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    元スレ雪歩「ライフ・イズ・ビューティフル」

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    52 = 3 :

    「お客様。動物たちが驚いてしまいますので、店内ではお静かに願います」

    「あ…ご、ごめんなさいぃ…」

    店員さんに怒られながらも、身体の震えが止まらない私

    「だだだ大丈夫だよ雪歩。ちゃんと仕切られてるから飛びかかってはこないよ」

    そう言いながら、同じように震えているプロデューサー

    犬好きな人には理解できないだろうけど…

    怖いものは怖いんですぅ!

    53 :

    ROMってるぞ!紫炎

    56 = 3 :

    その日は結局、5秒以上は目を合わせることができずに終わってしまいました
    あまりにも不甲斐ない結果に、2人とも肩を落としたままトボトボ歩きました

    でも、この日おうちに帰ってから気付いたんです

    「そういえば私、プロデューサーのすぐ側にいたよね」

    って

    出会ってから5ヵ月の間、縮まることのなかった「大股で3歩」の距離
    「吊り橋効果」っていうんでしたっけ、こういうの?

    ペットショップで肩が触れそうなくらい近くにいたプロデューサーのことを思い出しちゃって、その日はなかなか寝付けませんでした

    57 :

    ライフイズビューティホール!

    59 = 3 :

    「おはようございますぅ…」

    次の日、ちょっとだけ寝不足になりながら事務所を訪れました
    中ではプロデューサーと伊織ちゃんが何やらお話し中

    「あんた、本気なの?」

    「ああ、本気だ」

    プロデューサーのあんなに真剣な顔、初めて見ました

    「お、おはようございますぅ…」

    恐る恐る2人に声をかけた私
    そんな私を見るなり、伊織ちゃんが言いました

    「今日からよろしくね、雪歩。ジャンバルジャンはいい子だから大丈夫よ。たぶんね…」

    って

    61 = 3 :

    その日のレッスンを終えて指定された場所に向かうと…

    「萩原雪歩様でございますね?」

    し、新堂さんが悪いんですぅ!
    いきなり声をかけるから、思わずカレー屋さんの看板に隠れちゃいました…

    「失礼いたしました。私、水瀬家で執事をしております。新堂と申します」

    綺麗に整えられた頭髪とお髭、それに燕尾服
    紳士ってこういう人のことを言うんだろうなって、勝手に思っちゃいました

    だけどその手には綱が握られていて、その先には…

    「当家にて飼育しております、ジャンバルジャンルでございます」

    おっきい犬がいました…

    64 = 3 :

    「えっと…えっと…」

    看板に隠れたまま震えている私
    だって仕方無いんですぅ…

    初めて会った男の人と、おっきい犬
    逃げ出さない方がどうかしてますぅ!

    「もう少しでプロデューサー様もお見えになるはずです」

    「お見えになって…その後はどうなるんですか?」

    「はい。本日は私がご一緒致しますが、明日からはお二人にジャンバルジャンの散歩をお任せいたします」

    「えっ!?ふ、2人って…」

    「プロデューサー様とあなた様、でございます」

    貧血を起こしそうになったのは、言うまでもありません…

    66 :

    わっほい

    67 :

    いくらなんでもあのサイズじゃキツいな…

    68 :

    10分ほどして現れたプロデューサーも、ジャンバルジャンを見て明らかに怯んでました
    見ていて分かるくらい、「ビクッ!」ってしてましたから…

    「ではお二人とも、参りましょうか」

    悠然と歩き出した新堂さんとジャンバルジャン
    その後ろにコソコソと着いていく私とプロデューサー

    「ルートはジャンバルジャンが覚えておりますので、汚物の処理だけお願いいたします。無論、明日からですが」

    「はい…」

    「はいぃ…」

    どんなに厳しいレッスンも、この特訓に比べたら可愛いものでした…

    70 :

    早くもスカに進むか。進度すごいな

    71 = 68 :

    「プ、プロデューサー?」

    「ど、どうした雪歩?」

    夕焼けに染まる街並の中を相変わらずコソコソ歩きながら、プロデューサーに確認しました

    「ほ、ホントに明日から2人で…?」

    「し、仕方ないだろ! あんなにデカいとは思わなかったんだから!」

    ジャンバルジャンの大きなお口…
    うぅ…
    あんなお口で噛まれたら、私の身体の1/3くらい持っていかれちゃいますぅ…
    そ、そうだよね! やられる前に埋めちゃおう!

