元スレ新ジャンル「堂守」
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51 :
「「 自由な人たち 」」 012+02 2010.22.11.10--033
*** 太陽に照らされた月 ***
夕食時になり、買い物帰りの早苗とときが冨美の噂をしていた。早苗が冨美を
夕方、公園で見かけ、誰かと歩いている所を見たというのだ。それを聞いたともも
何日か前に、近くの川べりで男の人と歩いている冨美を見たと言う。
二人は冨美に友達でも出来たのかと何となく思った。そんなとき、冨美も
夕食の用意の為に買い物を終え、二人が話している所に居合わせた。
「買い物ですか。先日は有難うございました。美味しいみかんだったわ。一人で
食べちゃった」
冨美はよく、早苗やときから貰い物して、また、冨美もお返しをして、親しく付き合って
いた。冨美が挨拶をして、これから夕食の用意があるので、分かれようとすると、
早苗がこないだの男の人誰って聞いたので、冨美は、
「え、いつ、どこで見たの最近は男の人と歩いた事も無いけど」
と言って、聞き返した。
早苗はそれ以上は聞かないで、適当に別れの言葉を言って、話を止めた。
冨美も何となく、会釈してその場を離れた。
冨美は早苗とときが何を言っているのか分ってはいたが知らない振りをした自分が
何か後ろめたい気持がして成らなかった。
52 :
「「 自由な人たち 」」 012+03 2010.22.11.11--034
*** 太陽に照らされた月 ***
早苗とときは冨美の後姿を見ながら、冨美が何となく嘘を言っていることに疑い
の眼差しで、冨美の美しい後姿を見送っていた。
早苗は確かに公園で冨美を見かけ、声を掛けようと近付いたのだが木の陰で
見えなかった男が冨美に近付き声を掛けたので、直に木陰に隠れ二人に見えない
ように木陰から見ていたのだ。
まだ、何日もたっていないので、冨美が忘れるはずがないのに冨美は知らない
振りをしたので、早苗は何となく、冨美に嫉妬心を抱いた。
ときも冨美が川べりを男と二人で歩いているところを橋の上で見かけ、足を止めて
暫く見ていたので、冨美であるのは間違いなかった。
早苗とときはお互い顔を見合わせ、笑みを浮かべた。早苗とときは人一倍
気が合い、いつも二人で言いたいことを言い合う中で、二人は冨美の秘密を
知りたくなり、冨美をいつか付ける約束をした。
冨美は電気を決して月明かりの中で風呂につかるのが好きだった。暗い中で、
月明かりと廊下の淡い光で、時間を掛けて風呂につかり体の中の全ての
疲れを出し切る事が冨美にとって、一番の楽しみだった。
「あの二人に見られたのね。用心していたけど、駄目だった」
温めの湯は体を芯から暖め、体の穴という穴から体の中に入り込み、その湯の
流れに体の疲れが汗となって体の外に逆流するようで、素肌に吹き出る汗が疲れの
水滴となって体に浮かんでいるのを見ると体の疲れが取れるのを感じだ。
53 :
「「 自由な人たち 」」 012+04 2010.22.11.15--035
*** 太陽に照らされた月 ***
早苗は男運が悪く、幸せそうな女を見ると誰にでも嫉妬した。早苗に取って
トイレはいつも嫉妬の場所だった。下着を下ろし便座に座るそのとき、なぜか、
開放感を感じ、気になる女の事を思い出すのだ。その女が男と何をしたのか、
昨日の夜も一緒にいたのか、色々なことを想像しながら、便座に尻を押し付け
たり、便座から尻を浮かしたりするのだ。
今日は冨美のことが忘れられなくて、いつもより長いトイレになっている。なぜ、
冨美さんが男といたのだろう。もう、冨美さんは長い間、男の影は無かった筈
なのに、早苗の嫉妬心はじょじょに増し、便座に座った白い足の膝を手で握った。
早苗は何回か男に騙されて来たが、根っからの男好きで、男のいない生活は
考えられなかった。ときにはトイレで男との事を考えながら、暫く楽しかった
ときのことを思い出し、一人でトイレのひと時を過ごした。
冨美はそれほど綺麗な女ではなかったが体のバランスは女が見ても結構綺麗で
あの体で男に愛されている冨美を想像するとなぜか、嫉妬心が湧き上がり、
下着を下ろし、剥き出しになった下半身が熱く疼き、手を両足で挟み強く閉じた。
早苗にとって、たった一人で過ごす、このトイレの時間が嫉妬心を和らげる
唯一の場所であり、女として実感できるささやかな秘密の場でもあった。
54 :
「「 自由な人たち 」」 012+05 2010.22.11.16--036
*** 太陽に照らされた月 ***
冨美は仕事に追われ、忙しい日々を過ごしていた。幸雄は暫く、冨美に会えず
冨美のことを心配する毎日だったが連絡はしなかった。
幸雄に冨美から久しぶりに連絡があった。
「忙しかったの、今度の日曜日10時にあの店に行くけど、会えない」
幸雄はいつも連絡したかったが自分からは連絡しないと冨美に言っていた。
「貴方から何で連絡してくれないのいつでもいいのに」
冨美も別に連絡をしないでと言っていた訳ではなかった。幸雄も深い意味は
無かったが、憧れの人に似ている冨美の自由を奪いたくなかった。
「このパン、公園で食べない。やっぱり、連絡くれなかった。連絡待っていたのに。
でも、会うことは出来なかったけど。夜遅くなら会えた、今度、夜でもいい」
幸雄は頷いて笑った。冨美は幸せそうだった。仕事だけが生きがいとは
思っていないが、自分の意見を通す為に多くの時間が必要で、女の人と
付き合う時間が取れない。
「お互い仕事が忙しすぎるね。でも、こうしてると全てを忘れてしまう。
私が仕事を辞めると言ったら、何を想像する」
56 :
「「 自由な人たち 」」 012+06 2010.22.11.17--037
*** 太陽に照らされた月 ***
公園を早苗は子供と遊びに来ていた。早苗には小さな娘が一人いて、水曜日は
休みで、公園に来るのが習慣だった。
茂も公園には良く来ていた。良くと言うより毎日一度は来て、行き交う人に挨拶
することが楽しみのうちだった。今日も、早苗に挨拶をし、早苗に話し掛けた。
「早苗さん、今日は、娘さんも今日は」
早苗も挨拶を返し、娘にも挨拶させた。茂は誉めながら小さな子供の頭をなぜた。
「茂さん、いつも、楽しそう、何でそんなに楽しそうなの」
「ここにいると早苗さんのようなべっぴんさんを見る事が出来るからかな」
茂は会うたびに誰でも誉めた。早苗のようなそれほど美しくない女も取り合えず
誉めるようにしていた。
「茂さん、誰でもそんな事を言っているでしょう。いつか、高瀬さんの奥さん、
茂さんに誉められたって、喜んでいた」
「早苗さんは綺麗ですよ。早苗さんに惚れたな」
「ほんと、嘘でしょう。何か証明できる。惚れたならその証拠が必要よ」
57 = 56 :
