のくす牧場
コンテンツ
牧場内検索
カウンタ
総計:127,062,725人
昨日:no data人
今日:
最近の注目
人気の最安値情報

    元スレ京太郎「お、お姉ちゃん…」煌「すばらです!」咲ss

    SS+覧 / PC版 /
    スレッド評価: スレッド評価について
    みんなの評価 :
    タグ : 追加: タグについて ※前スレ・次スレは、スレ番号だけ登録。駄スレにはタグつけず、スレ評価を。荒らしタグにはタグで対抗せず、タグ減点を。
    1 2 次へ→ / 要望・削除依頼は掲示板へ / 管理情報はtwitter

    1 :

    立ったらかく。
    書き溜め少ししてるよ。

    2 = 1 :

    初投稿だから拙いのは見逃してくれ。


    以下に注意書き。

    京太郎SS
    須原さんは長野に留まり、京太郎の義姉ですが苗字は花田
    投牌シーンはありません、多分
    京×煌
    京太郎の雀力は普通レベル
    描写+台詞書き
    書き溜めながら投下します

    以上がO.K.ならどうぞ。

    3 = 1 :

    立ったら書くと言ったな?あれは嘘だ。


    ここは長野県にある清澄高校。
    京太郎が通っている高校だ。
    義姉である煌の勧めもあり麻雀部に入部した。

    これはインターハイ予選が始まる少し前の話である。

    「京太郎、起きなさい朝ですよ」

    京太郎「zzz…」

    「はぁ…私がこうして朝に起こしに来ても貴方はちっとも早起きの習慣が付きません、それはすばらくない…」

    あの手この手で毎日起こしに来るものの、抵抗がつくのか徐々に効果は薄れていくのが分かっていた。

    最近では揺らしても駄々をこねるようにすぐにあっちを向いてしまう。

    「全く…さっさと起きなさい京太郎!」

    バサッと布団を取っ払う。よりどころさえ取り除けば京太郎も観念するはず…しかし、目の前にはピラミッドが一つ。

    「こ、これは…し、失礼しました-!あっ…」

    京太郎「ふぁあ…って、煌さん?そんなに急いで…あちゃ…」

    気が動転したのか、扉の先で転がってしまった煌であった。

    須賀家の朝食は煌が作る。御都合主義よろしく、両親は海外に赴任しているそうだ。だから、家にいるのはカピバラのカピーと2人ということになる。

    「…京太郎」

    京太郎「ん…煌さんどうかした?」

    「あ、朝ご飯が冷めてしまいます、出来るだけ早起きする習慣を身につけて下さいね」

    京太郎「ご、ごめんなさい。いや、言い訳じゃないんだけど、なんか中々朝起きれないんだよなぁ」

    ポリポリと頭を搔き申し訳なさそうにする京太郎。

    「まぁ…今に始まったことじゃないですからね。明日からちゃんとするんですよ!」

    京太郎「分かったよ、煌さん」

    「すばらです!さぁ、ささっと食べて学校に行きましょう!」

    いつも通りの光景。朝ご飯を2人で食べて、2人で登校する。学校では知らない人の方が多いのか、クラスメイトからは「夫婦仲良く登校か」とよく茶々を入れられる。

    京太郎「嫁さん違います」

    「お姉さんですから」

    と返事をするのもよくあることだった。

    4 = 1 :

    インターハイ予選が近いので麻雀部も例によって朝練と意気込んでいる。
    部長の思いつきではなく、気が付けばみんな集まっていたというのが正しい。
    それでも部長は生徒議会長を兼任して忙しく、咲の迷子によって和が駆り出され、優希はよく寝坊する。
    この麻雀部に朝から顔をきっちり出すのはまこと私達ぐらいだった。

    まこ「おはようさん、2人とも」

    「おはよう、まこ。今日も早くの出席すばらです!」

    京太郎「おはようございます、染谷先輩」

    まこ「久や1年生が来るまでは打てんがの。まぁ、のんびり待っとれ」

    京太郎「じゃあ俺、飲み物いれます」

    「京太郎、私も手伝いますよ」

    京太郎「煌さんの手を借りなくても大丈夫ですよ。2人には冷たい緑茶入れますね」

    「気遣いすばらです。では、私は京太郎の分を入れますか」

    まこ「…おんしら、夫婦みたいじゃの」

    京太郎「嫁さん違います」

    「お姉さんですから」

    それから特に何をするわけでも無く、4人が来るまでまったりと過ごすのであった。


    時間は過ぎ放課後。各学年ホームルームを終え、旧校舎麻雀部へ。珍しく全員がすぐに集まった。全員が集まったのを見て、部長がホワイトボードに書き始める。

    「はーい注目!」

    デカデカとそれは「強化合宿!」と書かれていた。

    「合宿…ですか?」

    優希「部長!タコス巡りかだじぇ?」

    「優希ちゃん…それは無いと思うよ」

    各々反応を示すが、直ぐさま久が続ける。

    5 = 1 :

    「えー、明後日から合宿に行きます。目的は1年生の実力の底上げ!貴方たちには期待してるわよ。それとインターハイ予選のメンバーを決めるわ」

    まこ「まぁ先鋒から大将まで5人と補欠の1人ってことかのう」

    「合宿とはすばらです!断然、燃えてきましたよー!」

    京太郎「1年生の底上げってことは俺にも何か練習メニューが組まれるんですか!」

    「あ、須賀君のはないわよ」

    京太郎「で、ですよね…ははは…」

    「だって男子と女子じゃ勝手が違うじゃない、今の須賀君なら良いとこまでいけるかもね。あとは、合宿中は補佐ばかりで悪いけど、よろしく頼むわね」

    京太郎「ぶ…部長…。須賀京太郎、全身全霊で頑張ります!」

    部長からの言葉に少しばかり顔がゆるむ京太郎。

    優希「まぁ、私の専属シェフとして手一杯だろうがな!」

    京太郎「そりゃねぇよ~」

    和気あいあいと合いの手を入れる2人。少しばかり胸がチクリとする。同級生同士の仲が良いのだからすばらだと言い聞かした。

    「さぁて、今日も沢山打つわよ!最初にまこ、咲、和、優希が入って、3・4着交代でよろしくね。私は少し牌譜整理してくるわ」

    まこ「じゃ、始めるかの」

    「宮永さん、今日こそ勝ち越します」

    「お、お手柔らかにね」

    優希「起親だじぇ!京太郎、タコスを買ってこい!」

    「あ、須賀君は少し借りるわね」

    京太郎「すまないな、また買ってきてやるよ」

    「優希、私が買ってきますよ」

    優希「じぇ…、花田先輩に頼むのは恐れ多いじょ。仕方ない、おやつのタコスを食べるじぇ~」

    京太郎「…そんだけあれば放課後持つだろ…」

    こうして、和やかな雰囲気のまま放課後の練習は過ぎていった。

    6 = 1 :

    合宿当日の朝。煌はいつものように京太郎を起こしにいく。前日に部室からパソコンを運んだりと目まぐるしかったが、今日は合宿当日。酷だが起こさない訳にはいかない。
    いつも通り扉をノックして入る。一瞬、先日のピラミッドがよぎるが、健全な男の子だからと気にせずに入ることにする。

    「京太郎、合宿ですよ起きなさい」

    京太郎「うーん…煌…お姉ちゃん」

    「…!!」

    顔が赤くなるのが分かる。なんせ中学に入るまで言われていたが、今ではめっきり言われなくなっていたからだ。
    むず痒くて、でも甘酸っぱいその一言が煌を発熱させるのに十分だった。

