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元スレ教師「今日からこの学校に赴任しました。趣味は妄想です」
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第一話「妄想教師」
<喫茶店>
女マスター「明日からだっけ? 学校」
教師「ああ」
女マスター「──にしても、アンタみたいな妄想バカを雇うなんて」
女マスター「変わった学校よね~」
女マスター「私立の高校って聞いたけど、どんな面接だったの?」
教師「ああ、たしか……」
<喫茶店>
女マスター「明日からだっけ? 学校」
教師「ああ」
女マスター「──にしても、アンタみたいな妄想バカを雇うなんて」
女マスター「変わった学校よね~」
女マスター「私立の高校って聞いたけど、どんな面接だったの?」
教師「ああ、たしか……」
~ 回想 ~
校長「履歴書の趣味・特技の欄には、と……えぇと、“妄想”かね?」
教師「はい」
校長「素晴らしい! 採用だ!」
教頭「え!?」
校長「教職への風当たりが強くなっている昨今」
校長「君のような変人がいれば、万一不祥事が起きても矛先は君に向くからな!」
教頭「こ、校長! 本音が出まくってますよ!」
校長「え、あ! 君のような常識にとらわれない人間が、我が校には必要なのだ!」
教頭「もう遅いっての」ボソッ
教師「どうも」
~ 現代 ~
教師「──って感じだったかな」
女マスター「校長もアンタなみに妄想に生きてそうな感じね……」
校長「履歴書の趣味・特技の欄には、と……えぇと、“妄想”かね?」
教師「はい」
校長「素晴らしい! 採用だ!」
教頭「え!?」
校長「教職への風当たりが強くなっている昨今」
校長「君のような変人がいれば、万一不祥事が起きても矛先は君に向くからな!」
教頭「こ、校長! 本音が出まくってますよ!」
校長「え、あ! 君のような常識にとらわれない人間が、我が校には必要なのだ!」
教頭「もう遅いっての」ボソッ
教師「どうも」
~ 現代 ~
教師「──って感じだったかな」
女マスター「校長もアンタなみに妄想に生きてそうな感じね……」
翌日──
<学校>
ワイワイ…… ガヤガヤ……
体育教師『では続いて、新任の先生から挨拶を行う』
体育教師『どうぞ』
教師『はい』
教師『えぇ~と……』
教師『今日からこの学校に赴任しました。趣味は妄想です』
ザワッ……!?
教師『あ、あと、担当教科は国語です』
教師『よろしくお願いします』
ガヤガヤ…… ドヨドヨ……
「今なんつった!?」 「妄想っていったよな?」 「冗談だろ?」
「フツー担当教科を先にいうだろ」 「キモ~イ」 「変なのが来たな」
<学校>
ワイワイ…… ガヤガヤ……
体育教師『では続いて、新任の先生から挨拶を行う』
体育教師『どうぞ』
教師『はい』
教師『えぇ~と……』
教師『今日からこの学校に赴任しました。趣味は妄想です』
ザワッ……!?
