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    元スレP「もうすぐ、クリスマスがやってくる」

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    1 : 以下、名無しにか - 2012/12/22(土) 22:02:47.28 ID:sd+V4Q4m0 (+120,+30,-27)
    勢いで書いた自己満足SSです。

    書きためてあるので、2分間隔くらいで書いていきます。

    よろしければご覧ください。
    3 : 以下、名無しにか - 2012/12/22(土) 22:04:57.35 ID:sd+V4Q4m0 (+90,+30,-68)
    雪歩「――あ」

    P「どうした?」

    雪歩「雪ですよ、プロデューサー」

    雪歩は、まるで水を掬(すく)うように、両手を出した。

    空を見上げると、雪歩の言うとおり、ちらちらと雪が舞い始めている。
    4 : 以下、名無しにか - 2012/12/22(土) 22:06:03.67 ID:EZ8Xt5090 (+12,+22,-2)
    2分間間間隔って無理じゃないの
    5 : 以下、名無しにか - 2012/12/22(土) 22:07:02.76 ID:sd+V4Q4m0 (+95,+30,-87)
    レッスンの帰り、俺と雪歩は事務所までの道を並んで歩いていた。

    雪歩「プロデューサー……」

    雪歩は照れながら、そっと俺に体を寄せてきた。

    P「雪歩、近い」

    雪歩「聞こえません」

    雪歩は意地悪く微笑んでいる。腕まで、絡めてきた。
    6 : 以下、名無しにか - 2012/12/22(土) 22:09:04.64 ID:sd+V4Q4m0 (+95,+30,-114)
    昔とは大違いだ。あの臆病で、常に自信の無かった姿はもうどこにもない。

    男性が苦手なのは相変わらずだが、それでも、相手の目を見て話すまでできるようになった。

    雪歩「プロデューサー……好きです」

    P「……」

    雪歩「えへへ……」

    雪歩の真っ赤になった頬は、白い街に、いっそう深く映えている。

    街の喧騒の間で、しゃりしゃりと雪を踏みしめる音が、俺の耳に切なくついた。
    7 : 以下、名無しにか - 2012/12/22(土) 22:11:04.17 ID:sd+V4Q4m0 (+95,+30,-136)
    ある日、母親から一本の電話が来た。

    P「え、お見合い?」

    お見合いという言葉に、事務所のみんなが一斉に俺を見た。
    慌てて腰をかがめて、ひそひそ声になる。

    P「無理だよ。いくら祝日でも、クリスマスシーズンは忙しいんだ」

    特に、その日は大事な仕事が入っていた。
    一ヶ月後のクリスマスイヴ。ある人気ゴールデン番組で、雪歩が歌うのだ。

    その番組は、アイドルや歌手なら誰もが出演を望む。憧れる。
    トップアイドルになるための、登竜門と言ってもいい。

    何かトラブルが起こった時に、フォローできる人が側にいないといけない。
    8 : 以下、名無しにか - 2012/12/22(土) 22:13:04.44 ID:sd+V4Q4m0 (+95,+30,-158)
    P「母さんだって、俺の仕事は分かってるだろう?」

    母親はまだ何か言っているようだったが、俺は半ば強引に電話を切った。

    雪歩「プロデューサー、お見合い、するんですか……?」

    雪歩が心配そうな顔をして、俺を見上げてくる。
    ほんの一瞬だが、昔の雪歩を見たような気がした。

    P「しないよ。その日は、雪歩にとって大事な日じゃないか」

    雪歩「プロデューサー……!」

    P「雪歩、レッスンは?」

    雪歩「え……あ、ああ!」

    雪歩は時計を見て、びっくりする。
    事務所を出るいつもの時間を、だいぶ過ぎていた。
    9 : 以下、名無しにか - 2012/12/22(土) 22:14:34.10 ID:yM7GUU6C0 (+19,+29,-26)
    さる予防しとけよー
    10 : 以下、名無しにか - 2012/12/22(土) 22:15:06.42 ID:sd+V4Q4m0 (+95,+30,-79)
    P「ほら、まだ走れば間に合うぞ?」

