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    元スレカニ「柿欲しさに母さんを殺した猿を倒したけど、物語はまだ終わっていなかった」

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    51 = 1 :

    鬼大将「さて地獄四天王の諸君、待たせたな。出番だ!」

    ???「泥船に乗った気でいてくれよ。おっと大船だったか、ケケケッ」

    ????「あたしが味わった恐怖を奴らにも味わわせてやるよ」

    「東洋の奴らは小さくて喰い甲斐がないらしいから、全部喰い尽くしてやる」

    「協力するのは今回限りだぜ。桃太郎なんかよりよほど殺したい奴がいるからな」

    鬼大将「さあ来い、桃太郎。この新鬼ヶ島が貴様の墓場となるのだ!」

    53 = 1 :

    桃太郎たちは新鬼ヶ島に上陸した。
    岩で出来た城めがけ、桃太郎を先頭に突撃する。

    桃太郎「行くぞっ!」

    すると城の左右から大軍勢が現れた。鬼と地獄の亡者の混成軍団である。

    ザザザッ!

    赤鬼「待っていたぞ、桃太郎!」
    青鬼「ここが貴様らの死に場所じゃい!」

    イヌ「最高幹部のはずのこいつらが、もう出てくるのかワン!?」

    キジ「しかもエネミーもすっごい数だねェ。スリー年前より多くないかい?」

    サル「どうやら地獄でだいぶ兵力を増強したようだな」

    戦いが始まった。

    54 = 1 :

    桃太郎「君たち、この一ヶ月の成果を見せてもらおうか」

    「まずは俺からだァァァッ!」ノロ~

    ザコ鬼A(な、なんだ……? デケェ声のわりにノロイじゃねーか)
        「金棒で叩きつぶしてやる!」

    「油断しやがったなァァァァァッ! 燃えろォォォォ!」

    栗の全身が真っ赤に燃え上がる。

    パチィン!

    ザコ鬼A「なっ、急に速くッ!?」

    ザコ鬼Aの眉間に、栗が命中。

    ザコ鬼A「ぐはぁっ……!」

    赤鬼「栗如きの体当たりで、鬼がやられるだと!? バカな!」

    「ヘッ、自分で発火してハジければ、俺だって弾丸並の威力になるんだぜッ!
      俺の必殺技“火中の栗を拾う”だ!」

    イヌ(ふふふ、成長したワンね)

    55 :

    ふむ

    56 = 1 :

    「喰らえッ!」ザクッ! ドシュッ!
    ザコ鬼B「ギャアアアアッ!」

    顔面を刺して鬼が泣いたところに、トドメの二撃目を入れる。

    キジ「蜂君! その技はミーが“泣きっ面に蜂(フェイスニードル)”と
       ネーミングしてあげたじゃないか! ちゃんと叫ばないと!」
    (絶対イヤだ)


    ウス「この中に入るでごわす!」ヒョイッ!
    ザコ鬼C「うわっ!?」

    ウスの中に鬼を入れて、きねで叩きまくる大技。

    ウス「どすこーい! どすこーい! どすこーい!」
    サル「見事に使いこなしているな……奥義“餅は餅屋”を!」


    牛糞「牛糞は糞の中でも高位に属する。ゆえに他人の目糞や鼻糞を操れるようになった」
    ザコ鬼D「鼻の中と目の中がいてええええっ!」

    ズバシュッ!

    ザコ鬼D「めくそぉっ!」
    牛糞「“目糞鼻糞を笑う”……。
       目や鼻を清潔にしてない者は、俺に向かってこない方が賢明だ」

    57 :

    かなり面白くて笑う

    58 :

    スリー年前は斬新

    59 = 1 :

    ザコ鬼E「てやんでえ、あのカニを潰してカニ鍋にしてやる!」

    カニ(来た!)

    ザコ鬼E「ちっぽけなハサミごと、この金棒で潰してやるよ!」

    カニ「受け止めるッ!」

    ガキィン!

