私的良スレ書庫
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元スレ京太郎「わらう顔が見たいから」
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フードコートで昼食を済ませた俺たちは再びデパートの中を見て回ることにした。
宮永の試着に付き合ったり。
咲「ど、どうかな?」
京太郎「……可愛いな」
咲「かわっ!?」
店員「あら、彼女さんのご試着ですか?でしたら……」
咲「彼女じゃありませんっ!」
二人で試食をしたり。
京太郎「このウインナー美味いなー」
咲「だけど高すぎるかな」
京太郎「え、普通じゃね?」
咲「えっ?」
京太郎「えっ?」
ペットショップで動物を眺めたり。
咲「わぁ……」
京太郎「宮永ってなんとなく動物苦手そうなイメージだけど」
咲「確かに大きい犬とかはちょっと苦手かも」
京太郎「やっぱり?」
咲「でも子犬とかなら平気かな、あ!こっち来たこの子可愛い!」
こうしてデパート内のお店で楽しめそうな場所を粗方回り終えた俺たちが来たのは。
咲「ゲームセンター?」
京太郎「おう」
あまり来たことが無いのか宮永は物珍しそうに眺めている。
そんな宮永を連れていろいろなゲームを遊ぶ。
咲「か、勝てない……」
京太郎「はっはっは、今のところ負けなしだな」
咲「うううう、もう一回!もう一回勝負!」
京太郎「おう、良いぜ。何度でも受けて立つぜ」
シューティングゲームにレースゲーム、リズムゲームに格闘ゲーム。
様々な種類のゲームで対戦したがどれも友人達とそれなりに遊んでいる俺の圧勝。
俺が慣れていることよりも宮永がゲーム下手なのが大きい気もするけど。
まあ何にせよ楽しんでくれているみたいで何よりだ。
そんなことを思いながら硬化を取り出す為に財布に指を入れて小銭が無いことに気付いた。
京太郎「あー、小銭切れたからちょっと両替してくるわ」
咲「わかった」
京太郎「すぐ戻って来るからやりたいゲームでも探しといてくれ」
咲「はーい」
それだけ告げて俺は両替機の元へ向かうとすぐに両替を済ませて元居た場所に戻ってきた。
京太郎「……あれ?」
しかし戻った場所に宮永の姿が見当たらない。
少し辺りを見回してみたが見つからないのでどうやらかなり移動したようだ。
京太郎「そう言えばあいつ待ち合わせの時も道に迷ったとか言ってたよな」
嫌な予感に頭を抱えながら俺は宮永を探すことにした。
◆
咲「……あれ、私どっちから来たんだっけ」
面白そうなゲームを探しているうちによくわからないコーナーに来てしまった。
そう思った私はさっきの場所に戻ろうと思い、そして自分がどちらから来たのか分からなくなったことに気づいた。
咲「うぅ、須賀くん……どこぉ……」
ゲームセンターは音が大きくて一人で居るのは怖いかも。
うろうろと周りを見ながら歩いていると何かにぶつかる。
咲「きゃっ」
「ふらふらしてんじゃねえ、気をつけろ!」
咲「ごっ、ごめんなさい」
不機嫌そうなおじさんにぶつかってしまい慌てて謝罪する。
歩いているうちに何だか怖そうな人が増えてきて目が潤み始めた。
どうしよう……。そう思っていると不意に私を呼ぶ声が聞こえた。
京太郎「おい、宮永!」
◆
探すこと数分。パチンココーナーで宮永の後ろ姿を発見した。
京太郎「なんであんな所に居るんだ……」
迷子スキルの高さに呆れながらおどおどと歩いているその後ろ姿に向けて声をかける。
京太郎「おい、宮永!」
咲「!」
俺の声に反応した宮永はクルッとこちらを向いて俺の姿を確認したかと思うとこちらへ駆け寄って来た。
京太郎「お前な、もうちょっと……」
説教をしようと思った俺だったが宮永の顔を見たところで口から飛び出した台詞は途切れた。
宮永は今にも泣きそうな顔をしていたのだ。
きっと怖かったのだろう、迷子になってしまっただけで本人にはそんなつもりは毛頭なかっただろうし。
そう考えると宮永が可哀想で叱ることは出来ず、代わりに俺は優しく言葉をかけることにした。
京太郎「大丈夫か宮永?」
咲「……うん」
京太郎「ええと、とりあえず別の場所行くか」
咲「……うん」
不味い、すごく不味い。
宮永は俯いてしまい返事も首を縦に振るだけで会話にならない。
