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元スレ貴音「宵待草のやるせなさ、今宵も月は出ぬそうな」

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【昨年四月の出来事】
花見から十日ほど経ったある日、高木殿から重要な報告があるとのことで、
あいどる全員が事務所に集められました。
響「一体何の報告なんだろうな」
真「今後の活動方針とかそういう話じゃないかな」
亜美「ピヨちゃんの結婚報告かもよ!」
真美「それはないっしょ→ だってピヨちゃんだよ?
そういえばお姫ちん最近見なかったけど、ど→してたの?」
貴音「体を壊して寝込んでおりました……もう大丈夫ですから心配は無用です」
皆がいつもより明るく感じられるのは、おそらくこれから報告されることなど何も知らないからでしょう。
報告がなされた時、皆のこの笑顔が閉ざされてしまうのかと思うと、わたくしは余計に暗澹たる気分になりました。
社長「オホン、全員集まったようだね。
あ~実は今日は大変残念な報告をしなければならない」
高木殿は気まずそうにもう一度空咳をすると、急に真顔になりました。
花見から十日ほど経ったある日、高木殿から重要な報告があるとのことで、
あいどる全員が事務所に集められました。
響「一体何の報告なんだろうな」
真「今後の活動方針とかそういう話じゃないかな」
亜美「ピヨちゃんの結婚報告かもよ!」
真美「それはないっしょ→ だってピヨちゃんだよ?
そういえばお姫ちん最近見なかったけど、ど→してたの?」
貴音「体を壊して寝込んでおりました……もう大丈夫ですから心配は無用です」
皆がいつもより明るく感じられるのは、おそらくこれから報告されることなど何も知らないからでしょう。
報告がなされた時、皆のこの笑顔が閉ざされてしまうのかと思うと、わたくしは余計に暗澹たる気分になりました。
社長「オホン、全員集まったようだね。
あ~実は今日は大変残念な報告をしなければならない」
高木殿は気まずそうにもう一度空咳をすると、急に真顔になりました。
社長「君たちのプロデューサーがうちの事務所をやめることになった。
もっと早くに報告すべきことだったのだが、あいにく予定がうまくあわず、今日報告することになってしまった。
こういう形で伝えるはめになってすまない」
いることが当たり前だと思っていた方が突然にいなくなったのです。
すぐには受け止められようはずもなく、わたくし以外皆信じられないといった顔をしていました。
律子「引き継ぎは終わっているから、みんなの面倒はしばらく私が見ることになるわ。
突然のことでみんなびっくりしているだろうけど、これからよろしく頼むわよ」
口調はいつものようにハキハキしているはずなのに、律子の声にいつもの張りはありません。
春香「引継ぎってことは、律子さんたちは前から知ってたんですか?
プロデューサーさんがいなくなること」
律子「やめることを知っていたか、って言われたらそうなるわね。引継ぎまで受けたんですから。
でもなんでやめるかまでは詳しく聞いてないわ。というより聞いても教えてもくれなかったんですもの」
春香「なんでもっと早く教えてくれなかったんですか? 第一プロデューサーさんもひどいですよ。
何もいわないでいなくなっちゃうなんて」
美希「社長は何か聞いてないの?」
社長「自己都合による退社だ。彼のプライバシーに関わることでもあるし
私の口からは何も言えない。といっても詳しいことは実は私も知らんのだ。
それだけは彼も頑なに口を閉ざしてね」
もっと早くに報告すべきことだったのだが、あいにく予定がうまくあわず、今日報告することになってしまった。
こういう形で伝えるはめになってすまない」
いることが当たり前だと思っていた方が突然にいなくなったのです。
すぐには受け止められようはずもなく、わたくし以外皆信じられないといった顔をしていました。
律子「引き継ぎは終わっているから、みんなの面倒はしばらく私が見ることになるわ。
突然のことでみんなびっくりしているだろうけど、これからよろしく頼むわよ」
口調はいつものようにハキハキしているはずなのに、律子の声にいつもの張りはありません。
春香「引継ぎってことは、律子さんたちは前から知ってたんですか?
