私的良スレ書庫
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元スレ一夏「祈るがいい」
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千冬「という事で始まった。このSSだが」
クラリッサ「おお、これは次回予告とゆうやつだな」
千冬「次回は青春ラブコメディーでいこうと思う」
クラリッサ「ラブコメか」
千冬「ラブコメだ」
クラリッサ「ラブよりも先にシリアスが問題じゃないか」
千冬「そうだな、特に箒が考え過ぎだな」
クラリッサ「考え過ぎて倒れるぞ」
千冬「私も結構考えてるんだぞ?」
クラリッサ「張り合わなくていい」
クラリッサ「とにかく予告だ。予告」
千冬「分かった分かった。そうせかすな」
千冬「次回」
ーーーーー
Session#2
ワルツ・フォー・スケアクロー
ーーーーー
千冬「SSを見るときは部屋を明るくして、離れて見てくれ」
クラリッサ「このSS、結構地の文が多いからな」
千冬「そうだな、成層圏ぐらい」
クラリッサ「おいおい…………」
お久しぶりです。一回目の投稿から1ヶ月もかかってしまいました。
本当に時間が出来たときに作ってるので投稿速度は遅いです。
次回は今回入らなかった戦闘パートとその後を“地の文”で長々と書きます。ですので、かなり読みにくくなると思います。
すでに読みにくかったらすいません
いい感じの中2感
設定もちゃんとしてそうな感じがしていいですね
設定もちゃんとしてそうな感じがしていいですね
If I only had a Brain
If I only……
had a……… Brain………
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Session#2
ワルツ・フォー・スケアクロー
ーーーーー
カタパルトから勢いよく射出されたヴィンセントが舞い上がる。
空高く上がり、最高点に達して自由落下を始める。重力に従って頭から落下していき、加速する。そして、地表に激突するほんの少し手前で体をひらりと反転させ、スラスターを吹かして見事に着地した。
「なかなかの登場の仕方ですわね、曲芸でも習っていらしたの?」
一夏は、視線をゆっくりと地面から、その先で待ちくたびれているであろうセシリアへと向けた。
「あら、そのスーツ。とてもお似合いですわよ」
セシリアはアリーナの地表より少し上で滞空しながら大袈裟な拍手をして言った。
彼女はまだ武器を手に持っていない。それは、この先武器を展開する時間はいくらでもあるという余裕の表れである。
セシリアの専用機
それは鮮やかな蒼をしている
白と黒が織り交ぜられた機体
ブルーティアーズ
英国の第三世代兵装実装試験型IS
背に従えた四枚の特徴的なフィン・アーマー
その姿は、まるで王国騎士のような気高さを感じさせる
「にしても、淑女(レディー)をこんなにも待たせるなんて余程の礼儀知らずですわね」
セシリアは腰に左手を当てて、右手を相手の方へ突き出す。これは彼女のお決まりのポーズであり、自らの威厳や尊厳をわざとらしく見せつけているようだった。
「お手並み拝見といこう」
イスに深々と座り込んだ千冬は、この状況を楽しんでいるかのように言った。その右手にはさっき淹れた熱々のコーヒーを持って、足を交差させて頬杖をついている。
その姿は、いかにも高みの見物と言えるものだった。
彼女の視線の先、モニターを眺めるその表情に、不安の色らしきものは一切伺えない。むしろ逆に、分かりやすい程に余裕が見える
「織斑先生、本当によかったんですか?」
千冬の予想外の態度に、真耶は何かしらの不安を覚えた。
御世辞にも今の千冬の態度は、イギリスを代表する専用機を持っている候補生と、ISに関してほぼ素人の弟が一戦交えるのを見守るものとは到底言えないものだった
「問題ないさ」
「理由は何ですか」
真耶が次の言葉を発するよりも速く、箒が真剣な顔で、千冬に質問を投げかけた
「理由か。そうだな、あえて言うなら………」