    「い、いきなりなんて卑怯です、すばらくないです京太郎…。また呼んで貰いたくなるじゃないですかぁ…」

    トクンと心臓が跳ねる。しかし、今日は合宿当日。自制心が煌を正気にさせた。

    「と、そんなこと言ってる場合じゃありません。京太郎起きなさい!遅刻はすばらくないですよ!」

    本当に手のかかる弟。義弟…ですね。

    時間は経ち合宿所へ向かうバスの中。
    部長曰く、温泉があって近くに滝等の観光名所があるとか。
    本当にどうやって予約を入れたのかが未だに分からない。
    捲りの女王:藤田プロと知り合いであったり、部長の人脈には本当に驚かされる。

    優希「見えてきたじぇ!」

    施設に着けばその大きさにまた驚く。つくづく部長には頭が上がらない。
    宿舎に着いてからはあっと言う間であった。
    大量の荷物を京太郎が運び、温泉に入ったり特打するかと思えば
    咲にはネット麻雀、和はツモ切り、優希は計算ドリルを。
    和以外は本当に悪戦苦闘しているのが目に見えた。
    余った4人は手牌を開けたり縛りを入れたり、一通りやることはやった。
    京太郎もメニューが無いと言われながらも特打に参加出来て満更でもなかったようだ。

    7 = 1 :

    夜も更けてくる。
    京太郎は別の部屋に移り、私達は布団に大の字になる。
    1年生はまたお風呂に行っていたみたいで、
    和と優希はのぼせていた。

    「の、のぼせました」

    優希「流れ星見れなかったじぇ…」

    「それは残念でしたねぇ。次はきっと見れますよ」

    「2人とも大丈夫…?」

    まこ「寝たら大丈夫じゃあ、ほれ消灯するぞ」

    「ありがとう、まこ」

    電気は消され一瞬静寂が訪れる。
    外は綺麗な景色が見え、星々が神々しく光っている。
    ──それを優希は破った。

    優希「花田先輩、ちょっと着いてきて欲しいじょ…」

    「なんでしょうか優希?」

    言葉に詰まる。だが、私は何も言わず外に出る。そんな空気を察したのか、みんなは何も言うこと無く外に出してくれた。

    8 = 1 :

    休憩。書き溜めてくるよ。

    9 :

    >>8
    乙!続き楽しみ

    10 :

    川のせせらぎが聞こえる。神秘的でそれでいて肌がひんやりとした。
    緊張しているのが容易に見て取れる、優希は私に振り返り告げた。

    優希「…花田先輩」

    私は分かっていた。部活でのチクリと来たのも、優希の天真爛漫さ故に私は貴女に嫉妬していたことも。

    「ええ…分かってますよ優希。京太郎のことでしょう?」

    静かに頷き、優希は下を向く。私は待った、優希が言葉にするまで。再びその静寂を破る彼女の言葉を。

    張り詰めた空気を払拭するように。意を決して、強く優希は言葉にする。

    優希「私は…京太郎のことが好きだ…!」

    しかし、言葉の力は薄れる。

    優希「でも、京太郎には花田先輩がいて…」

    「優希」

    段々語尾が弱く、私は弱気な優希に一言だけ言いたくなった。なんだかそれだとフェアではないと思ったからだ。

    「私に伝えた上で京太郎に伝えるのでしょう?なら、貴女の思いを聞かせてください。はっきりと。私もそれに応えるだけです」

    優希「…そうだじょ。…私は京太郎が好きだ!のどちゃんのおっぱいばっか目で追わず、花田先輩がそばにいても、私のことだけ見て欲しい。京太郎と付き合いたい。変な言い方だけど、本当に運命を感じた。
    この人の子供を産んで、一緒に歩いていきたいって思う…。だから、花田先輩!バカな私でも分かる。今回のインターハイ、私か花田先輩が補欠になる。これは私のワガママだから気にしなくていいけれど、私は今回のインターハイにメンバー入りしなかったら京太郎は諦める…!」

    無茶苦茶な、だけどそれには筋が通っていた。そんな優希の志を見せられたら、私だって腹を割るしかないじゃないですか。

    「わかりました。でも、その提案はあまりにもすばらくない。私も参加してこそ意味があります。私だって京太郎が好きです。子供だって産みたい、高校生の若輩に説得力はありませんが、私も女です。
    貴女にそこまで言われてしまったら女が廃ります。今回のインターハイ、私が外れたら京太郎を諦めます。今まで通りのお姉さんで生きていきましょう」

    強く真っ直ぐ優希を見つめる。言い切ってから心臓が落ち着かない。本気で欲しいと思ったのは、想ったのはこれが初めてでは無い。
    しかし、目の前には大きなライバルがいる。

    優希「花田…先輩…!ううん、今からは恋敵と書いてライバルだじぇ!京太郎は私が頂く!」

    「私だって負けませんよ、どう転んでもすばらな戦いにしましょう」

    男顔負けの握手をする。強く握りしめ、互いが約束を刻み込んだ───。

    11 :

    咲さんは...?

    12 = 10 :

    合宿は最終局面へと進む。
    私は一つ、部長に提案を持ちかける。優希も同じ気持ちだったみたいだ。

    「そう…正直私も誰を先鋒に置くか決めかねていたのよね。東場の最大火力を持つ優希か、誰が相手でも東南を最大失点25000点に抑えられる煌か…。事情がどうあれ分かったわ、早速はじめましょうか。では、お互い一人ずつ選びなさい」

    張り詰めた空気を感じ取ったのか全員が緊張を感じる。

    優希「じゃあ私からいくじぇ、のどちゃん入ってくれ!!」

    「分かりました」

    「では、私ですね…」

    長考なんていらない、最初から決めていたのだから。最愛にして最強のパートナーを。

    「京太郎。須賀京太郎を指名します」

    京太郎「え、俺!?言っちゃなんだが、煌さん、俺なんかがこんな大事な試合に入っていいのか?」

    「えぇ、私は遅かれ早かれこうなると思ってました…だからこそ貴方を指名します」

    「じゃあ決まったみたいね。ルールは東南戦、持ち点は25000点、サシウマは優希と煌のみ、丘無し、また細かいルールは大会基準よ。さぁて、インターハイの前哨戦かしらね。2人とも頑張りなさい!」

    場決めも終わりいよいよ始まる。起親は優希、南家が和、西家が煌、北家が京太郎である。

    「麻雀と言う競技において、半荘1回のみでメンバーを決めるなんて狂気の沙汰ではありませんが、優希が選んだのです、全力を出していきます」

    優希「んぐんぐ…タコス充電完了だじぇ!」

    タコスを頬張り、臨戦態勢をとる優希。かといってこちらには超能力なんて類いは無いに等しい。
    ただ飛ばされない…その一点のみだ。
    しかし、これを私の武器として頼り切る。
    下家の京太郎に耳打ちをする。

    「京太郎、私がどんな状況になるにせよ貴方らしく貴方の麻雀で応えてください。すばらな戦いにしましょう」

    京太郎「お、おう」

    そうして始まるメンバー入りを賭けた戦い。先制の上がりはやはり優希であった。

    優希「ツモ!メンピン一発一通ドラ2、6000オール!一本足りなかったじぇ」

    京太郎「いや、十分過ぎるだろ…」

    いきなりの親跳でリードを伸ばす。
    手痛い失点だが、煌に諦めなどない。

    (私が優希に勝つための条件は2つ、私の飛ばされは無視して京太郎に稼いで貰うこと。二つ目は…)

    「ロン、白三色ドラ1は8300」

    優希「じぇじぇ!」

    (事情を知らない和が稼いでくれること…!)

    優希(そうだったじぇ…花田先輩以外には京太郎絡みのこと伝えてないから、こうなるのやは仕方ないんだじぇ。それでもまだ東場は続く!)

