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勅使河原「あっ、そういえば携帯があった。あいつの番号知ってるよ、ったくなんで今更思いだすもんか……」ピッ
プルルルル... プルルル...
見崎「……ねえ、着信音、聞こえない?」
勅使河原「あっ? いや俺は受話機に耳を……そっか、離せばいいだけか」スッ
プルルル... プルルル... ガサッガサガサッ
勅使河原「本当だ、でも、森の方から……」
ガサガサッ バァッ
古畑「ふぅ。何してんの、こんなとこで」
勅使河原「うわっ、お、お前こそ茂みなんかから出て来るなよ!」
見崎「やっぱり三神先生の事件、気になってたんだ」
古畑「ですねえ。昨日から図書館を回って記事を探ったり色々と」
勅使河原「でもさ、一年経ってるんだろ? 悪いけど……」
古畑「いや、なんとなくあらましはつかめてるんだ」
勅使河原「あらまし?」
プルルルル... プルルル...
見崎「……ねえ、着信音、聞こえない?」
勅使河原「あっ? いや俺は受話機に耳を……そっか、離せばいいだけか」スッ
プルルル... プルルル... ガサッガサガサッ
勅使河原「本当だ、でも、森の方から……」
ガサガサッ バァッ
古畑「ふぅ。何してんの、こんなとこで」
勅使河原「うわっ、お、お前こそ茂みなんかから出て来るなよ!」
見崎「やっぱり三神先生の事件、気になってたんだ」
古畑「ですねえ。昨日から図書館を回って記事を探ったり色々と」
勅使河原「でもさ、一年経ってるんだろ? 悪いけど……」
古畑「いや、なんとなくあらましはつかめてるんだ」
勅使河原「あらまし?」
古畑「本当はね、怜子さんを殺した犯人を捕まえてやろうと思ったんだけど、たぶん無理なんじゃないかと思えてきた」
勅使河原「はぁ? なにいって……」
見崎「……どういうこと?」
古畑「うーん、説明はまず私たちと同じことを考えてる人を待ってから……」
勅使河原「? あっ……」
タッタッ...
望月「はぁ、はぁ……やっぱり、皆いたんだ」
古畑「御苦労さま」ナデナデ
望月「わっ、やめてってば!」ジタバタ
勅使河原「無神経なんだかなんなんだか……」
見崎「……」ハァ
勅使河原「はぁ? なにいって……」
見崎「……どういうこと?」
古畑「うーん、説明はまず私たちと同じことを考えてる人を待ってから……」
勅使河原「? あっ……」
タッタッ...
望月「はぁ、はぁ……やっぱり、皆いたんだ」
古畑「御苦労さま」ナデナデ
望月「わっ、やめてってば!」ジタバタ
勅使河原「無神経なんだかなんなんだか……」
見崎「……」ハァ
これで怜子殺害犯が捕まれば綺麗な解決編になりそうだが、果たして・・・
勅使河原「まあいいや、説明してもらおうか」
古畑「んー、まず夜見山川には橋が二つかかってる。二つとも山と町をつなぐ形でかかっていて」
古畑「学校に近い方と遠い方とでもしておこうか」
古畑「このダムは遠い方の橋に建設されている。渡ったとしてもあとは山に続くだけの橋」
古原「まずここでひっかかるんだよ。怜子さんはなんでこんなところに来たのか、ってね」
勅使河原「……ん? どういうことだ?」
古畑「……」ベシッ
勅使河原「てっ!」
古畑「んー、まず夜見山川には橋が二つかかってる。二つとも山と町をつなぐ形でかかっていて」
古畑「学校に近い方と遠い方とでもしておこうか」
古畑「このダムは遠い方の橋に建設されている。渡ったとしてもあとは山に続くだけの橋」
古原「まずここでひっかかるんだよ。怜子さんはなんでこんなところに来たのか、ってね」
勅使河原「……ん? どういうことだ?」
古畑「……」ベシッ
勅使河原「てっ!」
見崎「さっき古畑君の家に行ったでしょ。それに比べればここは明後日の方向じゃない」
古畑「その通り。こっちは学校から夜見山川にそって南に行った所にあるけれど」