    「全部聞こえてるからな、雪歩…」

    72 = 68 :

    「やっぱり、もう少し小さな犬から始めた方が…」

    「そ、それはダメだ! 伊織に何て言われることやら…」

    「何て言われちゃいますか?」

    「男のクセに…かなぁ?」

    「私は女ですぅ!」

    その声に反応したジャンバルジャンが、私の方へ視線を移しました

    「ッ………!」

    目が合っちゃいました…
    全身鳥肌ですぅ…
    ぜったいムリですよぅ…

    74 = 68 :

    「大丈夫!」

    「…何がですか?」

    「手綱は俺が持つ!」

    「で、でも、プロデューサー…」

    「お、俺がやらないと説得力無いからな!」

    小刻み震えながら宣言したプロデューサー
    頼りがいがあるだなんて言えないけど…

    ちょっとだけ、「私も頑張ってみよう」って、そう思えました

    77 = 68 :

    次の日からはホントに2人でお散歩…
    のハズだったんですけど、心配した真ちゃんが着いてきてくれたんですぅ!

    「おっ! キミがジャンバルジャンだね? よろしくね!」

    出会ってから10秒もしないうちにじゃれ合ってる、真ちゃんとジャンバルジャン

    さすが真ちゃんだよ!
    犬と遊んでるだけであんなにカッコいいなんて!
    あのときコッソリ撮った写メ、まだ持ってからね!!!

    「助かった…」

    そう呟いてたプロデューサーのことも、ちゃんと覚えてますからね?

    79 = 68 :

    「大変だったんですよ? 美希が、『ミキも着いていくのー!』って言い出しちゃって」

    「ははは。美希は真のことが大好きだからな」

    「ちょっと持て余しちゃうこともありますけどね。だけど、大事な仲間ですよ!」

    ふーん…
    ふーん!
    そうですかぁ!

    「どうしたの雪歩? 怖い顔して?」

    「な、何でもないよぅ!」

    ヤキモチとかじゃないですよ?
    ホ、ホントに違いますから!

    80 :

    眠れねえ・・・

    81 = 66 :

    眠い……

    82 = 68 :

    3人と1匹で歩きながら、いろんなことを話しました
    犬嫌いになった理由、初恋の話、それから、理想のアイドル像

    少し冷たくなった夕暮れどきの風も、ぜんぜん気になりませんでした

    「そうそう。明日はやよいが来てくれるみたいです。その次は真美が亜美が」

    「そっか。みんな協力してくれるんだな」

    「雪歩の初仕事のためですから! みんな喜んで協力しますよ!」

    そして私に向けられた、2つの笑顔
    どちらもとっても優しくて…

    案の定、泣いちゃいました
    それは765プロに入ってから初めての、嬉し涙でした

    85 = 68 :

    真ちゃんが言ってた通り、次の日はやよいちゃんが来てくれました
    その次の日は亜美ちゃんと真美ちゃん
    次の次の日は春香ちゃん

    「初めてのお仕事を成功させてほしいから」

    みんなにそう言われるたびに泣いてしまった私
    だけど、嬉し涙は恥ずかしくなんてないですよね?

    その後何度も流すことになる嬉し涙
    あるときは1人で、あるときはみんなで…

    そのたびに、みんなとジャンバルジャンを散歩させたときのことを思い出しました
    そして、次に嬉し涙を流すときも、きっと…

    86 = 68 :

    「さ、触れた…触れましたぁ!」

    散歩開始から10日目
    ついに私は、ジャンバルジャンの頭を撫でることに成功しました!

    「ふふ…おめでとう、萩原さん」

    その日付き添ってくれていた千早ちゃんも、一緒に喜んでくれました
    千早ちゃんらしく控えめな喜び方だったけど、やっぱり嬉しかったですぅ!