教師『あ、あと、担当教科は国語です』
教師『よろしくお願いします』
ガヤガヤ…… ドヨドヨ……
「今なんつった!?」 「妄想っていったよな?」 「冗談だろ?」
「フツー担当教科を先にいうだろ」 「キモ~イ」 「変なのが来たな」
すると──
生徒会長「あの、よろしいですか!」ザッ
教師『はい?』
生徒会長「全校生徒を代表する、生徒会長として質問させていただきます!」
オオ~…… ザワザワ……
教師『どうぞ』
生徒会長「先生のいう妄想というのは、どういうものなんですか?」
教師『どうといわれても……オールジャンルかな。なんでもアリだね』
生徒会長「つまり……いかがわしい内容の妄想をする時もあると?」
教師『もちろん』
ザワッ……
生徒会長「ふむ……私はあなたの先生としての適性について、疑問──」
教師『というか、君はしないの?』
生徒会長「え!?」
生徒会長「あの、よろしいですか!」ザッ
教師『はい?』
生徒会長「全校生徒を代表する、生徒会長として質問させていただきます!」
オオ~…… ザワザワ……
教師『どうぞ』
生徒会長「先生のいう妄想というのは、どういうものなんですか?」
教師『どうといわれても……オールジャンルかな。なんでもアリだね』
生徒会長「つまり……いかがわしい内容の妄想をする時もあると?」
教師『もちろん』
ザワッ……
生徒会長「ふむ……私はあなたの先生としての適性について、疑問──」
教師『というか、君はしないの?』
生徒会長「え!?」
生徒会長「す、するわけないでしょう! バカバカしい!」
教師『へぇ、マジメだな。さすが生徒会長!』
クスクス…… ハハハ……
「絶対ウソだよ」 「茶化されてやがる」 「ムッツリだってあのタイプは」
生徒会長「ぐ……っ!」
生徒会長(変人教師を生徒代表として糾弾し、株を上げるはずが……!)
教師『?』
生徒会長「オ、オールジャンルということは」
生徒会長「この学校での出来事も妄想したということですよね?」
教師『もちろん』
生徒会長「具体的にどのような?」
教師『全部話すと長くなるから、妄想が今どの程度進んでるかって話でいいかな?』
生徒会長「かまいません」
生徒会長(どうせ女生徒でハーレム、とかとんでもない妄想してるんだろ……)
生徒会長(そしたらビシッとボクが追及してやる!)
教師『へぇ、マジメだな。さすが生徒会長!』
クスクス…… ハハハ……
「絶対ウソだよ」 「茶化されてやがる」 「ムッツリだってあのタイプは」
生徒会長「ぐ……っ!」
生徒会長(変人教師を生徒代表として糾弾し、株を上げるはずが……!)
教師『?』
生徒会長「オ、オールジャンルということは」
生徒会長「この学校での出来事も妄想したということですよね?」
教師『もちろん』
生徒会長「具体的にどのような?」
教師『全部話すと長くなるから、妄想が今どの程度進んでるかって話でいいかな?』
生徒会長「かまいません」
生徒会長(どうせ女生徒でハーレム、とかとんでもない妄想してるんだろ……)
生徒会長(そしたらビシッとボクが追及してやる!)
教師『今はちょうど、年金でどうやって暮らしていくか、というところだ』
生徒会長「え?」
教師『退職金は出たものの、長い老後を暮らしていくには心許ないしな』
生徒会長「ちょ、ちょ、ちょっと」
生徒会長「学校での妄想はどうしたんですか?」
教師『とっくに終わって、今は退職後の妄想に移行し始めてる』
生徒会長「なっ……!」
生徒会長(なんなんだ、この人は……)
教師『今後の妄想としては、ゲートボール世界大会編、生き抜け老人ホーム編』
教師『なくした入れ歯を探せ編、生きたまま火葬されちゃう編、などを予定してる』
教師『とはいえ予定だからな。妄想の展開次第でいくらでも変更──』
生徒会長「え?」
教師『退職金は出たものの、長い老後を暮らしていくには心許ないしな』
生徒会長「ちょ、ちょ、ちょっと」
生徒会長「学校での妄想はどうしたんですか?」
教師『とっくに終わって、今は退職後の妄想に移行し始めてる』
生徒会長「なっ……!」
生徒会長(なんなんだ、この人は……)
