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元スレ朋也「軽音部? うんたん?」
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朋也「………」
こいつの言わんとすることはわかる。
つまりは…
春原「行ってみない? 軽音部」
どういう心境の変化だろう。こいつも丸くなったものだ。
でも…
朋也「…行くか。どうせ、暇だしな」
俺も、同じだった。
春原「ああ、暇だからね」
弁当箱を小脇に抱えた平沢が戻ってくるのが見える。
あいつに言ったら、どんな顔をするだろうか。
喜んでくれるだろうか…こんな俺たちでも。
だとするなら、それは少しだけ贅沢なことだと思った。
―――――――――――――――――――――
がちゃり
部室のドアを開け放つ。
唯「ヘイ、ただいまっ」
律「おー、弁当箱回収でき…」
こいつの言わんとすることはわかる。
つまりは…
春原「行ってみない? 軽音部」
どういう心境の変化だろう。こいつも丸くなったものだ。
でも…
朋也「…行くか。どうせ、暇だしな」
俺も、同じだった。
春原「ああ、暇だからね」
弁当箱を小脇に抱えた平沢が戻ってくるのが見える。
あいつに言ったら、どんな顔をするだろうか。
喜んでくれるだろうか…こんな俺たちでも。
だとするなら、それは少しだけ贅沢なことだと思った。
―――――――――――――――――――――
がちゃり
部室のドアを開け放つ。
唯「ヘイ、ただいまっ」
律「おー、弁当箱回収でき…」
春原「よぅ、邪魔するぞ」
朋也「ちっす」
ずかずと入室する俺たち。
律「って、唯、この二匹も連れて来たんかいっ」
春原「単位が匹とはなんだ、こらぁ」
唯「遊びにきてくれたんだよん」
律「うげぇ、めんどくさぁ…」
春原「あんだと、丁重にもてなせ、こらぁ」
紬「いらっしゃい。今、お茶とケーキ用意するね」
春原「お、ムギちゃんはやっぱいい子だね。どっかの部分ハゲと違ってさ」
律「どの部分のこと言ってんだ、コラっ! 返答次第では殺すっ!」
唯「まぁま、りっちゃん、落ち着いて…」
唯「ほら、岡崎くんも、春原くんも座った座った」
平沢に促され、席に着く。
律「ぐぬぬ…」
朋也「ちっす」
ずかずと入室する俺たち。
律「って、唯、この二匹も連れて来たんかいっ」
春原「単位が匹とはなんだ、こらぁ」
唯「遊びにきてくれたんだよん」
律「うげぇ、めんどくさぁ…」
春原「あんだと、丁重にもてなせ、こらぁ」
紬「いらっしゃい。今、お茶とケーキ用意するね」
春原「お、ムギちゃんはやっぱいい子だね。どっかの部分ハゲと違ってさ」
律「どの部分のこと言ってんだ、コラっ! 返答次第では殺すっ!」
唯「まぁま、りっちゃん、落ち着いて…」
唯「ほら、岡崎くんも、春原くんも座った座った」
平沢に促され、席に着く。
律「ぐぬぬ…」
春原「けっ…」
唯「険悪だねぇ~…それじゃ、仲直りに、アレをしよう」
唯「はい、春原くん、これくわえて」
春原「ん、ああ…」
春原に棒状の駄菓子をくわえさせる。
唯「で、りっちゃんは、反対側くわえて、食べていく」
唯「そうすると、真ん中までいったとき、仲直りできますっ」
律「やっほう、た~のしそぅ~」
春原「ヒューっ、最高にクールだねっ」
律「って、アホかっ!」
春原「って、アホかっ!」
唯「うわぁ、ふたり同時にノリツッコミされちゃった…」
唯「こういう時って、どう反応すればいいのかわかんないよ…」
唯「澪ちゃん、正しい解答をプリーズっ」
澪「いや、別に何もしなくていいと思うぞ…」
唯「何もしない、か…なるほど、深いね…」
唯「険悪だねぇ~…それじゃ、仲直りに、アレをしよう」
唯「はい、春原くん、これくわえて」
春原「ん、ああ…」
春原に棒状の駄菓子をくわえさせる。
唯「で、りっちゃんは、反対側くわえて、食べていく」
唯「そうすると、真ん中までいったとき、仲直りできますっ」
律「やっほう、た~のしそぅ~」
春原「ヒューっ、最高にクールだねっ」
律「って、アホかっ!」
春原「って、アホかっ!」
唯「うわぁ、ふたり同時にノリツッコミされちゃった…」
唯「こういう時って、どう反応すればいいのかわかんないよ…」
唯「澪ちゃん、正しい解答をプリーズっ」
澪「いや、別に何もしなくていいと思うぞ…」
唯「何もしない、か…なるほど、深いね…」
澪「そのまんまの意味だからな…」
唯「どうやら、私には高度すぎたみたいで、さばき切れなかったよ…」
唯「ごめんね、りっちゃん、春原くん…」
春原「僕、こいつの土俵に入っていけそうにないんだけど…」
律「ああ、心配するな。付き合いの長いあたしたちでも、たまにそうなるから」
唯「えへへ」
まるで褒められたかのように照れていた。
紬「はい、ふたりとも。どうぞ」
琴吹が俺と春原にそれぞれせんべいとケーキをくれた。
春原「ありがと、ムギちゃん」
朋也「サンキュ」
紬「お茶も用意するから、待っててね」
言って、食器棚の方へ歩いていく。
唯「岡崎くん、おせんべいひとつもらっていい?」
朋也「ああ、別に。つーか、俺も、譲ってもらった身だしな」
唯「どうやら、私には高度すぎたみたいで、さばき切れなかったよ…」
唯「ごめんね、りっちゃん、春原くん…」
春原「僕、こいつの土俵に入っていけそうにないんだけど…」
律「ああ、心配するな。付き合いの長いあたしたちでも、たまにそうなるから」
唯「えへへ」
まるで褒められたかのように照れていた。
紬「はい、ふたりとも。どうぞ」
琴吹が俺と春原にそれぞれせんべいとケーキをくれた。
春原「ありがと、ムギちゃん」
朋也「サンキュ」
紬「お茶も用意するから、待っててね」
言って、食器棚の方へ歩いていく。
唯「岡崎くん、おせんべいひとつもらっていい?」
朋也「ああ、別に。つーか、俺も、譲ってもらった身だしな」
唯「えへへ、ありがと」
俺の隣に腰掛ける。
梓「唯先輩っ」
それと同時、中野が金切り声を上げた。
唯「な、なに? あずにゃん…」
梓「そこに座っちゃダメです! 私の席と代わってください!」
唯「へ? な、なんで…」
梓「その人の隣は、危険だからですっ」
唯「そんなことないよ、安全地帯だよ。地元だよ、ホームだよ」
梓「違いますっ、敵地です、アウェイですっ! いいから、とにかく離れてくださいっ」
席を立ち、平沢のところまでやってくる。
梓「ふんっ!」
唯「わぁっ」
ぐいぐいと引っ張り、椅子から立たせた。
席が空いた瞬間、さっと自分が座る。
唯「うう…強引過ぎるよぉ、あずにゃん…」
俺の隣に腰掛ける。
梓「唯先輩っ」
それと同時、中野が金切り声を上げた。
唯「な、なに? あずにゃん…」
梓「そこに座っちゃダメです! 私の席と代わってください!」
唯「へ? な、なんで…」
梓「その人の隣は、危険だからですっ」
唯「そんなことないよ、安全地帯だよ。地元だよ、ホームだよ」
梓「違いますっ、敵地です、アウェイですっ! いいから、とにかく離れてくださいっ」
席を立ち、平沢のところまでやってくる。
梓「ふんっ!」
唯「わぁっ」
ぐいぐいと引っ張り、椅子から立たせた。
席が空いた瞬間、さっと自分が座る。
唯「うう…強引過ぎるよぉ、あずにゃん…」
肩を落とし、とぼとぼと旧中野の席へ。
梓「………」
中野は俺に嫌な視線を送り続けていた。
澪「梓…なにも睨むことないだろ。やめなさい」
梓「……はい」
少ししおれたようになり、俺から目を切った。
律「ははは、相変わらず嫌われてんなぁ」
朋也「………」
春原「なに、おまえ、出会い頭にチューでもしようとしたの?」
春原「ズキュゥゥゥウンって擬音鳴らしながらさ」
朋也「無駄無駄無駄無駄ぁっ」
ドドドドドッ!
