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元スレ朝倉「キョンくん起きて、はやく服着ないと妹ちゃん来ちゃうよ」

みんなの評価 : ★★
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>>402
いや、それはない
いや、それはない
俺たちが来るまで朝比奈さんと古泉はそれぞれの私事に没頭していたらしい。
古泉の前には理系科目の参考書が積まれ、その横に広がったノートの上には、
古泉の人となりをそのまま反映したかのような繊細で尖った文字が横罫と横罫の間を埋め尽くしている。
朝比奈さんのパイプ椅子の上にはティーン向けのファッション誌が開いた状態で乗っていて、
ふわふわした感じのモデルがこれまたふわふわした感じの服を着ている写真が掲載されていた。
「すみません」
と古泉がちっとも申し訳なさそうな声で言った。
「あなたが来るまでに終わらせようと思っていたのですが。
今日追加された課題も含めて、提出物が山積しているんですよ」
「悪いが、俺にはお前がなんのことを話しているのかいっこうにわからん」
「僕が先日の雪辱を晴らすべく、
今日はオセロの十番勝負をすると約束していたのをお忘れですか」
「その……先日というのは?」
「一昨日だったと思います」
ああ、それなら覚えていなくて当然だ。
「俺には二週間分の記憶がない。オセロの約束も知らん。
だからお前に謝られる謂れもない。
それよりもこの記憶喪失について、何か心当たりがあるなら教えてくれ」
古泉は笑顔を引き攣らせ気が動転した拍子にパイプ椅子から転げ落ちた――ということもなく、
爽やかな笑顔はそのまま、ノートにペンを走らせながらこう言った。
「記憶喪失、ですか。……ふむ。
あなたがこういった冗句を好む性格ではないことを承知で訊きますが、事実なんですね?」
古泉の前には理系科目の参考書が積まれ、その横に広がったノートの上には、
古泉の人となりをそのまま反映したかのような繊細で尖った文字が横罫と横罫の間を埋め尽くしている。
朝比奈さんのパイプ椅子の上にはティーン向けのファッション誌が開いた状態で乗っていて、
ふわふわした感じのモデルがこれまたふわふわした感じの服を着ている写真が掲載されていた。
「すみません」
と古泉がちっとも申し訳なさそうな声で言った。
「あなたが来るまでに終わらせようと思っていたのですが。
今日追加された課題も含めて、提出物が山積しているんですよ」
「悪いが、俺にはお前がなんのことを話しているのかいっこうにわからん」
「僕が先日の雪辱を晴らすべく、
今日はオセロの十番勝負をすると約束していたのをお忘れですか」
「その……先日というのは?」
「一昨日だったと思います」
ああ、それなら覚えていなくて当然だ。
「俺には二週間分の記憶がない。オセロの約束も知らん。
だからお前に謝られる謂れもない。
それよりもこの記憶喪失について、何か心当たりがあるなら教えてくれ」
古泉は笑顔を引き攣らせ気が動転した拍子にパイプ椅子から転げ落ちた――ということもなく、
爽やかな笑顔はそのまま、ノートにペンを走らせながらこう言った。
「記憶喪失、ですか。……ふむ。
あなたがこういった冗句を好む性格ではないことを承知で訊きますが、事実なんですね?」
「お前が承知している俺がどんなだか知らないが、
だいたいの人間は大真面目な顔で自分が記憶喪失にかかったなんて嘘はつかないと思うぜ」
「確かにそうですね。
僕も本心からあなたが嘘をついていると疑っていたわけではありませんよ。
でも、だからこそ、僕は驚いているんです」
古泉は小さく唇の端を吊り上げ、
「記憶を喪ったというのに、あなたは"不自然なほど"落ち着いている。
これも経験則の成せる業、といったところでしょうか」
まあ、わたしは誰ここはどこ状態に陥ったわけでもないからな。
俺は自分の名前を言えるし、自分の家がどこにあるのかも分かる。
ただ、ここ二週間――長門が海外留学することになってから今朝まで――の記憶がすっぽり抜け落ちているだけだ。
