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元スレカニ「柿欲しさに母さんを殺した猿を倒したけど、物語はまだ終わっていなかった」

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1 : 以下、?ちゃんね - 2019/02/26(火) 14:04:54.396 ID:BTpZUmIs0.net (+123,+30,-142)
柿欲しさにカニの母親の命を奪った猿は、カニの子と仲間たちによって成敗された。

ウス「終わったでごわすな……」

「カニ、コイツの死体はどうするんだ?
  お前にはそのハサミでバラバラに切り刻むくらいの権利はあるぜ」

カニ「……いや。彼はぼくが責任を持って丁重に葬るよ。復讐はもう終わっている。
   ここから先は、もう恨みが入り込む余地はない」

「カニ! やっぱおめェいい男だぜ、クゥ~ッ!」

牛糞「……カニらしい答えだ」
2 : 以下、?ちゃんね - 2019/02/26(火) 14:05:16.045 ID:wLBFM/7cM.net (+14,+29,+0)
パンツ脱いだ
3 : 以下、?ちゃんね - 2019/02/26(火) 14:05:46.968 ID:BTpZUmIs0.net (+93,+30,-135)
カニは猿が住んでいた家の横に墓を建てた。

カニ「安らかに眠ってくれ……」

カニ「みんな、ありがとう。おかげで母さんの仇が取れたよ」

「甘すぎるぜ、お前は。俺だったら全身針で刺して川に捨てるくらいはするぜ」

ウス「……いや、おいどんたちが協力したのは、復讐鬼のカニどんではなく、
   母想いのカニどんに、でごわす。これでよかったんでごわす」

「ふん、どいつもこいつも……」

「クゥ~ッ! まったくカニってやつはホント最ッ高ォだぜ!
  まったく体が熱いったらねぇや!」

牛糞(さっきまでお前、囲炉裏に入ってたからな)
4 : 以下、?ちゃんね - 2019/02/26(火) 14:06:31.564 ID:BTpZUmIs0.net (+93,+30,-164)
カニ「じゃあ皆さん、さようなら」

ウス「またなにかあったら、呼ぶでごわすよ」

「ふん、せっかく俺たちが出向いてお袋の仇を討ってやったんだ。
  せいぜい長生きするんだな。俺たちの労力を無駄にすんなよ」

「あばよッ! 俺たちゃもう切っても切れない親友(マブダチ)だぜ!
  おっかさんと育てた柿の木、大事にしろよなッ!」

牛糞「またな」

カニ「うん……」

カニは争いの火種となった柿の木を見て、少し涙した。
5 : 以下、?ちゃんね - 2019/02/26(火) 14:06:46.236 ID:Vpl/IxwlK.net (+24,+29,-3)
柿の木の根元に埋めればいい肥料になる
6 : 以下、?ちゃんね - 2019/02/26(火) 14:07:31.711 ID:BTpZUmIs0.net (+95,+30,-69)
復讐から三日後──

山奥にある猿だけが暮らす村。

猿A「大変だ、大変だ!」

猿B「どうしたんだ?」

猿A「山向こうにある村に住んでる猿が、殺されたんだってよ!」

猿B「な、なんだと!?」

猿A「こんなこと、許せんよな!」

猿B「あたぼうよ! 大将に復讐してもらおう!」

猿A「おう!」
7 : 以下、?ちゃんね - 2019/02/26(火) 14:08:23.538 ID:BTpZUmIs0.net (+95,+30,-204)
サル「どうした、みんな血相変えて」

猿A「山向こうの村の猿が殺された! この村の出身者だ!」

猿B「同族を殺されて、黙ってはいられない! 大将、どうか仇討ちを!」

猿C「このまま殺されたままじゃ、腹の虫がおさまりません!」

サル「うむ……(元々アイツは悪辣な性格で、この村にいた時も評判が悪かった)」

サル(今回の件も、アイツの自業自得な可能性が高いが……。
   同族を殺されたコイツらの怒りは収まりそうもない)

