元スレ雪歩「ライフ・イズ・ビューティフル」
SS覧 / PC版 /みんなの評価 : ★
1 :
代行です
3 :
「ひょっとして……ナ、ナンパ屋さんですか!?」
今でも良く覚えています
これがプロデューサーと交わした、最初の言葉
そう言われたプロデューサーは、戸惑ったような表情でアタフタしてましたっけ
だけど仕方ないですよね?
街を歩いていたら、いきなり後ろから声をかけらたんですから
私、思わずお父さんに電話しちゃうとこだったんですよ?
そっか…
あれから5年も経つんですね
私、今でも覚えてますよ?
「俺、今日から765プロでプロデューサーをやらせて貰うことになりました」
プロデューサーからそう言われたときの、胸のドキドキを
4 = 1 :
頑張れ
6 :
もしや3人目……?期待
7 = 3 :
あれは高校2年生の6月
梅雨入りして間もない、蒸し暑い日でした
プロデューサーと2人で事務所まで歩いている間、いろんなこと考えてたんですよ?
「優しい人だといいなぁ」とか、いろんなことを
もちろん、「大股で3歩」の距離は保ったままでしたけど
プロデューサーはそんな私を何度も振り返って
「歩くの早い?大丈夫?」
って聞いてくれました
「大丈夫ですぅ……」
自分でもやっと聞き取れるくらいの小さな返事にも、プロデューサーは優しく笑ってくれました
いまと同じように、優しく、優しく
8 :
やっときたか
楽しみにしてたぞ
9 = 3 :
「おかえり雪歩! プロデューサーさんもおかえりなさい!」
事務所に帰ると、春香ちゃんが元気に出迎えてくれました
その頃の765プロには、春香ちゃん、千早ちゃん、伊織ちゃん、美希ちゃん、あずささん、律子さん、それから私の7人しかいなかったんですよ?
その7人もまだまだ候補生で、厳しいレッスンを積みながら、デビューする日を心待ちにしていました
そんな時期に現れた待望のプロデューサー
みんなすっごくテンションが上がってました
もちろん私もですよ?
プロデューサーは気付いてなかったかもしれませんけど
いまと同じで鈍感でしたから!
10 :
今度は雪歩か
期待
12 = 3 :
「おや、雪歩君も戻ったようだね。それではあらためて紹介しよう!」
社長に促されて照れくさそうに挨拶したプロデューサー
ああいうときはもっとビシッとしてなきゃダメなんですよ?
だけど、たどたどしく決意表明しているプロデューサーに、みんなが好感を持ったのは確かです
「あぁ、この人もまだまだ候補生なんだぁ」
って
1人のプロデューサー候補生と7人のアイドル候補生
上手くやっていけそうだって、そのときに確信しました
ウ、ウソじゃないですぅ!
16 = 3 :
次の日からは、プロデューサーもレッスンに同行してくれるようになりました
やっぱり、チェックしてくれる人がいると空気が引き締まります
美希ちゃんからはレッスン終了後に
「ちょっとそこの人? ミキ、ジュース飲みたい」
って言われてましたけど
ああいうときもビシッと言わなきゃダメなんですよ?
…律子さんみたいに
「ミ、ミキ、自分で買ってくる!」
頭を押さえた美希ちゃんが自動販売機の方に走って行くのを、みんなで苦笑いしながら見てたっけ
17 = 3 :
梅雨が明けて夏本番を迎えたころ、765プロに新しい仲間が増えました
「高槻やよいですぅ!」
夏のお日さまみたいなやよいちゃんの笑顔
最初に声をかけたのは伊織ちゃんでした
「み、水瀬伊織よ! 分からないことがあったら遠慮なく声をかけてちょうだい」
えへへ
伊織ちゃんがやよいちゃんに優しいのは、あの頃から同じだね
18 :
いいね
19 :
うむ
20 = 3 :
「双海真美だよ!」
「同じく、双海亜美!」
私、本物の双子さんを見たのはこのときが初めてだったんですぅ!