「初めに言っておきますが、この件と機関は無関係です。
あなたの記憶を消去する意味がありませんし、
なにより、現代の人類は、
記憶を選択的に消去する科学力を持ちえません」
窓際の空席と、ハルヒに弄り倒されている朝比奈さんを流し見し、
「未来人、あるいは宇宙人には、可能かもしれませんが」
と微笑する。
本心で言っているのか、冗談で言っているのか分からないところに腹が立つ。
生憎、俺が細やかな機微を読み取れるのは、相手が長門のときだけなのだ。
だいたいの人間は大真面目な顔で自分が記憶喪失にかかったなんて嘘はつかないと思うぜ」
「確かにそうですね。
僕も本心からあなたが嘘をついていると疑っていたわけではありませんよ。
でも、だからこそ、僕は驚いているんです」
古泉は小さく唇の端を吊り上げ、
「記憶を喪ったというのに、あなたは"不自然なほど"落ち着いている。
これも経験則の成せる業、といったところでしょうか」
まあ、わたしは誰ここはどこ状態に陥ったわけでもないからな。
俺は自分の名前を言えるし、自分の家がどこにあるのかも分かる。
ただ、ここ二週間――長門が海外留学することになってから今朝まで――の記憶がすっぽり抜け落ちているだけだ。
「初めに言っておきますが、この件と機関は無関係です。
あなたの記憶を消去する意味がありませんし、
なにより、現代の人類は、
記憶を選択的に消去する科学力を持ちえません」
窓際の空席と、ハルヒに弄り倒されている朝比奈さんを流し見し、
「未来人、あるいは宇宙人には、可能かもしれませんが」
と微笑する。
本心で言っているのか、冗談で言っているのか分からないところに腹が立つ。
生憎、俺が細やかな機微を読み取れるのは、相手が長門のときだけなのだ。
「それにしても、あなたが誰かの手によって記憶喪失にされたと仮定すると、これは非常に由々しき事態です。
我々が第一に重きをおいているものは、涼宮さんの心の平安です。
あなたの記憶喪失は、彼女にとって格好の不思議となりうる。
どうかこのことは、くれぐれも内密にお願いしますよ」
俺はべらべら喋る古泉に嫌気がさしてきたので、
「別に俺は犯人探しをしているわけじゃねえし、
ハルヒの奴に喋って話をややこしくするつもりもねえ。
心当たりがないなら、黙って首を横に振ればよかったんだ」
「これは失礼。しかし、あと一つだけ、あなたに忠告しておきます。
あなたの記憶が消されたということからは、ふたつの理由が考えられます。
ひとつはあなたの記憶を消去することによって、間接的に涼宮さんの動向を探ろうとした可能性。
ひとつはあなたがここ二週間に見知ったものに、下手人にとって都合の悪いものが含まれていたという可能性」
前者はハルヒの気分を掻き乱す方法としては、あまりに婉曲すぎる。
俺がこうして普段どおり登校し、普段どおりハルヒと接することができている以上、失敗したも同じだしな。
ありえるとすれば後者だ。
「ええ、僕も同じ考えです。
あなたはあなたの与り知らぬところで、もしくは意図的に、
知ってはならないことを知ってしまった。及んではいけない行為に及んでしまった。
それを無かったことにするために、誰かがあなたの記憶を抹消した」
秘密を知った組織の下っ端が、口封じのために殺される。
それのマイルド版が俺の身に起こったのだろうか。
我々が第一に重きをおいているものは、涼宮さんの心の平安です。
あなたの記憶喪失は、彼女にとって格好の不思議となりうる。
どうかこのことは、くれぐれも内密にお願いしますよ」
俺はべらべら喋る古泉に嫌気がさしてきたので、
「別に俺は犯人探しをしているわけじゃねえし、
ハルヒの奴に喋って話をややこしくするつもりもねえ。
心当たりがないなら、黙って首を横に振ればよかったんだ」
「これは失礼。しかし、あと一つだけ、あなたに忠告しておきます。
あなたの記憶が消されたということからは、ふたつの理由が考えられます。
ひとつはあなたの記憶を消去することによって、間接的に涼宮さんの動向を探ろうとした可能性。
ひとつはあなたがここ二週間に見知ったものに、下手人にとって都合の悪いものが含まれていたという可能性」