サル(仇討ちをするか否か、あの人に相談してみるか……)
8 : 以下、?ちゃんね - 2019/02/26(火) 14:09:13.242 ID:OycLTFW8d.net (+8,+23,-1)
見てるぞ
9 : 以下、?ちゃんね - 2019/02/26(火) 14:09:19.736 ID:BTpZUmIs0.net (+95,+30,-308)
サルは都にある大きな屋敷に向かった。

桃太郎「──なるほど。だいたい話は分かった」

サル「はい……。桃太郎さんとの手柄があって、今では俺が大将ですが……
   仇を討たないことには、どうにも収まりそうもなくて」

サル「……すいません。桃太郎さんも鬼の残存勢力の調査で忙しいというのに、
   こんなしょうもない身内の相談なんか……」

桃太郎「とにかくその猿がいた村に、行ってみよう」

サル「えっ!? い、いや、桃太郎さんに迷惑かけるわけには」

桃太郎「猿が殺された、というのは事実なんだろう?
    相手がかなりの武力を持った悪党集団という可能性もある」

サル「だったら、なおさら──」

桃太郎「三年前、お前たちはきび団子一つであの恐ろしい鬼ヶ島に行ってくれた。
    それに比べれば、どうということはないさ」

サル「も、桃太郎さん……!」

ザッ
10 : 以下、?ちゃんね - 2019/02/26(火) 14:10:02.061 ID:BTpZUmIs0.net (+95,+30,-234)
イヌ「──話は聞かせてもらったワン」

キジ「水臭いじゃないか。ウォータースメル!」

サル「……な、なんでお前ら」

イヌ「ボクの情報網をナメたらいかんワン! この辺一帯の野犬は皆ボクの手下ワン!
   まして猿の大将が単独で都に入ったなんて、すぐ耳に入るワン」

キジ「そしてミーもイヌに呼ばれてコールされて、はせ参じたというわけさ」

サル「くっ……! ありがとう……! でもキジ、なんか喋り方変じゃないか?」

キジ「つい最近まで、この羽根で南蛮まで旅行というトラベルをしててね。
   そこでイングリッシュという言語を学んだのさ」

サル(いんぐりっしゅ……? きっと南蛮で変なもん拾い食いしたんだな)

桃太郎「ふふ、久々に鬼退治組が揃ったな。さっそく向かうとしよう」
11 : 以下、?ちゃんね - 2019/02/26(火) 14:10:42.329 ID:fJyKB3ie0.net (+2,+17,+0)
ほう
12 : 以下、?ちゃんね - 2019/02/26(火) 14:11:10.418 ID:BTpZUmIs0.net (+93,+30,-156)
桃太郎といえば、希代の英雄である。
彼がお供三匹を連れて、山向こうの村に向かうという情報は、すぐに広まった。

むろん、カニも家でその知らせを聞いていた。

カニ(おそらくぼくの件だ……。猿は同族の死に対して非常に敏感だ。
   大将であるサルさんに伝わり、彼が桃太郎さんに伝える。
   よくよく考えれば、これは当然の流れだ)

バタバタバタッ!

ウス「カニどん!」
「カニ!」
「カニィッ!」
牛糞「カニ」

復讐を手伝った四人が押しかけてきた。

カニ「……みんな」
13 : 以下、?ちゃんね - 2019/02/26(火) 14:11:48.452 ID:BTpZUmIs0.net (+91,+30,-228)
「桃太郎がこの村に来るそうだな。やっぱあの件か?」

カニ「間違いないだろう」

ウス「くっ、うかつでごわしたな。まさか桃太郎さんが出てくるとは……」

「いわんこっちゃない、墓なんか建てるからだ。
  きっちり証拠隠滅してりゃ、行方不明でカタがついてただろうぜ」

「蜂ィ! 今更ンなこといってもしょうがねェだろうがよッ!
  こうなりゃ、どうにかして逃げるか、戦うか……」

牛糞「どちらも無理だな」

「なんでだよッ!」

牛糞「かつてあの鬼ヶ島を制圧した一行に、戦闘に勝つのは不可能だ。
   といって、彼らの情報網から逃げ切るのもまた至難」
14 : 以下、?ちゃんね - 2019/02/26(火) 14:12:20.482 ID:/6dJsKhW0.net (+19,+29,-2)
牛のウンコが喋ってる・・・!!
15 : 以下、?ちゃんね - 2019/02/26(火) 14:12:59.320 ID:BTpZUmIs0.net (+91,+30,-217)
「戦おうぜ! 逃げるくらいなら、戦ってくたばった方がマシだッ!」

