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元スレ朋也「軽音部? うんたん?」
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サッカー部員「土下座して頼んだんじゃねぇの、僕で遊んでくださ~いってさ」
部員たちに、どっと笑いがおこる。
春原「ぶっ殺すぞ、てめぇらっ!」
春原がキレて、殴りかかっていく勢いで一歩を踏み出す。
サッカー部員「は? また暴力かよ」
サッカー部員「変わんねぇな、このクズは」
サッカー部員「おまえのせいで俺たち、どんだけ迷惑したかわかってんのか」
サッカー部員「関係ない俺たちまで、いろんなとこで頭下げさせられたんだぞ」
サッカー部員「新人戦だって出られなかったしな。実績あげないと、推薦だって危ういのによ」
サッカー部員「まだそのことで謝ってもねぇのに、あまつさえ俺たちに暴力振るうのかよ」
サッカー部員「今度は退学んなるぞ、てめぇ」
春原「……くそっ」
踏みとどまる。
そうさせたのは、退学だなんて脅しじゃない。
きっと、胸の奥底では感じていたであろう罪悪感の方だったはずだ。
サッカー部員「君ら、軽音部の子たちだよね?」
部員たちに、どっと笑いがおこる。
春原「ぶっ殺すぞ、てめぇらっ!」
春原がキレて、殴りかかっていく勢いで一歩を踏み出す。
サッカー部員「は? また暴力かよ」
サッカー部員「変わんねぇな、このクズは」
サッカー部員「おまえのせいで俺たち、どんだけ迷惑したかわかってんのか」
サッカー部員「関係ない俺たちまで、いろんなとこで頭下げさせられたんだぞ」
サッカー部員「新人戦だって出られなかったしな。実績あげないと、推薦だって危ういのによ」
サッカー部員「まだそのことで謝ってもねぇのに、あまつさえ俺たちに暴力振るうのかよ」
サッカー部員「今度は退学んなるぞ、てめぇ」
春原「……くそっ」
踏みとどまる。
そうさせたのは、退学だなんて脅しじゃない。
きっと、胸の奥底では感じていたであろう罪悪感の方だったはずだ。
サッカー部員「君ら、軽音部の子たちだよね?」
春原に取っていた態度とは打って変わって、陽気に声をかけてくる。
サッカー部員「こんな奴らとじゃなくてさ、俺らと遊ばね?」
自分たちから一番近い位置にいた部長に訊いてから、後方にいた連中を眺め渡した。
律「………」
だが、部長を筆頭に、誰もなにも言わない。
サッカー部員「うわぁ、やっぱ、りっちゃん可愛いって」
サッカー部員「ばっか、澪ちゃんだろ」
サッカー部員「俺唯ちゃん派」
サッカー部員「あずにゃんだろ、流石に」
サッカー部員「おまえら、ムギちゃんのよさわかれよ」
答えないでいると、その内、内輪で盛り上がり始めた。
サッカー部員「つか、見たことない子もいるけど、あの二人もかわいくね?」
サッカー部員「うぉ、マジだ。後ろで髪上げてる子と、メガネのな」
サッカー部員「つか、メガネのほうは、生徒会長じゃん」
サッカー部員「そうなの?」
サッカー部員「こんな奴らとじゃなくてさ、俺らと遊ばね?」
自分たちから一番近い位置にいた部長に訊いてから、後方にいた連中を眺め渡した。
律「………」
だが、部長を筆頭に、誰もなにも言わない。
サッカー部員「うわぁ、やっぱ、りっちゃん可愛いって」
サッカー部員「ばっか、澪ちゃんだろ」
サッカー部員「俺唯ちゃん派」
サッカー部員「あずにゃんだろ、流石に」
サッカー部員「おまえら、ムギちゃんのよさわかれよ」
答えないでいると、その内、内輪で盛り上がり始めた。
サッカー部員「つか、見たことない子もいるけど、あの二人もかわいくね?」
サッカー部員「うぉ、マジだ。後ろで髪上げてる子と、メガネのな」
サッカー部員「つか、メガネのほうは、生徒会長じゃん」
サッカー部員「そうなの?」
サッカー部員「昨日発表あったじゃん」
サッカー部員「知らねぇ。寝てたわ、多分」
一斉に笑い出す。
律「…わりぃけど、あんたらと遊ぶ気にはなんないわ」
サッカー部員「えー、なんでだよ」
サッカー部員「カラオケいこうよ。おごりでもいいよ」
律「あたしら、サッカーしに来てんだよね。カラオケなら、あんたらでいきなよ」
サッカー部員「サッカー? 俺らも、そうなんだけど」
サッカー部員「サッカーがしたいなら、俺らのほうがいいよ」
サッカー部員「春原みたいな半端な奴とか、岡崎みたいなただのヤンキーとやるより楽しいよ」
サッカー部員「そうそう、いろいろヤって、楽しもうよ」
サッカー部員「ははは、腰振んなよ、おまえ」
サッカー部員「ははははっ」
サッカー部員「ははっ、てかさぁ、春原が今更サッカーってどうなの」
サッカー部員「マジ、ウケるよな」
サッカー部員「知らねぇ。寝てたわ、多分」
一斉に笑い出す。
律「…わりぃけど、あんたらと遊ぶ気にはなんないわ」
サッカー部員「えー、なんでだよ」
サッカー部員「カラオケいこうよ。おごりでもいいよ」
律「あたしら、サッカーしに来てんだよね。カラオケなら、あんたらでいきなよ」
サッカー部員「サッカー? 俺らも、そうなんだけど」
サッカー部員「サッカーがしたいなら、俺らのほうがいいよ」
サッカー部員「春原みたいな半端な奴とか、岡崎みたいなただのヤンキーとやるより楽しいよ」
サッカー部員「そうそう、いろいろヤって、楽しもうよ」
サッカー部員「ははは、腰振んなよ、おまえ」
サッカー部員「ははははっ」
サッカー部員「ははっ、てかさぁ、春原が今更サッカーってどうなの」
サッカー部員「マジ、ウケるよな」
サッカー部員「どうせ素人相手にカッコつけたかったんだろ」
サッカー部員「それしかねぇな。マジでカスみてぇ」
唯「…どうしてそこまでいうの?」
平沢が口を挟む。
サッカー部員「ん?」
唯「春原くんが喧嘩して、大会出られなかったのは、残念だったけど…」
唯「もう、終わったことなんだし…そんなに言わなくてもいいでしょっ!」
サッカー部員「あー、あのさぁ…」
一番体格のいい男が、ぽりぽりと頭を掻きながら前に出てくる。
サッカー部員「まぁ、お遊びクラブで仲良しこよしやってる子には、わかんないかもだけどさ…」
サッカー部員「俺ら、マジで部活やってんだ? そんで、将来とか懸かってんの。わかる?」
澪「そんな、私たちだって真剣に…」
サッカー部員「軽音部って、茶飲んでだらだらしてるだけなんでしょ? けっこう有名だよ」
澪「それは…」
梓「そんなことないですっ! 馬鹿にしないでくださいっ!」
サッカー部員「それしかねぇな。マジでカスみてぇ」
唯「…どうしてそこまでいうの?」
平沢が口を挟む。
サッカー部員「ん?」
唯「春原くんが喧嘩して、大会出られなかったのは、残念だったけど…」
唯「もう、終わったことなんだし…そんなに言わなくてもいいでしょっ!」
サッカー部員「あー、あのさぁ…」
一番体格のいい男が、ぽりぽりと頭を掻きながら前に出てくる。
サッカー部員「まぁ、お遊びクラブで仲良しこよしやってる子には、わかんないかもだけどさ…」
サッカー部員「俺ら、マジで部活やってんだ? そんで、将来とか懸かってんの。わかる?」
澪「そんな、私たちだって真剣に…」
サッカー部員「軽音部って、茶飲んでだらだらしてるだけなんでしょ? けっこう有名だよ」
澪「それは…」
梓「そんなことないですっ! 馬鹿にしないでくださいっ!」