「「 自由な人たち 」」 012+06 2010.22.11.17--037
*** 太陽に照らされた月 ***
早苗は茂るが座っているベンチに並んで座り、笑いながら言った。前から、
茂を見ると何となく気になる雰囲気があり、嫌いではなかった。
「これなんかどうかな、気に入ってくれるかな」
脇のバックから小さな箱を早苗の娘に上げた。それは綺麗な箱に入った小さな
人形で小さい子供が気に入りそうな綺麗な人形だった。
早苗はそれを見て、少し驚き、冗談のつもりで言ったのにと思ったが、意外な
茂の反応に少し躊躇した。
「そんな、これは貰えません。誰かに遣るものでしょう」
「高いものではないから、早苗さんと友達に慣れればといつも持っていたもの、
恥ずかしいけど友達に成るための小道具かな」
「そんなことをしなくても友達ならいつでも成れますよ」
「早苗さんにはこれはどうだろう」
「なんですか、これ、商品券でしょう。こんなの困ります」
「これも小道具なんだ。でも、本物だよ。僕の気持なんだ、色々考えたけど、家に
結構溜まっていて、品物よりいいかなって思った訳、でも、友達ならこれぐらいは
いいかなって思った」
早苗は少し考えた。友達になるって事は何か下心があるってこと、商品券は
お金も同然、そんなの貰えるはずがない。
「これは貰えない。こんなことしなくても友達には成れますよ」
58 = 56 :
「「 自由な人たち 」」 012+08 2010.22.11.17--039
*** 太陽に照らされた月 ***
見せることが大事と茂は思っていた。早苗も見たものは忘れない性格で貰える
ものは貰いたいのだが。
商品券が入った袋を茂に差出した。茂はそれを取らずに別な話を始めた。
「早苗さんはいつも娘さんと二人でいるけど」
「二人だけです」
「旦那さんは」
「いません、何処かに行ってしまい。分かれました。二人でも寂しくないよね」
娘を抱き上げ、商品券の入った袋を握り締めた。茂を見て笑った。商品券の
入った袋を早苗は放そうとはしなかった。
「こんど私の家に遊びに来てください。料理でもご馳走します」
「茂さん、料理できるの。私、これでもプロですよ」
「私も腕はプロ級ですよ。来週でもどうです」
「いいんですか。でも」
「友達と一緒にどうです。一人では心配でしょうから。歳をとっても男ですからね」
早苗は行く事にした。茂は何人にでもいいと行ったので、ときに電話して、来週、
一緒に行けるか確かめた。
「友達にときさんって人がいて、この人と私と娘と三人ではどうです」
「勿論、かまいません。楽しみにしてます。お嬢ちゃん、待ってるからね」
茂の家は早苗の知っている家の近くで、よく知っていた。時間を決め、早苗は
茂と別れた。
59 :
「「 自由な人たち 」」 012+09 2010.22.11.26--040
*** 太陽に照らされた月 ***
幸雄と秋子は酔いを醒ましながら、街並みの中を歩いていた。秋子は仕事仲間
で、幸雄は秋子から沢山の仕事を教えて貰い、深く感謝していた。そんな秋子が
仕事を辞めて、故郷に帰るということで、友氏が集まり、簡単な送別会を開いたの
だった。
「貴方の挨拶には驚いたわ。突然、秋子さんにはお世話になり、一生忘れません
なんて言うんだもの」
秋子は幸雄の抜け目のない性格が好きで、いつも気付いた事を注意してくれる
頼りになる先輩で幸雄も信頼していた一人だった。先輩と言ってもそれほど歳は
離れては居ないが仕事の面では大変お世話になったので、故郷に帰ると聞いた
ときには驚くとともに寂しい気持で一杯になった。
「秋子さんが居なくなると寂しくなるな、僕の仕事を叱っる人も居なくなる」
「仕事は私より出来るでしょう。貴方にはもう勝てない。心配してないわ」
秋子は幸雄の顔を見て、幸雄の手を握った。歩いているとき突然手を握られたが
幸雄を何も言わず、手を握り返した。
「本当はこうして歩きたかった。貴方が好きな人が出来たと聞いたとき、何だか、
私の中の何かが崩れたと思ったの」
60 = 59 :
「「 自由な人たち 」」 012+10 2010.22.11.26--041
*** 太陽に照らされた月 ***
ほろ酔い気分は二人にかつて味わったことの無い甘い雰囲気と手を繋ぐ事で、
流れるお互いの血液が行き交うかのように相手の熱い血液がお互いの体に
流れ込むこみ二人の気持と体が一つになったように秋子は感じた。
「やっぱり貴方の手は暖かくて軟らかい、でも、もう遅いのね」
秋子は笑った。そして、泣いた。泣きたくなかったけど、涙が止まらなくなった。
「涙が止まらないわ、どうしょうも無いのにね」
幸雄はハンカチをだし、秋子に渡した。
「秋子さん、僕に出来る事はないですか。これまでの恩返しもしたいし」
「本当、何でもいい」
「何でもと言っても、出来ることですよ」
「簡単にできる。私を抱いて欲しい。私に恩返しをしたいのなら、私を抱いて
欲しい。それが恩返し、そして、私を一生忘れて欲しくない」
「それは出来ない。そのほかに無いですか」
61 = 59 :
「「 自由な人たち 」」 012+11 2010.22.11.26--042
*** 太陽に照らされた月 ***
幸雄の言葉を聞いた秋子は突然、人が行き交う歩道で座り込んでしまった。
「私が馬鹿だった。貴方が恩返しをしたというから、何て馬鹿なことを言って
しまったのかしら、ごめんなさい」
「秋子さん、どうしたんです。困ったな」
「でも、本気なの、本気なのよ。ごめんね。一度でいいから」
涙ぐんだ秋子の目は幸雄を見詰め、淡い恋心を抱いていた女の気持が幸雄に
逃げ場を失わせてしまった。
幸雄は秋子を抱きお越した。秋子の少し肉付きのいい体は強く女の体を
感じさせ、酒の臭いと共に女の体が放す男を虜にする香りが幸雄の体に
浸透してくるのを感じた。
「秋子さん、どこかで休んで行きますか。それとも」
「私の家に寄れない。明日、休みだし、明日は都合が悪い」
「そうですね。秋子さんの家にはいけない。どこかに行きましょう」
秋子は笑った。嬉しかった。一度でよかった。一度だけで満足できると思った。
62 :
「「 自由な人たち 」」 012+12 2010.22.11.28--043
*** 太陽に照らされた月 ***
通りかかったタクシーに秋子を乗せ、幸雄はホテルに向った。幸雄は秋子の
話に納得した訳ではなく。秋子に説明し、出来ないというつもりだった。
「とりあえず、秋子さん休める所に行きましょう」
秋子はじっと黙ったままだった。幸雄にうなだれるように寄り添い。酔った振りを
続け、このまま、幸雄と一緒に一夜を過ごすにはどうすればいいか考えながら、
幸雄の腿の上に頭を載せ、寝たふりをした。腿の温かさが頬に感じ、なんとなく
幸雄の男を感じた。
「秋子さん、大丈夫ですか」
「大丈夫、少し、眠いの」
