックファストとティータイム!
会社という戦場に旅立つ前の、ほんの一時の至福である!
焼け石に水、と嘲笑(わら)う者があるかもしれない。
だが、笑いたいものには笑わせておけばよい!
笑う門には、福が来るのだから……。
6 = 1 :
男「行ってきます」ザッ
妻「行ってらっしゃい」
出勤とは、闘い也!
夫婦の別れに涙はいらぬ!
夫の外出を見届けた妻は、即座に白装束となり液体窒素を体に浴びせるのである!
これすなわち、祈願!
我が身を凍結する代わり、夫を生還させよという自己犠牲的発想!
夫の身を案ずる余り、誰に命じられたわけでもなく身についた習慣である!
ザバァァァ……!
妻「あなた……どうかご無事で」
7 :
男の仕事はやせ我慢
8 = 1 :
< 電車 >
ガタンゴトン……
満員電車とは、闘い也!
座席、壁際、手すり、つり革、乗客同士の寄りかかり!
生き馬の目を抜くようなポジションの奪い合い!
コーナーキックを待ち受ける、プロサッカー選手に匹敵する攻防!
中年(さて降りるか……)スッ…
男(チャンス!)ダダダッ
男(ポジション、ゲット!)スチャッ
座れはせずとも!
男はドアの両側、通称“寄りかかれるスペース”をゲット!
本日、絶好調!
9 = 1 :
しかし──
満員電車には恐ろしい罠(トラップ)が存在する!
女子高生「きゃあ~!」
女子高生「この人、痴漢ですぅ! お尻をさわってきました~!」
男「!」
男(痴漢など、私はやっていない……!)
女子高生「…………」ニヤッ
男は見た!
女子高生のデーモン笑み! 犯罪! 冤罪! 万歳!
10 = 1 :
ザワザワ…… ドヨドヨ……
絶体絶命!
痴漢冤罪の罠にかからば、懲戒免職、家庭崩壊、実刑判決は免れない!
もはや男は、蜘蛛の巣に捕らわれた哀れな蝶々!
男(先手を取られた──ならばッ!)
男「ああ、私を痴漢をした」
女子高生「え?」
男「さわったばかりではない」
男「私はこの可憐な少女を──押し倒し、接吻し、なぶり、犯したッ!」
女子高生「!?」
女子高生の言いがかりを“先の先”とするならば──
男はあえて冤罪を受け入れることで“後の先”を取ったのである!
これすなわち、カウンター! 威力は倍増され、敵に返還される!
11 = 1 :
女子高生(この人、私のウソをあえて全部受け止めてくれた……!)ドキン…
女子高生「ごめんなさいっ! 全部、ウソなんですっ!」
女子高生「なんか最近ムシャクシャしてて、つい──」
男「気にするな。過ちを悔いる心、それだけで私は嬉しい」
男の度量にて、不良女子高生の凍てついた心は春の雪解け水が如く溶解した。
この女子高生、この事件を機に自らの半生を猛省し、
後にノーベル平和賞を受賞することになるが──それはまた別の話。
女子高生「本当にあなたの女になったらダメですか?」
男「悪いが、私には愛する妻がいる」
パチパチ……! パチパチ……!
拍手喝采である。
満員電車では皆が敵同士、だからとて祝福の心を忘れたわけではない。
12 = 1 :
男(む、あの座席が空いたッ!)キリッ
男(初速1,200m/sで動けば、あの座席に座れるッ!)ダッ
シュザッ!
男「!」
エリート「…………」ニコッ
男(先に座られた……! 速いッ……!)
エリート「残念、この座席はボクのものです」
エリート「でも……どうしても座りたければ、ボクの膝の上に座ってかまいませんよ」
タッチの差で座席に奪われた男を見上げながら見下ろす、エリートの露骨な挑発である。
だが男はあえて──
男「座らせてもらう」スッ…
13 = 1 :
直後、尻全体に鋭利な痛みが走った!
自らの尻を確認するや否や、目に飛び込んできたのは無数の画鋲!