ウス「おいどんも賛成でごわす! 桃太郎さんに斬られて薪にされても
   悔いはないでごわす!」

「いや、逃げた方が賢いだろ。牛糞も至難、っていってるしな。
  不可能ではないってことだろ?」

牛糞「ああ。この村を捨てて、逃げた方が我々の生存確率は高まるだろう」

カニ「……いや戦うことも逃げることもないよ」

「えっ! ンな方法あるのかよ!?」

カニ「いい方法があるんだ。ちょっと準備するから、君たちはここで待っててくれ」

「ふん。大口叩いておいて、失望させるなよ」
16 : 以下、?ちゃんね - 2019/02/26(火) 14:13:36.293 ID:BTpZUmIs0.net (+65,+30,+0)
まもなく、桃太郎一行がカニたちが住む村に到着した。

桃太郎「ここか、山向こうの村は……」

サル「あそこが殺された猿の家とのことです」

イヌ「ん? だれかいるワン」

猿の家には、カニが一匹だけ立っていた。

キジ「カニのチャイルドが、こんなプレイスで何をしてるんだい?」

カニ「桃太郎さん、サルさん、イヌさん、キジさん。あなた方の用件は分かっています。
   ここの猿を殺した犯人探しと仇討ちに来たのでしょう」

キジ「おおっ! ミーのクエスチョンがスルーされた! HAHAHA!」

桃太郎「君は殺人……じゃない殺猿事件について、何か知ってるのか?」

カニ「知っているもなにも、ぼくが猿を殺した犯人です」
17 : 以下、?ちゃんね - 2019/02/26(火) 14:14:36.631 ID:BTpZUmIs0.net (+95,+30,-195)
イヌ「証拠はあるのかワン?」

カニ「家のそばに墓があるでしょう。あれにぼくのハサミの跡がいっぱいあります」

サル「しかし、カニに猿を倒せるとは思えんがな……」

カニ「罠にハメました。よく焼いた石を投げて、針で刺し、つまずかせたところに
   屋根の上から岩を落として殺しました。
   埋まった死体を調べれば、証明できると思います」

キジ「なかなかクレバーな殺し方だねェ」

桃太郎「……分かった。とにかく我々にも事情があるんだ。
    君には我々と一緒に来てもらうことになるが、いいか?」

カニ「はい」
  (よし……これで他の四人に害は及ばない)

「ちょっと待ったァッ!」
18 : 以下、?ちゃんね - 2019/02/26(火) 14:15:28.763 ID:BTpZUmIs0.net (+93,+30,-260)
カニ「な、なんで……」

「カニィッ! てめェ、俺たちは親友(ダチ)じゃなかったのかよォッ!」

ウス「やっぱり、こういうことだったでごわすか……」

「いったはずだ。俺たちの労力を無駄にすることは許さん、と」

牛糞「我々は共犯だ」

四人は桃太郎たちに突っ込んでいく。

ドドドドッ

イヌ「な、なんだワン!?」

桃太郎「イヌ、サル、キジ。相手してやれ」

イヌ「分かったワン」
サル「了解です」
キジ「イエッサー!」

カニ「まっ……待って下さい! 彼らはなんの関係も──」
19 : 以下、?ちゃんね - 2019/02/26(火) 14:16:06.707 ID:BTpZUmIs0.net (+95,+30,-181)
ウス「行くでごわす!」ドガッ

サル「いい体当たりだったぞ。だが、長年の戦いで鍛えた俺には到底及ばん」

サルは軽々とウスを投げ飛ばした。

ウス「うわぁ~っ!」ドシン!