教師『今後の妄想としては、ゲートボール世界大会編、生き抜け老人ホーム編』
教師『なくした入れ歯を探せ編、生きたまま火葬されちゃう編、などを予定してる』
教師『とはいえ予定だからな。妄想の展開次第でいくらでも変更──』
生徒会長「あ、あの……先生」
教師『ん?』
生徒会長「も、もういいです……。ありがとうございました……」
教師『そっか』
こうして全校集会は終わった。
この時、全校生徒及び教員がこの新任教師に抱いた感想は──
「よく分からないけど只者ではない」であった。
第一話 おわり
教師『ん?』
生徒会長「も、もういいです……。ありがとうございました……」
教師『そっか』
こうして全校集会は終わった。
この時、全校生徒及び教員がこの新任教師に抱いた感想は──
「よく分からないけど只者ではない」であった。
第一話 おわり
第二話「妄想族VS暴走族」
<学校>
生徒A「どうよ? あの妄想教師」
生徒B「ああ、もう授業受けたけど、案外フツーだった」
生徒A「へぇ~」
生徒B「だけど、たまに妄想モードに入って授業脱線するけどな」
生徒B「まあ、面白い先生ではあるな」
生徒A「なにしろ、全校集会であの目立ちたがり会長を黙らせたからな……」
生徒A「俺は明日の四限、アイツの授業だから楽しみだよ」
不良「オイ」
生徒A「うわっ!?」ビクッ
不良「お前……あの妄想野郎に、明日の放課後、屋上来いっていっとけ」
生徒A「う、うん分かった……」
<学校>
生徒A「どうよ? あの妄想教師」
生徒B「ああ、もう授業受けたけど、案外フツーだった」
生徒A「へぇ~」
生徒B「だけど、たまに妄想モードに入って授業脱線するけどな」
生徒B「まあ、面白い先生ではあるな」
生徒A「なにしろ、全校集会であの目立ちたがり会長を黙らせたからな……」
生徒A「俺は明日の四限、アイツの授業だから楽しみだよ」
不良「オイ」
生徒A「うわっ!?」ビクッ
不良「お前……あの妄想野郎に、明日の放課後、屋上来いっていっとけ」
生徒A「う、うん分かった……」
翌日 放課後──
<屋上>
十数名の生徒と不良が、屋上に待機していた。
ザワザワ……
教師「屋上ってここでいいのかな?」ザッ
不良「待ってたぜ、先生」
教師「おお、君か。俺に用があるってのは」
不良「俺はよ、てめえみたいなふざけた奴が一番ムカつくんだ」
不良「今ここで、俺に土下座するか、勝負するか選びな」
ザワザワ……
生徒A「なるほど、大勢の前でおかしな新入り教師を屈服させようってことか……」
生徒B「しかも、不良ってクチだけじゃないんだろ?」
生徒A「ああ、喧嘩は強いし、ウワサじゃ暴走族にも出入りしてるらしい……」
生徒A「しかも親が学校にかなり寄付金入れてて、めったなことじゃ停学にもならない」
生徒B「こりゃあ、さすがに妄想でどうにかなる相手じゃないな……」
<屋上>
十数名の生徒と不良が、屋上に待機していた。
ザワザワ……
教師「屋上ってここでいいのかな?」ザッ
不良「待ってたぜ、先生」
教師「おお、君か。俺に用があるってのは」
不良「俺はよ、てめえみたいなふざけた奴が一番ムカつくんだ」
不良「今ここで、俺に土下座するか、勝負するか選びな」
ザワザワ……
生徒A「なるほど、大勢の前でおかしな新入り教師を屈服させようってことか……」
生徒B「しかも、不良ってクチだけじゃないんだろ?」
生徒A「ああ、喧嘩は強いし、ウワサじゃ暴走族にも出入りしてるらしい……」
生徒A「しかも親が学校にかなり寄付金入れてて、めったなことじゃ停学にもならない」
生徒B「こりゃあ、さすがに妄想でどうにかなる相手じゃないな……」
教師「分かった、勝負しよう」
不良「!?」
不良「んだとォ……!」
教師「俺は日頃からよく、こういうシチュエーションを妄想してたからな」
教師「かかってこい!」
不良(チッ、大人しく土下座してりゃあいいものを……)
不良「俺はもちろん、てめえに殴られたってチクりはしねえが──」
不良「てめえが俺にやられて校長とかに泣きついたって無駄なことだぜ」
教師「当たり前だ」
不良(な、なんだ……!? コイツ、腕っぷしに自信があるのか……!?)
