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元スレほむら「あなたの欠片を」
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「あたしならいるぞー」
「おや、いつの間に」
「随分といいタイミングね?」
「とんでもない結界の気配を感じたのはいいんだけどな、着いたと同時くらいに消えちゃってさ」
「もうちょっと早く来て欲しい、大変だったのだから」
「はは、悪い悪い」
まあ、手間が省けてありがたい。
私も巴マミもすぐには動けそうにないし、今また襲われたらひとたまりもない。
こうして彼女が居てくれるのは、単純に安心できた。
そんな中、グリーフシードが穢れを吸い込むのを傍目に、頭の中で言葉を探すけれど。
よく考えたら、一言で済んでしまうことに気が付いた。
説明を求める視線を受けて、声にする。
「夢で見たの」
「は?」
「端的に伝えようとしたら」
「いいからちゃんと話せ」
「聞いて貰う気あるのかしら」
「……ごめんなさい」
二人の叱責には返す言葉もない。
それほど思考能力も落ちていたのだと、言い訳をしようかと思ったけれど。
これ以上白い目で見られるのはごめんだし、やめようかな。
それよりも、ちゃんと二人に説明をしなければ。
「杏子、あなたと別れた後、駅のホームでこの欠片を拾ったの」
「何だそりゃ? グリーフシードに形は似てるけど、色がないな」
「うなされている間も、ずっと握り締めていたわね」
「私も何かは分からなかった、キュゥべえすらも知らない物質だった」
「そうだね、正直さっぱり分からないよ」
「その欠片がどうしたってのさ」
「あなたたちに、世界を塗り替えた魔法少女の話はしたでしょう」
そんな抽象的な言葉はもう要らない。
大切な、大切な大切な名前を。
「その魔法少女の名前は鹿目まどか。
とても優しく、とても強い、私たちの仲間だった。
彼女は自分の存在をこの次元から消し去って、世界の理を書き換えたの」
「この世界にあるはずのない、その子の欠片。
おそらく魔獣を引き寄せているのは、この欠片のせい」
「この空白感は、そのせいだったのかしらね」
「興味深い話だが、その子の欠片と、魔獣と、どんな関係があるんだい?」
「仮説に過ぎないけれど」
そう前置いて、頭の中で思考をまとめる。
消えた魔女、現れた魔獣。
彼女のしたこと、世界の在り様。
「かつてこの世界に、魔獣は居なかった」
「まどかの願いは世界を歪め、魔獣を生んだ」
「彼女の介入を世界は嫌い、なかったことにしようとしている」
「そのために魔獣は、人々の感情を吸い、グリーフシードとして力を集めている」
「そして彼女の欠片は、私が記憶を引き継いだ結果、世界に漂う情報の結晶として現れた」
「魔獣はそれを糸口にして、高次元にいるまどかに接触し、消そうとしている」
「筋は通っているね」
「夢の中でまどかは私に言った。 欠片を集めてと」
脳髄に焼き付けた声。
一字一句違わぬよう、言葉に変えて。
「『この世界に広がってしまった、私の欠片を集めて』」
声帯を震わせながら、私は言葉を再び胸に刻み込む。
その意味を、その恐ろしさを。
希望が絶望を生み、絶望がまた絶望を生む淀んだ世界の記憶を。
「かつての世界では、希望を懐いた魔法少女は例外なく絶望し魔女へと変わった」
「恨みと憎しみと悲しみの果てに、世界を呪う存在となった」
「魔獣を止められなければ、きっと世界はまたその姿を取ってしまう」
そんなの、絶対に間違ってる。
あの子がそう言い張ったように、私もまたそう言い続けてみせる。
しばしの沈黙の後。
巴マミが口を開く。
「あなたの話、本当なのね」
「ええ」
「嫌だな、私、それだけ大切に思った子のこと、忘れちゃってたんだ」
「……無理も、ないこと」
「信じるわ。 欠片探し、手伝わせて」
巴マミの言葉を、あの子は認識出来ているだろうか。
きっと聞いてくれているはず、そう信じながら、
僅かに震える彼女の手を取って。
「とても心強いわ、ありがとう」
「お礼はこっちが言いたいくらいよ」
「かつての世界とやらに戻ったら、どうなるんだ?」