63 = 62 :
「「 自由な人たち 」」 012+13 2010.22.11.29--044
*** 太陽に照らされた月 ***
膝の上に頭を載せて横たわる秋子を見て、自分を求める女をどうすればいいのか
幸雄は迷った。幸雄には心を寄せる冨美という存在があり、冨美を思うと秋子と
一夜を過ごすことに躊躇いもあり、しかし、自分を求める同僚としてのいとおしさ
もあり、どうすればいいのか悩んでいた。
「今日だけ、今日だけは一緒にいたい」
秋子は寝言のようにつぶやいた。そして、深い息を幸雄の腿に吹きかけ、その
熱い吐息がスボンの生地を通って幸雄の内股を暖めた。生暖かい秋子の息は
生き物のように幸雄の男性自身に届き、既に、秋子との戦いが始まっている
のを感じ取った。秋子はすかさずもう一度深い息を吹きかけ、その反応を頬で
感じ取った。明らかに幸雄の体はそれに反応し、秋子の頬はそれを捉えた。
「秋子さん、息をそんな所に吹きかけたら」
「ごめんなさい、まだ、少しおかしいの、このままにしておいて」
タクシーは僅かに揺れながら、幸雄の一部は秋子の頭の重みと秋子の吹く息とで
既にその形状は原型を残さない形状へと変形させ、秋子の頬にその存在が明らかに
変身していることを感じさせた。
67 :
「「 自由な人たち 」」 012+14 2010.22.12.1--045
*** 太陽に照らされた月 ***
タクシーの揺れと共に秋子は強く頭を幸雄に押し付けた、押し付けられた頭は
幸雄を我に変えさせ、冨美に抱く強い愛情が自分の今しようとしている事を誡め、
冨美の悲しむ顔が瞼に浮かんだ。
「秋子さん、家に帰りましょう。家に送り、僕は返ります」
暫く、幸雄の腿の上で、じっとしていた。時間とともに幸雄のものが元に戻るのを
秋子の頬が感じだ。熱がさめるように潮が引くように、積み上げた砂の山が一つの
大きな波に呑まれ、跡形も無い砂浜に戻ったように、幸雄の腿を感じだ。
「思い出したの。愛している人がいて、別な女は抱けないというの。私も貴方を
愛してる。でも、今まで、告白が出来なかった。遅すぎたわけ、愛する女は愛する
男に抱いて貰えない訳、貴方の愛する人は貴方を愛しているの、抱かれたいと
思っているの、抱かれたいと思っている女を抱く事も出来ないの。貴方は私に
恩返しをしたいと言ったくせに、私は一生の思い出にしたのよ。貴方に愛が
無くても私には愛がある、それで十分なのよ。私が望む恩返しは私の愛を
満足させて欲しい」
秋子は幸雄の股間を強く噛んだ。
「秋子さん」
秋子はすっと起き上がり、身なりを整え、タクシーの運転手に自分の家に向う
事を言ってから、幸雄に言った。
「降りて、ここでいいでしょう。何もなかったのよ。先輩として忠告しておく。でも、
全て、本当のこと、私は田舎に帰る、幸せになってね」
68 :
「「 自由な人たち 」」 012+15 2010.22.12.3--046
*** 太陽に照らされた月 ***
幸雄はふーとため息を吐いた。タクシーを見送り、手を振った。でも、何も感じ
なかった。何もなかった事は仕方なかった。愛は欲望より強し、とりあえず、
先輩には愛に勝つだけの欲望を持ってなかっただけかもしれない。もっといい
女なら危なかった。
先輩も悪くはないが余りにも身近な人間なので、多分、不安が在ったのかも
しれない。自分も男だから、寄り道は嫌いではないが愛する人に寄り道をした
ことを知られたくはない。勿論、愛する女が寄り道をしたということが分れば、
素直に愛し続けることは出来ない。そのことを知っても、もし、愛し続けている
とすれば、それは多分、女の肉体に対する欲望だけになるのではないだろうか。
そんな時、別な女が現れ、きょうのようなことにでもなれば、全ては終わって
しまうのか、それとも、寄り道をすることで、一度愛した女と居続けることが
出来るのか、そのときは未練があるかないかかもしれない。
タクシーはもう見えなくなっていたが、暫く、そこにたたずみ、何となく、勿体無い事
をしたかなとも思った。これまで、受身になることはなく、自分を愛してる女と一夜を
過すことは一度も無かった。
自分が愛することで女が自分を愛するという形で、一方的に自分を愛する女に
体を任せることは無かったので、そう考えると、少し、勿体無かったと思った。
69 :
「「 自由な人たち 」」 012+16 2010.22.12.13--047
*** 太陽に照らされた月 ***
若い幸雄に取って、冨美への体と心を結ぶ切っ掛けをなんとか見つける手立てを
探さなければ、身も心もこのままでは耐えられない気持になり掛けていた。
「好きと言ったの、そんな事は言ったわよね。私ならいつでもいいけど。そうは
行かないわよね」
「取り合えず、言うべきことは言ったと思うけど、何か足りない感じはする」
「誠意じゃない。女は誠意とか誠実な言葉に弱いかもよ。私もそうだから」
飲むと辿り就く、いつもの店でそこのママと詰まらない話をしながら、飲む酒が
なぜか、気分を落ち着かせた。
「どうする。もう、終わりよ。でも、いいか、少しはいいけど」
「帰りますよ。帰ればいいんでしょう」
「そうは言ってないけど、もう一杯頂く。もう、二杯にする。皆も飲みなさいよ」
「なんで、みんななんだ。皆はおかしいよ」
「冗談よ、これから帰るの大変ね。内に泊って行く」
「そうします。泊めてください」
71 :
「「 自由な人たち 」」 012+17 2010.22.12.20--048
*** 太陽に照らされた月 ***
朝の日差しが部屋を照らし、空気がすがすがしかった。寝返りをうち、見かけない
部屋に目が覚めた。
自分の部屋ではない、女の部屋だ、ドアを叩く音がした、声がでない。
「もしもし、起きた。開けるわよ」
忘れてはいない。全て、覚えている。でも、酒に酔った為に、弁解をするのか、
声が出た。
「どうぞ、いいですよ」
「朝よ、食事の用意が出来た。食べる、それともまだ寝てる」
「食べます」
「よく寝てた。食べましょう。その前にシャワーでもどう」
「いえ、それはいいです」
部屋を見回し、女の部屋が何て綺麗で清潔なのかと思った。なんとなく、暖かい
ような、掛け布団の肌触り、ベットのやわらかさ、少し驚いた。
昨夜は脱ぎ捨てた服が綺麗にたたんだり、ハンガーに掛けてあった。下着も
たたまれ傍にあった。裸のままで寝たようだ。確か、寝るときは一緒だったはずだ。
「食べて、一杯作っちゃた」
無言で食べた。
「どうしたの変なことをしたの、忘れられないと思うけど、忘れなさい」
「忘れる」
「いいじゃない。それで」
72 = 71 :
「「 自由な人たち 」」 012+18 2010.22.12.20--049
*** 太陽に照らされた月 ***
笑ってしまった。タイミング悪い、非常に悪い、何が在ったのか、全てを思い出し、
