元スレ玄「清水谷さんに拉致監禁されて今日で3日目かあ~」
SS覧 / PC版 /みんなの評価 : ★
201 = 179 :
床に放置されていた煌の足を手にとる。
ハエが群がっていたが、まだそんなに傷んでいるようには見えない。
何日かぶりの食料。
食べてもいいのか、よくないのか。
悩んだのは一瞬だった。
太ももにかじりつく。
肉は硬化していて、なかなか噛みきれなかったが、
飢餓状態の人間の食欲とは恐ろしいもので、
どこにこんな力が残っていたのかと自分でも驚くくらい
無意識の内にアゴに力が入り、ついに煌の死肉を噛みちぎった。
玄「おいしい、おいしいです、花田さん……」
消えかけていた命が生きる力を取り戻していく。
玄は食べる手を休めず、煌の足を一心不乱に貪り続けた。
満腹になるころにはもう骨しか残らなかった。
玄「ごちそうさまでした」
玄は生まれて初めて、何かを食べられるということに
心の底から感謝を捧げた。
そして、なんとしても生きて帰りたい、と思った。
煌から分けてもらった命だ。
無駄にしてはいけない。
誰かの助けが来るまで、ここで生き続ける。
玄「私、頑張るから……」
202 :
山ならシズが!
203 :
すばらな食べっぷりでしたよ・・・
204 = 184 :
玄ちゃんの血肉となって行きよ
205 :
可愛い玄ちゃんの画像下さい……
206 = 191 :
玄ちゃんの髪の毛がクワガタみたいに…
207 = 198 :
玄ちゃんの中で煌は生き続けるのか……そんなすばらなことはない
208 = 179 :
18日目。
玄は朝から猛烈な腹痛に襲われていた。
玄「おげええええええっ、おげええええええ」
何度も嘔吐を繰り返し、下痢も止まらない。
死体が置かれたこの部屋は吐瀉物と排泄物によって
さらに劣悪な環境へと変わり果てつつあった。
なぜこんな腹痛がいきなり起こったのか。
心当たりは一つしかなかった。
玄「花田さん、ごめんなさい……
せっかく花田さんのお肉を頂いたのに……
全部吐き出しちゃって……おげええええええ」
せっかく回復した気力も生命力も
嘔吐するたびにどんどん削られていくように思われた。
やはり自分はここで死ぬのだ。
人の道に背き人肉を食べたバチが当たったのだ。
玄「おげええええええ」
胃液に溶かされた煌の肉が溢れてくる。
煌の肉を食べ、こうして吐き出すという行為で
煌を二重に殺してしまったような気がして、
今さらながら人食に罪悪感が湧いてきていた。
209 :
>>205
こんなことになるとは夢にも思わなかった頃の玄ちゃん
210 = 205 :
>>209
これは拷問したくなるな
211 :
きっついけどまあこういうのも悪くないな
212 :
特に二枚目なんて
213 = 179 :
玄「はあ、はあ、はあ、はあ、はあ……」
ひときしり出すものを出し終えた玄は、床に倒れ込んだ。
起き上がる気力もなかった。
玄(もう、ここで死んじゃうんだな……)
玄の脳裏には、この部屋での監禁生活が蘇っていた。
学校の帰りに暗い夜道で襲撃され、薬で眠らされたこと。
目が覚めたら両手足を手錠で拘束されていたこと。
宮永照の生首に恐怖して泣いたこと。
花田煌が竜華たちの手で壊されていくこと。
花田煌を殺したこと……
ろくでもないことばかりであった。
何故自分がこんな仕打ちを受けなければならなかったのか。
こんなことにならなければ、どんな人生を歩めていたのか。
姉や友達は今ごろ、どうしているのか。
玄「お姉ちゃん、お父さん、お母さん、
私、みんなの家族に生まれて嬉しかった」
玄「穏乃ちゃん、憧ちゃん、灼ちゃん、赤土さん、
麻雀部楽しかったです」
玄「花田さん、宮永さん、園城寺さん……
生まれ変わったら、今度は……」
玄「今度は……」
214 = 187 :
しえん
215 = 191 :
しえん
216 = 179 :
――
――――
―――――――
怜『……玄ちゃん…………玄ちゃん…………』
玄『ん…………』
怜『玄ちゃん……玄ちゃん…………』
玄『お、園城寺さん……?』
怜『そうや、覚えててくれてたか』
玄『そりゃ覚えてますよ……』
怜『なんかうちの竜華のせいで、えらい大変な目にあってしまったみたいで……
マジすんませんです』
玄『いえ……たしかに大変ですけど、園城寺さんが謝ることなんて』
怜『いや、私が竜華を止められたら良かったんや……
でも竜華の夢枕に立とうと思っても……竜華は偽物の私を作ってて、
そいつのせいで出ていけへんかった』
玄『はあ』
218 = 176 :
このシーン見て自殺の練習を思い出した
219 :
>>209
このスレ見ると遺影にしか見えなくてワロタ
220 = 179 :
怜『竜華は止められへんかった……けど、
せめてもの罪滅ぼしとして、玄ちゃんだけは助けてあげたいんや』
玄『助ける……どうやって?
