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元スレ朝倉「キョンくん起きて、はやく服着ないと妹ちゃん来ちゃうよ」
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キョン「俺の眠りを邪魔したな!」ドガァ!
朝倉「ずひゅっ!!」
キョン「この雌豚がァ!調子にのるなよ!」ドカバキゲシ
朝倉「ずひゅっ!!」
キョン「この雌豚がァ!調子にのるなよ!」ドカバキゲシ
>>6
けど続かないのは相変わらず
けど続かないのは相変わらず
キョン「ホアチャアッー!」
朝倉「ホゲベンベー!」
キョン「何言ってんだお前」
朝倉「///」
朝倉「ホゲベンベー!」
キョン「何言ってんだお前」
朝倉「///」
>>9
構わん書k…書いてくださいお願いします
構わん書k…書いてくださいお願いします
「キョンくん――、はやく――ないと――来ちゃうよ」
穏やかな目覚めだった。
目覚まし時計の甲高い金属音でも妹の喧しいあだ名の連呼でもない、
どこまでも優しいメゾソプラノの美声の持ち主が、俺の耳のすぐ傍で、何事かを囁いていた。
「う……ん……?」
微睡みと覚醒の微妙な中間地点で、眠気に抗い、薄く目を開けてみる。
眼と鼻の先3センチもないところに、真っ白な壁がそそり立っていた。
頭を動かすのも億劫で、視線だけを動かすと、
どうやらその白亜は豊かな曲線を描いているらしく、
視界の端には――これはなんだろう――桜桃色の突起がある。
ほぼ無意識で鼻先を押し付けると、得も言われぬ弾力に押し返された。
加えてこのすべすべとした絹のような肌触りのよさ。
これはきっと夢だ。間違いなく夢だ。
どうせあと数分もしないうちに、俺は無慈悲な目覚まし時計あるいは無遠慮な妹によって、現実世界に起床せしめられる。
今はこの感触を、楽しめるだけ楽しめばいいのさ。
本能的希求に従い、思い切り顔を埋める。
またしてもすぐ傍で、くすぐったそうな声がした。今度は明瞭に聞き取れた。
「キョンくん起きて、はやく服着ないと妹ちゃん来ちゃうよ」
その声を、俺はよく知っていた。
忘れるわけがない。忘れろという方が無理な話だ。
恥も外聞も捨ててベッドから転がり落ちる。
カーテンの隙間から差し込む朝日の中、豊満な裸体をシーツでくるんだ朝倉涼子が、無様に腰砕けた俺を見つめていた。
穏やかな目覚めだった。
目覚まし時計の甲高い金属音でも妹の喧しいあだ名の連呼でもない、
どこまでも優しいメゾソプラノの美声の持ち主が、俺の耳のすぐ傍で、何事かを囁いていた。
「う……ん……?」
微睡みと覚醒の微妙な中間地点で、眠気に抗い、薄く目を開けてみる。
眼と鼻の先3センチもないところに、真っ白な壁がそそり立っていた。
頭を動かすのも億劫で、視線だけを動かすと、
どうやらその白亜は豊かな曲線を描いているらしく、
視界の端には――これはなんだろう――桜桃色の突起がある。
ほぼ無意識で鼻先を押し付けると、得も言われぬ弾力に押し返された。
加えてこのすべすべとした絹のような肌触りのよさ。
これはきっと夢だ。間違いなく夢だ。
どうせあと数分もしないうちに、俺は無慈悲な目覚まし時計あるいは無遠慮な妹によって、現実世界に起床せしめられる。
今はこの感触を、楽しめるだけ楽しめばいいのさ。
本能的希求に従い、思い切り顔を埋める。
またしてもすぐ傍で、くすぐったそうな声がした。今度は明瞭に聞き取れた。
「キョンくん起きて、はやく服着ないと妹ちゃん来ちゃうよ」
その声を、俺はよく知っていた。
忘れるわけがない。忘れろという方が無理な話だ。
恥も外聞も捨ててベッドから転がり落ちる。
カーテンの隙間から差し込む朝日の中、豊満な裸体をシーツでくるんだ朝倉涼子が、無様に腰砕けた俺を見つめていた。
>>9
お前は出来る奴だと信じていた!