不良「俺はボクシングと空手をやっててな」
不良「ここらの暴走族の助っ人にもなったりもしてやってるんだ」
教師「ふん、そんなもんか」
不良「な、なんだとぉ……!?」
不良「!?」
不良「んだとォ……!」
教師「俺は日頃からよく、こういうシチュエーションを妄想してたからな」
教師「かかってこい!」
不良(チッ、大人しく土下座してりゃあいいものを……)
不良「俺はもちろん、てめえに殴られたってチクりはしねえが──」
不良「てめえが俺にやられて校長とかに泣きついたって無駄なことだぜ」
教師「当たり前だ」
不良(な、なんだ……!? コイツ、腕っぷしに自信があるのか……!?)
不良「俺はボクシングと空手をやっててな」
不良「ここらの暴走族の助っ人にもなったりもしてやってるんだ」
教師「ふん、そんなもんか」
不良「な、なんだとぉ……!?」
教師「俺は──」
教師「腕立て伏せ、腹筋、スクワット、懸垂を毎日一万回ずつ必ずこなしている」
不良「え!?」
教師「空手は五段、ボクシングも世界王者になってる」
不良「え、え……!?」
教師「さらにボクシングと空手だけでなく、柔道、柔術、剣道、書道、合気道」
教師「ムエタイ、テコンドー、サンボ、ジークンドー、カポエイラ、少林寺拳法」
教師「──などをマスターしている」
不良「ハ、ハッタリこいてんじゃねえぇっ!」
生徒A(あ~あ、不良も頭悪いから途中まで騙されかけてたのに……)
生徒A(ハッタリもほどほどにしておかないと……もったいない)
教師「ハッタリなんかじゃないッ!!!」
不良「!?」ビクッ
教師「妄想ではあるがな……」
教師「腕立て伏せ、腹筋、スクワット、懸垂を毎日一万回ずつ必ずこなしている」
不良「え!?」
教師「空手は五段、ボクシングも世界王者になってる」
不良「え、え……!?」
教師「さらにボクシングと空手だけでなく、柔道、柔術、剣道、書道、合気道」
教師「ムエタイ、テコンドー、サンボ、ジークンドー、カポエイラ、少林寺拳法」
教師「──などをマスターしている」
不良「ハ、ハッタリこいてんじゃねえぇっ!」
生徒A(あ~あ、不良も頭悪いから途中まで騙されかけてたのに……)
生徒A(ハッタリもほどほどにしておかないと……もったいない)
教師「ハッタリなんかじゃないッ!!!」
不良「!?」ビクッ
教師「妄想ではあるがな……」
不良(ふ、ふざけんな……! 結局ハッタリってことじゃねえか!)
不良(頭でなに妄想してようが、しょせんケンカってのは腕力と技の勝負……)
不良(まともにやれば、俺が負けるわけねえっ!)グッ…
教師「お、やる気になったみたいだな」
教師「来いっ!」ザッ
不良(うぐっ……なんて目つきしてやがる……!)
不良(この妄想野郎、まったく自分を疑っていない!)
不良(コイツ……ハッタリじゃねえっ!)
不良(頭でなに妄想してようが、しょせんケンカってのは腕力と技の勝負……)
不良(まともにやれば、俺が負けるわけねえっ!)グッ…
教師「お、やる気になったみたいだな」
教師「来いっ!」ザッ
不良(うぐっ……なんて目つきしてやがる……!)
不良(この妄想野郎、まったく自分を疑っていない!)
不良(コイツ……ハッタリじゃねえっ!)
不良(コイツは本当に毎日トレーニングする妄想をしたり)
不良(自分が強くなってる妄想をしてるんだ……混じり気なしの本気で!)