忘れられない、それを忘れてと言われ、笑ってしまった。
笑うといっても、声を出して笑った訳ではない。ただ、どちらかといえば歓喜の
笑い、なんというか体全体で感じる喜び、素直に成れた時間を与えてくれた
感謝の喜び、取り合えず、感じさせてもらった喜びの表現が笑いだった。
「料理、美味いです。料理まで作ってもらって、申し訳なくて」
「いつも、こんなものよ。少し、多く作ったけど、沢山食べて」
「笑ってすみません。何だか夢のようだ。夢じゃあないのに」
「何も気にしないで、夢でいいんじゃない。私もそう思っているから」
二人は笑った。その空気はもう決して訪れないように感じた。多分、これからも
経験する事はない、素敵な夢の一つ、この夢は決して訪れはしないがいつまでも
記憶に残り、繰り返し思い出す夢になると思った。
「食器を洗います。洗うのは得意です。とりあえず、出来ます」
「大丈夫、それにこれ高いのよ」
取り合えず、どうすればいいんだ。どうすれば、この夢から醒めるか、醒めたくは
無いが、現実に戻らないとこのまま夢の世界に連れて行かれそうだ。
73 = 71 :
「「 自由な人たち 」」 012+19 2010.22.12.20--050
*** 太陽に照らされた月 ***
現実の中に存在する不思議な世界観というかその空間だけが別な感覚を覚える
感じ、頭の中で目に映る風景が別な色に見えるように流れている。
「素敵な住まいですね。こんな感じ、いいですね。メルヘンのようなロマンチック
というか、驚いた」
「始めてだからよ。でも、掃除が大変。普段は埃を立てないように何もしないの、
趣味がいつまで経っても女の子なのよ」
「そんな感じ、でも、女の子じゃなくて、女の人かな」
「女の子にはもう成れないわね。もう、女よね、女の人か」
「絵が綺麗ですね。これ、何処か似ている感じ」
「その絵ね、この絵のことを覚えている」
「この絵なんだ、この絵を見たんだ」
「この絵のようなポーズを取って欲しいって、頼まれた。この絵よ。モデルじゃ
ないって、断ったけど」
「申し訳ありません。この絵ですね」
夢が蘇りそうだった。二人が何をしたかを辿ることは夢の世界に戻ってしまい
兼ねない。夢を見た人が現実に目の前に居て、二人で見た夢を語り合うそれは
耐えられそうも無い。あの笑顔、あのしぐさ、あの肌触り、あの感触、あの温もり、
全てを体が覚えている。
74 :
「「 自由な人たち 」」 012+21 2010.22.12.28--052
*** 太陽に照らされた月 ***
「このまま帰っていいんですか」
「どうして、帰りたくないの。気にしなくていいって言ったでしょう。気にされる
と困るわ。これからもいつものように飲みに来て欲しい」
「何だか、悪い事をしたような感じがしてきて」
「そうね、確かに、二人で過ごした時間を考えると、少し虚しくなるけど、直ぐに
忘れるわよ。忘れないと」
「駄目ですね、忘れる事は出来ない。忘れられない」
「そう言ってくれると嬉しいけど、忘れるわよ。忘れて欲しい。もう、
こんな事ないでしょう」
「不思議な事として、胸にしまっておきます」
「不思議な事か、そうね、少しはしゃぎすぎたかな、不思議なくらい相性が
良かった」
「そうですね。二人は相性が良かった」
結局、全ては相性の問題で、同じ事をしても、相性が合うと別な世界に行った
ような感覚になり、その不思議な一体感を表現する言葉は喜びが最も適切な
言葉かもしれない。
75 :
「「 自由な人たち 」」 012+21 2010.22.12.29--052
*** 太陽に照らされた月 ***
一夜の男と女の交わりが忘れられない記憶として残ると言う事は何を意味する
のかと考えた。行ったことは経験として、脳に記憶され、その記憶を分析し、
どのように今後処理し、活用していくか考慮し、それが知識として脳に存在して
行く。脳に残った知識はこれから起こる全ての現象を判断する基礎知識として
活用され、ものごとの良し悪しを決めていく。
脳に記憶されたものは常に知識として記憶され、新たな知識を生み出して
行く。経験することで、新しい自分が生まれて行く訳か。
「少し大人に成ったかな、知らなかった経験をしたから」
「しちゃたことは忘れられないかな、それも仕方ないことよ。これからどうするかね」
「どうすればいいんです」
「それは貴方が考えて、私には何も言えない。ただ、したからと言って、それが
全てではないと思うけど。男と女の関係はそれぞれの人生を変えなければ
ならないわね。貴方が貴方で無くなり、私が私で無くなるわ」
「そうですよね、何だか、一夜にして変わってしまったように感じる」
「好きな人がいるんでしょう。その人を忘れられるの、忘れられないでしょう。
私がその女を忘れて欲しいと言ったどうするの」
76 :
「「 自由な人たち 」」 012+22 2010.22.12.30--053
*** 太陽に照らされた月 ***
そういう問題なのか、そうではないのではないか、でも、そうなのかもしれない。
好きでなければ、一心同体には成れない。好きな人を目の前にして、別な人と
関係を持っても平常心が保たれるかと言えば、それは出来ない。だからといって、
離れていれば、出来るのかといってもそれも出来ないというのが本当なのか。
それとも、出来ると言い切るべきなのか。多分、出来る人もいるというのが
本当ではないか。好きな人がいても、別な人を好きになれる。しかし、好きな人
には貴方だけを好きと言う訳だ。
簡単な事だ、何事も出来るか出来ないかであり、出来れば可能であり、出来ない
という理由はない。身勝手なようだが人間の思考力はそんなものだろう。
「好みと好きは違います。好きなタイプと好きな人の違い」
「そうね、好きな人と好きな好みは違うわね。私は好みであり、好きではない。
その通りね。恋は一夜にしてならずね」
「そんなことは言わないで下さい」
「そうよ。何も言わない方がいい。結局、辛くなるのよね」
「辛くなるんですよね」
77 = 76 :
「「 自由な人たち 」」 012+23 2010.22.12.31--054
*** 太陽に照らされた月 ***
欲望のままに生きる訳には行かない。多分、そんな人生は詰まらないだろう。
好きだから、好き、それを通せば満足できるかというとそうではない。好きと
思うとともにもっと、好きに成れるものがあるかもしれないと考え、今好きなものも
結果として、捨ててしまうときがある。多分、人の持つ欲望は好きなものを守る
のではなく、好きなものを捨てることとも言える。
「いい思い出よ。コーヒーでもどう。それとも紅茶にする」
「コーヒーを」
「私は幸せに成れない女かも知れないわ、自分の事が一番好きなのよ」
「そうですか」