その質問に千冬は、頬杖をついていた左手を顎に当てて、上を見上げてしばらく考え込んだ。そして、思いついたように箒の方を振り向き言った
「野生の勘、だろうな」
「「野生の勘?」」
千冬の突拍子もない答えに二人は、思わず、全く同時に、オウム返しに聞き返した。勘とだけなら分からなくもないが、野生の勘とあえて言った意味が分からなかった
「あいつの感覚はかなり鋭敏でな。そう、まるで手負いの獣のようにな」
「手負いの、獣……」
「と言っても、私にもよく分かってないんだがな」
その言葉には、裏も表もなかった。そうとしか言いようがなかった。
千冬は、少し溜め息を吐きながら、開きなおったように言った
「これはいわゆる女の第六感、というやつでな」
「それって……」
「そうだ。これも勘だ」
何か言おうにもその気も起きない程、あっさりと千冬は言った
本当は、彼女は一夏を信じてみたかったのだ
あの日から、変わってしまった弟を
「でも、逃げずに来たことは褒めて差し上げますわ」
鼻を鳴らし、踏ん反り返るセシリア
「最後のチャンスを上げますわ。もちろん、降参するチャンスを」
「まあ、このままいけば私が一方的な勝利を得るのは自明の理」
「ですから、このオーディエンス達の前で惨めな姿を晒すよりも」
「今、ここで。私に対する数々の非礼を謝るというのなら、許してあげてもよくってよ」
それは、目の前の相手に話し掛けている、というりよりも、ただ一方的に喋っているだけだった。相手からの応答はなかった。
一夏はセシリアの方を向いてはいたが、もはや見ていないのと変わりはなかった。それ程までに一夏にとって、セシリアのプライドの問題云々の話はどうでもいいものだった。彼は、ここにそんな事を聞きに来たのではない
「あくまで答えないつもりですのね……よろしいですわ」
セシリアは左手を肩の高さまで上げ、真横に腕を突き出した。そこから一瞬爆発的に光った左手には、二メートルを超える長大な狙撃銃、六七口径特殊レーザーライフル『スターライトmk?』が現れた。
「ならば、その体に存分に御教えして差し上げますわ」
展開されたスターライトmk?にはすでにマガジンが接続されていて、セーフティーも解除されている。一秒と掛からずに展開し、射撃可能まで完了していた。
セシリアはその長い砲身をゆっくりと一夏へと突き出し、目を笑みに細める。
ー警戒
敵IS操縦者の左目が射撃モードに移行ー
Iハイパーセンサーが捉えた情報が一夏の目の前に表示される。
アリーナ・ステージの直径は二百メートル。発射から到達までの予測時間は1秒とかからない。
「用意はよろしくて?」
ー警告
敵ISが射撃体勢に移行
トリガー確認 初弾エネルギー装填ー
スターライトmk?の銃口が光を発した。
発射されたレーザーが閃光となって、一瞬の内に一夏の顔のすぐそばを通り過ぎた。それが後ろに着弾して、砂ぼこりが上がる。それは、威嚇であると同時に、自分の敵意と戦意を誇示するための行動だった。
ただ、それだけだった。
「あら、外してしまいましたわ」
セシリアはスコープを覗くのを止め、ニッコリと笑った。
状況は、彼女の方が完全に有利だった。こちらは銃を手に持っていて、いつでも撃てるように構えている。それに対して一夏は銃を握ってもおらず、両手は自然に降ろしたままである。
一夏は、全く何の反応も見せていなかった。先程、自分の真横をレーザーが通り過ぎた時も微動だにせず、表情を変えず、眉の一つでさえ動かさなかった。それは、今自分が銃を突き付けられている事など、まるで実感がないようだった。
それがセシリアには、こちらのする事は全て見通されていたように思えた。
侮られている、代表候補生まで登り詰めた自分が。その事が腹立たしく、軽く舌打ちをした。そして、今度は狙いを相手へと向け、しっかりと銃口を構え、スコープを覗き込み、ゆっくりとトリガーに指を掛けた
「そう、でしたら…………お別れですわっ!」
その言葉が終わるのとほぼ同時に、セシリアはそのトリガーを引いた。
ライフルの銃口からレーザーが発射され、目標の体を目掛けて一秒と掛からずに飛んでいった。そのレーザーを、一夏は左肩を少し傾けただけの、最小限の動きでかわした。その時彼は、かわした動作の間に右手をセシリアへと突き出し、右手に武器を呼び出した。