不良(なんで!? なんでこんなことができるんだ!? なんの得もないのに!?)
不良(俺でさえ悪さをすると達成感と同時に“なんでこんなことしてるんだろ”って)
不良(空しさが生じる……ま、その空しさもまた不良の醍醐味でもあるわけなんだが)
不良(なのに──)
不良(コイツにはその“なんでこんなことしてるんだろ”ってのがまるでない!)
不良(なんなんだ!? なんなのコイツ!?)
教師「……どうした?」
不良「い、いや……」
不良「俺の負けだ、先生……。呼び出したりして、悪かったな……」
ザワザワ…… ドヨドヨ……
不良は屋上から出て行った。
不良(自分が強くなってる妄想をしてるんだ……混じり気なしの本気で!)
不良(なんで!? なんでこんなことができるんだ!? なんの得もないのに!?)
不良(俺でさえ悪さをすると達成感と同時に“なんでこんなことしてるんだろ”って)
不良(空しさが生じる……ま、その空しさもまた不良の醍醐味でもあるわけなんだが)
不良(なのに──)
不良(コイツにはその“なんでこんなことしてるんだろ”ってのがまるでない!)
不良(なんなんだ!? なんなのコイツ!?)
教師「……どうした?」
不良「い、いや……」
不良「俺の負けだ、先生……。呼び出したりして、悪かったな……」
ザワザワ…… ドヨドヨ……
不良は屋上から出て行った。
ワアァァァァァ……!
生徒A「すっげぇ、勝っちゃったよ!」
生徒B「ああ、よく分からないけど勝っちゃったな!」
「何が起きたんだよ、いったい」 「すごいや!」 「不良のあんな顔初めて見たよ」
教師「…………」
教師(妄想してきた俺の技の数々を、試したかったのに……)
教師(まあ仕方ない、か)
生徒A「すっげぇ、勝っちゃったよ!」
生徒B「ああ、よく分からないけど勝っちゃったな!」
「何が起きたんだよ、いったい」 「すごいや!」 「不良のあんな顔初めて見たよ」
教師「…………」
教師(妄想してきた俺の技の数々を、試したかったのに……)
教師(まあ仕方ない、か)
<喫茶店>
教師「──ってことが、今日あった」
女マスター「ふ~ん」
女マスター「よかったわね~、相手が降参してくれて」
女マスター「でなきゃ、今頃病院にコーヒー持ってくとこだったわ」
女マスター「ま、なにもケンカは腕力や技だけで決まるもんじゃないものね」
女マスター「時には、ハッタリが勝敗を分けることもあるってことか」
教師「ハッタリじゃなく、妄想だっての」
女マスター「はいはい」
第二話 おわり
教師「──ってことが、今日あった」
女マスター「ふ~ん」
女マスター「よかったわね~、相手が降参してくれて」
女マスター「でなきゃ、今頃病院にコーヒー持ってくとこだったわ」
女マスター「ま、なにもケンカは腕力や技だけで決まるもんじゃないものね」
女マスター「時には、ハッタリが勝敗を分けることもあるってことか」
教師「ハッタリじゃなく、妄想だっての」
女マスター「はいはい」
第二話 おわり
第三話「三角関係」
<職員室>
ザワザワ……
教師「ん? なんだか、校庭が騒がしいですね」
先輩教師「また野球部とサッカー部がグラウンドの取り合いしてるんだよ」
教師「また?」
先輩教師「ああ、アイツらしょっちゅうやってるのさ」
先輩教師「エスカレートして、殴り合い寸前になったこともあるくらいだ」
教師「へぇ……」
<職員室>
ザワザワ……
教師「ん? なんだか、校庭が騒がしいですね」
先輩教師「また野球部とサッカー部がグラウンドの取り合いしてるんだよ」
