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    元スレ憧「しずちょこ!」

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    51 = 15 :

    シズ…

    52 = 11 :

    初瀬用になるのか

    53 = 4 :

     ̄ ̄ ̄ ̄

    【5】


    将来の見通しというものは、それが大事であれ些事であれ、現実となるとは限らず。
    ある一つのちっぽけな未来絵図。
    それが粉々に砕け散る音が、午後の気怠い授業中に窓の外から聞こえてきた。

    「雨、かぁ……」

    聞いてないっつーの。1日晴れるんじゃないんかい。
    心のなかで悪態をつく。
    今朝、降水確率10%だとか言っていたくせに、天気予報は嘘つきだ。

    「……」

    折りたたみ、カバンに入ってっかなあ。
    傘、持ってくればよかったな。
    事務室に行けば傘借りられないかな。

    考え事をしていると、6限目終業のチャイムが鳴った。

    55 = 4 :

    穏乃「あーこー。かーえーろー!」

    授業中死にそうにしていたシズは、放課後になるやいなや、
    ゼンマイでも巻かれたかのように元気になり、今にも駆けださんばかりだった。

    「あんたねー。そのエネルギーをちょっとは授業にも回せっちゅーの!」

    穏乃「えへへへー」

    会話しているうちに、前の席に座っている子がカバンをまとめて去っていった。
    教室から徐々に人の姿が減っていく。

    56 = 14 :

    可愛い

    58 :

    あこしずしえん

    60 = 4 :

    穏乃「ほら早く早くー」

    「……」

    本命チョコ。
    ぼちぼち渡さないと渡しそびれるかな。
    少し迷ってあたしは、告白するなら今だと決心した。

    穏乃「どしたの憧? 帰らないの?」

    「あ、あのさ、シズ」

    穏乃「うん!」

    「話があるんだ」

    穏乃「話? 話なら帰りながらでも……」

    「ううん。ここですませちゃいたいの」

    「少し付き合ってくれる……、かな?」

    いいよと言って、シズは大きく1つ頷いた。

    61 = 3 :

    頑張れ憧ちゃん

    62 = 4 :

    「あのね」

    穏乃「うん」

    「あの……、あのね」

    いつしか教室にはあたし達二人だけになっていた。
    雨音が、まるであたしのことを急かしているかのようで。

    「今日、バレンタインだよね」

    穏乃「そう、だね」

    「……」

    穏乃「……」

    あたしの様子から何かを察したのか。
    なんだかシズまでいつもと様子が違うように思えた。

    63 :

    追いついた全力支援

    65 = 14 :

    いいよいいよー

    67 = 4 :

    「あたし、シズに……」

    渡したいものがあるんだ。
    伝えたい言葉があるんだ。

    「あたし……」

    文字に起こせばとても簡単なはずのことが、何故だか実行に移せなかった。

    「……」

    穏乃「憧……」

    シズの顔をまっすぐに見ることができなくて。
    あたしは逃げるように視線を窓の外にやった。
    雨はしとしとと止む気配がなかった。

    68 = 3 :

    ああ……

    69 = 4 :

    「……」

    穏乃「……」

    無言の時間が胸に痛い。
    とにかく何か喋らないと。
    焦ったあたしは、何も考えずにただ勢いのまま口を動かしてしまう。

    「とっ、ところであんた! チョコをくれた子にちゃんとお返しはしてるの!?」

    穏乃「へ?」

    ああ。最悪だ。
    まるであたしは誤魔化すように、逃げるように。

    「たとえ義理だとしても、できればきちんと返した方がいいよ?」

    穏乃「うん。チロルだけど……、一応、くれた人には渡してるよ」

    「そっか。ならいいのよ」

    ああ、本当に。
    我ながら超カッコ悪い、最悪な話題逸らし。

    70 = 63 :

    わかるわぁ…

    …ごめん嘘ついた

    72 = 4 :

     ̄ ̄ ̄ ̄


    【6】


    けっきょく本命を渡せないまま、あたしはいま帰途にある。

    穏乃「肩濡れてない?」

    「大丈夫だよ、ありがと」

    シズが学校に持ってきていた1本の傘の下に2人で並び。
    水たまりを避けながら、湿った道路をとぼとぼ歩く。

    「にしてもよく傘なんて持ってたね。朝は雲なんて出てなかったでしょうに」

    穏乃「へへへー。実はこれ、置き傘!」

    「なーんだ置き傘か。シズらしい」

    これ相合傘だよねってシズが言ったから、相合傘だよねってあたしも返事した。

    75 = 6 :

    相合傘イイね

    76 = 63 :

    愛愛傘いいね

    77 = 4 :

    歩いている内、にわかに雨足が強くなってきた。
    相合傘ではとてもしのげないような強い雨になりつつある。

    「ねえシズ。これじゃ2人ともびしょ濡れになちゃうし、シズ1人でその傘使いなよ」

    穏乃「憧はどうするんだよ」

    「あたしは走って帰るわよ。元はといえば、傘を持ってなかったあたしが悪いんだもん」

    穏乃「それは駄目。憧1人見捨てるなんて後味悪いよ」

    「……じゃあ2人して濡れて帰るの?」

    穏乃「私にある考えがあります!」

    「考え?」

    首を傾げるあたしに、イエスとシズは口を動かす。

    穏乃「ほら。ちょうどあそこに見える、あれ」

    シズが指さした先には、小学校時代によく利用していたバスの停留所があった。
    待合用の木製ベンチの上には、日よけの小さな屋根が付いている。

    そういえばちょうど今朝、散歩のついでにあのベンチに腰かけたっけ。
    なんだか妙な縁を感じた。

    穏乃「雨が弱まるまで一緒に雨宿りしよう!」

    80 = 4 :