サッカー部員「ああ、ごめんね。馬鹿にしてないよ」
サッカー部員「あずにゃんのプレイ、最高~」
サッカー部員「萌え萌え~」
他の部員が横から茶化しを入れると、皆へらへらと笑いあった。
梓「………」
中野の顔が紅潮していく。
奴らの態度は、どうみても馬鹿にしているそれだった。
サッカー部員「ま、だからさ、公式戦って、超大事なんだ。それを台無しにされたら、普通怒るよね」
唯「でも…でも…言ってることがひどすぎるよ…」
サッカー部員「クズにはなに言ってもいいんだよ」
唯「クズなんかじゃないよっ! 春原くんは、ちゃんとした、いい人だよっ!」
サッカー部員「ぶっははは! それ、マジで言ってんの?」
サッカー部員「いい人とかっ、ははっ、春原がかよっ」
サッカー部員「ああ、やっぱ、唯ちゃん頭弱ぇなぁ」
また下品に笑いあった。
唯「うぅ…」
サッカー部員「あずにゃんのプレイ、最高~」
サッカー部員「萌え萌え~」
他の部員が横から茶化しを入れると、皆へらへらと笑いあった。
梓「………」
中野の顔が紅潮していく。
奴らの態度は、どうみても馬鹿にしているそれだった。
サッカー部員「ま、だからさ、公式戦って、超大事なんだ。それを台無しにされたら、普通怒るよね」
唯「でも…でも…言ってることがひどすぎるよ…」
サッカー部員「クズにはなに言ってもいいんだよ」
唯「クズなんかじゃないよっ! 春原くんは、ちゃんとした、いい人だよっ!」
サッカー部員「ぶっははは! それ、マジで言ってんの?」
サッカー部員「いい人とかっ、ははっ、春原がかよっ」
サッカー部員「ああ、やっぱ、唯ちゃん頭弱ぇなぁ」
また下品に笑いあった。
唯「うぅ…」
朋也(こいつら…)
もう、限界だった。
そもそも、最初からどこか癇に障る奴らだったんだ。
春原が踏みとどまっていなければ、俺も喧嘩に加わるつもりだった。
一度は耐えたが、それももう終わりだ。
手を出したほうが負け? そんなもん知ったことか。
喧嘩を売ってきたこと、死ぬほど後悔させてやる。
春原「おい、岡崎…」
朋也「…ああ」
春原も俺と同意見のようだった。
ぶっ飛ばしてやろうと、そう意気込んだ時…
律「あーあ、もういいや。みんな帰ろうぜ」
部長がそう言った。
律「なんかこいつらもここ使うみたいだし…それに、しらけちゃったしな。変なのが来たせいで」
律「はい、撤収~」
言って、敷かれたままのピクニックシートの方に足を向けた。
サッカー部員「や、ちょっと待とうよ」
部長の腕を掴んで引き止める。
サッカー部員「ぜってぇ俺らと遊んだほうがおもしれぇって」
律「触んなっ。離せ、バカっ」
その手を乱暴に振り払う。
サッカー部員「っ、んだよ、こいつ…調子乗りすぎ」
サッカー部員「ちっと可愛くて人気あるからって、これはねぇわ」
サッカー部員「ライブとか言って、下手糞な演奏しても、チヤホヤされるもんな」
サッカー部員「ああ…それはあるかも」
サッカー部員「よな? 聴きに来てる奴らなんか、ほとんどこいつらの体目当てだし」
サッカー部員「体って、おまえさっきからエっロいな」
サッカー部員「はは、うっせぇ」
律「なんだと…? 大人しく聞いてりゃ、つけあがりやがって…」
サッカー部員「え? 怒っちゃう? もしかして、自覚なかったの?」
サッカー部員「うわぁ、勘違い系?」
サッカー部員「痛ぇ奴」
サッカー部員「つーか、部員が可愛い子ばっかなのはそういうことだろ、どうせ」
律「触んなっ。離せ、バカっ」
その手を乱暴に振り払う。
サッカー部員「っ、んだよ、こいつ…調子乗りすぎ」
サッカー部員「ちっと可愛くて人気あるからって、これはねぇわ」
サッカー部員「ライブとか言って、下手糞な演奏しても、チヤホヤされるもんな」
サッカー部員「ああ…それはあるかも」
サッカー部員「よな? 聴きに来てる奴らなんか、ほとんどこいつらの体目当てだし」
サッカー部員「体って、おまえさっきからエっロいな」
サッカー部員「はは、うっせぇ」
律「なんだと…? 大人しく聞いてりゃ、つけあがりやがって…」
サッカー部員「え? 怒っちゃう? もしかして、自覚なかったの?」
サッカー部員「うわぁ、勘違い系?」
サッカー部員「痛ぇ奴」
サッカー部員「つーか、部員が可愛い子ばっかなのはそういうことだろ、どうせ」
サッカー部員「ああ、全員が客寄せパンダってことな。じゃ、図星突かれて怒ったのか」
サッカー部員「ははは、マジでそれっぽ…」
いい終わる前、その部員は殴り倒されていた。
サッカー部員「っつ…てめぇ、春原ぁっ!」
倒れこんだまま、怒声をあげる。
春原「馬鹿にしてんじゃねぇっ!」
春原が吠えた。
律「春原…」
春原「こいつらはなぁっ、そんなんじゃねぇんだよっ!」
サッカー部員「はぁ? なんだこいつ…」
春原「うぉおおおおおおおおおおおっ!!」
突っ込んでいく。
たちまち乱闘になった。
澪「ど…どうしよう、誰か呼んでこないとっ…」
朋也「やめてくれ。んなことされたら、俺らが捕まっちまうよ」
澪「え…」
サッカー部員「ははは、マジでそれっぽ…」
いい終わる前、その部員は殴り倒されていた。
サッカー部員「っつ…てめぇ、春原ぁっ!」
倒れこんだまま、怒声をあげる。
春原「馬鹿にしてんじゃねぇっ!」
春原が吠えた。
律「春原…」
春原「こいつらはなぁっ、そんなんじゃねぇんだよっ!」
サッカー部員「はぁ? なんだこいつ…」
春原「うぉおおおおおおおおおおおっ!!」
突っ込んでいく。
たちまち乱闘になった。
澪「ど…どうしよう、誰か呼んでこないとっ…」
朋也「やめてくれ。んなことされたら、俺らが捕まっちまうよ」
澪「え…」
朋也「真鍋、事後処理頼めるか」
和「ま、なんとかしてみるわ」
朋也「頼んだぞ」
前を見る。
春原が囲まれて、四方から蹴りをもらっていた。
ぐっ、と拳にに力を込める。
2対6。不利だが、不思議と負ける気はしなかった。
朋也「てめぇら、俺に背中向けてんじゃねぇっ!」
唯「あっ、岡崎くんっ…」
後ろから平沢の声がした。
だが、振り返ることはしなかった。
まっすぐ敵に向かって拳を振り下ろす。
相手の嗚咽する声と、拳に鈍い痛みが走ったのは同時だった。
―――――――――――――――――――――
呼吸が苦しい。
ずっと全力で殴り続けていたから、まったく余力が残っていない。
体重を支えるその脚にも、まともに力が入らない。
立っているのがやっとだった。
それに加え、身体中が痛む。
打撲に、擦り傷、切り傷…鼻血も出ている。
口の中には血の味が広がっていて、なんとも気持ち悪かった。
もう、ボロボロだ。
和「ま、なんとかしてみるわ」
朋也「頼んだぞ」
前を見る。
春原が囲まれて、四方から蹴りをもらっていた。
ぐっ、と拳にに力を込める。
2対6。不利だが、不思議と負ける気はしなかった。
朋也「てめぇら、俺に背中向けてんじゃねぇっ!」
唯「あっ、岡崎くんっ…」
後ろから平沢の声がした。
だが、振り返ることはしなかった。
まっすぐ敵に向かって拳を振り下ろす。
相手の嗚咽する声と、拳に鈍い痛みが走ったのは同時だった。
―――――――――――――――――――――
呼吸が苦しい。
ずっと全力で殴り続けていたから、まったく余力が残っていない。
体重を支えるその脚にも、まともに力が入らない。
立っているのがやっとだった。
それに加え、身体中が痛む。
打撲に、擦り傷、切り傷…鼻血も出ている。