ドアも窓も開きませんし、この部屋から出ることなんて』
怜『私に任せとき。
玄ちゃん、あんた本気で助かりたいと思う?』
玄『そりゃあ……思いますよ。
諦めたり、絶望したこともあったけど……
元の日常に、みんなのもとに帰れるっていうんなら、そんな嬉しいことはありません』
怜『そうか、分かった。
その玄ちゃんの強い気持ちこそが、私のエネルギーや』
玄『本当に……本当に帰れるんですか!?』
怜『うん、大丈夫。私があんたの、最後の希望や』スゥッ
玄『園城寺さん……!』
―――――――
――――
――
222 = 179 :
その後、玄は長い長い眠りの中をさまよい続けた。
時間に換算して何時間か、何日か、何週間かは分からなかった。
眠りの中で玄はいくつも不思議な夢を見た。
穏乃と一緒に山を駆け回っている夢。
憧と夜の繁華街で遊び回っている夢。
灼とボウリング場の店番をしている夢。
宥とこたつに入ってみかんを食べている夢。
高校時代の晴絵と一緒に全国大会に出た夢。
怜、煌、照、玄の4人で松実館の温泉に入っている夢。
いくつもの夢を渡り歩いて、そのどれもが現実ではないと自覚していた。
これは夢なのだと。
いつか醒めなければいけないのだと。
玄(そうだ、目覚めないと……)
玄(こんな夢じゃなくて、みんなのいた現実の世界に戻らないと)
玄(あの部屋じゃなくて、私の元の日常に……)
気がつくと病院のベッドの上にいた。
玄「あ……あれ……?」
宥「く、玄ちゃん……?」
玄「おねえ……ちゃん?」
224 = 198 :
玄ちゃん助かってよかった・・・
225 = 179 :
宥「玄ちゃぁぁぁぁぁぁん!!」
感極まって泣きだした宥に抱きしめられる。
なぜこんな場所にいるのか、
玄は自分の置かれた状況を把握できていなかった。
もしかしてあの部屋で監禁された日々は全て夢だったのか。
夢オチだったのか。
いや、そんなことはありえない。
あんな生々しい感触を伴った夢なんて……
宥「よかった、よかった……本当に良かった……」
玄「お、お姉ちゃん……どうして私、病院に……?」
宥「覚えてないの……?
あ、でもそうだよね、忘れたほうがいいんだよ、きっと……
思い出そうとしなくてもいいから、ね」
玄「……私、監禁されてた……んだよね?」
宥「あう、やっぱり覚えてたの……」
どうやら夢ではないようだった。
玄「千里山の清水谷さんに監禁されてて、それで……」
宥「あ、チョット待って。その前に先生読んでくるね」
玄「あ、うん……」
226 :
?「どうしつのかたですね よろしくおねがいします」
228 :
り
229 :
>>226
キャップは隔離病棟だろ!