古畑「怜子さんの家は学校から西の坂を下った先の町の外れ」
古畑「橋を渡って山にある病院に行く可能性もあるけれど」
古畑「じゃあなんで学校に近い橋を選ばないのかって話になる」
望月「そもそも、学校からここに来たの? ここから北へ学校に向かったんじゃなくて?」
古畑「平日の夕方に事件が起きてるし、遺体の恰好もよそゆきのものだったみたいだ」
古畑「学校からここに来たとみていいだろう」
古畑「その通り。こっちは学校から夜見山川にそって南に行った所にあるけれど」
古畑「怜子さんの家は学校から西の坂を下った先の町の外れ」
古畑「橋を渡って山にある病院に行く可能性もあるけれど」
古畑「じゃあなんで学校に近い橋を選ばないのかって話になる」
望月「そもそも、学校からここに来たの? ここから北へ学校に向かったんじゃなくて?」
古畑「平日の夕方に事件が起きてるし、遺体の恰好もよそゆきのものだったみたいだ」
古畑「学校からここに来たとみていいだろう」
勅使河原「うーん……じゃあ、生徒の家がこの近くにある、とか」
古畑「橋を渡った先に家はほとんど建ってないし、一応名簿を調べてはみたけど」
古畑「山の方に住んでる生徒は3組にいなかった」
古畑「かといって橋沿いのこの道路は森が密集してるだけで家なんて一軒もないでしょ」
古畑「もっとも、この橋沿いの道路を渡った先の住宅地には数人生徒が済んでたらしいんだけど」
古畑「だとしたら車で来てないのが不思議なんだよ」
古畑「学校から住宅地まで2、3kmほどあるっていうのに」ポンポン
勅使河原「えっ? 三神先生、徒歩で来てたのか?」
古畑「車は周りにはなかったそうだ」
古畑「そもそも怜子さんが自分でここに来たんではなくて、犯人が殺した後でここに投げ込んだ、っていう線もあるけど」
古畑「怜子さんに外傷はなかったらしいんだよ。睡眠薬なんかを使ってる線もあるだろうけど」
古畑「通り魔程度がなんでそこまでまわりくどいことをする必要があるんだか」ポンポン
古畑「橋を渡った先に家はほとんど建ってないし、一応名簿を調べてはみたけど」
古畑「山の方に住んでる生徒は3組にいなかった」
古畑「かといって橋沿いのこの道路は森が密集してるだけで家なんて一軒もないでしょ」
古畑「もっとも、この橋沿いの道路を渡った先の住宅地には数人生徒が済んでたらしいんだけど」
古畑「だとしたら車で来てないのが不思議なんだよ」
古畑「学校から住宅地まで2、3kmほどあるっていうのに」ポンポン
勅使河原「えっ? 三神先生、徒歩で来てたのか?」
古畑「車は周りにはなかったそうだ」
古畑「そもそも怜子さんが自分でここに来たんではなくて、犯人が殺した後でここに投げ込んだ、っていう線もあるけど」
古畑「怜子さんに外傷はなかったらしいんだよ。睡眠薬なんかを使ってる線もあるだろうけど」
古畑「通り魔程度がなんでそこまでまわりくどいことをする必要があるんだか」ポンポン
勅使河原「うーん……じゃあ、生徒の家がこの近くにある、とか」
古畑「橋を渡った先に家はほとんど建ってないし、一応名簿を調べてはみたけど」
古畑「山の方に住んでる生徒は3組にいなかった」
古畑「かといって橋沿いのこの道路は森が密集してるだけで家なんて一軒もないでしょ」
古畑「もっとも、この橋沿いの道路を渡った先の住宅地には数人生徒が済んでたらしいんだけど」
古畑「だとしたら車で来てないのが不思議なんだよ」
古畑「学校から住宅地まで2、3kmほどあるっていうのに」ポンポン
勅使河原「えっ? 三神先生、徒歩で来てたのか?」
古畑「車は周りにはなかったそうだ」
古畑「そもそも怜子さんが自分でここに来たんではなくて、犯人が殺した後でここに投げ込んだ、っていう線もあるけど」
古畑「怜子さんに外傷はなかったらしいんだよ。睡眠薬なんかを使ってる線もあるだろうけど」
古畑「通り魔程度がなんでそこまでまわりくどいことをする必要があるんだか」ポンポン