口の中には血の味が広がっていて、なんとも気持ち悪かった。
もう、ボロボロだ。
春原「楽勝だったな……げほっ」
散々殴られたその顔で、苦しそうに咳き込んだ。
ひどい表情だ。きっと今、俺も同じ状態なんだろう。
朋也「その顔で言うなよ…」
春原「へっ…」
ぐい、と血を拭う。
春原「ま、やっぱ、僕ら最強ってことだね…」
朋也「特に俺はな…」
春原「あんた、結構ナルシストっすね…」
喧嘩は、一応の決着がついた。
KOというわけじゃない。連中の方が撤退していったのだ。
それほど喧嘩慣れしていなかったのだろう。
痛みと、本気で殴りかかってくる相手への恐怖からか、終始引き気味だった。
そのおかげで、あまり長引かずに済んだ。
部活も辞めて長いこと経ち、持久力の落ちている俺たちにはありがたかった。
和「お疲れ様」
真鍋がタオルを渡してくれる。
俺たちはそれを受け取り、汗と血を拭き取った。
そして、顔を上げて一番最初に目に入ってきたのは、泣いている平沢の姿だった。
見れば、部長と真鍋以外、全員すすり泣いていた。
散々殴られたその顔で、苦しそうに咳き込んだ。
ひどい表情だ。きっと今、俺も同じ状態なんだろう。
朋也「その顔で言うなよ…」
春原「へっ…」
ぐい、と血を拭う。
春原「ま、やっぱ、僕ら最強ってことだね…」
朋也「特に俺はな…」
春原「あんた、結構ナルシストっすね…」
喧嘩は、一応の決着がついた。
KOというわけじゃない。連中の方が撤退していったのだ。
それほど喧嘩慣れしていなかったのだろう。
痛みと、本気で殴りかかってくる相手への恐怖からか、終始引き気味だった。
そのおかげで、あまり長引かずに済んだ。
部活も辞めて長いこと経ち、持久力の落ちている俺たちにはありがたかった。
和「お疲れ様」
真鍋がタオルを渡してくれる。
俺たちはそれを受け取り、汗と血を拭き取った。
そして、顔を上げて一番最初に目に入ってきたのは、泣いている平沢の姿だった。
見れば、部長と真鍋以外、全員すすり泣いていた。
律「あんたら…大丈夫か」
春原「無傷だけど」
律「そんなわけないだろ、見た目的にも…」
和「なんにせよ、治療は必要ね」
朋也「そうだな。おまえの部屋、なんかあったっけ」
春原「絆創膏ならあるよ」
朋也「ないよりマシか…まぁ、いいや」
朋也「そういうことだからさ、悪いけど俺たち、帰るわ。もう、フラフラだからな…」
和「待って。絆創膏だけじゃ駄目よ」
和「私たちが薬局で必要なもの買ってくるから、待ってて」
春原「できれば、もう帰りたいんすけど…」
和「じゃあ、寮で待ってて。確かあなた、地方からの入学で、寮生活してたわよね」
春原「はぁ、まぁ…」
和「唯と律はこの二人を支えながら送ってあげて」
和「坂の下をちょっと行ったところに寮があるから、そこまで」
春原「無傷だけど」
律「そんなわけないだろ、見た目的にも…」
和「なんにせよ、治療は必要ね」
朋也「そうだな。おまえの部屋、なんかあったっけ」
春原「絆創膏ならあるよ」
朋也「ないよりマシか…まぁ、いいや」
朋也「そういうことだからさ、悪いけど俺たち、帰るわ。もう、フラフラだからな…」
和「待って。絆創膏だけじゃ駄目よ」
和「私たちが薬局で必要なもの買ってくるから、待ってて」
春原「できれば、もう帰りたいんすけど…」
和「じゃあ、寮で待ってて。確かあなた、地方からの入学で、寮生活してたわよね」
春原「はぁ、まぁ…」
和「唯と律はこの二人を支えながら送ってあげて」
和「坂の下をちょっと行ったところに寮があるから、そこまで」
唯「ぐす…うん…わかったよ…」
律「お、おう」
和「憂と琴吹さんは、グラウンドをトンボでならしておいて欲しいんだけど…」
それは、血が飛び散って、いたるところに黒いシミを作っていたからだろう。
憂「は、はい、任せてください」
紬「うん、任せて」
和「私と梓ちゃんと澪は、薬局に買出しね」
澪「わ、わかった」
梓「は、はい」
和「じゃ、みんな、さっと動きましょ」
その一言で、各自行動を開始した。
仕切るのが上手いやつだった。
人の上に立つ器とはこういうものなんだろうか…。
ぼんやりと思った。
―――――――――――――――――――――
唯「う…ひっく…ぐすん…」
朋也「おい…もう泣きやめ」
律「お、おう」
和「憂と琴吹さんは、グラウンドをトンボでならしておいて欲しいんだけど…」
それは、血が飛び散って、いたるところに黒いシミを作っていたからだろう。
憂「は、はい、任せてください」
紬「うん、任せて」
和「私と梓ちゃんと澪は、薬局に買出しね」
澪「わ、わかった」
梓「は、はい」
和「じゃ、みんな、さっと動きましょ」
その一言で、各自行動を開始した。
仕切るのが上手いやつだった。
人の上に立つ器とはこういうものなんだろうか…。
ぼんやりと思った。
―――――――――――――――――――――
唯「う…ひっく…ぐすん…」
朋也「おい…もう泣きやめ」
唯「だっでぇ…うぅ…」
俺は平沢に、春原は部長に支えられながら、坂を下っていく。
唯「わだしがサッカーやるなんていっだがら…ぐすん…」
朋也「おまえのせいじゃないだろ」
春原「そうそう。あのバカどもが分をわきまえず喧嘩売ってきたのが悪いんだよ」
唯「うう゛…ぐすん」
律「…その件だけどさ、あんた、ちょっと見直したよ」
春原「あん? なんだよ、気色悪ぃな…」
律「いや…ほら、私たちが馬鹿にされたとき、あんた、すげぇ怒ってくれたじゃん?」
律「それがなんていうか…な? 意外だったんだよ」
それは、俺も同じだった。
まさか、こいつの口からあんなセリフが飛び出してくるとは思わなかった。
春原「は…その場のノリって奴だよ。勘違いす…」
春原「おわっ」
つまずく。
律「おい、しっかりし…」
俺は平沢に、春原は部長に支えられながら、坂を下っていく。
唯「わだしがサッカーやるなんていっだがら…ぐすん…」
朋也「おまえのせいじゃないだろ」
春原「そうそう。あのバカどもが分をわきまえず喧嘩売ってきたのが悪いんだよ」
唯「うう゛…ぐすん」
律「…その件だけどさ、あんた、ちょっと見直したよ」
春原「あん? なんだよ、気色悪ぃな…」
律「いや…ほら、私たちが馬鹿にされたとき、あんた、すげぇ怒ってくれたじゃん?」
律「それがなんていうか…な? 意外だったんだよ」
それは、俺も同じだった。
まさか、こいつの口からあんなセリフが飛び出してくるとは思わなかった。
春原「は…その場のノリって奴だよ。勘違いす…」
春原「おわっ」
つまずく。
律「おい、しっかりし…」
春原「ん? なんか今、右手が一瞬柔らかかったけど…」
どごぉっ!
春原「うぐぇっ」
春原のレバーに部長の鉤突きが突き刺さる。
律「どさくさにまぎれて、どこ揉んでんだ、こらぁっ!」
春原「い、いや…違う、そんなつもりじゃ…」
律「くそぉ、こんな変態、見直したあたしが馬鹿だった…」
春原「って、なに髪つかんでんだよっ、っつつ…」
律「あんなたなんかこれで十分だっつの! さっさと歩けっ、ボケっ」
春原「うわ、やめろっ、スピード落とせっ!」
どんどん坂を下っていく…いや、引きずられて、か。
唯「ぷ…あははっ」
あのふたりに感化されたのか、平沢がぷっと吹き出し、笑みを浮かべていた。
唯「もう…ほんと楽しそうだなぁ…」
朋也「じゃあ、おまえが今日サッカーに誘ったこと、無駄じゃなかったな」
どごぉっ!