    「さて、私も負けられませんね。それポン!…チー!…ロン!タンヤオドラドラ、3900点すばらです」

    勢いよく上がりを見せたものの、南場で優希と煌の勢いは失速することになる。

    13 = 10 :

    咲さん?あぁ、咲なら私と一緒にプリン食べてるよ。

    京太郎「どうしてこうなった」

    あれから和の連チャンもあり点差は凄まじいことになった。

    優希 237000
    和 53300
    煌 300
    京太郎22700

    京太郎「じゃあ…オーラス行きますね」

    ドラは1sからのスタート。
    エトペンを抱いた和は発熱し、南場で優希や私を狙い、盤石の布陣をとる。南場の優希は失速したものの、私の点数を大幅に上回っている。しかし煌は揺れない、諦めてなかった。

    (私は、私の力をよく知っている。そして、京太郎も…私の力をよく知っている)

    京太郎(恐らく、この状況は煌さんも承知の上だろう…だから俺は、俺に出来ることは…!)タンッ

    優希(ここさえ凌げは私の勝ちだ…。花田先輩から跳満を当てられない限り…。だから、一歩でも早く上がる!)タンッ

    (先ほどから聴牌は遠いですが、ここは降りでしょう。麻雀は何が起こるか分かりませんからね)タンッ

    「それチー!」タンッ

    京太郎(それを鳴く…ということは)タンッ

    「それポン!」タンッ

    優希(むむ…ツモが回ってこないじぇ…)

    京太郎(…!でもこれじゃよくて混イツで満貫以上だ…煌さんが勝ちを捨ててまで俺をアシストしてくれている。恐らく昨日の優希とのあれだろうな…聞いてたなんて言ったら怒るかな)

    優希「京太郎、早く切るじぇ」

    京太郎「お、おう…」

    煌を横目に見る。苦しそうではない、何かを信じている、そんな顔だ。

    京太郎「煌さん…、俺信じてますから…リーチだ!!」

    123444677889p12s

    2sを取り河に切る、それに煌応える。

    「それ…カン!」

    王牌が捲られる、ドラ表示牌は…4p
    そして躊躇なくツモ切る…。
    京太郎もツモならず。

    優希「負けられない…負けられないんだ!!」

    14 = 10 :

    そして出す、唯一の安パイになりそうな1sを。

    京太郎「優希、それだロン!リーチドラ4!裏は…」

    手が震える、今までここまで勢いに任せた上がりはしたことがない。かといって京太郎は親だ。このあと連チャンする可能性もあり得る。しかし、それは京太郎自身が無理だと感じていた。だから…

    京太郎「来い…!来い…!」

    裏が捲られる。1枚目は7p。2枚目は…

    優希「9p…親倍の私の飛び…か。すまない、私負けちゃったじぇ…」

    笑顔を見せながらも大粒の涙を流す。最後まで優希らしく、力強く誇らしく席を立つ。

    優希「花田先輩ありがとうだじぇ。…。私のインターハイはまだ来年、再来年がある。悔しくなんか…悔しく…」

    「優希」

    優しく抱き留め、胸に寄せる。

    「私の貧相な胸で良ければ貸します。優希の勇姿を私が、みんなが見届けました。後悔なんてしなくて良いのです。それが貴女の覚悟だったのでしょう?」

    優希「そうだじぇ…。覚悟も無しにここには立ってない。…ありがとうございました!」

    そこにはいつもの天真爛漫な優希がいた。

    15 = 10 :

    そしてまた休載という名の書き溜め。

    16 = 10 :

    ミスった。書き直し。

    そして出す、唯一の安パイになりそうな1sを。

    京太郎「優希、それだロン!リーチドラ5!裏は…」

    手が震える、今までここまで勢いに任せた上がりはしたことがない。かといって京太郎は親だ。このあと連チャンする可能性もあり得る。しかし、それは京太郎自身が無理だと感じていた。だから…

    京太郎「来い…!来い…!」

    裏が捲られる。1枚目は1p。2枚目は…

    優希「9p…親倍の私の飛び…か。すまない、私負けちゃったじぇ…」

    笑顔を見せながらも大粒の涙を流す。最後まで優希らしく、力強く誇らしく席を立つ。

    優希「花田先輩ありがとうだじぇ。…。私のインターハイはまだ来年、再来年がある。悔しくなんか…悔しく…」

    「優希」

    優しく抱き留め、胸に寄せる。

    「私の貧相な胸で良ければ貸します。優希の勇姿を私が、みんなが見届けました。後悔なんてしなくて良いのです。それが貴女の覚悟だったのでしょう?」

    優希「そうだじぇ…。覚悟も無しにここには立ってない。…ありがとうございました!」

    そこにはいつもの天真爛漫な優希がいた。

    17 :

    >>13でゆーきの点数が凄いことになってる

    18 = 10 :

    >>17
    0消して脳内補完してくれwww

    19 = 10 :

    長野県麻雀大会インターハイ予選が始まる。先鋒にエースを置く高校が多いため、煌さんはエース封じとしての役割を担っている。
    本人曰く「捨て駒、任されました!」と言っていたが、俺たち誰一人捨て駒なんて思っていない。あの対局に立ち会ったのだから。

    「さぁて、清澄高校の初舞台よ。煌は最大50000点なら失点しても良いから、自分らしくね」

    まこ「一発かましちゃれ」

    優希「花田先輩、タコス食べて行くかい?」

    「いつも通りですよ」

    「が、がんばってくだちゃ…。ごめんなさい…」

    「むしろ緊張をほぐすのは貴女ですよ咲。なんにせよ応援すばらです!不肖花田煌行って参ります!」

    勢いよくドアを開け対局室へと向かう。足取りは軽く、意気揚々と歩き出す。

    「そういえば京ちゃんは?」

    「全く姉の晴れ舞台なのに、どこに行ったのでしょう…」

    優希「ちょっとトイレってさっき出て行ったじぇ」

    まこ「緊張感の欠片もありゃせん」

    「そうかしらね?あぁ見えて姉思いよ須賀君は」

    20 = 10 :

    対局室へと向かう道中、見覚えのある立ち姿が目に入る。

    京太郎「待ちくたびれたぜ、煌さん」

    「トイレ行くって言っていたのに、あれは嘘でしたか」

    京太郎「いや、あれは本当…。まぁ煌さん…姉の晴れ姿を見ないわけには、弟の名が廃るってことで」

    照れくさそうに答える京太郎に1つ意地悪をしてみたくなった。

    「そういえば京太郎、恋人らしいことも姉弟らしいことも最近してないと思います、これはゆゆしき事態すばらくない」

    京太郎「ちょっ…試合前になんてことを…」

    あの対局以降…というよりは夜に優希と話していた内容が京太郎含め、部長にも筒抜けだったらしく、私が告白したところ二つ返事でO.K.してくれた…のだが、それからも今まで通りの日常だった。だからこそ、大事な場面を後ろ盾に意地悪をしてみる。

    「あぁ…せめて昔みたいに呼んでくれたら。私初めて飛ばされるかもしれません…」

    京太郎「そ、それは卑怯過ぎるだろ!全く…誰の入れ知恵なんだか」

    ごめんなさい、部長の入れ知恵です。

    京太郎「ひ、久しぶりだから緊張するな…よし」

    この前は不意打ちだったが、今回は面と向かって聞くことになる。

    京太郎「お、お姉ちゃん…」

    「すばらです!」

    向かう、みんなの思いを背負って。
    その一歩が清澄高校躍進の一歩になると信じて───。


    一部完

    21 = 10 :

    とりあえずインターハイ予選までは
    高速で書き上げました。

    溜まった頃にまた放出するよ。

    短いけど今後ともよろしく。

    22 = 10 :

    第二部スタートです。
    っと言ってもさわり程度ですが。

    京太郎「き、煌お姉ちゃん…」煌「すばらです!」

    よろしくお願いします。

    23 = 10 :