    雪歩「い、行ってきますー!」

    雪歩はジャージが入ったカバンを引ったくり、大慌てで事務所から出て行った。

    P「さて、俺も仕事に……あれ?」

    ふと、ソファーの片隅に、見覚えのある可愛いピンクの水筒を見つけた。
    これは、雪歩のものだ。
    11 : 以下、名無しにか - 2012/12/22(土) 22:17:06.00 ID:sd+V4Q4m0 (+95,+30,-110)
    P「あいつ、忘れていったな」

    後で届けてやろう。
    そう思った俺は、その水筒を手に取った。

    高木社長「おほん。あー…Pくん、ちょっといいかね?」

    P「あ、はい。何でしょう?」

    高木社長「ちょっと、社長室まで来てくれないか」

    分かりました、と返事をして、俺はとりあえず持っていた水筒を自分の鞄に入れた。
    そして、社長に促されるまま、社長室に向かった。
    12 : 以下、名無しにか - 2012/12/22(土) 22:19:26.04 ID:sd+V4Q4m0 (+95,+30,-203)
    P「……何ですって?」

    社長室で俺は、つい聞き返してしまった。

    高木社長「お見合いに、行ってきなさいと言ったのだ」

    高木社長は、いつもの冗談めいた態度ではなかった。
    だからこそ、俺は真面目に、失礼を承知で言い返した。

    P「それは、できません。その日は、大切な収録があるのです」

    高木社長「律子君に代わりを頼む」

    P「しかし! 雪歩は俺がいないと――」

    高木社長「君は!」

    P「うっ」

    今まで聞いたことがない高木社長の声に、俺はひるんでしまった。
    社長は俺に、鋭い目を向けてきた。
    13 : 以下、名無しにか - 2012/12/22(土) 22:21:09.72 ID:sd+V4Q4m0 (+95,+30,-149)
    高木社長「君は、雪歩君のプロデューサーじゃないのか?」

    P「そうです! 俺は、雪歩のプロデューサーです!」

    俺は、力強く言った。言い聞かせた。
    握った拳が、小刻みに震える。

    高木社長「雪歩君は、君をずいぶん信頼しているようだ」

    P「それは、あくまでプロデューサーとして、です」

    高木社長「本当に、君はそう思っているのかね?」

    P「……それは、どういう意味ですか」

    高木社長「そのままの意味だ。君は、プロデューサー失格だ」

    P「!」
    14 : 以下、名無しにか - 2012/12/22(土) 22:23:16.54 ID:sd+V4Q4m0 (+95,+30,-71)
    P「!」

    プロデューサー失格。
    その言葉は、今までのどんな辛い経験よりも、重く俺の心に突き刺さった。


    P「俺と雪歩は何でもありません!! ただのアイドルとプロデューサーです!!!」


    大声で、そう否定する。

    ただでさえ薄い社長室の壁だ。
    律子や小鳥さんは、多分びっくりしているだろう。
    15 : 以下、名無しにか - 2012/12/22(土) 22:25:04.14 ID:sd+V4Q4m0 (+95,+30,-153)
    高木社長「P君、私が言いたいのは」

    P「失礼します!」

    高木社長「待ちたまえ、P君!」

    俺は高木社長の制止も聞かず、社長室を飛び出した。
    自分の鞄を引ったくる。

    勢いよくドアを開け、わき目も振らずに事務所から出て行った。
    水筒を、雪歩に届けに行こう。
    16 : 以下、名無しにか - 2012/12/22(土) 22:27:04.20 ID:sd+V4Q4m0 (+95,+30,-93)
    P「まだ来てない?」

    水筒を届けに来たのだが、レッスンスタジオに雪歩はいなかった。

    「うん。何か忘れ物したって、ここに来る途中で……プロデューサー、事務所で会わなかった?」

    P「いや……」

    「おっかしいなー。本当に会いませんでした?」

    事務所からレッスンスタジオまでの道は、ほぼ決まっている。
    今日に限って、雪歩が違う道を通ることがあるだろうか。

    俺はそんなことを考えながら、とりあえず水筒だけでも置いて帰ろうとした。
    17 : 以下、名無しにか - 2012/12/22(土) 22:29:04.37 ID:sd+V4Q4m0 (+95,+30,-88)
    その時、スタジオのドアが開いた。雪歩だ。