前者はハルヒの気分を掻き乱す方法としては、あまりに婉曲すぎる。
俺がこうして普段どおり登校し、普段どおりハルヒと接することができている以上、失敗したも同じだしな。
ありえるとすれば後者だ。
「ええ、僕も同じ考えです。
あなたはあなたの与り知らぬところで、もしくは意図的に、
知ってはならないことを知ってしまった。及んではいけない行為に及んでしまった。
それを無かったことにするために、誰かがあなたの記憶を抹消した」
秘密を知った組織の下っ端が、口封じのために殺される。
それのマイルド版が俺の身に起こったのだろうか。
キョンが朝倉と付き合ってるのが許せなかったハルヒの無意識の改変だろ
>>418
朝倉さんの主婦力は53万です
朝倉さんの主婦力は53万です
「こんなことはもう起こらないだろうが、いちおう用心する」
古泉は満足気に頷いた。
もしも本気で超常能力を持つ誰かに襲われたら、
同じく超常能力を持つ誰かに守ってもらうしか術はないのが、
これまでも、そしてこれからも変わらない一般人の俺ではあるが、
警戒しないことに越したことはないだろう。
「ところで、お前に頼みごとがあるんだが」
「何でしょう?」
「ここ二週間、俺がどこで何をしていたか、調べてくれないか」
「いいでしょう。言われずとも、そうする気でした。
機関は僕やあなたを含めた涼宮さんの周囲にいるすべての動向を把握するよう努めています。
プライバシーに直接関わることを除けば、
ここ二週間のあなたの行動は、これまでと同様に、
ほぼ全てが記録されていると言っても過言ではありません。
こんなことを聞かせても、いい気分はしないでしょうが」
「助かる」
「お安い御用です」
古泉はそこで並列作業をやめ、携帯を少し弄ると、課題を解くのに没頭しはじめた。
特進クラスの宿題の多さには同情するよ。
手伝ってやる気はさらさら起こらないがな。
古泉は満足気に頷いた。
もしも本気で超常能力を持つ誰かに襲われたら、
同じく超常能力を持つ誰かに守ってもらうしか術はないのが、
これまでも、そしてこれからも変わらない一般人の俺ではあるが、
警戒しないことに越したことはないだろう。
「ところで、お前に頼みごとがあるんだが」
「何でしょう?」
「ここ二週間、俺がどこで何をしていたか、調べてくれないか」
「いいでしょう。言われずとも、そうする気でした。
機関は僕やあなたを含めた涼宮さんの周囲にいるすべての動向を把握するよう努めています。
プライバシーに直接関わることを除けば、
ここ二週間のあなたの行動は、これまでと同様に、
ほぼ全てが記録されていると言っても過言ではありません。
こんなことを聞かせても、いい気分はしないでしょうが」
「助かる」
「お安い御用です」
古泉はそこで並列作業をやめ、携帯を少し弄ると、課題を解くのに没頭しはじめた。
特進クラスの宿題の多さには同情するよ。
手伝ってやる気はさらさら起こらないがな。
さて、これといったノルマも自主的に勉強する気もない俺は、
茫洋と横たわる余暇を潰すべく、本棚に近づいた。
長門からのメッセージを探すためじゃない。
純粋に読書するためだ。
ハイペリオン、鋼鉄都市、しあわせの理由と重厚なSFが続く中、
上弦の月を喰べる獅子を見つけて、それを手に取る。
『海外のSFばかりじゃなくて、たまには和製SFも読んでみないか』
『………あなたが選んで』
『これなんかどうだ?
いつも読んでるのと趣向が違ってて面白いかもしれないぜ。
借りてみたらどうだ』
森閑な図書館の一角。
長門は擦り切れた表紙を捲り、数頁に目を通し、
『いい』
と首を横にふった。
『そうか……』
『購入する』
それから俺達は書店を巡り、とある古本屋で同じものを見つけたのだった。
喫茶店に戻る頃には、主に俺がへとへとになっていた。
忘れられない、長門との思い出のひとつだ。
パイプ椅子に楽な姿勢で座ったそのとき、ハルヒが出し抜けに時計を見て「遅いわ!」と叫んだ。
特に大きな声でもないのに、霹靂神のごとき大音声で俺の気を引くのはなぜだろう。
神の機嫌に敏感な超能力者に感化されつつあるのか、俺は?