    ザコ鬼E「ハサミが巨大化しやがった!」

    カニ「“バカとハサミは使いよう”ということだ、覚悟ッ!」

    ザシュッ!

    ザコ鬼E「つ、強ぇ……!」

    桃太郎(みんな期待以上だ。これなら勝てるぞ!)

    60 = 1 :

    大軍勢を相手に奮闘する桃太郎たち。
    しかし、兵力は減るどころか、どんどん増えている。

    キジ「う~ん、おかしいねェ。ちっともエネミーが減らないよ」

    サル「おそらく、島のどこかに地獄と通じてる穴があって、どんどん鬼や亡者が
       補充されているんだろう。十中八九、鬼どもの首領の仕業だろうな」

    イヌ「きっと鬼の大将を倒さないとキリがないワン!
       仕方ないワン、桃太郎さんとカニたちは奴らの城に入るワン!」

    カニ「それならイヌさんたちが行った方が──」

    イヌ「君たちはまだまだ複数相手の戦闘が経験不足だワン……。
       ここはボクたちに任せて、桃太郎さんたちは中へ行くワン!」

    桃太郎「うむ、分かった。私とカニ君たちで鬼大将を目指そう。死ぬなよ!」

    イヌ「はいワン!」
    サル「もちろん!」
    キジ「シーユーアゲン!」

    61 = 1 :

    城内では──

    鬼大将「ふふふ、想定通りだ。厄介なイヌ、サル、キジを分断できた。
        あとはワシと貴様らで桃太郎どもを殺せば奴らは総崩れだ!
        ──配置につけッ!」

    ???「背中の火傷がうずく、うずくねェ……」

    ????「あたしの相手は切り裂いてあげるよ、ひっひっひ」

    「あ~腹が減ったぜ。噛み砕いて喰ってやる」

    (ん? なんだか懐かしいニオイがするな……)

    62 = 1 :

    ほとんど手下もいない城を進む桃太郎たち。

    「あそこ、扉が四つもあるぜ」

    ウス「どうするでごわすか?」

    桃太郎「おそらくこの中のどれか一つが鬼の大将に通じているはずだ。
        もちろん戦力は分散させない方がいいが──」

    牛糞「もし罠の部屋に全員が飛びこんだら、一巻の終わりだ……」

    桃太郎「うむ」

    「ならバラけようぜッ! 大丈夫、俺たちゃそんなにヤワくねェさ!」

    桃太郎「……そうだな。多少危険だが、それが一番だろう」

    63 = 1 :

    桃太郎たちは、以下のように分かれて扉に入った。

    ・桃太郎、カニ
    ・牛糞、栗
    ・ウス
    ・蜂

    桃太郎とカニが入った部屋で待っていたのは──

    カニ「お前は……!」

    「なんでてめえが──!」

    桃太郎「あの猿、知り合いか?」

    カニ「先日の殺猿事件の被害者、です……」

    桃太郎「!」

    「なんか懐かしいニオイがすると思ったら、まさかお前が来るとはな。
      お前らには復讐するつもりだったからな。嬉しいぜ……!」

    カニの母親を殺し、カニたちに殺された猿であった。

    64 = 1 :

    牛糞と栗を待ち受けていたのは、タヌキだった。

    タヌキ「やっと来たか、待ちくたびれちまったよ」

    「てめぇ、なにもんだッ!?」
    牛糞「タヌキだろ」

    タヌキ「ふむふむ、小さくすばしっこい栗と、色々な特殊能力を使う牛糞か。
        ま、“取らぬ狸の皮算用”だがね」

    「な、なんで……ッ!」
    牛糞(初対面なのに、一瞬でこちらの性質を見切られた……)

    タヌキ「安心しろよ、俺の“取らぬ狸の皮算用”は敵の性質を見切る能力だが、
        十割正しいわけでもない。ま、参考程度だ」

    タヌキ「俺の真の能力は“火のないところに煙は立たぬ”」

    カチカチ… ジュ~…… プスプス……

    「なんだァ!? 奴の背中に火がつきやがった!」
     (俺の能力とはケタが違う……!)