古畑「橋を渡った先に家はほとんど建ってないし、一応名簿を調べてはみたけど」
古畑「山の方に住んでる生徒は3組にいなかった」
古畑「かといって橋沿いのこの道路は森が密集してるだけで家なんて一軒もないでしょ」
古畑「もっとも、この橋沿いの道路を渡った先の住宅地には数人生徒が済んでたらしいんだけど」
古畑「だとしたら車で来てないのが不思議なんだよ」
古畑「学校から住宅地まで2、3kmほどあるっていうのに」ポンポン
勅使河原「えっ? 三神先生、徒歩で来てたのか?」
古畑「車は周りにはなかったそうだ」
古畑「そもそも怜子さんが自分でここに来たんではなくて、犯人が殺した後でここに投げ込んだ、っていう線もあるけど」
古畑「怜子さんに外傷はなかったらしいんだよ。睡眠薬なんかを使ってる線もあるだろうけど」
古畑「通り魔程度がなんでそこまでまわりくどいことをする必要があるんだか」ポンポン
望月「周到にやっているとしたら怨恨、だよね」
古畑「怨恨なら死体を川に放り投げるっていうのが気にかかる。隠すなら近くに山があるっていうのに」
古畑「そもそも死体や気を失っている体って相当重いんだよ。大人一人でも放り投げるには厳しい」
古畑「複数犯なら難なくできるだろうけど、見崎さんの証言によると単独犯だそうだし」
見崎「……そうね」
古畑「それから本当に犯人が不敵に笑ったっていうなら怨恨と結びつきづらい」
古畑「あわてて逃げるか見崎さんを殺してしまうか」
勅使河原「……じゃあ見崎がなんで生き残ったのか、っていう謎も出来るな」
古畑「見つかっても露見しない、という確信があったんじゃないかなぁ」
古畑「まぁ、それは後々の推理でわかってくるよ」
古畑「怨恨なら死体を川に放り投げるっていうのが気にかかる。隠すなら近くに山があるっていうのに」
古畑「そもそも死体や気を失っている体って相当重いんだよ。大人一人でも放り投げるには厳しい」
古畑「複数犯なら難なくできるだろうけど、見崎さんの証言によると単独犯だそうだし」
見崎「……そうね」
古畑「それから本当に犯人が不敵に笑ったっていうなら怨恨と結びつきづらい」
古畑「あわてて逃げるか見崎さんを殺してしまうか」
勅使河原「……じゃあ見崎がなんで生き残ったのか、っていう謎も出来るな」
古畑「見つかっても露見しない、という確信があったんじゃないかなぁ」
古畑「まぁ、それは後々の推理でわかってくるよ」
今回は読者への挑戦みたいなのが無いなぁと思ってたら別人だったのか
全く気づかなかった
全く気づかなかった
見崎「……残るは、三神先生が誰かに誘い込まれた上でここにきて、殺された」
古畑「まさしく」
望月「……だよね、もう、それしかない」
古畑「となるとねえ、まっさきに浮かぶのは怜子さんの馴染みの友人」
古畑「でも馴染みの友人だったら簡単に洗い出せるところだから、とっくに捕まっててもいいはずなんだ」
見崎「……あと残るのは……」
古畑「学校帰りの恰好でも問題なく会える人間を探ると、自ずと学校関係者が残る」
古畑「あとは、せいぜい怜子さんが余所で気を置きながらも付き合っていた人間が残る程度」
古畑「といっても、こんな場所に徒歩で呼び寄せるなんて怪しむのが普通。よほど信頼していた生徒か知り合いか」
古畑「あるいは弱みでも握られていたか、もしくは負い目でも感じていたか」
勅使河原「……」ゴクリ
望月「……」
古畑「まさしく」
望月「……だよね、もう、それしかない」
古畑「となるとねえ、まっさきに浮かぶのは怜子さんの馴染みの友人」
古畑「でも馴染みの友人だったら簡単に洗い出せるところだから、とっくに捕まっててもいいはずなんだ」
見崎「……あと残るのは……」
古畑「学校帰りの恰好でも問題なく会える人間を探ると、自ずと学校関係者が残る」
古畑「あとは、せいぜい怜子さんが余所で気を置きながらも付き合っていた人間が残る程度」
