元スレP「もうすぐ、クリスマスがやってくる」
SS覧 / PC版 /みんなの評価 : ☆
52 = 1 :
律子「そのアイドルを悲しませるのは、プロデューサーとして本末転倒じゃないですか?」
その律子の言葉に、俺は非常に腹立たしい気持ちになった。
そんなこと、俺だって分かっている。
だけど、だけど……
P「雪歩を面と向かって愛してしまうと、今まで雪歩と築き上げてきたものが、全部崩れてしまう」
アイドルとプロデューサーの熱愛なんて、雪歩の身を滅ぼす行為だ。
仮に大きな騒ぎにならなくても、それが尾を引いて、もう決してトップアイドルになることはできないだろう。
小鳥さん「そんなものが、どうしたというのですか?」
P「そ、そんなもの!?」
小鳥さん「あなたが言った一言で『一人の女の子としての』雪歩ちゃんは、崩れたんですよ?」
P「そんな、まさか……」
53 = 1 :
小鳥さん「まさかもなにも、現に雪歩ちゃん、体調不良で休んでるじゃないですか」
P「でも、俺は、あいつの幸せを思って……」
小鳥さん「嘘ですね」
P「嘘なわけがないでしょう!」
小鳥さん「お姉さんだから分かります。あなたは雪歩ちゃんを理由にして逃げてるだけです」
P「何から逃げてるっていうんですか!」
俺は思わず、椅子から立ち上がった。
それでも小鳥さんは、俺から目を逸らさない。
54 = 1 :
律子「プロデューサー!」
律子の声に、俺はハッと我に返った。
P「すまん。つい……」
あの雪歩の時といい、俺はいったい、どうしたのだろう。
律子「これ」
律子は財布から千円札を取り出し、俺にずいと押しつけてきた。
よく見ると、メモも一緒だ。
律子「おつかいにでも行って、頭冷やしてきてください」
55 :
しえん がんばってつかあさい
56 = 1 :
俺は、公園のベンチに座り、ぼーっと呆けていた。
傍らには、頼まれたものが入った袋がある。カサカサと微かな風に揺れている。
小鳥さんが俺に言ったことが、まだ頭の中を回っている。
だけど、俺にはまだ分からない。なぜ、なにから、逃げているのか分からない。
P「ああ、どうしたら……!」
ベンチにだらしなく預けた体を、ぶん、と反動で起こす。
そして、そのまま頭を抱え、うずくまる。
??「プロデューサー……?」
聞き覚えのある声に、ゆっくりと顔を上げる。
目の前に、見覚えのある姿が、あった。
57 = 1 :
貴音「どうしたのですか? なにやら深刻そうですが……?」
今の自分の悩みを、普通なら、アイドルに話したりはしない。
自分の弱いところを見られただけで恥ずかしいのだ。
しかし、
P「……聞いて、くれるか……?」
そのときの俺は、到底普通じゃなかった。
普通なら、泣き顔なんて見せない。
俺はそれから、貴音に悩んでいる理由(わけ)を話した。
ひどく、支離滅裂だったかもしれない。聞き苦しい愚痴だっただろう。
その間、貴音は俺の隣で、ただずっと座って聞いていた
ただ無表情で、一度も俺のほうを見ることなく、遠くを見ていた。
俺は一通り、今までの顛末を話し終わった。
貴音がスッと、俺の方を向いてきた。相変わらず、微笑みもしない。
59 = 1 :
貴音「プロデューサー……あなたは、真に身勝手ですね」
俺は、激しく動揺した。
つまりそれは、まったく情けないことだが、貴音は俺に同情してくれると思っていたのだ。
P「俺の、俺のどこが身勝手だというんだ!?」
貴音の目が、一層鋭いものになる。