困ってしまった俺は一先ず昼食を取ったフードコートで休憩することにした。
だがやっぱり空気が重い。
時間も経ってそろそろ帰る頃合いだろう。
だけどこのまま、宮永が嫌な気持ちのまま帰るのは嫌だ。
折角宮永が休日俺に付き合ってくれたんだ。だからそんな宮永に嫌な気持ちで帰らせたくない。
そうは思うもののどうすれば良いかわからない。
何か良い考えは無いだろうか、何か宮永を喜ばせることが出来る……。
そこで頭のなかに一つの考えが閃いた。
京太郎「宮永、少しここに座って待っててくれるか?」
咲「え?……うん、良いけど」
宮永に断ってフードコートを出ると俺は思わず全力で駆け出した。
そして俺は急いで用事を済ませてフードコートに戻ってきた。
宮永は居なくなっていない。
それを確認して少し安堵し、これからすることに緊張しながら宮永の隣に座る。
京太郎「宮永」
咲「なに?」
京太郎「これ、俺からのプレゼント」
そう言って手に持った袋を差し出す。
少し照れくさくて思わず視線を背けてしまう。
咲「プレゼント……?ってこれってもしかして……」
宮永は俺から受け取った袋の中身を見て表情を一変させた。
咲「私の欲しかった本……」
京太郎「それくらいしか思いつかなくってさ」
咲「そんな!プレゼントなんてよかったのに……」
最初に本屋で宮永が欲しそうに見つめていた本。
俺はあれをプレゼントとして買ってきたのだった。
これで喜んでくれればと思い渡したが宮永は嬉しいと言うより申し訳無さそうな様子だ。
そんな宮永に笑いかける。
京太郎「俺は一日宮永に楽しませてもらったからさ、そのお礼ってことで」
咲「でも……」
京太郎「良いから良いから、受け取ってくれればそれで満足だからさ」
咲「須賀くん……」
京太郎「それじゃそろそろ帰ろうぜ」
そう言って俺が歩き出すと宮永も慌てて後ろを付いて来た。
宮永が喜んでくれたかはわからないしもしかしたら余計なお世話だったかもしれないけど、俺は自分のしたいことをしたから悔いは無い。
デパートを出て宮永と向き合う。
京太郎「じゃあまたな」
咲「うん、また」
別れの挨拶を交わした俺が宮永に背を向けて自宅への道に着こうとしたその時、宮永の声が俺を呼び止めた。
咲「須賀くんっ!」
京太郎「宮永……?」
咲「私……私、楽しかったよ!今日一日、須賀くんと遊んで楽しかった!」
そう言い放って後から恥ずかしくなったのか宮永は顔を赤らめると走り去っていく。
京太郎「……良かった、本当に良かった」
宮永の背中を見送りながら思わず口から零れたその言葉は、紛れも無く俺の本心だった。
◆
咲「ただいまーっ!」
自宅に帰るとちょうどお父さんと鉢合わせする。
お父さんは私の様子を見て怪訝な顔で問いかけてきた。
界「……何か良いことでも有ったか?」
咲「あっ……うん、ちょっとね」
そう言われて初めて自分の異常に気付く。
界「そーか……そいつは良かった。お前がそんな風に笑うの、何年ぶりだろーな」
咲「……」
界「お前も年頃の女の子なんだ。そーしててくれた方が俺も嬉しいよ」
咲「そうかな」
界「そうさ」
お父さんはそう言うとタバコに火を着けて自分の部屋へと去って行った。
そうして残された私は家事に取り掛かることにした。
一通り終えると自分で用意した夕食を一人で食べる。
お風呂から上がってもお父さんは部屋から出てくる様子が無いので扉越しに声をかける。
咲「お父さん、私もう自分の部屋に行くね。ご飯は置いてあるから」
界「おー」
お父さんにそれだけ告げた私は部屋に入るとベッドに倒れこんだ。
何だか一気に現実に引き戻された気がした。まるで今日の出来事が夢だったかのように。
そう、夢みたいに楽しかった。あんなに楽しかったのはいつぶりかな。
あの日以来、友達も楽しいこともずっと避けてきた。
周りの人達もそんな私に進んで関わろうとしなかったし私もそれで良いと思っていた。彼が現れるまでは。
拒絶されて尚態度を変えずに話しかけてきたのは彼が初めてだった。
戸惑っているうちに彼はどんどん私に近づいてきて、気付けば外に連れ出されていた。
友達。
彼とならなっても良いのかな。
もし心を開けたなら、もっと楽しいことがたくさん待っている気がする。
須賀くん、私は信じても……。
『勝ったからって調子に乗るんじゃないっ!』