プロデューサーさんがいなくなること」
律子「やめることを知っていたか、って言われたらそうなるわね。引継ぎまで受けたんですから。
でもなんでやめるかまでは詳しく聞いてないわ。というより聞いても教えてもくれなかったんですもの」
春香「なんでもっと早く教えてくれなかったんですか? 第一プロデューサーさんもひどいですよ。
何もいわないでいなくなっちゃうなんて」
美希「社長は何か聞いてないの?」
社長「自己都合による退社だ。彼のプライバシーに関わることでもあるし
私の口からは何も言えない。といっても詳しいことは実は私も知らんのだ。
それだけは彼も頑なに口を閉ざしてね」
高木殿の言葉を聞くと、美希は携帯を取り出し、どこかへ電話をかけました。
美希「嘘なの……」
携帯を持った手がだらりとさがり、美希はその場に崩れ落ちました。
美希「ねぇ、社長は連絡先くらいは聞いてるんだよね? だったら教えて欲しいの」
すがるような声をだして美希が聞いても、高木殿は何も答えませんでした。
その後の事務所では、嗚咽する者、すすり泣く者、虚脱する者。悲しみ方も皆一様ではありません。
けれど、あの方がいなくなったことで皆の心に深い傷をついたということだけは同じでした。
美希「嘘なの……」
携帯を持った手がだらりとさがり、美希はその場に崩れ落ちました。
美希「ねぇ、社長は連絡先くらいは聞いてるんだよね? だったら教えて欲しいの」
すがるような声をだして美希が聞いても、高木殿は何も答えませんでした。
その後の事務所では、嗚咽する者、すすり泣く者、虚脱する者。悲しみ方も皆一様ではありません。
けれど、あの方がいなくなったことで皆の心に深い傷をついたということだけは同じでした。
【昨年六月の出来事】
花見をしたことがまだ昨日のことのように思われるのに、
桜の花はどこにも見られず、わたくしの目に映るのは街灯に照らされた若葉だけです。
貴音「もう二月もたったのですね」
ため息をついて空を見あげれば、雲ひとつないいい天気で、星がいつもより綺麗に見えていました。
それなのに月はどこにも見あたりません。
どうやら運悪く、今宵は新月のようです。
貴音「宵待草のやるせなさ、ですか。わたくしと同じですね」
待てど暮らせど来ぬ方を、それでも待ち続けてしまう
わたくしは愚かなのでしょうか。
己の身となぞらえた宵待草に聞こうとも、この季節に見られるわけもなく、ただただ虚しいだけです。
春香「こんな時間にお散歩ですか、貴音さん」
不意に、背後から春香の声が聞こえてまいりました。
貴音「寝つけずに散歩していたら、ふらりここまで足を運んでしまったようです。
春香は仕事帰りの寄り道、といったところでしょうか」
春香「正解です。収録がこんな時間まで長引いちゃって。
ここで花見をしたのももう二ヶ月前かぁ……
当たり前だけど桜も咲いてませんね」
貴音「諸行は無常なものです。人も季節も、変わらないものなどないのですよ」
春香「でも来年にはまた咲きますよ。春はまたやってくるんですから」
貴音「来年、ですか。随分とまた先の話をするのですね」
春香「待ってる時間って長く感じちゃいますけど、プロデューサーさんは絶対戻ってくると思います。
だから気長に待ちましょうよ。それで来年も、みんなでまた花見をするんです」
貴音「戻ってはこないかもしれませんよ。そうなれば待つこと自体、徒労に終わるやもしれません」
春香「だったらこっち側から見つけちゃえばいいんですよ。
貴音さん、高みからの景色が見たいっていつも言ってたじゃないですか。
そこからはプロデューサーさんも絶対に見つかるはずです」
貴音「なかなかそういう風には考えられないものなのです。
そういう春香は一体どのような気持ちであの方を待っているのですか?」
それが聞くべきではないことだとはわかっておりました。
けれども、同じくあの方を待つものとして、どうしてもそれを知りたかったのです。
ここで花見をしたのももう二ヶ月前かぁ……
当たり前だけど桜も咲いてませんね」
貴音「諸行は無常なものです。人も季節も、変わらないものなどないのですよ」
春香「でも来年にはまた咲きますよ。春はまたやってくるんですから」
貴音「来年、ですか。随分とまた先の話をするのですね」
春香「待ってる時間って長く感じちゃいますけど、プロデューサーさんは絶対戻ってくると思います。
だから気長に待ちましょうよ。それで来年も、みんなでまた花見をするんです」
貴音「戻ってはこないかもしれませんよ。そうなれば待つこと自体、徒労に終わるやもしれません」