春原のケーキをフォークで崩していく。
春原「うわ、あにすんだよっ」
紬「おまたせ、お茶が入っ…」
梓「………」
中野は俺に嫌な視線を送り続けていた。
澪「梓…なにも睨むことないだろ。やめなさい」
梓「……はい」
少ししおれたようになり、俺から目を切った。
律「ははは、相変わらず嫌われてんなぁ」
朋也「………」
春原「なに、おまえ、出会い頭にチューでもしようとしたの?」
春原「ズキュゥゥゥウンって擬音鳴らしながらさ」
朋也「無駄無駄無駄無駄ぁっ」
ドドドドドッ!
春原のケーキをフォークで崩していく。
春原「うわ、あにすんだよっ」
紬「おまたせ、お茶が入っ…」
そこへ、琴吹がティーカップを持って現れた。
紬「…ごめんなさい。ケーキ、気に入らなかったのね…」
ぼろぼろになったケーキを見て、琴吹が悲しそうな顔でそうこぼした。
春原「い、いや、これはこいつが…」
朋也「死ね、死ね、ってつぶやきながらフォーク突き刺してたぞ」
春原「僕、どんだけ病んでんだよっ!?」
紬「…う、うぅ…」
その綺麗な瞳に涙を溜め始めていた。
律「あーあ、春原が泣ぁかしたぁ」
春原「僕じゃないだろっ!」
春原「岡崎、てめぇっ!」
朋也「そのケーキ、一気食いすれば、なかったことにしてもらえるかもな」
春原「つーか、もとはといえばおまえが…」
紬「…ぐすん…」
朋也「ああ、ほら、早くしないと、本泣きに入っちまうぞ」
紬「…ごめんなさい。ケーキ、気に入らなかったのね…」
ぼろぼろになったケーキを見て、琴吹が悲しそうな顔でそうこぼした。
春原「い、いや、これはこいつが…」
朋也「死ね、死ね、ってつぶやきながらフォーク突き刺してたぞ」
春原「僕、どんだけ病んでんだよっ!?」
紬「…う、うぅ…」
その綺麗な瞳に涙を溜め始めていた。
律「あーあ、春原が泣ぁかしたぁ」
春原「僕じゃないだろっ!」
春原「岡崎、てめぇっ!」
朋也「そのケーキ、一気食いすれば、なかったことにしてもらえるかもな」
春原「つーか、もとはといえばおまえが…」
紬「…ぐすん…」
朋也「ああ、ほら、早くしないと、本泣きに入っちまうぞ」
春原「う…くそぅ…」
皿を掴み、顔を近づけて犬のように食べ始めた。
律「きちゃないなぁ…」
春原「ああ~、超うまかったっ」
たん、と皿をテーブルに置く。
紬「あはは、なんだか滑稽♪」
春原「切り替え早すぎませんかっ!?」
律「わははは! さすがムギ!」
がちゃり
さわ子「お菓子の用意できてるぅ~?」
扉を開け、さわ子さんがだるそうに現れた。
律「入ってきて、第一声がそれかい」
さわ子「いいじゃない、別に。って、あら…」
俺と春原に気づく。
春原「よぅ、さわちゃん」
皿を掴み、顔を近づけて犬のように食べ始めた。
律「きちゃないなぁ…」
春原「ああ~、超うまかったっ」
たん、と皿をテーブルに置く。
紬「あはは、なんだか滑稽♪」
春原「切り替え早すぎませんかっ!?」
律「わははは! さすがムギ!」
がちゃり
さわ子「お菓子の用意できてるぅ~?」
扉を開け、さわ子さんがだるそうに現れた。
律「入ってきて、第一声がそれかい」
さわ子「いいじゃない、別に。って、あら…」
俺と春原に気づく。
春原「よぅ、さわちゃん」
朋也「ちっす」
さわ子「あれ、あんたたち…なに? 新入部員?」
春原「んなわけないじゃん。ただ間借りしてるだけだよ」
春原「まぁ、今風に言うと、借り暮らしのアリエナイッティって感じかな」
某ジブリ映画を思いっきり冒涜していた。
さわ子「確かに、そんなタイトルありえないけど…」
さわ子「なに? つまるところ、たまり場にしてるってだけ?」
春原「噛み砕いて言うと、そうなるかな」
さわ子「…ダメよ。そんなの許されないわ」
やはり、顧問として、部外者が居座ってしまうのを認めるわけにはいかないんだろうか…。
唯「さわちゃん、どうして? 私たちは、別に気にしてないんだよ?」
律「私たちって…あたし、まだなにも言ってないんだけど」
唯「じゃあ、りっちゃんは反対派なの?」
律「う…まぁ、いっても、そんな嫌って程じゃないけどさ…」
唯「ほら、お偉いさんもこう言ってらっしゃるわけだし…」
さわ子「あれ、あんたたち…なに? 新入部員?」
春原「んなわけないじゃん。ただ間借りしてるだけだよ」
春原「まぁ、今風に言うと、借り暮らしのアリエナイッティって感じかな」
某ジブリ映画を思いっきり冒涜していた。
さわ子「確かに、そんなタイトルありえないけど…」
さわ子「なに? つまるところ、たまり場にしてるってだけ?」
春原「噛み砕いて言うと、そうなるかな」
さわ子「…ダメよ。そんなの許されないわ」
やはり、顧問として、部外者が居座ってしまうのを認めるわけにはいかないんだろうか…。
唯「さわちゃん、どうして? 私たちは、別に気にしてないんだよ?」
律「私たちって…あたし、まだなにも言ってないんだけど」
唯「じゃあ、りっちゃんは反対派なの?」
律「う…まぁ、いっても、そんな嫌って程じゃないけどさ…」
唯「ほら、お偉いさんもこう言ってらっしゃるわけだし…」
さわ子「そういうことじゃないわ」
唯「なら、どうして?」
さわ子「お菓子の供給が減ったら困るじゃないっ」
ずるぅっ!
紬「先生、それなら気にしないでください。ちゃんと用意しますから」
さわ子「いつものクオリティを維持したまま?」
紬「はい、もちろん」
さわ子「じゃ、いいわ」
あっさり許可が下りてしまった。
なんともいい加減な顧問だった。
―――――――――――――――――――――
さわ子「それにしても…なんだか懐かしい光景ね」
律「なにが?」
さわ子「いや、岡崎と春原のことよ」
春原「あん? 僕たち?」
さわ子「ええ。覚えてない? あんたたちが初めて会った時のこと」
唯「なら、どうして?」
さわ子「お菓子の供給が減ったら困るじゃないっ」
ずるぅっ!