古畑「といっても、こんな場所に徒歩で呼び寄せるなんて怪しむのが普通。よほど信頼していた生徒か知り合いか」
古畑「あるいは弱みでも握られていたか、もしくは負い目でも感じていたか」
勅使河原「……」ゴクリ
望月「……」
勅使河原「そ、そうだ、見崎っ! 見崎が覚えてるって、言ってたよな? それで大体わかるんじゃ……」
見崎「……ごめんなさい。なにせ、一年半も前のことだから、光景自体はほとんど」
勅使河原「そっか……」
見崎「でも、白いシャツを着ていた、覚えはある」
古畑「ん~、それだけでは何とも言えないのが残念なところです」
古畑「恰好によって目撃者を混乱させるなどよくある話ですから」
望月「……でも、学校関係者の線は確実なんでしょ?」
古畑「まだ有力候補、一番手に来たという程度だよ。落ち着きなさい」ナデナデ
望月「うっ……」
勅使河原「……学校関係者と仮定するとしてだ、ますます捕まらないのがわからなくなってくるよな」
古畑「一つ逃げ道があるじゃない」
勅使河原「えっ……あっ、お偉いさんが親に……」
古畑「……」ベシッ
見崎「……ごめんなさい。なにせ、一年半も前のことだから、光景自体はほとんど」
勅使河原「そっか……」
見崎「でも、白いシャツを着ていた、覚えはある」
古畑「ん~、それだけでは何とも言えないのが残念なところです」
古畑「恰好によって目撃者を混乱させるなどよくある話ですから」
望月「……でも、学校関係者の線は確実なんでしょ?」
古畑「まだ有力候補、一番手に来たという程度だよ。落ち着きなさい」ナデナデ
望月「うっ……」
勅使河原「……学校関係者と仮定するとしてだ、ますます捕まらないのがわからなくなってくるよな」
古畑「一つ逃げ道があるじゃない」
勅使河原「えっ……あっ、お偉いさんが親に……」
古畑「……」ベシッ
古畑「この学校限定の逃げ道だよ」
見崎「……死者が、三神先生を殺した?」
望月「そっか! 殺したヤツが三神先生を死者だと思ってそれで」
勅使河原「あっ、見つかってもバレない、ってのはそういうことか……」
古畑「動機はハッキリとしないよ。そもそも推測だ」
古畑「おまけに見崎さんが左目で見ていれば推理はどちらにせよ必要ない」
見崎「……いいえ、見ていないわ。そもそも、眼帯を外す余裕もなかった」
見崎「ただ立ちすくんで見ているだけで、精一杯。不敵に笑われた時は、すぐに逃げてしまった……」
見崎「……死者が、三神先生を殺した?」
望月「そっか! 殺したヤツが三神先生を死者だと思ってそれで」
勅使河原「あっ、見つかってもバレない、ってのはそういうことか……」
古畑「動機はハッキリとしないよ。そもそも推測だ」
古畑「おまけに見崎さんが左目で見ていれば推理はどちらにせよ必要ない」
見崎「……いいえ、見ていないわ。そもそも、眼帯を外す余裕もなかった」
見崎「ただ立ちすくんで見ているだけで、精一杯。不敵に笑われた時は、すぐに逃げてしまった……」
古畑「それだけ鮮明な体験をしたにもかかわらずほとんど覚えていらっしゃらないということは、ですよ」
古畑「もしや、死者が死に還ったと共に見崎さんの記憶が失われた可能性もある」
古畑「現象の実態がどこまでのものか、いまだ把握できておりませんから確証はありませんし」
古畑「うっすらながらおぼえている、というのがあやしいところです」
見崎「……この左目で、過去の3組の死者を見たら、思いだせる可能性はあるかも」
望月「じゃあっ」
見崎「けれど、割り出せたとしても、意味はないでしょうね」
望月「な、なんで……」
見崎「わかったところでどうするの? 一度死んで、もう一度現象の気紛れによって蘇って」
見崎「災厄のせいで操り人形になってしまった末に三神先生を殺してしまったのかもしれない生徒を、責められるの?」
望月「あっ……」タジッ
古畑「もしや、死者が死に還ったと共に見崎さんの記憶が失われた可能性もある」