    P「ゆ、雪歩!」

    雪歩「……プ、プロデューサー!」

    雪歩は俺と目が合うと、いつもの笑顔で、俺に走り寄ってきた。

    雪歩「どうしたんですか、こんなところで」

    P「雪歩こそ、どこに行ってたんだ?」

    雪歩「すいません、事務所に忘れ物しちゃって……」

    P「それって、これだろ?」

    俺は、鞄からあの水筒を取り出した。
    18 : 以下、名無しにか - 2012/12/22(土) 22:31:05.39 ID:sd+V4Q4m0 (+95,+30,-138)
    雪歩「そ、それです!」

    雪歩は俺の手から水筒を取ると、嬉しそうに腕に抱えた。

    P「……なあ雪歩、どの道を通ったんだ?」

    雪歩「え? いつもの道ですよ?」

    雪歩は水筒のお茶を一杯、俺に差し出した。

    雪歩「美味しいですよ?」

    普段の俺なら、そのお茶を喜んで受け取るだろう。
    だけど、今はそれよりも聞きたいことが、雪歩にあった。

    P「俺は、一度も雪歩に会わなかった」

    雪歩「……」
    19 : 以下、名無しにか - 2012/12/22(土) 22:33:09.04 ID:sd+V4Q4m0 (+95,+30,-153)
    すると、雪歩の笑みが急に消え、俺から目を逸らした。
    心臓の鼓動が、高鳴った。

    P「どこに、いたんだ……?」

    時間にすると、ほんの数秒だったのかもしれないが、雪歩の言葉を待つ時間は、その何倍にも感じた。

    雪歩「じ、実は……」

    雪歩「実は、犬に追いかけられてしまって、怖くて側のお店に避難したんです」

    雪歩は体を縮ませて、震える声でそう言った。

    P「な、なんだ。そうだったのか」

    俺は肩すかしを喰らって、変な調子の声を出してしまった。
    20 : 以下、名無しにか - 2012/12/22(土) 22:36:09.33 ID:sd+V4Q4m0 (+95,+30,-116)
    雪歩「それじゃあ私、レッスンがあるので……」

    P「あ、ああすまない。邪魔したな」

    これ以上レッスンの時間を割くわけにはいかないので、俺はそそくさとその場を後にする。

    帰りに、雪歩にプレゼントとしてシャベルを買った。
    クリスマスと誕生日を兼ねてだけど。

    店の外に出て、冬の冷たい空気を胸いっぱいに吸う。
    雪歩、喜んでくれるだろうか。








    小鳥さん「え? 雪歩ちゃん、事務所には戻って来てませんよ?」

    P「…………は?」

    思わず、手に持ったシャベルを滑り落とした。
    冷たい事務所の床に、良く響いた。
    21 : 以下、名無しにか - 2012/12/22(土) 22:38:04.73 ID:sd+V4Q4m0 (+95,+30,-181)
    雪歩が忘れ物をしたあの日から、4日経った。

    雪歩「それじゃあプロデューサー、レッスン行ってきます」

    P「気をつけろよ。帰りは迎えに行くから」

    雪歩に、特に変わったことはなかった。
    あれから社長も、何も言わない。
    クリスマスイヴの番組に向けて、レッスンが忙しくなってきたぐらいか。

    あの日だって、一度戻ってきた雪歩に、小鳥さんが気付かなかっただけだろう。
    今はそんなことをかんがえるよりも、仕事や、忙しい雪歩のサポートをするべきなんだ。

    P「さて、仕事だ仕事!」

    腕まくりをして気合を入れたものの、すぐに寒くなってくしゃみをしてしまった。
    22 : 以下、名無しにか - 2012/12/22(土) 22:38:13.10 ID:sbQ+sa2a0 (-27,-15,+0)
    23 : 以下、名無しにか - 2012/12/22(土) 22:40:03.41 ID:sd+V4Q4m0 (+95,+30,-147)
    雪歩「あ、プロデューサー!」