紬「先生、それなら気にしないでください。ちゃんと用意しますから」
さわ子「いつものクオリティを維持したまま?」
紬「はい、もちろん」
さわ子「じゃ、いいわ」
あっさり許可が下りてしまった。
なんともいい加減な顧問だった。
―――――――――――――――――――――
さわ子「それにしても…なんだか懐かしい光景ね」
律「なにが?」
さわ子「いや、岡崎と春原のことよ」
春原「あん? 僕たち?」
さわ子「ええ。覚えてない? あんたたちが初めて会った時のこと」
さわ子「宿直室で、お茶飲みながら話してたじゃない?」
さわ子「あの時と、なんとなく重なって見えちゃってね」
この人も、俺たちと同様、あの日のことを覚えてくれていたのだ。
さわ子「まぁ、今は、ふたりともが顔腫らしてるわけだけど…」
さわ子「あの時は、春原が大喧嘩してきて、顔がひどいことになってたのよね」
思い出したのか、可笑しそうにやさしく微笑んだ。
さわ子「あなたたち、知ってる? このふたりの、馴・れ・初・め」
唯「うん。春原くんから、聞いたよ」
さわ子「あら? そうなの? 意外ね…」
驚いたように春原を見る。
さわ子「まぁ、でも、このふたりがわざわざ遊びに来るくらいだしね」
さわ子「それくらい仲はいいんでしょう」
春原「まぁ、それも、僕とムギちゃんの仲がめちゃいいってだけの話なんだけどね」
紬「えっと…白昼夢って、ちょっと怖いな」
春原「寝言は寝て言えってことっすかっ!?」
さわ子「あの時と、なんとなく重なって見えちゃってね」
この人も、俺たちと同様、あの日のことを覚えてくれていたのだ。
さわ子「まぁ、今は、ふたりともが顔腫らしてるわけだけど…」
さわ子「あの時は、春原が大喧嘩してきて、顔がひどいことになってたのよね」
思い出したのか、可笑しそうにやさしく微笑んだ。
さわ子「あなたたち、知ってる? このふたりの、馴・れ・初・め」
唯「うん。春原くんから、聞いたよ」
さわ子「あら? そうなの? 意外ね…」
驚いたように春原を見る。
さわ子「まぁ、でも、このふたりがわざわざ遊びに来るくらいだしね」
さわ子「それくらい仲はいいんでしょう」
春原「まぁ、それも、僕とムギちゃんの仲がめちゃいいってだけの話なんだけどね」
紬「えっと…白昼夢って、ちょっと怖いな」
春原「寝言は寝て言えってことっすかっ!?」
律「わははは!」
さわ子「拒絶されてるじゃない」
春原「く…これからさ」
さわ子「ま、がんばんなさいよ、男の子」
ばしっと気合を入れるように、背を叩いていた。
朋也「…あのさ、さわ子さん」
さわ子「ん?」
朋也「あの時のことだけど、やっぱ、幸村のジィさんと打ち合わせしてたのか」
さわ子「ああ…やっぱり、わかっちゃう?」
朋也「まぁな。なんか、でき過ぎてたっていうかさ」
さわ子「そうね。あの話は幸村先生が私に持ちかけてきたんだけどね」
さわ子「私、春原の担任だったから。以前からあんたたちのことで、よく話をされてたのよ」
さわ子「どうにかしてやらないといけない連中がいる、ってね」
やっぱり、そうだった。全て、見透かされていたんだ。
春原「あのジィさん、なにかと世話焼きたがるよね」
さわ子「拒絶されてるじゃない」
春原「く…これからさ」
さわ子「ま、がんばんなさいよ、男の子」
ばしっと気合を入れるように、背を叩いていた。
朋也「…あのさ、さわ子さん」
さわ子「ん?」
朋也「あの時のことだけど、やっぱ、幸村のジィさんと打ち合わせしてたのか」
さわ子「ああ…やっぱり、わかっちゃう?」
朋也「まぁな。なんか、でき過ぎてたっていうかさ」
さわ子「そうね。あの話は幸村先生が私に持ちかけてきたんだけどね」
さわ子「私、春原の担任だったから。以前からあんたたちのことで、よく話をされてたのよ」
さわ子「どうにかしてやらないといけない連中がいる、ってね」
やっぱり、そうだった。全て、見透かされていたんだ。
春原「あのジィさん、なにかと世話焼きたがるよね」
さわ子「それは、あんたたちが、幸村先生にとって…最後の教え子だからよ」
朋也「最後…?」
さわ子「幸村先生ね、今年で退職されるのよ」
朋也「そうだったのか…知らなかったよ」
春原「僕も」
朋也「でも、俺の担任だったのは一年の時だし…」
朋也「今は担任持ってないんじゃなかったっけか」
さわ子「最後の教え子っていうのは、担任を持ってるとか、そういう意味じゃないわよ」
さわ子「最後に、手間暇かけて指導した、って意味よ」
朋也「ああ…」
さわ子「幸村先生はね、5年前まで、工業高校で教鞭を執っていたの」
さわ子「一時期、生徒の素行が問題になって、有名になった学校ね」
どこの学校を指しているかはわかった。
町の不良が集まる悪名高い高校だ。
さわ子「そこで、ずっと生活指導をしていたのよ」
朋也「あの細い体で?」
朋也「最後…?」
さわ子「幸村先生ね、今年で退職されるのよ」
朋也「そうだったのか…知らなかったよ」
春原「僕も」
朋也「でも、俺の担任だったのは一年の時だし…」
朋也「今は担任持ってないんじゃなかったっけか」
さわ子「最後の教え子っていうのは、担任を持ってるとか、そういう意味じゃないわよ」
さわ子「最後に、手間暇かけて指導した、って意味よ」
朋也「ああ…」
さわ子「幸村先生はね、5年前まで、工業高校で教鞭を執っていたの」
さわ子「一時期、生徒の素行が問題になって、有名になった学校ね」
どこの学校を指しているかはわかった。
町の不良が集まる悪名高い高校だ。
さわ子「そこで、ずっと生活指導をしていたのよ」
朋也「あの細い体で?」
さわ子「もちろん、今よりは若かったし…それにそういうのは力じゃないでしょ?」
朋也「だな…」
さわ子「とにかく厳しかったの」
春原「マジで…?」
さわ子「ええ、本当よ。親も生活指導室に放り込んで説教したり…武勇伝はたくさんあるわ」
信じられない…。
さわ子「そんな型破りな指導者だったけど…」
さわ子「でも、たったひとつ、貫いたことがあったの」
朋也「なにを」
さわ子「絶対に、学校を辞めさせない」
さわ子「自主退学もさせなかったの」
さわ子「幸村先生は、学校を社会の縮図と考えていたのね」
さわ子「学校で過ごす三年間は、勉強のためだけじゃない」
さわ子「人と接して、友達を作って、協力して…」
さわ子「成功もあったり、失敗もあったり…」
朋也「だな…」
さわ子「とにかく厳しかったの」
春原「マジで…?」
さわ子「ええ、本当よ。親も生活指導室に放り込んで説教したり…武勇伝はたくさんあるわ」
信じられない…。
さわ子「そんな型破りな指導者だったけど…」
さわ子「でも、たったひとつ、貫いたことがあったの」
朋也「なにを」
さわ子「絶対に、学校を辞めさせない」
さわ子「自主退学もさせなかったの」
さわ子「幸村先生は、学校を社会の縮図と考えていたのね」
さわ子「学校で過ごす三年間は、勉強のためだけじゃない」
さわ子「人と接して、友達を作って、協力して…」
さわ子「成功もあったり、失敗もあったり…」
8割くらい>>1のレス
てかずっとレスしてるのか。
まあ読んでる自分には需要あるからいいけど。
まあ読んでる自分には需要あるからいいけど。
さわ子「楽しいこともあったり、辛いこともあったり…」
さわ子「そして、誰もが入学した当初に描いていた卒業という目標に向かって、歩んでいく」