現れたのは四十五口径IS用ハンドガン。セーフティーはすでに外れている。そして間髪いれずに、次々にその銃を発砲した。
「ッ!?」
それは一瞬の出来事だった。スコープを覗き込んだセシリアが、自分の攻撃をよけられた事を認識出来るよりも速かった。
ブルーティアーズに弾丸が次々に叩き込まれる。着弾により、ブルーティアーズのシールドエネルギーが削られる。だが、この銃はISの使う武器の中でもさほど威力は高くない。なので、シールドエネルギーは100も減っていなかった。
三発の銃弾を食らったセシリアは、すぐさまに回避行動をとった。
いくら一発一発の威力が低いとはいえ、素直に食らい続けてやる程彼女はお人好しではない。
それに対し一夏は、攻撃の手を休めず、撃ちまくる。セシリアは、その弾丸を踊るように、紙一重で次々とかわしていく。
ライフルを構える隙もない銃撃が続く。その中で、彼女は待っていた。この状況を一転させ、自らが優勢に踊り出るチャンスを。
「お行きなさい、ブルーティアーズ!」
セシリアが右腕を振り下ろした。その命令とともに、背中に装備されていた四枚のフィンアーマーが稼働し始めた。
彼女の機体、イギリス製殊装備搭載型実戦投入第一号の名前の由来となった自立機動兵器『ブルーティアーズ』が分離し、それぞれが目標の四方へと動き出す。そのタイミングは、一夏が発砲していた銃が、弾切れを起こしたのとほぼ同時だった
形勢は完全に逆転した。命令を受けた四機のビットたちが、多角的な直線機動を描いて一夏の四方を取り囲む。
この時一夏は、まだマガジンを交換し終えていなかった。
一夏のリロード動作やマガジンの呼び出しは決して遅いものではなかった。むしろ速すぎると言ってもいい程のものだった。だがそれよりも、ブルーティアーズが展開するのが速かったのは、銃を使っている限り必ず訪れるリロード。そのほんの僅かなタイムラグを、セシリアが完璧なタイミングで狙ったからだった。
やはり代表候補生の名は伊達ではなく、かなりの場数は踏んできてはいる。だが、まだ足りないものがあった。
一夏がリロードを終え、銃を構えた瞬間、目の前にはすでに射撃可能な状態のビットがあった。
ビットの先端が光を発した。銃口から放たれた光が、一夏の肩を撃ち抜き、成形途中だった右肩の装甲を歪ませる。その直後、着弾により発生した衝撃に、僅かに体全体が後ろへと持っていかれる。そこから体勢を整える隙もなく、今度は背中にレーザーが着弾した。
「もらいましたわ!」
セシリアは、僅かにつんのめりそうになった無防備な状態の一夏に、ライフルの銃口を向けてトリガーを引く。
かわしようのないレーザーが、一夏の胴体に着弾した。そこは装甲のない開けた部分だったので、絶対防御が自動で展開し、操縦者を守るべくエネルギーを大幅に消費する。そして一夏は、後ろへと大きく吹き飛ばされ、そのまま地面に倒れた。
セシリアは、先程の攻撃により倒れている相手の状態を確認するために高度を落とした。そして、ライフルを構えながら、少しずつ、相手の様子を注視ながら接近する。
今倒れている一夏の右手に銃はない、さっきの攻撃の衝撃で右手を離れていた。それでも、警戒は怠らない。もしもの時の為に、ビットをいつでも撃てるように展開している。
そうまでしても、相手が戦闘不能に陥ったか否かを確認しなければならない。
張り詰めた緊張感の中、セシリアはトリガーに指を掛け直し、小さく深呼吸をした。そして、一夏の眼前に銃口を突き付けた。
相手からの反応はない。前髪が目にかかっていて覚醒しているのか、気絶しているかどうか分からない。
次はハイパーセンサーを使い様子を伺う。そして、知覚された普段なら分からないような僅かな呼吸音、そこにブレはなくただの呼吸をしているだけ。その事から、一夏が不意打ちを狙って倒れているのではなく、本当に倒れている事が分かった。
「閉幕(フィナーレ)は、意外とあっけないものでしたわね………」