男「貴様ッ! いつの間に膝の上に画鋲を……ッ!」
エリート「最初からですよ」
エリート「しかし、ボクの挑発に乗り、冷静さを失っていたアナタは気づかなかった」
エリート「社会人にあるまじき、注意力散漫だ……」
エリート「先ほど女子高生を手玉に取った実力を見込んで、試してみたんですが──」
エリート「どうやら期待外れだったらしい。ガッカリだ」
男「あ……あ、あ……」
ガーン!
男の目に涙を浮かばせたるは、尻の痛みでなく心の痛み!
完 全 敗 北 ! ! !
14 = 1 :
< 駅 >
キヨスクとは、闘い也!
目的駅についた男、まっすぐ会社には向かわずキヨスクへ直行!
理由はもちろん、完全敗北を喫した我が身を奮い立たせるため──
おばちゃん「いらっしゃいませ」
男「棚にある栄養ドリンクを──全部ッ!」
おばちゃん「あいよッ!」
宇宙最強の栄養素と名高いタウリンが、男の打ちひしがれた心を復活させる!
これぞモーニングドーピング!
サラリーマンにとって、ドーピングは反則ではない。日常である!
15 = 1 :
< 会社 >
男「おはようございます」
同僚「よう」
OL「おはよう!」
係長「おはよう」
課長「うむ、おはよう」
男「……しかし、私はキヨスクに寄ったせいで始業時間には間に合ったとはいえ」
男「いつもの出勤時刻より五分ほど、遅れてしまいました」
男「よって、私に対して『おはよう』は相応しくないのです」
男「やり直しを要求させていただくッ!」
挨拶とは、闘い也!
漫然と決まり文句を交わす習慣にあらず!
自分に相応しくないとあらば、断じて拒否せねばならない!
16 = 1 :
同僚「おおそう! 待ちくたびれたぜ」
OL「おおそう!」
係長「おおそう」
課長「うむ、おおそう」
男の心意気を飲み込んだ課の仲間4名!
即座に『おはよう』を『おおそう』に切り替える、チーター以上の瞬発力!
男の目に、またもうっすらと涙が光る……。
男(みんな……ありがとう……)キラッ…
17 = 1 :
電話取りとは、闘い也!
電話のベルが鳴ってからでは遅すぎる!
先方が電話をかけてきた瞬間では遅すぎる!
真のサラリーマンたる者、先方が電話をしてくるのを見切って、
こちらから電話をかけねばならない!
先手必勝の精神が、予知能力の如き直感を生むのである!
男「お電話ありがとうございます」
客『おお、今まさに君に電話をかけようとしていたところだよ』
客『やられたよ……完敗だ!』ニィッ
男(勝利ッ!)
18 = 1 :
デスクワークとは、闘い也!
男のパソコンの実力たるや──
ワード二段! エクセル四段! パワーポイント六級!
すなわち、2×4×6=四十八!
これはかの忠臣蔵の赤穂浪士四十七名をも上回る、驚異的数値である!
なお──
男(ここでエンターキーを押すッ!)
男「はっ!」
メキィッ!
男はエンターキーだけは、肘(エルボー)で押すという
非常に厳しい制約を課している! 壊したキーボードの数、実に数千!
19 = 1 :
男(この書類、10部ほどコピーするか)ダダダッ
同僚「この資料、コピーしねえと!」ダダダッ
男「!」
同僚「俺の方が0.18秒、コピー機に着くのが早かった」
同僚「だが──お前だって急いでるんだろ? 俺に勝てたら先にコピーしていいぜ」
男「望むところッ!」
コピー取りとは、闘い也!
己とコピー機の一対一(タイマン)を邪魔する者あらば、
命を奪う覚悟、奪われる覚悟を以って、駆逐すべし!
譲り合いなどあってはならぬ!
コピー機とは、真の強者にのみ心を開いてくれるのだから……。
20 = 1 :
同僚「お前相手に手加減はできない……使わせてもらうぜ、ネクタイを」シュルッ…
男「本気のようだな」
ネクタイとは正装にあらず、武装也!
鞭の如く扱い打撃! 手錠の如く扱い緊縛! 縄の如く扱い絞殺!
たった一本のネクタイで、かのように多彩な攻撃が可能である!