春原「うぐぇっ」
春原のレバーに部長の鉤突きが突き刺さる。
律「どさくさにまぎれて、どこ揉んでんだ、こらぁっ!」
春原「い、いや…違う、そんなつもりじゃ…」
律「くそぉ、こんな変態、見直したあたしが馬鹿だった…」
春原「って、なに髪つかんでんだよっ、っつつ…」
律「あんなたなんかこれで十分だっつの! さっさと歩けっ、ボケっ」
春原「うわ、やめろっ、スピード落とせっ!」
どんどん坂を下っていく…いや、引きずられて、か。
唯「ぷ…あははっ」
あのふたりに感化されたのか、平沢がぷっと吹き出し、笑みを浮かべていた。
唯「もう…ほんと楽しそうだなぁ…」
朋也「じゃあ、おまえが今日サッカーに誘ったこと、無駄じゃなかったな」
唯「そうかな…」
朋也「ああ。結果よければ、全てよしってやつだ」
唯「あは…うん、ありがと」
―――――――――――――――――――――
春原の部屋。
ここに、全員が集まっていた。
トンボ班と、医療班には、メールで部屋の番号を伝えていた。
寮の場所は、坂下から一直線なので、それだけでよかったのだ。
春原「いつつ…」
紬「あ、ごめんなさい。しみた?」
残りの連中が部屋に駆けつけてくれた時。
先に帰りついていた俺たちは、何事もなかったかのようにくつろいでいた。
その様子に、最初はポカンとしていたが、それも少しの間のこと。
何も言わず、顔をほころばせ、すぐに馴染んでくれていた。
春原「いや、大丈夫。ムギちゃんの愛で癒してくれれば」
紬「え? それは、どういう…」
春原「傷口を舐めて消毒して欲しいなっ」
紬「えっと…ごめんなさい、手刀でいい?」
朋也「ああ。結果よければ、全てよしってやつだ」
唯「あは…うん、ありがと」
―――――――――――――――――――――
春原の部屋。
ここに、全員が集まっていた。
トンボ班と、医療班には、メールで部屋の番号を伝えていた。
寮の場所は、坂下から一直線なので、それだけでよかったのだ。
春原「いつつ…」
紬「あ、ごめんなさい。しみた?」
残りの連中が部屋に駆けつけてくれた時。
先に帰りついていた俺たちは、何事もなかったかのようにくつろいでいた。
その様子に、最初はポカンとしていたが、それも少しの間のこと。
何も言わず、顔をほころばせ、すぐに馴染んでくれていた。
春原「いや、大丈夫。ムギちゃんの愛で癒してくれれば」
紬「え? それは、どういう…」
春原「傷口を舐めて消毒して欲しいなっ」
紬「えっと…ごめんなさい、手刀でいい?」
春原「患部ごと切り落とすつもりっすか!?」
律「わははは!」
これも、いつも通りだった。
少し前、凄惨な暴力を目の当たりにして、泣いていたのに。
今では、穏やかな空気さえ漂っていた。
朋也「と、つつ…」
澪「あ、ごめんなさい」
朋也「ああ、大丈夫。気にすんな」
俺も春原同様、治療を受けていた。
律「澪、おまえ、血苦手なのに、よくやんなぁ」
澪「消去法で、私しか残らなかったんだから、しょうがないだろ」
そうなのだ。
最初、平沢と憂ちゃんがやりたがってくれていたのだが、中野によって却下された。
その中野自身はやってもいいと言っていたが、悪意を感じたので遠慮しておいた。
部長と真鍋は不器用だと自己申告していたし…
それで、最後に残ったのが秋山だったのだ。
朋也「苦手なら、自分でやるけど」
澪「で、でも、背中とか、わからないでしょうし…私がやりますよ」
律「わははは!」
これも、いつも通りだった。
少し前、凄惨な暴力を目の当たりにして、泣いていたのに。
今では、穏やかな空気さえ漂っていた。
朋也「と、つつ…」
澪「あ、ごめんなさい」
朋也「ああ、大丈夫。気にすんな」
俺も春原同様、治療を受けていた。
律「澪、おまえ、血苦手なのに、よくやんなぁ」
澪「消去法で、私しか残らなかったんだから、しょうがないだろ」
そうなのだ。
最初、平沢と憂ちゃんがやりたがってくれていたのだが、中野によって却下された。
その中野自身はやってもいいと言っていたが、悪意を感じたので遠慮しておいた。
部長と真鍋は不器用だと自己申告していたし…
それで、最後に残ったのが秋山だったのだ。
朋也「苦手なら、自分でやるけど」
澪「で、でも、背中とか、わからないでしょうし…私がやりますよ」
朋也「そっか…じゃあ、よろしく」
言って、上着を脱ぐ。
澪「って、ええ!?」
朋也「ん? なんだよ」
澪「なな、なんで脱いで…」
朋也「だから、背中やってくれるんだろ」
澪「そそ、そうですけど…」
朋也「じゃ、よろしく。おわったら、自分でやるから」
背を向ける。
澪「うう…」
律「きゃぁ、澪がたくましい男の背中に見ほれてるぅ」
澪「ううう、うるさいっ!」
朋也「ぐぁ…」
部長の煽りで力が入ったのか、傷口に痛みが走った。
澪「あ、ご、ごめんなさい…」
言って、上着を脱ぐ。
澪「って、ええ!?」
朋也「ん? なんだよ」
澪「なな、なんで脱いで…」
朋也「だから、背中やってくれるんだろ」
澪「そそ、そうですけど…」
朋也「じゃ、よろしく。おわったら、自分でやるから」
背を向ける。
澪「うう…」
律「きゃぁ、澪がたくましい男の背中に見ほれてるぅ」
澪「ううう、うるさいっ!」
朋也「ぐぁ…」
部長の煽りで力が入ったのか、傷口に痛みが走った。
澪「あ、ご、ごめんなさい…」
律「澪~、ダーリンを傷つけちゃダメだぞぉ」
澪「だだだ、ダーリンって…」
朋也「うぐぁ…」
澪「あ、また…ご、ごめんなさい」
朋也「部長…マジでしばらく黙っててくれ…」
律「きゃはっ! ごめんねっ、てへっ!」
こつん、と頭にセルフツッコミを入れた。
朋也(ったく…)
―――――――――――――――――――――
紬「はい、これでよし」
春原に最後の絆創膏を貼り終える。
春原「ありがと、ムギちゃん」
律「おまえ、それくらいは自分でやれよな…」
春原「せっかくムギちゃんが全部やってくれるっていうんだからね」
春原「のっかっておかなきゃ、未練なく成仏できねぇよ」
澪「だだだ、ダーリンって…」
朋也「うぐぁ…」
澪「あ、また…ご、ごめんなさい」
朋也「部長…マジでしばらく黙っててくれ…」
律「きゃはっ! ごめんねっ、てへっ!」
こつん、と頭にセルフツッコミを入れた。
朋也(ったく…)
―――――――――――――――――――――
紬「はい、これでよし」
春原に最後の絆創膏を貼り終える。
春原「ありがと、ムギちゃん」
律「おまえ、それくらいは自分でやれよな…」
春原「せっかくムギちゃんが全部やってくれるっていうんだからね」
春原「のっかっておかなきゃ、未練なく成仏できねぇよ」
律「地縛霊みたいな奴だな…」
春原「それくらい僕の愛は深いってことさ。ね、ムギちゃん?」
紬「あら? この異様に盛り上がってる部分の床はなにかしら」
春原「って、余計な詮索しちゃだめだよっ!」
律「ああ…エロ本か」
澪「……うぅ」
春原「ちがわいっ!」
朋也「そのエリアはかなりディープなのが隠されてるぞ」
春原「エリアとか、妙にリアリティのある嘘つくなっ!」
春原「ムギちゃんも、剥がそうとしないでね…」
紬「あ、ごめんなさい。好奇心が抑えられなくて…」
春原「はは…まぁ、ただの欠陥住宅だったんだよ、ここ」
朋也「住んでる奴の気が知れねぇよな」
春原「住人の目の前で言うなっ!」
律「わははは!」
春原「それくらい僕の愛は深いってことさ。ね、ムギちゃん?」
紬「あら? この異様に盛り上がってる部分の床はなにかしら」
春原「って、余計な詮索しちゃだめだよっ!」
律「ああ…エロ本か」
澪「……うぅ」
春原「ちがわいっ!」
朋也「そのエリアはかなりディープなのが隠されてるぞ」
春原「エリアとか、妙にリアリティのある嘘つくなっ!」
春原「ムギちゃんも、剥がそうとしないでね…」
紬「あ、ごめんなさい。好奇心が抑えられなくて…」
春原「はは…まぁ、ただの欠陥住宅だったんだよ、ここ」
朋也「住んでる奴の気が知れねぇよな」
春原「住人の目の前で言うなっ!」
律「わははは!」
部長が笑う。
平沢も、憂ちゃんも、琴吹も、真鍋も、秋山も、中野も…みんな笑っていた。
俺も、つられてちょっとだけ笑ってしまう。
ツッコミを入れた春原自身も、苦笑していた。
春原「ああ…そうだ」
春原「ところでさ、平沢」
唯「ん? なに?」
春原「僕がサッカー辞めた理由、知ってたみたいだけどさ…」
春原「こいつから聞いたの?」
唯「えっと…うん…」
唯「私が、しつこく軽音部にきてくれるように言ってたら…教えてくれたんだ」