茫洋と横たわる余暇を潰すべく、本棚に近づいた。
長門からのメッセージを探すためじゃない。
純粋に読書するためだ。
ハイペリオン、鋼鉄都市、しあわせの理由と重厚なSFが続く中、
上弦の月を喰べる獅子を見つけて、それを手に取る。
『海外のSFばかりじゃなくて、たまには和製SFも読んでみないか』
『………あなたが選んで』
『これなんかどうだ?
いつも読んでるのと趣向が違ってて面白いかもしれないぜ。
借りてみたらどうだ』
森閑な図書館の一角。
長門は擦り切れた表紙を捲り、数頁に目を通し、
『いい』
と首を横にふった。
『そうか……』
『購入する』
それから俺達は書店を巡り、とある古本屋で同じものを見つけたのだった。
喫茶店に戻る頃には、主に俺がへとへとになっていた。
忘れられない、長門との思い出のひとつだ。
パイプ椅子に楽な姿勢で座ったそのとき、ハルヒが出し抜けに時計を見て「遅いわ!」と叫んだ。
特に大きな声でもないのに、霹靂神のごとき大音声で俺の気を引くのはなぜだろう。
神の機嫌に敏感な超能力者に感化されつつあるのか、俺は?
いったいどうしたんだと尋ねる俺の思いやりを華麗にシカトし、
それまで弄っていた朝比奈さんをもほっぽり出して、ハルヒはのしのしと
文芸部室と廊下を分かつドアに近づき、
「ちょっと職員室行ってくるから!」
と言って出ていってしまった。
何か不始末をしでかしいつ呼び出しをくらうともしれない時を悶々と過ごしていたハルヒが、
緊張感にたえきれなくなり自首したというストーリーが浮かんだが、
そもそもあいつの悪戯に後悔が伴ったためしはなく、(躊躇するような悪戯は最初からしない主義なのだ)
ましてや自首などするわけがないという結論に落ち着いたそのとき、朝比奈さんが隣のパイプ椅子に座り込んだ。
「ふぇえ、疲れましたぁ~」
ハルヒにさんざん胸を揉まれたり脇腹を撫で回されたりしたせいで、
仄かに上気した朝比奈さんは普段の十倍増しに妖艶で、
メイド服の胸元を締め付けるボタンを二つ外せば
MySweetAngelからMyFallenAngelになること請け合いだ。
「ハルヒと一緒に何をしてたんですか?」
「えっとぉ、今度一緒に服を買いに行くことになって、雑誌で下見してたんです。
わたし、欲しい服には予めチェックを入れていたんですけど、
涼宮さんが、わたしの体にきちんと合うか調べるって言って……」
寸法、図られちゃいましたと舌を出す朝比奈さん。
扇情的な仕草に脳みそがやられそうになるが、なんとか堪え、
「ハルヒがいない間に少し話があるんですが、聞いてもらえませんか」
それまで弄っていた朝比奈さんをもほっぽり出して、ハルヒはのしのしと
文芸部室と廊下を分かつドアに近づき、
「ちょっと職員室行ってくるから!」
と言って出ていってしまった。
何か不始末をしでかしいつ呼び出しをくらうともしれない時を悶々と過ごしていたハルヒが、
緊張感にたえきれなくなり自首したというストーリーが浮かんだが、
そもそもあいつの悪戯に後悔が伴ったためしはなく、(躊躇するような悪戯は最初からしない主義なのだ)
ましてや自首などするわけがないという結論に落ち着いたそのとき、朝比奈さんが隣のパイプ椅子に座り込んだ。
「ふぇえ、疲れましたぁ~」
ハルヒにさんざん胸を揉まれたり脇腹を撫で回されたりしたせいで、
仄かに上気した朝比奈さんは普段の十倍増しに妖艶で、
メイド服の胸元を締め付けるボタンを二つ外せば
MySweetAngelからMyFallenAngelになること請け合いだ。
「ハルヒと一緒に何をしてたんですか?」
「えっとぉ、今度一緒に服を買いに行くことになって、雑誌で下見してたんです。
わたし、欲しい服には予めチェックを入れていたんですけど、
涼宮さんが、わたしの体にきちんと合うか調べるって言って……」