    「良かったな、雪歩」

    「はい! プロデューサーに2日遅れちゃいましたけど」

    「ははは。別に競争じゃないからな?」

    えへへ
    私、意外と負けず嫌いなんですよ?

    88 = 68 :

    最後の日。つまり、撮影の前日
    その日はプロデューサーと2人でお散歩させました
    私は結局、手綱を握ることは出来なかったけど…

    「雪歩は本番に強そうだから大丈夫!」

    プロデューサーはそう言って励ましてくれました
    そしてこの頃には、プロデューサーと並んで歩くことが自然になっていました

    男の人と並んで、犬のお散歩…
    5ヵ月前の自分からは想像もできない光景
    そこには、少しずつ変わり始めている私がいました

    89 :

    次は俺の狂犬にもなれてもらおうかボロン

    90 = 66 :

    91 = 68 :

    「半月もの間、お疲れ様でございました」

    いつも場所で新堂さんにジャンバルジャンを返しながら、プロデューサーは少し寂しそうでした

    「ふふ。名残惜しいですかな?」

    「はい…」

    「いつでも遊びにお越しください。ジャンバルジャンともども、歓迎いたします」

    ジャンバルジャンルを乗せた車を見送りながら、私も名残惜しい気持ちでいっぱいでした
    今度会うときにはもっと仲良くなれるかなぁ、って

    だけど、初めてイヌ美ちゃんを見たときは逃げちゃいました
    だってジャンバルジャンよりもおっきいんだもん…

    92 = 68 :

    「よし、帰るか! 明日に備えてゆっくり休んでくれ!」

    「は、はいぃ…」

    「どうした? まだ不安か?」

    ネガティブでごめんなさい…
    いまでもそうだけど、いろんな事を考えちゃうんです…

    失敗したらどうしよう、スタッフさんたちに迷惑をかけたらどうしよう、って
    このときは初仕事の前日だったから、なおさらでした

    93 :

    >>89
    引き千切るぞ

    94 :

    >>89
    随分可愛らしい子犬だな

    95 = 68 :

    「…雪歩」

    「えっ?」

    俯いている私に、プロデューサーが右手の小指を差し出しました

    「願掛けだよ」

    そう言って、あの優しい笑顔を向けてくれました

    「…はい」

    小さく震える小指をプロデューサーの小指に絡めて、それから…

    うぅ…
    正直に言うと、あまり覚えてないんですぅ…
    だって、初めてお父さん以外の男の人に触れたんですから!

    96 = 68 :

    そして撮影当日
    用意されてたワンちゃんは、ジャンバルジャンの1/5くらいの大きさのチワワでした

    「こ、これなら大丈夫そうですぅ!」

    「よし! 頑張ってな!」

    スタッフさんから手綱を受け取ってリハーサル開始
    演技といっても5秒くらい歩くだけなんですけど…
    緊張し過ぎて3回も失敗しちゃいました…

    ワンちゃんにまでため息をつかれてるように思えたのは、きっと気のせいですよね…?

    98 = 68 :

    「次は本番だぞ。しっかりな」

    「はいぃ…」

    「雪歩」

    そう言って小指を立てたプロデューサー

    「…はい。小指ですね!」

    本番の撮影1回目
    私は手綱を握った右手の小指を見つめながら歩きました

    「願掛け…願掛け…」

    口の中で何度も呟きながら、小指を見つめて
    いまでも緊張したときはそうしてるんですよ?
    知らなかったでしょ、プロデューサー?
    えへへ…

    99 = 68 :

    「ハイ、オッケーです!」

    このお仕事を初めて最初の「オッケー」
    何だそんなのって言う人もいるかもしれないけど…
    私にとっては、大事なことだったんです
    大げさかもしれないけど

    「この仕事続けても良いよ」

    って、そう言われた気がしました

    「お疲れさま、雪歩!」

    「プロデューサー…」

    緊張が弛んで泣き出してしまった私
    これはちょっと恥ずかしいかもですぅ…

    だけどプロデューサーは、そんな私の頭を撫でてくれました

    「頑張ったな、雪歩」

    って、優しく、優しく…


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