「あのウスがあっさりと……!(速さでかき乱してやる!)」

キジ「飛行スピードでミーに勝つなんて、インポッシブルさ!」バシッ

キジの羽で蜂は叩き落とされた。

「ぐぁっ……!」
20 : 以下、?ちゃんね - 2019/02/26(火) 14:17:03.736 ID:BTpZUmIs0.net (+81,+30,-227)
「ウスッ! 蜂ッ! ちくしょオオオオッ!」

イヌ「勇敢な突撃だワン。でもわざわざ突っ込んできてくれて助かるワン」パクッ

イヌの歯で栗は噛まれた。

「ぐわあぁッ!」


牛糞(やはりこうなるか……。ならば勝てずとも、奴らの口に入って糞の味を
   思い知らせてから死んでやる)ダッ

キジ「あいにく、ミーにスカトロジーな趣味はなくてねェ」ビュオッ

羽で風を起こし、牛糞を吹き飛ばす。

イヌ「こうしてやるワン!」ザザザッ

砂をかけて、牛糞を埋める。

サル「終わりだ」ドンッ

埋めた個所に大きめの石を置き、牛糞を完全に封印した。

牛糞「~~~~!」
21 : 以下、?ちゃんね - 2019/02/26(火) 14:17:18.428 ID:5HcpGTDE0.net (+24,+29,-7)
カニ「えん罪です!サルだけに」
22 : 以下、?ちゃんね - 2019/02/26(火) 14:18:10.757 ID:BTpZUmIs0.net (+93,+30,-228)
カニ「あ、あ、あ……。みんなァ~!」

桃太郎「安心しろ。四人とも死んではいないよ」

サル「ウスと蜂は気絶してるだけだ」

イヌ「栗も甘噛みにしといたから、生きてるワン(危うく食うところだったけど)」

キジ「牛糞君も大地にドレインされる前に、掘り起こしてやればライフは助かるよ」

カニ(よ、よかった……!)

桃太郎「さてカニ君。今回の殺猿事件について、知ってることを
    全て偽りなく話してもらおうか」

桃太郎「嘘を感じた場合はたとえ善意でついた嘘であろうと──斬る」

桃太郎は抜刀し、切っ先をカニに突きつけた。

カニ「分かりました……。全てお話しします……!」
23 : 以下、?ちゃんね - 2019/02/26(火) 14:18:27.740 ID:vpWAvk5Ca.net (+24,+29,-13)
カニ「まだ泣けるだけの感情は持っているようだ・・」
24 : 以下、?ちゃんね - 2019/02/26(火) 14:19:27.377 ID:BTpZUmIs0.net (+95,+30,-226)
カニは全てを話した。

サル「くっ……! あの猿のツラ汚しめ! 悪いのはこっちじゃないか!
   しかも墓まで建ててもらって、むしろ謝りたいくらいだ」

桃太郎「どうする? サル」

サル「なんとか村の連中を説得するしかありません。
   ここでこのカニを討てば、それこそ桃太郎さんの名誉にまで傷がつく」

カニ「あの……ぼくをその村に連れて行ってくれませんか」

サル「!」

カニ「サルさんに大将として説得して頂いても、納得しない人は大勢出るはず。
   おそらく無視してぼくを狙いに来る者も出るでしょう。ならばいっそ──」

桃太郎「仮に私刑となっても、私は止めないが、いいのか?」

カニ「覚悟の上です」
25 : 以下、?ちゃんね - 2019/02/26(火) 14:20:58.207 ID:BTpZUmIs0.net (+91,+30,-231)
やられた四人が目を覚ました。

「あだだ……ッ!」
ウス「痛かったでごわす……」
(ここまで力の差があったとは……)
牛糞「……不覚だった」

カニ「みんな、ぼくはこれから復讐の単独犯として、サルさんの山村に行く」

四人「!」

カニ「たとえぼくが殺されることになっても、ぼくはこの件は今日で幕引きにしたい。
   もし友としてぼくの最期を見届けてくれるなら、ついてきてくれるかい?」

牛糞「(カニが殺されても復讐は無し、ということか……)分かった。俺は行こう」
ウス「おいどんも行くでごわす!」
「見届けさせてもらうぜ……親友(ダチ)としてな……ッ!」
「行ってやるよ。殻とハサミは拾ってやる」