教師「また?」
先輩教師「ああ、アイツらしょっちゅうやってるのさ」
先輩教師「エスカレートして、殴り合い寸前になったこともあるくらいだ」
教師「へぇ……」
教師「曜日によってどっちが使うか決めるとか、しないんですか?」
先輩教師「もちろん昔、そういう案も出たらしいんだが」
先輩教師「両部の対立が根深すぎて、うまくいかなかったらしい」
教師「そりゃ大変ですねぇ」
先輩教師「ああ、両部の顧問が仲裁が大変だって、いつもボヤいてるよ」
教師「いや、グラウンドが」
先輩教師「へ?」
先輩教師「もちろん昔、そういう案も出たらしいんだが」
先輩教師「両部の対立が根深すぎて、うまくいかなかったらしい」
教師「そりゃ大変ですねぇ」
先輩教師「ああ、両部の顧問が仲裁が大変だって、いつもボヤいてるよ」
教師「いや、グラウンドが」
先輩教師「へ?」
数日後──
<校庭>
ザワザワ…… ガヤガヤ……
殺気立つ、野球部とサッカー部。
野球部主将「今日は俺たちがここまで使わせてもらう!」
サッカー部主将「ふざけんな、昨日は俺たちが譲っただろうが!」
野球部主将「譲っただと!? しょっちゅうこっちにボール飛ばしてきやがって!」
野球部主将「あんなんじゃ、練習にならねえよ!」
サッカー部主将「それはこっちのセリフだ!」
サッカー部主将「お前らの打ち上げたボールが、部員に当たりそうになったんだぞ!」
サッカー部主将「このヘタクソどもが!」
野球部主将「なんだと!?」
ザワザワ…… ガヤガヤ……
<校庭>
ザワザワ…… ガヤガヤ……
殺気立つ、野球部とサッカー部。
野球部主将「今日は俺たちがここまで使わせてもらう!」
サッカー部主将「ふざけんな、昨日は俺たちが譲っただろうが!」
野球部主将「譲っただと!? しょっちゅうこっちにボール飛ばしてきやがって!」
野球部主将「あんなんじゃ、練習にならねえよ!」
サッカー部主将「それはこっちのセリフだ!」
サッカー部主将「お前らの打ち上げたボールが、部員に当たりそうになったんだぞ!」
サッカー部主将「このヘタクソどもが!」
野球部主将「なんだと!?」
ザワザワ…… ガヤガヤ……
教師「まあ落ちつきなって、二人とも」ザッ
野球部主将「なんですか、先生!?」
サッカー部主将「先生は俺たちと関係ないでしょう!」
教師「たしかに関係ない」
教師「だがこの間、先輩から君たちの話を聞いてから色々妄想してしまってね」
教師「いてもたってもいられなくなっちゃったのさ」
野球部主将「妄想……?」
サッカー部主将「いったい、どんな妄想をしたってんですか?」
教師「ずばり」
教師「君らが今立っているグラウンドを擬人化してみた」
野球部主将「なんですか、先生!?」
サッカー部主将「先生は俺たちと関係ないでしょう!」
教師「たしかに関係ない」
教師「だがこの間、先輩から君たちの話を聞いてから色々妄想してしまってね」
教師「いてもたってもいられなくなっちゃったのさ」
野球部主将「妄想……?」
サッカー部主将「いったい、どんな妄想をしたってんですか?」
教師「ずばり」
教師「君らが今立っているグラウンドを擬人化してみた」
野球部主将「グラウンドを、擬人化……?」
サッカー部主将「面白い、やってみて下さいよ」
教師「分かった」
教師「…………」
教師「あらやだ、野球部とサッカー部の子たちってば」クネッ
教師「また私をめぐって争うつもりなのね! 私ってなんて罪な女なのかしら!」クネクネッ
両部主将(お、女なのかよ……!)