佐倉杏子の問いに対して、私の考える答えはある。
でも、それを伝えていいかどうか、分からない。
言ってしまえば、彼女はきっと協力してくれるだろう。
だがそれは、ある種脅迫に近いのではないか。
「私の主観が入りすぎてしまって、客観的に説明出来そうにない」
「いいよ、あたしも参考にできればって程度だったしさ」
「話を聞くまでもなく、悲惨の一言に尽きるでしょうしね」
悲惨か。
みんな死んでしまったその世界は、きっとそう形容されうるだろう。
おそらくは、話さなくて良かったのだろう。
彼女たちはこの世界に生きていて、この世界で生きようとしているのだから。
「あたしも手伝うよ」
「感謝するわ」
力を取り戻した彼女の言葉に、私もまた勇気付けられる。
記憶がなくとも、存在がなくとも、あの子は私たちを結び付けてくれる。
「そうと決まったら、すぐにでも動きたいのだけど」
「けど?」
「……疲れて、動けない」
「……ごめんなさい、私も」
「無理すんなよ、風呂でも入ってこい」
「そうね、それもいいかも」
「後で私も借りていいかしら」
「ええ、もちろん」
「とりあえず、何か変なことがあったらあたしが見とくからさ」
ありがたい話だ。
体が汚れるだとか、そういう問題がある訳ではないけれど、ちょっと心を休めたい。
これからもっと厳しい戦いがあるのだから、ちゃんと気力は充実させないと。
そんな言い訳をあれこれ考えつつ、私の足は脱衣所へ向いていた。
「佐倉さん、大丈夫なの?」
「何がだよ」
「あなた、実は間に合ってたでしょう」
「うっ」
「怖い?」
「別にタイミング見計らってただけだし」
「無理をする必要はないのに」
「マミたちだけに行かせるのは不安だし?」
「強がっちゃって」
「はん」
「まだあまり時間も経ってないのだから、ちゃんと心を労わりなさいよ」
「…………ん、ありがと」
「じゃあ、行きましょうか」
「それはいいけど、どこかアテはあるの?」
「探すつってもあのサイズじゃなあ」
「大丈夫、何箇所か」
「あら、頼もしい」
「どこよ?」
当然、推定に過ぎないわけだけど。
確信に近い自信があった。
「まずは巴マミ、あなたの家」
声を受けた彼女は、ぴたりと硬直し動かない。
仕方のないことかもしれない。
「それくらいにあの子は、あなたのことを慕っていたから」
「ほんとに、何で忘れちゃったのかしらね」
「覚悟の上だった。 あなたは何も悪くない」
そうやって心を痛めている巴マミの姿に、心から申し訳なさを感じる。
傷を知覚してくれているだけ、まどかも救われていると思うけれど。
その対価として支払われるものは、あまりに大きすぎはしないだろうか。
そう思ってしまうほど、目の前の彼女は痛ましかった。
「行きましょう、あなたが忘れ去ってしまったものを取り返したいと思うのなら」
「思い出せるかしら」
「きっと奇跡は、起こせるものよ」
それでも私はこの道を進もう。
彼女たちの心の痛みは、きっとそうすることでしか癒してあげられない。
その過程でどれほど傷付けてしまうのか、今更ながらに疑念が湧き上がって来たけれど。
もう、戻れない。
*****************************************
「確かに、こりゃすげーわ」
「この規模の結界は、そうそうお目にかかれないね」
そうして辿り着いた巴家には、巨大な結界があった。
何もかもを呑み込んでしまうような、巨大なものが。
「皆、準備はいい?」
「いつでもOKよ」
「ああ」
視線を交わす。
二人とも、その目に迷いはない。
心の内までは測りようがないが、各々の信ずるものを確かに燃やしていることは分かる。
「行きましょう」
背中にその存在をひしひしと感じながら。
戦場へと沈んでいく。
地の分意外に少ないからサクサクいけるんじゃね
正直どうせならセリフに名前欲しかった
正直どうせならセリフに名前欲しかった
降り立った先は広大な空間。
しばらくは何も見えなかったが、
ある程度の距離を進んだところに、魔獣の群れが蠢いていた。
ひとまず引き返し、作戦を打ち合わせる。
「無限射程の光線に対して、二次元的に戦うのは愚策でしかない」
「そりゃそうだな、ってことは近付いて殴るしかないか」