唯「ごめんね…知ってて、サッカーしようって、誘ったんだ、私…」
春原「いや…いいよ。それなりに楽しかったしね」
春原「………」
春原「まぁ、これから言うことは、適当に聞き流してくれていいんだけどさ…」
みんなが春原に注目する。
春原「あのさ…」
平沢も、憂ちゃんも、琴吹も、真鍋も、秋山も、中野も…みんな笑っていた。
俺も、つられてちょっとだけ笑ってしまう。
ツッコミを入れた春原自身も、苦笑していた。
春原「ああ…そうだ」
春原「ところでさ、平沢」
唯「ん? なに?」
春原「僕がサッカー辞めた理由、知ってたみたいだけどさ…」
春原「こいつから聞いたの?」
唯「えっと…うん…」
唯「私が、しつこく軽音部にきてくれるように言ってたら…教えてくれたんだ」
唯「ごめんね…知ってて、サッカーしようって、誘ったんだ、私…」
春原「いや…いいよ。それなりに楽しかったしね」
春原「………」
春原「まぁ、これから言うことは、適当に聞き流してくれていいんだけどさ…」
みんなが春原に注目する。
春原「あのさ…」
窓の外、暗くなった外を見上げながら、春原はぽつりと語りだす。
春原「僕、とんでもねぇ学校に入っちまったと思ってた」
春原「ガリ勉強野郎ばっかりでよ…」
春原「部活でも、みんな先のことしか考えてねぇんだ」
春原「絶対、友達なんか作らねぇって思ってた」
春原「意地張ってたのかな、やっぱり」
春原「でもさ…そうすると…」
春原「僕の心が保たなくなってたような気がする…」
朋也「………」
それは、俺も同じだった。
同じように考えて…同じように苦しんでいた。
春原「中学の頃の連れは、みんな中卒で働いてたしさ…」
春原「そいつらの元にいきたいって思うようになったんだ」
春原「サッカー部の連中に苛立ってたのが、半分で…そんな思いが半分で…」
春原「それで、やらかしちゃったんだ」
春原「他校の生徒相手に大暴れしてさ…」
春原「僕、とんでもねぇ学校に入っちまったと思ってた」
春原「ガリ勉強野郎ばっかりでよ…」
春原「部活でも、みんな先のことしか考えてねぇんだ」
春原「絶対、友達なんか作らねぇって思ってた」
春原「意地張ってたのかな、やっぱり」
春原「でもさ…そうすると…」
春原「僕の心が保たなくなってたような気がする…」
朋也「………」
それは、俺も同じだった。
同じように考えて…同じように苦しんでいた。
春原「中学の頃の連れは、みんな中卒で働いてたしさ…」
春原「そいつらの元にいきたいって思うようになったんだ」
春原「サッカー部の連中に苛立ってたのが、半分で…そんな思いが半分で…」
春原「それで、やらかしちゃったんだ」
春原「他校の生徒相手に大暴れしてさ…」
春原「退部になれば、自主退学に追い込まれて、実家に帰れるって思ってた」
春原「おまえ、覚えてるか?」
春原「初めてあったときのこと」
朋也「…ああ」
脳裏にふと思い浮かぶ。
鮮明で、鮮烈に記憶されている光景だった。
春原「おまえに会ったのは、その時だよ」
春原「あん時、おまえは幸村のジジィと一緒だった」
春原「生活指導を受けて、ジジィが担任だったから、引き取りに来てたんだよな」
朋也「だったな…」
春原「それでさ…」
春原「おまえさ、ボコボコに顔を腫らした僕を見てさ…どうしたか、憶えてるか?」
朋也「…ああ」
―――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――
春原「…大笑いしたんだよな、おまえ」
春原「おまえ、覚えてるか?」
春原「初めてあったときのこと」
朋也「…ああ」
脳裏にふと思い浮かぶ。
鮮明で、鮮烈に記憶されている光景だった。
春原「おまえに会ったのは、その時だよ」
春原「あん時、おまえは幸村のジジィと一緒だった」
春原「生活指導を受けて、ジジィが担任だったから、引き取りに来てたんだよな」
朋也「だったな…」
春原「それでさ…」
春原「おまえさ、ボコボコに顔を腫らした僕を見てさ…どうしたか、憶えてるか?」
朋也「…ああ」
―――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――
春原「…大笑いしたんだよな、おまえ」
春原「涙流しながら、笑ってたよ」
春原「すげぇ不思議だった」
春原「なんでこいつ、こんなにおかしそうな顔して笑ってるんだろうってな…」
春原「そう考えてたら、僕までおかしくなってきた」
春原「我慢しようとしたけど、ダメだった」
春原「僕も、笑っちゃったよ」
春原「この学校に来てから、あんなに笑ったのは、初めてだった」
春原「すげー気持ちよかった」
朋也「そう…だったな」
あの時の情景。
思い出してみると、自然と笑みがこぼれた。
春原「あの後、ジジィに連れられて、宿直室いったら、さわちゃんいてさ…」
春原「そこで用意してくれてた茶飲んで…おまえと話したんだよな」
春原「今なら、なんとなくわかるよ」
春原「全部、あのジジィとさわちゃんが仕組んでたんだぜ」
春原「僕とおまえを引き合わせてさ…」
春原「すげぇ不思議だった」
春原「なんでこいつ、こんなにおかしそうな顔して笑ってるんだろうってな…」
春原「そう考えてたら、僕までおかしくなってきた」
春原「我慢しようとしたけど、ダメだった」
春原「僕も、笑っちゃったよ」
春原「この学校に来てから、あんなに笑ったのは、初めてだった」
春原「すげー気持ちよかった」
朋也「そう…だったな」
あの時の情景。
思い出してみると、自然と笑みがこぼれた。
春原「あの後、ジジィに連れられて、宿直室いったら、さわちゃんいてさ…」
春原「そこで用意してくれてた茶飲んで…おまえと話したんだよな」
春原「今なら、なんとなくわかるよ」
春原「全部、あのジジィとさわちゃんが仕組んでたんだぜ」
春原「僕とおまえを引き合わせてさ…」
春原「ふたりを卒業させるって」
春原「きっと、一人じゃ辞めてしまうって、気づいてたんだよ」
春原「いつか、訊いてみないとな」
春原「どうして、僕たちをこの学校に残したのかって」
朋也「だな…」
―――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――
春原「ま、後はもう一年だけどさ」
春原「またよろしくってことで」
朋也「ああ」
平沢たちは、しんみりとした表情で、じっと春原の話に聞き入っていた。
こんなに人がいるにも関わらず、静かな室内。
俺たちだけの言葉だけが響いていて、それがどこか心地よかった。
春原「つーか、腹減ったなぁ…どっか食い行くか、岡崎」
朋也「そうだな、いくか」
春原「おまえら、どうする。ついてくる?」
律「ん…なんか、今日は外食って気分だし…私はいいけど」
春原「きっと、一人じゃ辞めてしまうって、気づいてたんだよ」
春原「いつか、訊いてみないとな」
春原「どうして、僕たちをこの学校に残したのかって」
朋也「だな…」
―――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――
春原「ま、後はもう一年だけどさ」
春原「またよろしくってことで」
朋也「ああ」
平沢たちは、しんみりとした表情で、じっと春原の話に聞き入っていた。
こんなに人がいるにも関わらず、静かな室内。
俺たちだけの言葉だけが響いていて、それがどこか心地よかった。
春原「つーか、腹減ったなぁ…どっか食い行くか、岡崎」
朋也「そうだな、いくか」
春原「おまえら、どうする。ついてくる?」
律「ん…なんか、今日は外食って気分だし…私はいいけど」
唯「私もいく! 憂も、くるよね?」
憂「うん、もちろんっ」
澪「私も、行きたいな…」
紬「私も。みんなで晩御飯なんて、楽しそう」
梓「じゃあ…私も」
和「ここまで付き合ったんだし、私も最後までいくわ」
春原「よぅし、全員か。じゃ、僕について来い」
律「どこいくんだよ」
春原「全皿100円の回転寿司だよ。知らねぇのか、スシロゥ」
律「知ってるけどさぁ…貧乏臭ぇなぁ…回転しない高級店でも連れてけよなぁ」
春原「なにいってんだ、ボケ。その場で自転するシャリでも食ってろ」
律「なんだと、こらっ!」
軽口を叩きあいながら、部屋を出ていく。
俺たちも、その様子を目にしながら、あとに続いた。
―――――――――――――――――――――
…二年前。
憂「うん、もちろんっ」
澪「私も、行きたいな…」
紬「私も。みんなで晩御飯なんて、楽しそう」