お前は出来る奴だと信じていた!
「いったいどうしたの?」
「どうしたのもこうしたもじゃねえ。
どうしてお前がここに、俺の部屋にいるんだ!?
それになんで俺とお前は、その、……裸なんだよ!?」
「記憶が混乱しているのね」
きょとんとした表情から一転、慈しみに満ちた微笑を浮かべる朝倉。
「どこから説明しようかな」
三角座りになり、片頬に指を当てる仕草はたまらなく妖艶で、
しかし脳裏に刻み込まれた記憶が、俺が朝倉にとって然るべき態度を思い出させた。
こいつは俺を二度殺そうとした。
未遂に終わったからよかったものの、助けが来なけりゃ確実に俺は死んでいた。
動悸と目眩がいっぺんに襲いかかってくる。ついでに吐き気も三秒遅れて到着した。
ああくそ、δ波からβ波まで、こんなに急激に脳波が遷移する朝は初めてだ。
俺は言った。
「出て行ってくれ」
朝倉は激昂し白刃を俺に突き立てる――こともなく、素直に応じた。
「わたしもそれがいいと思うわ。
妹ちゃんにこの状況を見せるのは不適切だものね?
学校で会いましょう。キョンくんが落ち着いたその時に、質問に答えてあげるわ」
すぅっと、空気に溶け込むみたいに朝倉の姿が消えていく。
いつか長門がしていたような、ナントカ遮蔽フィールドなるものが展開されたのだろう。
「どうしたのもこうしたもじゃねえ。
どうしてお前がここに、俺の部屋にいるんだ!?
それになんで俺とお前は、その、……裸なんだよ!?」
「記憶が混乱しているのね」
きょとんとした表情から一転、慈しみに満ちた微笑を浮かべる朝倉。
「どこから説明しようかな」
三角座りになり、片頬に指を当てる仕草はたまらなく妖艶で、
しかし脳裏に刻み込まれた記憶が、俺が朝倉にとって然るべき態度を思い出させた。
こいつは俺を二度殺そうとした。
未遂に終わったからよかったものの、助けが来なけりゃ確実に俺は死んでいた。
動悸と目眩がいっぺんに襲いかかってくる。ついでに吐き気も三秒遅れて到着した。
ああくそ、δ波からβ波まで、こんなに急激に脳波が遷移する朝は初めてだ。
俺は言った。
「出て行ってくれ」
朝倉は激昂し白刃を俺に突き立てる――こともなく、素直に応じた。
「わたしもそれがいいと思うわ。
妹ちゃんにこの状況を見せるのは不適切だものね?
