元スレ吸血鬼「アナタの血をいただくわ」格闘家「なんだと!?」
SS覧 / PC版 /みんなの評価 : ☆
102 = 39 :
おもしろいぞ!
103 = 1 :
吸血鬼の脳裏に、ハンターたちの言葉がよぎる。
『あの格闘家もとんだバケモノに惚れられたもんだな! こりゃ傑作だ!』
『吸血鬼を助けても、いつかあなたは餌にされるのがオチですよ!?』
吸血鬼「──ダメなのよ……!」
吸血鬼「アナタの血を飲んだ時……アタシ、あまりの美味しさに気が狂いそうだった。
少しタガが外れただけで、全部飲んでしまいそうだった!」
吸血鬼「こんなんじゃ、いつかアタシはアナタを殺してしまう!」
格闘家「よかった……美味かったのか」
吸血鬼「え?」
格闘家「これでも俺は、なんとなく自分の血に自信があったからな。
“血なんてみんな同じ味”っていわれた時は正直ショックだったんだ」
104 = 42 :
しえん
105 = 1 :
格闘家「吸え」
格闘家「大丈夫……俺だって死にたくはない。
もし君が俺の血を全部奪いに来たら、返り討ちは無理だろうが、
なんとか逃げ切ってみせる。約束する」
格闘家「俺は君を助けたんだ。一回くらいいうことを聞いてくれよ」
吸血鬼「強引なんだから……」
吸血鬼「…………」カプッ
吸血鬼「…………」チュルッ
吸血鬼「…………」ゴクゴク
吸血鬼「──っふぅ」
格闘家「回復したか?」
吸血鬼「えぇ、ありがとう」
格闘家「よし、俺も頭に血が上ってたからちょうどよくなった。会場に戻ろう!」
106 = 1 :
吸血鬼(ちがう……)
吸血鬼(前とはちがう……)
吸血鬼(前はこの人の熱すぎる血が私の中で暴れ回ったけど……)
吸血鬼(今度は……優しく全身を撫でてもらってるような感触だわ。
私、この人に抱擁されている……)
吸血鬼(とても優しくて、温かい血……)
吸血鬼(ありがとう……格闘家さん)
吸血鬼(試合、頑張ってね)
吸血鬼(でもアタシは……結果を知っているの。アナタは──)
109 = 1 :
試合会場──
チャンプ「来たか」
格闘家「待っててくれて、ありがとう」
チャンプの予告通り、格闘家は30分で戻ってきた。
会場のテンションは、試合中断によってかえって高まっていた。
ワアァァァァァ……!
実況『さぁ、挑戦者である格闘家、トラブルを解決してきたのでしょうか!?
前代未聞の試合中断を経て、いよいよ試合再開ですっ!』
「やったれー!」 「待たせやがって!」 「つまんない試合すんなよー!」
観客の声援にも力が入っている。
110 :
リュウとサガットとモリガンで再生されます
112 :
カァンッ!
ゴングが鳴る。先ほどとは見違えるような動きで、格闘家が攻める。
左右の拳でのラッシュで防御を上げさせ、ローキック。
動きが止まったチャンプに、アッパーカットが炸裂した。
ガゴォッ!
実況『格闘家の強烈なアッパーが決まったぁっ!』
ワアァァァァァ……!
113 :
だが、さすがはチャンプである。
すぐに態勢を立て直し、幾人もの猛者を倒してきた重い打撃を振るう。
ズドンッ! ドゴォッ! ドカンッ!
実況『チャンプも負けてはいなーいっ! 象でも倒せそうな猛ラッシュだっ!』
防御に徹する格闘家。
が、重い打撃の間隙を突いて、的確に反撃を与えていく。
観客が息を飲むような、一進一退の攻防が続く。
まったくの互角。
実況『お互いに激しく打ち合いながらも、有効打を許しませんっ!
リングの上で、まるで将棋のような読み合いが展開されているっ!』
これは判定決着になる──誰もが思った。
114 :
ほう
115 = 113 :
しかし、試合が動く。
チャンプが勝負に出たのだ。
蹴りのフェイントから、全身を駆動させての右ストレート。
だが、格闘家はこれをかわし、同じく渾身の右ストレートでカウンターを決めた。
バキィッ!