古畑「現象の実態がどこまでのものか、いまだ把握できておりませんから確証はありませんし」
古畑「うっすらながらおぼえている、というのがあやしいところです」
見崎「……この左目で、過去の3組の死者を見たら、思いだせる可能性はあるかも」
望月「じゃあっ」
見崎「けれど、割り出せたとしても、意味はないでしょうね」
望月「な、なんで……」
見崎「わかったところでどうするの? 一度死んで、もう一度現象の気紛れによって蘇って」
見崎「災厄のせいで操り人形になってしまった末に三神先生を殺してしまったのかもしれない生徒を、責められるの?」
望月「あっ……」タジッ
古畑「その生徒が、果たしていかなる動機をもって死んでいったのかは見当もつきませんし……」
古畑「……いや、それよりこんな滅茶苦茶な推理を振りまわしている方が問題でしょうかね」
古畑「いずれにせよ、もう証拠もまともに残っていないし、私達に出来るのはここまででしょう」
古畑「あとは、警察に任せた方が良い」
望月「そんな……」ガクッ
見崎「……」
古畑「……いや、それよりこんな滅茶苦茶な推理を振りまわしている方が問題でしょうかね」
古畑「いずれにせよ、もう証拠もまともに残っていないし、私達に出来るのはここまででしょう」
古畑「あとは、警察に任せた方が良い」
望月「そんな……」ガクッ
見崎「……」
墓地
勅使河原「なあニン、本当によかったのか、あれで?」
古畑「……良いか悪いか、だったらまったく分からない。怜子さんのためになるとも言えるし、ならないとも言える」
古畑「結局生きている人間が勝手に決めるしかないんだよ。死者は、何も語りはしない」
古畑「私は事件についてやることはやったつもりでいる。そこで最善を尽くした」
古畑「その上でやるべきことがまだあるとしたら、怜子さんを忘れないままで生き続けるくらいだ」
見崎「……たとえ体が消えたとしても、その人と過ごした時間だけは記憶の中で生き続けているものね」
古畑「まさしく。生き残れなかった人がこの学校に限らずたくさんいる中で、私達は生きている」
古畑「私達が生き続けていることでしか、生き残れなかった人が存在したのだという事実は保てない」
勅使河原「そう、か……だ、そうだ。お前も元気出せよ、望月」
望月「……」
勅使河原「湿っぽくしてても三神先生は生き返らねえぞ」
見崎「勅使河原君に言われてもね」
勅使河原「どういうことだよ」
古畑「んっふっふ」ニヤニヤ
勅使河原「なあニン、本当によかったのか、あれで?」
古畑「……良いか悪いか、だったらまったく分からない。怜子さんのためになるとも言えるし、ならないとも言える」
古畑「結局生きている人間が勝手に決めるしかないんだよ。死者は、何も語りはしない」
古畑「私は事件についてやることはやったつもりでいる。そこで最善を尽くした」
古畑「その上でやるべきことがまだあるとしたら、怜子さんを忘れないままで生き続けるくらいだ」
見崎「……たとえ体が消えたとしても、その人と過ごした時間だけは記憶の中で生き続けているものね」
古畑「まさしく。生き残れなかった人がこの学校に限らずたくさんいる中で、私達は生きている」
古畑「私達が生き続けていることでしか、生き残れなかった人が存在したのだという事実は保てない」
勅使河原「そう、か……だ、そうだ。お前も元気出せよ、望月」
望月「……」
勅使河原「湿っぽくしてても三神先生は生き返らねえぞ」
見崎「勅使河原君に言われてもね」
勅使河原「どういうことだよ」
古畑「んっふっふ」ニヤニヤ
数日後 教室
勅使河原「なあ、MD撮ってきたんだけど、どこに隠せばいいかな」ボソボソ
見崎「そもそもMDコンポって将来的に残ってるのかしら」ボソボソ
勅使河原「……そればっかりは流石にわからねえよ。一応ニンにも訊いて……」
ガラッ
千曳「おはよう。勅使河原君、席に着きたまえ」
勅使河原「あぁ、はい。ていうか、ニンが……」