感想は…
「ふわぁ…そ、そっくり…」
って…
うぅ…
情けない感想でごめんなさいぃ…
「左で髪を束ねてるのが真美だよ! ねっ、亜美?」
「そうそう! 『右亜美、左真美』って覚えてよねっ、おねーちゃんたち!」
…いまだに間違えちゃうのは内緒ですぅ
21 = 3 :
10人に増えた765プロ
レッスンは徐々にキツくなっていきましたけど、新しく加入した3人のおかげで張り合いも生まれました
亜美ちゃんと真美ちゃんは当時小学校6年生、やよいちゃんは中学1年生
「年少の3人には負けられない!」
って、私でも気合い入っちゃいましたから!
そうそう
亜美ちゃんと真美ちゃんから「とっても可愛い」ニックネームを付けられたのはこの頃でした
『ゆきぴょん』って…
24 = 3 :
高校2年生の8月
夏休みの課題を終わらせて事務所に向かいました
入り口のドアの前に立つと、中からは美希ちゃんがはしゃいでいる声
「ねぇねぇ! 真君って呼んでもいい?」
私にとっての、もう1人の「運命の人」
真ちゃんとの出会い
私、ちゃんと日付まで覚えてるんだよ?
あれは8月2日
その日はね…
私の人生が、また1つ豊かになった日なんだよ?
えへへ…
26 = 3 :
「はじめまして! 今日からお世話になる菊地真です!」
「は、萩原雪歩ですぅ…」
…正直に言うと、ちょっと見とれちゃいました
真ちゃんが高校の制服を着ていなかったら、男の子だと勘違いしちゃったかも
「えっと…ボク、いちおう女だからね? 制服着てるのは補講があったからで、そういう趣味なわけじゃないからね?」
「だ、大丈夫だよ!」
何が大丈夫なのか自分でも分からなかったけど、全力で取り繕った私
あのときの真ちゃんもカッコ良かったなぁ…
28 = 3 :
「えっと…」
真ちゃんに見とれてる私を見ながら、ちょっと困惑した様子のやよいちゃん
「どうしたのやよい?」
そんなやよいちゃんをいつものように気遣う伊織ちゃん
「えっと…雪歩さんて…」
「わ、私? どうしたのやよいちゃん?」
やよいちゃんの何を切り出すのか、みんなの注目が集まります
「雪歩さんて…雪歩さんて、『はぎわらさん』だったんですね!」
「えっ!?」
「私、いままで『おぎわらさん』だって思ってましたぁ!」
31 = 3 :
うぅ…
私、出会ってから約1ヶ月の間、やよいちゃんの中で『おぎわらゆきほ』だったみたいですぅ…
「まったく、やよいらしいわね」
そう言いながら笑ってた伊織ちゃん
わ、笑い事じゃないよぅ!
『おぎわら』だったら出席番号が前の方になっちゃうんだから!
そしたら…入学式とか卒業式の席順も前の方になって…
名前呼ばれるのも前の方で…
うぅ…
やっぱり『はぎわら』が良いよぅ…
33 = 3 :
その年の夏休みが終わって間もないころ
765プロに吉報がもたらされました
「いよいよ動き出した!」
と言うべきかもしれません
「みんな聞いてくれ!」
事務所に駆け込んできたプロデューサーが、荒い息使いのまま声を張り上げました
その声に吸い寄せられるように、プロデューサーの周りに集まった私たち
そんな私たちをゆっくりと見回したあと、プロデューサーが言いました
「あずささんと千早、そして美希のデビューが決まったぞ!」
35 = 3 :
「デビュー…ですか…?」
呆然とした様子で小さく呟いたあずささん
千早ちゃんと美希ちゃんも、同じような表情でプロデューサーを見つめていました
ああいう顔を、「キツネにつままれたような顔」って言うんだと思います
「はい、デビューです! 小さな仕事かもしれませんけど、みんなにとって初めての、『アイドルとしてギャラを貰う』仕事です!」
「アイドルとしてギャラを貰う」
ひょっとしたら私たちは、あのときプロデューサーに言われて初めて気付いたのかもしれません
少なくとも、私はそうでした
アイドルは職業なんだ、ただのきれい事じゃなく、お給料をもらうものなんだ、って
38 = 3 :
私がアイドルを目指した理由