    タヌキ「ウサギのヤロウに焼かれ沈められ、地獄で身につけたこの能力……!
        お前ら焼き栗とヤケクソにしてやるぜ……」

    65 = 1 :

    タヌキの背中から出た炎が、巨大な火柱となり、栗と牛糞に襲いかかる。

    ゴオオオッ!

    タヌキ「どうした!? 逃げてばかりじゃ勝負にならんぜ!」

    「くそっ、こんなもん喰らったら焼き栗どころか、炭になっちまう!」

    牛糞(これでは“目糞鼻糞を笑う”の射程に入れないな)

    牛糞「栗、俺の中に入れ!」

    「お、おい冗談だろ!? ホントにヤケクソにでもなったか!?」

    牛糞「勝つためだ」

    「……どうやら本気(マジ)みたいだな」

    タヌキ「こそこそと何を話してやがる! 焼き尽くせ、俺のカチカチ炎!」

    ゴオオッッッ!

    「──バカなッ! んなことしたら、お前が死ぬぞ!」

    牛糞「いいから入れ、勝つにはこれしかない」

    66 = 1 :

    栗は牛糞の中に入った。

    タヌキ「うわ、きったねぇ! もうあの栗は食えねーな、ギャハハハハハッ!
        よし二匹まとめて焼却処分だ!」

    栗が入っている牛糞に、ありったけの炎が叩きつけられる。

    牛糞(翁との修業で身につけた“隣の芝は青い”で体に芝を生やし、防御すれば、
       少しの間なら炎に耐えられるはず)

    牛糞(体内の熱をひたすら高め……栗のハジける速度を極限まで高める!)

    タヌキ(あの牛糞、なかなか燃え尽きないな……どういうことだ!?)

    牛糞「行けっ!」

    パチィッ ズドンッ!

    高熱を宿した栗が、牛糞から超高速で飛び出した。

    タヌキ「なんだとッ!?」

    牛糞(たの……ん、だ……ぞ……)

    67 = 1 :

    ギュオオオオオッ!

    「牛糞、お前がくれた熱、無駄にはしねェッ!」

    流星にも匹敵する速力で、栗がタヌキめがけて飛んでいく。

    タヌキ「速い──かわせん!」

    タヌキ(だが所詮は栗! 防御すれば耐えられる!)

    「武装“いが栗も内から割れる”!」

    栗の全身が、鋭利な針を持つ鎧に包まれた。

    タヌキ「げえっ!?」

    「喰らえェッ!」

    ドグサッ!

    いが栗の体当たりが、タヌキの胸に突き刺さった。

    タヌキ「がは……バカ、な……!」

    68 = 1 :

    「ぐっ……! や、やった……あっ、牛糞、大丈夫かッ!?」

    牛糞「なんとかな……」

    体の大部分が焼け死に、小さくなった牛糞がいた。

    「ずいぶん小さくなっちまったな」

    牛糞「また牛小屋に戻って、補充すればすぐ元通りだ。
       それよりすまなかったな、作戦とはいえ糞(おれ)の中に入らせて……」

    「親友(ダチ)だろ、気にすんなって。それにいずれ俺も糞になる身さ」

    牛糞「将来、お前を食べる奴は気の毒だな」

    「まったくだぜ」

    牛糞「フフフ……」
    「ハッハッハ……!」

    二人は笑い合った。

    地獄四天王の一角、タヌキ撃破──

    69 = 1 :

    蜂が入った部屋には、老婆が待っていた。

    舌切り婆「おやおや、小さなお客さんだねぇ」

    「婆さん、鬼の手下か?」

    舌切り婆「手下というか、協力者だがねぇ。ひゃおおおっ!」

    ヒュバッ!