セシリアは、倒れたまま全く動かない一夏を見つめながら言った。それには落胆のようなものが含まれていた。そして、構えたライフルを拡張領域(バスロット)へとしまい、名残り惜しそうにBピットへと進んでいった
ゴトン、と何か重い塊が落ちた音がした。
それはセシリアがBピットへと戻る途中、一夏の周りに展開させていたビットを戻している時だった。
彼女は、その音源を確認するべく後ろを見た
そこには一夏がいた。
前に見た時との違いといえば、さっきの攻撃が何の事は無かったかのように、そこに立っている、という事だろう。
「フフッ………アハハッ………」
その光景に、セシリアの口から笑みがこぼれる。もちろんそれは、一夏が立ち上がった事に対する驚愕ではなく、立ち上がってくれた事を喜ぶ、歓喜に近いものだった
「そうですわよね、あのようなラストでは締まりがありませんものね」
セシリアの言うあのようなラストとは、ビットによるレーザー攻撃によって体勢を崩した隙に手元のライフルで的確に仕留められる、といった呆気ない戦いの事だった。
自分を散々侮辱しておいて、たったそれだけで終わらせようなどと、彼女は考えていない
「何よりちっとも面白くありませんわ。あの程度では」
セシリアは、もう一度ライフルを左手に呼び出した。
「用意は………聞くまでもありませんわね」
一夏は、何も反応せず、悠然とした佇まいで歩き始めた。
「なら、始めましょう」
セシリアが右腕を横にかざし、元へ戻ろうとしていた四機のビットが方向を一夏へと変えた。
「さあ、踊りなさい。私、セシリア・オルコットと、ブルーティアーズの奏でる円舞曲(ワルツ)で!」
右腕を一夏へと突き出す。その命令にビットが一斉に動き始めた。
その時だった、一夏の後方に落ちていた物が突然火を噴いた。それは一瞬光ったかと思った直後、何かに引火したように炎上、爆発した。
地響きのような振動がアリーナを震わせ、爆風はビットを押し返した。黒く重い煙が上昇していき、アリーナの遮断シールドの天井の高さまで達していく。
セシリアは爆風に押されてバランスを崩したが、どうにか体勢を戻していた。だが再び一夏のいた方向を見た時、彼の姿はすでになかった。あの距離にいて、あの爆発に巻き込まれたのだから無事なはずはない、と誰もが思った。だが彼女はそう思っていられなかった。
こうゆう事態を誰が想定出来ただろう、誰もが思いもしなかった事態が今、目の前で起きている。
何が起きたのかをほとんど認識できず、セシリアは唯々困惑した
「一夏っ!」
モニターを見つめていた箒が思わず叫んだ。先程一夏が動かなくなった時はまだ、平静を保っていられた彼女だが、今回は違う。
ISによる攻撃ではなく、ヴィンセントに装備されていた物による爆発、それも見て分かる程の大爆発が起きたからだ。
「織斑、先生……」
真耶はあまりの非常事態に身を竦ませていた。
もしかしてこの爆発は自分が招いたのかもしれない、自分がもっとヴィンセントをしっかり調べていればこんな事にはならなかった、そう思えたからだ。そして真耶は指示を求めるというよりも、懺悔するように恐る恐る千冬の方を向いた
千冬は、ただモニターを見ていた。その表情は誰もが知っている。
ブリュンヒルデと恐れられたあの織斑千冬が、戦いの時に見せる、敵を狙う時の眼だった。もはや彼女に真耶の言葉は聞こえていなかった、弟の無事を祈る事などしない。
そんな事よりも、彼女には一つの確信が自分の中にあったからだ。
馬鹿を言え、私の弟は無事だ。今に何事もなかったかのように現れるはずだ、千冬にはそう感じられた。
その理由は、自分には全く分からなかったが、その確信は正しいものだった。
千冬の様子を見た箒は、再びモニターを注視する。
一夏の無事をもう一度この目で確認する為に。
爆発の熱気と渦巻く黒煙の向こうに、それらしき人影があった。それは、先程とは全く違った姿で、そこに悠然と立っていた
それは、黒かった
既存のISとは全く異なった細身の機体
その薄くなった装甲を補うように、周りに展開というよりも、コートのように羽織ったかのような追加装甲
右手に持った長銃身のカスタマイズされた巨大な拳銃
その全てが黒だった
アリーナを覆った黒煙がゆっくりと晴れていく。