春香「だったらこっち側から見つけちゃえばいいんですよ。
貴音さん、高みからの景色が見たいっていつも言ってたじゃないですか。
そこからはプロデューサーさんも絶対に見つかるはずです」
貴音「なかなかそういう風には考えられないものなのです。
そういう春香は一体どのような気持ちであの方を待っているのですか?」
それが聞くべきではないことだとはわかっておりました。
けれども、同じくあの方を待つものとして、どうしてもそれを知りたかったのです。
春香「正直、私は待ってないと、心が折れちゃいそうになるんです。
だから私もあんまり偉そうなことは言えませんね。ごめんなさい、貴音さん」
眉尻の下がった、困った笑顔で春香はそう答えました。
わたくしもそんな本音を聞いては、あの方が帰ってこないなどとはいえようはずもありません。
貴音「お互い困ったものですね。けれども春香、目標を思い出させてくれてありがとうございます」
高みから見える景色。
本当にそこからは、あの方の姿が見えるのでしょうか。
いいえ、おそらく見えることはないでしょう。
けれども、ただ待っているだけならば、時は過ぎゆくばかりです。
そこまでの道のりがいかに険しくとも、夢だけは叶えねばと思いました。
そうでなければあの方が去ってしまわれたかいもないのですから。
だから私もあんまり偉そうなことは言えませんね。ごめんなさい、貴音さん」
眉尻の下がった、困った笑顔で春香はそう答えました。
わたくしもそんな本音を聞いては、あの方が帰ってこないなどとはいえようはずもありません。
貴音「お互い困ったものですね。けれども春香、目標を思い出させてくれてありがとうございます」
高みから見える景色。
本当にそこからは、あの方の姿が見えるのでしょうか。
いいえ、おそらく見えることはないでしょう。
けれども、ただ待っているだけならば、時は過ぎゆくばかりです。
そこまでの道のりがいかに険しくとも、夢だけは叶えねばと思いました。
そうでなければあの方が去ってしまわれたかいもないのですから。
【昨年七月の出来事】
美希「貴音、響、よろしくなの」
新設されたぷろじぇくとふぇありー、そのめんばーの一人にわたくしも選ばれました。
貴音「必ずや、頂点をとりましょう」
響「すごいやる気だな。おーし、自分も貴音に負けないくらい頑張るかぁ」
美希「トップアイドルになって、絶対ハニーを後悔させてやるの」
美希の口から意外な言葉が漏れたことに驚きました。
貴音「後悔、とな。美希はあの方を好いていたのではなかったのですか?」
美希「ハニーのことは今でも大好きだよ?」
質問するやいなやの即答です。
美希「貴音、響、よろしくなの」
新設されたぷろじぇくとふぇありー、そのめんばーの一人にわたくしも選ばれました。
貴音「必ずや、頂点をとりましょう」
響「すごいやる気だな。おーし、自分も貴音に負けないくらい頑張るかぁ」
美希「トップアイドルになって、絶対ハニーを後悔させてやるの」
美希の口から意外な言葉が漏れたことに驚きました。
貴音「後悔、とな。美希はあの方を好いていたのではなかったのですか?」
美希「ハニーのことは今でも大好きだよ?」
質問するやいなやの即答です。
貴音「ではどうして」
美希「ハニーはやめたこと絶対後悔してるって、ミキ思うの。だからミキたちがもっともっと有名になって、
もっともっとキラキラすれば、たくさんたくさん後悔して、きっとまたプロデューサーやりたくなっちゃうじゃないかな。
そうなれば絶対に戻ってきてくれるの」
響「美希のモチベーションは相変わらずプロデューサーなんだな」
美希「それはちょっと違うかな。ハニーがいてもいなくてもミキは頑張ってキラキラするの」
その返答の意味がつかめずにわたくしと響が頭をかしげているのをみて、美希は不思議そうにしていました。
美希「だってミキがアイドルをしてるのはミキのためだよ? ハニーはハニー、ミキはミキなの」
昔と少しも違わぬ、美希のひたむきな眼差しをみて、わたくしは胸が痛くなりました。
なぜそこまでまっすぐに、己の気持ちに正直でいられるのでしょうか。
わたくしには、とても真似できそうにありません。
もっとも仮に真似できていたとしたならば、そもそもこのような結果にはならなかったのでしょうが。
美希「ハニーはやめたこと絶対後悔してるって、ミキ思うの。だからミキたちがもっともっと有名になって、
もっともっとキラキラすれば、たくさんたくさん後悔して、きっとまたプロデューサーやりたくなっちゃうじゃないかな。
