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元スレ上条「俺達は!」上条・一方「「負けない!!」」
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まあ福岡だから気にするな
ホント、これだから千b…福岡なんだよ
ホント、これだから千b…福岡なんだよ
まあ福岡だから気にするな
ホント、これだから千b…福岡なんだよ
ホント、これだから千b…福岡なんだよ
今、ずっと前のスレから読んでました。
面白い!
キレイな一方さんもいいけど、垣根さんも貫禄たっぷりの悪役だね!
この2人が対決する時が今から楽しみなんだよ!
面白い!
キレイな一方さんもいいけど、垣根さんも貫禄たっぷりの悪役だね!
この2人が対決する時が今から楽しみなんだよ!
1位の一方通行と無能力の佐天さんは何気に面白い組み合わせだな
よし!!ここでデカイ釣り針を仕掛けるぜ!!!!!
佐天通行いらないってか佐天のよさがわからない、これなら欠陥通行のほうがいいような……
佐天通行いらないってか佐天のよさがわからない、これなら欠陥通行のほうがいいような……
佐天通行いらないってか佐天のよさがわからない、これなら座標通行のほうがいいような……
原作読んだこと無くアニメしか見てないから座標ってのがなんなのかさっぱり分からん
賛否あるみたいだけど作者はあまり読者の意見に振り回されず書きたいものを
書いた方がいい
読者のわがままに振り回されてエターはマジ勘弁だから
書いた方がいい
読者のわがままに振り回されてエターはマジ勘弁だから
――――どこからか、物音がした。
「………………ン」
朝、というには少し遅い――しかし昼というにも少し早い――そんな時間に、少年は目を覚ました。
ぼんやりとした頭で、彼は起き上がって周りを見た。
先程の物音は何だろうか?
そう思いながら、少年はベッドから床に足を着ける。
この部屋には他に誰もいないはずだ。
しかし決して小さくはない音は、確かに少年のいるこの部屋からした。
(……まさか、泥棒か?)
あまり考えられない可能性だ、と思う。
何せ自分の住むこの『街』の住民の八割近くは、学生なのだから。
じゃ、何だ? と少年は唸りながらも歩き始め――――
「…………ンだよ、オマエかよ」
直後、犯人を見つけた。
その視線の先には、一匹の三毛猫が居た。
その側で、立てて置いておいた掃除機が倒れているところから見るに、
先程の音の正体はこの猫が掃除機を倒したものか何かだろう。
そいつは少年の姿を見た途端に、『旦那ァ! メシはまだですかい!』と元気な様子で跳ねてきた。
「………………ン」
朝、というには少し遅い――しかし昼というにも少し早い――そんな時間に、少年は目を覚ました。
ぼんやりとした頭で、彼は起き上がって周りを見た。
先程の物音は何だろうか?
そう思いながら、少年はベッドから床に足を着ける。
この部屋には他に誰もいないはずだ。
しかし決して小さくはない音は、確かに少年のいるこの部屋からした。
(……まさか、泥棒か?)
