元スレ吸血鬼「アナタの血をいただくわ」格闘家「なんだと!?」
SS覧 / PC版 /みんなの評価 : ☆
51 = 1 :
吸血鬼と格闘家の奇妙な同居生活は続いた。
吸血鬼「ねぇ、なんでカーテン全部閉めるの?」
格闘家「え、だって太陽の光とかマズイだろ」
吸血鬼「平気よ。暗所の方が好きだから浴びないに越したことはないけど、
浴びたって体がどうなるわけじゃないしね」
格闘家(けっこう俺が考えてた吸血鬼とはちがうんだな)
~
格闘家「せいぃっ!」
バオッ!
格闘家「つぁりゃっ!」
ブオンッ!
吸血鬼(いいわぁ~……この人のトレーニング姿って、ホントドキドキする)
52 = 1 :
ワー…… ワー……
吸血鬼「なんのビデオを見てるの?」
格闘家「今度の対戦相手、つまりチャンピオンの試合だ。もちろんチャンプが勝つけど」
吸血鬼「えっ……」
格闘家「どうした?」
吸血鬼「いえ、すっごい険しい顔してて強そうだなぁ、と思って……」
格闘家「このチャンプは無口でいつも険しい顔してるけど、最後には勝つんだよ」
吸血鬼「負けてもめげないでね」
格闘家「お、おいおい……」
~
吸血鬼「ちょっと、何やってるの!?」
格闘家「ニンニクだよ。精がつくからな」ポリポリ
格闘家「食う?」
吸血鬼「やめて、絶対近づけないで! アタシ、ニンニクだけはダメなのっ!」
格闘家「わ、分かった、分かった。悪かったよ」
(そういやニンニクって、吸血鬼の弱点だっけ)ポリ…
53 = 1 :
ついに試合前日となった。
格闘家「これがチケットだ。けっこう貴重品なんだぞ」
格闘家「──といっても、貴重品なのはチャンプのおかげなんだけどな。
他にも数試合あるが、客の目当てはチャンプただ一人だろう」
格闘家「俺の勝利を予想してるヤツなんて、ほとんどいない。
いたとしても、競馬の大穴くらいに思ってるにちがいない」
格闘家「だからこそ……勝つ」
格闘家「……最前列の特等席、必ず見に来てくれよ」
吸血鬼「えぇ、絶対行くわ」
吸血鬼「……頑張ってね」
格闘家「もちろんだ」
54 = 1 :
格闘家「俺は君と出会えてよかったよ」
吸血鬼「どして?」
格闘家「一週間前まで、俺は自分が世界でトップクラスに強いと本気で思っていた。
チャンピオンにだってなれると思っていた。
それが誇りでもあり、また重圧でもあったんだ」
格闘家「しかし、君に出会い──」
格闘家「世の中には俺なんか到底敵わないような存在がいると知った」
格闘家「泣きベソをかくくらいショックだったが、なんかとても気が楽になったんだ。
肩の荷が下りた気がした」
格闘家「こんな気持ちで明日の試合に臨めるのは、君のおかげだ」
格闘家「ありがとう」
吸血鬼「……こちらこそ」
55 :
リュウとBBのレイチェルで再生される
シシガミ・バング?誰だっけ?
56 :
>>55
レイチェルには同意
58 :
どこがレイチェルなの…?
59 = 1 :
格闘家「……なぁ」
格闘家「明日の試合、もし俺が勝ったら──」
格闘家「この道場もきっと忙しくなる。
そしたら、少しの間だけでいい。俺を手伝ってくれないか?」
吸血鬼「……ん、考えとく」
こうして二人は試合当日を迎えた。
60 = 1 :
翌日──
吸血鬼「いよいよね……」
格闘家「よし……行くか!」
格闘家「じゃあ俺は、試合の準備とかがあるから先に会場に行ってる。
リングの上で……待ってるからな」
吸血鬼「うん……分かった」
格闘家は道場を後にした。
61 = 1 :
会場 選手控え室──
通常、選手には誰かしらスタッフがつくものだが、格闘家には誰もいない。
一人で黙々とストレッチを行う。
格闘家(なんだか気持ちがとても楽だ……)
格闘家(これも彼女のおかげで、自分が世界最強だのという自惚れから
解放されたおかげだ)
格闘家(彼女の見ている前で、恥ずかしい試合はできない……)
格闘家(いや、勝って彼女の前に立ってみせる!)