乾いた音が鳴り響き頬に痛みが走る。
両目からは涙が溢れ、赤くなった頬を抑えながら後ずさる。
『まだ終わってない、さっさと卓に着きなさい』
怯えて震えながら逃げようとして背を向けた瞬間腕を掴まれる。
『どこに行くのっ』
痛みに喘ぎながら見上げた先に在るのは苛立ちを顕にした母の形相。
『言うことを聞きなさい、咲ッ!』
悲鳴が母をかき消した。
次いで現れるのは姉の顔。
『私はもうお前のお姉ちゃんじゃないんだ』
優しく微笑むその口から放たれた一言が心を引き裂く。
伸ばした手は届かず姉の姿も薄れゆく。
『将来の夢は』
背後で聞こえた声に心臓が跳ねる。
『水族館を作ること!』
慌てて振り向いた先では脳裏に焼き付いたあの日の光景が繰り返される。
咲「――ちゃんっ!!」
絶叫と共に目が覚める。どうやら眠っていたらしい。
上半身を起こして乱れた呼吸を整える。
昔何度も見た悪夢。久しぶりに見たがやっぱり慣れるものじゃない。
朝まではまだ時間があるのでもう一眠りすることにしたもののなかなか寝付けない。
結局私はその後一睡も出来ないまま朝を迎えた。
咲「行ってきます」
寝不足気味の目を擦って家を出る。
通い慣れた道を歩き中学校に登校する。
かなり早く教室に着いたので本を読んで始業を待つことにした。
読むのは昨日須賀くんが私に買ってくれた本だ。
表紙を眺めて思わず頬を緩ませている自分に気づき顔を振る。
幸い教室にはまだ誰も居ない。ほっと胸を撫で下ろすと私は本のページを捲った。
「なあ、最近アイツ付き合い悪くね」
「誰ー?」
「須賀だよ須賀」
人が増えてきた教室でクラスメイト達の会話が耳に入り、その中に混じった名前に思わず反応してしまう。
読書の集中力が途切れて近くの男子たちの会話に耳を傾ける。
「ああ、なんか最近あの感じ悪い子とつるんでるんだっけ?たしかみやな――」
「馬鹿、聞こえるだろ」
「悪い悪い」
その会話を聞いて私の中で何かがすっと冷えた。
私のせいで、須賀くんが……。
もし私といることが須賀くんを傷つけてしまうことに繋がるとしたら。
そうやってまた大切な物を失うくらいなら、大切になる前に手放した方がマシだ。
だけど、手放してしまったらもうあの楽しさを味わうことは無いかもしれない。
胸の内で二つの感情が渦巻き、気付けば私は駆け出してた。
◆
嫁田「よう京太郎」
京太郎「おっす」
学校の下駄箱で偶然出くわした嫁田と挨拶を交わし二人で教室に向かう。
その道中、嫁田は思い出したように俺に言った。
嫁田「そういえばお前、噂になってるぞ」
京太郎「噂?」
嫁田「ほら、宮永ってウチの中学じゃちょっとした有名人だからさ」
京太郎「あー」
確かにあの宮永と関係を持てばそうなるのかもしれない。
でもまあそんな噂は珍しいのを面白がってるだけですぐに飽きて収まるだろう。
そう考えた俺は噂のことは頭の片隅へと追いやり嫁田に昨日の事を話す。
嫁田「へえ、良い感じじゃねえか」
京太郎「ああ、このまま心を開いてくれれば良いんだけどな」
そんな話をして歩いていると目の前の曲がり角から飛び出してきた何かが避ける間も無く衝突する。
「きゃああっ」
不意を突かれて驚きながらも何とか受け止める。
尻餅をついたまま抱きとめた人物が無事か確認しようと覗き込む。
京太郎「……宮永?」
咲「須賀、くん……」
顔を上げた少女は先ほどまで嫁田と話していた宮永咲その人だった。
状況が飲み込めず絶句しているといつの間にか立ち上がった俺に向けて叫んだ。
咲「もう……もう私に関わらないでっ」
宮永はそう言い放つと俺の横を通りすぎて走り去ろうとする。
わけがわからないまま、それでも何とか宮永を止めようと振り向き手を伸ばした。
宮永の腕に俺の手が届こうとした瞬間、脳裏に放課後の出来事が浮かび伸ばした手が硬直する。
俺の手は宮永を止めることは出来ず、ただ走り去る宮永の背中を呆然と見つめるしか出来なかった。
嫁田「良い感じ……だったんじゃなかったか?」
京太郎「だったと思ったんだけどな」
嫁田に聞かれてぼんやりと返事をする。
昨日の宮永からは考えられない行動に戸惑いを隠せない。
嫁田「で、どうするんだ?」
京太郎「どうって……」
俺に向けて不敵な笑みを浮かべながら嫁田が更に問う。
その問いかけで働いて居なかった頭が始動する。
俺はどうすればいい?