あまり考えられない可能性だ、と思う。
何せ自分の住むこの『街』の住民の八割近くは、学生なのだから。
じゃ、何だ? と少年は唸りながらも歩き始め――――
「…………ンだよ、オマエかよ」
直後、犯人を見つけた。
その視線の先には、一匹の三毛猫が居た。
その側で、立てて置いておいた掃除機が倒れているところから見るに、
先程の音の正体はこの猫が掃除機を倒したものか何かだろう。
そいつは少年の姿を見た途端に、『旦那ァ! メシはまだですかい!』と元気な様子で跳ねてきた。
少年はそんな猫に笑いかけると、
「オマエは朝から元気だなァ、スフィンクス」
スフィンクスと呼ばれた三毛猫は、『そりゃあもう!! だからメシを!』とでも言いたげに擦り寄る。
少年―――― 一方通行(アクセラレータ)は、そんな三毛猫のお腹の事情を知ってか知らずか、
「ま、イイ目覚ましにゃなったがな」
と言って、台所に自分と猫の食事を用意しに向かう。
八月二十八日。
この日から三日間、一方通行は隣人の上条当麻から先程の猫――スフィンクスを預かる事になっていた。
正確には、前日の二十七日からなのだが、まぁ細かい話は止しとしよう。
学園都市。
昨日まで上条とその居候が居た場所であり、一方通行と三毛猫が現在居る場所でもある。
東京都の一部をくり抜いたように存在するこの街に、普段彼らは住んでいる。
一度住むとそう簡単にはこの街から出られないものなのだが、
たまに例外的に『外』に出してもらえる事もある。
そんな例外として、上条と居候のインデックスは昨日から海に行っている。
どういう事情で行ったのかは、語れば長い事間違いなしなので省くとしよう。
とにかくまぁ、海に行く事になった上条達だったのだが、
ペットは連れていけないとの事で、一方通行はこの猫の世話を頼まれた訳である。
「オマエは朝から元気だなァ、スフィンクス」
スフィンクスと呼ばれた三毛猫は、『そりゃあもう!! だからメシを!』とでも言いたげに擦り寄る。
少年―――― 一方通行(アクセラレータ)は、そんな三毛猫のお腹の事情を知ってか知らずか、
「ま、イイ目覚ましにゃなったがな」
と言って、台所に自分と猫の食事を用意しに向かう。
八月二十八日。
この日から三日間、一方通行は隣人の上条当麻から先程の猫――スフィンクスを預かる事になっていた。
正確には、前日の二十七日からなのだが、まぁ細かい話は止しとしよう。
学園都市。
昨日まで上条とその居候が居た場所であり、一方通行と三毛猫が現在居る場所でもある。
東京都の一部をくり抜いたように存在するこの街に、普段彼らは住んでいる。
一度住むとそう簡単にはこの街から出られないものなのだが、
たまに例外的に『外』に出してもらえる事もある。
そんな例外として、上条と居候のインデックスは昨日から海に行っている。
どういう事情で行ったのかは、語れば長い事間違いなしなので省くとしよう。
とにかくまぁ、海に行く事になった上条達だったのだが、
ペットは連れていけないとの事で、一方通行はこの猫の世話を頼まれた訳である。
「にしてもまァ」
一方通行はグルリと部屋を見回す。
何の変哲もない(しかし彼にとってはそれが良い)、この街には良くあるタイプの寮の室内だ。
下の方に目を遣ると、三毛猫が『ヤバッ、うま、うますぎますよ旦那ーっ!』と大変嬉しそうに缶詰をいただいている。
猫が食している缶詰は確か、一個何千円ぐらいはした記憶がある。
上条辺りが聞けば卒倒するような値段だが、一方通行からすればお安いものだった。
「…………暇なモンだな」
しばしの間、幸せそうな猫を見ていた彼はぼやくように呟くと、床に座る。
とその時、彼は一瞬顔をしかめた。
何故かは分からないが、胸に少し圧力を感じたのだ。
(……疲れてンのかね)
よく考えてみればこの一ヶ月ほどの間、色々な事がありすぎた。
その間に溜まった疲労が一気に押し寄せたのかもしれない。
ついでに言えば暇だと強く思うのも、久しぶりに何もない時間が来て、余計に気になってしまうからだろうか。
「………………」
一方通行は何の気も無しにテレビのリモコンを手に取る。
たいした暇つぶしにはならねェだろォな、と彼はあまり期待しないで電源と書いてあるボタンを押す。