カニ「みんな、ありがとう」
26 : 以下、?ちゃんね - 2019/02/26(火) 14:22:01.956 ID:BTpZUmIs0.net (+95,+30,-170)
桃太郎とカニたちは猿の村に到着した。

猿A「おお、大将! お帰りなさいませ!
   ……おお、桃太郎さんたちまで! ようこそいらっしゃいました!」

猿B「──と、妙な連中もいるようですが、彼らはいったい?」

サル「このカニが……今回山向こうの村の猿を殺した犯人だ」

猿A「なっ……!?」
猿B「え!?」
猿C「ど、どういうことです!? なぜ連れてきたんです!」

サル「今すぐ村の猿を全員集めてくれ」

カニ「……」
27 : 以下、?ちゃんね - 2019/02/26(火) 14:22:38.233 ID:BTpZUmIs0.net (+95,+30,-206)
キジ「モンキーたち、殺気立ってるねェ……」
イヌ「当然だワン。同族を殺した犯人が、堂々と村に乗り込んできたわけだし」

サル「カニ君。お手数だが、我々にした話をもう一度してくれ」

カニ「……分かりました」



カニは全てを話した。
ただしカニの意志で、実行犯である四人の名は伏せられ、全ての罪をカニが背負った。
四人もまたカニの強い意志を汲み、事前にやむなく了承していた。

カニ「──以上、です」

サル「俺はこの話を聞き、殺されたアイツにも非があったと判断し、
   カニをその場で討つことはしなかった」

サル「この村で皆と話したいといったのも、他ならぬカニの意志だ。
   これを踏まえて、みんなで彼をどうするか決めてくれ」
28 : 以下、?ちゃんね - 2019/02/26(火) 14:23:32.697 ID:BTpZUmIs0.net (+93,+30,-175)
「ふざけんなッ!」

猿A「ひどいですぜ大将、なんで殺してくれなかったんですか!」

猿B「母親を殺した猿を、そいつは殺した。なら、俺たちにも復讐の権利があるッ!」

猿C「そうだそうだ! 血祭りに上げろッ!」

怒号が村中に響き渡る。

サル(くっ……やはりとても抑えられるものではない)

桃太郎「……」

「くっ……!」
ウス「や、やはり……ダメでごわすか」
(こうなることは分かってたんだ! カニ、お前は愚直すぎるんだよ……!)
牛糞「ここまでか……」

カニ(母さん、やるべきことはやりました。息子に悔いはありません。
   すぐ会うことになってしまいますが、どうかお許しを)
29 : 以下、?ちゃんね - 2019/02/26(火) 14:24:32.089 ID:BTpZUmIs0.net (+95,+30,-112)
カニ「分かりました。ぼくが彼を殺したように、あなた方にも復讐する権利はあります」

カニは猿Aの前にやってきた。

カニ「どうぞ、カニ鍋にして下さい。
   しがないサワガニですが、悪い味ではないはずです」

猿A「な……!」

カニ「どうぞ」

猿A「(このカニ……なんて目をしてやがる)い、いや俺は」

カニ「では、そちらの方。どうぞ」

猿B「え!? え……と」

カニ「では、そちらの方」

猿C「うわっ! 俺もちょっと……」
30 : 以下、?ちゃんね - 2019/02/26(火) 14:24:35.118 ID:S0gSlv/Ma.net (+14,+29,+0)
嫌いじゃないわ
31 : 以下、?ちゃんね - 2019/02/26(火) 14:25:10.537 ID:BTpZUmIs0.net (+95,+30,+0)
カニはほぼ全員の前を回ったが、猿たちは誰も手出しができなかった。

桃太郎(カニ君の愚直すぎる行動が、逆に猿たちの穴をみごとに突いたようだな)

桃太郎(殺された猿は同族とはいえ、この村を出ていた他人も同然……。
    猿たちは集団心理で盛り上がってたとはいえ実のところ、
    ひとりひとりの行動意欲はそこまで高くなかった)

桃太郎(なおかつ、殺された猿に明らかな非があったという話を聞かされた直後、
    この大勢の前で死刑執行者として振る舞うというのは、なかなか難しい。
    みんな『大将、もしくは他の誰かがやる』と思っていただろうからな)

桃太郎(……カニ君の勝利、か)

ジャキッ!