宮永は泣いていた。
だったらどうするか何て決まっている。
京太郎「アイツのところに行ってくる」
嫁田「じゃあ鞄寄越せ、持って行ってやる」
京太郎「サンキュ!」
俺は嫁田に鞄を渡すと宮永の後を追って駆け出した。
行くべき場所は分かっている、放課後に宮永と話したあの木陰だ。
まっすぐに走って行くと予想通り宮永はそこに座り込んで居た。
姿を確認して足を止めてゆっくりと歩み寄る。
京太郎「宮永」
咲「……来ないで」
京太郎「嫌だ」
咲「来ないでよっ!」
悲痛な叫びがぶつけられる。
だけど俺は歩みを止めず宮永の正面に立った。
京太郎「どうしてだ、何があった」
そしてまっすぐに問う。
京太郎「言ってくれなきゃ、わかんないだろ」
恐る恐る顔を上げた宮永と目が合う。
宮永はすぐに視線を逸らして再び俯くと呟いた。
咲「私のせいで、須賀くんが傷つくことになるなら、友達になんてならないほうがいい……っ」
京太郎「俺が傷つく?どうしてそんなこと」
咲「だって、噂でっ」
泣きながら訴える宮永の髪をくしゃっと撫でて笑う。
京太郎「バーカ、ちょっと噂されたくらいで傷ついたりしねえよ」
咲「でも……」
京太郎「それにお前と友達になろうとしてんのは俺だ。それで何か言われたって俺のせいで、お前のせいにはならねえって」
そう言うと宮永は今まで以上に泣いた。
俺はどうすれば良いかわからず、ただ隣に座って背中をさすってやることしか出来なかった。
宮永は泣きながら「無くすのが怖い」とか「お姉ちゃんみたいに居なくなっちゃう」とかそんなようなことを言っていた。
どうも脈絡が無くて要領を得なかったが過去に宮永に何かが有ってそれが今も宮永を縛ってるということは何となくわかった。
ようやく泣き止んだ宮永にハンカチを渡して言う。
京太郎「ほら、酷い顔だぞ」
咲「ありがと……」
京太郎「お前に何が有ったかとかはわかんないけどさ、俺は居なくなったりしない」
咲「……」
京太郎「それじゃ、駄目か?」
咲「……ううん、駄目じゃない」
京太郎「ってことは」
咲「私の友達に、なってくれますか……?」
京太郎「ああ、勿論」
そう答えると宮永は泣き腫らした顔で微笑んでくれた。
宮永は笑顔の裏にまだ暗い物を抱えているのだろう。
これで全てが解決出来たなんて思わないし俺一人にどうにか出来るとも思わない。
だけどこの笑顔は確かにここに在る。だから俺は俺なりにそれを守ろう。
そしていつか宮永が自分の問題と折り合いを付けることが出来た時、俺の想いを伝えよう。
そう考えて俺は自分の気持ちを心の奥底にしまうことにした。今は宮永の友達で居る為に。
咲「……ちゃん」
京太郎「ん?」
咲「あっ、いや……別になんでも」
京太郎「良いから言えって」
咲「その、京ちゃん……って呼んじゃ、駄目かな?」
京太郎「お前がそう呼びたいなら良いぞ」
咲「ありがと」
京太郎「その代わり、俺も宮永のこと下の名前で呼ばせてくれよ」
咲「う、うん!」
京太郎「それじゃあよろしくな、咲!」
今日はここまでー
嫁田君もとい高久田君は本名判明しましたがこのSSでは嫁田君のままで
次かその次の投下辺りで完結すると思うのでもう少しお付き合い下さい
嫁田君もとい高久田君は本名判明しましたがこのSSでは嫁田君のままで
次かその次の投下辺りで完結すると思うのでもう少しお付き合い下さい
この手のすれ違いネタは数日間ひきずる感じだと思ってたから当日中に解決するのは意外だった
そして嫁田(高久田)君の信頼できる友達感よ
そして嫁田(高久田)君の信頼できる友達感よ
こんな可愛い咲ちゃんがリンシャンマシーンになるわけがないよね!
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