    P「お疲れ、雪歩」

    いつも通り、俺はレッスンスタジオまで雪歩を迎えに行った。
    スタジオから出てきた雪歩の頬は、ほんのりと薄紅色に染まっていた。

    P「レッスンはどうだ。順調か?」

    雪歩「はい、バッチリです」

    雪歩は、にこにこと、控えめにピースまでしてきた。
    それを見て俺はほっと肩をなでおろした。
    これなら、クリスマスイヴの収録も大丈夫だろう。

    俺は、事務所までの帰り道を歩きだした。
    雪歩も、いつも通り、俺の横についてきた。




    いつも通りではなかった。
    しばらく歩いて、俺は違和感を感じた。
    24 : 以下、名無しにか - 2012/12/22(土) 22:42:13.38 ID:sd+V4Q4m0 (+95,+30,-107)
    雪歩「プロデューサー、最近私、少しですけど、犬に触(さわ)れるようになったんですよ!」

    もともと、雪歩は積極的に喋ることはない。
    帰るまでに一言、二言しか言わないこともよくある。

    雪歩「私、プロデューサーのおかげで、昔とは比べ物にならないぐらいましに……」

    雪歩が、あまりにも喋り過ぎていた。
    それに、さっきから前を向いたまま、俺の方を見ようとしない。

    P「……なあ雪歩、何か、あったのか?」

    雪歩「……」

    雪歩の足が、止まった。うつむいて、両手をこまねいている。
    やっぱり、何かあったのか。
    25 : 以下、名無しにか - 2012/12/22(土) 22:43:13.26 ID:28JRqJ6LO (+19,+29,-14)
    違和感は覚えるものである
    26 : 以下、名無しにか - 2012/12/22(土) 22:44:04.94 ID:sd+V4Q4m0 (+95,+30,-80)
    P「何か、不安なことでもあるのか? 遠慮なんてしなくていい。言ってみろ」

    しばらく、雪歩はぎこちなく両手を弄ばせていた。
    この間、俺は昔を思い出していた。

    雪歩と会って初めての頃は、よくこんなことがあった。
    たいていは父親が厳しいだの、自分に自信がないだの、そういった悩み相談だった。
    27 : 以下、名無しにか - 2012/12/22(土) 22:46:20.64 ID:sd+V4Q4m0 (+95,+30,-100)
    今回だって、多分クリスマスイヴの収録が上手くいくかどうか不安なのだろう。
    大丈夫さ。雪歩は、あの頃と比べてずいぶん変わったのだから。
    俺は今まで通り、雪歩をサポートしていくさ。






    雪歩「クリスマスイヴの収録、律子さんにお願いしましたから……」
    28 : 以下、名無しにか - 2012/12/22(土) 22:48:15.72 ID:sd+V4Q4m0 (+95,+30,-120)
    P「……どうしたんだ、雪歩」

    やっと絞り出せたのは、蚊の鳴くようなかすれ声だった。

    雪歩「プロデューサー、最近働き過ぎですよ。休んでください」

    P「何を言ってるんだ。その日は雪歩にとって大事な日じゃないか」

    雪歩「私は、大丈夫です」

    P「何が大丈夫なんだ!」

    人目も気にせず、俺はつい大声で怒鳴ってしまった。
    雪歩がビクッと体を震わせた。

    P「あ……す、すまない」

    雪歩は顔をうつむけたまま、体をぎゅっと抱きしめていた。
    俺は、おそるおそる、雪歩にそっと手を伸ばした。
    29 : 以下、名無しにか - 2012/12/22(土) 22:50:02.31 ID:sd+V4Q4m0 (+95,+30,-89)
    雪歩「……です……」

    P「えっ」

    雪歩「好きです、プロデューサー」

    俺は、伸ばした手を止めてしまった。
    雪歩は黙っている。目に、うっすらと涙を浮かべている。

    P「……」

    雪歩が俺に好意を持っているのは知っていた。
    それが、男と女のそれということも。
    だけど、それは許されない。
    なぜなら、俺は、俺は……


    P「俺は、雪歩のプロデューサーなんだ」
    30 : 以下、名無しにか - 2012/12/22(土) 22:52:09.38 ID:sd+V4Q4m0 (+95,+30,-54)
    雪歩「!」