チャンプ「ぐぉ……っ!」
顔面へクリーンヒット。チャンプが勢いよく前のめりに倒れた。
カウントを数えるまでもなく、審判が試合を止めた。
カンカンカンカンカンカン……
ワアァァァァァ……!
会場が沸く。この瞬間、格闘家が新しい世界チャンピオンに決定した──
実況『チャンピオンの不敗神話がついに破れましたァッ!
──と同時に、新チャンピオンの誕生だァーッ!』
しかし、この勝利を信じられない者が、この会場に二人いた。
吸血鬼(ウソ……どうして……!?)
格闘家(なんでだ……)
試合は大盛り上がりの末、幕を閉じた。
117 = 113 :
チャンピオンの控え室──
敗れたチャンプは一人、後片付けをしていた。
コンコン
チャンプ「どうぞ」
ガチャッ
チャンプ「……君か」
格闘家「……アンタ」
格闘家「なんで、わざと負けた?」
118 :
ご都合主義万歳
119 :
>>118
ご都合主義万歳(キリッ
はいはい君かっこいいねー
120 = 113 :
チャンプ「わざと……とは、どういうことだ?」
格闘家「奇しくもアンタがいったことだ。拳で語らうと分かることがある」
格闘家「試合中断前は、気持ちが焦っていて分からなかったが、
再開後はすぐに分かった」
格闘家「アンタ──吸血鬼だろ」
チャンプ「……よく、気づいたものだ」
格闘家「最近、吸血鬼と交流があってね。そうでなきゃ絶対気づかなかっただろう」
122 = 113 :
格闘家「アンタの異常な強さ……不敗神話もこれで説明がつく。
アンタが試合中、いつも険しい顔をしていたのは、
手加減が大変だったからだろう?」
格闘家「指一本でヒトを殺せるようなヤツが、
相手を殺さないように、なおかつ格闘しているようにするのは、
とんでもない難作業だったろうからな」
チャンプ「……ヒトに混ざった私を、責めるか?」
格闘家「いいや。アンタにはアンタの事情があるんだろう」
格闘家「ただし、アンタなら俺なんかいつでも倒せたハズだ」
格闘家「お情けでもらったチャンピオンベルトなんてまっぴらだ。
アンタの答え次第では、すぐに返上させてもらう」
123 = 119 :
しぇん
125 = 113 :
チャンプ「……我々吸血鬼は常に人間のハンターに追われている。
ハンターの目を紛らわすのに、もっともいいのが人に紛れることだ」
格闘家(……ハンター、か)
チャンプ「私は格闘家として生きることを選んだ。
まさかヤツらも、闇に生きるべき吸血鬼が光に照らされたリングの上で
活躍しているとは夢にも思わないだろうからな」
チャンプ「身分を偽証し、強さを見せつけ……瞬く間に世界一となった」
チャンプ「しかし、もう疲れたのだ……。
君の言うとおり、人間と戦うのは非常に繊細な作業だ。
私はこの試合を最後に、再び闇に消えることに決めていた」
格闘家「……ただ消えるだけなら、別に俺に負ける必要はなかったはずだ。
なぜ俺に勝ちを譲った!?」
格闘家「俺が先に出会った吸血鬼は、人間(おれ)と吸血鬼(アンタら)の差を
きちんと思い知らせてくれた。だが、俺はむしろそれがありがたかった」
格闘家「アンタのやったことは……ただの侮辱だ!」
129 = 113 :
チャンプ「たしかに……私は勝って姿を消すこともできた」
チャンプ「最後の試合で君に勝ちを譲ったのは……せめてもの礼だ」
格闘家「礼?」
チャンプ「同族を助けてくれた……君に対する、な」
格闘家「…………!」
チャンプ「私は会場内に私とは別に、吸血鬼がいることを察知していた。
その同族がハンターたちに捕まり、どの方角に連れ去られたかまでな」
格闘家(王者としての勘じゃなかったのか……少しショック)
130 = 113 :
チャンプ「吸血鬼同士がひと固まりになることはご法度……。
同族が私を見に会場に来るなど、絶対にありえない。
だから、あの吸血鬼は君と縁がある者だとすぐに分かった」
格闘家「そうか……。だからアンタは俺に仲間を助けさせるために……
試合を中断させたのか……」
チャンプ「私では、ハンターには絶対勝てないからな」