    (速い……なんつう脚力だ。武器はハサミ、だな)

    舌切り婆「あたしに楯つく奴は、どいつもこいつも切り裂いてやるよ。
         この舌切りバサミでねぇ」

    「やってみな」

    舌切り婆「いくよぉっ! ひゃっほうっ!」

    70 :

    おもしろい。見てるぞ

    71 = 1 :

    舌切り婆「ほぉっ! ひょおっ! きええええいっ!」

    舌切り婆が老婆とは思えぬフットワークで、蜂に切りかかる。

    「大したハサミ捌きだ。だが、もっとすごいハサミ使いを知ってるぜ!」

    舌切り婆「ぬぅっ!?」

    「“泣きっ面に蜂(フェイスニードル)”!」

    グササッ!

    舌切り婆さんの顔面を二度刺しする。

    (しまった、つい技名叫んじまった)

    舌切り婆「ひいっひっひ。この程度かい? あんたの技は!?」

    「なにっ!?」

    舌切り婆「じゃあ、そろそろ本気を出すかねぇ……」

    72 = 1 :

    舌切り婆「少し昔話をしようかい」

    舌切り婆「あたしゃ、とあるクソスズメの舌をぶった切ってねェ。
         その後スズメの宿で大きいつづらをもらったら、中からお化けがわんさかさ。
         それに驚いてポックリ逝っちまったんだが──」

    舌切り婆「その時身につけたのが第一の能力“大は小をかねる”さ!」ボンッ!

    (婆さんの筋肉が倍加しやがった!)

    舌切り婆「そして第二の能力“幽霊の正体見たり枯れ尾花”!」

    ボワンッ!

    「うわああああっ!」

    舌切り婆は、この世のものとは思えない怪物に変身した。

    舌切り婆(所詮まやかしの術だが、このあたしの姿を見て正気を保てる奴はいないよ!)

    (こんなバケモノ、敵うわけねェ! 鬼よりずっとヤベェ!)
     「うわああああっ!」

    73 :

    カニ「“バカとハサミは使いよう”!」 猿「なに!?」

    1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/04(水) 21:09:26.19 ID:r7aWzPPA0

    柿欲しさにカニの母親の命を奪った猿は、カニの子と仲間たちによって成敗された。

    ウス「終わったでごわすな……」

    「カニ、コイツの死体はどうするんだ?
      お前にはそのハサミでバラバラに切り刻むくらいの権利はあるぜ」

    カニ「……いや。彼はぼくが責任を持って丁重に葬るよ。復讐はもう終わっている。
       ここから先は、もう恨みが入り込む余地はない」

    「カニ! やっぱおめェいい男だぜ、クゥ~ッ!」

    牛糞「……カニらしい答えだ」

    随分昔のを引っ張りだしてるのな
    スレタイ変えればバレないとでも思ったの?

    74 = 1 :

    舌切り婆「ほぉれいっ!」バチィッ!

    舌切り婆のビンタで床に叩きつけられる蜂。

    「ぐほぁっ!(鍛える前の俺だったら即死だったな……!)」

    (今の感触、普通の人間の手だった。──そうか、婆さんのあの姿は幻覚か!)

    「なら、恐怖心を払拭してやらぁ!」グサッ

    蜂は自分を刺し、痛みで正気を取り戻した。

    舌切り婆「ほう、なかなかやるねェ。だが、あんたの攻撃は一切通用しないよぉ!
         この体のどこを刺すってんだい!?」

    「決まってるじゃねえか──そこだ! “泣きっ面に蜂(フェイスニードル)”!」

    ザクッ! ザクッ!

    舌切り婆「ひぎゃああああっ!」

    「ありったけの毒を注入してやったぜ、お前のベロにな!」

    舌切り婆「いでええええ、いでええええ!」ベリッ!

    舌を刺された舌切り婆は腫れあがった舌を自分で引きちぎってしまい、
    さらなる激痛で悶絶してしまった。

    「恐ろしい婆さんだったぜ……」

    75 = 1 :

    ウスが入った部屋には、老婆がベッドで横になっていた。

    ウス(おばあさん、でごわすな……。鬼に捕らわれてたでごわすか?)