しかしその瞬間、彼は前言撤回をせざるを得ない、予想外の物を見る事となった。
「――――なっ」
一方通行は思わず固まってしまった。
『どうした旦那?』と三毛猫が食事を中断して一方通行を見るが、彼はそちらを見ない。
ただただ、テレビの液晶画面を見ていた。
テレビではニュース番組をやっていて、
火野神作とかいう死刑囚が脱獄したとか報道していたが、今そんな事はどうでもいい。
それよりも、もっと大事なのは。
――――何故ニュース原稿を、一方通行のクラスの担任である月詠小萌先生が読んでいるのか、という事だ。
一方通行は何の気も無しにテレビのリモコンを手に取る。
たいした暇つぶしにはならねェだろォな、と彼はあまり期待しないで電源と書いてあるボタンを押す。
しかしその瞬間、彼は前言撤回をせざるを得ない、予想外の物を見る事となった。
「――――なっ」
一方通行は思わず固まってしまった。
『どうした旦那?』と三毛猫が食事を中断して一方通行を見るが、彼はそちらを見ない。
ただただ、テレビの液晶画面を見ていた。
テレビではニュース番組をやっていて、
火野神作とかいう死刑囚が脱獄したとか報道していたが、今そんな事はどうでもいい。
それよりも、もっと大事なのは。
――――何故ニュース原稿を、一方通行のクラスの担任である月詠小萌先生が読んでいるのか、という事だ。
「………………何だよ、これ」
たっぷり五分ほど黙っていた一方通行の口を突いて出たのは、そんな疑問だった。
見た目十二歳の女教師は、そこに居るのが当然といった顔でニュース原稿を読んでいる。
彼は黙って手の中のリモコンを操作した。
それに従ってチャンネルは変わっていく。
バラエティー、ニュース、子供向けの教育番組にアニメ。
それら全てに、一方通行は違和感を感じさせられた。
マイナス十度の氷水に突き落とされる若者向けのファッションをしたおじいさんや、
百メートルを世界記録で走っている見た目六歳くらいの子供。
幼稚園児の恰好をした高校生ぐらいの少女や
三十代ほどの男達の周りで楽しそうに踊る、体操のお兄さんのような総理大臣。
アニメなどに至っては、女キャラクターが老人の声でかわいらしく振る舞っていて、吐き気を覚えた。
とにかく、何かがおかしかった。
画面の向こうの人々が、全体的にちぐはぐな感じなのだ。
まるで、人と人とが入れ替わったような。
一体どうなっているのだろうか。
軽いイタズラ――にしては手が込んでいる。
……まぁ、木原とかだったらやりそうな気はしなくもないが。
(……他のヤツはどうなンだろうな)
一方通行はテレビの電源を切ると、玄関に向かった。
三毛猫が『あれ? 旦那、どこ行くんだい?』と鳴いてきたが、無視する。
(……とりあえず土御門の所にでも行くか)
隣人の上条は居ないので、そのまた隣の土御門元春の部屋に行く事にする。
他の人間の家のテレビを見れば、これが何かの冗談なのかどうかも分かるだろう。
夢とかじゃねェよなァ、と一方通行は淡い期待を抱きつつ、外に出た。
軽いイタズラ――にしては手が込んでいる。
……まぁ、木原とかだったらやりそうな気はしなくもないが。
(……他のヤツはどうなンだろうな)
一方通行はテレビの電源を切ると、玄関に向かった。
三毛猫が『あれ? 旦那、どこ行くんだい?』と鳴いてきたが、無視する。
(……とりあえず土御門の所にでも行くか)
隣人の上条は居ないので、そのまた隣の土御門元春の部屋に行く事にする。
他の人間の家のテレビを見れば、これが何かの冗談なのかどうかも分かるだろう。
夢とかじゃねェよなァ、と一方通行は淡い期待を抱きつつ、外に出た。
扉を開けた一方通行の目の前には、いつも通りの景色が広がっていた。
上空を翔ける航空機。周りにたくさんある、ここと似たような学生寮。
廊下の手摺りから下を見てみるが、誰もいない。
おそらくは、皆もう出かけて夏休みを満喫しているのだろう。
つーか俺は寝過ぎなンだよなァ、と一方通行は普段の生活をちょっぴり直そうかと考える。
(いや、今はンな事どうでもイイな)
一方通行はさっさと土御門の部屋まで歩き出そうとして――――
「おー。一方通行、おそようさんだぞー」
ン? と一方通行は声のした方向を見て、
「…………ッ!?」
目を見開いた。