寸法、図られちゃいましたと舌を出す朝比奈さん。
扇情的な仕草に脳みそがやられそうになるが、なんとか堪え、
「ハルヒがいない間に少し話があるんですが、聞いてもらえませんか」
「そのぅ、古泉くんには?」
朝比奈さんが対面を伺う。
気を遣ったのか偶然かは知らないが、
古泉は両の耳穴にイヤホンを差し込み、
音漏れ上等の大音量で英会話を聞いていた。
シャーペンは間断なく筆記体のアルファベットをノートに書き付けている。
「こいつにはさっき話しました。
……実は、俺にはここ二週間の記憶がないんです。
何か心当たりがあれば、何でもいいんです、言ってください」
朝比奈さんの反応は、予想どおりだった。
残念だが、仕方ないと自分を納得させる。
もしも朝比奈さんが関係しているとしたら、それは現代の朝比奈さんではなく、
もっと未来の、大人版朝比奈さんである可能性が高い。
飯
朝比奈さんが対面を伺う。
気を遣ったのか偶然かは知らないが、
古泉は両の耳穴にイヤホンを差し込み、
音漏れ上等の大音量で英会話を聞いていた。
シャーペンは間断なく筆記体のアルファベットをノートに書き付けている。
「こいつにはさっき話しました。
……実は、俺にはここ二週間の記憶がないんです。
何か心当たりがあれば、何でもいいんです、言ってください」
朝比奈さんの反応は、予想どおりだった。
残念だが、仕方ないと自分を納得させる。
もしも朝比奈さんが関係しているとしたら、それは現代の朝比奈さんではなく、
もっと未来の、大人版朝比奈さんである可能性が高い。
飯
だが、朝比奈さんは独自の感性で、
記憶消滅の不審点を洗い出してくれた。
「古泉くんの言うとおり、キョンくんの記憶が消えたのには、
その犯人にとって都合がよかったからだと思います。
でも、それならそれで、どうして二週間まるごと消そうと思ったのかなぁ……。
もしもわたしがキョンくんに恥ずかしいところを見られて、
キョンくんの記憶の一部だけ消せる力があったら、
恥ずかしいところを見られた一瞬だけ消すと思うんです。
そうしたら、キョンくんもこうして記憶を消されたことに気がつかないかもしれないでしょ?」
確かにそうだ。
鈍い俺は「ぼーっとしていた」程度の言い訳で自分を納得させてしまうことだろう。
朝比奈さんは続けてこうも言った。
「キョンくんは、今朝記憶をなくしたことに気づいたんですよね。
詳しくいうと、どの時点で気づいたんですか。
新聞を見たとき?TVを見たとき?それとも、家族と話したとき?」
言葉に詰まった。
目の前に全裸の朝倉が寝ていたとき、と正直に打ち明けられたらどんなに気が楽だろう。
無垢な小動物みたいな双眸をこちらに向ける朝比奈さんにそんなことが言えるはずもなく、
しかし適当な言い訳が思い浮かばないまま刻々と時が過ぎ……。
「たっだいまー!!」
ハルヒが帰ってきた。傍らには同じ背ほどの女生徒を連れている。
やれやれ新しい依頼人か、と顔を注視した俺が馬鹿だった。
口に含んだお茶を噴出し、古泉のノートにドでかい染みを作ってしまったからだ。
俺に一日で三個の肝を潰させた女、朝倉涼子がそこにいた。
記憶消滅の不審点を洗い出してくれた。
「古泉くんの言うとおり、キョンくんの記憶が消えたのには、
その犯人にとって都合がよかったからだと思います。
でも、それならそれで、どうして二週間まるごと消そうと思ったのかなぁ……。
もしもわたしがキョンくんに恥ずかしいところを見られて、
キョンくんの記憶の一部だけ消せる力があったら、
恥ずかしいところを見られた一瞬だけ消すと思うんです。
そうしたら、キョンくんもこうして記憶を消されたことに気がつかないかもしれないでしょ?」
確かにそうだ。
鈍い俺は「ぼーっとしていた」程度の言い訳で自分を納得させてしまうことだろう。
朝比奈さんは続けてこうも言った。