桃太郎が刀を抜き、天に掲げる。

桃太郎「猿たち!」

猿たち「は、はいっ!」

桃太郎「このカニの処遇については、この私、桃太郎が預かりたいと思う!
    異存がある者はあるか!?」
32 : 以下、?ちゃんね - 2019/02/26(火) 14:25:21.643 ID:x7nGooula.net (+19,+29,-1)
猿D「美味い!」
33 : 以下、?ちゃんね - 2019/02/26(火) 14:25:46.084 ID:5HcpGTDE0.net (+24,+29,-30)
サワガニの分際でカニ鍋は図が高い
34 : 以下、?ちゃんね - 2019/02/26(火) 14:26:31.465 ID:BTpZUmIs0.net (+93,+30,-254)
猿A「い、いや桃太郎さんがそうおっしゃるなら……なぁ?」
猿B「うん、俺たちはなにも……」
猿C「ま、まぁ任せていいんじゃないか? ……桃太郎さんなら」

桃太郎「かたじけない」チャッ

こうしてカニは私刑を免れた。

サル(す、すごい……! カニが作った真空状態をうまくまとめ上げた。
   やはり桃太郎さんには上に立つ者としての天性の素質がある)

キジ「さっすがミーたちのリーダーだねぇ」
イヌ「見事だワン」

「カニの奴、助かったのか……!?」
牛糞「そのようだな」
ウス「よ、よかったでごわす!」
「悪運の強いヤロウだぜ、まったく」

カニ(ぼくは助かった……のか……?)
35 : 以下、?ちゃんね - 2019/02/26(火) 14:27:41.621 ID:BTpZUmIs0.net (+87,+30,+0)
カニたちは桃太郎の屋敷に招待された。

カニ「本当にありがとうございました」

桃太郎「私は何もしていないよ。君のまっすぐな行動が、猿たちに届いただけの話さ」

「今日は最高だぜッ! 酒がうまいッ!」

ウス「いや~よかったでごわすなぁ~うんうん。メシもうまいでごわす、うんうん」

「ふん。あの猿ども、とんだ烏合の衆だったな」

牛糞「──ところで、桃太郎さん。
   カニを助けたのは、単なる正義感や同情心から、というわけではないでしょう?」

桃太郎「ニオイも鋭いが、頭も鋭いな、君は」

桃太郎「……実は、君たちを見込んで頼みたいことがあるんだ」

桃太郎「あ、あと牛糞君。この中に入ってもらっていいかな? やっぱりニオイが……」

牛糞「あ、すいません」

牛糞は臭いを遮断する箱の中に入った。
36 : 以下、?ちゃんね - 2019/02/26(火) 14:27:52.822 ID:KGaIL1/i0.net (+24,+29,-16)
カニは肉食だから食べちゃうんじゃないのか
37 : 以下、?ちゃんね - 2019/02/26(火) 14:28:14.059 ID:BTpZUmIs0.net (+91,+30,-306)
桃太郎「単刀直入にいおう。鬼退治を手伝ってくれないか?」

カニ「鬼」
「退」
「治」
牛糞「で」
ウス「ごわすか!?」

桃太郎「私のお供との戦いや、これまでのやり取りを見ていて、
    君たちは鬼に対抗できる逸材だと感じられた」

「ちょっと待てよ。鬼はあんたらが退治したんじゃなかったのか?」

桃太郎「ああ。三年前、私はイヌ、サル、キジを連れて鬼ヶ島に攻め込んだ。
    彼らは降伏し、大部分は改心して世を苦しめるようなことはなくなった」

桃太郎「だが……」

牛糞「一部、まだ過激な鬼たちが残っていた、と……」

桃太郎「うむ。派手に暴れて攻め込まれたことを反省してか、水面下で活動しており
    なかなか尻尾を見せない。私も手を尽くして根城を調査させているが
    どこにあるかすら分かっていない」
38 : 以下、?ちゃんね - 2019/02/26(火) 14:29:13.395 ID:BTpZUmIs0.net (+93,+30,-195)
桃太郎「しかも、彼らはどうやら鬼以外の力も集めているらしく、
    おそらくは三年前よりも強大な軍勢になっているはずだ」