    大会は進み、清澄高校は決勝戦を突破し、全国大会に進む。
    試合の度にお姉ちゃんと呼ばせているのは他校にも周知の事実であった。

    ※以下ダイジェスト

    「ポン!」タンッ

    「くっそ、こいつまた流れを変えやがった!」タンッ

    美穂子「ロン、七対子ドラドラ6400点」パタッ

    ───。

    「なんだこの感じ…、全く聴牌すら出来ねぇ…」タンッ

    「ツモ!1000-2000すばらです!」
    ↑すでに-25000点

    睦月「う、うむ(すばらって一体?)」

    「先鋒戦終了!去年と同じく井上純が先鋒戦を制すと思われましたが、終わってみれば風越女子が2位龍門淵を20000点も離すリードだ!」

    藤田「さすがにオーラスは私でも上がれないな。相性が悪いったらありゃしない」

    風越  123000
    龍門淵 102600
    鶴賀学園 88000
    清澄 86400

    ───。

    24 = 10 :

    京太郎「風越に言いようにされちゃってるな」

    「井上純相手によく健闘したわよ。40000点しか離れてないし、あと4人で十分逆転可能よ」

    「一人当たり10000点浮きですか、まぁ誰が相手でもベストを尽くすだけですが」

    優希「正直、私が出てたら東場でも良いように遊ばれてたと思うじぇ…」

    「優希ちゃん、流れ変えられたら崩れちゃうもんね…」

    まこ「咲、なかなか厳しいこと言うのう…。さてと、次はわしの出番かの!」

    まこが控室のドアを開けると丁度煌も戻っていた。

    「花田煌、ただいま戻りました!」

    京太郎「おかえり、おね…煌さん」

    「む…まぁ良いでしょう。まこ、次鋒戦任せましたよ!」

    まこ「任せときんしゃい、仇とっちゃるけんの」

    (京ちゃん、いい加減お姉ちゃん呼びでいいのに。)ヒソヒソ

    (恐らく本人は気づかれてないつもりなんでしょうが)ヒソヒソ

    優希(部長は部長で腹抱えてこらえてるじぇ…)ヒソヒソ

    京太郎「ええい!お前ら、ひそひそ話は止めろー!」

    以上ダイジェスト。
    以下本編。

    25 = 1 :

    ─喫茶roof top─

    東京に向かうまで残り一月を切った清澄高校。明日からは四校合同合宿が始まろうとしていた。

    京太郎「今思い出しても、良く全国まで出れたよな~。次鋒で役満ツモられたかと思えば、部長も連続和了決めるし、副将戦は膠着状態を保って、大将戦は大暴れだったもんな」

    「むしろ次鋒戦や副将戦が正しいのですよ。中堅戦と大将戦は一生に一度体験出来るかの珍事です。宮永さんのは…まぁあれとして、部長のは非効率です!空聴リーチ、地獄単騎…」

    「珍事とは何よ~、あぁでもしないと上がれなかったでしょ?」

    「たまたまです」

    「まぁまぁ、なんにせよ全国大会出場すばらです!」

    「あれってなんなの原村さん…」

    まこ「すまんの、混んできたからそろそろ帰れるかの?よかったら和と咲…久も手伝ってくれんか」

    「じ、時間も良い感じだし、そろそろ解散!明日は絶対遅れないように。特に須賀君…は大丈夫として、優希は和や咲と一緒に来なさい」

    優希「む、私に矛先を向けるとは…。多分大丈夫だじぇ、のどちゃんが起こしに…」

    「起こしません、一人で起きて準備してください」

    優希「そりゃないじぇ…」

    「京ちゃん、起こしに行ったら?」

    京太郎「そもそも、俺は行けないっての…。まぁモーニングコールはしてやるよ」

    「では私達も見習ってやってみましょうか」

    京太郎「お、お願いしますお姉ちゃん…」

    またもや不意打ちでの言葉に煌は顔が真っ赤になっていたのであった。

    (急になんて…す、すばらくない。私がお願いしたのに、いい加減なれないといけませんね…)

    26 :

    合宿当日の朝、集合時間までまだ時間があり、煌は家でくつろいでいた。

    ─須賀家─

    「うーん…起こすべきか起こさざるべきか…」

    そこには唸りながら朝食後のコーヒーを飲んでいる煌がいる。一声かけて出るべきなのか、書き置きだけで良いのか。ゆっくりと悩んでいた。

    「とりあえず顔だけでも見に行きましょう。なんたって私は恋人でありお姉さんなんですから!」

    しかし、いざドアを前に立つと入るのが躊躇われた。ここのところ朝は比較的すぐに起きてくれるようになっているので、折角の休み、起こして良いのかと思った。

    「ええい、ここまで来たら行くしかないでしょう!お邪魔します」

    言動とは裏腹にそーっと開ける。いつも見ている顔が視界に入る。

    「お、おはようございます…うんうん、よく寝てますね。で、では…──!」

    ベットの近くのゴミ箱の側に見つけてしまう。くしゃくしゃに丸められたそれを。胸が高鳴る。姉として、恋人として、人間として。いけないこととは思いながらもそれを手に取り臭いを嗅いでみる。

    (も、もしかしたら私のことを思って…す、すば…!」

    京太郎「う、うーん…煌さんいるのか?」

    途中から声に出ていたようで、京太郎を起こしてしまった。そうなると後は早い、嗅いでいるところを見られる、持っているところでもアウトかもしれない、平静を装いチリ紙はゴミ箱投げ入れる。

    「え、ええおはようございます京太郎。顔だけ見たら行こうかと思いましたがすみませんね」

    京太郎「いや、大丈夫…。優希に電話かけないといけなかったし」

    「そ、そうでしたね。京太郎すばらです!では、私はそろそろ合宿へ行きます。寂しくなったら私に電話するのですよ。あと…」

    京太郎「はいはいいつものね。じゃあ…いってらっしゃいお姉ちゃん」

    「すばらです!では行ってきます!」

    優希に電話する彼の声を遠くに家から出て行った。バレるかと思ったが案外何ともなかった…しかし、エスカレートするのは煌自身分かっていなかった。

    「あ…いってらっしゃいのキスくらい言えば良かったかな…京太郎…。ううん、過ぎたことです今から切り替えていきましょうかね!」

    次々と集まる清澄高校麻雀部。場面は四校合同合宿へと移る。

    27 :

    メンピン即ヅモ一通ドラ2は8000オールだじぇ
    足りてるじょ?

    あとドラ表示牌は3pだと思う

    28 :

    >>27
    やっぱりやるのと書くのとでは
    難しいでござる。。。
    すまんな優希ちゃん。
    後の点数変わらんし
    どっちでも脳内補完よろしく。

    29 :

    拙い文章だが、見てくれて感謝です。

    ─煌サイド 合宿所─

    合宿も中盤に。まこは「1番好きな役で上がられた」と落ち込んだり、優希は来年に向けて特訓に、和と咲は親密になったり、部長は会議で忙しいようで。手持ち無沙汰になった私は施設内をぶらついていると、天江衣から声をかけられた。
    なんでも「飛ばぬとは支配の賜物、今宵は月も満ちている、一つ手合わせ願おうか」とのこと。面子は私、天江さん、池田さん、藤田プロとなった。

    「藤田も入るとは至極残念だが、致し方あるまい」

    藤田「その減らず口を塞いでやる。私の着順が上なら一晩私が可愛がってやろう」

    池田「なんで華菜ちゃんまで呼ばれたし…」

    「まぁまぁ良いではありませんか、リベンジのチャンスですよ」

    起家は天江さんから。順に池田さん、私、藤田プロとなる。

    「では…水戸開きと行こうか…!」

    「うぐ…やはり直に受けるのはキツいですね…ですが手加減無しはすばらです!私も迎え撃ちます!」

    「見事撃ち落としてみよ」

    藤田「はぁ…意気込む衣も可愛いなぁ」

    池田「藤田プロは置いといて…、花田キツそうだな大丈夫か?」←気づかない池田

    「気遣いすばらです。ですが問題ありません、全国には天江さんのような強敵ばかりです。ましてや先鋒、天江さんが3人居ると考えなければやられてしまいますので…」

    「その意気込みやよし。さて…海底だがどう受ける?リーチだ…!」

    池田「花田鳴けるかだし!」タンッ

    「生牌の南…いえ、鳴きません。ここは現物といきましょう」タンッ

    藤田「(鳴きません…か、私に切れと言っているも同然だな)それ南だ」タンッ

    「すばらです!ポン!」タンッ

    藤田「ロン。海底のみ、1000点だ」

    「ふふっ…やるではないか。衣の支配を受けてまでその手牌。伊達に魑魅魍魎集まる先鋒を努めるだけはあるな。まだまだ楽しませてくれ」

    流しはしたものの、やはり強者ばかりで、オーラス手前で1000点を切ってしまいました…

    30 = 29 :