学校で会いましょう。キョンくんが落ち着いたその時に、質問に答えてあげるわ」
すぅっと、空気に溶け込むみたいに朝倉の姿が消えていく。
いつか長門がしていたような、ナントカ遮蔽フィールドなるものが展開されたのだろう。
俺の傍を通りすぎる気配さえもなく、朝倉はいなくなった。
これはすべて夢、でなければ微睡みが見せた幻覚だった、と現実逃避したいところだが、
シーツに残る体温と女の子特有の甘い匂いが、
完膚なきまでに想像の余白を黒インキで塗り潰している。
とりあえず服を着よう。
妹は俺の裸など見慣れているが、朝っぱらから兄が全裸で腰砕けている状況を、
説明しろと言われて真実を暈しつつ言い訳できる自信はまったくない。
妹がおふくろにいいつけでもしたら、事態は最悪の一途を歩む。それだけは避けたい。
「スウェットどこにやったっけ……」
ベッドの上を探る。妹の足音が聞こえはじめたあたりで、時間との勝負が始まる。
上は枕のそばにあった。下はなぜかベッドの真下にくしゃくしゃに丸まっていた。
「キョーンーくんっ。おっはよー!」
「あ、ああ。おはよう」
間一髪。スウェットの下をヘソのあたりまで一気に上げたのと同時に、妹が部屋に入ってきた。
「今日はじぶんでおきたんだねー。えらいえらい。
ごはんもうできてるよー」
「すぐ行く」
いつものやりとりを終えて、妹は階下へ。
妹は気付かなかったようだが、実のところ、俺は「すぐ行く」と答えるのが精一杯の状況だった。
スウェットに足を通したときに感じた股間の違和感は、思春期のあの日を想起させる。
ああ、これが夢精ならどれだけよかっただろう。
しかし悲しいかな、俺の混濁した記憶は眼窩をスクリーンに、昨夜のダイジェスト版を勝手に上映し始める。
いくら寝ぼけていたとはいえ、裸の朝倉を見た時点で気づくべきだったのだ。
まったくもって信じがたいことだが――俺は朝倉と寝ていた。
これはすべて夢、でなければ微睡みが見せた幻覚だった、と現実逃避したいところだが、
シーツに残る体温と女の子特有の甘い匂いが、
完膚なきまでに想像の余白を黒インキで塗り潰している。
とりあえず服を着よう。
妹は俺の裸など見慣れているが、朝っぱらから兄が全裸で腰砕けている状況を、
説明しろと言われて真実を暈しつつ言い訳できる自信はまったくない。
妹がおふくろにいいつけでもしたら、事態は最悪の一途を歩む。それだけは避けたい。
「スウェットどこにやったっけ……」
ベッドの上を探る。妹の足音が聞こえはじめたあたりで、時間との勝負が始まる。
上は枕のそばにあった。下はなぜかベッドの真下にくしゃくしゃに丸まっていた。
「キョーンーくんっ。おっはよー!」
「あ、ああ。おはよう」
間一髪。スウェットの下をヘソのあたりまで一気に上げたのと同時に、妹が部屋に入ってきた。
「今日はじぶんでおきたんだねー。えらいえらい。
ごはんもうできてるよー」
「すぐ行く」
いつものやりとりを終えて、妹は階下へ。
妹は気付かなかったようだが、実のところ、俺は「すぐ行く」と答えるのが精一杯の状況だった。
スウェットに足を通したときに感じた股間の違和感は、思春期のあの日を想起させる。
ああ、これが夢精ならどれだけよかっただろう。
しかし悲しいかな、俺の混濁した記憶は眼窩をスクリーンに、昨夜のダイジェスト版を勝手に上映し始める。
いくら寝ぼけていたとはいえ、裸の朝倉を見た時点で気づくべきだったのだ。
まったくもって信じがたいことだが――俺は朝倉と寝ていた。
惨憺たる気分で通学路の急勾配を歩く。
熱も咳も鼻水も出ていないが、この欝な表情を見せるだけで、医者は登校不可の診断書をくれるだろう。
しかし仮病を使って休んでみたところで、事態はいっこうに進展しない。
逃げているだけではどうにもならないことを、俺はこの二年間で学習したつもりだ。
「よーっす、キョン。死人みたいな顔してるぜ」
肩を叩かれ、振り返ってみれば、
「谷口か」
「テンション低いなー。昨日何かあったか?」
「何もねえよ」
こいつに打ち明け話をするのは、ホームルームでクラスメイト全員に話しているのと同じだ。
まあ、本当のことを言ったところで「朝倉と寝た?妄想もほどほどにしとけ」などと一笑に付されるだけだろうがな。
とにもかくにも、今は自分の認識と世界のズレを修正する必要がある。
「キョーンー、いいから言えって。人生経験豊富な谷口様が聞いてやるからよ」
「なあ、朝倉はいつカナダからこっちに帰ってきたんだ?」
「な、なんだよいきなり。
あいつが帰ってきたのは二週間前で、キョンも涼宮と一緒に歓迎会来てたじゃねえか」
記憶にない。俺が?ハルヒと一緒に?朝倉の帰国を祝った?