    老婆「もう少しこっちに寄ってくれないかねぇ。耳が悪いんだよ、あたしゃ」

    ウス「分かったでごわす」

    ウス「!」

    ウス「おばあさん、なんでそんなに口がでかいでごわすか?」

    老婆「決まってるだろ? それは──」老婆が変装を解く。

    「お前を噛み砕くためさァ!」ガバッ!

    メキメキッ!

    ウスの体の一部を食いちぎり、木片を吐き捨てる狼。

    「ペッ、ウスなんか喰えねーじゃんか。
      地獄から蘇ったばかりで、すげえ腹が減ってんだ。
      テメェもウスなら餅でも作ってくれよ」

    ウス(この雰囲気、どうやら外国の者でごわすな)
      「お前に食わす餅はねえでごわす!」

    76 :

    >>73
    再放送だったのか

    77 = 1 :

    ドガッ! バゴッ! ガスッ!

    持ち前の瞬発力と怪力を生かした突きと蹴りで、ウスを滅多打ちにする狼。

    ウス「ぐぅっ! ごふっ!(この力と速さ……サルさん以上でごわす!)」

    「ウスノロが! このままなぶり殺しにしてやるぜ!」

    ウス(だが、サルさんの変幻自在な動きとちがって単純でごわす!)
      「どすこーい!」

    ドスッ!

    ウスのぶちかましが、狼を吹き飛ばした。

    「こ、このヤロウ……!」

    ウス「本気で来いでごわす!」

    「いい気になりやがって。“狼少年(エイプリルフール)”!」ウオオ~ン

    (この鳴き声を聞いた者は自分が信じられなくなる!
      かつて羊飼いの少年を見殺しにした大人どものようにな!
      くくく、あの時のガキと羊は美味かったぜ……)

    78 = 1 :

    頭を抱え、膝をつくウス。

    ウス「おいどんは……おいどんの戦いは正しいでごわすか……」

    「(さっそく技が効いてきたな……へっへっへ)さてと、この技でトドメだ!」

    「“狼と七匹の子ヤギ(グレートファング)”!」

    子ヤギ七匹をまとめて噛み砕けるほどに、狼の牙が強化された。

    ガリッ! メキッ! ムシャッ!

    ウス「ぐわぁぁ~!」

    「牙で穴だらけにしてやるぜ、ウスノロ!」

    ウス(おいどんは弱いでごわす! ……おいどんはクズでごわす!)

    ウス(でもみんなは、こんなおいどんを信じてくれた!
       たとえおいどん自身を信じられなくとも、カニどんたちならば信じられる!)

    ガシッ!

    「うわっ!(バカな、こいつは自信を喪失しているはずだ!)」

    ウス「“餅は餅屋”!」

    ウスは自分の中に狼を入れ、きねで叩きまくった。

    79 = 1 :

    ペッタン! ペッタン!

    「ぐっ……!(だがこの程度の威力なら耐えられる!)」

    (すぐ脱出して噛み殺し──!?)

    「な、なんだ俺の体に白いのがまとわりついてる!」

    ウス「望み通りもち米を混ぜておいたでごわす。さぁたっぷり喰うでごんす!」

    「うわっ、餅が体中に──もごっ……もごっ……!」

    ウス「トドメでごわすっ!」

    ドゴッ!

    窒息したところをきねで強打されては、さすがの狼もひとたまりもなかった。

    ウス「ふぅ、ふぅ、強敵だったでごわす……」

    ウスも満身創痍であった。
    勝利の喜びに一瞬だけ浸ると、すぐさま崩れ落ちてしまった。

    80 = 1 :

    場面は、カニと猿の因縁の再会に戻る。

    カニ「お前は死んで……たしかにぼくが埋葬したはずなのに……」

    「地獄にいた俺の憎悪に、鬼の大将が目をつけ、蘇らせてくれたのさ。
      打倒桃太郎に協力するという条件付きでな」

    桃太郎(そういうことだったか……)

    「ちなみにここは正解の扉だった。この先に鬼の大将は待っている。
      ただし俺を倒さないと、道は開けないがな……」

    カニ「桃太郎さん」

    桃太郎「ん?」

    カニ「彼はぼくが倒します」

    桃太郎「……分かった」

    「カニ、今度は俺がお前を母親のもとに送ってやるよ!」

    カニ「こちらこそ、今度こそこのハサミで母さんの仇を討つ!」

    81 = 1 :

    カニ「“バカとハサミは使いよう”!」

    「なに!?」

    シャキーン!