桃太郎「いたずらに戦力を増やせば、無駄に犠牲者を増やすばかりだろう。
    だから三年前のように数名程度の少数精鋭で臨みたい」

桃太郎「君たちならば、私とお供三名で鍛えれば、短期間のうちに
    立派な戦力になると踏んだ。
    ──いかがだろうか」

カニたちは一瞬お互いに顔を見合わせると、同時に返事をした。

カニ「やります」
「やってやらァッ!」
「やるぜ」
ウス「やるでごわす!」
牛糞「引き受けましょう」
39 : 以下、?ちゃんね - 2019/02/26(火) 14:30:03.305 ID:9VxiXNxsa.net (+19,+29,-16)
猿だけ一族居るのズルい
40 : 以下、?ちゃんね - 2019/02/26(火) 14:30:05.250 ID:BTpZUmIs0.net (+95,+30,-154)
翌日から、カニたちの厳しい特訓が始まった。
師匠には、それぞれの適正にあった者がつくことになった。

空中戦タイプの蜂の師匠は、キジ。

キジ「力で飛ぶんじゃない! もっとウインドに乗らなければ!」

(ういんど、って何……?)


俊敏さが長所の栗の師匠は、イヌ。

イヌ「速いだけではダメワン! 攻撃に緩急をつけてこそ速さが生きるワン!」

「うおおおおッ! 緩急つけるってすっげェ難しいぜェッ!」


肉弾戦が得意なウスは、サル。

サル「生まれながらの体格に頼りすぎだ! 技を身につけるのだ!」

ウス「うっす!」
41 : 以下、?ちゃんね - 2019/02/26(火) 14:31:08.510 ID:BTpZUmIs0.net (+91,+30,-187)
特殊タイプの牛糞は、おじいさんとおばあさん。

おじいさん「さてと、始めようか。ばあさんや」
おばあさん「そうだねえ、おじいさん」

牛糞「……ゴクリ(いったい何が始まるんだ!?)」


そしてカニは直々に桃太郎が鍛えることになった。

桃太郎「君の最大の武器は、そのハサミだ。さぁ遠慮なくかかってこい」

カニ「はいっ!」

ガキン! ガキン!

桃太郎「甘いっ! ──胴ッ!」

ドゴッ!

カニ「ぐぁっ!」
42 : 以下、?ちゃんね - 2019/02/26(火) 14:32:02.029 ID:ijtdQteP0.net (-27,-15,+0)
43 : 以下、?ちゃんね - 2019/02/26(火) 14:32:18.141 ID:BTpZUmIs0.net (+95,+30,-183)
こうして瞬く間に一ヶ月が過ぎた。

桃太郎「……今日、奴らの根城が見つかった」

カニ「本当ですか!? ──ついに戦いですね」

桃太郎「君はこの一ヶ月よく頑張った。本当に強くなったよ。
    だが君を連れていくかどうかは、今から行う試験で決める」

カニ「試験?」

桃太郎「これから君に本気で打ち込む。むろん、真剣でな」

カニ(真剣……!)

桃太郎「これを防げれば合格だ。心の準備はいいか?」

カニ「はい!」

桃太郎「行くぞッ!」

ビュオッ!
44 : 以下、?ちゃんね - 2019/02/26(火) 14:32:57.395 ID:ofNMdMXMd.net (+8,+23,-1)
熱いな
45 : 以下、?ちゃんね - 2019/02/26(火) 14:33:34.087 ID:BTpZUmIs0.net (+91,+30,-197)
翌日、桃太郎の家に全員が集合した。