    「ねー」

    穏乃「んー」

    「雨、なかなか弱くならないね」

    穏乃「だね」

    2人並んでベンチに座り、軒先から流れる雨粒を見つめる。
    世間と隔絶した不思議な空間に2人きりでいるような、そんな感覚にとらわれた。

    穏乃「ねえ、憧」

    「うん?」

    穏乃「あーこー」

    間延びした調子であたしの名前を呼ぶと、シズはあたしの肩にもたれかかってきた。
    伝わってくるシズの重みが可愛くて、ただ愛おしい。

    「なんなのよ、もー」

    口では呆れたようなことを言いながらも。
    あたしの表情は自然とほころんでいた。
    こちらからもシズの身体に、そっと体重を預けた。

    82 = 4 :

    2人でベンチに腰掛けて、人の字みたいにもたれあう。
    ただそれだけの時間に奇妙なほどの充足感があった。

    穏乃「なんか、たまにはこういうのもいいね」

    「うん。そうだね」

    ああ。やっぱりあたしシズが好きなんだなあ。
    そんな気持ちの実感が体の隅々まで染み渡っていく。

    やっぱりこの感情からは逃げちゃダメだ、頑張らなくちゃ。
    同時にそう、思い直す。

    「シズ……」

    穏乃「うん」

    「あたしの、チョコ……、欲しい?」

    83 = 11 :

    ただしチョコは尻から出る

    84 = 17 :

    あこたそ~

    85 = 4 :

    ――その刹那。

    穏乃「わあっ!!?」

    「ちょ!?」

    ドンガラガッシャン。
    シズが身体を大きくのけぞらせるようにしてバランスを崩し、
    そのまま盛大にベンチから滑り落ちた。

    「大丈夫シズ!?」

    穏乃「あいてててて」

    怪我してやいないだろうかと、
    地面に尻餅ついたシズの身体を、しゃがんで近くから確かめる。

    87 = 4 :

    「ああもう、滑り落ちる拍子に手をすりむいてるじゃない……」

    シズの手をとって、怪我の状態を確認する。
    右拳の外側、小指の付け根から手首にかけてが赤く腫れたような色になっていた。

    「待ってて、今ハンカチで」

    穏乃「だ、だ、大丈夫! 大丈夫だから!」

    「あっ……」

    シズはあたしの手を払いのけると、ふいと顔を逸らした。

    穏乃「ご、ごめん! でも本当に、大丈夫だから……」

    顔を逸らしたままのシズと。
    どう行動すればいいのか分からないあたしと。
    ざあざあと雨が沈黙を妨げてくれていることが、今はありがたかった。

    88 = 4 :

    穏乃「……嫌われてるのかと思った」

    「え?」

    ポツリとシズが、呟いた。

    穏乃「皆にはチョコをあげるのに、私にだけはくれないから……」

    「あっ」

    思い出すのは、今日学校での自分の言動。
    あたしはシズの目の前で、シズ以外の部活メンバーにチョコを配る話をした。
    シズにだけチョコを渡さなかったのは、シズが好きだからこそなのだが――、

    穏乃「嫌われてるのかと思ったんだ」

    同じ事象であっても、観測する立場によってその解釈は大きく異なりうる。
    あたしは自分の気持ちにばかり手一杯になって、
    シズの気持ちを見落としてしまっていたんだ。

    90 = 4 :

    「嫌いなわけないじゃない」

    穏乃「憧……?」

    シズの小さな肩を抱きしめる。
    びくっと一瞬シズの身体が跳ねて、すぐに落ち着いた。

    「嫌いなわけ、ないもん」

    もう想いを言葉にすることに迷いはなかった。
    たとえ受け入れてもらえなかろうが、再びシズに妙な誤解をされてしまうよりは、余程いい。

    「聞いてシズ」

    穏乃「うん……」

    91 = 3 :

    頑張れ

    92 = 4 :

    だからあたしは、そのたった三文字に、言葉より重い想いを乗せて、

    「好きよ」

    穏乃「……」

    顔を逸らしたままのシズの耳に。
    囁くように想いを告げた。

    94 :

    キマシ

    95 = 11 :

    そして初瀬ルートへ

    98 :

    やえ

    99 = 4 :

    穏乃「……」

    「……」


    一呼吸。
    雨色の静寂をおいて。


    穏乃「……きだよ」

    「えっ?」

    照れた笑顔で、もう一度シズは呟く。

    穏乃「私も大好きだよ」

    そしてシズは、ポスンとあたしの肩に頭を乗せてきた。
    ドクン、ドクンと、鼓動が苦しいほどに波打つ。

    いつしか雨音は遠のいていた。

    100 = 3 :

    すばら


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