さわ子「それを途中で諦めたり、挫折しちゃったりしたら…」
さわ子「人生に挫折したも同じ」
さわ子「その後に待つ、もっと大きな人生に立ち向かっていけるはずがない」
さわ子「だから、生徒たちを叱るだけでなく、励ましながら、共に歩んでいったのね」
さわ子「でも、この学校に来てからは…」
さわ子「その必要がなくなったの。わかるわよね?」
さわ子「みんなが優秀なの」
さわ子「きっと、幸村先生にとっての教育、自分の教員生活の中で為すべきこと…」
さわ子「それを必要とされず、そして、否定されてしまった5年間だったと思うの」
さわ子「ほとんどの生徒が…中には違う子たちもいるけど…」
平沢たち、軽音部のメンバーをぐるっと見渡した。
さわ子「この学校で過ごす三年間は、人生のひとつのステップとしか考えていないでしょうから」
さわ子「自分の役目だと思っていたことは、ここではなにひとつ必要とされていない」
さわ子「そして、誰もが入学した当初に描いていた卒業という目標に向かって、歩んでいく」
さわ子「それを途中で諦めたり、挫折しちゃったりしたら…」
さわ子「人生に挫折したも同じ」
さわ子「その後に待つ、もっと大きな人生に立ち向かっていけるはずがない」
さわ子「だから、生徒たちを叱るだけでなく、励ましながら、共に歩んでいったのね」
さわ子「でも、この学校に来てからは…」
さわ子「その必要がなくなったの。わかるわよね?」
さわ子「みんなが優秀なの」
さわ子「きっと、幸村先生にとっての教育、自分の教員生活の中で為すべきこと…」
さわ子「それを必要とされず、そして、否定されてしまった5年間だったと思うの」
さわ子「ほとんどの生徒が…中には違う子たちもいるけど…」
平沢たち、軽音部のメンバーをぐるっと見渡した。
さわ子「この学校で過ごす三年間は、人生のひとつのステップとしか考えていないでしょうから」
さわ子「自分の役目だと思っていたことは、ここではなにひとつ必要とされていない」
さわ子「それを感じ続けた5年間」
さわ子「そして、その教員生活も、この春終わってしまうの」
朋也「………」
俺も春原も、何も言えなかった。
結局、俺たちは、ガキだったのだ。
あの人がいなければ、俺たちは進級さえできずにいた。
さわ子「…そういうことよ」
朋也「今度、菓子折りでも持っていかなきゃな」
さわ子「それは、いい心がけね。きっと、喜ぶわよ」
春原「水アメでいいよね」
さわ子「馬鹿、お歳召されてるんだから、食べづらいでしょ…」
さわ子「っていうか、そのチョイスも最悪だし」
律「ほんっと、アホだな、おまえは」
春原「るせぇ」
…最後の生徒。
やけにリアルに、その言葉だけが残っていた。
本当に、俺たちでよかったのだろうか。
さわ子さんは、最後に言った。
さわ子「そして、その教員生活も、この春終わってしまうの」
朋也「………」
俺も春原も、何も言えなかった。
結局、俺たちは、ガキだったのだ。
あの人がいなければ、俺たちは進級さえできずにいた。
さわ子「…そういうことよ」
朋也「今度、菓子折りでも持っていかなきゃな」
さわ子「それは、いい心がけね。きっと、喜ぶわよ」
春原「水アメでいいよね」
さわ子「馬鹿、お歳召されてるんだから、食べづらいでしょ…」
さわ子「っていうか、そのチョイスも最悪だし」
律「ほんっと、アホだな、おまえは」
春原「るせぇ」
…最後の生徒。
やけにリアルに、その言葉だけが残っていた。
本当に、俺たちでよかったのだろうか。
さわ子さんは、最後に言った。
光栄なことね。
いつまでも、ふたりは幸村先生の記憶に残るんでしょうから…と。
これから過ごしていく穏やかな時間…
その中であの人はふと思い出すのだ。
自分が教員だった頃を…。
そして…
最後に卒業させた、出来の悪い生徒ふたりのことを。
―――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――
笑ってくれるだろうか。
ただでさえ細いその目を、それ以上に細めて。
何も見えなくなるくらいに。
笑ってくれるだろうか。
その思い出を胸に。
笑ってくれるだろうか…
長い、旅の終わりに。
―――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――
いつまでも、ふたりは幸村先生の記憶に残るんでしょうから…と。
これから過ごしていく穏やかな時間…
その中であの人はふと思い出すのだ。
自分が教員だった頃を…。
そして…
最後に卒業させた、出来の悪い生徒ふたりのことを。
―――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――
笑ってくれるだろうか。
ただでさえ細いその目を、それ以上に細めて。
何も見えなくなるくらいに。
笑ってくれるだろうか。
その思い出を胸に。
笑ってくれるだろうか…
長い、旅の終わりに。
―――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――
4/20 火
朋也「毎朝そんなもん持って、大変じゃないのか」
平沢が抱えるギターケース。
見た目、割と体積があり、女の子が抱えるには重そうだった。
唯「全然平気だよ? 愛があるからね、ギー太へのっ」
朋也「ぎーた?」
唯「このギターの名前だよ」
こんこん、と手の甲でケースを叩く。
朋也「名前なんてつけてんのか」
唯「そうだよ。愛着湧きまくりなんだぁ」
朋也「ふぅん、そっか」
唯「岡崎くんは、なにか持ち物に名前つけたりしないの?」
朋也「いや、しないけど」
唯「もったいないよ。なにかつけてみようよっ」
朋也「なにかったってなぁ…」
唯「憂だって、校門前の坂に、サカタって名前つけてるんだよ?」
朋也「毎朝そんなもん持って、大変じゃないのか」
平沢が抱えるギターケース。
見た目、割と体積があり、女の子が抱えるには重そうだった。
唯「全然平気だよ? 愛があるからね、ギー太へのっ」
朋也「ぎーた?」
唯「このギターの名前だよ」
こんこん、と手の甲でケースを叩く。
朋也「名前なんてつけてんのか」
唯「そうだよ。愛着湧きまくりなんだぁ」
朋也「ふぅん、そっか」
唯「岡崎くんは、なにか持ち物に名前つけたりしないの?」
朋也「いや、しないけど」
唯「もったいないよ。なにかつけてみようよっ」
朋也「なにかったってなぁ…」
唯「憂だって、校門前の坂に、サカタって名前つけてるんだよ?」
坂が擬人化されていた。
憂「そんなことしてないよぉ…っていうか、もう普通に人の名前だよ、それ」
憂ちゃんも俺と同じ感想を持ったようだった。
朋也(つーか、なんかつけるもんあったかな…)
朋也(まぁいいや、適当に…)
朋也「あそこの、あれ、あの飛び出し注意の看板な」
朋也「あれを春原陽平と名づけよう」
唯「って、縁起悪いよ、それ…」
朋也「そうか?」
唯「うん。だって、あれ、車に衝突されて首から上がなくなってるし」
朋也「身をもって危険だってことを教えてくれてるんだな」
朋也「人身御供みたいで、かっこいいじゃん」
唯「それが縁起悪いって言ってるんですけどっ」
唯「ていうか、愛着のあるものにつけようよ」
朋也「じゃあ…おまえだ」
憂「そんなことしてないよぉ…っていうか、もう普通に人の名前だよ、それ」
