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元スレ奉太郎「千反田がラブレターをもらった?」

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ある日の放課後、俺は一人で地学講義室にいた。
一人で部室にいるのは特に珍しいことでもない。
その内誰かが来るだろうし、来ないなら来ないでゆっくり読書ができる。
これ幸いと俺はいつもの席に座り、読みかけのペーパーバックを開いた。
最近はすっかり夏らしくなり、容赦ない日差しが外で部活動に勤しむ生徒たちを苦しめている。
できることなら太陽が高いうちは外を出歩きたくないので、
俺の古典部への出席率が高くなったのも自然の帰結だ。
一人で部室にいるのは特に珍しいことでもない。
その内誰かが来るだろうし、来ないなら来ないでゆっくり読書ができる。
これ幸いと俺はいつもの席に座り、読みかけのペーパーバックを開いた。
最近はすっかり夏らしくなり、容赦ない日差しが外で部活動に勤しむ生徒たちを苦しめている。
できることなら太陽が高いうちは外を出歩きたくないので、
俺の古典部への出席率が高くなったのも自然の帰結だ。
ああエネルギー消費の少ない古典部の活動、万歳。
しかしその日の放課後の安寧は、千反田えるの来襲によりあっさりと崩壊してしまったのだった。
俺が読書を始めて少し経った頃、見るからに挙動不審な様子で千反田は部室にやってきた。
える「あ、こ、こんにちは。あの、折木さんだけですか?」
奉太郎「ああ。今のところはな」
える「そうですか」
これは珍しい。
しかしその日の放課後の安寧は、千反田えるの来襲によりあっさりと崩壊してしまったのだった。
俺が読書を始めて少し経った頃、見るからに挙動不審な様子で千反田は部室にやってきた。
える「あ、こ、こんにちは。あの、折木さんだけですか?」
奉太郎「ああ。今のところはな」
える「そうですか」
これは珍しい。
好奇心の権化となって周りが見えなくなるところは何度も見てきたが、
こんなふうに動揺している姿はほとんど見たことがない。
さてどうしたものか。
千反田は何か俺に話したいことがあるのだろう、何度も不自然に俺の方をちらちらと盗み見ている。
話を聞いてしまえば十中八九面倒なことになる。
しかし千反田のこの様子だと遅かれ早かれ俺は千反田の話を聞いてやることになるに決まっている。
やるべきことは手短に、だ。
える「折木さん、あの、今日はどんな本を読んでいらっしゃるんですか?」
千反田が遠慮がちに声をかけてくる。
こんなふうに動揺している姿はほとんど見たことがない。
さてどうしたものか。
千反田は何か俺に話したいことがあるのだろう、何度も不自然に俺の方をちらちらと盗み見ている。
話を聞いてしまえば十中八九面倒なことになる。
しかし千反田のこの様子だと遅かれ早かれ俺は千反田の話を聞いてやることになるに決まっている。
やるべきことは手短に、だ。
える「折木さん、あの、今日はどんな本を読んでいらっしゃるんですか?」
千反田が遠慮がちに声をかけてくる。
なるほど、そうきたか。
だが俺はそのどうでもいい世間話には答えない。早く済ませて読書に戻りたいのだ。
奉太郎「千反田。何か俺に用があるならさっさと言ってくれ。まどろっこしい」
える「え?な、なんで分かったんですか折木さん?」
奉太郎「お前を見てれば様子がおかしいことくらいすぐに分かる。
で、どうしたんだ?いつもの気になりますとも違うようだが」
える「気になることといえば気になることがあったんですが……」
奉太郎「何なんだ一体。さっさと言ってくれ」
える「は、はい。実は、あの、今日の朝下駄箱にこんなものが入っていて……」
だが俺はそのどうでもいい世間話には答えない。早く済ませて読書に戻りたいのだ。
奉太郎「千反田。何か俺に用があるならさっさと言ってくれ。まどろっこしい」
える「え?な、なんで分かったんですか折木さん?」
奉太郎「お前を見てれば様子がおかしいことくらいすぐに分かる。
で、どうしたんだ?いつもの気になりますとも違うようだが」
える「気になることといえば気になることがあったんですが……」
奉太郎「何なんだ一体。さっさと言ってくれ」
える「は、はい。実は、あの、今日の朝下駄箱にこんなものが入っていて……」
奉太郎「何だこれは?手紙か?」
える「はい、あの、中身も読んでいただけないでしょうか」
奉太郎「いいのか?お前宛てのラブレターなんじゃないのか?」
える「どうして分かったんですか折木さん?