    オーラス

    衣 47000
    池田16000
    藤田36800
    煌  200

    池田(まだいけるし!配牌から11種11牌、役満ツモって大逆転勝利だし!)←知らない池田

    藤田(5800直撃か満ツモ…しかし花田の力だろう、この手牌はツモれない。ダマで通す)

    (藤田から微々たるものだが衣を捲ろうとする意思を感じる…。あと池田から強い圧力も。しかし、煌の力か…この手牌は成就するのか曖昧な所だな。衣の支配と煌の能力、どちらが雌雄を決するのか…)

    (いやぁやばいですねぇ。意気込んではみましたが、最短で役満を上がるとなると四暗刻が五向聴ですか。…ドラも赤含め3つです、トップは無理にしろ、3着狙いましょう!)

    七巡目。藤田は2-8pのシャボタンドラ2を聴牌、衣からの直撃を狙う。衣はツモのみでも煌を飛ばせるのだが、中々聴牌出来ない。池田は国士無双を中か1索で聴牌。煌は七対子ドラ3を聴牌する。

    (1索か中を切れば聴牌。しかし池田から凄まじい威圧感を感じます。恐らく国士無双が聴牌もしくは一向聴。だったら私は突っ込みましょう!)タンッ!

    池田(1索…あと少しなのに上がれないし!どうせなら聴牌してから出して欲しいし!)

    藤田(さすが、自分の力の使い方を知っているようだな。ここに来てそれを切れるのか)タンッ

    (ふふっ衣も2-8pでタンヤオ聴牌だ。だが…勝つために出上がりを狙うのか、それとも…)タンッ!

    池田(来た来た国士無双聴牌!1索待ちになるけどそれでも僥倖だし!まだ河には一枚しか出てない、華菜ちゃん大逆転勝利まであと一歩だし!)タンッ

    (喜びが隠せてませんね池田さん。さて、引いてきたのは…5p、しかも河には二枚切れ。ええい、迷っていてはすばらな結果などあり得ません!だから私は…)タンッ

    中を切る。場は完全に煌に傾く。それは2人は気づいたようで。

    藤田(ダメ…か。今日は衣を合法的に可愛がれないようだな)タンッ

    (煌の力魅せてもらったぞ。お前も私達と同じだ…)タンッ

    池田「げっ…諦められ…ないし…!」

    池田のツモは5p。そしてこの半荘は煌の3着を示していた。

    31 = 29 :

    「ええい藤田いい加減離れよ!」

    藤田「ちぇ…今回は諦めてやるか」

    池田「にゃぁぁあ!!!こんな展開ばっかだし!」

    「まぁまぁ、最後の国士無双聴牌はすばらでしたよ。どう転んでもおかしくなかった良い勝負でした。私を除く皆さんがトップを目指せる最高の戦いです」

    「時に煌よ、少し良いか」

    「なんでしょうか天江さん?」

    「衣でいい。それは良いとして、煌は勝ちたくないのか?己を捨てて五里霧中の戦いでお前は満足なのか?」

    煌は少し考え込む。いつからだったか、私自身がトップを目指さなくなったのは。現に先日出た個人戦では下から数えた方が圧倒的に早い。

    「わかりません…。私の力と言えば決して飛ばないだけのもの…。他は人並みに打つことしか出来ません」

    そう言うと池田が何やら物言いたげな様子で近づいてくる。

    池田「今のは…カチンと来た。何が人並みだ。オカルトチックな力を持っていてよくそんなことが言えるな。うちの高校を見てみろ、自慢にもならないが、誰もオカルトなんて持ち合わせてないぞ!
    キャプテンだってみはるんだって文堂、すーみんもみんな諦めが悪いから決勝まで上がってきたんだ。最後みたいな気合い見せてみろよ!」

    ちょっとクラッと来た、確かにそうだ…。清澄高校の先鋒に選ばれたのは諦めなかったから。京太郎が欲しいと思ったから、優希には負けられないと思ったから。結果は振るわなかったかもしれないが、そこに諦めなんてなかった。

    「そうでした…私は清澄高校麻雀部先鋒…。私の役目は一点でも多く次に繋げること。私は自分の能力に少し頼りすぎていたかもしれません。この合宿で何か武器を見つけなければ!ありがとうございます衣、池田さん」

    「例には及ばん。その代わりにまた衣と打ってくれ!」

    池田「同い年なんだからさん付けは何だかむず痒い!呼び捨てで構わないし!次は必ず勝つ!」

    「そうですか、…次は上を目指してあなたにも勝ちますよ、「池田ァ!」

    池田「……呼び捨てってそういう意味じゃない…華菜でいいし」

    「いえ、私は…」

    32 = 29 :

    久保「池田ァ!」

    池田「その声は…こ、コーチ!」

    久保「何やってんだ池田ァ!今日は特打だと言っただろァ!道草食ってないでさっさと来い池田ァ!」ガシッ

    池田「い、痛いし!決勝後のコーチはどこ行ったんだしぃ!」

    こうして池田は無事保護されました。

    「南無三池田。っと最後に1つ、合宿後、暇があれば私の所に来るがいい。あと、キョータローも連れて来い」

    「あら、京太郎と知り合いでしたか」

    「私ではない、ハギヨシが喜々として家に招いている。恐らく今日もだろうな」

    「そう言うことでしたか、では後日連れてきますよ~!」

    「うむ!京太郎にも手ほどきをしてやる。煌の血縁なんだ、奴とて何か妙技を使えるかもしれぬ。ちなみに中々有名だぞ?姉弟の情とは美しいものだからな!」

    「え、えぇ…」

    なるほど、他校にはそういう風に伝わっているのですね。まぁ、血縁以外は間違いではありませんので訂正はしませんが。

    「月が満ちてるとはいえもう九時か。私はそろそろ床につく。…入ってくるなよ変態雀士藤田」

    藤田(ちっ、読まれていたか)

    夜も更け、煌はまた1つ成長する。焦るのにも時間が惜しい、全国大会はすぐそこだから──。

    33 :

    ─京太郎サイド 龍門淵邸─

    今頃みんなは楽しく合宿してるのだろうなぁ…。俺もそんな和気あいあいとしたいぜ。でも、そんなことも吹き飛ぶようなイベントがこれから用意されているんだ!で、時刻は午前7時と中々早い。

    京太郎「おはようございます、師匠」

    ハギヨシ「おはようございます京太郎君。さて、今日なのですが…」

    実はネトマで何度か対戦したこともあって、そこから交流が深まったのだが、いやはや世間は狭いというか…まさか龍門淵の執事さんだったとは…。
    まぁ、それはそれとしてだ、今からやるのは…ズバリ「家事」だ。優希のタコス作りや、煌さんが毎日用意してくれている御飯、部活での細やかな給仕作業。
    それらを引っくるめて俺は俺なりに何かしたいと思ったから、恥を捨てて土下座をしてハギヨシさん…今は師匠に頼み込んでいたと言うのが先日までの流れだ。