ドヨドヨ……
教師「悲しいわ……」
教師「私はみんなに楽しくスポーツしてもらいたいのに……」グスン
野球部主将(なるほど、グラウンドが悲しんでいるから争いをやめろってことか)
サッカー部主将(新任教師らしい、ベタな考えだ……こんな茶番で収まるかよ)
サッカー部主将「面白い、やってみて下さいよ」
教師「分かった」
教師「…………」
教師「あらやだ、野球部とサッカー部の子たちってば」クネッ
教師「また私をめぐって争うつもりなのね! 私ってなんて罪な女なのかしら!」クネクネッ
両部主将(お、女なのかよ……!)
ドヨドヨ……
教師「悲しいわ……」
教師「私はみんなに楽しくスポーツしてもらいたいのに……」グスン
野球部主将(なるほど、グラウンドが悲しんでいるから争いをやめろってことか)
サッカー部主将(新任教師らしい、ベタな考えだ……こんな茶番で収まるかよ)
教師「あら、野球部のみんなが私の右腕を持って……」
教師「サッカー部のみんなは私の左腕を持ったわ」
両部主将「?」
教師「あなたたち、なにをするつもり──いだだだだぁっ!」
野球部主将「え!?」
サッカー部主将「なんだ!?」
教師「いででででぇぇぇぇぇっ!」
教師「引っぱるんじゃねぇぇぇぇぇっ!」
教師「あがぁぁぁぁぁっ! やめろぉぉぉぉぉっ! ちぎれるぅぅぅぅぅっ!」
教師「うぎゃああああああああああっ!!!」ゴロゴロ
のたうち回る教師を前に、混乱する部員たち。
「えっ、なんだこれ!?」 「泣いてるよ!」 「演技なのか!?」
「死んじまうぞ!」 「大丈夫っすか!?」 「ヤバイって!」
野球部主将「せ、先生! いやグラウンドさん、やめてっ! 俺まで痛くなってきた!」
サッカー部主将「分かりましたから、分かりましたからっ!」
教師「サッカー部のみんなは私の左腕を持ったわ」
両部主将「?」
教師「あなたたち、なにをするつもり──いだだだだぁっ!」
野球部主将「え!?」
サッカー部主将「なんだ!?」
教師「いででででぇぇぇぇぇっ!」
教師「引っぱるんじゃねぇぇぇぇぇっ!」
教師「あがぁぁぁぁぁっ! やめろぉぉぉぉぉっ! ちぎれるぅぅぅぅぅっ!」
教師「うぎゃああああああああああっ!!!」ゴロゴロ
のたうち回る教師を前に、混乱する部員たち。
「えっ、なんだこれ!?」 「泣いてるよ!」 「演技なのか!?」
「死んじまうぞ!」 「大丈夫っすか!?」 「ヤバイって!」
野球部主将「せ、先生! いやグラウンドさん、やめてっ! 俺まで痛くなってきた!」
サッカー部主将「分かりましたから、分かりましたからっ!」
>>7
「とき」と「こと」を使い分けれない生徒会長ww
「とき」と「こと」を使い分けれない生徒会長ww
しばらくして──
<職員室>
先輩教師「最近、野球部とサッカー部が争わなくなったんだ」
先輩教師「ちゃんと曜日ごとに、どっちが使うか決めたらしい」
先輩教師「心なしか、グラウンドの整備も丁寧になってるしな」
先輩教師「そういえばこの間、君がアイツらの仲裁に入ったって聞いたけど」
先輩教師「君はなにか知ってるか?」
教師「多分……彼らも女の涙には弱かったってことじゃないでしょうか」
第三話 おわり
<職員室>
先輩教師「最近、野球部とサッカー部が争わなくなったんだ」
先輩教師「ちゃんと曜日ごとに、どっちが使うか決めたらしい」
先輩教師「心なしか、グラウンドの整備も丁寧になってるしな」
先輩教師「そういえばこの間、君がアイツらの仲裁に入ったって聞いたけど」
先輩教師「君はなにか知ってるか?」
教師「多分……彼らも女の涙には弱かったってことじゃないでしょうか」
第三話 おわり
第四話「進路相談」