一夏は、セシリアの方をゆっくりと見上げた。彼女は、その男から眼が離せなかった。
一夏とセシリアの距離はかなり開いている。普通に見れば、一夏がただセシリアの方を見ているだけ。だが、それがセシリアには、こちらを見ているのではなく、見られている今も、自分の中を全て見透かされているように思えた。
セシリアは、そのまま眼をそらす事も出来ず、まるで魅入られたように、じっと一夏を見つめていた。
Aピットでその光景を見ている千冬、真耶、箒の三人もモニターに映った一夏の姿を見つめていた。
その、長く伸びた黒髪に全身黒づくめの姿の男は、なにか通常の人間とは別の存在感を持っているように思えた。四人は、その男には風貌とは裏腹な、何か神聖なものを見る時のような感覚を覚えた。
「オズの魔法使いの、かかしを知っているか」
一夏は、全く表情を変えないまま言葉を口にした。
「かかしの頭は、藁でできていた。かかしは、脳が欲しい、それさえあれば、自分はもっと上手く踊れる、とそれを嘆いた」
「そして、自分が脳を貰えるように、祈りを捧げた」
セシリアには、何を言っているのか分からなかった。だが次の瞬間、彼女には一夏が、ほんのわずかに笑んだようにも見えた。
「祈るがいい」
言葉が終わってからの一瞬、そのほんのわずか一瞬の間に一夏は、右手の銃をセシリアへと構えて、トリガーを引いていた。
容赦無い銃撃が、次々にブルーティアーズを撃ち抜く。セシリアはそれをよける事が出来ずに、展開された装甲を削られていく事しか出来なかった。
肩の装甲が弾け飛び、絶対防御によりシールドエネルギーが減少していき、ブルーティアーズからのダメージ報告とアラートが絶え間なく鳴り響き、左手に持ったライフルが破壊された。
セシリアは、その銃撃の中で回避行動をとろうとしたが、回避先まで読まれているかのような銃撃に回避行動にすらなりはしなかった。
威力も弾速も狙いも、その何もかもが先程の攻撃とは違っている。そして、装填されていた弾丸の一発が、セシリアの頭部へと命中した。そして、一夏の持った銃が、同時にその残弾の底をついた。
絶対防御によるバリアのおかげで、何とか流血するには至らなかった。だが、被弾の衝撃で少し意識が朦朧とする。
「くっ………行きなさい!ブルーティアーズ!」
気絶などしていられない。このままでは一方的に撃たれるだけになってしまう。セシリアは、薄れそうになる意識を無理矢理覚醒させる。そして、再び訪れた好機を逃さまいと反撃に出る。だが、それは少し遅かった。
命令を受けたビット四機が、さっきとは全く別の多角的直線機動で目標へと動き出す。だが、それはすぐに終わった。
瞬く間に一機、二機、とセシリアを離れたビットが、激しい銃撃を食らい、なす術なく破壊されていく。そして、最後の四機目も間も無く破壊された。
「ブルーティアーズが……!」
それは、セシリアが意識を覚醒させようとした事が災いした。それにより生まれた隙が、唯一の好機であるリロードの一瞬を逃す結果となり、一夏の攻撃を許したのだ。
破壊されたビットの破片が、煙を上げてアリーナの地面に堕ちてゆく。
セシリアは、その光景を息を呑んで、ただ見ていた。そして、目の前の男を倒す方法を見出す為に、新たな作戦に打って出る。
「インターセプター!」
手の中で光を発する粒子が、セシリアの言葉により徐々に集束され、光が武器として構成された。
呼び出したのは近接戦用のショートブレード、インターセプター。それは、主に射撃戦を主体とするセシリアが、滅多に呼び出して使う事のない武器。
ライフルに続き四機のブルーティアーズまでも破壊されたセシリアは、近接戦闘をしなければならなかった。
「はあああっ!」
ブレードの切っ先を一夏へと向け、スラスターによる急加速で、一気に突貫する。
それに対し一夏は、冷静にセシリアへ発砲する。
二十メートル以上開いた間合いを一気に詰める程の急加速。そして、無理矢理機動を変えて行う回避のGに耐えながら。
セシリアは、一夏の懐へ深く潜り込んだ
セシリアは、勢いを殺さぬまま突きを放つ。それを一夏は、真横へと飛び退きかわす。そしてセシリアへ、零距離で銃を突き付け、トリガーに指を掛ける。