わたし、まだ何も言っていないのに」
やはりそうか。
昔から下駄箱に入れられる手紙はラブレターだと相場が決まっている。
える「はい、あの、中身も読んでいただけないでしょうか」
奉太郎「いいのか?お前宛てのラブレターなんじゃないのか?」
える「どうして分かったんですか折木さん?
わたし、まだ何も言っていないのに」
やはりそうか。
昔から下駄箱に入れられる手紙はラブレターだと相場が決まっている。
>>16
指摘ありがとう
千反田にラブレターか。
想像もしていなかったが、考えてみればおかしな話でもない。
あの異常な好奇心さえ表に出さなければ容姿にも成績にも優れた奴だ。
惚れる男がいるのも無理からぬことだろう。
むしろこれまでそんな話が耳に入って来なかったことが不自然だったのかもしれない。
しかし、だ。
指摘ありがとう
千反田にラブレターか。
想像もしていなかったが、考えてみればおかしな話でもない。
あの異常な好奇心さえ表に出さなければ容姿にも成績にも優れた奴だ。
惚れる男がいるのも無理からぬことだろう。
むしろこれまでそんな話が耳に入って来なかったことが不自然だったのかもしれない。
しかし、だ。
奉太郎「俺に恋愛の相談相手が務まるとは思えんな。
自慢じゃないが俺は今まで色恋沙汰とは無縁で生きてきたんだ。
伊原あたりにでも聞いてもらえばいいじゃないか。
それにそのラブレターを寄越した男にも悪い。
どこの誰だかは知らんが、他の男に愛の告白の手紙を読まれたくはないだろう」
惚れた腫れたといった話は非常にエネルギーのいるものらしい。
相手の一挙手一投足が気になり、そのひとつひとつに一喜一憂する。
夜は眠れず、飯は喉を通らない。
そんなに大変なら恋などしなければいいと思うのだが、そうもいかないらしい。
曰く「恋はするものではない、落ちるものだ」とかなんとか。
自慢じゃないが俺は今まで色恋沙汰とは無縁で生きてきたんだ。
伊原あたりにでも聞いてもらえばいいじゃないか。
それにそのラブレターを寄越した男にも悪い。
どこの誰だかは知らんが、他の男に愛の告白の手紙を読まれたくはないだろう」
惚れた腫れたといった話は非常にエネルギーのいるものらしい。
相手の一挙手一投足が気になり、そのひとつひとつに一喜一憂する。
夜は眠れず、飯は喉を通らない。
そんなに大変なら恋などしなければいいと思うのだが、そうもいかないらしい。
曰く「恋はするものではない、落ちるものだ」とかなんとか。
あいにくその大変さを味わったことのない俺だが、
自分の恋だけでも十分に大変そうなのにどうして他人の分まで引き受けられよう。
俺はどうにか話を誤魔化してしまおうと試みた。
だが、それに対する千反田の態度は俺の予想とは違っていた。
える「それなんです!」
奉太郎「それなんです?」
える「この手紙を書いてくれた方が、どこの誰なのか分からないんです!」
自分の恋だけでも十分に大変そうなのにどうして他人の分まで引き受けられよう。
俺はどうにか話を誤魔化してしまおうと試みた。
だが、それに対する千反田の態度は俺の予想とは違っていた。
える「それなんです!」
奉太郎「それなんです?」
える「この手紙を書いてくれた方が、どこの誰なのか分からないんです!」
つまり千反田の話を要約するとこうだ。
朝学校に来たらラブレターがあった。
それには差出人の名前が書いていなかった。
誰が書いたのか、わたし気になります。
奉太郎「おいおい、俺は筆跡鑑定はできんぞ」
える「そうじゃないんです。
手紙の内容に気になるところがあって……。
ですから、一度これを読んでみてください!」
朝学校に来たらラブレターがあった。
それには差出人の名前が書いていなかった。
誰が書いたのか、わたし気になります。