そうなれば絶対に戻ってきてくれるの」
響「美希のモチベーションは相変わらずプロデューサーなんだな」
美希「それはちょっと違うかな。ハニーがいてもいなくてもミキは頑張ってキラキラするの」
その返答の意味がつかめずにわたくしと響が頭をかしげているのをみて、美希は不思議そうにしていました。
美希「だってミキがアイドルをしてるのはミキのためだよ? ハニーはハニー、ミキはミキなの」
昔と少しも違わぬ、美希のひたむきな眼差しをみて、わたくしは胸が痛くなりました。
なぜそこまでまっすぐに、己の気持ちに正直でいられるのでしょうか。
わたくしには、とても真似できそうにありません。
もっとも仮に真似できていたとしたならば、そもそもこのような結果にはならなかったのでしょうが。
【昨年八月の出来事】
昨年から事務所に置いてあるぬいぐるみがあります。
気づけばそれはずっとここにいて、もはや景色の一部になっていたので、
さして気にすることもありませんでした。
真「それかわいいでしょ。プロデューサーから貰ったんだ」
くまをじいっと見つめるわたくしがよほど可笑しかったのでしょう。
笑いながら、それを抱きしめると、真は遠い目をして
懐かしそうにその来歴を語ってくれました。
その目線の先にあるのは、やはりあの方の面影なのでしょう。
貴音「そんなことがあったのですか」
真「別にプロデューサーがボクの王子様ってわけじゃないんだけどね。
そういえばお姫様扱いされたのなんてあの時が生まれてはじめてだったけ」
貴音「それが今では、誰も真をそのように扱ってはくれないと」
真「本当、困っちゃうよ。なぜだかボクが王子様になってるんだもん。
でもいいんだ。そのうち絶対お姫様になって、王子様が迎えに来るのをまつんだから。
その点、貴音はうらやましいよね。だって銀色の王女じゃないか」
昨年から事務所に置いてあるぬいぐるみがあります。
気づけばそれはずっとここにいて、もはや景色の一部になっていたので、
さして気にすることもありませんでした。
真「それかわいいでしょ。プロデューサーから貰ったんだ」
くまをじいっと見つめるわたくしがよほど可笑しかったのでしょう。
笑いながら、それを抱きしめると、真は遠い目をして
懐かしそうにその来歴を語ってくれました。
その目線の先にあるのは、やはりあの方の面影なのでしょう。
貴音「そんなことがあったのですか」
真「別にプロデューサーがボクの王子様ってわけじゃないんだけどね。
そういえばお姫様扱いされたのなんてあの時が生まれてはじめてだったけ」
貴音「それが今では、誰も真をそのように扱ってはくれないと」
真「本当、困っちゃうよ。なぜだかボクが王子様になってるんだもん。
でもいいんだ。そのうち絶対お姫様になって、王子様が迎えに来るのをまつんだから。
その点、貴音はうらやましいよね。だって銀色の王女じゃないか」
貴音「人がそう勝手に呼んでいるだけです。王子様とやらも、いまだに迎えにきてはくれません」
真「あ~あ。ボクもみんながお姫様っていうくらい、女の子らしくなれたらなぁ~
でも、もしボクがとびっきりのお姫様になったら、プロデューサーもびっくりするだろうね」
驚いたあの方を楽しげに想像する真は、実に生き生きとしておりました。
待つことすら己の精進の糧にする。素直にすごいと感心しました。
貴音「それではわたくしも、お姫様を目指すといたしましょうか」
真「えっ!? 貴音はもう王女様じゃん」
それから数日たったある日のこと、真は参考資料として少女漫画をいくつか貸してくれました。
その中でとりわけわたくしの心が惹かれたのは、宿命にあらがいながらもかなわない恋を遂げようとする二人の話。
結末は、まだ出ていないそうです。
真「あ~あ。ボクもみんながお姫様っていうくらい、女の子らしくなれたらなぁ~
でも、もしボクがとびっきりのお姫様になったら、プロデューサーもびっくりするだろうね」
驚いたあの方を楽しげに想像する真は、実に生き生きとしておりました。
待つことすら己の精進の糧にする。素直にすごいと感心しました。
貴音「それではわたくしも、お姫様を目指すといたしましょうか」
真「えっ!? 貴音はもう王女様じゃん」
それから数日たったある日のこと、真は参考資料として少女漫画をいくつか貸してくれました。
その中でとりわけわたくしの心が惹かれたのは、宿命にあらがいながらもかなわない恋を遂げようとする二人の話。
結末は、まだ出ていないそうです。
さるよけってどうすればいいんだっけ?適当にほししてればいいの?