「自分で自分を幸せにすることね。誰かに幸せにして欲しいとは思わない」
「だから、好きな人が出来ないということですか」
「そうなのかしら、よく分らないけど、私を満足させてくれる人がいない」
「いなかった。相手は満足しても、満足出来ない。多分、そんな人はいない」
「そうね。人はどこか違うし、違うと拒否してしまう。性格悪いのよ。裸で接して
いるときは言葉は要らないのね。それはまた別な世界なのよ」
多分、そうなのだろう。恋は一夜にしてならずか、何だか、人間の身勝手な
部分を味わってしまった事を少し後悔をしてしまった。美味しい果実をただ食べる
人とその美味しい果実を種から育て、試行錯誤を繰り返し、誰もが美味しいと
言う果実を育て、それを味わい、その味に満足し、更に、美味しい実を付ける為に
努力する人との違い。
78 :
「「 自由な人たち 」」 012+24 2011.23.1.12--055
*** 太陽に照らされた月 ***
太陽が眩しくて目を伏せた。休みの日の開放感と人には言えない満足感で、
久しぶりに味わう気分だ。
身も心も汚れてしまったのか、それとも、身も心も磨きが掛かったのか、不思議な
気分の中で、朝日に照らされ、これから何をするか考えた。
人肌に接し、その肌から肌へ伝わるなぬらかな感触を十分に味わい、筋肉と
筋肉がしなやかに反応し、絡み合う肉体が求める欲望の渦の中で放すチーズの
ような臭いは成熟した果実そのものだった。
記憶を振り払う為にサウナに行く事にした。まだ午前中なので客は少ないと
思っていたが結構人はいた。それでも、風呂には人は居なかった。鏡の前に
座り、シャワー浴び石鹸で体を洗った。石鹸を流す為にシャワーを浴びると
ママとの事が思い出され体が反応してしまった。
誰も居ない風呂につかり、反応した体を誰かに見られなかったか、周りを見たが
誰も居なかった。浅い風呂は体を伸ばし、風呂の底に手を付き、腰を挙げると
風呂の湯の中から僅かに反応した頭が水面に現れた。このままでは風呂から
出る事が出来ないなと思いながら、ゆっくり風呂の底に尻を付けた。
熱いサウナに入り、汗が皮膚を伝わり床に落ちるの眺めながら、体に染み
付いた女の香りを絞りだそうと熱い空気の中で、幸雄は冨美のことを考えた。
79 :
「「 自由な人たち 」」 012+25 2011.23.1.14--056
*** 太陽に照らされた月 ***
冨美を思いながら、別な女を抱いた自分が情けなく感じた。そして、冨美への
思いが更に増した。無防備の女の体から感じる体感は欲望そのものであり、
生身の肉体が無心で求め感じるものは快楽という言葉しか浮かばなかった。
冨美を丸裸にして、その体を抱き締める。愛する女が生まれたままの姿で
自分の腕の中で蠢く、軟らかい生肌が蠢くことで同じ人間の皮膚と皮膚が擦れ
合い、密着した肌が更にお互いを刺激する。
男と女、することは対して変わらないのに好きな人とそうでもない人では正に
月とすっぽん、冨美のことが好きなのに冨美を抱かなければ、本当のところの
欲望を知ることはできない。
人間は好きなものを欲しがり、好きなものをどん欲に求め、それが何処かに在れば
何処までも追い求め、自分のものにする。それが生きている証明であり、人間と
しての本能だ。
ただ、好きとか嫌いとかという感情は非常に曖昧であり、僅かな事で消えて
しまう。目で見る美しさと耳で感じる美しさがあるが、この二つはお互いに強く
連動しいて、その美しさがお互いを牽制しあい、この二つの美しさが反発し合う
と人は美しいと判断しない。絶世の美女でも男のような性格では耳から聞いた
判断は美女と判断出来ない。美しい女には言葉使いも美しく在って欲しい。
80 :
「「 自由な人たち 」」 2011.23.2.12--056
*** マダム肩をお揉みします *** 013+1
久々に会社に来て見るといつもの変わらぬ風景が在ったので、少し安心した。
佐野は生活用品を扱う会社の営業兼企画を担当しているが主に営業が主で
仕事は外回りがほとんどで会社にはあまり来たことがない。
今日は特に用事はないが自分の立場を確認したくて寄ってみた。
「分かっているだろうな、内の会社の製品は売れるものばかりで、売れない
ものはないよ。売れるのは製品がいいから売れるのであって、売り方が
上手いから売れる訳ではないんだ」
「だったら、私たちは必要ない訳ですか。そんなのおかしいですよ」
「じゃもっと売れよ。もっと売ったら認めてやる。佐野、この子に教えてやってよ。
営業のいろはを」
「君は誰だっけ」
「私は山本加奈です。課長っていつもああなんですよ」
「佐野健一、よろしく、気にするな、君なら遣れるよ。結構、成績いいじゃないか」
「佐野さんには負けます。佐野さんはいつも成績は一番ですね」
「そんなことは無いよ。最近はちょといいかな、でも、売れないときもあった」
山本加奈にはじめてあった日だった。結構いい女で佐野はいい気分だった。
81 = 80 :
「「 自由な人たち 」」 2011.23.2.12--058
*** マダム肩をお揉みします *** 013+2
佐野は久しぶりに女性に興味を抱いた。同僚ではあるが佐野はそんなことは
気にしなかった。
「課長、山本と食事に行ってきす」
「そうしろ、教えてやってくれ、人生の厳しさをな」
「まだ、仕事があります。今はちょっと」
「分かった待っている。終わったら、ここに電話を」
携帯の番号と店の名前を書いたメモを渡した。近くのレストランでコヒーでも
飲みながら待つことにした。会社に居ても居場所がないような感じがして居心地は
良くなかった。
「それでは課長、帰ります」
「帰るのか、山本は」
「話が済んだら、今日は帰します」
「山本もか、大事に扱えよ。内のホープだから」
「また来ます。新しい製品の情報はまた貰いに来ます」
「また、メールで送っておく。何か意見が在ったら送ってくれ。山本、いい子だから、
分かったな」
「心配ですか。心配でしょうね。いつものことだから」
「心配なんかしていない。君を信用しているよ」
82 :
「「 自由な人たち 」」 2011.23.2.14--059
*** マダム肩をお揉みします *** 013+3
落ち着いた内装で隣の客を気にしない作りで、開放感もあり、佐野は気に入って
いるレストランだ。
「佐野さん、久しぶりね」
「知恵さん、相変わらず、綺麗ですね」
「今日はどうしたの、いつでも暇なら在るわよ。電話頂戴よ。まだ、番号は
変わってないから、待ってるよ」
「知恵さんの顔を見に来たといいたいけど、会社の女の子とデートなんだ」
「そうなの、私よりずっと若い人」
「若いね」
「そう、焼けるわね。ゆっくりしていってね」
武山知恵はこのレストランの経営者で、佐野とは関係をもった女だった。あの時は
寒い日で、知恵がこんなことを言い始めた。