またも信じられない光景が彼の目に飛び込んだのだ。
一方通行は、『それ』を下から見上げていく。
まず視界に入るのは、この街では全然珍しくもないドラム缶のような清掃ロボット。
AI操作のそれは、何故か前進せずにその場をくるくると回っている。
考えてみると不思議な事だが、そこはまぁ問題無い。
この街で生きる以上、そうびっくりするモノでもないのだ。
実際たかがロボットぐらいでは、一方通行も驚かない。
問題はそこから先だ。
一方通行はさらに上を見る。
その視線の先には、清掃ロボットの上に乗って一緒に回っている、メイド服の西洋人の女がいた。
上空を翔ける航空機。周りにたくさんある、ここと似たような学生寮。
廊下の手摺りから下を見てみるが、誰もいない。
おそらくは、皆もう出かけて夏休みを満喫しているのだろう。
つーか俺は寝過ぎなンだよなァ、と一方通行は普段の生活をちょっぴり直そうかと考える。
(いや、今はンな事どうでもイイな)
一方通行はさっさと土御門の部屋まで歩き出そうとして――――
「おー。一方通行、おそようさんだぞー」
ン? と一方通行は声のした方向を見て、
「…………ッ!?」
目を見開いた。
またも信じられない光景が彼の目に飛び込んだのだ。
一方通行は、『それ』を下から見上げていく。
まず視界に入るのは、この街では全然珍しくもないドラム缶のような清掃ロボット。
AI操作のそれは、何故か前進せずにその場をくるくると回っている。
考えてみると不思議な事だが、そこはまぁ問題無い。
この街で生きる以上、そうびっくりするモノでもないのだ。
実際たかがロボットぐらいでは、一方通行も驚かない。
問題はそこから先だ。
一方通行はさらに上を見る。
その視線の先には、清掃ロボットの上に乗って一緒に回っている、メイド服の西洋人の女がいた。
「んー? どうかしたのかー」
平坦な口調で、彼女は親しげに声を掛けてきたが、一方通行にはこんな西洋人の知り合いなどいない。
というか、
(……コイツ、何かで見たよォな……?)
一方通行はくるくる回る女の顔を頑張って見てみようとする。
女は随分と整った顔立ちをしていた。
その顔は貴族のような優雅さを感じさせるが、どちらかというと攻撃的な感じがする。
何で見たンだっけ? と一方通行は思考する。
女が何か言ったが、集中した彼には何も聞こえなかった。
しばらくして、
(……そうだ、『軍事』のキャーリサだ!)
一方通行は一人の人物の名を思い出す。
その女は少し前にニュースで見た顔だった。
確か、英国の第二王女だとか報道されていた気がする。
と、そこまで思い出したところで、
「おーい。一方通行ー?」
キャーリサの声が、耳に届く。
「……あー、何か?」
普段の口調でいけば確実に不敬罪だろうから、とりあえず適当な口調で言ってみる。
すると彼女は、
「んー? どうして声を高くしてるんだー?」
とか、訳の分からない事を言ってきた。
声を高く……? とどういう意味か少し考えてみた一方通行だったが、
そっちより気になる事がたくさんある事に気付くと、すぐにそれをほっぽり出す。
「……何でここにいるンですか?」
そう、そこが一番の疑問だった。
キャーリサは英国に居るはずだ。
なのに何故、圧倒的に距離がある日本――それも学園都市――に居るのだろうか。
それを聞いた彼女は首を傾げて、
「……一方通行ってそんな声だったかー?
まぁ良いや。私はなー、兄貴の部屋に掃除に来たんだぞー」
兄貴? と一方通行まで首を傾げてしまう。
現在の英国に王子など居ただろうか。
まさか、隠し子か何かがこの街に住んでいるとか――――
普段の口調でいけば確実に不敬罪だろうから、とりあえず適当な口調で言ってみる。
すると彼女は、
「んー? どうして声を高くしてるんだー?」
とか、訳の分からない事を言ってきた。
声を高く……? とどういう意味か少し考えてみた一方通行だったが、
そっちより気になる事がたくさんある事に気付くと、すぐにそれをほっぽり出す。
「……何でここにいるンですか?」
そう、そこが一番の疑問だった。
キャーリサは英国に居るはずだ。
なのに何故、圧倒的に距離がある日本――それも学園都市――に居るのだろうか。
それを聞いた彼女は首を傾げて、
「……一方通行ってそんな声だったかー?