憂ちゃんも俺と同じ感想を持ったようだった。
朋也(つーか、なんかつけるもんあったかな…)
朋也(まぁいいや、適当に…)
朋也「あそこの、あれ、あの飛び出し注意の看板な」
朋也「あれを春原陽平と名づけよう」
唯「って、縁起悪いよ、それ…」
朋也「そうか?」
唯「うん。だって、あれ、車に衝突されて首から上がなくなってるし」
朋也「身をもって危険だってことを教えてくれてるんだな」
朋也「人身御供みたいで、かっこいいじゃん」
唯「それが縁起悪いって言ってるんですけどっ」
唯「ていうか、愛着のあるものにつけようよ」
朋也「じゃあ…おまえだ」
ぽん、と平沢の頭に手を乗せる。
唯「わ、私…? そ、それって…」
朋也「おまえに、『憂ちゃんの二番煎じ』って名前をつけよう」
唯「って、私が姉なのにぃっ!?」
唯「ひどいよっ、ばかっ!」
ひとりでとことこ先へ歩いていった。
憂「あ、お姉ちゃん待ってぇ~」
憂ちゃんもその後を追う。
朋也(朝から元気だな…)
俺はそのままのペースで歩き続けた。
―――――――――――――――――――――
………。
―――――――――――――――――――――
昼。もう、何も言わずとも、自然とみんなで食堂へ集まるようになっていた。
ほんの二週間前までは、春原とふたり、むさ苦しく食べていたのに。
あの頃からは考えられない。
唯「わ、私…? そ、それって…」
朋也「おまえに、『憂ちゃんの二番煎じ』って名前をつけよう」
唯「って、私が姉なのにぃっ!?」
唯「ひどいよっ、ばかっ!」
ひとりでとことこ先へ歩いていった。
憂「あ、お姉ちゃん待ってぇ~」
憂ちゃんもその後を追う。
朋也(朝から元気だな…)
俺はそのままのペースで歩き続けた。
―――――――――――――――――――――
………。
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昼。もう、何も言わずとも、自然とみんなで食堂へ集まるようになっていた。
ほんの二週間前までは、春原とふたり、むさ苦しく食べていたのに。
あの頃からは考えられない。
唯「それ、おいしそうだね。ごはんに旗も刺さってて、おもしろいしっ」
春原「だろ? O定食っていって、僕が贔屓にしてるメニューなんだぜ?」
朋也「お子様ランチをカッコつけていうな」
律「お子様ランチなんてあったっけ?」
朋也「月に一度、突如現れるレアメニューなんだよ」
律「そんな遊び心があんのか…やるな、うちの学食も」
唯「春原くん、その旗、私にくれない?」
春原「ああ、いいけど」
唯「やったぁ、ありがとう」
春原から旗を受け取る。
唯「よし、これを…」
ぶす、と自分の弁当に刺した。
唯「憂ランチの完成~」
律「はは、ガキだなぁ」
唯「む、そんなことないもん、えいっ」
春原「だろ? O定食っていって、僕が贔屓にしてるメニューなんだぜ?」
朋也「お子様ランチをカッコつけていうな」
律「お子様ランチなんてあったっけ?」
朋也「月に一度、突如現れるレアメニューなんだよ」
律「そんな遊び心があんのか…やるな、うちの学食も」
唯「春原くん、その旗、私にくれない?」
春原「ああ、いいけど」
唯「やったぁ、ありがとう」
春原から旗を受け取る。
唯「よし、これを…」
ぶす、と自分の弁当に刺した。
唯「憂ランチの完成~」
律「はは、ガキだなぁ」
唯「む、そんなことないもん、えいっ」
旗を取り、それを部長の弁当に突き刺した。
律「あ、なにすんだよっ。こんなのいらねぇっての、おりゃっ」
隣に回す。
和「ごめん、澪」
それだけ言って、流れ作業のように受け流した。
澪「え…私も、ちょっと…ごめん、ムギ」
最後に、琴吹の弁当に行き着く。
紬「あら…」
唯「これがたらい回しって現象だね」
春原「…なんか、ちょっと傷つくんですけど…」
紬「さよなら♪」
バァキァッ!
琴吹の握力で粉々にされ、粉塵がさらさらと空に還っていた。
春原「すげぇいい顔でトドメさしてきたよ、この子っ!」
律「わははは!」
律「あ、なにすんだよっ。こんなのいらねぇっての、おりゃっ」
隣に回す。
和「ごめん、澪」
それだけ言って、流れ作業のように受け流した。
澪「え…私も、ちょっと…ごめん、ムギ」
最後に、琴吹の弁当に行き着く。
紬「あら…」
唯「これがたらい回しって現象だね」
春原「…なんか、ちょっと傷つくんですけど…」
紬「さよなら♪」
バァキァッ!
琴吹の握力で粉々にされ、粉塵がさらさらと空に還っていた。
春原「すげぇいい顔でトドメさしてきたよ、この子っ!」
律「わははは!」
―――――――――――――――――――――
………。
―――――――――――――――――――――
放課後。軽音部の部室へ赴き、茶をすする。
春原「そういやさぁ、あの水槽なんなの」
部室の隅、台座の上に大きめの水槽が設置されていた。
初めてここに来た時には、あんなものはなかったような気がする。
唯「あれはね、トンちゃんの水槽だよ」
春原「とんちゃん? とんちゃんって生き物がいんの?」
唯「違うんだなぁ。トンちゃんは名前で、種族はスッポンモドキだよ」
唯「まぁ、正確には、あずにゃんの後輩なんだけどね」
澪「いや、スッポンモドキの方が正解だからな…」
春原「スッポンが部員ってこと?」
唯「そうだよ」
それでいいのか、軽音部は…。
春原「もう、なんでもありだね。いっそ、部長もなんかの動物にしちゃえば?」
………。
―――――――――――――――――――――
放課後。軽音部の部室へ赴き、茶をすする。
春原「そういやさぁ、あの水槽なんなの」
部室の隅、台座の上に大きめの水槽が設置されていた。
初めてここに来た時には、あんなものはなかったような気がする。
唯「あれはね、トンちゃんの水槽だよ」
春原「とんちゃん? とんちゃんって生き物がいんの?」
唯「違うんだなぁ。トンちゃんは名前で、種族はスッポンモドキだよ」
唯「まぁ、正確には、あずにゃんの後輩なんだけどね」
澪「いや、スッポンモドキの方が正解だからな…」
春原「スッポンが部員ってこと?」
唯「そうだよ」
それでいいのか、軽音部は…。
春原「もう、なんでもありだね。いっそ、部長もなんかの動物にしちゃえば?」
春原「デコからポジション奪い取ったってことで、獰猛なヌーとかさっ」
ヌーにそんなイメージはない。
律「デコだとぉ!? おまえなんか最初から珍獣のクセにっ!」
律「トンちゃんより格下なんだよっ!」
春原「あんだと、コラっ」
律「なんだよっ」
春原「………」
律「………」
朋也「人間の部員はいいのか」
いがみ合うふたりをよそに、そう訊いてみた。
唯「人間の方は、全然きてくれないんだよね…」
唯「だから、せめて雰囲気だけでも、あずにゃんに先輩気分を味わってもらいたくて」
澪「それ、後付じゃないのか?」
澪「おまえが単純に、ホームセンター行った時、欲しがってたように見えたんだけど」
唯「てへっ」
舌を出し、愛嬌でごまかしていた。
ヌーにそんなイメージはない。
律「デコだとぉ!? おまえなんか最初から珍獣のクセにっ!」
律「トンちゃんより格下なんだよっ!」
春原「あんだと、コラっ」
律「なんだよっ」
春原「………」
律「………」
朋也「人間の部員はいいのか」
いがみ合うふたりをよそに、そう訊いてみた。
唯「人間の方は、全然きてくれないんだよね…」