63 = 1 :
会場 観客席──
最前列の席で、格闘家の試合を待ちわびる吸血鬼。
数試合が終わり、次が格闘家と世界チャンプによる試合(メインイベント)である。
観客の盛り上がりも最高潮に達している。
ワアァァァァァ……!
吸血鬼(いよいよ次ね……)
しかし──
「こんばんは」
64 = 8 :
レイチェルがこんなに素直なら厨二な名前の人も余計な苦労なんてしないぜ
65 = 1 :
ワアァァァァァ……!
ハンターA「お元気そうでなによりです」ニコッ
吸血鬼「アナタたちは……!」
吸血鬼「!」ビクッ
吸血鬼(体が……動かない……!)
吸血鬼(くぅっ……!?)ビクッ
ハンターA「おっと、話しかける前にあなたの肉体と魔力は封じさせてもらいました。
もうあなたは人間の女性よりも無力な存在です」
ハンターB「格闘家の道場に逃げ込んで、たらしこむとは考えたもんだな。
俺たちは対魔物には万能だが、人間相手じゃ分が悪い」
ハンターB「だが、ヤツはまさにこれから試合のハズ……助けに来られるはずがない。
もう前みたいに逃げられないぜ」
ハンターC「逃げられないぜぇ~」
66 = 1 :
ワアァァァァァ……!
ハンターA「……多少あなたを動けるようにしました。さぁ、我々についてきて下さい。
この騒がしさの中では、いくら叫んでも無駄ですよ」
ハンターA「もっとも、あなたがそんな見苦しい真似をするとも思えませんが」
ハンターC「思えませんがぁ~」
吸血鬼「分かったわ……」スッ
(ごめんなさい。アナタの試合……見られそうにないわ)
ワアァァァァァ……!
68 = 1 :
司会『お待たせいたしました!』
司会『いよいよ本日のメインイベント、チャンプVS格闘家です!』
ワアァァァァァ……!
司会『青コーナーより挑戦者、格闘家選手の入場ですっ!』
声援に応えながら、リングインする道着姿の格闘家。
だが、すぐに気づいた。
格闘家(──いないっ!?)
いるはずの特等席に、吸血鬼がいない。
格闘家(そんな……どうしていないんだ!?)
同じように、赤コーナーからチャンピオンが入場してきた。
69 :
ハンカチ用意しといたほうがいいのかこれ
70 = 42 :
しえん
71 = 1 :
リング上──
何年もの間、対戦を熱望してきた世界チャンピオンと向き合う格闘家。
しかし、彼の心は、一週間寝食を共にしただけの吸血鬼でいっぱいだった。
実況『お~っと、挑戦者の格闘家、チャンプと目を合わせようともしない!
これは臆してしまったのか!? はたまた挑発の類でしょうか!?』
ワアァァァァァ……!
格闘家(どうしていないんだ!?)
格闘家(来てくれなかったのか……? いや、そんなハズがない!)
格闘家(彼女は絶対来る! ……だが、現に来てないじゃないか!)
格闘家(なら……何かがあったとしか──)
格闘家(何か……。まさか、彼女がいってたハンターとかいうのが来たのか!?)
格闘家(しかし今さらどうしようも──!)
格闘家(とにかく早いとこ試合を終わらせて、彼女を探しに行こう!)
ワアァァァァァ……!
73 = 1 :
カァンッ!
ゴングが打ち鳴らされた。
ワァァァァァ……!
格闘家(早く──早く終わらさねば!)
格闘家「つおぉっ!」
チャンプ「…………」
ガガッ! バシッ! ドカッ!
試合は打撃アリ、関節技アリ、寝技アリの総合格闘技ルール。
格闘家もチャンプも打撃を得意としており、両者立ったまま戦いを繰り広げる。
お互い一歩も引かぬ攻防──といいたいが、明らかに格闘家が押されていた。
75 = 1 :
格闘家「はぁっ!」
格闘家のハイキックをガードしたチャンプが、右ストレートでの反撃。
ガッ!
格闘家「……ぐっ!」
格闘家(ダメだ……こんな心持ちじゃ、とてもかないっこない!)