まぁ良いや。私はなー、兄貴の部屋に掃除に来たんだぞー」
兄貴? と一方通行まで首を傾げてしまう。
現在の英国に王子など居ただろうか。
まさか、隠し子か何かがこの街に住んでいるとか――――
(いや、ありえねェ)
この学生寮には、一般的な日本人しかいないはずだ。
では何故ここに?
訳が分からない、と一方通行は一人唸る。
「悩み事かー? 何か分からないけど、私はもう行くぞー? あでゅー」
そんな彼を置いて、キャーリサはくるくると回りながら土御門元春の部屋に消え――――
(………………ン!?)
思わず、一方通行は混乱して目を見張る。
待て。土御門?
何故キャーリサは、普通に合鍵を使って土御門の部屋に入った?
(……まさか、土御門妹?)
一方通行はキャーリサとはまた別の人物の顔を思い浮かべた。
この学生寮には、一般的な日本人しかいないはずだ。
では何故ここに?
訳が分からない、と一方通行は一人唸る。
「悩み事かー? 何か分からないけど、私はもう行くぞー? あでゅー」
そんな彼を置いて、キャーリサはくるくると回りながら土御門元春の部屋に消え――――
(………………ン!?)
思わず、一方通行は混乱して目を見張る。
待て。土御門?
何故キャーリサは、普通に合鍵を使って土御門の部屋に入った?
(……まさか、土御門妹?)
一方通行はキャーリサとはまた別の人物の顔を思い浮かべた。
土御門舞夏。
土御門元春の義妹であり、メイドさん見習いをしている少女だ。
時々兄の土御門元春に会いに来るので、一方通行も何度となく会った事はある。
彼女はたまに、シチューだとかパスタだとかを余らせておすそ分けに来てくれる。
そんな彼女の顔を、一方通行は忘れる訳もない。
そして一方通行の知る土御門舞夏は、あんな顔立ちはしていない。
確かに彼女も整った顔立ちはしているが、それは東洋人のものだ。
(……まさか、な)
一方通行はすぐさま部屋に戻る。
部屋に入れば、スフィンクスが『おぉ旦那。戻ったかい』と食い終わった缶の処理を求めてきた。
一方通行はさっさと缶を処理すると、
「スフィンクス、ちょっと空中散歩してくる」
とだけ言って、『え? あ、あれ? 旦那ー!?』と鳴く三毛猫の声を背に、外へともう一度出る。
彼は廊下の手摺りの上に立ち、文字通り飛んでいった。
土御門元春の義妹であり、メイドさん見習いをしている少女だ。
時々兄の土御門元春に会いに来るので、一方通行も何度となく会った事はある。
彼女はたまに、シチューだとかパスタだとかを余らせておすそ分けに来てくれる。
そんな彼女の顔を、一方通行は忘れる訳もない。
そして一方通行の知る土御門舞夏は、あんな顔立ちはしていない。
確かに彼女も整った顔立ちはしているが、それは東洋人のものだ。
(……まさか、な)
一方通行はすぐさま部屋に戻る。
部屋に入れば、スフィンクスが『おぉ旦那。戻ったかい』と食い終わった缶の処理を求めてきた。
一方通行はさっさと缶を処理すると、
「スフィンクス、ちょっと空中散歩してくる」
とだけ言って、『え? あ、あれ? 旦那ー!?』と鳴く三毛猫の声を背に、外へともう一度出る。
彼は廊下の手摺りの上に立ち、文字通り飛んでいった。
「…………マジかよ」
それから数十分後、一方通行は高層ビルの屋上に立っていた。
ある程度の空中散歩をしてきた彼の顔には、戸惑いがあった。
何故かと言われれば、
「皆しておかしくなってやがる……」
一方通行は真下を見る。
そこには、テレビで見たのと同様に、色々とちぐはぐな人々が居た。
誰も彼もが、当然といった顔で交差点を歩いている。
ちぐはぐな恰好もそうだが、それが一番一方通行には異様だった。
まるでこの世に、一人だけ取り残されたような――――複雑な気持ちだった。
これからどォするかね、と一方通行は選択肢を考える。
自分が疲れているせいだと夢の中に逃げるか、何かが起きていると調べるか。
それとも…………?