    カニの両ハサミが巨大化する。ザコ鬼を倒した時よりさらに大きい。

    「ふん、こけおどしだ!」

    カニと猿の一進一退の攻防が続く。

    ガキッ! ババババッ! ドガッ! ズガガガッ! シャッ! ドゴッ!

    「“桃栗三年柿八年”!」

    猿は青柿を、自分の右手に生み出した。

    「母親と同じ死に方をさせてやるよ。死ねぇッ!」シュッ!

    カニ「なんのッ!」ガキッ!

    桃太郎(──うまい! 投げつけられた柿をハサミで弾き飛ばした。
        今のところカニ君が完全に上をいっている!
        ……だが、なぜだ。猿の力は衰えるどころか、どんどん上がっている……?)

    82 :

    コピペでもいいよ
    久しぶりに面白いから

    83 = 1 :

    「柿はまだまだあるぞォッ!」ブンッ

    カニ「くっ、くそっ!」ガッ

    「こんなもんか!? 柿でくたばったお前のバカな母親が、あの世で応援してるぞ!
      もっと頑張らないと成仏できねーぞォ!」

    カニ「なんだとッ!?」

    桃太郎(カニ君らしくもない! 挑発に乗ってサバキが雑になっている!
        いや無理もない。母親の仇が目の前にいるのだから……)

    「どうしたどうしたァ!」

    桃太郎(やはりだ。猿の柿を投げる速度がどんどん増している!
        今まで手加減していたようには見えなかったが……)

    カニ「ぐっ……! くっ!」ガギッ!

    (くくく、カニの俺への憎悪がヒシヒシと体に伝わってくるぜ。
      いいぞ、憎め! 俺を母親の仇だと恨め! 殺意を抱け!)

    (俺が地獄で身につけた能力“憎まれっ子世にはばかる”は、
      相手に憎まれたり恨まれたりするほど、俺自身が強くなるのだ!)

    84 = 1 :

    「ほらよっ!」ビュッ!

    カニ「ぐぁっ! くっ……猿めぇ!」ガキンッ!

    「(防御が崩れた!)もらったッ!」

    ドギャッ!

    猿の投げた柿が、ついにカニにクリーンヒット。

    カニ「ガハァッ!」

    桃太郎(……ここまでか)

    「トドメだ」
     (カニを殺せば、その瞬間カニの憎悪は最大級になり俺の力はますます高まる!
      そうなれば桃太郎とて俺の敵ではない! ……ククク。
      その後は鬼どもを屈服させ、俺が首領になることすら可能かもしれん)

    カニ(これが、母さんも味わった痛み……)

    カニ(意識が遠のく……死が近いってことか……)

    自分にぶつけられた青柿を見つめるカニ。

    カニ「柿……」

    85 = 1 :

    柿なんかのために、ぼくの母さんは死んだ。

    いや、柿“なんか”ではない。

    生き物は食べなければ死ぬのだから、食糧の確保は生きる上での最重要課題の一つだ。

    それは猿も同じこと。

    木を登れないカニを無視し、柿を独占する──

    もしぼくが、あいつの立場ならやらずにいられたか? 恥ずかしながら断言はできない。

    やり口は非道だが、猿の行動は決して理解できないものではない。

    その後、ぼくは母さんを殺された恨みで猿を殺した。

    そして今、あいつはぼくに殺された恨みでここに蘇った。

    だが、ぼくはそうではない。今は、桃太郎さんに力量を見込まれてここにいる。

    ぼくの戦いは、食糧確保とか、復讐とか、それらより高みになければならない。

    母さん、ごめん……。

    でもぼくは恨みや憎しみを克服して、さらなる一歩を踏み出さなければならないんだ!