まして同僚はネクタイ術に関しては、右に出る者なし!
男の額に、じんわりと冷や汗が浮かぶ!
同僚「そうらッ!」ヒュバッ
バチィィッ!
男「ぬう……ッ!」
蛇のように動くネクタイ! 男の皮膚が弾け飛ぶ!
21 = 1 :
同僚「よっと」ヒュッ
ガシッ……!
男(右腕を絡め取られた!)
同僚「ネクタイ一本釣りッ!」ブオンッ
ドガッシャァンッ!
ネクタイで絡め取った男を投げ飛ばし、そのままコピー機に叩きつける残虐技!
しかし、大ダメージにもかかわらず、男は反撃の狼煙を上げようとしていた!
男「ぐふっ……。ならば私も使わせてもらおう、ネクタイを!」
同僚「!」
同僚(コイツの戦闘術は素手専門だったはずだが──)
同僚「おもしれえ! やってみなッ!」
22 = 1 :
男「今私が締めているこのネクタイは──」
男「去年、私の誕生日に、妻が買ってくれたものなのだ」
男「妻よ……私は勝つッ! 勝ってコピーを完遂するッ!」ゴゴゴ…
同僚(ネクタイを通じて奥さんからの愛を受け取り、パワーアップッ!)
同僚(これもまた立派なネクタイ術じゃねーか! さすがだぜ!)
同僚「俺、この会社に入ってよかった! お前みたいな好敵手に出会え──」
ボゴォッ!
同僚「た」
一撃!
吹き飛ばされた同僚の体はコピー機と激突し、コピー機を跡形もなく粉砕した!
同僚「……ん、だから、な……」ガクッ
男「最後まで台詞を言い切るその執念! さすが我が同期ッ!」
23 = 1 :
同僚「しっかし、コピー機ぶっ壊しちまったな」
男「仕方あるまい。私が弁償しよう」
同僚「いや、俺が先に勝負ふっかけたんだ。俺が弁償するよ」
すると、コピー機になにやら異変!
二人の漢の熱気を浴び、このまま壊れてなどいられぬと──
機械にあるまじき掟破りの自己再生!
メキメキ……!
コピー機『我、再臨す!』
コピー機『さあ書類を乗せろ。どんな書類でもコピーしてやろう!』
同僚「死の淵からよみがえったことで、自我まで芽生えてやがる!」
男「うむむ、このコピー機こそコピー機の中のコピー機ッ!」
25 :
とんでもないスレを開いてしまった
26 = 1 :
企画書とは、闘い也!
小脳大脳を捻り上げ、絞り出した、己の創意工夫(アイディア)!
いざ、課長に提出!
課長「ふむ……」ピラッ…
男「いかがでしょう、課長?」
課長「企画自体はよろしい……」
課長「あとは──君の企画に対する“熱意”を示すだけだ。来たまえ」
男「応ッ!」
相手は上司、しかも同僚との死闘のダメージも残る!
だが、相手が社長であろうとも奥歯をもぎ取れるのが、真のサラリーマン!
だが、装甲車にハネられても戦うことができるのが、真のサラリーマン!
男は真のサラリーマンであった……!
27 = 1 :
課長はシャチハタ使い!
両手に持った時価数百円のシャチハタによる高速突きで、精密に急所を狙う!
ひとたび急所に押印されれば、落命は必至!
バババババッ!
課長「さあさあ、どうしたのかね?」バババッ
課長「避けてばかりでは、企画は通らんぞ」バババッ
男(速いッ!)
男(会社帰りのバッティングセンターで銃弾をバットで打ち返す鍛錬を繰り返し──)
男(鍛えに鍛え上げた我が動体視力!)
男(にもかかわらず、課長の突きを完全に見切れないッ! 反撃のスキがないッ!)
課長「打つ手なしか。君には失望させられたよ……ガッカリだ」バババッ
男「!」
28 :
食の軍師っぽいけどつまんねーな
29 :
見てる
30 = 1 :
エリート≪どうやら期待外れだったらしい。ガッカリだ≫
今朝の完全敗北、フラッシュバック!