「あン?」
懐のケータイから着信音が鳴り響く。
こンな時に……と思いながらも、相手は誰だろうかと確認してみる。
「…………」
一方通行は小さな画面を見つめると、黙って通話ボタンを押した。
すると、
『えっと……一方通行、か?』
スピーカーから、昨日一時的に別れた友人の声がした。
「……上条、か?」
その名は上条当麻。
学園都市の『外』にいる、三毛猫の飼い主である。
『あ、一方通行か!? (おい二人とも。一方通行は入れ替わってねぇみてーだぞ)』
彼は自分が出てきた事に安堵したように、何か言っていた。
「……そこに誰か居ンのか?」
とりあえず質問してみると、
『あぁ、今こっちに――え? あ、おい!』
「上条?」
いきなり音が途切れてしまった。
少しだけだが、波の音が耳を打ってくる。
今、彼は浜辺にでもいるのだろうか。
そんな、至極どうでもいい事を考えていると――――
『――お久しぶりです、一方通行』
突如として、どこかで聞いた事のある、凜とした雰囲気のする女の声がした。
何だか、喋っているだけで力強さを感じられるような――――
そんな、とても聞き覚えのあるその声をどこで聞いたのか、一方通行は思い出そうとした。
その名は上条当麻。
学園都市の『外』にいる、三毛猫の飼い主である。
『あ、一方通行か!? (おい二人とも。一方通行は入れ替わってねぇみてーだぞ)』
彼は自分が出てきた事に安堵したように、何か言っていた。
「……そこに誰か居ンのか?」
とりあえず質問してみると、
『あぁ、今こっちに――え? あ、おい!』
「上条?」
いきなり音が途切れてしまった。
少しだけだが、波の音が耳を打ってくる。
今、彼は浜辺にでもいるのだろうか。
そんな、至極どうでもいい事を考えていると――――
『――お久しぶりです、一方通行』
突如として、どこかで聞いた事のある、凜とした雰囲気のする女の声がした。
何だか、喋っているだけで力強さを感じられるような――――
そんな、とても聞き覚えのあるその声をどこで聞いたのか、一方通行は思い出そうとした。
(……どこだ? 思い出せよ一方通行)
必死に記憶の底の底をさらってみる。
そうして、彼は思い出した。
一度見れば忘れない、あの外見を。
「神裂……か?」
そう、その人物の名は神裂火織。
およそ一ヶ月前に上条や一方通行と間違いで争った、魔術師だ。
『……覚えてもらっているようで何よりです』
わずかに黙って、神裂はそう言った。
何でオマエがそこに居る。
上条はどうした。
色々と聞きたい事が思い浮かび、さてどれから聞こうかと一方通行は考える。
しかし疑問をぶつける前に、すみませんが、と神裂は一方通行を先制すると、
『……貴方は今、自分の周囲の状況を理解していますか?』
その口調は、前会った時――インデックスの件で色々あった時よりも、どこか深刻だった。
必死に記憶の底の底をさらってみる。
そうして、彼は思い出した。
一度見れば忘れない、あの外見を。
「神裂……か?」
そう、その人物の名は神裂火織。
およそ一ヶ月前に上条や一方通行と間違いで争った、魔術師だ。
『……覚えてもらっているようで何よりです』
わずかに黙って、神裂はそう言った。
何でオマエがそこに居る。
上条はどうした。
色々と聞きたい事が思い浮かび、さてどれから聞こうかと一方通行は考える。
しかし疑問をぶつける前に、すみませんが、と神裂は一方通行を先制すると、
『……貴方は今、自分の周囲の状況を理解していますか?』
その口調は、前会った時――インデックスの件で色々あった時よりも、どこか深刻だった。
「……それって、皆がおかしくなっちまってる事か?」
とりあえず確認のために尋ねてみた。
周囲の状況と言われて、真っ先に思い付いたのはそれだった。
『分かっているようなら結構です』
神裂はきっぱりとした調子で言った。
「……オマエ、何か知ってるのか?」
