元スレ奉太郎「千反田がラブレターをもらった?」
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101 = 59 :
そこから飛び出した言葉は俺にとって驚くべきものだった。
俺はまた、今日何度目かもはや分からないのだが、ひどく動揺する。
俺の千反田に抱いている感情は伊原や里志だけでなく千反田本人にさえ筒抜けだったのだろうか。
動揺して声も出せない俺の心中を察してくれたのか、里志が千反田に話しかける。
里志「千反田さん、ホータローの気持ちが理解できるって……?
それって……」
103 = 59 :
える「はい。折木さんには秘密にして、福部さんにだけ相談するというのは、
やっぱり同じ古典部員である折木さんからしてみると、
自分だけ信用されていないようでとても不愉快なことだと思います。
相談するのであれば、最初から古典部の皆さんに聞いて頂くべきでした。
今回のことは、わたしが軽率でした。
折木さん、不愉快な思いをさせて申し訳ありません。
でも、決して折木さんのことを信用してなかったわけではないんです。
ただ、折木さんに話すのはなんとなく恥ずかしくて……」
そう言って千反田は恥ずかしそうに俯いた。
104 :
まだかよ!
105 = 59 :
どうやら千反田は俺の怒りと、伊原の言った『やきもち』を別の解釈でとらえてくれたようだ。
ほっとして里志を見ると、里志も同じようにこちらを見た。
『僕の言った通りだろう?』その得意げな目は俺にそう語りかけてきた。
俺は鼻を鳴らしてそれに応える。
里志「なんにせよ、これで一件落着かな?
そうだ千反田さん、せっかくだし例のラブレターをちょっと僕にも見せてくれないかな?」
える「そうでした!
もとはと言えばわたし、どうしても気になることがあったから恥ずかしいのを我慢して折木さんに
相談していたんでした。
皆さんもぜひ一緒に考えてもらえないでしょうか?」
106 = 59 :
俺としては今回の原因となったもののことは忘れてしまいたいのだが、
そういうわけにもいくまい。
千反田が鞄から取り出した例のものを里志が受け取る。
その脇から伊原も覗き込む。
里志「うーん。確かにこれは今までのとはちょっと違った感じだね。
でも、やっぱりこれだけでどんな人が書いたのかは特定できないな。
僕が分かることと言えば、最後の一文がユリの花言葉になってるってことくらいだよ」
奉太郎「そうなのか?」
107 = 94 :
ゆりんゆりん
108 = 59 :
里志「そうだよ。ユリの花言葉は『無垢』とか
『あなたは偽ることができない』なんだ。
二つも一文の中で使われているんだからこれは間違いなくユリを指していると思う」
える「そうだったんですか。わたし、全然知りませんでした」
奉太郎「だがなぜこの差出人はユリの花言葉なんか書いたんだ?」
里志「それは分からないな。
千反田さんをユリにでも見立ててみたってところじゃないかな
他に意味が込められているかどうかは僕には判断がつかないね」
109 = 59 :
まあ確かに清楚な女学生然としたたたずまいの千反田をユリの花に例えてみるというのは分かる気がする。
立てば芍薬云々といった言葉もあることだしな。
言葉には出せないが。
やっぱりこれは単なるちょっと気取ったラブレターだったのだろうかと俺が思い始めた時、
伊原が口を開いた。
111 = 59 :
伊原「あのね、百合っていう言葉には、他にも意味があるの。
マンガの用語なんだけど、百合っていうのは女の子同士の恋愛を指す言葉なの。
だからわたし思ったんだけど、この手紙を出した人は女の人だったんじゃないかなって。
女だから直接告白するわけにいかないし、
女同士の恋愛なんて現実ではまだまだ認められてないから、
自分は思いを伝えるのを許される人間じゃないって書いたんじゃない?
でも自分が女だって気付いてほしい気持ちもあったから、
最後にユリの花言葉を添えた。
どうかしら?ちょっとこじつけって感じもするけど」
112 = 77 :
しえん
113 = 59 :
一瞬、全員に沈黙が流れる。
みんな伊原の言ったことを踏まえ、ラブレターの内容を考えているようだ。
最初にその沈黙を破ったのはやはり千反田だった。
える「すごいです摩耶花さん!どうして気付いたんですか!?」
摩耶花「いや、わたし漫研に入ってたし、ただ知ってただけっていうか……」
里志「僕も摩耶花の言った通りだと思うよ。
矛盾がないし、ただの気取ったラブレターですってよりも説得力がある」
奉太郎「なんだ、二人に話したらこんなに簡単に答えが出ることだったのか」
里志「どうやらホータローは千反田さんのことになると頭がうまく働かないみたいだね」
摩耶花「そうね。省エネとかはどこに行ったんだか」
114 = 59 :
奉太郎「別に今回の件はたまたまお前たちが知ってたことだっただけだろう」
里志「まあそうなんだけどね。
でも冷静さを失ったのは本当だろう?」
それを言われると何も言い返せない。
千反田の方を見ると、なんだか千反田も照れくさそうにしている。
里志「さーて、これで本当に一件落着だね。
じゃ、僕はこの辺で帰るよ。
総務委員でやらなきゃいけないことがあるんだ」
摩耶花「わたしもちょっと用事があるから帰るわ。
ふくちゃん、途中まで一緒に行こ」
115 = 59 :
なんだか気まずい俺たちを残して、二人はさっさと部室を出て行ってしまった。
古典部とはなかなかにドライな連中の集まりなのだと再認識する。
まあ、今日はただ俺たちに気を遣ってくれたのだろうが。
ちらりと千反田の方を盗み見る。
千反田もこちらの様子を伺っているようだ。
……こういうときは男から話しかけるものだろう。
奉太郎「悪かったな、昨日のこと」
える「いえ、わたしにも非がありますから」
奉太郎「お前、一人で知らない男のところに断りを言いに行くのは大変だと言っていたよな」
える「はい。やっぱり何度やっても慣れないものはあります」
116 = 59 :
奉太郎「そのことなんだが、もしお前がよければ、なんだが、
俺が付き添って行っても、いいぞ。
お前がどうしても一人で行くのが嫌なら」
千反田は少し驚いたように目を見開いた。
さてどう出る。
これで結構ですなどと言われたら俺はもう本当に古典部に顔を出せなくなるかもしれない。
自分の顔が赤くなるのを感じつつ、千反田の方を見る。
える「そうですね。一人で行くのはどうしても嫌です。
折木さんが一緒にいてくださったら安心できるのですが」
千反田はそう、とびきりの笑顔で言ってくれた。
117 = 59 :
俺は口許が緩むのを精一杯どうにかしようとしながら、そっぽを向いて答える。
奉太郎「まあ、お前がどうしてもというなら」
える「はい。ありがとうございます」
千反田は笑顔のまま深々と頭を下げた。
雨降って地固まる、というにはあまりにも俺の非が大きすぎた一件だが、
里志と伊原のお陰もあって無事解決となった。
入須にしてやられたときもだが、一人で先走ると碌なことにならない。
慎むべし慎むべし、と俺は自らの行いを反省するとともに、
誰かまた千反田にラブレターを渡してくれないものかとあまりよくない期待
を胸に抱くのだった。
END
119 = 59 :
以上です
駄文に付き合ってくれた方々に敬礼
120 = 67 :
乙!
こういう直接言わない感じがいい!
121 :
後日談はよ
みんなの評価 : ☆
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