    俺は、プロデューサー。
    ましてや、アイドルのプロデューサーだ。

    やっと、ここまできたんだ。
    今までの雪歩との努力を、無駄にしたくはない。しては、いけない。

    雪歩「そう、ですか……」

    雪歩はそれだけ言うと、再び歩きだした。
    俺も、後ろからついていく。

    事務所に帰るまで、それっきり会話はなかった。
    31 : 以下、名無しにか - 2012/12/22(土) 22:54:10.70 ID:sd+V4Q4m0 (+95,+30,-206)
    小鳥さん「雪歩ちゃん、しばらく休むそうです……」

    P「そう、ですか……」

    小鳥さん「クリスマスイヴの収録も近いのに、大丈夫かしら……」

    体調不良。
    事務所に連絡してきた雪歩の母親は、雪歩の欠勤の理由について、そう言ったらしい。

    俺は自分の携帯電話を開いた。
    やはり、何度確認しても、雪歩からの着信は無い。
    メールも、来てなかった。

    小鳥さん「プロデューサーさん、何か心当たりありませんか?」

    P「風邪じゃないでしょうか。最近、冷えましたし」

    小鳥さん「……プロデューサーさん」

    小鳥さんは、猛禽類そっくりな鋭い目で、俺をじっと睨んできた。
    32 : 以下、名無しにか - 2012/12/22(土) 22:56:03.85 ID:sd+V4Q4m0 (+90,+30,-161)
    P「な、なんですか」

    小鳥さん「今夜、飲みにいきませんか」

    P「いや、今日は雪歩の見舞いに行こうと思ってるんで……」

    すると、小鳥さんは椅子から立ち上がり、ズカズカと大股で俺ににじり寄ってきた。

    小鳥さん「ならなおさらです。飲みにいきましょう」

    そう言って、小鳥さんは俺のネクタイを強く掴んできた。
    そして、ぎりぎりと締めあげてくる。

    小鳥さん「これは、命令です」

    P「わ、分かりました……」

    首の締め付けよりも何よりも、小鳥さんの形相が恐ろしかった。
    33 : 以下、名無しにか - 2012/12/22(土) 22:58:47.30 ID:sd+V4Q4m0 (+95,+30,-178)
    小鳥さん「はい、お疲れさまでーす」

    P「お疲れ様です」

    小鳥さんは手に持ったビールをぐびぐび飲んでいく。
    俺もとりあえず一口飲んだ。

    仕事終わり。俺と小鳥さんは、たるき亭の奥座敷にいた。

    P「カウンターで良かったんじゃないですか? 二人だけですよ」

    小鳥さん「大事な話をカウンターでできますか!」

    半分ほどに減ったジョッキをドンと机に置いて、小鳥さんは口にできた「ひげ」
    も拭かずにそう言った。

    P「その大事な話って、もしかして雪歩のことですか?」

    小鳥さん「もしかしなくても雪歩ちゃんのことです!」
    34 : 以下、名無しにか - 2012/12/22(土) 23:00:25.56 ID:/QLyxba00 (+43,+29,-9)
    前にも似たような作風で雪歩SS書いてる?
    35 : 以下、名無しにか - 2012/12/22(土) 23:00:38.91 ID:sd+V4Q4m0 (+95,+30,-150)
    P「俺は、雪歩とは何も……」

    小鳥さん「あーあー今更そんなこと言わなくても結構です。みーんな知ってます!」

    小鳥さんはビールをぐびぐび飲んでいく。
    あっという間にジョッキは空になってしまった。

    小鳥さん「見てりゃー分かりますよ。雪歩ちゃんとプロデューサーが相思相愛なのは!」

    P「俺はあくまで雪歩のプロデューサーです。そんなことは……」

    小鳥さん「まーだそんなこと言ってんのかこの若造!」

    今日は小鳥さんの悪酔いを止めてくれる人は誰もいない。
    長い夜になりそうだった……。
    36 : 以下、名無しにか - 2012/12/22(土) 23:02:04.81 ID:sd+V4Q4m0 (+95,+29,-22)
    >>34
    雪歩SSを書くのはこれが初めてです。