    86 = 1 :

    (な、なんだ急に力が抜け……)

    トドメ、と放った猿の柿はえらく気の抜けた一投となった。

    カニ「ふんっ!」カキッ!

    当然、あっさりハサミでハジかれる。

    「ち、力が……抜けていく……!」

    (バ、バカな……。こいつ俺に恨みがまったくないというのか!?
      は、母親を殺されて、自分も殺されかけて──何故!?)

    「なぜだッ! カニッ! お前は俺が憎くないのか!?」

    カニ「憎くないわけないだろ? でも、ぼくのお前に対する復讐はすでに終わっている。
       だからもう筋違いの戦いはしない……」

    カニ「ここから先は、桃太郎さんのお供として鬼退治の──
       生死という自然の摂理から外れたお前を地獄に帰すための戦いだ!」

    「くっ、そ! ……うおおおおおっ!」

    ダダダッ!

    桃太郎(柿は通用しないと悟ってか、猿が特攻に出た! 次で決まる!)

    87 = 1 :

    ガ キ ン ッ


    カニ「ぐっ……!」

    カニの右ハサミが砕けた。

    「あっ、あははははっ! カニ……お前の」

    「勝ちだ……」

    ドサッ

    カニ渾身の一撃が、猿の腹部を直撃した。
    衝撃に耐えられずハサミは砕けてしまったが、文句のつけようのないカニの勝利である。

    桃太郎「見事……!」

    桃太郎も思わず唸る一撃であった。

    88 = 1 :

    カニが猿を倒したため、壁が崩れ、鬼大将への道が出来上がった。

    カニ「桃太郎さん、あとは──」

    桃太郎「あぁ、任せておけ。よくやった」

    桃太郎は最終決戦に挑む。

    カニ「やったよ、母さん……」

    カニ「母さんを殺された恨み、ではなく、桃太郎さんのお供として……」

    カニ「天国で見ててくれたかな……?」

    89 = 1 :

    まもなく、桃太郎は鬼大将の部屋にたどり着いた。

    鬼大将「くっ、まさか四天王を倒すとは……さすがは桃太郎!」

    桃太郎「倒したのは私ではない。だが、おかげで力を温存することができた。
        さあ、観念するんだな」

    鬼大将「ほっ、ほざけぇっ!」

    鬼大将「“鬼に金棒”!」

    鬼大将の右手に、超巨大な金棒が生み出される。

    桃太郎「金棒か……」

    鬼大将「これだけではないぞッ!
        ワシは貴様を倒すために、地獄でいくつもの能力を身につけた!
        “鬼の目にも涙”! “鬼の居ぬ間に洗濯”!」

    鬼の目から出た大量の涙が、衣服を洗うどころか破りそうな激流となって
    桃太郎に襲いかかる。

    ズゴオオオオッ!

    鬼大将「フハハハッ! 
        激流で身動きが取れなくなったところを、金棒で殴り殺してやる!
        いかに貴様とて、これほどに多彩な技は持ってはいまいて!」

    90 = 1 :

    桃太郎「私に技は一つで十分だ」

    「!?」

    桃太郎「“快刀乱麻を断つ”」

    スパッ

    鬼大将(う、うそ……一振りで水が斬れ──)

    鬼大将(あれ、ワシも斬れて──)

    鬼大将「うぎゃあああっ!」

    一瞬で、鬼大将の胸が一文字に切り裂かれた。

    桃太郎「鬼の大将よ。はっきりいって三年前の方がずっと強かったな……。
        お前の敗因は技におぼれ、故郷である地獄に頼り、
        肝心の自分自身を磨かなかったことだ……!」

    桃太郎「無断で死人を蘇らせたり、亡者を兵にしたり、閻魔大王もさぞご立腹だろう。
        地獄に戻ってたっぷり灸をすえてもらうがいい!」

    鬼大将「む、無念……」ドサッ

    91 = 1 :