格闘家「……安心してくれ。ちゃんとアンタの仲間は助けた。
二度と近づかないよう脅しもつけといた。多分……大丈夫だ」
131 :
クソッ
>>110
のせいで、
>>110
のせいでっっっll
132 :
吸血鬼はずっとレミリアで再生されてる
チャンピオンはリカルド・マルチネス 格闘かは知らん
134 = 113 :
チャンプ「そうか……やはり君に託して正解だったようだ」
格闘家「…………」
チャンプ「あとは君の心ひとつだ。チャンピオンの座を、返上したくばすればいい」
チャンプ「君の実力であれば、空位になったチャンピオンの座を
すぐモノにできるだろうしな」
格闘家「俺は……」
うつむく格闘家。
チャンプ「最後に一言だけ」
チャンプ「妹を助けてくれて……ありがとう」
格闘家「!」
格闘家が顔を上げると、チャンピオンは部屋から姿を消していた。
格闘家(チャンプ……)
135 = 113 :
その後、格闘家は吸血鬼のところに向かった。
格闘家「……やぁ」
吸血鬼「おめでとう、新チャンピオン」
格闘家「……ありがとう」
格闘家「君も知っていたんだろう? チャンプの正体を──」
吸血鬼「…………」
吸血鬼「えぇ、ビデオを見て一目で分かったわ。兄さんだって。
だから正直……アナタは勝てないと思っていた」
格闘家「だろうな。多分、君の兄さんは君よりも強いんだろうから」
136 = 113 :
格闘家「譲られた勝利、はっきりいって気持ちがいいものとはいえない」
格闘家「だがきっと、俺は彼に託されたんだろう」
格闘家「だから、俺は世界チャンピオンとして生きていく」
格闘家「……だから……」
格闘家「約束通り……君にも、手伝って欲しい……」
吸血鬼は笑った。
吸血鬼「クスクス……いいわよ。いつまでとは約束できないけど……。
これから忙しくなりそうね」
格闘家「……ああ!」
137 = 131 :
まさかまだ終わらないんだろ、まさかな。
139 = 113 :
三ヶ月後──
世界チャンピオンとなる道を選んだ格闘家。
彼の格闘道場は大勢の門下生でにぎわっていた。
世界チャンピオンの名声に加え、世界最強という地位におごらぬ格闘家の謙虚な態度や
指導の上手さもあり、道場の評判は上々だった。
「えいっ!」 「やぁっ!」 「とぉっ!」
格闘家「もっと声を大きく!」
「せやぁっ!」 「ていっ!」 「はあぁっ!」
140 = 113 :
格闘家(やれやれ、指導やら経営やらで大忙しだ)
格闘家(有名になるってのも、考えものだな。
かといって、まだ人を雇えるような段階じゃないし……)
格闘家(……彼女がいてくれて助かるよ、ホント)チラッ
この道場が人気になった理由はもう一つあった。
道場主をサポートしている、美人のパートナーがいるからだ。
門下生(ここは練習は厳しいけど、的確に欠点を指摘してくれるから、
やりがいがあるな……)ハァハァ
吸血鬼「……疲れたでしょ、はいトマトジュース」
門下生「(嬉しいけど、なぜトマトジュース……?)あ、ありがとうございますっ!」
141 = 113 :
だが、人々は知らない。
夜中に密かに二人きりで行われている鍛錬を──
ドカァンッ!
格闘家「く、くそっ……やはり勝てない……!」
吸血鬼「クスクス……でも今のはけっこういいセンいってたわよ」
格闘家「本当か!?」
吸血鬼「ウソよ。熱い攻撃だったけど、痛くもかゆくもなかったわ」
格闘家「ようし、もう一回だ!
君と戦うのは、どんな修業よりも修業になるからな!」
吸血鬼「……今夜は疲れちゃったから、もう一回だけよ」
格闘家「じゃあラストだ! 勝負っ!」
世界チャンピオンのパートナーは、世界チャンピオンよりも強いということを──
~おわり~
146 :
夢枕漠っぽい
147 = 114 :
いい終わり方
148 :
信頼と実績の男瀕死→吸血鬼化オチじゃなかった…だと…?
乙
149 :
爽やかで良かった
乙
150 :
>>1
は中々の天才
みんなの評価 : ☆
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