    ギャグ以外を書くのもこれが初めてです。難しい……
    37 : 以下、名無しにか - 2012/12/22(土) 23:04:26.56 ID:sd+V4Q4m0 (+95,+30,-126)
    小鳥さん「だーかーら! あんたはヒック雪歩ちゃんのことが好きなんでしょお~!?」

    P「そうですよお~! 好きにヒックきまってるじゃあ、ないですか~!」

    小鳥さん「なら何で好きって言わない~?」

    P「俺は~、プ・ロ・デュー・サー・なんです! アイドルとぉ~、恋仲になれますか~!?」

    小鳥さん「古い! 古いぞその考えは~! 男ならド~ンと当たって砕けんか~い!」

    P「砕けちゃ駄目でしょ~? それに雪歩は俺の事を好きってー……」
    38 : 以下、名無しにか - 2012/12/22(土) 23:07:06.87 ID:sd+V4Q4m0 (+93,+30,-174)
    小鳥さん「おう、なんじゃいそれ~! 雪歩ちゃんがあんたを好きだって~!?」

    P「もう何度も言われてますよ~! この前だって好き好き大好き~って!」

    小鳥さん「それでぇ~、あんたは何て返したんだい!?」

    P「だ~か~らぁ~! 俺は、雪歩のプロデューサーだ! って言ったんですよ~!」

    小鳥さん「……こぉ~の馬鹿野郎ぉ~!!」

    P「痛っ!? な、なんですかぁ、いきなり~」

    小鳥さん「あんた最低だよぉ~! この男失格!」

    P「小鳥さんに言われたくありませんよぉ~! 早く結婚しろ~!」

    小鳥さん「にゃんだとぉ~! 女失格って言いたいのか~!」

    律子「何やってるんですか……」
    39 : 以下、名無しにか - 2012/12/22(土) 23:09:16.85 ID:/QLyxba00 (+24,+16,+0)
    人違いすまぬ
    支援
    40 : 以下、名無しにか - 2012/12/22(土) 23:09:17.72 ID:sd+V4Q4m0 (+95,+30,-111)
    小鳥さん「あ、律子ひゃん~!」

    P「おお、律子ぉ~!」

    律子「二人ともベロンベロンじゃないですか……」

    小鳥さん「へいタクシ~!」

    律子「はいはい、もう呼んでますよ」

    P「律子ぉ~!」

    律子「ちょっ、抱きつかないでくださいよ、酒臭い!」

    P「雪歩を、雪歩を取らないでくれぇ~!」

    律子「はぁ?」
    41 : 以下、名無しにか - 2012/12/22(土) 23:10:17.87 ID:sd+V4Q4m0 (+93,+29,+0)
    >>39
    いえ、支援ありがとうございます。嬉しい。
    42 : 以下、名無しにか - 2012/12/22(土) 23:11:48.31 ID:sd+V4Q4m0 (+95,+30,-57)
    P「俺は雪歩が大好きなんだよぉ!」

    P「トップアイドルになった、あいつの笑顔を見たいんだぁ~!」

    P「俺なんかと一緒になったら、あいつは、あいつは~!」

    律子「だ、大の男が泣かないでくださいよ!」

    P「俺は、いったいどうしたらいいんだ~!」

    小鳥さん「こぉ~の鈍感ダメ男が~!! ヒック」
    43 : 以下、名無しにか - 2012/12/22(土) 23:12:36.01 ID:qTmpM8LmO (+8,+23,+0)
    いいね
    44 : 以下、名無しにか - 2012/12/22(土) 23:12:59.45 ID:6lQH+zGA0 (+24,+29,-5)
    社長が大人のSSが゜珍しいという不思議な現象
    45 : 以下、名無しにか - 2012/12/22(土) 23:13:46.89 ID:sd+V4Q4m0 (+95,+30,-135)
    翌朝、俺は知らない部屋で目が覚めた。