梓「じゃあ…私も」
和「ここまで付き合ったんだし、私も最後までいくわ」
春原「よぅし、全員か。じゃ、僕について来い」
律「どこいくんだよ」
春原「全皿100円の回転寿司だよ。知らねぇのか、スシロゥ」
律「知ってるけどさぁ…貧乏臭ぇなぁ…回転しない高級店でも連れてけよなぁ」
春原「なにいってんだ、ボケ。その場で自転するシャリでも食ってろ」
律「なんだと、こらっ!」
軽口を叩きあいながら、部屋を出ていく。
俺たちも、その様子を目にしながら、あとに続いた。
―――――――――――――――――――――
…二年前。
俺は、廊下である奴とすれ違った。
金髪のヘンな奴だった。
その顔はもっとヘンで、見ただけで大笑いした。
この学校に来て、初めてだった。
ああ、まだまだ笑えたんだって思った。
それが無性にうれしかった。
小さな楽しみを見つけた。
こいつと一緒に馬鹿をやってみよう。
やってみたら、やっぱりすごく楽しかった。
また、大笑いできた。
それが楽しくて、嬉しくて…
なんども、俺たちは笑ったんだ。
そして今も俺たちは…
―――――――――――――――――――――
春原「おーい、いい加減ネタ回してくれよ」
律「しょうがねぇだろぉ、九人も横に並んでんだぜ」
春原「だから、ちょっとは気を遣えって言ってんだけど」
朋也「わかったよ、ほら、今リリースしてやる」
回転棚に皿を載せる。
朋也「みんな、手つけないでくれ」
春原「おおっ、さすが岡崎、いい親友っぷりだねっ」
金髪のヘンな奴だった。
その顔はもっとヘンで、見ただけで大笑いした。
この学校に来て、初めてだった。
ああ、まだまだ笑えたんだって思った。
それが無性にうれしかった。
小さな楽しみを見つけた。
こいつと一緒に馬鹿をやってみよう。
やってみたら、やっぱりすごく楽しかった。
また、大笑いできた。
それが楽しくて、嬉しくて…
なんども、俺たちは笑ったんだ。
そして今も俺たちは…
―――――――――――――――――――――
春原「おーい、いい加減ネタ回してくれよ」
律「しょうがねぇだろぉ、九人も横に並んでんだぜ」
春原「だから、ちょっとは気を遣えって言ってんだけど」
朋也「わかったよ、ほら、今リリースしてやる」
回転棚に皿を載せる。
朋也「みんな、手つけないでくれ」
春原「おおっ、さすが岡崎、いい親友っぷりだねっ」
春原の元に無事到着する、俺の放った皿。
春原「って、これ、ワサビしか乗ってないんですけどっ!」
朋也「頼んだぞ、リアクション芸人。いまいちな感じだと、業界干されちゃうぞ」
春原「素人だよっ!」
律「わははは!」
大将「お客さん、食べ物で遊ばれたら、困るんですけどねぇ…」
春原「ひぃっ」
強面の寿司職人に凄まれる春原。
朋也「完食して詫びろっ」
春原「って、これ、ワサビしか乗ってないんですけどっ!」
朋也「頼んだぞ、リアクション芸人。いまいちな感じだと、業界干されちゃうぞ」
春原「素人だよっ!」
律「わははは!」
大将「お客さん、食べ物で遊ばれたら、困るんですけどねぇ…」
春原「ひぃっ」
強面の寿司職人に凄まれる春原。
朋也「完食して詫びろっ」
律「いーっき、いーっき!」
春原「無理だよっ」
大将「お客さぁん…」
春原「う…食べます、食べます…」
ぱく
ぎゃああああああああああぁぁぁぁ…
―――――――――――――――――――――
春原と初めて出会った日。
あの日から、小さな楽しみを積み重ねて…
そして、今も俺たちは…
笑っている。
―――――――――――――――――――――
春原「無理だよっ」
大将「お客さぁん…」
春原「う…食べます、食べます…」
ぱく
ぎゃああああああああああぁぁぁぁ…
―――――――――――――――――――――
春原と初めて出会った日。
あの日から、小さな楽しみを積み重ねて…
そして、今も俺たちは…
笑っている。
―――――――――――――――――――――
4/19 月
唯「おはよ~」
憂「おはようございます」
朋也「ああ、おはよ」
憂「怪我、どうですか? まだ痛みます?」
朋也「まぁ、まだちょっとな」
顔には青アザ、切り傷、腫れがはっきりと残っていた。
身体には、ところどころ湿布やガーゼが貼ってある。
憂「そうですか…じゃあ、直るまで安静にしてなきゃですね」
朋也「ああ、だな」
憂「それと、もうあんな無茶はしないでくださいね?」
憂「私、岡崎さんにも、春原さんにも、傷ついてほしくありません…」
朋也「わかったよ。ありがとな。心配してくれてるんだよな」
そっと頭を撫でる。
憂「あ…」
唯「私だって、めちゃくちゃ心配してたよっ」
唯「おはよ~」
憂「おはようございます」
朋也「ああ、おはよ」
憂「怪我、どうですか? まだ痛みます?」
朋也「まぁ、まだちょっとな」
顔には青アザ、切り傷、腫れがはっきりと残っていた。
身体には、ところどころ湿布やガーゼが貼ってある。
憂「そうですか…じゃあ、直るまで安静にしてなきゃですね」
朋也「ああ、だな」
憂「それと、もうあんな無茶はしないでくださいね?」
憂「私、岡崎さんにも、春原さんにも、傷ついてほしくありません…」
朋也「わかったよ。ありがとな。心配してくれてるんだよな」
そっと頭を撫でる。
憂「あ…」
唯「私だって、めちゃくちゃ心配してたよっ」
朋也「そっか」
唯「そうだよっ。だから…はい、どうぞ」
ちょっと身をかがめ、頭部を俺に差し出した。
朋也「なんだよ」
唯「好きなだけ撫でていいよっ」
朋也「じゃ、行こうか、憂ちゃん」
憂「はいっ」
唯「って、なんでぇ~!?」
―――――――――――――――――――――
唯「でもさ、岡崎くんと春原くんの友情って、なんかいいよね。親友ってやつだよね」
朋也「別に、そんな間柄でもないけどな…」
唯「まぁたまた~。きのう、春原くん言ってたじゃん。一人だったら、学校辞めてたって」
唯「それに、サッカーは辞めちゃったけど、新しい楽しみが今はあるんだよ」
唯「それが、岡崎くんと一緒にいることで、それは、岡崎くんも同じでしょ?」
唯「それくらいお互い必要としてるんだから、親友だよ」
唯「そうだよっ。だから…はい、どうぞ」
ちょっと身をかがめ、頭部を俺に差し出した。
朋也「なんだよ」
唯「好きなだけ撫でていいよっ」
朋也「じゃ、行こうか、憂ちゃん」
憂「はいっ」
唯「って、なんでぇ~!?」
―――――――――――――――――――――
唯「でもさ、岡崎くんと春原くんの友情って、なんかいいよね。親友ってやつだよね」
朋也「別に、そんな間柄でもないけどな…」
唯「まぁたまた~。きのう、春原くん言ってたじゃん。一人だったら、学校辞めてたって」
唯「それに、サッカーは辞めちゃったけど、新しい楽しみが今はあるんだよ」
唯「それが、岡崎くんと一緒にいることで、それは、岡崎くんも同じでしょ?」
唯「それくらいお互い必要としてるんだから、親友だよ」
朋也「そんなことはない。あいつと俺の間にあるのは、主従関係くらいのもんだからな」
憂「え? それって…どちらかが飼われてるってことですか…?」
憂ちゃんが食いついてきた。
こういう馬鹿話は、平沢の方が好みそうだと思ったのだが…。
朋也「そうだな、まぁ、俺が飼ってやってるといっても、間違いじゃないかな」
せっかくだから、さらにかぶせておく。
憂「ということは…岡崎さん×春原さん…」
憂「春原さんが受け…岡崎さんが攻め…ハァハァ」
ぶつぶつ言いながら、徐々に鼻息が荒くなっていく。
朋也「…憂ちゃん?」
唯「…憂?」
憂「ハッ!…い、いえなんでもないです、あははっ」
朋也(受け…? 攻め…?)
よくわからないが、なぜか憂ちゃんは微妙に発汗しながら焦っていた。
―――――――――――――――――――――
正面玄関までやってくる。
下駄箱は各学年で区切られているので、憂ちゃんとは一旦お別れになった。
憂「え? それって…どちらかが飼われてるってことですか…?」
憂ちゃんが食いついてきた。
こういう馬鹿話は、平沢の方が好みそうだと思ったのだが…。
朋也「そうだな、まぁ、俺が飼ってやってるといっても、間違いじゃないかな」
せっかくだから、さらにかぶせておく。
憂「ということは…岡崎さん×春原さん…」
憂「春原さんが受け…岡崎さんが攻め…ハァハァ」
ぶつぶつ言いながら、徐々に鼻息が荒くなっていく。
朋也「…憂ちゃん?」
唯「…憂?」
憂「ハッ!…い、いえなんでもないです、あははっ」
朋也(受け…? 攻め…?)