それは、「自分を変えたかったから」
ウジウジしている自分が嫌で…
情けない自分が嫌で…
ひんそーでちんちくりんな自分が嫌で…
アイドルとして頑張っていれば、少しは自分に自信が持てるかもしれない…
私のそんな甘い考えを、プロデューサーの言葉でひっぱたかれたような気がしました
私だけじゃなく、他のみんなもそうだったんじゃないかって思います
次の日のレッスンから、みんなの目の色が変わってましたから
39 = 3 :
あずささんは通販雑誌のモデル、千早ちゃんは有名アイドルの前座、美希ちゃんは学園ドラマの生徒役
確かに小さなお仕事かもしれないけど、ステップアップには違いありません
「頑張っていれば私にも…」
そう思わせてくれるには十分でした
「では、行ってきますね」
そう言って初めてのお仕事に向かったあずささんの姿が、とっても眩しく映りました
40 = 3 :
すっかり秋めいてきた11時
私にもついに、その時が訪れました
レッスンの休憩中にプロデューサーからかかってきた電話
『雪歩! 仕事決まったぞ!』
私、思わず飛び上がっちゃいました
「ほ、ホントですかぁ!? 私にですよね? 間違えてませんよねっ?」
『お前にだよ、萩原雪歩!!!』
このときが、私が『アイドル』になった瞬間だったのかもしれません
一緒に休憩していた真ちゃんとやよいちゃんも、まるで自分のことのみたいに喜んでくれました
42 = 3 :
ただ、そのお仕事には…
深刻な…
極めて深刻な問題がありました…
『仕事内容はドッグフードのCMだ』
「…え?」
『雪歩は犬を散歩させてる女の子を演じてもらう。ちゃんと訓練されてる犬だから、犬の方が演技上手いかもな。あはは』
うぅ…
このときはまだ、誰にも言ってなかったんですぅ…
「あの…ですね、プロデューサー…」
『ん? どうした、暗い声出して?』
「私…私、犬はダメなんですぅ!」
『えっ!?』
横にいた真ちゃんとやよいちゃんも、プロデューサーと同じ反応してました…
44 = 3 :
レッスンを終えて事務所に帰ると、険しい顔のプロデューサーが待っていました
「ただいま戻りました…」
「お疲れさん」
「あの…私…」
「怒るつもりは無いんだが…ああいうことはもっと早く言ってくれなきゃ」
「はい…ごめんなさい…」
本気で穴掘って埋まりたくなったのは、このときが初めてだったかもしれません…
45 = 19 :
ふむ
47 = 3 :
「まぁ…あれだ。気持ちは分かる」
「え? それはどういう…?」
私から目をそらしたプロデューサーは、窓の外を見ながら言いました
「俺も苦手なんだ、犬」
このときのプロデューサーの顔、いまでもハッキリと覚えてます
悪戯をして叱られた男の子みたいな、何となく恥ずかしそうな、そしてバツの悪そうな顔
いまでも同じ顔するときがあるんですよ?
もちろん、私に叱られたときにです。えへへ
49 = 3 :
「せっかくのオファーを断るわけにはいかない。それもこちらの勝手な理由で。分かるな?」
「はい…」
「撮影までにあと半月ほどある。それまでに犬嫌いを克服してもらう! 多少なりともな!」
「え、えぇ!? むむむ無理ですぅ!!!」
私、もう少しで逃げ出しちゃうところでした
だけどプロデューサーは、いつもみたいに優しく笑いながら言ってくれたんです
「俺も付き合うよ、雪歩に」
って
50 = 3 :
次の日の仕事終わり
私とプロデューサーは小さなペットショップを訪れました
もちろん、犬を飼い始めるためじゃありません
プロデューサーの
「最初は目を合わせるところから始めよう」
っていう提案を実行するためです
透明なアクリルで仕切られた向こう側は、10部屋ほどに区切られていました
その1部屋1部屋にはもちろん…
「い、犬ぅ!!!」
あのときのワンちゃんたち、ビックリさせてごめんなさいでした…
みんなの評価 : ★
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