貴音「さっきから聞いていれば、雪歩殿がトップアイドルになれない等、どうのこうのと雪歩殿のことばかり……自分はどうなるか、考えたことはないのですか?」
P「俺はどうなってもいい。俺よりも、雪歩だ」
貴音「本当に、自分はどうなってもいいのですか?」
P「……そりゃ、雪歩のファンには恨まれるかもしれないが」
貴音「かも、ではありません。十中八九、恨まれます。運が良くても、ファンに襲われるでしょう」
凄みのある貴音の声に、俺は体が底冷えした。
貴音から初めて感じる、恐怖。
60 = 55 :
どうでもいいけどお姫ちんはカタカナ→ひらがな表記が基本だった希ガス
61 = 1 :
P「お、おい。それは考えすぎじゃないか」
貴音「プロデューサー!」
情けない。ただただ情けない。
俺は貴音の怒鳴り声に、怯えてしまった。
貴音「あなたは、甘いです。まるで自分には火の粉がかからぬような言い草」
貴音「私には、あなたが卑怯者にしか見えません」
P「貴音……」
貴音「それでは、失礼いたします」
貴音はベンチから立ち上がり、去ってしまった、一度も俺の方を向くことなく。
俺は貴音の姿が見えなくなるまで、その後ろ姿をただ眺めるしかできなかった。
62 = 1 :
>>60
oh,ご指摘ありがとうございます
63 :
俺は激しく勃起したに見えた
64 = 1 :
P「卑怯者か……」
P「俺は、ただ雪歩の幸せを考えて……」
その時、静かな公園に不釣り合いなほど軽快なメロディが流れた。
慌てて、俺は携帯電話を取り出す。律子からだ。
P「――もしもし?」
律子「プ、プロデューサー、大変です!!」
思わず、しかめ面で電話から顔を離す。
俺はその顔のまま、電話に戻る。
律子「た、大変なんです! どうしましょう!?」
大変な動揺は伝わってきたが、それしか分からない。
律子をなだめて、落ち着いて聞く、何があったのかと。
P「雪歩が、アイドルを辞める……?」
俺が、崩れた。
65 = 1 :
俺は急いで、雪歩の家へと向かった。
心臓の動悸は、きっと走ったせいではない。
雪歩の家の、大きな門の前まできた。
俺は、息を整えながら、インターホンを押した。
しばらくして、渋い男の声がした。
雪歩の、父の声だ。
P「な、765プロのプロデューサーです! あの、雪歩に会わせてください!」
雪歩父「……すまないが、帰ってくれ」
ブツリという音と共に、会話はそれで終わった。
俺はもう一度、インターホンを押した。
66 = 1 :
失礼でも、不作法でも、俺は何度もインターホンを押し続けた。
すると、門がガチャリと、わずかに開いた。
まだ俺と同い年くらいの、黒服に身を包んだ若者が、二人出てきた。
男>1「プロデューサーさん、すみませんが、お引き取り願えませんか」
P「雪歩に、会わせてください!」
男>2「お嬢は、疲れています。お引き取りを」
男達は、両側から俺の腕を掴み、門の前から引き離そうとする。
俺は抵抗した。
P「離してくれ! 雪歩に会うまで、俺は帰らない!」
男>1「……会って、どうするんです?」
P「会って、話を聞くんだ! なぜアイドルを辞めるのか! それを、聞くんだ!」
俺を掴む男達の力が、少し強くなった。
だが、顔は悲しそうに、俺を見ていた。
67 = 1 :
男>2「残念です。プロデューサーさん……」
P「本当に残念に思ってるなら、雪歩をそう思う気持ちがあるなら、離してくれ!」
俺の言葉に、男達の表情が、また一層、暗いものになった。
なぜだ。どうして、そんな顔をする!?