ありえない。もしも朝倉が目の前に現れたら、俺が取るべき選択肢は一つだ。
他力本願と笑われようが知ったこっちゃねえ。
長門に連絡して、可及的速やかに朝倉をカナダに蜻蛉返りさせるのさ。
熱も咳も鼻水も出ていないが、この欝な表情を見せるだけで、医者は登校不可の診断書をくれるだろう。
しかし仮病を使って休んでみたところで、事態はいっこうに進展しない。
逃げているだけではどうにもならないことを、俺はこの二年間で学習したつもりだ。
「よーっす、キョン。死人みたいな顔してるぜ」
肩を叩かれ、振り返ってみれば、
「谷口か」
「テンション低いなー。昨日何かあったか?」
「何もねえよ」
こいつに打ち明け話をするのは、ホームルームでクラスメイト全員に話しているのと同じだ。
まあ、本当のことを言ったところで「朝倉と寝た?妄想もほどほどにしとけ」などと一笑に付されるだけだろうがな。
とにもかくにも、今は自分の認識と世界のズレを修正する必要がある。
「キョーンー、いいから言えって。人生経験豊富な谷口様が聞いてやるからよ」
「なあ、朝倉はいつカナダからこっちに帰ってきたんだ?」
「な、なんだよいきなり。
あいつが帰ってきたのは二週間前で、キョンも涼宮と一緒に歓迎会来てたじゃねえか」
記憶にない。俺が?ハルヒと一緒に?朝倉の帰国を祝った?
ありえない。もしも朝倉が目の前に現れたら、俺が取るべき選択肢は一つだ。
他力本願と笑われようが知ったこっちゃねえ。
長門に連絡して、可及的速やかに朝倉をカナダに蜻蛉返りさせるのさ。
俺が黙っていると、谷口は勝手に喋りだした。
「おいおい、もしかしてキョンの悩みは朝倉絡みか?
親友として忠告しといてやるけどな。
朝倉と付き合おうなんて夢の夢のそのまた夢みたいなことは考えないほうがいいぜ。
朝倉は一年の空白期の間にAA+からAAAに進化しちまった。
もはや俺たちみたいな凡人が太刀打ちできるレベルじゃねえんだよ。
キョンは席が近いから、結構話す機会も多いみたいだけどな、変に期待したら、後悔するぜ。
美人は無意識に男を惹きつけ、これまた無意識に失恋させるんだよ。
あっちは性に開放的だから、朝倉も色々経験して、
同じくらい経験してる男以外には満足できねえ体になってるだろうな。
はぁ……、朝倉の胸揉みてえ。あれ揉めたら死んでもいいぜ、俺」
朝方その胸に顔をうずめてきた、とは口が裂けても言えない。
くだらない猥談を大きな声でべらべらと語る谷口と、他人と思われる程度の距離をとりながら歩いていると、
北高指定の制服姿が増えてきた。自然と歩調が落ちる。気が重い。
それでも無情に距離は詰まり、俺は校門をくぐり、昇降口を通り、教室の戸の框を踏んだ。
ええい、ままよ。
瞑っていた目を開く。
「それでね、お父さんったら……あらキョンくん、おはよう」
「遅いわよ、キョン。もっと時間に余裕をもって登校しなさいよね」
ハルヒは小馬鹿にしたような顔で、朝倉は委員長然とした爽やかな笑顔で、俺に視線を注いでいる。
俺はのろのろとした足取りで自席についた。
背後のハルヒと右斜め後ろの朝倉が談笑を再開する。
なんだ。なんなんだこの自然さは。
収まっていた動悸が、ゆっくりと、次第にスピードをあげて肋骨をたたき始める。
「どうしてお前がここにいる?」
「おいおい、もしかしてキョンの悩みは朝倉絡みか?