よくわからないが、なぜか憂ちゃんは微妙に発汗しながら焦っていた。
―――――――――――――――――――――
正面玄関までやってくる。
下駄箱は各学年で区切られているので、憂ちゃんとは一旦お別れになった。
ここを抜けさえすれば、合流して二階までは一緒に行けるのだが。
朋也「っと…」
脱いだ靴を拾おうとしゃがんだ時、脚が痛んでよろめいた。
唯「あ、おっと…」
すぐ横にいた平沢に支えられる。
朋也「わり…」
唯「いやいや、このくらい守備範囲内ですよ。むしろストライクゾーンかな?」
こいつの例えはよくわからない。
梓「…おはようございます」
朋也(げ…またこいつか…)
音もなく背後に立っていた。
…とういうか、ここは三年の下駄箱なのだが…
唯「おはよう、あずにゃんっ」
俺を支え、体をくっつけたたまま挨拶する平沢。
梓「………」
じっと、俺の顔を見る。
朋也「っと…」
脱いだ靴を拾おうとしゃがんだ時、脚が痛んでよろめいた。
唯「あ、おっと…」
すぐ横にいた平沢に支えられる。
朋也「わり…」
唯「いやいや、このくらい守備範囲内ですよ。むしろストライクゾーンかな?」
こいつの例えはよくわからない。
梓「…おはようございます」
朋也(げ…またこいつか…)
音もなく背後に立っていた。
…とういうか、ここは三年の下駄箱なのだが…
唯「おはよう、あずにゃんっ」
俺を支え、体をくっつけたたまま挨拶する平沢。
梓「………」
じっと、俺の顔を見る。
また引き離しにくるんだろうか…。
梓「…今だけは特別です」
そう、俺にだけ聞えるようにささやいた。
そして、『また放課後に』と会釈し、二年の下駄箱区画に歩いていった。
朋也(…はぁ…特別ね…)
それは、多分怪我のことを考慮して言っているんだろうな…。
頬に貼った絆創膏をさすりながら、そう思った。
―――――――――――――――――――――
………。
―――――――――――――――――――――
朝のSHRが終わる。
一限が始まるまでは机に突っ伏していようと、腕を回した時…
さわ子「岡崎くん、その顔、どうしたの?」
さわ子さんが教室から出ずに、まっすぐ俺の席までやって来た。
さわ子「まさか、またどこかで喧嘩してきたんじゃないでしょうね…?」
朋也「違うよ。事故だよ、事故」
さわ子「事故って…なにがあったの? その怪我、ただ事じゃないわよ」
梓「…今だけは特別です」
そう、俺にだけ聞えるようにささやいた。
そして、『また放課後に』と会釈し、二年の下駄箱区画に歩いていった。
朋也(…はぁ…特別ね…)
それは、多分怪我のことを考慮して言っているんだろうな…。
頬に貼った絆創膏をさすりながら、そう思った。
―――――――――――――――――――――
………。
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朝のSHRが終わる。
一限が始まるまでは机に突っ伏していようと、腕を回した時…
さわ子「岡崎くん、その顔、どうしたの?」
さわ子さんが教室から出ずに、まっすぐ俺の席までやって来た。
さわ子「まさか、またどこかで喧嘩してきたんじゃないでしょうね…?」
朋也「違うよ。事故だよ、事故」
さわ子「事故って…なにがあったの? その怪我、ただ事じゃないわよ」
朋也「猛スピードの自転車避けて、壁で打ったんだよ」
さわ子「それだけで、そんな風にはならないでしょ」
朋也「二次災害とか、いろいろ起きたんだ。それでだよ」
さわ子「ほんとに? どうも、嘘臭いわね…」
唯「ほんとだよ、さわちゃん! 私、みてたもん!」
さわ子「平沢さん…」
唯「ていうか、その自転車に乗ってたのが私だもん!!」
さわ子「………」
腕組みをしたまま、俺と平沢を交互に見る。
そして、ひとつ呆れたようにため息をついた。
さわ子「…わかったわ。そういうことにしておきましょ」
さわ子「ま、他の先生に聞かれたら、うまく言っておいてあげる」
この人は、やはりなにかあったとわかっているんだろう。
だてに問題児春原の担任を2年間こなしているわけじゃなかった。
唯「さわちゃん、かっこいい~っ」
さわ子「先生、をつけて呼びなさいね、平沢さん」
さわ子「それだけで、そんな風にはならないでしょ」
朋也「二次災害とか、いろいろ起きたんだ。それでだよ」
さわ子「ほんとに? どうも、嘘臭いわね…」
唯「ほんとだよ、さわちゃん! 私、みてたもん!」
さわ子「平沢さん…」
唯「ていうか、その自転車に乗ってたのが私だもん!!」
さわ子「………」
腕組みをしたまま、俺と平沢を交互に見る。
そして、ひとつ呆れたようにため息をついた。
さわ子「…わかったわ。そういうことにしておきましょ」
さわ子「ま、他の先生に聞かれたら、うまく言っておいてあげる」
この人は、やはりなにかあったとわかっているんだろう。
だてに問題児春原の担任を2年間こなしているわけじゃなかった。
唯「さわちゃん、かっこいい~っ」
さわ子「先生、をつけて呼びなさいね、平沢さん」
言って、身を翻し、颯爽と教室を出ていった。
朋也「おまえ、嘘ヘタな」
唯「ぶぅ、岡崎くんに乗っかっただけじゃんっ」
唯「土台は岡崎くんなんだから、ヘタなのは岡崎くんのほうだよ」
朋也「唯、好きだ」
唯「……へ? あのあのあのあのあのっそそそそれれびゃ」
朋也「ほらみろ、俺の嘘の精度は高いだろ」
唯「……ふんっ。そうですね、すごいですねっ」
ぷい、とそっぽを向いてしまった。
からかいがいのある奴だ。
―――――――――――――――――――――
………。
―――――――――――――――――――――
和「ま、なんとかなりそうよ」
朋也「そうか、ありがとな」
和「いえ…あなたには借りがあるからね」
朋也「おまえ、嘘ヘタな」
唯「ぶぅ、岡崎くんに乗っかっただけじゃんっ」
唯「土台は岡崎くんなんだから、ヘタなのは岡崎くんのほうだよ」
朋也「唯、好きだ」
唯「……へ? あのあのあのあのあのっそそそそれれびゃ」
朋也「ほらみろ、俺の嘘の精度は高いだろ」
唯「……ふんっ。そうですね、すごいですねっ」
ぷい、とそっぽを向いてしまった。
からかいがいのある奴だ。
―――――――――――――――――――――
………。
―――――――――――――――――――――
和「ま、なんとかなりそうよ」
朋也「そうか、ありがとな」
和「いえ…あなたには借りがあるからね」
真鍋はサッカー部員の告げ口を防ぐため、朝から動いてくれていたのだ。
こいつの人脈を使って、各方面から圧力をかけていったそうだ。
それも、あの六人を個別にだという。
頼りになる奴だ。こんな力技、こいつにしかできない。
事後処理を頼める奴がいて、本当によかった。
和「まぁ、でも、彼らも大会を控えている身だし…」
和「自分たちから大事にしようとはしなかったかもしれないけどね」
和「彼ら自身も、暴力を振るっていたわけだから」
朋也「でも、おまえの後押しがあったからこそ、安心できるんだぜ」
和「そう。なら、動いた甲斐があったというものだわ」
和「ああ、それと、あなたたち、奉仕活動してたじゃない?」
朋也「ああ」
和「あれも、もうしなくてもいいように働きかけておいたから」
和「まぁ、あなたは最近まともに登校してるから、直接は関係ないでしょうけど」
朋也「って、んなことまでできんのか」
和「一応ね。先生たちの心証が悪かったことが事の発端だったみたいだから」
和「ちょっと手心を加えてくれるよう、かけあってみたの」
こいつの人脈を使って、各方面から圧力をかけていったそうだ。
それも、あの六人を個別にだという。
頼りになる奴だ。こんな力技、こいつにしかできない。
事後処理を頼める奴がいて、本当によかった。
和「まぁ、でも、彼らも大会を控えている身だし…」
和「自分たちから大事にしようとはしなかったかもしれないけどね」
和「彼ら自身も、暴力を振るっていたわけだから」
朋也「でも、おまえの後押しがあったからこそ、安心できるんだぜ」
和「そう。なら、動いた甲斐があったというものだわ」
和「ああ、それと、あなたたち、奉仕活動してたじゃない?」
朋也「ああ」
和「あれも、もうしなくてもいいように働きかけておいたから」
和「まぁ、あなたは最近まともに登校してるから、直接は関係ないでしょうけど」
朋也「って、んなことまでできんのか」
和「一応ね。先生たちの心証が悪かったことが事の発端だったみたいだから」
和「ちょっと手心を加えてくれるよう、かけあってみたの」
朋也「生徒会長って、思ったよりすげぇんだな」
和「生徒会長うんぬんじゃないわ」
和「長いこと生徒会に入っていた中で作り上げてきた私のパイプがあったればこそよ」
和「立場的には、私個人としてしたことね」
朋也「そら、すげぇな」
和「生徒会なんてところに入ってると、先生方とも付き合う機会は多いから…」
和「深い繋がりができるのも、当然と言えば、当然なんだけどね」
それでも、口利きができるほどになるには、こいつのような優秀さが必要なんだろう。
朋也「でも、よかったのか」
和「なにが?」
朋也「おまえの好意は嬉しいけどさ…」
朋也「でも、それは、遅刻とかサボリを容認したってことになるんじゃないのか」
朋也「生徒会長として、まずくないか」
和「そうね。まずいわね。でも…」
くい、とメガネの位置を正した。
和「生徒会長うんぬんじゃないわ」
和「長いこと生徒会に入っていた中で作り上げてきた私のパイプがあったればこそよ」
和「立場的には、私個人としてしたことね」
朋也「そら、すげぇな」
和「生徒会なんてところに入ってると、先生方とも付き合う機会は多いから…」
和「深い繋がりができるのも、当然と言えば、当然なんだけどね」
それでも、口利きができるほどになるには、こいつのような優秀さが必要なんだろう。
朋也「でも、よかったのか」
和「なにが?」
朋也「おまえの好意は嬉しいけどさ…」
朋也「でも、それは、遅刻とかサボリを容認したってことになるんじゃないのか」
朋也「生徒会長として、まずくないか」
和「そうね。まずいわね。でも…」