    ハギヨシ「では今日は趣向を変え、お弁当作りといきましょう。合宿所への給仕やお昼のお弁当は私がやっておりましたが、最近の京太郎君の上達ぶりを見て大丈夫だと思います。早速ですが下ごしらえといきましょうか」

    京太郎「は、はい!」

    やっぱりハギヨシさんは半端ないな。…何でも、素敵滅法を極めていて、社交界に置いてハギヨシさんのことを知らない執事やメイドは居ないと聞いている。
    …ってよく考えたら…、

    京太郎「ここ数日25人前ほどを一人で作っていたんですね…流石師匠」

    ハギヨシ「慣れれば問題ありません。100人前なら三時間もあれば可能だと思いますよ。今回に限り女生徒ばかりで、よく食べられる方やアレルギーはすぐに調査出来ましたから、苦も無いことです」

    指ぱっちん1つで召喚されたり、エトペンを即座に直してみたり…なんだか聞けば聞くほど素敵滅法とは何だろうって考えちまうな…。

    ハギヨシ「今日はまだ時間に余裕はありますが、あくまで鍛錬です。出来るだけ付いてお教え致しましょう…どぅわ!」

    瞬時にエプロンを纏い厨房に立つ。やはり、本当に様になっている…。

    ハギヨシ「そう言えば、花田様は好き嫌いは無いと存じていますが…」

    京太郎「そうですね、お姉ちゃんは基本何でも食べますよ。小さい頃から、どんなに失敗した料理だってすばらって言って食べてくれました。あれはわざとでは無いと思います」

    ハギヨシさんには煌さんとの関係については説明済みだ。半分はみんなの役に立つため。残りの半分は恋人らしいことも出来ていない俺なりのワガママだ。

    京太郎「さて…いっちょ頑張りますか!」

    美味しい料理を、みんなに。俺は今日も頑張っています!
    こんなに張り切れるのは男子個人戦で3位入賞出来なかったからなんですが…。

    34 :

    たくさんの重箱に用意が出来た。いつもながら手際が良い…師匠は。作ったと言っても二割程度しか出来なかったが、それでも貢献したつもりだ。

    ハギヨシ「さて、それでは届けるとしましょうか。車を用意しましたので、2つほど持っていって下さい」

    京太郎「了解っす」

    まだ4つほど残っているのにどうやって運ぶのだろうか?見たい気持ちもあったがそこは抑え外に出る。

    龍門淵邸には広大な庭がある。その真ん中に見慣れない車が…

    京太郎「リムジン…って想像はしてたが、まさか乗ることになるとは…」

    ハギヨシ「お待たせしてましたか?さて、それでは参りましょうか」

    するとリムジンを横切り車庫へと向かう。

    京太郎「あれ、これじゃ無いんですね」

    ハギヨシ「それは旦那様を送る用です。後ほど旦那様付きの執事が送る手はずになってます」

    少し残念だが下々の民である俺なんかが乗れるわけがないか。師匠は微笑みながら言ってきた。

    ハギヨシ「龍門淵家の執事になれば乗ることも出来ますよ。それか龍門淵家の一員になるという手も…」

    京太郎「い、いや俺には煌さんがいますし…」

    ハギヨシ「分かってますよ。言ってみただけです」

    本当に食えない人だ…。この後俺たちは合宿所に着くことになるのだが、そこでとんでもないことに巻き込まれてしまったのだ。

    35 :

    合宿所。みんな打ち疲れてきたのか少しだけ雰囲気が和らいでくる。そんな中龍門淵透華が声をあげる。

    透華「そろそろハギヨシが来る頃ですわね。お食事の準備と致しましょう」

    そう言うと目を輝かす者達が現る。

    優希「待ちくたびれたじぇー!」

    「俺も腹減ってきたところだった、補給しねぇとな」

    智美「ワハハ、またあれが食べられるのか~。それだけでこの合宿来て良かっ…痛い!って、ゆみちん何するんだ」

    ゆみ「その言動はいただけないな。…課題追加しないとな」

    絶望に溢れた蒲原がいた。顔は変わらず「ワハハ…」と悲しげな言葉が出ていた。

    少し時間が経ち、雀卓は退けられ、テーブルに各々が着く。それを見計らってか龍門淵透華が一言。

    透華「ハギヨシ」

    ハギヨシ「はい、透華お嬢様」

    ざわめく会場。どうやって出現したのか全く検討もつかない。遅れて京太郎がお重を持ってくる。

    「京太郎、来てたのですか。電話してくれても良かったのに」

    京太郎「いやいや、そう言うのはやっぱりサプライズ感がないとさ」

    テキパキとテーブルに並べていく京太郎。それを見て少し誇らしく思えた。

    京太郎「で、優希はこれな」

    優希「おぉ!でかしたぞ犬!お前も呪われしタコスの血族を理解したようだな」

    京太郎「いや、大元はハギヨシさんが作ったんだよそれ。俺は具材をちょっとだけ…って犬はねぇだろ犬は」

    優希「早く食べたいじぇ-。でも、昨日は染谷先輩にこっぴどく叱られたから…」

    実は先日もタコスが並べられたそうなのだが、他が並べきられる前に食べてしまった所を染谷先輩に一喝されたそうだ。

    染谷「あんたは我慢と点数移動計算が出来んけんね」

    優希「て、点数移動計算は勉強中だじぇ…」

    「我慢はどうしたのですか、我慢は」

    そうこうしているうちにテーブルに並べられる。そして部長が音頭をとった。

    「じゃあ、一言だけ!みんなお疲れさま。合宿は明日の午前中までだけど、じゃんじゃん打って頂戴ね。でも今は英気を養うために…頂きます!」

    全員が合唱のように呼応する。するとハギヨシが京太郎に近づいてくる。

    36 = 35 :

    ハギヨシ「貴方も混ざって良いですよ」

    京太郎「え、そんな悪いですよ。今日はまだ疲れてないですし」

    ハギヨシ「そうですか…でしたらこう言うのはどうでしょうか。今ゆったりご飯を食べるのも仕事だとしたら?」

    根負けした顔を見せる京太郎。

    京太郎「それは狡いっすよ師匠」

    ハギヨシ「ふふ、これが大人やり方の一つですよ。先ほど衣様から聞きましたが、これからも暇があれば花田様と来るようにとのこと、そこまで急いでやろうとしなくて大丈夫です」

    京太郎「そうですか…でしたら今日は一緒に食べる仕事を教えて貰った…と言うことにします」

    ハギヨシ「それで良いのですよ。私の作法など、京太郎君ならいずれ物に出来るはずです。後の片付けも気にせず今日はゆっくりしてくだ…」

    「ハギヨシ!エビフライを作るとは大義である!それでたるたるそーすはいずこにあるか?」

    ハギヨシ「はい、ただいまお持ち致します」

    またいつの間にか移動していた…。あの人は本当に同じ人間なのかと錯覚に陥るほどに。ハギヨシ自身からすれば、それは最上級の褒め言葉であると同時に普通の事だと謙遜するのだが。本当にあの人の領域まで辿り着けるのだろうか?すると奥から自分を呼ぶ声がする。

    優希「ほら犬もこっち来るじぇ」

    「そうよ須賀君、こっちには食い意地の張った獣が2匹もいるのだから、早く来ないと貴方の分無くなっちゃうわよ」

    ちらりと顔を合わせる清澄陣営。はて、と言った具合に理解が出来ていない。

    「一体誰の事でしょうかね?」

    「わ、私食い意地なんて張らないよ!」

    優希「さっぱりだじぇ~」

    まこ「ほんに、何を言うかと思えば…」

    京太郎「いや、一人はお前だ優希。あと、咲は無いとして、煌さんは逆に譲る人だし…」

    「あと一人はまこよ、まこ」

    まこ「なっ!その言われはないぞ久!」

    「あら、前の合宿ではお寿司取り合いしてたじゃない?タコは取れなかったけどね」

    まこ「ぐっ…そう言われると反論出来んの…」

    優希「タコは仕方なかったんだじょ」

    「優希、他のも我先に食べてましたよね?」

    優希「じぇ…」

    和気あいあいとお重をを囲む。すると衣が寄ってきた。

    37 :