唯「だから、せめて雰囲気だけでも、あずにゃんに先輩気分を味わってもらいたくて」
澪「それ、後付じゃないのか?」
澪「おまえが単純に、ホームセンター行った時、欲しがってたように見えたんだけど」
唯「てへっ」
舌を出し、愛嬌でごまかしていた。
梓「それでもいいんです。今ではもう、私の大切な後輩ですから」
唯「あずにゃん…」
中野は、俺に向ける厳しい眼差しとは違う、優しい目をしていた。
本来のこいつは、こんなふうなのかもしれない。
それが少しでも俺に向いてくれればいいのだが。
唯「あずにゃんっ、いいこすぎるよっ」
中野の後ろに回り、背後から抱きしめて、頬をすりよせる。
梓「あ…もう、唯先輩…」
春原「うおりゃああああ!」
律「うおりゃああああ!」
突然雄たけびを上げるふたり。
澪「なにやってるんだ、律…」
律「みてわかんないのか!? ポテチ早食い対決だよっ」
律「これで白黒つけてやろうってなっ」
春原「ん? 勝負の最中に余所見とは、余裕だねぇ…」
春原「おまえ、ヘタすりゃ死ぬぜ?」
指についたカスを舐めな取りがら言う。
唯「あずにゃん…」
中野は、俺に向ける厳しい眼差しとは違う、優しい目をしていた。
本来のこいつは、こんなふうなのかもしれない。
それが少しでも俺に向いてくれればいいのだが。
唯「あずにゃんっ、いいこすぎるよっ」
中野の後ろに回り、背後から抱きしめて、頬をすりよせる。
梓「あ…もう、唯先輩…」
春原「うおりゃああああ!」
律「うおりゃああああ!」
突然雄たけびを上げるふたり。
澪「なにやってるんだ、律…」
律「みてわかんないのか!? ポテチ早食い対決だよっ」
律「これで白黒つけてやろうってなっ」
春原「ん? 勝負の最中に余所見とは、余裕だねぇ…」
春原「おまえ、ヘタすりゃ死ぬぜ?」
指についたカスを舐めな取りがら言う。
セリフとまったく噛み合っていないその姿。
律「死ぬって言ったほうが死ぬんだよ、ばーかっ」
春原「そんな理屈、僕には通用しないね」
律「どうかな…」
春原「へっ…」
一瞬の間があり…
律「どりゃあああああ!」
春原「どりゃあああああ!」
勝負が再開された。
唯「なんか、楽しそう。私も参加するっ」
澪「やめとけって…」
唯「いいや、やるよっ。私もこの世紀の一戦に参加して、歴史に名を刻みたいからっ」
澪「そんな、おおげさな…」
唯「って、あれ? お菓子がもうないよ…」
机の上に広げられた駄菓子類は、全て空き箱になっていた。
紬「唯ちゃん、タクアンならあるけど、いる?」
律「死ぬって言ったほうが死ぬんだよ、ばーかっ」
春原「そんな理屈、僕には通用しないね」
律「どうかな…」
春原「へっ…」
一瞬の間があり…
律「どりゃあああああ!」
春原「どりゃあああああ!」
勝負が再開された。
唯「なんか、楽しそう。私も参加するっ」
澪「やめとけって…」
唯「いいや、やるよっ。私もこの世紀の一戦に参加して、歴史に名を刻みたいからっ」
澪「そんな、おおげさな…」
唯「って、あれ? お菓子がもうないよ…」
机の上に広げられた駄菓子類は、全て空き箱になっていた。
紬「唯ちゃん、タクアンならあるけど、いる?」
どこからかタッパーを取り出す。
唯「ほんとに? じゃあ、ちょうだいっ」
紬「はい、どうぞ」
唯「ありがとーっ。よし、いくぞぉ」
ガツガツと勢いよく素手で食べ始めた。
澪「はぁ、まったく…」
―――――――――――――――――――――
律「おし、そんじゃ、もう帰るか」
西日も差し込み始め、会話も途切れてきた頃、部長が言った。
澪「って、まだ練習してないだろ!」
梓「そうですよっ、帰るのは早すぎだと思います」
律「でぇもさぁ、今から準備すんのめんどくさいしぃ」
律「お菓子食べて幸せ気分なとこ邪魔されたくないしぃ」
澪「それが部長の言うことかっ」
ぽかっ
唯「ほんとに? じゃあ、ちょうだいっ」
紬「はい、どうぞ」
唯「ありがとーっ。よし、いくぞぉ」
ガツガツと勢いよく素手で食べ始めた。
澪「はぁ、まったく…」
―――――――――――――――――――――
律「おし、そんじゃ、もう帰るか」
西日も差し込み始め、会話も途切れてきた頃、部長が言った。
澪「って、まだ練習してないだろ!」
梓「そうですよっ、帰るのは早すぎだと思います」
律「でぇもさぁ、今から準備すんのめんどくさいしぃ」
律「お菓子食べて幸せ気分なとこ邪魔されたくないしぃ」
澪「それが部長の言うことかっ」
ぽかっ
律「あでっ」
唯「いいじゃん、澪ちゃん。ここはいったん退いて、様子見したほうがいいよ」
梓「なにと戦ってるんですか、軽音部は…」
澪「ダメだ。今日こそ、ちゃんと練習をだな…」
律「ムギ、食器片付けて帰ろうぜ」
紬「うん」
席を立ち、食器を持って流しに向かった。
澪「って、ああ、もう…」
動き出した部長たちを前にして、呆然と立ち尽くす秋山。
澪「明日は絶対練習するからなっ」
律「へいへい」
以前、平沢は、こんな光景が日常だと言っていたが、まさに聞いていた通りの展開だった。
先日は先に帰ったので、どうだったかは知らないが…
実際目の当たりにしてみて、俺は妙な親近感を覚えていた。
無為で、くだらないけど…でも、笑っていられるような時間。
そんな時間を過ごしているのなら、きっと、俺や春原からそう遠くない位置にいるんだろうから。
もしかしたら、最初から遠慮することはなかったのかもしれない。
だから、平沢は言っていたのだ。俺たちのような奴らでも、受け入れてくれると。
ささいなことを気にするような連中ではないと。
唯「いいじゃん、澪ちゃん。ここはいったん退いて、様子見したほうがいいよ」
梓「なにと戦ってるんですか、軽音部は…」
澪「ダメだ。今日こそ、ちゃんと練習をだな…」
律「ムギ、食器片付けて帰ろうぜ」
紬「うん」
席を立ち、食器を持って流しに向かった。
澪「って、ああ、もう…」
動き出した部長たちを前にして、呆然と立ち尽くす秋山。
澪「明日は絶対練習するからなっ」
律「へいへい」
以前、平沢は、こんな光景が日常だと言っていたが、まさに聞いていた通りの展開だった。
先日は先に帰ったので、どうだったかは知らないが…
実際目の当たりにしてみて、俺は妙な親近感を覚えていた。
無為で、くだらないけど…でも、笑っていられるような時間。
そんな時間を過ごしているのなら、きっと、俺や春原からそう遠くない位置にいるんだろうから。
もしかしたら、最初から遠慮することはなかったのかもしれない。
だから、平沢は言っていたのだ。俺たちのような奴らでも、受け入れてくれると。
ささいなことを気にするような連中ではないと。
万札出すくだりで大爆笑しちまったが
よく考えたら芽衣ちゃん√であったっけね
よく考えたら芽衣ちゃん√であったっけね
一緒にいれば、きっと楽しいだろうから、と。
全部、本当だった。
―――――――――――――――――――――
唯「えい、影踏~んだっ」
律「あ、やったなっ」
坂を下る途中、影踏みを始めた部長と平沢。
澪「小学生じゃないんだから…」
紬「やんちゃでいいじゃない」
澪「母親みたいなこと言うな、ムギは…」
春原「はは、ほんと、ガキレベルだな。普通、頭狙って踏むだろ」
こいつもガキだった。
律「ガキとはなんだっ」
唯「そうだそうだっ」
律「うりゃうりゃっ」
唯「えいえいっ」
げしげしげしっ!