「内の人って、ケチなのよ。寝室の暖房を付けないの寒くて、それでいて、私を
求めるのよ。何かいい方法ない」
このとき佐野は寝室の暖房機器を販売していて、省エネの為に寝室を狭くして、
小型の空調機によって、寝室を快適に過ごせる製品を売っていた。
83 = 82 :
「「 自由な人たち 」」 2011.23.2.15--060
*** マダム肩をお揉みします *** 013+4
「知恵さんはどんな寝室」
「ベットよ」
「ダブルで、大きなベットですか」
「そうね。大きいわね」
「蚊帳型の省エネ寝具が在りますよ。ベットを覆って、その中を温度調節可能な
空調機で埃や湿度、殺菌の管理が可能で、寝室全体の温度調節するより、ベット
の部分だけだから、電気代もそんなに掛からないし、冬も夏も快適な睡眠が可能
というものなんです」
「本当、幾らぐらいなの」
「値段は色々で、十万ぐらいから在りますよ」
「裸でも大丈夫」
「勿論、大丈夫ですよ。温度管理も出来ますよ」
「それいいわね。どんなのか見たいわね」
佐野はこの次にパンフレットを持ってくること言った。そして、自分も使っている
居ることを言うと知恵は一度、見たいといい始めた。
「佐野さんの所に在るのならそれを見せてよ」
「それはどうでしょう」
「駄目、駄目なら止めようかしら」
「駄目のはずがないでしょう。いつでもいいですよ。ただ、私も男ですから」
「主人と行くわよ。それならいいでしょう」
84 = 82 :
< 2 >
しかし、知恵は一人で来たのだ。何となくそんな感じはしたがこれも仕方ないと
思った。
「主人はどうしても時間が取れなくて、ごめんなさい。タクシーが少し迷ったわ」
「電話をしてくれれば、迎えに行ったのに」
佐野は知恵のコートを預かり、部屋に入れた。香水のいい香りが漂った。
レストランでは香水を付けないと聞いていたので、少し、新鮮な感じがした。
「香水ですか」
「ちょと、店では付けないけど、それ以外は主人が好きなもので、付けるのよ」
「ご主人が来ないのなら、連絡をもらえれば」
「佐野さん、断るでしょう。だから、電話するの止めたのよ」
佐野は覚悟を決めた。これも修行のうちと思った。経験は力なりと先輩が酔って
言っていたのを思い出した。女は何人も経験があるが本当に好きになった女は
いない。好きでもない女と同じベットに入るのは少し我慢と努力が必要だった。
85 :
「「 自由な人たち 」」 2011.23.2.15--061
*** マダム肩をお揉みします *** 013+5
知恵は何となく嬉しくなった。若い男の家に入るのは初めてで、何だか変な
気持ちになった。これから何が起こるのか興味津々で久しぶりに心がときめく
ような感じだ。
佐野は知恵を見て、微笑んだ。知恵は目を輝かせながら部屋を目回していた。
「知恵さん、何か見付かりました。一人暮らしの男の部屋は何も無いですよ」
「ごめんなさい。何だか、つい見てしまって、綺麗になってる」
「掃除ぐらいしますよ。今日も、早くから掃除をしました」
「落ち着いた部屋ね。すごく感じがいい」
「そこに座ってください。飲み物を持ってきます。何がいいですか。アルコール
は駄目ですよ。まだ、早いですからね」
「任せるわ。ビールぐらいなら、いいけど」
「ビールにしますか。今日は帰りますよね」
「泊まっていいんの。だったら、泊まろうかしら」
「僕はかまいませんよ。ただ、ご主人が」
「帰るわよ。泊まるのはよすわ。そんなの変でしょう」
知恵はソファーに座り、佐野は台所からビールとつまみを持って来て、知美の
隣に座った。
86 = 85 :
< 2 >
佐野はこれから何が起こるのか想像したが何も想像が出来なかった。知恵とは
二三年の付き合いで、レストランで話すだけで、個人的な付き合いは無かった。
それが、知恵夫婦の夜の営みを快適にする為に佐野が扱う省エネ寝具を
進めた為に家にまで来てしまったのである。
「乾杯しますか。知恵さんの若さに、乾杯」
「乾杯、佐野さんの若さに」
「知恵さんは若くて健康そうで、いいですね」
「そうでもないわ、肩が最近凝るのよ。佐野さんはどう」
「肩ですか。揉みましょうか。マッサージは得意ですよ」
「本当、揉んで貰おうかしら、悪いわね。押しかけて来て、肩まで揉んでもらったら
何か、お返ししないと」
知恵はどうすればいいのか迷ったが、佐野に何も言わずに背中を向けた。
「それでは疲れるでしょう」と言って、クッションを持って来て、自分の座って
いる前に置き、クッションに知恵を座らせ、肩をもみ始めた。
「何だか、悪いはビールを飲んで、肩を揉まれたら、何だか天国に来た感じ」
知恵はいい感じと思った。期待通りに進んでいるようで、嬉しかった。
「いい感じ、凝っているでしょう。主人はこんなこと一度もしてくれないわ」
「そうでしょうね。これも好き嫌いがあるから、僕は好きなんです。こうして
揉むのが、肩こりの人って結構多くて、これも仕事の内と思ってます」
87 = 85 :
「「 自由な人たち 」」 2011.23.2.16--062
*** マダム肩をお揉みします *** 013+6
「天蓋ベットってあるでしょう」知恵は言った。天蓋ベットはベットに天蓋が付いた
物でベットをレースなどの布で覆ったベットで、広い寝室で使う寝具で、豪華な
ベットとして使われている。
「キャノピーベットですね。天蓋ベットのようなものですよ。ただ、あのような
豪華なものではなく、寝室の中のテントのようなもので、蚊帳程度のものなんです」
佐野は知恵の肩を揉みながら知恵が見たいという今日の目的の省エネ寝具の
説明を始めた。
知恵はどうでも良かった。目を瞑り、何だか気持ちがいいし、佐野の足の間で
体が感じるぬくもりががたまらなかった。
「いいわね。嘘みたい。来て良かった。それ買うわよ。適当なものを持って来て、
主人も何でもいいから買えって言ってたし、けちなあの人が欲しいって言うのよ。
多分、寒いのよ。冬は寒いわよ。寒くても暖房は付けないし、暖房はあるのよ。
寒い中で私の体のぬくもりがいいんだって、寒くてたまらないわ」
佐野は黙々と肩を揉みながら聞いていた。このまま、寝室に行ってしまったら、
何となく、結果は見えているので少し心配には成った。でも、見せない訳には
いかないし、何となく気が重くなった。
「ねえ、佐野さんもう肩はいいと思うの、見せて欲しいわ、その寝具を」
「そうですね。見てください」
88 = 85 :
< 2 >
佐野は知恵を寝室に連れて行った。既に、空調機がかすかな音を出して、
動いていた。音はそんなに気にならない。
「空調機の音はそんなに気にならないでしょう。寝る前の30分ぐらい前に
スイッチを入れるといいですよ」
「何だか、不思議な感じね。ベットが完全に覆われていて、結構、低いのね」