桃太郎「みんな、連絡した通り新しい鬼ヶ島の場所が分かった。
    出発は明朝だ。各自今日一日で思い残すことのないよう準備してくれ」

サル「三年前の戦いを思い出すよ」

キジ「久々に、ミーのソウルがバーニングしてきたねェ」

イヌ「今度こそやっつけてやるワン!」

「燃えてきたぜェッ!」

ウス「おいどんを見込んでくれたみなさんのためにも、絶対勝つでごわす!」

「鬼どもがいると、色々面倒だしな」

牛糞「カワニセンタク……ヤマニシバカリ……」

カニ「明日か……」
  (一度、村に戻っておこうかな)
46 : 以下、?ちゃんね - 2019/02/26(火) 14:34:10.513 ID:btZ8GxoD0.net (+24,+29,-26)
サワガニ程の的に胴を当てるの激難やな足もたくさんあるし
47 : 以下、?ちゃんね - 2019/02/26(火) 14:34:12.639 ID:BTpZUmIs0.net (+91,+30,-207)
カニたちは身辺整理のため、山向こうの村に戻った。
そして、村では奇妙なことが起こっていた。

カニ「猿の家に建てた墓が掘り返されて、埋めていた死体がなくなってる!」

牛糞「ドンブラコ……ドンブラコ……」

「なんだと? どういうことだよ」

カニ「分からない……。でも、なんだか嫌な予感がする」

「ハッハッハ、気にしすぎじゃねぇのか?
  おおかた猿村の連中が、別の場所に弔うとかしたんだろうぜ」

カニ「……ならいいんだけど」

ウス「心配いらんでごわすよ!」

牛糞「不可解ではあるが、今は鬼退治に意識を集中すべきだな」

カニ「(あ、戻った)うん……」
48 : 以下、?ちゃんね - 2019/02/26(火) 14:35:18.836 ID:BTpZUmIs0.net (+95,+30,-167)
こうして一抹の不安を抱えつつ、翌日となった。

おばあさん「桃太郎、みんな、気をつけてな。これを持ってゆき」

きび団子を受け取る桃太郎。

桃太郎「ありがとう、おばあさん。行ってきます!」

おばあさん「無理するんじゃないよ。危なくなったらお逃げ」
おじいさん「気をつけてな、みんな」

桃太郎一行の旅は、順調に続いた。
49 : 以下、?ちゃんね - 2019/02/26(火) 14:35:55.740 ID:BTpZUmIs0.net (+89,+30,+0)
三日後、鬼のアジトに最も近い海岸に到着した。

桃太郎「あれが新しい鬼ヶ島だ。ほとんど人気のない地域なので発見が遅れた。
    これから小舟で乗り込むが、きび団子を食べて力を蓄えよう」

「これから暴れるってのに、食べて大丈夫か?」

桃太郎「心配いらない。すぐ腹ごなしすることになるさ。
    栄養も味も抜群だから、食べておいた方がいい」

パクパクモグモグ

イヌ「やっぱりきび団子は最高ワン!」

「ンめえエエエエッ! こんな美味い団子始めてだッ!」

ウス「うまいでごわす! たまらんでごわす!」

「ま、悪くはないな(美味すぎる……!)」

キジ「う~ん、デェ~リシャスだねェ」

サル「おばあさんの腕は全く衰えてないな。むしろ上がってるくらいだ」

カニ「柿にも負けないくらい美味しいや……。ところで牛糞は食べないの?」

牛糞「糞が食事をしてどうする」
50 : 以下、?ちゃんね - 2019/02/26(火) 14:37:52.737 ID:BTpZUmIs0.net (+95,+30,-130)
一方、新鬼ヶ島では──

赤鬼「桃太郎どもが、舟でこちらに向かってきやす!」

鬼大将「くくく、ついにここを突きとめたか。桃太郎!」

鬼大将「知らぬお供もいるようだが、こちらにも新戦力がいるのだ!
    桃太郎に敗れ、地獄に逃げ帰った時に見つけた強力な戦士が四人もな。
    名づけて“地獄四天王”!」

赤鬼「(うわっ、安易……)ではあっしは青鬼とともに奴らを迎え討ちます」

鬼大将「うむ、頼んだぞ! ガッハッハ!」
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