「キョンくんは、今朝記憶をなくしたことに気づいたんですよね。
詳しくいうと、どの時点で気づいたんですか。
新聞を見たとき?TVを見たとき?それとも、家族と話したとき?」
言葉に詰まった。
目の前に全裸の朝倉が寝ていたとき、と正直に打ち明けられたらどんなに気が楽だろう。
無垢な小動物みたいな双眸をこちらに向ける朝比奈さんにそんなことが言えるはずもなく、
しかし適当な言い訳が思い浮かばないまま刻々と時が過ぎ……。
「たっだいまー!!」
ハルヒが帰ってきた。傍らには同じ背ほどの女生徒を連れている。
やれやれ新しい依頼人か、と顔を注視した俺が馬鹿だった。
口に含んだお茶を噴出し、古泉のノートにドでかい染みを作ってしまったからだ。
俺に一日で三個の肝を潰させた女、朝倉涼子がそこにいた。
「だ、大丈夫ですか、キョンくん!?」
すかさず朝比奈さんが背中を摩ってくれる。
古泉は何事かとノート、俺、ドア付近へと視線を移し、
すべてを悟ったような神妙な顔になった。
ハルヒは団長席に座り、無様に咳き込む俺を睥睨し、
「驚きすぎよ。古泉くんはもっと怒っていいのよ?ノートが台無しじゃない」
「いいんですよ。わざとではなさそうですし、ノートは換えが利きますから」
俄に喧騒に満ちた文芸部室に、朝倉は悠々と足を踏み入れる。
中央のテーブルを通り過ぎ、さらには団長席を通りすぎて、窓際のパイプ椅子へ。
俺の気管がお茶を吐き出し終えた頃、皆が挨拶を交わした。
「こんにちわ」と古泉。
「どうして遅くなったんですか?」と朝比奈さん。
「定期試験をどうするか、先生と相談していたの。
あっちとこっちでは授業の進み方が違うから……」と困り顔の朝倉。
「朝倉さんは、最初からみんなと同じ内容のテストでいいって言ってたのに、
あいつら、細かいところでうるさくてね。
あんまりしつこかったから、あたしが引っ張ってきたのよ」と誇らしげなハルヒ。
「それはそれは。災難でしたね」と朝倉を労う古泉。
「涼宮さんらしいです」と苦笑する朝比奈さん。
俺は談笑の輪には加わらず、朝倉が相談事を切り出す瞬間を待っていた。
だが、待てども待てどもその時は訪れない。
朝比奈さんが朝倉の分のお茶を用意し始めたあたりで、いてもたってもいられなくなり、
「朝倉はどうして文芸部室に来たんだ?
何か俺たちに頼みたいことがあったんじゃないのか?」
すかさず朝比奈さんが背中を摩ってくれる。
古泉は何事かとノート、俺、ドア付近へと視線を移し、
すべてを悟ったような神妙な顔になった。
ハルヒは団長席に座り、無様に咳き込む俺を睥睨し、
「驚きすぎよ。古泉くんはもっと怒っていいのよ?ノートが台無しじゃない」
「いいんですよ。わざとではなさそうですし、ノートは換えが利きますから」
俄に喧騒に満ちた文芸部室に、朝倉は悠々と足を踏み入れる。
中央のテーブルを通り過ぎ、さらには団長席を通りすぎて、窓際のパイプ椅子へ。
俺の気管がお茶を吐き出し終えた頃、皆が挨拶を交わした。
「こんにちわ」と古泉。
「どうして遅くなったんですか?」と朝比奈さん。
「定期試験をどうするか、先生と相談していたの。
あっちとこっちでは授業の進み方が違うから……」と困り顔の朝倉。
「朝倉さんは、最初からみんなと同じ内容のテストでいいって言ってたのに、
あいつら、細かいところでうるさくてね。
あんまりしつこかったから、あたしが引っ張ってきたのよ」と誇らしげなハルヒ。
「それはそれは。災難でしたね」と朝倉を労う古泉。
「涼宮さんらしいです」と苦笑する朝比奈さん。
俺は談笑の輪には加わらず、朝倉が相談事を切り出す瞬間を待っていた。
だが、待てども待てどもその時は訪れない。
朝比奈さんが朝倉の分のお茶を用意し始めたあたりで、いてもたってもいられなくなり、
「朝倉はどうして文芸部室に来たんだ?