【昨年九月の出来事】
暦の上では秋といえども、まだまだ残暑は厳しく、外を歩けばすぐに汗ばんでしまいます。
仕事を終え事務所に戻ると、雪歩が熱心に花をいけていました。
雪歩「あれ、四条さん。お仕事終わったんですか?
お疲れ様です」
会釈をしてそう言うと、雪歩はまた花をいけはじめました。いけているのは桔梗でしょうか。
花の紫色が白い手のせいで、余計に際立って見えます。
貴音「風流なことをなさっていますね、雪歩。ここに飾るおつもりですか?」
わたくしがそう声をかけると、彼女は手を止め、暗い顔をしました。
はて、わたくしは何かまずいことを聞いてしまったのでしょうか。
雪歩「はい……プロデューサーがいなくなってから
だいぶ経つのに、やっぱりまだ、みんな暗い感じがしちゃって……
お花でも飾れば少しでも明るくなるのかなぁって思ったんですが……
やっぱり余計なお世話ですよね、こんなこと……」
花を持つ手を少し震わせながら、雪歩は申し訳なさそうに俯きました。
貴音「余計なお世話などではありません。皆、喜ぶと思います。
わたくしも次は何か花を持ってくるといたしましょう。
その時は、今日のように生けていただいてもよろしいですか?」
雪歩「本当ですか! 貴音さん、ありがとうございます」
暦の上では秋といえども、まだまだ残暑は厳しく、外を歩けばすぐに汗ばんでしまいます。
仕事を終え事務所に戻ると、雪歩が熱心に花をいけていました。
雪歩「あれ、四条さん。お仕事終わったんですか?
お疲れ様です」
会釈をしてそう言うと、雪歩はまた花をいけはじめました。いけているのは桔梗でしょうか。
花の紫色が白い手のせいで、余計に際立って見えます。
貴音「風流なことをなさっていますね、雪歩。ここに飾るおつもりですか?」
わたくしがそう声をかけると、彼女は手を止め、暗い顔をしました。
はて、わたくしは何かまずいことを聞いてしまったのでしょうか。
雪歩「はい……プロデューサーがいなくなってから
だいぶ経つのに、やっぱりまだ、みんな暗い感じがしちゃって……
お花でも飾れば少しでも明るくなるのかなぁって思ったんですが……
やっぱり余計なお世話ですよね、こんなこと……」
花を持つ手を少し震わせながら、雪歩は申し訳なさそうに俯きました。
貴音「余計なお世話などではありません。皆、喜ぶと思います。
わたくしも次は何か花を持ってくるといたしましょう。
その時は、今日のように生けていただいてもよろしいですか?」
雪歩「本当ですか! 貴音さん、ありがとうございます」
俺がSSやってる時はその程度で、って感覚の話だから厳密にはわからんごめん
とにかくレスすりゃ余りさるさんにはならない
とにかくレスすりゃ余りさるさんにはならない
貴音「礼には及びません。雪歩は強いのですね」
雪歩「わたしなんか、全然弱いですよぉ」
貴音「辛い時にこそ、人間の真価は問われるものなのです。
己が辛い時に他者を慮れる者が弱いというのであれば、
世の中に強い人間など一人もいなくなってしまいます。
ですから雪歩、あなたはもっと自分に自信を持つべきです」
えらそうなことをいいながら、わたくしは強くあれかしと願うだけの弱い人間なのだということに気づきました。
他人のことを考える余裕もない、日々を生きていくだけで精一杯なわたくしが強いはずはありません。
そんなわたくしが雪歩に花を贈るのは、罪滅ぼしをしたいという弱い心のせいなのでしょうか。
けれども、もしそうだとしても、弱いわたくしはどうしてもそれだけのことをしなければ気が済まないのです。
そんなことで己の罪が償えようはずもないことはわかってはいるのですが。
その翌日、白い秋菊を持っていき、雪歩に手渡しました。
貴音「やはり雪歩には、白い花がよく似合いますね」
雪歩「貴音さん、本当に持ってきてくれたんだ。
ありがとうございますぅ」
そう言って幾度も頭を下げた後、雪歩はさっそく秋菊を生け始めました。