千曳「古畑君か。実は今日知らされたことなんだが……」
勅使河原「えっと……」
千曳「古畑君は今月末でこの学校を去ることになった。東京に戻るそうだよ」
勅使河原「えっ」
ウソー ガヤガヤ エーハヤスギナイ ガヤガヤ
見崎「……」
勅使河原「なあ、MD撮ってきたんだけど、どこに隠せばいいかな」ボソボソ
見崎「そもそもMDコンポって将来的に残ってるのかしら」ボソボソ
勅使河原「……そればっかりは流石にわからねえよ。一応ニンにも訊いて……」
ガラッ
千曳「おはよう。勅使河原君、席に着きたまえ」
勅使河原「あぁ、はい。ていうか、ニンが……」
千曳「古畑君か。実は今日知らされたことなんだが……」
勅使河原「えっと……」
千曳「古畑君は今月末でこの学校を去ることになった。東京に戻るそうだよ」
勅使河原「えっ」
ウソー ガヤガヤ エーハヤスギナイ ガヤガヤ
見崎「……」
三神宅
古畑「……」ガサゴソ
「お邪魔します! あの、ニン、古畑君は!?」
古畑「……」
「あぁいるよ、ちょっと待ってちょうだい。任三郎ちゃん、お友達が来て……あ、ちょっと」
ダッダッ...
勅使河原「ハァ、ハァ、ひでえじゃねえかよ、黙って転校しちまうだなんて……」
古畑「こっちだっていきなり聞かされたんだよ。手続きが済んでるんだってさ」
勅使河原「お前は、どうなんだよ」
古畑「元々怜子さんの好意に甘えてたんだし、これ以上世話になるわけにはいかない」
勅使河原「残りたくねえのかって訊いてるんだ、ハッキリ答えろよっ!」
望月「勅使河原君、落ち着いて……」
古畑「……」ガサゴソ
「お邪魔します! あの、ニン、古畑君は!?」
古畑「……」
「あぁいるよ、ちょっと待ってちょうだい。任三郎ちゃん、お友達が来て……あ、ちょっと」
ダッダッ...
勅使河原「ハァ、ハァ、ひでえじゃねえかよ、黙って転校しちまうだなんて……」
古畑「こっちだっていきなり聞かされたんだよ。手続きが済んでるんだってさ」
勅使河原「お前は、どうなんだよ」
古畑「元々怜子さんの好意に甘えてたんだし、これ以上世話になるわけにはいかない」
勅使河原「残りたくねえのかって訊いてるんだ、ハッキリ答えろよっ!」
望月「勅使河原君、落ち着いて……」
古畑「残りたくても残れない事情ってものはあるんだよ」
勅使河原「じゃあ残りたいんじゃねえか、それならっ」
見崎「……勅使河原君、もう、どうしようもないんだと思う」
見崎「……お母さんと暮らせるんだもんね。それは、そっちのほうを取るよ」
勅使河原「あっ……そっか、すまねえ」
古畑「……んふふ」カリカリ
古畑「親のことはともかく、どのみち東京には今年きりで戻る予定でした。遅いか早いかの違いだと思います」
勅使河原「……でもよ」
古畑「二カ月だけでも十分楽しかったよ。そもそも時間が問題ってわけでもないんじゃないかな」
古畑「味方になってくれてありがとう。君なしでは残りたいとも思わなかっただろうね」
勅使河原「肝心なところで……ま、こっちも楽しかったよ。色々あったけどさ……」
勅使河原「いつか、そんなのは無しで上手くやれる日がきたらいいよな」スッ
古畑「こちらこそ」ニギッ
勅使河原「じゃあ残りたいんじゃねえか、それならっ」
見崎「……勅使河原君、もう、どうしようもないんだと思う」
見崎「……お母さんと暮らせるんだもんね。それは、そっちのほうを取るよ」
勅使河原「あっ……そっか、すまねえ」
古畑「……んふふ」カリカリ
古畑「親のことはともかく、どのみち東京には今年きりで戻る予定でした。遅いか早いかの違いだと思います」
勅使河原「……でもよ」
古畑「二カ月だけでも十分楽しかったよ。そもそも時間が問題ってわけでもないんじゃないかな」
古畑「味方になってくれてありがとう。君なしでは残りたいとも思わなかっただろうね」
勅使河原「肝心なところで……ま、こっちも楽しかったよ。色々あったけどさ……」