奉太郎「おいおい、俺は筆跡鑑定はできんぞ」
える「そうじゃないんです。
手紙の内容に気になるところがあって……。
ですから、一度これを読んでみてください!」
ラブレターが入っているのであろう便箋をこちらに差し出し、千反田が近づいてくる。
近い。いつもとは違って顔ではなく便箋だからいくらかましではあるが。
しかしこうなってしまった以上、千反田の頼みを聞かずに済ますのは難しい。
なにせ目の前に例の物が突き付けられている。
奉太郎「分かったよ、読めばいいんだろう。
だが、読むだけだ。
答えは期待するなよ」
える「はい!ありがとうございます!」
近い。いつもとは違って顔ではなく便箋だからいくらかましではあるが。
しかしこうなってしまった以上、千反田の頼みを聞かずに済ますのは難しい。
なにせ目の前に例の物が突き付けられている。
奉太郎「分かったよ、読めばいいんだろう。
だが、読むだけだ。
答えは期待するなよ」
える「はい!ありがとうございます!」
途端に千反田の顔がぱっと明るくなる。
まったく忙しいやつだ。
俺は千反田から受け取った便箋を開き、中身を見た。
そこにはこうあった。
『千反田える様
突然このような手紙を書く無礼をお許しください。
どうしても伝えたいことがあるのですが、一身上の都合で直接伝えることができないためこうして手紙を書きました。
私は千反田さんのことが好きです。初めて目にしたときからずっと好きでした。
私は千反田さんに思いを伝えることを許される人間ではありません。
しかしこの思いを抑えることができなかったのです。
悪戯だと思われても構いません。
思いを伝えることができるだけでいいのです。
無垢で、偽ることのできないあなたへ。』
まったく忙しいやつだ。
俺は千反田から受け取った便箋を開き、中身を見た。
そこにはこうあった。
『千反田える様
突然このような手紙を書く無礼をお許しください。
どうしても伝えたいことがあるのですが、一身上の都合で直接伝えることができないためこうして手紙を書きました。
私は千反田さんのことが好きです。初めて目にしたときからずっと好きでした。
私は千反田さんに思いを伝えることを許される人間ではありません。
しかしこの思いを抑えることができなかったのです。
悪戯だと思われても構いません。
思いを伝えることができるだけでいいのです。
無垢で、偽ることのできないあなたへ。』
残念ながら俺は今までラブレターを書いたことも受け取ったこともない。
当然一般的なラブレターの文例も知らない。
そのせいだろうか、少しばかり変わっているというか、気障な文章だという印象は受けたが、
そこまでおかしな部分はないように思う。
奉太郎「すまんが、俺はお前がどの部分に気になっているのか分からん。
直接言えないから手紙を書いた。
思いを伝えるだけでいいから名前は書かなかった。
それだけのことじゃないのか?」
当然一般的なラブレターの文例も知らない。
そのせいだろうか、少しばかり変わっているというか、気障な文章だという印象は受けたが、
そこまでおかしな部分はないように思う。
奉太郎「すまんが、俺はお前がどの部分に気になっているのか分からん。
直接言えないから手紙を書いた。
思いを伝えるだけでいいから名前は書かなかった。
それだけのことじゃないのか?」
える「いえ、違うんです。
この手紙は、わたしが今まで頂いたものとは全然……」
そこまで言って千反田は、しまった、といった顔で口を閉じた。
そして慌てて言い訳を始める。
える「いえ、あの、違うんです。
わたしは、その……」
奉太郎「お前は男子に人気があるんだな」
よほど知られたくなかったのか、千反田は顔を真っ赤にして俯いてしまった。
この手紙は、わたしが今まで頂いたものとは全然……」