男>1「……高木社長を、呼べ」
男>2「はい……どうしてですか、プロデューサーさん……」
がたいのいい男二人が、涙ぐんでいた。
俺は、わけが分からなかった。
ほどなくして、俺は車で駆け付けた高木社長に胸倉を掴まれ、連行された。
社長まで涙ぐんでいたのを、はっきりと覚えている。
68 = 1 :
自宅謹慎。
社長から俺に下された処分は、無期限の自宅謹慎だった。
俺は自宅で、まるで廃人のような生活を送った。
起きているのか寝ているのか、生きているのか死んでいるのか……分からない。
雪歩の引退は、社長の根回しのおかげか、まだマスコミにはバレていなかった。
しかし、もうあと二週間を切った、クリスマスイヴの番組に出られないとなると、それがバレるのも時間の問題だろう。
P「…………」
虚ろな目で見る部屋の景色は、灰色。
机の上のカッター、床に放り出された長めのタオル……
俺は何も考えずに、いや、考えすぎて疲れた頭で、手を伸ばす。
もう、何もかも…………どうでもいい。
70 = 1 :
春香「プロデューサーさーん!」
P「!」
伸ばした手が、止まる。
玄関から聞こえる。あの声は……・
春香「お願いします! 開けてください! プロデューサーさん!」
チャイムとドアの連打。俺の名前を連呼。
ゆらりと俺は、立ちあがった。
春香「――プロデューサーさん!」
ドアを開けた直後、みぞおち辺りに強い衝撃を感じた。
続いて、強く体を締め付けられる感触。
春香「プロデューサーさん! プロデューサーさん!」
俺の腹に顔をうずめ、泣きじゃくっている。
春香の姿が、そこにあった。
71 = 34 :
Pに対する周囲の要求が厳しすぎる……相手が雪歩だから仕方ないかもしれんが
72 = 1 :
春香「はい、どうぞ。ろくなもの食べてないんでしょう?」
机の上に、湯気の立った料理が置かれていく。
色鮮やかな料理が、4、5品ほど並ぶ。
春香「食べてください、プロデューサーさん」
P「……」
腹が空いていなかったわけではないが、箸を持つ気力さえ無かった。
それを見て春香は、微笑みながら、自分の箸を取った。
春香「はい、アーン」
春香は、優しい目で笑っていた。
俺は、口を開けた。
73 :
口の中に、甘辛い味覚が広がる。
ゆっくり咀嚼する。飲み込む。
春香「はい、アーン」
俺は、再び口を開ける。
まるで、親鳥から餌をもらう、雛。
俺は、泣いた。
遠い昔に枯れ果てたと思っていた涙が、あふれた。
歪む視界の中で、春香はさらに笑顔になったような、そんな気がした。
74 = 1 :
あれから、春香はほぼ毎日、俺の家に来てくれた。
いつのまにか、俺の心の大部分は、春香が占めていた。
春香「はい、プロデューサーさん。今日はオムライスですよ!」
P「ありがとう、春香」
料理以外にも、洗濯、掃除などの家事を、一手に引き受けてくれた。
もう俺は、春香無しでは生きられないのかもしれない。
75 = 73 :
何気なくつけていたテレビから、天気予報士の声が聞こえる。
『今日の天気は、曇り時々、雨か雪でしょう』
雪。
スプーンを持ったまま、俺の手は止まった。
春香「……ねえ、プロデューサーさん」
机の対面に座っていた春香が、近づいてきた。
俺の隣に、近すぎるほどくっついてきた。
春香「……忘れましょうよ」
俺は、ゆっくりと首を回した。春香の顔を、見る。
春香は、静かに笑っていた。
76 :
怖い怖い
77 = 73 :
春香「辛いことをいつまでも引きずるなんて、体によくありません」
とうとう、俺に抱きついてきた。
スプーンが、手から滑り落ちた。
春香「私は、雪歩と違う。何があっても、一生側に居ます」
P「だけど、俺と、春香は、プロデューサーと、アイドル……」
春香「心配しないでください」
上目づかいで、俺を覗きこんでくる春香。
彼女の口の端が、釣り上った。
春香「ばれても、全部私のせいにしちゃえばいいんです……」
78 :
あ、れ?