親友として忠告しといてやるけどな。
朝倉と付き合おうなんて夢の夢のそのまた夢みたいなことは考えないほうがいいぜ。
朝倉は一年の空白期の間にAA+からAAAに進化しちまった。
もはや俺たちみたいな凡人が太刀打ちできるレベルじゃねえんだよ。
キョンは席が近いから、結構話す機会も多いみたいだけどな、変に期待したら、後悔するぜ。
美人は無意識に男を惹きつけ、これまた無意識に失恋させるんだよ。
あっちは性に開放的だから、朝倉も色々経験して、
同じくらい経験してる男以外には満足できねえ体になってるだろうな。
はぁ……、朝倉の胸揉みてえ。あれ揉めたら死んでもいいぜ、俺」
朝方その胸に顔をうずめてきた、とは口が裂けても言えない。
くだらない猥談を大きな声でべらべらと語る谷口と、他人と思われる程度の距離をとりながら歩いていると、
北高指定の制服姿が増えてきた。自然と歩調が落ちる。気が重い。
それでも無情に距離は詰まり、俺は校門をくぐり、昇降口を通り、教室の戸の框を踏んだ。
ええい、ままよ。
瞑っていた目を開く。
「それでね、お父さんったら……あらキョンくん、おはよう」
「遅いわよ、キョン。もっと時間に余裕をもって登校しなさいよね」
ハルヒは小馬鹿にしたような顔で、朝倉は委員長然とした爽やかな笑顔で、俺に視線を注いでいる。
俺はのろのろとした足取りで自席についた。
背後のハルヒと右斜め後ろの朝倉が談笑を再開する。
なんだ。なんなんだこの自然さは。
収まっていた動悸が、ゆっくりと、次第にスピードをあげて肋骨をたたき始める。
「どうしてお前がここにいる?」
「どうしてって……ここはわたしの席じゃない?」
「俺が言っているのは、そういう意味じゃない。
どうしてお前がこの世界に存在してるのか聞いてるんだよ」
「キョン、あんたさっきから何言ってんの?話の邪魔をするなら、」
「うるさい、お前は黙ってろ!」
びくりとハルヒの体が震える。
しん、と静まり返った教室の空気に、俺は一年前の冬の日を思い出した。
ハルヒが消えて、朝倉がいて、朝比奈さんや古泉や長門が一般人化した、あの、悪夢のような世界を。
朝倉は困ったように目を細め、
「ごめんなさい。わたし、本当にキョンくんが何を言っているのか分からないの」
どこまでも白を切るつもりらしい。
俺が激情のやり場を机に定めたそのとき、がらがらと間の抜けた音がして、担任岡部がやってきた。
「お、今日はやけに行儀がいいな」
入れ替わるように教室を出る。
「気分が悪いので保健室に行ってきます」
流石にどこの教室でもHRが始まっているらしく、廊下はがらんと空いていた。
同じ轍は踏まない。
俺は真っ直ぐ教員室に行き、おっとりとした雰囲気の若い事務に、
岡部に頼まれて学籍簿の一部をコピーするよう頼まれたと嘘をついた。
事務さんはとくに怪しむこともなく、学籍簿を目の前に広げてくれた。
二年――朝倉涼子の名前が当然のように記載されている。
俺は続いて、SOS団のメンバーの名前も一緒に探した。
古泉は特進クラスだから、簡単に見つけることができた。この世界ではきちんと北高に在籍しているようだ。
「俺が言っているのは、そういう意味じゃない。
どうしてお前がこの世界に存在してるのか聞いてるんだよ」
「キョン、あんたさっきから何言ってんの?話の邪魔をするなら、」
「うるさい、お前は黙ってろ!」
びくりとハルヒの体が震える。
しん、と静まり返った教室の空気に、俺は一年前の冬の日を思い出した。
ハルヒが消えて、朝倉がいて、朝比奈さんや古泉や長門が一般人化した、あの、悪夢のような世界を。
朝倉は困ったように目を細め、