雪歩「完成しました。どうですか、貴音さん」
秋菊佳色有りとはいいますが、雪歩の生けたその花はかくも見事なものでした。
その美しさが心をうつのは、雪歩の真心がこもっているからなのでしょう。
この花の美しさで、事務所の皆の心もかるくなればよいのですが。
雪歩「わたしなんか、全然弱いですよぉ」
貴音「辛い時にこそ、人間の真価は問われるものなのです。
己が辛い時に他者を慮れる者が弱いというのであれば、
世の中に強い人間など一人もいなくなってしまいます。
ですから雪歩、あなたはもっと自分に自信を持つべきです」
えらそうなことをいいながら、わたくしは強くあれかしと願うだけの弱い人間なのだということに気づきました。
他人のことを考える余裕もない、日々を生きていくだけで精一杯なわたくしが強いはずはありません。
そんなわたくしが雪歩に花を贈るのは、罪滅ぼしをしたいという弱い心のせいなのでしょうか。
けれども、もしそうだとしても、弱いわたくしはどうしてもそれだけのことをしなければ気が済まないのです。
そんなことで己の罪が償えようはずもないことはわかってはいるのですが。
その翌日、白い秋菊を持っていき、雪歩に手渡しました。
貴音「やはり雪歩には、白い花がよく似合いますね」
雪歩「貴音さん、本当に持ってきてくれたんだ。
ありがとうございますぅ」
そう言って幾度も頭を下げた後、雪歩はさっそく秋菊を生け始めました。
雪歩「完成しました。どうですか、貴音さん」
秋菊佳色有りとはいいますが、雪歩の生けたその花はかくも見事なものでした。
その美しさが心をうつのは、雪歩の真心がこもっているからなのでしょう。
この花の美しさで、事務所の皆の心もかるくなればよいのですが。
【昨年十一月の出来事】
事務所に戻る車中のこと、渋滞にはまってしまい、なかなか抜けられそうにありません。
実質一人で事務所全員の面倒を見ている律子はとにかく忙しいのでしょう。
イライラした様子で、何度も時計を確認しています。
律子「なかなか進まないわね。雨も強くなってきたし、まだまだ混みそうだわ」
勢いを増した雨で白く染まった車窓の向こうを見ると、律子は言いました。
貴音「最近きちんと寝ているのですか、律子」
律子「大丈夫よ」
顔を合わせるたびに黒くなっていく目の下の隈を見ている身としては、
その言葉が真実であると信じるわけには行きません。
いつもは蒟蒻問答でおわるばかりのこの話題ですが、今日は時間がたっぷりとある。
ですから今日は、ちゃんと休みをとるように説得せねばならぬと、わたくしは心に決めました。
貴音「しかし……このままでは律子まで倒れてしまいかねません」
律子「大丈夫だっていってるでしょ」
貴音「ですが……!!」
事務所に戻る車中のこと、渋滞にはまってしまい、なかなか抜けられそうにありません。
実質一人で事務所全員の面倒を見ている律子はとにかく忙しいのでしょう。
イライラした様子で、何度も時計を確認しています。
律子「なかなか進まないわね。雨も強くなってきたし、まだまだ混みそうだわ」
勢いを増した雨で白く染まった車窓の向こうを見ると、律子は言いました。
貴音「最近きちんと寝ているのですか、律子」
律子「大丈夫よ」
顔を合わせるたびに黒くなっていく目の下の隈を見ている身としては、
その言葉が真実であると信じるわけには行きません。
いつもは蒟蒻問答でおわるばかりのこの話題ですが、今日は時間がたっぷりとある。
ですから今日は、ちゃんと休みをとるように説得せねばならぬと、わたくしは心に決めました。
貴音「しかし……このままでは律子まで倒れてしまいかねません」
律子「大丈夫だっていってるでしょ」
貴音「ですが……!!」
律子「ですがもなにも、もう私しかいないじゃない。プロデューサーはもう、私しかいないんだもの」
律子は意地を張っているようにも見えました。
おそらく何をいっても彼女が聞き入れることはないのでしょう。