何か俺たちに頼みたいことがあったんじゃないのか?」
ハルヒと朝比奈さんは、ぽかんとした顔で俺を見ていた。
朝倉と古泉は俺が何をいわんとしているのか察しているようだった。
俺は止めの一言を口にした。
「朝倉は、依頼人だろ?」
ハルヒはぱちくりと瞬きし、"記憶喪失した人間を見るような目"でこう言った。
「あんた何言ってんの?
朝倉さんは、SOS団の仲間じゃない」
奇妙な沈黙が部屋に降りた。
やっとのことで声を絞り出す。
「いつから?」
「半月ほど前からよ。
留学した有希と入れ替わりに朝倉さんがカナダから帰ってきて、
欠員補充のために、あたしが誘ったのよ。
そのとき、あんたも隣にいたじゃない。本気で忘れたの?」
「………は、はは。そうだよな。
いや、悪い。悪い冗談だった」
停止していた時間が動き出す。
ハルヒは憮然として「朝のときみたいに、いきなり変なこと言わないで」と言い、興味をパソコンに移した。
古泉は俺を慮ってか、何も言わずにイヤホンを耳に挿し直し、
今更俺の失言の意味に気づいた朝比奈さんは、急に落ち着きをなくし、
当の朝倉は鞄を椅子の隣に置いて、本棚の近くをうろつきはじめた。
朝倉と古泉は俺が何をいわんとしているのか察しているようだった。
俺は止めの一言を口にした。
「朝倉は、依頼人だろ?」
ハルヒはぱちくりと瞬きし、"記憶喪失した人間を見るような目"でこう言った。
「あんた何言ってんの?
朝倉さんは、SOS団の仲間じゃない」
奇妙な沈黙が部屋に降りた。
やっとのことで声を絞り出す。
「いつから?」
「半月ほど前からよ。
留学した有希と入れ替わりに朝倉さんがカナダから帰ってきて、
欠員補充のために、あたしが誘ったのよ。
そのとき、あんたも隣にいたじゃない。本気で忘れたの?」
「………は、はは。そうだよな。
いや、悪い。悪い冗談だった」
停止していた時間が動き出す。
ハルヒは憮然として「朝のときみたいに、いきなり変なこと言わないで」と言い、興味をパソコンに移した。
古泉は俺を慮ってか、何も言わずにイヤホンを耳に挿し直し、
今更俺の失言の意味に気づいた朝比奈さんは、急に落ち着きをなくし、
当の朝倉は鞄を椅子の隣に置いて、本棚の近くをうろつきはじめた。
ハルヒが優しい声音で訊いた。
「何を探してるの?」
「読みかけの本が見当たらないの。
帰るときには必ず本棚に直すようにしていたんだけど」
「ああ、あの古めかしい本ね。
あたしも一緒に探してあげる。
直しただいたいの位置は憶えてる?」
「右端の棚の、上のあたりだったはずよ」
「念のために聞くけど、本の名前は?」
「上弦の月を喰べる獅子」
どきりとした。それを察したのか、
「あっ!」
素っ頓狂な声をあげて、ハルヒがすっ飛んでくる。
ハルヒは本を取り上げ、その角で俺の頭をべちべち叩きながら、
「あんたが読んでたなら、さっさと言いなさいよ!
朝倉さんが困ってるのを見て、楽しんでたわけ?」
「違うんだ。そういうわけじゃ……」
「そういうわけもこういうわけもないでしょ?