「ごめんなさい。わたし、本当にキョンくんが何を言っているのか分からないの」
どこまでも白を切るつもりらしい。
俺が激情のやり場を机に定めたそのとき、がらがらと間の抜けた音がして、担任岡部がやってきた。
「お、今日はやけに行儀がいいな」
入れ替わるように教室を出る。
「気分が悪いので保健室に行ってきます」
流石にどこの教室でもHRが始まっているらしく、廊下はがらんと空いていた。
同じ轍は踏まない。
俺は真っ直ぐ教員室に行き、おっとりとした雰囲気の若い事務に、
岡部に頼まれて学籍簿の一部をコピーするよう頼まれたと嘘をついた。
事務さんはとくに怪しむこともなく、学籍簿を目の前に広げてくれた。
二年――朝倉涼子の名前が当然のように記載されている。
俺は続いて、SOS団のメンバーの名前も一緒に探した。
古泉は特進クラスだから、簡単に見つけることができた。この世界ではきちんと北高に在籍しているようだ。
朝比奈さんも三年次に文系コースに決めたことを知っていたので、こちらも名前を見つけることができた。
もちろん名前欄の下を辿れば、鶴屋さんの名前がある。
「ありがとうございました」
「コピーはしなくてもいいの?」
聞こえなかったフリをして足早に職員室を去る。
事務の人がおっとりした外見通り、俺の来室もさっさと忘れてくれることを祈る。
俺は自分の教室でも、古泉の教室でも、朝比奈さんの教室でもなく、文芸部室を目指した。
鍵はあいていた。物にあふれたこの部屋も、人がいなければ殺伐としている。
パイプ椅子に座り、机に突っ伏した。
窓際の椅子はからっぽで、差し込む太陽の光の中で、埃が虚しく踊っていた。
"ここにも"長門はいない。
当たり前だ。学籍名簿のどこを探しても、長門の名前は見当たらなかった。
肝要なのは、ここで取り乱さないことだ。
まずは朝目が覚めてから今までに起きたこと、そして得られた情報を総合しなければ。
朝倉が俺の部屋からこっそり抜け出すために情報操作していたことから、
この世界は超常現象が人知れず跳梁跋扈していることを認めているようだ。
古泉は超能力者、朝比奈さんは未来人という設定を保っている。
ハルヒの環境を変化させる能力もそのままだと考えていいだろう。
謎は三つ。
なぜ朝倉が復活しているのか。
なぜ長門がどこにもいないのか。
なぜ俺は朝倉が復活して以来二週間の記憶を失っているのか。
もちろん名前欄の下を辿れば、鶴屋さんの名前がある。
「ありがとうございました」
「コピーはしなくてもいいの?」
聞こえなかったフリをして足早に職員室を去る。
事務の人がおっとりした外見通り、俺の来室もさっさと忘れてくれることを祈る。
俺は自分の教室でも、古泉の教室でも、朝比奈さんの教室でもなく、文芸部室を目指した。
鍵はあいていた。物にあふれたこの部屋も、人がいなければ殺伐としている。
パイプ椅子に座り、机に突っ伏した。
窓際の椅子はからっぽで、差し込む太陽の光の中で、埃が虚しく踊っていた。
"ここにも"長門はいない。
当たり前だ。学籍名簿のどこを探しても、長門の名前は見当たらなかった。
肝要なのは、ここで取り乱さないことだ。
まずは朝目が覚めてから今までに起きたこと、そして得られた情報を総合しなければ。
朝倉が俺の部屋からこっそり抜け出すために情報操作していたことから、
この世界は超常現象が人知れず跳梁跋扈していることを認めているようだ。
古泉は超能力者、朝比奈さんは未来人という設定を保っている。
ハルヒの環境を変化させる能力もそのままだと考えていいだろう。
謎は三つ。
なぜ朝倉が復活しているのか。
なぜ長門がどこにもいないのか。
なぜ俺は朝倉が復活して以来二週間の記憶を失っているのか。