「まだッ……まだあぁ!」
セシリアは、かわされた瞬間にスラスターによる強引な方向転換で、もう一度突きを繰り出した。それによる身体への負担は大きい。だがその分、一夏の意表を突くには十分過ぎた。
セシリアの肩を弾丸が掠めて通り過ぎ、ブレードの切っ先が一夏の胴体を捉えた。斬撃によるダメージで、一夏のシールドバリアーが絶対防御を使い、エネルギーが大幅に消費される。そこからセシリアは、二撃、三撃とブレードを振り、一気に畳み掛ける
今のセシリアは、何かが違う、どうかしてしまったようだ、自分でもそれがはっきりと分かった。自分の勝利を確信している中で戦い続けてきた彼女の、その一挙一動が、純粋に、目の前の相手を倒す事を目的としている。
不思議と胸が、高鳴りを始めていた。それは、彼女が長い間忘れていた感覚だった。
もはや相手が男であろうが、女であろうが関係ない。
自分はただ、この勝負に勝利(かち)たい
それだけを、心から願う
セシリアは、右、左、突きと斬撃を繰り出す。一夏は、それをするりするりとかわしていく。そして、三発目に突き出されたブレードを受け流し、無防備になったセシリアの背中にまわし蹴りを叩き込んだ。セシリアは立っている事が出来ず、そのまま吹き飛ばされた。
「もらい……ましたわ……ッ!」
その勢いを利用して、大きく吹き飛ばされたセシリアが、宙を舞いながらニヤリと笑う。そして、彼女の腰部から広がるスカート状のアーマー。その突起の二つが外れて動いた。
一夏は、ひとまず距離をおこうと後ろへと飛び退こうとする。だがそれは間に合わない。
しかも、外れて動いたのは残された二つのビット、さっき堕とされたレーザー射撃を行うビットではなく、レーザー兵装ばかりのブルーティアーズに唯一搭載された実弾兵装、弾道型(ミサイル)だった。
発射されたミサイルが着弾して、赤を超えた白い爆発と光に一夏は包まれた。そして、さっきの爆発までとはいかない程の黒煙が上がる
「お生憎様……ブルーティアーズは、六機ありましてよ」
セシリアは、その光景を見ながら、ゆっくりと立ち上がり言った。その表情は、どこか嬉しそうだった。
これが彼女の狙い、この時の為に温存しておいた隠し弾。彼女は、半ばヤケクソに突貫しただけではなかった。唯一残されたこの射撃武器を無駄にはできない。だからこそ、確実に相手に命中させる為に、相手の懐へと潜り込み、相手の隙を誘い、必ず命中する零距離で使う必要があった。
我ながら大胆かつ繊細な作戦。それにより、まわし蹴りをもらった事はとても痛かったが、これで勝利にまた一歩近づいた。
だが、セシリアと一夏の決闘は、まだ終わってはいない。勝利を確信するにはまだ速く、決着を告げるブザーがアリーナに鳴り響いていない以上、最後まで油断してはいけない。それは彼女が痛すぎる程、この決闘で思い知らされた。
セシリアは、二機のビットに弾頭を再装填し、インターセプターを握り直した。そして、立ち込める黒煙へと切っ先を向けて構える
爆発による黒煙が晴れた時、そこに一夏の姿はなかった。
セシリアは急いで辺りを確認したが、ヴィンセント自体の影も形も見当たらなかった。まるで煙と一緒に風に吹かれ、何処かへ消えてしまったかのようだった。
呆然としそうになったセシリアは、まだ見ていない方向がある事を思い出した。左右を見ていないのなら、残された場所は二つしかない。自分の後ろと、もう一つ、それはーーー
セシリアが見上げた先に、立ち昇る黒煙に紛れていた一夏が姿を現わした。セシリアがそれに気付いたのと同時に、一夏はすでに狙いを定めていた銃を発砲した。
一発がインターセプターを弾き飛ばし、残りはスカート状のアーマーに次々に叩き込まれた。残った二機のビットが破壊され、片方の弾頭に弾頭が命中し、爆発した。そして、無力化されたセシリアの眼前に、少なくとも五十口径はある銃口が突き付けられていた。
その時、決着を告げるブザーが鳴り響いた
『制限時間終了』
『シールドエネルギー残量により』
『勝者』
『セシリア・オルコット』
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