チャンプ「…………」
チャンプ「君は……」
チャンプ「なにか……重大な問題を抱えているようだな」
格闘家「!?」
滅多に口を開かないといわれるチャンプが、よりにもよって試合中に口を開いた。
76 = 1 :
格闘家「な、なんのことだ……試合中だぞ」
チャンプ「口で語らずとも、拳で語らえば分かるというもの。
君の拳からは焦りしか伝わってこない」
ドヨドヨ…… ガヤガヤ……
審判「コラッ、両者減点するぞっ!」
チャンプ「黙れ」
審判「……は、はいっ!」
格闘家「……だったらなんだというんだ。アンタにゃ関係ないだろう。
人間、誰だって重大な問題を抱えているもんだ」
チャンプ「迷いのある挑戦者を打倒しても、なんの価値もない……」
チャンプ「行け」
77 = 1 :
格闘家「行け……っていわれても……」
チャンプ「東だ」
チャンプ「東へ向かえ」
格闘家「東……!? なぜ分かる……!?」
チャンプ「王者としての……本能(カン)だ」
格闘家「…………」ゴクッ
格闘家「分かった……。ありがとう、チャンプ……!」
格闘家はリングの外へ飛び出した。
当然、会場は大騒ぎになる。
実況『どうしたんでしょう!? 挑戦者の格闘家、リングから飛び出してしまった!』
ザワザワ…… ドヨドヨ……
「どうしたんだァ!?」 「試合放棄か!?」 「逃げちまったぞ!」
すると──
78 = 1 :
チャンプはマイクも使わずに、凄まじい大声を発した。
チャンプ「たった今っ!」
チャンプ「試合中ではあるが、挑戦者が重大な問題を抱えていることが分かった!」
チャンプ「私とて、100パーセントの力が出せぬ相手に勝っても嬉しくはないっ!」
チャンプ「だから私はチャンピオンとして、彼がリングから降りることを許したっ!」
チャンプ「だが案ずるなっ!」
チャンプ「彼は30分もすれば必ず戻るっ!」
チャンプ「ゆえに、しばしの休戦をお許し願いたいっ!」
ワアァァァァァ……!
チャンプのド迫力に巻き込まれ、観客は大盛り上がりとなった。
こうして異例の試合中断が成立してしまった。
80 :
続きが気になって寝られんッ
81 = 42 :
しえん
82 = 1 :
格闘家は走る。
体を鍛えてきたのはこの時のためだ、とばかりに走る。
もはや彼に、試合のことなど頭になかった。
格闘家(東へ──)
格闘家(東へ……)
格闘家(東へっ!)
格闘家(きっと彼女はそこにいるっ!)
83 :
王者の本能(カン)わろた
84 = 1 :
吸血鬼は三人のハンターに連行されていた。
ハンターB「チンタラしやがって、さっさと歩け!」
吸血鬼「アタシは……どうなるの?」
ハンターA「我らが拠点に連れて行き、身も心も浄化してあげますよ」
ハンターB「テメェの薄汚れた魂をキレイにしてやるんだ。感謝しろよ」
ハンターC「感謝しろよぉ~」
吸血鬼(つまり、魂ごと焼き尽くされるってワケね)
「分かったわ、もうジタバタしない。連れてって」
ハンターA「ふふふ、潔いですね。
大抵の魔物は、動きを封じてもわめき散らすものなのですがね。
さすがは誇り高き吸血鬼、往生際がよろしくて助かりますよ」
ハンターA(女とはいえ吸血鬼をハントすれば、私の名も上がるというもの……。
組織内での待遇もよくなる……!)
85 = 1 :
吸血鬼「最後に……一つだけいい?」
ハンターA「なんでしょう?」
吸血鬼「さっきの試合……結果が分かったら、教えてくれる?」
ハンターA「気になるんですか?」
吸血鬼「…………」
ハンターB「あの格闘家もとんだバケモノに惚れられたもんだな! こりゃ傑作だ!」
ハンターC「傑作だぁ~」
ハンターA「まぁ、結果は分かり切ってますがね。おそらく──」
「試合再開後、挑戦者である格闘家が勝つ、だ」
86 :
ハンターA「オラァ!」パンパンパンッ!
87 = 20 :
格闘家「握撃ッッッッッ!?」
88 = 1 :
ハンターA「なっ!?」
吸血鬼(どうしてここに!? まさか試合を放棄して──)
格闘家「間に合った……ようだな」ハァハァ
ハンターB「この野郎、試合はどうしたんだよ!」
格闘家「チャンピオンの協力で、一時中断してもらった」ハァハァ
ハンターA(そんなバカなコトが……!)