230 = 179 :
そのあと医師によって延々と健康状態を検査された。
医師の話によると3日ほど意識を失っていたらしい。
あの部屋での生活は劣悪極まりないものであり、
最後には食中毒などもやらかしてしまったが、
特に健康に大きな影響はないということであった。
姉とゆっくり話しが出来たのは検査が終わってからだった。
玄「……結構大きなニュースになってたんだ」
宥「そりゃそうだよ、元高校生チャンピオンが失踪、
それに以前の対局相手も相次いで……ってなれば騒がれるよ」
玄「そっか、そうだよね……ごめんね心配かけて」
宥「ううん、無事に戻ってきてくれただけで充分だから」
玄「ん……私は帰ってこられたけど……花田さんたちは」
宥「それは……残念だけど……」
玄「……二条さんも、失くなったんだよね」
宥「うん、玄ちゃんたちが監禁されてた場所の近くで」
玄たちが監禁されていたのは、千里山女子高校が
長期休暇中の合宿に使用していた施設であった。
合宿がない時は、管理者がたまに訪れるだけで完全に無人であり、
山の中であるため人も通らない。格好の監禁場所といえた。
233 = 179 :
二条泉は何者かによって刺殺されていた。
おそらくは清水谷竜華によって殺されたものと見られている。
たまたま通りかかった地元住民が死体を発見し警察に通報、
そこから玄たちが監禁されていた場所が分かったという。
宥「二条さんが、メモを握りしめてたんだって」
玄「メモ?」
宥「みんなはどこそこの建物に監禁されています、って」
玄「へえ~」
宥「でも、そのメモの筆跡は二条さんのものでも、
清水谷さんのものでもなかったんだって。
誰が書いたんだろうって、警察の人が言ってたよ」
玄「…………」
心当たりはあったが、あまりにも荒唐無稽な話だった。
口には出さずに、心のなかだけで感謝する。
玄(ありがとう、園城寺さん)
宥「どしたの? 玄ちゃん」
玄「ううん、なんでもないよ」
清水谷竜華は未だに逃走を続けているらしい。
ニュースでも連日騒ぎ立てていた。
234 = 176 :
泉返り討ちにあったのか
235 :
これは来るな・・・
236 :
おお、まだ捕まってなかったのか
237 = 198 :
なんてしぶとい女なんだ
238 = 219 :
次は俺か…
239 = 179 :
体調が回復し、退院するころにはマスコミの報道も下火になりつつあった。
世間の関心はこの残酷な事件から政治や国際情勢に向いていた。
ただ警察の捜査にはながながと付き合わされた。
煌や照の家にお線香を上げに行こうと思っていたが、
まだそんな余裕はできそうになかった。
しかしなにはともあれ、もとの日常が戻ってきたのだ。
玄はとりあえずそれを喜ぶことにした。
穏乃「玄さーん、無事でよかったあー!」
憧「もー、ほんっと心配したんだからね!」
灼「元気で帰ってきてくれて、よかった……」
晴絵「玄ならきっと生きてるって、信じてたぞ!」
憧「嘘だあ、まっさきに諦めてたの晴絵のくせに」
晴絵「な、何を言うんだお前はっ」
玄「あはははは」
穏乃「よーし、玄さんが無事に帰ってきた記念パーティーしよう!」
憧「おっ、いーねえー」
穏乃「寿司食べよう寿司」
240 = 184 :
レジェンドは諦めてたのか…
241 :
レジェンド…
242 = 209 :
これはアニメ版レジェンゴ
244 = 179 :
大好きな仲間たちと一緒に笑いあえるこの日常。
この場所に戻ってこられて、玄はその大切さを噛み締めていた。
もう二度と失いたくない、離れたくない、忘れたくない。
そしてあの監禁生活も、なかったことにしてはいけない。
極限状態の中でのあの壮絶な体験は、玄の人生観を大きく変えた。
理不尽な悪意や暴力に晒された、死と隣り合わせの生。支えあった仲間。
もう二度と体験したくはないが、あの場で得たことは玄の糧になっている。
だが、少しくらいなら忘れてもいいだろう。
友人と、姉と、恩師と、久しぶりに集まって騒げる今日この日だけは。
晴絵「よーし、今日は私のおごりだ! なんでも食え!飲め!」
憧「おー、太っ腹ー!」
穏乃「なんでもって言われると迷うなー!」
灼「私はなんでもいいよ」
宥「生ビール」
玄「そーだなー、じゃあ私はうーんと、えーっと…………」
竜華「みーつけた」
お わ り
245 = 179 :
長くなりましたがこのSSはこれで終わりです。
ここまで支援、保守をしてくれた方々本当にありがとうごさいました!
パート化に至らずこのスレで完結できたのは皆さんのおかげです(正直ぎりぎりでした(汗)
今読み返すと、中盤での伏線引きやエロシーンにおける表現等、これまでの自分の作品の中では一番の出来だったと感じています。
皆さんがこのSSを読み何を思い、何を考え、どのような感情に浸れたのか、それは人それぞれだと思います。
少しでもこのSSを読んで「自分もがんばろう!」という気持ちになってくれた方がいれば嬉しいです。
長編となりましたが、ここまでお付き合い頂き本当に本当にありがとうございました。
またいつかスレを立てることがあれば、その時はまたよろしくお願いします!ではこれにて。
皆さんお疲れ様でした!
247 :
おつおつ
一体どこにエロシーンがあったんだ…
248 = 197 :
>>1がSS後書きテンプレとはwww
乙
249 = 198 :
乙
すばらだった
250 = 209 :
おつおつ
すばら先輩のところで抜いたのは俺だけじゃないはず
みんなの評価 : ★
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