元スレカニ「柿欲しさに母さんを殺した猿を倒したけど、物語はまだ終わっていなかった」
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1 :
柿欲しさにカニの母親の命を奪った猿は、カニの子と仲間たちによって成敗された。
ウス「終わったでごわすな……」
蜂「カニ、コイツの死体はどうするんだ?
お前にはそのハサミでバラバラに切り刻むくらいの権利はあるぜ」
カニ「……いや。彼はぼくが責任を持って丁重に葬るよ。復讐はもう終わっている。
ここから先は、もう恨みが入り込む余地はない」
栗「カニ! やっぱおめェいい男だぜ、クゥ~ッ!」
牛糞「……カニらしい答えだ」
2 :
パンツ脱いだ
3 = 1 :
カニは猿が住んでいた家の横に墓を建てた。
カニ「安らかに眠ってくれ……」
カニ「みんな、ありがとう。おかげで母さんの仇が取れたよ」
蜂「甘すぎるぜ、お前は。俺だったら全身針で刺して川に捨てるくらいはするぜ」
ウス「……いや、おいどんたちが協力したのは、復讐鬼のカニどんではなく、
母想いのカニどんに、でごわす。これでよかったんでごわす」
蜂「ふん、どいつもこいつも……」
栗「クゥ~ッ! まったくカニってやつはホント最ッ高ォだぜ!
まったく体が熱いったらねぇや!」
牛糞(さっきまでお前、囲炉裏に入ってたからな)
4 = 1 :
カニ「じゃあ皆さん、さようなら」
ウス「またなにかあったら、呼ぶでごわすよ」
蜂「ふん、せっかく俺たちが出向いてお袋の仇を討ってやったんだ。
せいぜい長生きするんだな。俺たちの労力を無駄にすんなよ」
栗「あばよッ! 俺たちゃもう切っても切れない親友(マブダチ)だぜ!
おっかさんと育てた柿の木、大事にしろよなッ!」
牛糞「またな」
カニ「うん……」
カニは争いの火種となった柿の木を見て、少し涙した。
5 :
柿の木の根元に埋めればいい肥料になる
6 = 1 :
復讐から三日後──
山奥にある猿だけが暮らす村。
猿A「大変だ、大変だ!」
猿B「どうしたんだ?」
猿A「山向こうにある村に住んでる猿が、殺されたんだってよ!」
猿B「な、なんだと!?」
猿A「こんなこと、許せんよな!」
猿B「あたぼうよ! 大将に復讐してもらおう!」
猿A「おう!」
7 = 1 :
サル「どうした、みんな血相変えて」
猿A「山向こうの村の猿が殺された! この村の出身者だ!」
猿B「同族を殺されて、黙ってはいられない! 大将、どうか仇討ちを!」
猿C「このまま殺されたままじゃ、腹の虫がおさまりません!」
サル「うむ……(元々アイツは悪辣な性格で、この村にいた時も評判が悪かった)」
サル(今回の件も、アイツの自業自得な可能性が高いが……。
同族を殺されたコイツらの怒りは収まりそうもない)
サル(仇討ちをするか否か、あの人に相談してみるか……)
8 :
見てるぞ
9 = 1 :
サルは都にある大きな屋敷に向かった。
桃太郎「──なるほど。だいたい話は分かった」
サル「はい……。桃太郎さんとの手柄があって、今では俺が大将ですが……
仇を討たないことには、どうにも収まりそうもなくて」
サル「……すいません。桃太郎さんも鬼の残存勢力の調査で忙しいというのに、
こんなしょうもない身内の相談なんか……」
桃太郎「とにかくその猿がいた村に、行ってみよう」
サル「えっ!? い、いや、桃太郎さんに迷惑かけるわけには」
桃太郎「猿が殺された、というのは事実なんだろう?
相手がかなりの武力を持った悪党集団という可能性もある」
サル「だったら、なおさら──」
桃太郎「三年前、お前たちはきび団子一つであの恐ろしい鬼ヶ島に行ってくれた。
それに比べれば、どうということはないさ」
サル「も、桃太郎さん……!」
ザッ
10 = 1 :
イヌ「──話は聞かせてもらったワン」
キジ「水臭いじゃないか。ウォータースメル!」
サル「……な、なんでお前ら」
イヌ「ボクの情報網をナメたらいかんワン! この辺一帯の野犬は皆ボクの手下ワン!