勅使河原「いつか、そんなのは無しで上手くやれる日がきたらいいよな」スッ
古畑「こちらこそ」ニギッ
見崎とのフラグは立たず、赤沢さんからも煙たがられてるからか
勅使河原がすごく親友のポジションを確立してるな
勅使河原がすごく親友のポジションを確立してるな
見崎「……ところでここ、三神先生の部屋?」キョロキョロ
古畑「そう。まるで空っぽ。暮らした形跡が全部無くなってるんです。物置程度になっちゃって」
望月「えっ、ここが……っていっても、本当にわからなくなっちゃってるね」
古畑「んーでも残ってるんだ、確かにここに誰かがいたんだってものは」
古畑「記憶もこういう風に残っていくんじゃないかなあ、ってここのところは考えていましたぁ」
古畑「それに写真も残ってる」ピラッ
望月「あ、これ美術部の……」
古畑「君にあげるよ、忘れないように取っておくといい。そもそも私のものじゃないけど」クックッ
望月「じゃあ、もらっておこうかな……古畑君、僕、難しいだろうけど、絵を描く仕事に就こうと思ってるんだ」
望月「今は忘れないように頑張ってるけど、やっぱりいつか三神先生が生き還ったんだってことを忘れちゃうかもしれない」
望月「でも、三神先生からアドバイスをもらい続けてた絵なら、技術やノウハウの中にその記憶を刻み続けられるっていうか……」
古畑「うん、いいんじゃないかな、頑張りたまえ、少年」ナデナデ
望月「うう……」
古畑「抵抗しないんだね」ワシャワシャ
望月「だからってくしゃくしゃにしないでよっ!」
古畑「そう。まるで空っぽ。暮らした形跡が全部無くなってるんです。物置程度になっちゃって」
望月「えっ、ここが……っていっても、本当にわからなくなっちゃってるね」
古畑「んーでも残ってるんだ、確かにここに誰かがいたんだってものは」
古畑「記憶もこういう風に残っていくんじゃないかなあ、ってここのところは考えていましたぁ」
古畑「それに写真も残ってる」ピラッ
望月「あ、これ美術部の……」
古畑「君にあげるよ、忘れないように取っておくといい。そもそも私のものじゃないけど」クックッ
望月「じゃあ、もらっておこうかな……古畑君、僕、難しいだろうけど、絵を描く仕事に就こうと思ってるんだ」
望月「今は忘れないように頑張ってるけど、やっぱりいつか三神先生が生き還ったんだってことを忘れちゃうかもしれない」
望月「でも、三神先生からアドバイスをもらい続けてた絵なら、技術やノウハウの中にその記憶を刻み続けられるっていうか……」
古畑「うん、いいんじゃないかな、頑張りたまえ、少年」ナデナデ
望月「うう……」
古畑「抵抗しないんだね」ワシャワシャ
望月「だからってくしゃくしゃにしないでよっ!」
>>447
アーッ!
アーッ!
「ごめんくださーい、任三郎ちゃん、迎えに来ましたぁ」
「あらあら、家まで来ていただいて……」
古畑「時間みたいだ」スッ
見崎「……古畑君、災厄のこと、お疲れ様。そして、ありがとう」
古畑「いえ、こちらこそ」
見崎「古畑君が来てくれたおかげで、未咲のことも、左目のことも、受け入れられたんだと思う」
古畑「それは見崎さんが自分で成し遂げたことです。私はなにもしてないはずです」
見崎「ううん……古畑君、東京でも元気で」
古畑「お互いに元気で」ペコリ
「あらあら、家まで来ていただいて……」
古畑「時間みたいだ」スッ
見崎「……古畑君、災厄のこと、お疲れ様。そして、ありがとう」
古畑「いえ、こちらこそ」
見崎「古畑君が来てくれたおかげで、未咲のことも、左目のことも、受け入れられたんだと思う」
古畑「それは見崎さんが自分で成し遂げたことです。私はなにもしてないはずです」
見崎「ううん……古畑君、東京でも元気で」
古畑「お互いに元気で」ペコリ
>>444
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