全部、本当だった。
―――――――――――――――――――――
唯「えい、影踏~んだっ」
律「あ、やったなっ」
坂を下る途中、影踏みを始めた部長と平沢。
澪「小学生じゃないんだから…」
紬「やんちゃでいいじゃない」
澪「母親みたいなこと言うな、ムギは…」
春原「はは、ほんと、ガキレベルだな。普通、頭狙って踏むだろ」
こいつもガキだった。
律「ガキとはなんだっ」
唯「そうだそうだっ」
律「うりゃうりゃっ」
唯「えいえいっ」
げしげしげしっ!
春原の影が踏まれる。
春原「あにすんだ、こらっ」
律「うわ、怒ったぞ、こいつ。逃げろぉい」
唯「うひゃぁい」
春原「うっらぁっ! まてやっ」
どたどたと走り出す三人組。
坂の上り下りを繰り返し、めまぐるしく攻守が入れ替わる。
唯「ひぃ、疲れたぁ…っと、わぁっ」
足がもつれ、体勢が崩れる。
朋也「おいっ…」
たまたま近くにいた俺が咄嗟に支えた。
唯「あ、ありがとう、岡崎くん…」
朋也「気をつけろよ。なんか、おまえ、ふわふわしてて危なっかしいからさ」
唯「えへへ、ごめんね」
だんだんだんだんっ!
地団駄を踏む音。
春原「あにすんだ、こらっ」
律「うわ、怒ったぞ、こいつ。逃げろぉい」
唯「うひゃぁい」
春原「うっらぁっ! まてやっ」
どたどたと走り出す三人組。
坂の上り下りを繰り返し、めまぐるしく攻守が入れ替わる。
唯「ひぃ、疲れたぁ…っと、わぁっ」
足がもつれ、体勢が崩れる。
朋也「おいっ…」
たまたま近くにいた俺が咄嗟に支えた。
唯「あ、ありがとう、岡崎くん…」
朋也「気をつけろよ。なんか、おまえ、ふわふわしてて危なっかしいからさ」
唯「えへへ、ごめんね」
だんだんだんだんっ!
地団駄を踏む音。
振り返る。
梓「ふんふんふんふんっ!」
中野が俺の影、股間部分を激しく踏み砕こうとしていた。
朋也(わざわざ急所かよ…)
―――――――――――――――――――――
唯「岡崎くーん、どうしたのぉ」
平沢が俺の前方から声をかけくる。
唯「なんでそんなに離れてるのぉ」
朋也「………」
春原と坂の下で別れてからというもの、俺はあの集団の中で男一人になってしまっていた。
あいつがいる間は考えもしなかったが、こうなってみると、異様なことのように思えた。
俺のわずかに残った体裁を気にする心が、輪に入っていくことを拒むのだ。
だから、一定の距離を取るべく、歩幅を調節して歩いていた。
梓「唯先輩、察してあげましょう。岡崎先輩は、きっとアレです」
唯「アレ?」
梓「はい。お腹が痛くて、手ごろな草むらを探しているんです」
梓「それで、私たちの視界から消えて、自然にフェードアウトして…その…」
梓「ふんふんふんふんっ!」
中野が俺の影、股間部分を激しく踏み砕こうとしていた。
朋也(わざわざ急所かよ…)
―――――――――――――――――――――
唯「岡崎くーん、どうしたのぉ」
平沢が俺の前方から声をかけくる。
唯「なんでそんなに離れてるのぉ」
朋也「………」
春原と坂の下で別れてからというもの、俺はあの集団の中で男一人になってしまっていた。
あいつがいる間は考えもしなかったが、こうなってみると、異様なことのように思えた。
俺のわずかに残った体裁を気にする心が、輪に入っていくことを拒むのだ。
だから、一定の距離を取るべく、歩幅を調節して歩いていた。
梓「唯先輩、察してあげましょう。岡崎先輩は、きっとアレです」
唯「アレ?」
梓「はい。お腹が痛くて、手ごろな草むらを探しているんです」
梓「それで、私たちの視界から消えて、自然にフェードアウトして…その…」
梓「ひっそりと…催す計画だったんでしょう」
唯「ええ? そうなの?」
中野に誘導され、俺がとんでもなく汚い男になろうとしていた。
律「おーい、岡崎、この先に川原あるから、やるなら、そこがいいぞぉ」
朋也「んなアドバイスいらねぇよっ」
急いで平沢たちに追いつく。
唯「岡崎くん、そんなに急いだら、お腹が…」
朋也「もういいっ、そこから離れろっ。俺は腹痛なんかじゃないっ」
唯「でも、あずにゃんが岡崎くんはもう限界だって…」
朋也「信じるなっ。ほら、俺は健康体だ」
その場でぴょんぴょん跳ねてみせる。
唯「あはは、なんか、可愛い」
朋也「これでわかったか?」
唯「うん、まぁね」
なんとか身の潔白を証明できたようだ。
にしても…
唯「ええ? そうなの?」
中野に誘導され、俺がとんでもなく汚い男になろうとしていた。
律「おーい、岡崎、この先に川原あるから、やるなら、そこがいいぞぉ」
朋也「んなアドバイスいらねぇよっ」
急いで平沢たちに追いつく。
唯「岡崎くん、そんなに急いだら、お腹が…」
朋也「もういいっ、そこから離れろっ。俺は腹痛なんかじゃないっ」
唯「でも、あずにゃんが岡崎くんはもう限界だって…」
朋也「信じるなっ。ほら、俺は健康体だ」
その場でぴょんぴょん跳ねてみせる。
唯「あはは、なんか、可愛い」
朋也「これでわかったか?」
唯「うん、まぁね」
なんとか身の潔白を証明できたようだ。
にしても…
朋也「おい、おまえ、あんまり変なこと言うなうよ」
梓「あれ? 違いましたか? それは、すみません」
反省した様子もなく、突っぱねたように言う。
朋也(こいつは…)
今後は、もっと警戒しておくべきなのかもしれない。
平気で毒でも盛ってきそうだ。
―――――――――――――――――――――
部長たちとも別れ、平沢とふたりきりになる。
今朝一緒に来た道を、今は引き返すような形で逆行していた。
唯「あ、みて、岡崎くん、バイア○ラ販売します、だってさ」
古ぼけて、いつ貼られたかわからないような、朽ちた張り紙を見て言った。
連絡先なのか、下に電話番号が書いてある。
唯「懐かしいね。バイアグ○って、昔話題になってたけど、結局なんだったんだろう」
唯「岡崎くん、知ってる?」
朋也「さぁな。でも、おまえは多分知らなくていいと思うぞ」
下半身の事情を解決してくれるらしい、ということだけはぼんやりと知っていた。
唯「そう? まぁ、あんまり興味なかったんだけどね」
梓「あれ? 違いましたか? それは、すみません」
反省した様子もなく、突っぱねたように言う。
朋也(こいつは…)
今後は、もっと警戒しておくべきなのかもしれない。
平気で毒でも盛ってきそうだ。
―――――――――――――――――――――
部長たちとも別れ、平沢とふたりきりになる。
今朝一緒に来た道を、今は引き返すような形で逆行していた。
唯「あ、みて、岡崎くん、バイア○ラ販売します、だってさ」
古ぼけて、いつ貼られたかわからないような、朽ちた張り紙を見て言った。
連絡先なのか、下に電話番号が書いてある。
唯「懐かしいね。バイアグ○って、昔話題になってたけど、結局なんだったんだろう」
唯「岡崎くん、知ってる?」
朋也「さぁな。でも、おまえは多分知らなくていいと思うぞ」