79 = 73 :
俺は、春香から視線を逸らすことができなかった。
ただ、ただ、固まっていた。
春香「そうすれば、少なくとも非難されるのは私。あなたは傷つかない……」
俺は、傷つかない……
春香「私が、あなたを一生守ってあげます……!」
春香が、俺を守ってくれる……
だんだんと、春香の顔が、近づいてくる。
春香はそっと、目を閉じた。
春香「プロデューサー……好きです」
80 :
この展開は…
83 = 73 :
そのときだった。向かいの窓に、小さな水滴がぶつかった。
それは、ポツポツと何度も窓を打ち付ける。
春香の頬は、薄紅色に染まっている。
窓が、濡れていく。
うっすらと流れるその様子は、まるで涙のようで……
薄紅色の頬。
うっすらと流れる涙。
――『……です……』
――『好きです、プロデューサー』
P「……ち、違う」
春香「え?」
84 :
あざといさすが春香あざとい
85 = 73 :
P「違う!」
俺は、春香を押しのけた。
頭を覆い、かぶりをふる。
P「違う……違う…違う、違う違う違う!!!」
P「そうじゃない!」
初めて、俺は、自分の浅はかさに気がついた。
反吐が、言葉として出る。流れ出る。
P「自分のことしか、考えていなかった……雪歩の幸せを案じるふりをして、自分しか守っていなかった……! 自分の保身しか考えていなかった……」
86 = 73 :
P「何が、今まで積み重ねてきたものだ……! そんなもの、只の俺のわがまま……!」
俺は立ち上がり、唇を噛みしめた。
歯がぎりぎりと、音を出す。
春香「プ、プロデューサーさん!?」
P「雪歩ぉ!」
俺は、車の鍵を掴み、そのまま家を飛び出した。
そして、駐車場に止めてある車に飛び乗る。
パジャマだろうが裸足だろうが、そんなことはお構いなしに、俺は車を走らせた。
雪歩の家は、そこまで遠くない。
87 = 80 :
いよっしゃあああああぁぁぁあ!
88 = 73 :
春香「……」
貴音「これで、良かったのですか……?」
春香「た、貴音さん!? いつのまに玄関に……」
貴音「いくら自分から、悪者役を買って出ると言ったとしても……あまりにも春香が可哀そうです。事務所の皆も、心配しています」
春香「……いいんです。少しの間だけだったけど、私、プロデューサーさんに尽くすことができましたから」
春香「それに、私が好きなプロデューサーは、自宅に引きこもっているんじゃなくて……」
春香「あんな風に、雪歩が好きな、プロデューサーなんですから……!」
貴音「……今ぐらいは、泣いてもいいのですよ?」
春香「…………ひゃい」
貴音「お疲れ様です。春香……」
89 :
みんなキャラおかしくね?
90 :
春香さんは俺が守る
91 = 73 :
ほどなくして、俺は、雪歩の家の近くまできた。
普通に雪歩の家を訪ねても、門前払いされることは容易に想像できた。
ならば、普通に訪ねなければいいこと。
俺は、車のアクセルを目いっぱい踏んだ。
そして、ためらうことなく、門に体当たりをした。
けたたましい音と共に、エアバッグが飛び出し、俺は、激しく体を揺さぶられた。
92 :
犯罪やん
93 :
何処の鉄砲玉だよ
94 :
アイマスでやる必要性が無いな。 二次創作でキャラ崩壊って倹約家のスネ夫かよ
95 = 73 :
車が止まり、車体を打つ雨音が、鮮明に聞こえてきた。
門は、車の後ろで、変な形にひしゃげていた。
男>1「な、なんですかい!?」
男>2「こ、これは……!?」
家屋の方向から、傘もささずに、あの二人の黒服達が走ってきた。
潰れた車と曲がった門を見て、唖然としている。
俺は、驚く黒服二人を尻目に、車から降りた。
幸い、大きな怪我はしていないようだった。
97 :
>>94
言ってること合ってるのに下手な比喩で台無しwwwあれしかももしもしwww
98 = 94 :
>>1は(かっけぇ……)とでも思ってるんだろうな
99 = 73 :
男>1「プ、プロデューサーさん……!」
男>2「あなた、なんてことを!」
P「雪歩に……雪歩に会わせてくれ」
男>1「お嬢を……お嬢を説得しにきたんですか!?」
男>2「そんなことしても、決してお嬢は!」
P「違う!!」
俺は、その場に座り込み、頭を下げた。
額を地面にこすりつけて、土下座をする。
P「俺は、雪歩に謝りに来たんだ!」
二人の男の表情は分からないが、あたふたしている様子は伝わってきた。
車で特攻してきたと思ったら、土下座をしている男に、明らかに面喰らっていた。
100 :
突っ込んだ意味
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