格闘家「……さて」
格闘家「彼女を渡してもらおうか。
ハンターってのがなんなのかはよく知らんが、素人を殴りたくはない」
ハンターA「あなたは……人間なのに、吸血鬼の味方をするおつもりですか?」
格闘家「俺は人間の味方でもなければ、吸血鬼の味方でもない。
──同じ釜の飯を食ったスパーリングパートナーの味方だ」
89 = 67 :
ヒューカックイー!
90 = 1 :
格闘家「どうするんだ?」
ハンターA「たしかに我々は魔物にはめっぽう強いですが、
同じ人間相手には大した戦力を持たない……」
ハンターA「なにしろ魔物の味方をする人間などレアケース……。
対人間など想定する暇があったら、魔物対策をしていますからね。
……が、今日はちがいます」
ハンターA「なぜなら、我々の組織きっての武闘派である彼がいますからね!」
ハンターB「頼むぜ、お前の怪力を見せてやれ!」
ハンターC「見せてやるぅ~」ドドドッ
格闘家「…………」
ガシィッ!
92 :
で?いつギロチンカッターは喰われるの?
93 = 1 :
ハンターCの猛突進を、格闘家は真っ向から受け止めた。
ハンターC「ふぅぅぅぅ~!」グイッ
ハンターA(いくら格闘家でも、彼には手こずるはず……! そのスキに吸血鬼を──)
ハンターC「う、うぅう……」グイグイ
ハンターC「う、動かないぃ~……」グイグイ
格闘家「どうした、こんなもんか」
ハンターA「ウ、ウソ……」
94 = 1 :
ゴッ!
顎へのジャブ。ハンターCの巨体が崩れ落ちる。
ハンターA「こんなハズが……」
ハンターB「マジかよ……!」
格闘家「魔物退治もけっこうだが……俺は人間を倒すのが得意なんだ。
ずっとそればっかやってきたからな」
格闘家「お前たちは彼女には勝てても、俺には絶対に勝てない」ズイッ
ハンターA「う……くっ……」ジリ…
ハンターB「こっち来るな!」ジリ…
格闘家「今すぐ彼女にかけた呪縛だかなんだかを外して、ここから消えろ。
今度彼女に近づいたら、格闘仲間全部集めてお前らを叩き潰すぞ」
(格闘仲間なんていないけどな)
格闘家「彼女は俺の大事なパートナーなんだ」
96 = 1 :
ハンターA「……正気ですか!?」
ハンターA「吸血鬼など助けても、いつかあなたは餌にされるのがオチですよ!?」
格闘家「かまわんさ。俺はすでに命懸けで挑んで敗れている。
たとえ体中の血を吸い尽くされようと、悔いはないし、文句もいえない」
ハンターA「…………!」
格闘家「だが……俺はそうなっても、彼女の血となって彼女をお前らから守る」
格闘家「もう一度だけ忠告する」
格闘家「彼女の力を戻して、ここから消えろ。そして、二度と現れるな」
97 = 1 :
ハンターA「…………」ギリッ
ハンターA「ま、まぁ……いいでしょう」
ハンターA「この女吸血鬼は人間への危険度としては、ほとんどゼロのようです。
たしかに吸血鬼は惜しいですが、やっきになるほどの獲物でもありません。
我々も忙しいですからね」
ハンターA「引き上げますよ」
ハンターB「お、おう」
格闘家(色々言い繕ってはいるが、ようするに降参ってことか)
格闘家「よし、彼女の力を戻して、とっとと消えろ!」
ハンターたちは吸血鬼を呪縛から解放すると、夜の闇に消えた。
100 = 1 :
格闘家「……大丈夫か?」
吸血鬼「ありがと……まさかアナタに助けられるなんてね」
格闘家「君より遥かに弱い俺が……不思議なもんだ。
俺と君とヤツらの関係は、ジャンケンみたいなもんなんだろうな」
格闘家「これで最初に会った時の醜態はチャラ……って感じかな?」
吸血鬼「クスッ……」ケホケホッ
格闘家「……だいぶ弱らされたようだな。血を吸え」
格闘家は腕を差し出した。
吸血鬼「ダメよ。アナタ、今から戻って試合をするんでしょう?」
格闘家「関係ない。吸え」
吸血鬼「ダメ……」
格闘家「ダメじゃない。吸え」
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