    P「痛た……頭が……」

    律子「目が覚めました?」

    P「え、なんで、律子?」

    律子「ここは私の部屋です。昨日のこと、覚えてないんですか?」

    律子は腕を組んだまま、ベッドにいる俺を厳しい目で見下ろしてきた。
    俺は律子から目を逸らし、必死で頭を回転させて、昨日の記憶を必死で手繰り寄せた。

    P「…………真に申し訳ありませんでした」

    昨日のたるき亭での失態を、断片的ではあるが思い出した。
    小鳥さんの悪酔いを止めるどころか、なぜか自分まで一緒になって飲んでしまった。
    46 : 以下、名無しにか - 2012/12/22(土) 23:13:57.30 ID:OfSYkswwO (+18,+28,+0)
    いいじゃない
    期待
    47 : 以下、名無しにか - 2012/12/22(土) 23:16:05.44 ID:sd+V4Q4m0 (+95,+30,-125)
    律子「家の住所聞こうと思ったら、小鳥さん共々泥酔してるんだもの」

    P「本当にご迷惑を……え、共々?」

    小鳥さん「痛た……頭……」

    俺のいるベッドの布団の中から、ひどく髪を乱せた小鳥さんが、頭を押さえながら起き上ってきた。

    P「こ、小鳥さん!?」

    小鳥さん「あ、おはようございます、プロデューサーさん」

    意外にあっさりとした態度に、俺は慌ててベッドから飛びのいた。

    P「おはようじゃないですよ! どうして小鳥さんがベッドに!?」

    律子「床に寝かせるわけにもいかないでしょう。それとも、プロデューサーが冷たいフローリングで、風邪をひきたかったですか?」
    48 : 以下、名無しにか - 2012/12/22(土) 23:18:03.78 ID:sd+V4Q4m0 (+95,+30,-127)
    P「……り、律子はどこで寝たんだ?」

    律子「床です」

    P「ほ、本当に、その……申し訳ありませんでした……」

    俺は最大限の謝罪の意を込めて、律子に土下座をした。

    律子「やめてください。情けないったらありゃしない」

    律子が呆れた声を出しても、俺は頭を下げ続けた。

    律子「……雪歩、今日も休むそうですよ」

    そこで俺は、初めて頭をあげた。
    律子は、どこか悲しそうな顔をして、俺に言った。

    律子「謝るなら、私じゃなくて雪歩に謝ってください」
    49 : 以下、名無しにか - 2012/12/22(土) 23:20:05.06 ID:sd+V4Q4m0 (+95,+30,-162)
    痛む頭を押さえながら、なんとか俺は事務所で仕事についていた。
    今日の仕事はアイドル達の送り迎えぐらいで、大半が事務仕事だった。

    小鳥さん「いやあ、昨日はちょっと酔い過ぎましたね」

    対面の机にいた小鳥さんが、同じく頭を押さえながらそう言った。

    P「ちょっとどころじゃないですよ。完全に悪酔いですよ」

    律子「まったく、二人とも自重してください」

    律子は目の前のパソコンをカタカタ打ちながら溜息をついた。

    P「それで、今日こそは仕事終わりに雪歩の見舞いに行こうと思う」

    律子「……大丈夫なんですか?」

    P「あー…その頃には二日酔いもマシになってるさ」
    50 : 以下、名無しにか - 2012/12/22(土) 23:22:06.27 ID:sd+V4Q4m0 (+95,+30,-128)
    律子「違いますよ。プロデューサー、分かってますか?」

    キーボードを打つ手を止めて、律子は俺をじっと見てきた。

    P「何を?」

    小鳥さん「昨日あれだけ言ってたじゃないですか。雪歩大好きだぁ~! って」

    P「そ、そんなこと俺は」

    律子「言いました。私に抱きついてまで、大声で叫んでました」

    律子がジト目で俺を睨んできた。
    そ、そういえば、そうだった……かな?

    律子「プロデューサー……もちろん、アイドルとの恋なんてご法度ですが」
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