通話先の女は、この良く分からない事態について詳しい事情を知っているのかもしれない。
こんな質問をしてくるのだ。
少なくとも、一方通行よりは何か知っているに違いない。
そして――――
『……そうですね。私は、貴方よりは事態を把握していますよ』
一方通行の推測は大当りだった。
「……だったら教えろ。一体何が起きてる?」
質問してから、一方通行はさらなる推測を始める。
今話している相手は、自分とは違う『非科学(オカルト)』の住人だ。
そんな人間が、貴方よりは事情を知っていると言ってきた。
それは、つまり。
『……端的に言いますと、現在、世界中で大規模な「魔術」が発動されています」
だいたいは思っていた通りだったが、『世界中』という言葉から鑑みるに、
事態は一方通行が想像していたよりもずっと大変な事になっているようだ。
とりあえず確認のために尋ねてみた。
周囲の状況と言われて、真っ先に思い付いたのはそれだった。
『分かっているようなら結構です』
神裂はきっぱりとした調子で言った。
「……オマエ、何か知ってるのか?」
通話先の女は、この良く分からない事態について詳しい事情を知っているのかもしれない。
こんな質問をしてくるのだ。
少なくとも、一方通行よりは何か知っているに違いない。
そして――――
『……そうですね。私は、貴方よりは事態を把握していますよ』
一方通行の推測は大当りだった。
「……だったら教えろ。一体何が起きてる?」
質問してから、一方通行はさらなる推測を始める。
今話している相手は、自分とは違う『非科学(オカルト)』の住人だ。
そんな人間が、貴方よりは事情を知っていると言ってきた。
それは、つまり。
『……端的に言いますと、現在、世界中で大規模な「魔術」が発動されています」
だいたいは思っていた通りだったが、『世界中』という言葉から鑑みるに、
事態は一方通行が想像していたよりもずっと大変な事になっているようだ。
『……以上が、現在の状況です』
神裂の話は、予想以上にとんでもないモノだった。
その内容をまとめると、これまで一切の前例の無い、とてつもない魔術が発動した、との事だ。
暫定的に名付けられたその魔術の名は、『御使堕し(エンゼルフォール)』。
その『副作用』によって、一部を除く世界中の人々は文字通り入れ替わってしまったらしい。
『副作用』でこれだけの事態だ。
これの本来の作用はもっととんでもないものであろう事は、想像に難くない。
ただ、そのとんでもなさが一方通行には理解出来ない。
「……天使、ねェ」
一言、確認するように呟いた。
「俺にはそれが良く分からねェンだが……ニュアンス的には核兵器みてェな扱いでイイのか?」
『御使堕し』――その作用は、天使を人間の世界に引きずり落とす、らしい。
天使、と言われても一方通行にはその凄さが分からない。
そもそも存在が信じられないのだが、まぁ『居る』と思わなくては話が進みそうにもないし黙っておく。
とにかく、人間よりも格上の超絶的存在だと思えば良いらしい。
件の魔術では、その格を強制的に変動させたらしい。
その結果として、上の位――天使とかいう、凄まじい力の持ち主の一席と、
下の位――人間側の誰かの持つ一席が入れ替わってしまった、という話だった。
『……まぁ、それで構いませんが』
そう言った神裂は、どこか不服そうだった。
もしかしたら、自分の『魔術(世界)』の言葉を
こっちの『科学(世界)』の言葉で表したのが少しだけ気に入らなかったのかもしれない。
天使、と言われても一方通行にはその凄さが分からない。
そもそも存在が信じられないのだが、まぁ『居る』と思わなくては話が進みそうにもないし黙っておく。
とにかく、人間よりも格上の超絶的存在だと思えば良いらしい。
件の魔術では、その格を強制的に変動させたらしい。