そこまで言って千反田は、しまった、といった顔で口を閉じた。
そして慌てて言い訳を始める。
える「いえ、あの、違うんです。
わたしは、その……」
奉太郎「お前は男子に人気があるんだな」
よほど知られたくなかったのか、千反田は顔を真っ赤にして俯いてしまった。
この学校には随分と古風なことをする男がいるものだと思ったが、
千反田は携帯電話を持っていない。
メール機能という便利なものが使えない以上、
千反田とお近づきになりたい者は直接会いに行くしかない。
それが出来ない奴はこうして手紙を書くことになるわけか。
奉太郎「まあ、お前が何通ラブレターをもらってきたかは聞かんさ。
それで、これはお前が今までもらってきた数々のラブレターと比べてどう違うっていうんだ?」
える「で、でも、ちゃんとお断りしています!」
千反田は携帯電話を持っていない。
メール機能という便利なものが使えない以上、
千反田とお近づきになりたい者は直接会いに行くしかない。
それが出来ない奴はこうして手紙を書くことになるわけか。
奉太郎「まあ、お前が何通ラブレターをもらってきたかは聞かんさ。
それで、これはお前が今までもらってきた数々のラブレターと比べてどう違うっていうんだ?」
える「で、でも、ちゃんとお断りしています!」
奉太郎「そうかそうか。そいつはよかった」
える「あまりからかわないでください……」
奉太郎「ああ、悪かった。
それで、ラブレターなどには縁のないこの俺にこれがどういう風に気になるのか教えてくれないか。
それを聞かないとどうにもならん」
なおも続く俺の軽口に、千反田は顔を赤くしたまま俺を恨めしそうに見てきたが、
自分の好奇心には勝てないと見えて、静かに話し始めた。
える「あまりからかわないでください……」
奉太郎「ああ、悪かった。
それで、ラブレターなどには縁のないこの俺にこれがどういう風に気になるのか教えてくれないか。
それを聞かないとどうにもならん」
なおも続く俺の軽口に、千反田は顔を赤くしたまま俺を恨めしそうに見てきたが、
自分の好奇心には勝てないと見えて、静かに話し始めた。
える「『一身上の都合で』とか『思いを伝えることを許される人間でない』といった部分です。
なんだか、ラブレターにしては少々ものものしいような気がしませんか?
戦争に行く兵隊さんのような、そんな鬼気迫るものがあります。
わたし、この人のことが少し心配です!もしこの人の身に何かあったら!」
戦争へ赴く前に書いた恋文とでも言いたいのか。
戦時中はこんなこともあったかもしれないが、今は現代だ。
確かにあの古風なお屋敷に住んでいると自分がいつの時代に生きているのか分からなくなる気もするが。
なんだか、ラブレターにしては少々ものものしいような気がしませんか?
戦争に行く兵隊さんのような、そんな鬼気迫るものがあります。
わたし、この人のことが少し心配です!もしこの人の身に何かあったら!」
戦争へ赴く前に書いた恋文とでも言いたいのか。
戦時中はこんなこともあったかもしれないが、今は現代だ。
確かにあの古風なお屋敷に住んでいると自分がいつの時代に生きているのか分からなくなる気もするが。
奉太郎「考えすぎだろう。それに今は徴兵制はない。
それだけお前を強く想って書いたっていうことなんだろう。
まったく羨ましいもんだ」
また余計な軽口を叩いてしまう。
自分の言葉に棘が混じるのを感じる。
千反田が少ししゅんとした顔になる。
それだけお前を強く想って書いたっていうことなんだろう。
まったく羨ましいもんだ」
また余計な軽口を叩いてしまう。
自分の言葉に棘が混じるのを感じる。
千反田が少ししゅんとした顔になる。
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