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元スレ黒子「ひなまつり弁当360円ですの?」
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咆哮。
買い物カゴを両手に持った女が。
全力でカートを押す男が。
巨体を一個の質量の塊にして突進する坊主が。
一振り。
たった一振りで地に叩きつけられた。
ただ一人、白井黒子を除いて。
黒子「テレポーターに、テレポートは通用しませんの!」
結標「ならこういうのはどう?」
本能的に恐怖を感じ、黒子はバックステップで距離をとる。
と、一瞬前まで彼女がいた場所に、コルク抜きが現れていた。
もし黒子が避けなければ、コルク抜きは彼女の右肩に深々と突き刺さっていただろう。
これを受け、黒子は察する。
3次元の動きではまずい。
11次元。テレポートによる奇襲。
ソレこそが今の最善手!
黒子は悠々と佇む結標の背後に瞬間移動し、拳を振りかぶる。
結標が気付き、振り返ろうとするが、しかし黒子は再びテレポートをしている。
転移先は――真上!
激痛。
肉を裂く音。
結標の真上にテレポートした黒子の肩に、今度こそコルク抜きが突き刺さっていた。
黒子「いっ! つ――っ!」
結標「馬鹿ねぇ、同じタイプの能力者なんだから、貴女がどこに転移するかなんて、お見通しなのよ」
落ちる身体を建て直し、黒子は結標と距離を置いてテレポートする。
体術も駄目。
能力も駄目。
となると、もう打つ術が無い!
結標「ふふ……もう終わりかしら」
黒子「なぜ……なぜここまでして半額弁当を……」
結標「貴女、何故狼は半額弁当を求めて戦うのだと思う?」
黒子「それは……勝利の一味が入った、最高の料理を食すためですの」
結標「違うわ。全然ちっとも当たってない。狼はね、生きるために狩りをするの」
結標「勝利の一味? 最高の料理? はっ! そんなものが食べたければ高級レストランにでもいけばいい」
結標「半額弁当争奪戦は本来、金が無い貧乏学生達の命を懸けた戦いだったのよ!
金も無い、自炊する能力も無い、そんな若者達が、半額弁当を求めスーパーに集った。それが、はじまり」
黒子「しかしそれは、昔の話でしょう……」
結標「そうね、そうだわ。だから私は、醜く地面を這いずって半額弁当に群がる、今の豚共が哀れで仕方が無い」
結標「掟? 誇り? そんなもの、腹の足しにはならないわ」
黒子「貴女、哀れですわね」
結標「なんだと……」
黒子「下らないと言ったんですの。確かに狼は空腹を満たすために狩場へ赴きますの。
でも、そこに誇りをかけて挑むからこそ狼たり得るんですの! 腹が減ったから半額弁当を求める?
それこそ無様に餌をねだる豚と変わりませんわ!」
黒子「金が無いなら自炊しろ! 能力が無いなら努力しろ! 数あるスーパーをかけずり、特売で材料を手に入れろ!
浅ましく半額弁当という餌を待っているんじゃないですの!」
黒子「貴女がそんな幻想を抱いてアラシを働くって言うのなら! まずはそのふざけた幻想をぶち殺してさしあげますの!」
結標「っざけんなよ……出来損ないの豚が……お前に分かるのか!? 少ない生活費で多くの子供達を養う気持ちが!
いたいけな少年達に、必死に努力して作った料理を「お姉ちゃんの料理マズイ」って言われた奴の気持ちが! 分かるのか!?」
結標「お前は腹を空かせたチャイルドエラーの子供達に、飢え死にしろって言うのかよ!」
軍用ライトを振り、結標が叫ぶ。
倒れ伏した狼達が、黒子の頭上へ転移する。
黒子「そんなのてめぇの努力が足りないだけですの!
本当に子供達を守りたいって言うのなら、そのくらいで絶望してんじゃありませんわ!」
両手を広げ、狼達を『一つの塊』と認識して再計算。
その塊が黒子に触れた瞬間。床の近く、怪我をしない程度の高さにテレポートさせる。
そして、黒子は駆けた。
拳を握り、振りかぶる。
すると、茶髪の時と同じく、顎鬚が黒子の目の前へと現れた。
結標「一人じゃ何もできない豚風情が!」
黒子は結標の言葉も意に介さない。
構わず、拳を振りぬいた。
ス――と、顎鬚がその拳を見切り、避けた。
結標「なぁっ!?」
打撃音。
黒子の拳が、不意を突かれた結標の身体を吹き飛ばした。
顎鬚「嬢ちゃんの言葉で目が覚めたぜ。そう何度も壁にされてたまるかっての」
顎鬚の言葉に、倒れていた狼達が次々と立ち上がる。
坊主「黙って聞いてりゃ、勝手な事ばっか言いやがってよ」
茶髪「でも、お嬢様の啖呵はなかなか格好良かったわよ」
結標「糞豚がァ……」
幽鬼の如く立ち上がると、結標は軍用ライトを手に持ち、狼達をねめつける。
その目は、まるで彼らを妬んでいるようにも見えた。
黒子「やはり、そうですのね」
女子生徒「はい、私も気がつきました」
黒子「結標淡希、貴女は自分自身を転移させる事ができませんのね」
結標「…………」
黒子「自分自身を転移できるなら、盾など置かずに自分が逃げればいい。
それをしないという事は、できないという事に他ありませんの」
結標「だから何? その程度で勝ったつもり?」
黒子「いいえ。でも、それこそがレベル5に匹敵する力を持ちながら、
レベル4止まりの理由でしたのね。出来損ないは、いったいどちらなのかしら」
結標「……あはは、あははははははは!!」
哄笑。
結標淡希は笑う。
狂ったように、笑い出した。
結標「ここまで……ここまでコケにされたのは初めてよ。もう弁当なんていいわ、どうでもいい。
あんた達全員まとめてブっつぶしてやる!」
鬼の形相で結標が宣言する。が、狼達の反応は冷ややかだ。
もはや、彼女の事すら見据えていないように。
黒子「どうでもいいと、言いましたわね」
結標「な、何よその目。そうよ、もう弁当なんていらない! あんた達全員、二度とスーパーに来れない位に痛めつけてやるわ!」
黒子「弁当が、いらない?」
結標「そ、そうよ!」
黒子「では、貴女はもう、私達の敵ではありませんの!」
黒子「弁当を求めぬのなら、貴女はもはや豚ですらない。狼の前にぶら下げられた、無防備な兎でしかありませんの」
結標「な、なによ……」
黒子「貴女は、狩られる側に回ったと、そう言う事ですわ」
殺到する。
狼達が結標に殺到する。
もはや結標には、腹の虫の加護も、生活力も、何一つ残されていない。
唯一残った『大能力(レベル4)』ですら、この場に置いてはなんの役にも立たない!