あの痛みが、あの屈辱が、あの不甲斐なさが、男の後退した心と体に火を灯す!
男「見くびらないで下さい、課長!」ダッ
課長「無策で突っ込むか」
課長「無策には、無情で答えるのみ」
メキィッ……!
課長のシャチハタが、男の額にクリティカルヒット!
ひび割れる頭蓋骨!
しかし、割れた男の頭に浮かぶは、勝利の二文字!
31 = 1 :
男「取ったァッ!」ガシッ
課長(これは──関節技!?)
関節技(サブミッション)──腕ひしぎ逆十字!
頭と引き換えに、右腕をゲットだぜ!
課長「参った、ギブアップだ!」パンパンッ
男「折るッ!」グンッ
ボギィッ……!
課長の右腕、あらぬ方向にヘアピンカーブ!
男の勝利である!
32 = 25 :
なんて世界なんだ・・・
33 = 1 :
課長「……よくやった」プラーン…
課長「もし私のギブアップで、折るのを躊躇していたら企画は通さなかった」
課長「君の熱意、受け取ったよ。この企画書はあとで部長に上げよう」ニッ
男「課長」
男「課長の右腕……音を立てて骨を外しただけで、折ってはいませんッ!」
課長「フッ……どうやら、今日のところは私の完敗のようだな」
キーン…… コーン…… カーン…… コーン……
係長「課長、昼ごはんにしましょう」ガタッ
課長「うむ」
OL「あたし、友達と食べてこようっと」ガタッ
同僚「俺は外で食ってくるけど、お前は?」ガタッ
男「私には愛妻弁当がある」
34 = 1 :
昼休み──
男(妻よ……)
男(君の作ってくれた弁当で、午後への活力を養わせてもらうよ)
男「いただきます」ペコッ
弁当とは、愛の結晶也!
わずか20cm四方の箱から漂う、溢れんばかりの妻の愛!
蓋を開ける前からすでに男の全身は紅潮し、完熟トマトにも似た様相!
いざ、開封!
男「…………」パカッ
男(中身が──)
男(無いッ!)
35 = 25 :
係長か!
36 = 1 :
箱の中には手紙が一枚あるのみ!
果たして事件の真相とは!?
『申し訳ございません、あなた』
『本日のお弁当、我ながらあまりに出来がよかったので』
『自分で全部食べてしまいました』
『かくなる上は、いかなる処罰をも受ける所存です』
この手紙を読み、男の脳裏に芽生えた感情──
哀ではない! 楽でもない! ましてや怒などでは断じてない!
圧倒的、喜!
38 = 1 :
思わず自分で食べてしまうほどの料理を作り上げた妻への祝福!
わざわざ手紙で事情を説明する妻に対しての感服!
そしてなにより、申し訳なさそうに台所でつまみ食いをする妻を想像するだけで──
こんな台詞が飛び出てしまう!
男「最高じゃないか……!」
男の胃袋は満たされていた……。
もはや、フルマラソンを百回完走しても使いきれないほどのカロリーが、
男の肉体に充填されていた!
ついでに頭蓋骨も完治!
これで午後も戦える!
39 = 1 :
午後開始!
係長「じゃあぼくと出かけようか。今日こそ契約を取ろう」
男「はい、同行させていただきます」
外回りとは、闘い也!
本日回る企業は二社!
一社目は『中小企業』!
中堅ながら堅実な経営で地盤を固める会社である!
そしてクライマックスを飾る二社目は──『一流企業』!
日本有数の大企業であり、この企業にとってみれば男の会社などノミの如し!
だからこそ、燃える!
40 = 1 :
< 営業車格納庫 >
男「エンジントラブルッ!?」キュルルル…
運転とは、闘い也!
車は機械、故障は付き物!
いくらキーを回しても、車は沈黙! シカト! 完全無視!
このままでは中小企業との商談時刻に間に合わぬ確率、実に120%!
どうする、サラリーマン!?
男「私が……車を持ち上げて運びますッ!」
係長「よくいった」ニコッ
係長「もし電車で行きましょう、タクシーで行きましょう、などといいだしたら」
係長「ぼくは君を軽蔑し、社内に置いていくところだった」
41 = 25 :
かなわない・・・
42 = 1 :
重さ1.5トンの営業車を担ぎ、中小企業への道を急ぐ二人の漢!