「省エネが最大の目的ですから、見た目より、寝心地と省エネですね」
「どうしたらいい、寝てみたいけど、中は暖かいの」
佐野は頷いた。知恵は直ぐに服を脱ぎだし、下着になった。
「じゃ寝るわね。佐野さんはどうするの、寝るでしょう」
「そうですね。寝てもいいですか」
佐野も服を脱ぎ、下着になって、ベットに入った。
「確かに暖かいわ、布団も軽いし、空気が綺麗な感じがする」
「いいでしょう。空気は綺麗ですよ。空気清浄装置が付いているので、埃は
無くなり、空気は綺麗です。温度もこれで自由に変えられるから、布団は軽い
もので十分です。真冬は零下に成っても、この中は何度でも可能です」
「裸になってもいい」
「裸ですか。そうですね。ご主人とのことを考えれば、裸ですよね。でも、今でも
裸同然ですよ」
「照明もいいわね。狭いけど、寝るだけなら、こんな感じでもいいわね。主人は
空調は直ぐに止めると思うわ、遣るべきことをすれば、無駄な電気は使わないと
思うけど」
89 :
「「 自由な人たち 」」 2011.23.2.17--063
*** マダム肩をお揉みします *** 013+7
< 1 >
「結構、寝具は埃を出しますよ。特に二人で寝るときはこの中は空気を循環させて
常に空気を清浄しているので、ご主人と何をしても快適ですよ」
「何となく、そんな感じね。それと照明の色は変えられるの」
佐野は照明の色を濃いピンクに変えた。知恵の肌が鮮やかなピンクに変わり、知恵は
掛けていた掛け布団を剥がした。
「綺麗ね。恥ずかしいけど、何だか、変な気分になるわ。どうかしら、触るだけ
ならいい」
佐野は何も言わないで頷いた。そして、知恵は握りながら、昔の話を始めた。
「私ね、好きな人とドライブするとき、いつも、触ってた。彼は何も言わないで、
触らせていたの、最初は危ないから、止めて欲しいって言われたけど、黙って
触っていたら、何も言わなくなった。子供のころ父親を風呂や寝ていたときに、触って
いたの、何で触っていたのか分からないけど何となく落ち着く感じで、好きだった」
「へえ、変わったお父さんですね。そんなこと在るんですかね」
「子供のときよ。小学校までは覚えているけど、中学からはないけど、一度、
高校のとき、コタツで父の横で寝てしまい、起きた時、父のを握っていたの
驚いたわ。でも、父は気付かなかったのか、寝ていたわ」
佐野は我慢強くされるままでいた。積極的に求めるより、相手に任せる
ことで、自分を表現する方が自然なときがあり、知恵には何も求めないで
すべてを任せることにした。
90 = 89 :
< 2 >
「これって、売れているの、付けるのが大変ね。寝室にこんなテントのような
物を下げたら、邪魔と思うわ」
そう言いながら知恵は佐野の手を足の狭間に乗せた。まあ、自然な成り行きで、
佐野はされるがままに手を知恵の狭間に忍ばせ優しく指を巧みに折り曲げて。
知恵の体のぬくもりを指先で感じながら、佐野の手はマジシャンのように手の
妙技が知恵を攻め始めた。何となく、佐野の体に火が付いたようだ。
「遣るわね。さすが寝具を売っている人ね。期待通りだわ。メリハリが在って、
たまらないわ。触られている感じがしないのに体が感じるのよ。何だか、不思議」
「この寝具は掛け布団を釣ることが出来るんですよ。一晩中、空調機を付けて
いると省エネとは言えないでしょう。だから、中が温まったら止めて掛け布団で
寝る訳です。ご主人と寝るときも、夫婦の営みが終われば、後は寝るだけで
しょう。その時は掛け布団の中で寝た方が省エネですからね。でも、冬の掛け
布団は軽くても時間が経つと湿気を持って、結構体に感じるほどの重みが
あり、寝ている間に体を圧迫する。その圧迫を無くす為に、あらかじめ、掛け布団を
釣って重みが体を圧迫しないようにする訳です」
91 :
「「 自由な人たち 」」 2011.23.2.18--057
*** 見知らぬ人々 *** 014+1
< 1 >
「はい、キャンプトレジャーです」
「そちらは、私設金庫のトレジャーでしょうか」
「はいそうです。キュンプトレジャーの谷川です」
「私設金庫を作りたいのですがどうすればいいのでしょう」
「私どものホームページを見ていただきたいのですが、今、見れるでしょうか」
「今、見ています」
「ありがとうございます。それでは、私設金庫を見てください」
「見てます」
「直ぐに入会しますか」
「あの、本当に1パーセントでいいのでしょうか。それ以外何も掛からないのですか」
「何も掛かりません。入会して、アドレスを送ります。それで、終わりです。入金
されるお金の入金口座もそのとき送ります。必要資料を送ります。住所とお名前を
ホームページから送ってください。お願いします」
「入会金もないのですか」
「手続きだけです。お金は必要ないです。安心してください。ただ、入金されるか
どうかは分かりませんが、その入金された金額の1パーセントが私設金庫の使用料
ということに成ります」
「分かりました」
「それではよろしくお願いします」
92 = 91 :
< 2 >
キャンプトレジャーはインターネットの私設金庫で、簡単に個人が私設金庫を
インターネット上に作れる仕事をしている。インターネット上で、簡単に読者から
料金を得られるシステムで、多くの人たちが利用している。
「最近はどんなものにも私設金庫を利用しているね。ホームページを読んだ方は
購読料を払ってくださいだって。払う人がいると思うか」
「結構、儲かっている人も居るようだよ。シークレットページを読みたい人が払う
らしいね」
「入金したら、シークレットページが読める訳だ。購読料も1円とか10円だから
みんな読むらしいね」
93 :
「「 自由な人たち 」」 2011.23.3.25--065
*** 過去にさよならが言いたくて *** 015+1
< 1 >
結婚をすると決めたのに、結婚前に留学をしたというので、驚いたが気持ちは
変わりそうも無いようで許すことにした。留学といっても半年足らずの短い出張の
ようなもので、それならいいかと思ったのだ。
結婚を決めたときからふっと浮かんだのが、過去の自分にさよならを言うことだった。
別に過去に何か問題がある訳ではないが、これまで、過ごして来たところに行って
みて、そのときに出会った街や人にもう一度会って、心の中でさよならが言いたく
なったのだ。
94 :
「「 自由な人たち 」」 2011.23.4.1--066
*** 美しく、清潔 *** 016+1
< 1 >
車をぶっとばして着いたのがこの海岸だった。どうでもいいけど、あの美しさには
驚いた。
好きにならずに居られない。美しくそして清潔なんだ。美しいものは全て清潔と
思う。目の前に広がる海のように美しいし、海に泳ぐ魚のように新鮮で清潔な