    「ハギヨシから聞いたぞキョータロー。あのたるたる実に美味であった!して、お前は龍門淵に仕えるというのはどうだ?」

    どよめく清澄陣営。そこに透華も加わり、

    透華「貴方の素質、ハギヨシから聞いております。今はまだ早いかもしれませんが、衣もこう言ってます、私の…いや、衣の執事になるのはどうでしょうか?ハギヨシに少し負担をかけすぎているきらいがありますので」

    京太郎「えっ!あの…大変嬉しいのですが…」

    あたふたとする京太郎。ちらりとハギヨシを見るとにこやかにこちらを見て鎮座するだけであった。まさかこんな展開になるとはつゆ知らず、狼狽していると煌がやってきた。

    「あのー…水を差すようで悪いのですが」

    「ん、どうした煌。何か言いたげだな?」

    「姉として京太郎が腕を上げているのは日に日に感じます。しかし…京太郎は私の…」

    少し言葉に詰まる。おくびもせず言えるものか、だが決心したかの様に言葉を出す。

    「京太郎は、私のこ、恋人ですから!就職となれば願ったり叶ったりですが、私のもの、伴侶ですので!」

    京太郎「ぶふぉ!は、伴侶って…それは飛躍しすぎ…」

    それを聞いていたのか周りは「あれ?姉弟じゃなかったの!?」とか「禁断の恋…か」とか色々言っている始末。それでも衣は虚を突かれたわけではなかった。

    「やはりそうであったか。いや、取って食うつもりなど毛頭無い。キョータローの素質を評価している、故に私の人生行路に執事として迎えたい、それだけだ。お前達のその佇まいはいささか鴛鴦之契だからな」

    智美「ワハハ…えんおうのちぎり?」

    ゆみ「そうだな…分かり易くいうとおしどり夫婦というわけか」

    智美「いや、おしどり夫婦も意味が…」

    モモ「私と先輩ってことですよ!」ユラァ…

    ゆみ「こ、こら!ここでは止めろぉ!」

    智美「ふむふむ、あまり分からないがとりあえず拍手でもするか」パチパチ

    美穂子「わ、私も上埜さんと…」パチパチ

    睦月「うむ」パチパチ

    「おめでとうございます、お二方」パチパチ

    何故だか周りから拍手が起こり、事の重大さに気付いた煌は顔を真っ赤にしうずくまってしまった。

    38 :

    京太郎「じゃあ明日、駅まで迎えに行きます。合宿所出たら連絡くださいね」

    「…はい」

    どんよりとしている煌。それもそうだ、あれだけの啖呵を切って平然としてられる訳がない。優希だけでなく、清澄含む四校に知られているという事実が煌を悩ませた。
    京太郎がやり切れない感じで近づいてくる。

    京太郎「煌さん!俺、嬉しいんですよ」

    「あ、あの何が…」

    京太郎「これで本当の意味で恋人同士になれたことです。誰が知ろうが、誰がなんて言おうが、俺たちは…姉弟で恋人なんですから」 

    「あ…」

    ぽろぽろと涙がこぼれ落ちる。今更ながら気付いてしまった。長い間過ごして来たから好きになったのもあるが、こう言う男らしい所に惹かれていたのだと。優希もそうだと感じる。

    「えへへ…何だかすばらくない所をお見せしたようで。ええ、花田煌は貴方の恋人でお姉さんでした」

    力が抜け京太郎に寄りかかる。今まで感じたことの無い甘い薫りが京太郎に迫る。

    「ふつつか者ですが、よろしくお願いいたします」

    京太郎「こんな俺で良ければ、どこまでも」

    初めての抱擁に自然と笑みを浮かべる二人。雰囲気に任せ、煌は一つお願いをする。

    「京太郎…一つ良いですか?」

    京太郎「なんですか煌さん?」

    「煌…いや、煌お姉ちゃんと呼んで下さい」

    京太郎「ま、またこのパターン!?」

    涙で紅くなった瞳を近づけてくる。もうこうなったら誰も逆らえないだろう。意を決して呟く。

    京太郎「き、煌お姉ちゃん」

    「すばらです!」

    また抱き合う二人。時間がゆっくりと過ぎていく──。だが、それを許さないようで、

    39 = 38 :

    「あの…煌、そろそろ戻らないとみんな待ちくたびれているわよ」

    二人して振り向く。そう、全く気づかなかったのだ。何人も近くに来ていたのに。

    「あ…あああああ!!!」

    京太郎「ちょっ…煌さん!」

    猛スピードで宿に入っていく煌を見送ることしか出来なかった。

    ゆみ「本来なら言わぬべきかもしれないが、そう言うのは合宿が終わってからしてくれ。一分一秒が清澄には必要だからな」

    京太郎「はい…これからは自重します」

    モモ「でも、さっきのはドキッと来たっす。まるで映画の様な感じで。私も見習って加治木先輩とあんなことや…こんなことを…」

    智美「む?何だか桃色の香りがするぞ」

    佳織「え、桃色の佳織?私そんな匂いするのかなぁ」

    ゆみ「はぁ…私は先に戻っているからな。って、どさくさ紛れに抱きつくなモモ!」

    ゆみが踵を返すと他のメンバーもどんどん中へ。優希の姿が見えなかったが、恐らく先に煌さんの所に行ったのだろう。俺が言うのは変だが、恋敵にしか分からないこともあるのだろう。自惚れだとは重々承知しているが。
    機をうかがっていたかの様にハギヨシが声をかけてくる。

    ハギヨシ「さて、今更ですが、私達はお暇しましょうか。帰りは家まで送って差し上げますよ」

    京太郎「はい…今日は素直にお願いします」

    こうして激動の合宿は無事閉幕する。余談だが、煌はテンションとは裏腹に頭は冷静になっていて、残りを上々の成績で乗り切ったそうだ。

    二部完

    40 = 37 :

    閑話休題

    時は戻り一回目の合宿後。これは京太郎と煌が付き合うことになった一幕。優希との対決後、無事合宿は終わり、二人で家路に向かう途中のこと。

    京太郎「はぁーあんなに緊張した麻雀は初めてだったぜ…」

    「本当に…格好良かったですよ」

    京太郎「あの土壇場のカンが無かったら本当に無理だったから、あれは煌さんのファインプレーだな」

    「京太郎」

    空気が緊張する。先程から淡々と喋る煌に、京太郎は思案する。

    京太郎「煌さん?もしかして、体調が悪いんじゃ…」

    「そんなことありませんよ。…京太郎、貴方に言っておかなければならないことがあります」

    ジッと顔を見つめられ硬直してしまう。しかし、それは覚悟していたことでもあった。

    「今回のメンバー決め、表向きはそうですが、裏では何があったかご存じですか?」

    京太郎「薄々…というよりか本当は知ってた。優希との勝負、負けた方が手を退く…。だって、あんな剣幕で言い合ってるんだから、一人くらいは目撃するしな。それが俺だったってこと…。こう言っちゃなんだけど、俺って幸せ者だなって…」

    硬直はいつの間にか覚悟で溶かされていた。そして──

    京太郎「俺は…煌さんが好きだ。お姉ちゃんだけど、女性として見ていた。ははっ、本当に駄目な弟だよ…」

    「そんなことありません!私だって弟の京太郎を恋愛対象として見てました。小さい頃から、須賀家の一員になってからずっと好きでしたから…!」

    二人して見つめ合う。どうにもこの空気に耐えられなかったのか、二人して笑みを浮かべる。

    京太郎「ははは、なんだかこれ似合わないな」

    「そうですね…。私達には不要かもしれません。…京太郎、これから私の姉弟で恋人になってくれませんか?」

    京太郎「じゃあ、改めまして。こちらこそよろしくお願いします、煌さん」

    後は何も言うことは無かった。言わずとも手を繋ぎ合わせ家路に至る──。

    41 :