    鬼大将が倒れたため、城外の無限増援も途絶えた。

    キジ「どうやら、エネミーが増えなくなったようだねェ」

    サル「桃太郎さんたちが上手くやったようだな……。この戦、勝ったぞ」

    赤鬼「ほざけ! これだけの大軍を相手に戦い、貴様らも限界に近いはず!」
    青鬼「ええい、一気に押し潰せぇっ!」

    イヌ「分かってないワンねぇ。これでようやく力を温存せず、戦えるワン!」

    キジ「“キジも鳴かずば撃たれまい(ビューティフルソング)”!」

    キジの鳴き声が、音速の砲撃となって鬼や亡者を打ち倒す。
    キジの奥の手である。

    イヌ「久々に連携でもやるか、ワン」
    サル「おう。“犬猿の仲”!」

    桃太郎のお供であるイヌとサルは、“犬猿の仲”を発動すると、
    互いの力を高め合うことができる。
    体にかかる負担が大きいため長時間は使えない切り札だ。

    赤鬼「うわあああああっ!」
    青鬼「ひいいいいいいっ!」

    外の戦いは、イヌ、サル、キジの圧勝に終わった。

    92 = 1 :

    新鬼ヶ島は制圧された。

    鬼大将や地獄四天王(猿、舌切り婆、タヌキ、狼)、亡者たちは地獄に送り返され、
    残る鬼たちも全面降伏したのだった。

    後日、桃太郎の家で祝賀会が行われた。
    酒と料理ときび団子がたっぷり振る舞われる。

    桃太郎「みんなのおかげで再び鬼を退治できた! ありがとう!」

    おじいさん「いやぁ、めでたい。桃太郎、みんな、ようやった」
    おばあさん「きび団子もいっぱい作ったから、どんどん食べておくれよ」

    93 = 1 :

    イヌ「ま、ボクらが本気出せばこんなもんワン!」

    キジ「HAHAHA! いやぁ~やっぱりウィンの美酒は最高だねェ!」

    サル「おいおい、あまり飲みすぎるなよ。うぃ~……ヒック」

    「牛糞、お前は食べないのか?」

    牛糞「だから糞が食事しても──」

    「いいから食えッ! 美味いぞ!」グイッ

    牛糞「モグモグ……(美味しい……)」

    ウス「栗どんと牛糞どん、なんか仲良くなったでごわすな」

    「なんでもタヌキを二人で倒したんだとよ。ふん、俺なんて一対一だったぜ」

    カニ「でもみんな無事で何よりだよ」

    94 :

    ふむ

    95 = 1 :

    翌日──

    桃太郎「本当にいいのか?」

    カニ「ええ、ぼくらはやっぱり村暮らしが性に合っていますから。それに……」

    カニ「ぼくと母さんで育てた柿の木も寂しいと思うので」

    桃太郎「──分かった。ならば、これ以上は引き止めまい」

    桃太郎「また会おう」
    イヌ「じゃあなワン!」
    サル「さらばだ!」
    キジ「グッドラック!」

    「ウオオオッ! さようならァッ!」
    ウス「ありがとうでごわす!」
    「ちっ、目から汗が……」
    牛糞「さようなら」

    カニ「また会いましょう! みなさん!」

    96 = 1 :

    カニ一行は桃太郎の家に高い給金で仕えるという話を断り、村に戻った。

    やがて季節は秋になり、あの柿の木に柿が実った。

    カニ「“バカとハサミは使いよう”」

    残った左ハサミをフックのような形に変え、器用に木を登るカニ。

    カニ「どれどれ……」

    パクッ モシャモシャ

    カニ「うんっ、去年より美味い!」

    カニ「あとで栗たちにもおすそ分けしよう」

    カニ「あっ、そうだ。桃太郎さんの家にも持っていこう! 喜んでくれるといいなぁ」

    ふと、カニは天を仰いだ。
    秋の高い空の上で、カニの母が優しく微笑んでくれたような気がした。



                                      ~おわり~

    97 = 55 :

    面白かった

    98 :

    感動した

    99 :

    やっと終わったか、グダグタ引き伸ばしやがって


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