こうなったのも、全てはあの方がいなくなったからです。
貴音「……あの方から何か連絡などはありませんでしたか」
恐る恐る聞いてみました。
律子「知らないわ」
突き放すように、律子は言いました。
もし連絡が来ていたとしても、それが吉報でない限りわたくしたちに伝える気はないのでしょう。
律子「あのね、私だってこんなこと言いたくないわよ。
でもプロデューサーのことはもう忘れなさい。
いなくなった人を待ってても辛いだけだわ」
そう言われてしまっては、わたくしも黙るほかありません。
それから事務所に戻るまでの時間はお互い無言で、車を叩く雨の音ばかりがやかましく響いておりました。
律子は意地を張っているようにも見えました。
おそらく何をいっても彼女が聞き入れることはないのでしょう。
こうなったのも、全てはあの方がいなくなったからです。
貴音「……あの方から何か連絡などはありませんでしたか」
恐る恐る聞いてみました。
律子「知らないわ」
突き放すように、律子は言いました。
もし連絡が来ていたとしても、それが吉報でない限りわたくしたちに伝える気はないのでしょう。
律子「あのね、私だってこんなこと言いたくないわよ。
でもプロデューサーのことはもう忘れなさい。
いなくなった人を待ってても辛いだけだわ」
そう言われてしまっては、わたくしも黙るほかありません。
それから事務所に戻るまでの時間はお互い無言で、車を叩く雨の音ばかりがやかましく響いておりました。
【昨年十二月の出来事】
事務所で小鳥嬢が年賀状の絵柄をどれにするか選んでいました。
どの蛇の絵がよいかを尋ねられても、生憎わたくしは蛇が苦手で、
見ることさえおぞましく感じてしまいます。
小鳥「一年なんかあっという間ねぇ~
だとすると、みんなが結婚してここを出てく日も案外近いのかしら」
貴音「相手ありきの話ですから、まだまだ心配することはありませんよ。
そういう小鳥嬢が案外一番早く出ていくのやもしれませんし」
小鳥「お上手ねぇ。そういう貴音ちゃんにはいい人いないのかしら?」
貴音「それは、とっぷしーくれっとです」
小鳥「もう! つれないんだから~」
貴音「それはそうと、来年はわたくしも二十歳ですか。
この事務所にきて、もう二年近くたつのですね」
小鳥「ようやくお酒が飲めるようになるわね」
貴音「お酒、ですか。忘憂の物とたとえられますが
そのようなものだから皆飲むのでしょうか。
悩みはとにかく尽きないものです」
小鳥「忘れられるのなんて飲んでる間だけ。
ううん、飲んでるから考えちゃうつらいこともいっぱいあるわよ」
貴音「結局憂いから逃れることはできないのですね」
小鳥「そうね、けど悩みなんて時間が解決してくれることのほうが多いもの。
お酒を飲めば時間が早くなるように感じちゃうから、それでみんな飲むのかもしれないわね」
貴音「そういうものなのですか」
小鳥「そういうものよ。だから貴音ちゃんが辛くなった時は一緒に飲みましょ」
そう言った後、片目を瞑ってういんくすると、小鳥嬢は鼻歌を歌いながら仕事の続きをはじめました。
貴音「お酒、ですか。忘憂の物とたとえられますが
そのようなものだから皆飲むのでしょうか。
悩みはとにかく尽きないものです」
小鳥「忘れられるのなんて飲んでる間だけ。
ううん、飲んでるから考えちゃうつらいこともいっぱいあるわよ」
貴音「結局憂いから逃れることはできないのですね」
小鳥「そうね、けど悩みなんて時間が解決してくれることのほうが多いもの。
お酒を飲めば時間が早くなるように感じちゃうから、それでみんな飲むのかもしれないわね」
貴音「そういうものなのですか」
小鳥「そういうものよ。だから貴音ちゃんが辛くなった時は一緒に飲みましょ」
そう言った後、片目を瞑ってういんくすると、小鳥嬢は鼻歌を歌いながら仕事の続きをはじめました。
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