下半身の事情を解決してくれるらしい、ということだけはぼんやりと知っていた。
唯「そう? まぁ、あんまり興味なかったんだけどね」
朋也「じゃ、訊くなよ」
唯「素通りしたら、張り紙張った人がかわいそうじゃん」
朋也「悪徳業者だろ、貼ったの」
唯「そうなの? くそぉ、よくもだましたなっ」
唯「電話して、お説教してやるっ」
朋也「おまえそれ、注文してるぞ」
唯「え? 電話しただけで?」
朋也「ああ」
というか、そもそももう繋がらないだろうと思う。
だが、万が一を考えて、そういうことにしておいた。
唯「ちぇ~、私のお説教で改心させようと思ったのになぁ…」
朋也「残念だったな」
頭に手を乗せる。
唯「岡崎くん、手乗せるの好きだよね」
朋也「嫌だったか?」
唯「ううん、逆だよ。もっとしていいよ?」
唯「素通りしたら、張り紙張った人がかわいそうじゃん」
朋也「悪徳業者だろ、貼ったの」
唯「そうなの? くそぉ、よくもだましたなっ」
唯「電話して、お説教してやるっ」
朋也「おまえそれ、注文してるぞ」
唯「え? 電話しただけで?」
朋也「ああ」
というか、そもそももう繋がらないだろうと思う。
だが、万が一を考えて、そういうことにしておいた。
唯「ちぇ~、私のお説教で改心させようと思ったのになぁ…」
朋也「残念だったな」
頭に手を乗せる。
唯「岡崎くん、手乗せるの好きだよね」
朋也「嫌だったか?」
唯「ううん、逆だよ。もっとしていいよ?」
朋也「おまえは、乗せられるの好きなのか?」
唯「う~ん、そういうわけじゃないけど…なんか、落ち着くんだよね」
朋也「そっか」
唯「うん。えへへ」
夕日を浴びて、微笑むこいつ。
それを見ているだけで、俺も何故か心が落ち着いた。
―――――――――――――――――――――
唯「じゃあね、また明日」
朋也「ああ、じゃあな」
家の前で別れる。
俺はその背を、見えなくなるまで見送っていた。
少しだけ、別れが名残惜しかった。
いや…かなり、か。
―――――――――――――――――――――
唯「う~ん、そういうわけじゃないけど…なんか、落ち着くんだよね」
朋也「そっか」
唯「うん。えへへ」
夕日を浴びて、微笑むこいつ。
それを見ているだけで、俺も何故か心が落ち着いた。
―――――――――――――――――――――
唯「じゃあね、また明日」
朋也「ああ、じゃあな」
家の前で別れる。
俺はその背を、見えなくなるまで見送っていた。
少しだけ、別れが名残惜しかった。
いや…かなり、か。
―――――――――――――――――――――
4/21 水
唯「へいっ、憂、パァスッ!」
憂「わ、軌道がめちゃくちゃだよぉ」
唯「あ~、ごめんごめ~ん」
このふたりは登校中、小石を蹴って、ずっとキープしたまま進んでいた。
憂「岡崎さん、いきますよっ」
俺にパスが回ってきた。
とりあえず受ける。
朋也「これ、ゴールはどこなんだ」
唯「教室だよっ」
朋也「無理だろ…」
唯「大丈夫、階段とかはリフティングして登るからっ」
そういう問題でもない。
朋也(まぁいいか…)
小石を蹴って、前方に転がす。
唯「お、いいとこ放るねぇ。フリースペースにどんぴしゃだよ」
唯「へいっ、憂、パァスッ!」
憂「わ、軌道がめちゃくちゃだよぉ」
唯「あ~、ごめんごめ~ん」
このふたりは登校中、小石を蹴って、ずっとキープしたまま進んでいた。
憂「岡崎さん、いきますよっ」
俺にパスが回ってきた。
とりあえず受ける。
朋也「これ、ゴールはどこなんだ」
唯「教室だよっ」
朋也「無理だろ…」
唯「大丈夫、階段とかはリフティングして登るからっ」
そういう問題でもない。
朋也(まぁいいか…)
小石を蹴って、前方に転がす。
唯「お、いいとこ放るねぇ。フリースペースにどんぴしゃだよ」
唯「キラーパスってやつだね、見事に裏をかいてるよっ」
そもそも敵なんかない。
朋也(ふぁ…ねむ…)
眠気を感じながらも、はしゃぐ平沢姉妹をぼうっと眺めていた。
結局、この後小石は溝に吸い込まれ、そこでゲームセットになってしまったのだが。
―――――――――――――――――――――
………。
―――――――――――――――――――――
昼。
澪「ひっ! り、律っ…」
律「あん? なんだよ」
澪「い、今あそこの影からこっちをじっと見てる人が…」
律「どこだよ…そんな奴いねぇぞ」
澪「あ…そ、そうか…」
唯「澪ちゃん、こんな昼間から幽霊なんか出ないよ」
律「あー、そうじゃなくてな、こいつさ…」
そもそも敵なんかない。
朋也(ふぁ…ねむ…)
眠気を感じながらも、はしゃぐ平沢姉妹をぼうっと眺めていた。
結局、この後小石は溝に吸い込まれ、そこでゲームセットになってしまったのだが。
―――――――――――――――――――――
………。
―――――――――――――――――――――
昼。
澪「ひっ! り、律っ…」
律「あん? なんだよ」
澪「い、今あそこの影からこっちをじっと見てる人が…」
律「どこだよ…そんな奴いねぇぞ」
澪「あ…そ、そうか…」
唯「澪ちゃん、こんな昼間から幽霊なんか出ないよ」
律「あー、そうじゃなくてな、こいつさ…」
部長が話し出す。
秋山が、朝から誰かの視線を感じて仕方がなく、気味悪がっている…とのことだった。
律「そんで、マジで一人、澪を舐め回すように見てた奴がいたんだけどさ…」
制服の胸ポケットに手を突っ込み、なにやら取り出した。
律「詰め寄ったら、逃げてったんだけど…これ、落としてったんだよな」
プラスチックのカード。
表面には、秋山澪ファンクラブ、と印字され、秋山本人の写真が貼ってあった。
和「ぶっ!…げほげほっ」
真鍋が突然むせていた。
注目が集まる。
唯「和ちゃん、大丈夫?」
和「え、ええ…」
どこか動揺した様子でハンカチを取り出し、口周りを拭き取る真鍋。
和「そ、それで、なにか直接被害はあったの?」
澪「いや…なにもないけど…」
律「でもさぁ、じっと見られてるってのも、なんか目障りじゃん?」
律「だから、どうにかしてやりたいんだけどなぁ…」
秋山が、朝から誰かの視線を感じて仕方がなく、気味悪がっている…とのことだった。
律「そんで、マジで一人、澪を舐め回すように見てた奴がいたんだけどさ…」
制服の胸ポケットに手を突っ込み、なにやら取り出した。
律「詰め寄ったら、逃げてったんだけど…これ、落としてったんだよな」
プラスチックのカード。
表面には、秋山澪ファンクラブ、と印字され、秋山本人の写真が貼ってあった。
和「ぶっ!…げほげほっ」
真鍋が突然むせていた。
注目が集まる。
唯「和ちゃん、大丈夫?」
和「え、ええ…」
どこか動揺した様子でハンカチを取り出し、口周りを拭き取る真鍋。
和「そ、それで、なにか直接被害はあったの?」
澪「いや…なにもないけど…」
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