昨日も、その前の日も、朝倉さんがこの本を読んでたことは知ってるはずじゃない」
「何を探してるの?」
「読みかけの本が見当たらないの。
帰るときには必ず本棚に直すようにしていたんだけど」
「ああ、あの古めかしい本ね。
あたしも一緒に探してあげる。
直しただいたいの位置は憶えてる?」
「右端の棚の、上のあたりだったはずよ」
「念のために聞くけど、本の名前は?」
「上弦の月を喰べる獅子」
どきりとした。それを察したのか、
「あっ!」
素っ頓狂な声をあげて、ハルヒがすっ飛んでくる。
ハルヒは本を取り上げ、その角で俺の頭をべちべち叩きながら、
「あんたが読んでたなら、さっさと言いなさいよ!
朝倉さんが困ってるのを見て、楽しんでたわけ?」
「違うんだ。そういうわけじゃ……」
「そういうわけもこういうわけもないでしょ?
昨日も、その前の日も、朝倉さんがこの本を読んでたことは知ってるはずじゃない」
その台詞を聞いた瞬間、ありふれた比喩だが、頭の中が真っ白になったのを覚えている。
我に帰ると、帰路の中程を、呼吸困難に喘ぎながら全力疾走している自分がいた。
『うるさい!俺は知らないんだ。
朝倉がSOS団に入ったことも、この本を読んでたことも、今初めて聞かされたんだよ!』
『キョ、キョン……?』
『朝倉、お前もお前だ。
SOS団に入って、何のつもりなんだ?
窓際の席は元々は長門の席だったんだ。
そこに座って、本を読んで、長門になったつもりか?』
『キョンくん、わたしは……』
朝倉が何かを言いかけ、それを聞く前に、俺は部室を飛び出していた。
やっちまった、という後悔に、
言いたいことを後さき考えずにぶちまけた爽快感が優った。
ハルヒの機嫌取り?糞食らえだ。
そんなもんは古泉に任せときゃなんとかなる。
誰が俺を責められる?
二週間分の記憶をなくし、天敵と遭遇し、
そいつと学校にいるあいだ四六時中同じ空間にいることを強要され、
あげく耐え切れず爆発したことに何の罪があるってんだ。
………………。
…………。
……。
人間の怒りは二、三十分が限度だ。
家に到着するころには、頭が冷え、決して実を付けることのない後悔が根を張り始めていた。
我に帰ると、帰路の中程を、呼吸困難に喘ぎながら全力疾走している自分がいた。
『うるさい!俺は知らないんだ。
朝倉がSOS団に入ったことも、この本を読んでたことも、今初めて聞かされたんだよ!』
『キョ、キョン……?』
『朝倉、お前もお前だ。
SOS団に入って、何のつもりなんだ?
窓際の席は元々は長門の席だったんだ。
そこに座って、本を読んで、長門になったつもりか?』
『キョンくん、わたしは……』
朝倉が何かを言いかけ、それを聞く前に、俺は部室を飛び出していた。
やっちまった、という後悔に、
言いたいことを後さき考えずにぶちまけた爽快感が優った。
ハルヒの機嫌取り?糞食らえだ。
そんなもんは古泉に任せときゃなんとかなる。
誰が俺を責められる?
二週間分の記憶をなくし、天敵と遭遇し、
そいつと学校にいるあいだ四六時中同じ空間にいることを強要され、
あげく耐え切れず爆発したことに何の罪があるってんだ。
………………。
…………。
……。
人間の怒りは二、三十分が限度だ。
家に到着するころには、頭が冷え、決して実を付けることのない後悔が根を張り始めていた。
まぁキョンにしてみれば
自分を二度殺そうとした殺人者が目の前にいるだけでも
精神状態はやばかろう
自分を二度殺そうとした殺人者が目の前にいるだけでも
精神状態はやばかろう
>>441
え?マジで?
え?マジで?
>>442
マジ
マジ
>>445
つまり、全員自分のことをイケメンと勘違いしてるのかwwww
つまり、全員自分のことをイケメンと勘違いしてるのかwwww
>>444
東北乙
東北乙
>>447
北海道だけじゃないのか?
北海道だけじゃないのか?
道理で>>444が何言ってるのかわからなかったわけだ
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