「腕が鳴るわね」
近接格闘、インファイト。
確かに一次元的なアプローチは有効だが、それだけでは数の暴力に押し潰されてしまう。
たった三人では、とても力が足りないだろう。
「そうとも限らない」
「なんだよ、お前が言い出したんじゃないか」
「一次元でないのなら、三次元かしら」
「ええ」
高さを利用して戦えばいい。
平面角から立体角にシフトすることで、回避の範囲は間違いなく大きくなる。
多くの攻撃を受け易い分、接近戦に従事する二人への注目を逸らす、いわば囮にもなる。
その役目は、空中移動性能のある私にしか出来なかった。
「魔獣は横陣形に広がっているし、両翼から潰していくのが賢明かしら」
「そうだな、踏み込みすぎて飲み込まれないように注意しねえと」
「取り囲もうと膨らみ始めたら、そこに集中して撃ち込む。
あなたたちは目の前の敵をただ殲滅することに注力して欲しい」
「了解よ」
「しかし君は大丈夫なのかい? さぞかし凄い密度で光線に襲われるだろうけれど」
「私を誰だと思っているの」
ただの戦いならともかく。
あの子を取り戻すための戦いで、私が遅れを取るはずがない。
おそらく難易度は一番高いだろうが、完全にこなしてみせる自信はあった。
「まずは私が削り取る、その間に距離を詰めて」
二人は力強く頷く。
接近しての戦闘、距離を置いての戦闘、どちらがより恐ろしいかと言われれば、間違いなく前者だ。
それなのにこの二人は、欠片も臆する様子を見せようとしない。
頼もしかった。
白翼を背から生やし、高く高く飛び上がる。
誰が合図するでもなく、同時に前進し、魔獣の群れと相見える。
「もしそこにまどかがいるのなら、力ずくでも返して貰う」
何をする時間も与えず、全力で矢を流星と降らせた。
魔獣の攻撃は途切れる気配も見せない。
ありとあらゆる角度から視界を埋め尽くすように光の束が押し寄せる。
とても一箇所に留まることはできない。
前後上下左右ありとあらゆる方向に飛び回り、平衡感覚はとうに失われて。
それでも動き続ける。
錐揉み回転の中、弦を引き絞る。
視界は全く定まらないが、放った矢は狙い違わず二人を取り囲もうとしていた魔獣を打ち砕く。
そのまま多少狙いを外し、中央付近の魔獣へ雨霰と破壊を降らせた。
(っ!?)
お返しのように、光線が矢の軌道をなぞるように飛来する。
さらに注目はこちらに集まっていく。
そろそろ回避行動に注力しなければならない。
尚も勢いを増す光線に辟易しながら、一気に高度を上げ離脱した。
(無事かしら!)
(平気よ)
(あんまり無茶しないでちょうだい、助かったのは確かだけれど)
(多少の無理は押し通さないと)
(まあ、そりゃそうなんだが)
(まだ半分も減っていない、気を引き締めて)
念話も意識をそれなりに使う。
心配してくれるのは嬉しいけれど、注意喚起もそこそこに打ち切った。
まだまだ、油断はできない。
そうして撃ち続けて、避け続けて、壊し続けて、守り続けて。
ようやく魔獣の一団を殲滅することに成功した。
一団を。
「嘘でしょう…………!?」
「冗談じゃねえ…………!」
終わった、と思った瞬間。
再び魔獣が湧き出た。
驚愕を口にする二人とは対照的に、私は言葉を漏らすことも出来ない。
力は、ほとんど尽き果てていた。
そもそもわずか三人で数百単位の魔獣を倒せたことが異常なのに。
また振り出しに戻ってしまって。
それでも、結局の所、やれることは一つしかなくて。
「潰す」
やらなければやられるだけ。
少しでも二人に掛かる負担を減らすべく、また空へと飛び上がる。
飛び上がって、強く下向きの力を受ける。
巴マミのリボンが私の足に絡み付き、勢いを殺す。
そして、私が数刻後にいたであろう空間を、光線の束が真っ白に塗り潰していく。
そのまま私は落下し、杏子に受け止められた。
「飛ぶぞ!」
掛け声と共に、視界はまた高く高く浮き上がる。
リボンで補強された槍の空中足場が即席で作られ、そこに三人で着地して。
地上に目をやってみれば、そこには焼け焦げた後すらも残っていない。
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