    諦めたら終わり──気持ちをリセットして──。

    優希「って、そんな吹っ切れたら人生楽じゃないじぇ…」

    葛藤する優希。これは団体戦が始まるちょっと前のお話。合宿のあと、少しだけ暇があったため行きつけのタコス屋に足を伸ばしていた。

    優希「もぐもぐ…やっぱりここのタコスは絶品だじぇ。店長、おかわり!こういうときはやけ食いに限る!」

    優希はタコスを頬張りタコス屋を後にする。しばらく歩くと見慣れた胸がそこにあった。相手のことなどつゆ知らず、優希はおもむろに抱きつく。

    優希「のーどちゃん!」

    「きゃあ!誰ですか…ってこんなことをするのは玄さんと優希だけでしたね」

    優希「おっすのどちゃん、どこに行くんだじぇ?良かったらお供にどうだ?」

    「そうですね…では、お願いしましょうか。今日は私服を買いに来たんです。良かったら批評でもしてもらいますね」

    優希「まかせとけ!そう言えばのどちゃんの私服って前のめりぃとかいうやつだじぇ?」

    「いえ、マイノリティです。前のめりになってどうするんですか」

    優希「京太郎はたまに前のめりになるし…」

    「それは関係ありません!とりあえず行きますよ」

    その後、ゴスロリとか色々な服を見に行った二人であった。

    42 :

    「あ、原村さんと優希ちゃん。二人も買い物?」

    「はい、そういう宮永さんも…本ですか…。結構買い込んだように見受けられますが」

    優希「ふむふむ…『禁断の恋物語』『幼なじみと私』『愚弟日記』『ぼくとねぇさま』…?」

    「か、勝手に見ないでよぉ!…大会中はどうしても暇になる時があるからって部長が」

    「そうですね…、やはり団体戦は出番まで時間がありますからね。おすすめがあれば何か貸していただけますか?」  

    「う、うん。家にあるのを持ってくるよ…」

    勘の悪い私でも分かる…実は咲ちゃん気づいているの…?それでも、聞くのは怖い。私は奥手で臆病者だと自分で卑下した。

    優希「咲ちゃんもさっき来てれば、ふりふりの服着れたのに残念だじぇ」

    「私は良いかな…。あのメイド服でこりごりだよ」

    「サイズが合えば着て欲しい服が何着かあったのですが…」

    「ははは…(多分というか、十中八九胸だよね合わないの…)じゃ、じゃあ私は積み本何冊かあるからこれで帰るね」

    そそくさと帰る咲ちゃん。聞くなら今しか無いが、私はそれは出来なかった。後ろ姿を見ることしか──。

    それから私はのどちゃんと色々散策して、日が落ちてきたので別れた。

    夜になり、喧噪から離れる。道の脇は田んぼがあり、蛙がゲコリと一鳴き。

    優希「ゲコゲコ気楽に鳴くよなぁ…。私だって泣きたいじょ、こんな気持ちになるなんて、京太郎のバカヤロ──」

    京太郎「誰がバカだ、誰が」

    優希「じぇぇえ!京太郎、なんでお前…」

    京太郎「買い出しだよ。今週から大会なんだ、少しでも早めに準備しないとな。ほら、タコスの具材もあるぞ」

    優希「なんで…私は試合には出ないから必要ない!」

    はぁ…と一息ため息をつく京太郎。それが気に入らなかったらしく突っかかってしまう。

    優希「なんだそのため息は!気に食わないことがあれば言え!」

    京太郎「気に食わないことなんて一つもない。ただ…泣きたいなんて言ってさ、バカヤロって本人が居るのに言う奴を放っておけるか。お前がしょぼくれてちゃみんなが心配する、いつもの笑顔を見せろよ!あと…あえて言うが、…煌さんとのこと、俺は知っている。」

    その言葉は優希は紅潮させるに十分すぎた。知られたくない人に知られてしまっていたから──。

    43 = 42 :

    優希「あ、あぅ…」

    しどろもどろになる優希。おもむろに京太郎が手を頭に置き、くしゃくしゃ撫でる。

    京太郎「ありがとうな、こんな俺を好きになってくれて。麻雀部とは関係ないけど、俺は幸せ者だよ。だから、はっきりと言う。優希ごめん、俺はお前とは付き合えない」

    優希「あ…」

    止めどなく涙がこぼれる。完膚なきまでに私は敗北した。「お前とは付き合えない」つまりそれは…。

    優希「そうか…花田先輩…おめでとうだじぇ…。うん、うん、うん…」

    いつの間に涙は嬉し涙に。いつもの優希に戻ってきた。

    優希「なんだか清々しいじぇ!私は負けた、それだけの女だ!」

    京太郎「な、なんだか何時にも増してうるさく…」

    優希「うるさくなんてない!何でもかんでも突っ込んで来て…もうお前は犬だ!須賀犬だじぇ!」

    京太郎「ちょっ…柴犬みたいに言うなよ!」

    優希「ふん、これは決定事項だ!これから忠犬須賀公として買い出しとか頑張るんだな!じゃあな!」

    京太郎「おい、優希!」

    呼びかけに応じたわけではない。私の意思で立ち止まる。

    優希「京太郎、好きだったじぇ!でも忘れるな、これからも好きで居続けてやる!それが私、片岡優希だじぇ!」

    心は晴れやかに。もう迷うことはない。今は大会に専念するだけだから。

    45 :

    さげ

    47 :

    主です。
    第二部は次か次の次で最後です。
    見てる人居ないオナヌー創作かもだけど、
    一応書き上げます。

    48 :

    京太郎「おい、優希!…はぁ。煌さん、出てきても良いですよ」

    あぜ道の横からすっと現れる煌。

    「なんとかあの子も元気になりました、すばらです」

    京太郎「まぁ…ピエロ役にはなりましたがね…。それはそうと、優希の場所よく分かりましたね」

    「和に連絡して聞いたのですよ。今日は麻雀部もお休みでしたから、もしかしたら遊びに出掛けているのかも…と」

    京太郎「もし、優希が和達と遊んでなかったら?」

    「その時は近いうちに学校ででも声。かけてもらいました」

    京太郎「いやぁ~都合良く学外で会えて良かったなぁ~」

    色々と学校では不都合があるというものだ。もし部長の耳にでも入っていたら…それは大会後に潰えたわけだが。

    京太郎「さて、今日はもう終わり!大会もあるし、さっさと帰りましょう!」

    「そうですね…では失礼して」

    煌は買い物袋を一つ持とうとする…が、京太郎が制止する。

    京太郎「こんな重たい物は持たせられませんよ。ですが…煌さんの性格なら是が非でも持とうとしますよね。なら…これで妥協しましょう」

    そう言って、袋の片方だけほどく。その意図は容易く理解できた。

    「いけずというか、奥ゆかしいと言いますか…なんにせよすばらですよ」

    キュッと袋を持ち二人は夜道を歩いていく。そして、インターハイ予選が幕を開けたのであった───。

    49 :

    とりあえず二部+補完終わりです。
    三部は全国編~を書き溜めます。
    見てくれたら嬉しいです。


    1 2 次へ→ / 要望・削除依頼は掲示板へ / 管理情報はtwitterで / SS+一覧へ
    スレッド評価: スレッド評価について
    みんなの評価 :
    タグ : 追加: タグについて ※前スレ・次スレは、スレ番号だけ登録。駄スレにはタグつけず、スレ評価を。荒らしタグにはタグで対抗せず、タグ減点を。

    類似してるかもしれないスレッド


    トップメニューへ / →のくす牧場書庫について