くい、とメガネの位置を正した。
和「私だって、人の子だから。打算じゃなく、感情で動くこともあるわ」
朋也「感情か…なんか思うところでもあったのか」
和「ええ。あなたたちは…そうね、自由でいたほうがいいと思って」
朋也「自由ね…」
和「うまく言えないけど…ふたりには、ちゃんと卒業して欲しいから」
和「規則で固めたら、きっと、息苦しくなって、楽しくなくなって…」
和「らしくいられなくなるんじゃないかしら。違う?」
朋也「そうだろうな、多分」
和「だから、最後まで笑っていられるよう、私にできることをしたのよ」
朋也「なんか、悪いな、いろいろと…」
朋也「でも、なんで俺たちを卒業させたいなんて思ったんだ」
なんとなく、さわ子さんや幸村に通ずるものを感じた。
和「あら、生徒会っていうのは、本来生徒のためにあるものよ」
和「だから、ある種、私の行動は理にかなってるわ」
和「特定の生徒をひいきする、っていうところが、エゴなんだけどね」
朋也「感情か…なんか思うところでもあったのか」
和「ええ。あなたたちは…そうね、自由でいたほうがいいと思って」
朋也「自由ね…」
和「うまく言えないけど…ふたりには、ちゃんと卒業して欲しいから」
和「規則で固めたら、きっと、息苦しくなって、楽しくなくなって…」
和「らしくいられなくなるんじゃないかしら。違う?」
朋也「そうだろうな、多分」
和「だから、最後まで笑っていられるよう、私にできることをしたのよ」
朋也「なんか、悪いな、いろいろと…」
朋也「でも、なんで俺たちを卒業させたいなんて思ったんだ」
なんとなく、さわ子さんや幸村に通ずるものを感じた。
和「あら、生徒会っていうのは、本来生徒のためにあるものよ」
和「だから、ある種、私の行動は理にかなってるわ」
和「特定の生徒をひいきする、っていうところが、エゴなんだけどね」
多少納得する。
でも、本心を聞けなかった気もする。
和「まぁ、こんなに人のことを考えられるのも、私に余裕があるからなんだけどね」
和「生徒会長の椅子も手に入って、真鍋政権も順調に機能してるし…」
和「総合偏差値も69以上をキープしてるから」
こいつは、やっぱり真鍋和という人間だった。
これからも、ブレることはないんだろう。
朋也「おまえのそういう人間臭いところ、けっこう好きだぞ」
和「それは、どうも」
―――――――――――――――――――――
………。
―――――――――――――――――――――
昼。いつものメンツで学食に集まった。
春原「てめぇ、あれは事故だったって言ってんだろっ」
律「事故ですむか、アホっ! 損害賠償を求めるっ!」
春原「こっちが被害者だってのっ! あんな貧乳、揉みたくなかったわっ!」
でも、本心を聞けなかった気もする。
和「まぁ、こんなに人のことを考えられるのも、私に余裕があるからなんだけどね」
和「生徒会長の椅子も手に入って、真鍋政権も順調に機能してるし…」
和「総合偏差値も69以上をキープしてるから」
こいつは、やっぱり真鍋和という人間だった。
これからも、ブレることはないんだろう。
朋也「おまえのそういう人間臭いところ、けっこう好きだぞ」
和「それは、どうも」
―――――――――――――――――――――
………。
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昼。いつものメンツで学食に集まった。
春原「てめぇ、あれは事故だったって言ってんだろっ」
律「事故ですむか、アホっ! 損害賠償を求めるっ!」
春原「こっちが被害者だってのっ! あんな貧乳、揉みたくなかったわっ!」
朋也「え、でもおまえ、思い出し揉みしてたじゃん」
朋也「まくらとかふとん掴んで、『なんか違うな…』とか言ってさ」
朋也「あれ、記憶の中の実物と、揉み比べてたんだろ」
春原「よくそんな嘘一瞬で思いつけますねぇっ!」
律「最低だな、おまえ…つーか、むしろ哀れ…」
春原「だから、違うってのっ!」
紬「春原くん…その…女の子の胸が恋しいの?」
春原「む、ムギちゃんまで…」
紬「えっと…もし、私でよかったら…」
顔を赤らめ、もじもじとする。
春原「へ!? も、もしかして…」
ごくり、と生唾を飲み込む。
その目は、邪な期待に満ちていた。
紬「紹介しようか…?」
春原「紹介…?」
紬「うん。その…うちの会社が経営母体の…夜のお店」
朋也「まくらとかふとん掴んで、『なんか違うな…』とか言ってさ」
朋也「あれ、記憶の中の実物と、揉み比べてたんだろ」
春原「よくそんな嘘一瞬で思いつけますねぇっ!」
律「最低だな、おまえ…つーか、むしろ哀れ…」
春原「だから、違うってのっ!」
紬「春原くん…その…女の子の胸が恋しいの?」
春原「む、ムギちゃんまで…」
紬「えっと…もし、私でよかったら…」
顔を赤らめ、もじもじとする。
春原「へ!? も、もしかして…」
ごくり、と生唾を飲み込む。
その目は、邪な期待に満ちていた。
紬「紹介しようか…?」
春原「紹介…?」
紬「うん。その…うちの会社が経営母体の…夜のお店」
春原「ビジネスっすか!?」
律「わははは! つーか、ムギすげぇ!」
一体なにを生業としているんだろう、琴吹の家は…。
―――――――――――――――――――――
………。
―――――――――――――――――――――
放課後。
唯「じゃね、岡崎くん」
朋也「ああ」
平沢が席を立ち、軽音部の連中と落ち合って、部活に向かった。
帰ろうとして、俺も鞄を引っつかむ。
ふと前を見ると、さわ子さんと春原が話し込んでいた。
きっと、今朝の俺と同じように、怪我のことでも訊かれているんだろう。
しばらくみていると、いきなり春原がガッツポーズをした。
さわ子さんはやれやれ、といった様相で教室を出ていく。
話は終わったようだった。
春原が意気揚々とこちらにやってくる。
春原「おいっ、僕たち、もう居残りで仕事しなくていいってよっ」
即日で解放されるとは…。
律「わははは! つーか、ムギすげぇ!」
一体なにを生業としているんだろう、琴吹の家は…。
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………。
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放課後。
唯「じゃね、岡崎くん」
朋也「ああ」
平沢が席を立ち、軽音部の連中と落ち合って、部活に向かった。
帰ろうとして、俺も鞄を引っつかむ。
ふと前を見ると、さわ子さんと春原が話し込んでいた。
きっと、今朝の俺と同じように、怪我のことでも訊かれているんだろう。
しばらくみていると、いきなり春原がガッツポーズをした。
さわ子さんはやれやれ、といった様相で教室を出ていく。
話は終わったようだった。
春原が意気揚々とこちらにやってくる。
春原「おいっ、僕たち、もう居残りで仕事しなくていいってよっ」
即日で解放されるとは…。
本当に仕事の速い奴だ、真鍋は。
春原「やったなっ。これで、放課後は僕らの理想郷…」
春原「ゴートゥヘヴンさっ」
あの世に直行していた。
朋也「俺を巻き込むな」
春原「なんでだよっ、一緒にナンパしにいったりしようぜっ」
朋也「初対面の相手と心中なんかできねぇよ」
春原「いや、僕だってそんなことするつもりねぇよっ!?」
朋也「今言ったばっかじゃん、ゴートゥヘヴンって。天国行くんだろ。直訳したらそうなるぞ」
春原「じゃあ…ウィーアーインザヘヴンでどうだよ?」
みんなで死んでいた。
―――――――――――――――――――――
唯「あ、岡崎くん、春原くん」
廊下に出ると、向かいから平沢が小走りで駆けてきた。
朋也「どうした、忘れ物か」
春原「やったなっ。これで、放課後は僕らの理想郷…」
春原「ゴートゥヘヴンさっ」
あの世に直行していた。
朋也「俺を巻き込むな」
春原「なんでだよっ、一緒にナンパしにいったりしようぜっ」
朋也「初対面の相手と心中なんかできねぇよ」
春原「いや、僕だってそんなことするつもりねぇよっ!?」
朋也「今言ったばっかじゃん、ゴートゥヘヴンって。天国行くんだろ。直訳したらそうなるぞ」
春原「じゃあ…ウィーアーインザヘヴンでどうだよ?」
みんなで死んでいた。
―――――――――――――――――――――
唯「あ、岡崎くん、春原くん」
廊下に出ると、向かいから平沢が小走りで駆けてきた。
朋也「どうした、忘れ物か」
唯「うん、机の中にお弁当箱忘れちゃって…」
唯「明日まで放っておいたら、異臭事件起きちゃうから、すぐ戻ってきたんだ」
朋也「そっか」
唯「ふたりは、今帰り?」
朋也「ああ」
唯「春原くんは、今日はお仕事ないの?」
春原「あれ、もうやんなくていいんだってさ。だから、これからは直帰できるんだよね」
唯「え、そうなんだ? だったらさ…」
唯「って、そっか…部活、嫌なんだよね…」
こいつは、また部室に来るよう誘ってくれるつもりだったのか…。
めげないやつだ。
唯「でも、気が変わったらでいいからさ、顔出してよ。軽音部にね」
そう告げると、すぐ教室に入っていった。
春原「…なぁ、岡崎」
朋也「なんだよ」
春原「ただで茶飲めて、菓子も食えるって、いいと思わない?」
唯「明日まで放っておいたら、異臭事件起きちゃうから、すぐ戻ってきたんだ」
朋也「そっか」
唯「ふたりは、今帰り?」
朋也「ああ」
唯「春原くんは、今日はお仕事ないの?」
春原「あれ、もうやんなくていいんだってさ。だから、これからは直帰できるんだよね」
唯「え、そうなんだ? だったらさ…」
唯「って、そっか…部活、嫌なんだよね…」
こいつは、また部室に来るよう誘ってくれるつもりだったのか…。
めげないやつだ。
唯「でも、気が変わったらでいいからさ、顔出してよ。軽音部にね」
そう告げると、すぐ教室に入っていった。
春原「…なぁ、岡崎」
朋也「なんだよ」
春原「ただで茶飲めて、菓子も食えるって、いいと思わない?」
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