その結果として、上の位――天使とかいう、凄まじい力の持ち主の一席と、
下の位――人間側の誰かの持つ一席が入れ替わってしまった、という話だった。
『……まぁ、それで構いませんが』
そう言った神裂は、どこか不服そうだった。
もしかしたら、自分の『魔術(世界)』の言葉を
こっちの『科学(世界)』の言葉で表したのが少しだけ気に入らなかったのかもしれない。
『とにかく』
神裂は気を取り直すように告げた。
『……どうにもそれを行使した術者が上条当麻の近くにいるようでして「そいつの近くに来た、と」
なるほど、と一方通行は納得する。
神裂の話を聞いて、だいたいの疑問は払拭出来た。
それならば、自分がこうして違和感を感じられる理由も分かる。
一方通行は『魔術』を成り立たせる特異な物理公式を知っている。
おそらくは術が発動した時に、無意識にそれを使って中途半端に『反射』したのだろう。
その事を伝えると、
『……どうにか術の威力を半減させたとしても、それでも入れ替わった人々からはそう見えるでしょうね』
一部の魔術師は魔術で自分を守ったらしいが、それでも入れ替わっては見えてしまうらしい。
おそらくそこは同じだろう、と神裂は言った。
いわく、上条のように完全に術から逃れたのは術者だけ、らしい。
神裂は気を取り直すように告げた。
『……どうにもそれを行使した術者が上条当麻の近くにいるようでして「そいつの近くに来た、と」
なるほど、と一方通行は納得する。
神裂の話を聞いて、だいたいの疑問は払拭出来た。
それならば、自分がこうして違和感を感じられる理由も分かる。
一方通行は『魔術』を成り立たせる特異な物理公式を知っている。
おそらくは術が発動した時に、無意識にそれを使って中途半端に『反射』したのだろう。
その事を伝えると、
『……どうにか術の威力を半減させたとしても、それでも入れ替わった人々からはそう見えるでしょうね』
一部の魔術師は魔術で自分を守ったらしいが、それでも入れ替わっては見えてしまうらしい。
おそらくそこは同じだろう、と神裂は言った。
いわく、上条のように完全に術から逃れたのは術者だけ、らしい。
(……ン?)
はて、と一方通行は考える。
そういえば、
「……なァ」
『何か?』
「……この『御使堕し』ってなァ、強制的に姿を入れ替えさせるンだよな」
『副作用ですがね』
当然、といった調子で神裂は答えた。
そうか、じゃあよ、と一方通行は前置きすると、
「それってよ……性別もなのか?」
『は?』
神裂はあの容姿には似合わなさそうな、間抜けな声を上げた。
「性別だけ変わるってのはあンのか、って聞いてンだよ」
一方通行はそう言って、先程のキャーリサ(たぶん中身は土御門舞夏)との会話を思い出す。
彼女からすれば、自分は入れ替わって見えるはずだ。
なのに、舞夏は確かに自分を識別した。
ただ、声が高いとか言っていただけだ。
まさかとは思うが、自分は今、性別が入れ替わって見えるのかもしれない。
はて、と一方通行は考える。
そういえば、
「……なァ」
『何か?』
「……この『御使堕し』ってなァ、強制的に姿を入れ替えさせるンだよな」
『副作用ですがね』
当然、といった調子で神裂は答えた。
そうか、じゃあよ、と一方通行は前置きすると、
「それってよ……性別もなのか?」
『は?』
神裂はあの容姿には似合わなさそうな、間抜けな声を上げた。
「性別だけ変わるってのはあンのか、って聞いてンだよ」
一方通行はそう言って、先程のキャーリサ(たぶん中身は土御門舞夏)との会話を思い出す。
彼女からすれば、自分は入れ替わって見えるはずだ。
なのに、舞夏は確かに自分を識別した。
ただ、声が高いとか言っていただけだ。
まさかとは思うが、自分は今、性別が入れ替わって見えるのかもしれない。
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