<職員室>
三学年教師「ふぅ……」
教師「どうしました?」
三学年教師「いやね、ウチのクラスにまったく進路を決めてないのがいてね」
教師「不真面目なんですか?」
三学年教師「いや……なんというか……妙に悟ったことをいう子でね」
三学年教師「ほとほと困り果てているんだ」
教師「なるほど」
三学年教師「そういえば君、野球部とサッカー部の争いを収めたって聞いたけど」
三学年教師「よければ、彼と話をしてみてくれないか?」
教師「分かりました」
<職員室>
三学年教師「ふぅ……」
教師「どうしました?」
三学年教師「いやね、ウチのクラスにまったく進路を決めてないのがいてね」
教師「不真面目なんですか?」
三学年教師「いや……なんというか……妙に悟ったことをいう子でね」
三学年教師「ほとほと困り果てているんだ」
教師「なるほど」
三学年教師「そういえば君、野球部とサッカー部の争いを収めたって聞いたけど」
三学年教師「よければ、彼と話をしてみてくれないか?」
教師「分かりました」
<教室>
ガララッ……
平凡「失礼します」
教師「やぁ」
平凡(たしかこの人、趣味が妄想とかいってた先生だよな……)
平凡「俺になんの用ですか?」
教師「担任の先生に聞いたけど、まだ進路を決めてないんだって?」
平凡「えぇ、まぁ……」
平凡「決めてないってより、どうでもいいって感じですかね」
平凡「俺って、成績も並、スポーツも並で、なんの取り柄もないし」
平凡「就職しようが、進学しようが、大したものにならないに決まってますし」
平凡「だから、卒業したらこうしようって気に全然ならないんですよ」
ガララッ……
平凡「失礼します」
教師「やぁ」
平凡(たしかこの人、趣味が妄想とかいってた先生だよな……)
平凡「俺になんの用ですか?」
教師「担任の先生に聞いたけど、まだ進路を決めてないんだって?」
平凡「えぇ、まぁ……」
平凡「決めてないってより、どうでもいいって感じですかね」
平凡「俺って、成績も並、スポーツも並で、なんの取り柄もないし」
平凡「就職しようが、進学しようが、大したものにならないに決まってますし」
平凡「だから、卒業したらこうしようって気に全然ならないんですよ」
教師「取り柄かぁ~」
教師「俺にも取り柄といえるものはさほどないけど」
教師「俺みたいな人間にも、妄想って取り柄がある」
平凡(取り柄なのか、それ?)
教師「なんでもいい。なんかないのか?」
平凡「はぁ……」
平凡(めんどくせーな、もう)
平凡「一応……悪いことはしたことないですね。万引きとかそういうの」
平凡「マジでそれぐらいですよ、俺の取り柄なんて」
教師「俺にも取り柄といえるものはさほどないけど」
教師「俺みたいな人間にも、妄想って取り柄がある」
平凡(取り柄なのか、それ?)
教師「なんでもいい。なんかないのか?」
平凡「はぁ……」
平凡(めんどくせーな、もう)
平凡「一応……悪いことはしたことないですね。万引きとかそういうの」
平凡「マジでそれぐらいですよ、俺の取り柄なんて」
教師「あるじゃないか!」
平凡「!」ビクッ
教師「よかった……本当によかった……!」
平凡「な、なにがです!?」
教師「だって、もし君が悪事に手を染めてたら──」
教師「少なくとも10億人が死んでいた」
平凡「はぁ!?」
平凡「!」ビクッ
教師「よかった……本当によかった……!」
平凡「な、なにがです!?」
教師「だって、もし君が悪事に手を染めてたら──」
教師「少なくとも10億人が死んでいた」
平凡「はぁ!?」
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