二人の足の速さ、およそ時速400km! 東京大阪間を一時間で駆け抜ける速度!
係長「たまには車に乗るのではなく、車を乗せるってのもいいもんだろう?」
男「はい」
係長「おっと、そこの十字路を右だ」
男「はい」
男(係長……温和ではあるが、同僚や課長にも劣らぬ、真のサムライッ!)
係長「照れるじゃないか、サムライだなんて」
男「心を読まないで下さい」
係長「ごめん」
サラリーマンの中には、ごくまれに心を読める人間がいるという!
係長もその一人!
一説によると、本の読みすぎで心を読めるようになったとか……。
43 = 29 :
係長でこれならもっと上の人はさぞ恐ろしいことだろう
44 = 1 :
< 中小企業 >
ズシンッ……!
駐車場に車を置き、いざ出陣!
男「この会社……こんなところに池なんてありましたっけ?」
係長「いや……ぼくの記憶ではなかったはずだけど」
中小社長「それは私の涙ですよ」
男「なんですってッ!?」
すかさず男が池の水を舐める! まさしく涙の味!
男の敏感な舌は、さっぱりした塩味に隠れた、ある感情を見逃さなかった!
男「この涙は……感動の味がいたします」
係長「さすが、体液ソムリエの資格を持っているだけのことはあるね」
45 = 1 :
中小社長「感動したのは……あなたたちに対してです」
男「我々に!?」
中小社長「私はプライベートではドライブが趣味でして、車の声を聞く能力があります」
中小社長「あなたたちの営業車はこういっています」
中小社長「故障して走れないボクを、見捨てず運んでくれてありがとう、と」
男「ああっ……!」グスッ
係長「ううっ……!」グスッ
中小社長「例の件ですが、あなたたちのおっしゃる条件で契約しましょう!」
男「ありがとうございますッ!」
契 約 完 了 ! ! !
46 = 25 :
車を動かして人の心を動かしたか
47 = 1 :
ブロロロロ……!
係長「契約できたし、車も治してもらったし、よかったよかった」
男「ええ」
係長「しかし……次の『一流企業』はこううまくはいかないだろう」
係長「ちゃんと遺書は書いてきたかい?」
男「不要」
男「むろん死する覚悟はありますが、むざむざ死ぬつもりはありませんから」
係長「いい答えだ」ニコッ
二人は知っている!
『一流企業』の恐ろしさを!
中途半端なサラリーマンではたとえ命を百個持ち込もうとも、
受付嬢に会うだけで全てを使いきってしまうと……。
48 = 1 :
ブロロロロ…… キキィッ!
男「なんですか、あの真っ黒なビルは?」
男の瞳に映り込んできたのは、信じがたき光景!
漆黒に塗り潰されたビルの中で、幽鬼のように痩せ衰えた社員たちが
まるで生気の感じられない目で労働、労働、また労働! 労働地獄絵図!
係長「ああ、あのビルは……『ブラック企業』だ」
係長「彼らは社畜といって、365日24時間休みなく働かせ続けられるのさ」
係長「むろん、給料なしでね」
男「……そんなことが許されるんですか!?」
係長「許せはしないが……こうして堂々と経営しているのが許されてる証拠だ」
係長「政府や警察に多額の賄賂を贈っているんだろう」
男「ゆ、許せない……! 私は許すことができませんッ!」
49 = 25 :
きたか・・・
50 = 1 :
寄り道とは、闘い也!
男は激怒した!
同情心からではない!
彼にとってサラリーマンとは誇り高きもの! 人生そのもの! 歩むべき道である!
そのサラリーマンに家畜未満の待遇を与え侮辱するブラック企業の行いが、
男には我慢ならなかったのだ!
堪忍袋の緒、完全切断!
プッチーン!
男「係長、私は行きます! 行かせて下さい!」
係長「やれやれ寄り道してる時間などないというのに──」
係長「いいだろう、行ってきなさい!」
男「感謝ッ!」
みんなの評価 : ★★
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