それでも、彼女はこの力に頼るしかないから。
この力が全てだと思っていたから。
振るった。
軍用ライトを横一線に。
しかし、転移は起きない。
能力が、発動しない。
結標「なん……で」
結標はそこで、自分の肩に誰かが手を乗せていることに気付く。
それは、荒い息を吐く、ツンツン頭の少年。
上条「俺の『幻想殺し』は、たとえ神様のシステムだって、それが異能の力ならば一つ残らず打ち消しちまうのさ」
結標「なっ! なぁっ!? 幻想――殺し!?」
狼狽する結標に、黒子が迫る。
狼達の雄叫びが聞こえる。
黒子「歯ァ食いしばれですの! ちょっとやそっとじゃ、わたくしの腹の虫は治まりませんのよ!」
結標「ひっ――!」
硬く握った黒子の拳が、結標の頬に突き刺さった。
腹の虫の加護が込められた黒子の拳が、宙を舞う結標の意識を闇に落とした。
エピローグ
黒子「なんで塩と砂糖を間違えるんですの!? ドジッ娘アピールですの!? そうなんですのね!?」
結標「だって『S』ってシュガーの『S』でしょう?」
黒子「ソルトの『S』ですの!」
台所で騒ぐ声を聞きながら、上条当麻は布団をかぶる。
また、上条の風邪は悪化していた。
黒子「本当に救いようの無い馬鹿ですの! 何で風邪引いてるのに寮からスーパーまで全力疾走してきてますの!?
わたくしが時計のアラームを止めた意味が完全に喪失しましたわ!」
上条「だって、起きたら目覚まし止まってるし。半値印証時刻も過ぎてるし……」
黒子「はぁ……もういいですの。結標さん? 料理のほうは大丈夫ですの?」
黒子と結標は上条の寮に来ていた。
黒子が結標に、料理を教えるためである。
黒子「まったく、いくらショタコンだからって、チャイルドエラーの世話をしているとは思いませんでしたわ。
なんですの? 逆光源氏ですの?」
結標「だから私はショタコンじゃないわよ!」
結標淡希はとあるチャイルドエラー養護施設の出身だった。
しかしその養護施設の経営者が経営難から夜逃げし、それに変わって『案内人』としてある程度稼いでいた結標が、
子供達の世話をするようになった。初めは自分で料理を作っていたのだが、ある日マズイといわれたショックから結標は料理が作れなくなる。
給食業者に朝昼の食事は安価で依頼できたものの、夕飯だけはどうしようもなく、結標は過去に『狼』としてスーパーを駆けていた経験から、
半額弁当に頼るようになったのだと言う。
黒子「なんでそこにチョコを入れますの!?」
結標「え?だって子供は甘いほうが好きでしょう?」
黒子「限度ってものがありますの! 肉じゃがにチョコ入れてアンタは本当に何がしたいんですの!」
結標「まぁ、上条くんならきっと食べてくれるわよ」
黒子「たしかにお優しい当麻様はマズくても美味しい美味しい言いながら食べてしまうでしょうけれど……」
不幸だ、と上条は呟く。
でも、風邪を引いた時に誰かが近くに居てくれる自分は、もしかしたら案外幸せなのかもしれない。
黒子の鞄に張られた二枚目の月桂冠のシールを見て、上条はそんな風に、思うのだった。
これは、己の誇りと夕食を懸けて戦う、狼達の物語。
そして、自分の居場所を探す、若者達の物語。
黒子「ひなまつり弁当360円ですの?」END
>>177の投稿時間がすごい。
読んでくれて有難う御座いました。
前回のを見てくれた方もありがとうございます。
しかし、これ読んでベン・トーを買ったとか、オレはSD文庫の回し者かよ
ちょっとだけ番外編かいてます。
それはもうちょっとまってね
読んでくれて有難う御座いました。
前回のを見てくれた方もありがとうございます。
しかし、これ読んでベン・トーを買ったとか、オレはSD文庫の回し者かよ
ちょっとだけ番外編かいてます。
それはもうちょっとまってね
途中まで、あわきんの居候先に大食いシスターが住み着いたせいで、
仕方なく半額弁当に手を出すことになったんだと思ってた
仕方なく半額弁当に手を出すことになったんだと思ってた
>>187
お前のおかげでスーパーダッシュ文庫がヤバイ
お前のおかげでスーパーダッシュ文庫がヤバイ
店員さん「ぺたぺたぺたり」
俺「コレもお願いします」
店員さん「あ、いいですよー」ぺたり
ごめん、俺アラシだわ
俺「コレもお願いします」
店員さん「あ、いいですよー」ぺたり
ごめん、俺アラシだわ
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