存在、それしかないと思うし、好きに成って感じる事は全てが清潔ということ。
何でもいい訳じゃない。誰でもいい訳じゃない。美しいから好きになったとも
言えない。美しいものなんかどこにでもあるし、美しいから認める訳じゃない、
何で好きに成るのかと言えば、美しく、清潔ということなんだ。清潔だから何でも
出来るし、清潔だから受け入れられる。清潔ならば食べる事もできる。清潔と
思うと全てを欲しくなる。
95 :
「「 自由な人たち 」」 2011.23.5.24--067
*** 過去にさよならが言いたくて *** 015+2
< 1 >
しばらく振りに飲みたくなった。仕事帰りに飲む機会が大分最近は減ってしまった。
「しばらく、元気だった」
「高木さん、しばらくです。お元気でしたか」
「中々来れなくて、申し訳ない。色々在ってね」
「いつでもどうぞ、結婚するって、聞きましたが」
「誰に聞いたの、時間が掛かったけど、何とかなった」
「以前、一緒に来た人ですか」
「そう、そのとき、結婚の事を言った」
「言ってましたね。でも、相手の人はその気がないようなことを言っていたかな」
「仕事と女はこれまではどうも上手く行かなかったけど、何とかなってよかったよ」
「今日は一緒じゃないんですか」
「結婚前に留学したいって、半年ばかり出かけた。変かな」
「そうですか。それは寂しいですね。変じゃないでしょう」
「良く分からないけど、行きたいものを止めるのもね。この機会に僕も色々な
所に行って見ようと思ってね」
「いいですね。一人旅ですか」
店を見渡して、ここにも自分の過去があることに気付いた。過去にさよなら
なんって、おかしいと思った。グラスの中の酒を揺らし、その酒を見て、少し、
微笑んだ。
96 :
「「 自由な人たち 」」 2011.23.5.25--068
*** 記憶の中の少女 *** 017+1
< 1 >
階段を上ると神社があり、それを抜けると商店街があった。学校の帰り、そこは
通学路ではなかったが、妙子を誘い友彦は学校の帰りはそこを通って家に帰った。
「妙ちゃん、先に行って」
友彦は妙子の後から、階段を上がり、妙子が階段を上がる姿を後から見て、
子供ながら興奮らしきものを感じた。
「明日も、一緒に帰ろう」
「分かった。校門で待ってて」
まだ、幼い妙子は友彦がなぜ階段を上がるとき、妙子を先にするのか分から
なかったが、何となく見られているような感じがしていた。
友彦が妙子の体を見て感じるようになったのは最近だった。それは母親との
入浴からだった。
その日は父親は出張に行き、姉は友達の所に泊まり、友彦と母親だけになり
母親が友彦と一緒に風呂に入ろうと言って来たのだ。
「友彦、風呂に一緒に入ろう」
97 = 96 :
< 2 >
父親とは風呂に入っていたが母親とは最近、入ったことはなかったので、
友彦は驚いた。
「いいよ。一人で入るから」
「なんでよ。入ろうよ。もう、誰もこないから」
「姉さんから電話が来たら」
「さっき、お父さんからは電話はあったし、お姉さんには電話を掛けて、様子を
聞いたから、電話はないよ」
「そう、なら、入ってもいいけど」
「先に入っていて」
別に女を意識する歳でもなかったので、そのときは何とも思わなかった。ただ、
女の体には少し興味を持ち始めていたのでなんだか少し不安を感じたが、
それほどではなく、服を脱ぎ風呂に入った。
「入った。入るわよ」
「いいよ」
風呂の扉が開き、母が入って来た。勿論、何も着ていない。
「どうお」
母はポーズを取った。
98 :
「「 自由な人たち 」」 2011.23.5.27--069
*** 老いたいい訳 *** 018+1
< 1 >
年老いた男と中年に成りかけた女が布団の中で何やら語っていた。昼を過ぎ
女は男の家を訪ねて来た。この時間は夕方の買い物の時間で自由に過ごす
事が出来る。
「奥さんに悪いは」 時枝は仰向けになり、天井を見ながら、声を漏らした。
「今日は帰らないよ。ゆっくりは出来ないが心配は要らない」
「心配はしていないけど、何となく」
文夫は最近年老いたと思い始め、残りの人生を考るように成っていた。
「時ちゃんとこんなことをしていると歳を忘れるよ。最近、考えるんだ自分に
残された時間を」
「私は時間潰しなの」 時枝は体をよじって行った。
「時ちゃん、いいとこだったのにそれはないよ」 時枝と文夫は笑った。
文夫は時枝が買い物をしているとき、見かけた女で、よく顔を見ようと、何となく、
気付かれないように後を付けていたら、時枝が店の品物を万引きするところを見て
しまったのだった。
99 = 98 :
< 2 >
「あのう、今のを見ました」 文夫は言うつもりは無かったのに、気付いた時には
時枝のそばに行って、見たことを言ってしまった。
「いけませんよ。それは」 時枝は驚いたようで、黙って見つめていた。
「私が買います。私の籠の中に入れてください。今なら、見えないし、見えても、
今なら、誰も何も言いませんよ」
時枝は黙って、文夫の籠に化粧品を入れた。なぜか、女の化粧品が男の買い物
籠の中に入れられ、時枝は何も言わず、文夫から去っていた。その後姿は文夫の
男心を燃え上がらせた。体がぞくっとしたのだ。おかしな感覚で、急に心臓が
どきどきしだした。気の弱い文夫に取っては自分でも訳が分からない。いつもなら
見て見ぬ振りをしていたところなのになんだが、大変な事をしたように感じた。
店を出た時枝は店の外で文夫を待っていた。
「おじさん、さっきはどうも、化粧品くれる」
「ああ、さっきの奥さん、万引きはどうも」
「だからなんなの、おじさんに関係ないでしょう。いつも、あんな事をしている
訳じゃないの、さっきはつい魔が指しただけ」
「そうですか、それなら、声を掛けてよかったですね。もし、そのまま、店を出て
誰かに見られていたら、大変でしたよ」
100 :
「「 自由な人たち 」」 2011.23.5.28--070
*** 月明かりの訪問者 *** 019+1
月の光は辺りの風景から色を奪い、薄黒く木々を浮かびあがらせ、いっそうと
月の明かりが眩しく感じる夜だった。
耳を澄ますと風に揺れる木の葉の音が暗闇の中に人の気配を感じさせ、何となく
背筋が寒くなった。
「誰も居ないのに、誰かが居そうな感じがするな」 観鳳は月明かりに照らされた
風景を見ながら、独り言を言った。
「今日も一人か、最近はいいことも無いし、こんな夜を過ごすのはやだなー」
また、独り言をつぶやいた。
「観鳳さん」 突然、後ろから、声がした。そして、暗闇の中から、近くの武雄が
現れた。
「武雄さん、何ですか」
「明かりが見えたので、居るかと思って、ちっよ、顔を見たくてね」
みんなの評価 : ▲
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