古泉や朝比奈さんに尋ねたところで、
ハルヒと同じ様に、朝倉が存在していることを当たり前と認識している可能性大だ。
俺が二週間分の記憶を喪失していることについても、それはあくまで俺個人の問題に違いない。
ああ、長門よ。どうしてお前はこんな肝心なときに消えちまったんだ。
一番頼りになる人間、否、ヒューマノイドインターフェイスがいないことは、
問題解決における最大の端緒が失われたにも等しかった。
俺はせめてもの手がかりと、本棚に詰まった本の頁を手当たりしだいにめくりはじめた。
どうか長門からのメッセージが綴られた栞か何かが挟まっていますように。
没頭すること数分。ふいに、柔らかい何かが背中に触れた。
「こんなところで何してるの?授業はもう始まってるわよ?」
「授業なんてどうでもいい。俺は今――あ、朝倉!?」
俺は飛び退き、結果、派手に本棚にぶつかった。
数冊のハードカバーが鋭い一撃を俺の頭頂部に叩き込みつつ床に散らばったが、そんなことはどうでもいい。
ハルヒと同じ様に、朝倉が存在していることを当たり前と認識している可能性大だ。
俺が二週間分の記憶を喪失していることについても、それはあくまで俺個人の問題に違いない。
ああ、長門よ。どうしてお前はこんな肝心なときに消えちまったんだ。
一番頼りになる人間、否、ヒューマノイドインターフェイスがいないことは、
問題解決における最大の端緒が失われたにも等しかった。
俺はせめてもの手がかりと、本棚に詰まった本の頁を手当たりしだいにめくりはじめた。
どうか長門からのメッセージが綴られた栞か何かが挟まっていますように。
没頭すること数分。ふいに、柔らかい何かが背中に触れた。
「こんなところで何してるの?授業はもう始まってるわよ?」
「授業なんてどうでもいい。俺は今――あ、朝倉!?」
俺は飛び退き、結果、派手に本棚にぶつかった。
数冊のハードカバーが鋭い一撃を俺の頭頂部に叩き込みつつ床に散らばったが、そんなことはどうでもいい。
朝倉はにこにこと屈託のない笑みを浮かべて、
「さっきはびっくりしたわ。
キョンくんったら、みんなの前でいきなりあんなことを言うんだもの。
後で涼宮さんに謝ってあげてね?
彼女、あなたに怒鳴られて少し傷ついていたみたいだから」
とまあそんなことを言った。
一方、俺は朝倉と距離を取ることで、頭の中がいっぱいだった。
こいつの一挙手一投足に、呼吸が乱される。
繰り返すが、こいつは俺を二度殺そうとしているのだ。
谷口が朝倉の容姿をAAAと評するなら、俺は朝倉の危険度をSSと評する。
「立ち話もなんだし、座らない?
キョンくん、今にも倒れそうなくらい酷い顔よ」
誰のせいだと思ってやがる。
朝倉はくるりと踵を返し、勝手知ったるといった風にお茶を入れ、二つの湯のみに注いだ。
「さっきはびっくりしたわ。
キョンくんったら、みんなの前でいきなりあんなことを言うんだもの。
後で涼宮さんに謝ってあげてね?
彼女、あなたに怒鳴られて少し傷ついていたみたいだから」
とまあそんなことを言った。
一方、俺は朝倉と距離を取ることで、頭の中がいっぱいだった。
こいつの一挙手一投足に、呼吸が乱される。
繰り返すが、こいつは俺を二度殺そうとしているのだ。
谷口が朝倉の容姿をAAAと評するなら、俺は朝倉の危険度をSSと評する。
「立ち話もなんだし、座らない?
キョンくん、今にも倒れそうなくらい酷い顔よ」
誰のせいだと思ってやがる。
朝倉はくるりと踵を返し、勝手知ったるといった風にお茶を入れ、二つの湯のみに注いだ。
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