まして猿の大将が単独で都に入ったなんて、すぐ耳に入るワン」
キジ「そしてミーもイヌに呼ばれてコールされて、はせ参じたというわけさ」
サル「くっ……! ありがとう……! でもキジ、なんか喋り方変じゃないか?」
キジ「つい最近まで、この羽根で南蛮まで旅行というトラベルをしててね。
そこでイングリッシュという言語を学んだのさ」
サル(いんぐりっしゅ……? きっと南蛮で変なもん拾い食いしたんだな)
桃太郎「ふふ、久々に鬼退治組が揃ったな。さっそく向かうとしよう」
11 :
ほう
12 = 1 :
桃太郎といえば、希代の英雄である。
彼がお供三匹を連れて、山向こうの村に向かうという情報は、すぐに広まった。
むろん、カニも家でその知らせを聞いていた。
カニ(おそらくぼくの件だ……。猿は同族の死に対して非常に敏感だ。
大将であるサルさんに伝わり、彼が桃太郎さんに伝える。
よくよく考えれば、これは当然の流れだ)
バタバタバタッ!
ウス「カニどん!」
蜂「カニ!」
栗「カニィッ!」
牛糞「カニ」
復讐を手伝った四人が押しかけてきた。
カニ「……みんな」
13 = 1 :
蜂「桃太郎がこの村に来るそうだな。やっぱあの件か?」
カニ「間違いないだろう」
ウス「くっ、うかつでごわしたな。まさか桃太郎さんが出てくるとは……」
蜂「いわんこっちゃない、墓なんか建てるからだ。
きっちり証拠隠滅してりゃ、行方不明でカタがついてただろうぜ」
栗「蜂ィ! 今更ンなこといってもしょうがねェだろうがよッ!
こうなりゃ、どうにかして逃げるか、戦うか……」
牛糞「どちらも無理だな」
栗「なんでだよッ!」
牛糞「かつてあの鬼ヶ島を制圧した一行に、戦闘に勝つのは不可能だ。
といって、彼らの情報網から逃げ切るのもまた至難」
14 :
牛のウンコが喋ってる・・・!!
15 = 1 :
栗「戦おうぜ! 逃げるくらいなら、戦ってくたばった方がマシだッ!」
ウス「おいどんも賛成でごわす! 桃太郎さんに斬られて薪にされても
悔いはないでごわす!」
蜂「いや、逃げた方が賢いだろ。牛糞も至難、っていってるしな。
不可能ではないってことだろ?」
牛糞「ああ。この村を捨てて、逃げた方が我々の生存確率は高まるだろう」
カニ「……いや戦うことも逃げることもないよ」
栗「えっ! ンな方法あるのかよ!?」
カニ「いい方法があるんだ。ちょっと準備するから、君たちはここで待っててくれ」
蜂「ふん。大口叩いておいて、失望させるなよ」
16 = 1 :
まもなく、桃太郎一行がカニたちが住む村に到着した。
桃太郎「ここか、山向こうの村は……」
サル「あそこが殺された猿の家とのことです」
イヌ「ん? だれかいるワン」
猿の家には、カニが一匹だけ立っていた。
キジ「カニのチャイルドが、こんなプレイスで何をしてるんだい?」
カニ「桃太郎さん、サルさん、イヌさん、キジさん。あなた方の用件は分かっています。
ここの猿を殺した犯人探しと仇討ちに来たのでしょう」
キジ「おおっ! ミーのクエスチョンがスルーされた! HAHAHA!」
桃太郎「君は殺人……じゃない殺猿事件について、何か知ってるのか?」
カニ「知っているもなにも、ぼくが猿を殺した犯人です」
17 = 1 :
イヌ「証拠はあるのかワン?」
カニ「家のそばに墓があるでしょう。あれにぼくのハサミの跡がいっぱいあります」
サル「しかし、カニに猿を倒せるとは思えんがな……」
カニ「罠にハメました。よく焼いた石を投げて、針で刺し、つまずかせたところに
屋根の上から岩を落として殺しました。
埋まった死体を調べれば、証明できると思います」
キジ「なかなかクレバーな殺し方だねェ」
桃太郎「……分かった。とにかく我々にも事情があるんだ。
君には我々と一緒に来てもらうことになるが、いいか?」
カニ「はい」
(よし……これで他の四人に害は及ばない)
「ちょっと待ったァッ!」
18 = 1 :
カニ「な、なんで……」
栗「カニィッ! てめェ、俺たちは親友(ダチ)じゃなかったのかよォッ!」
ウス「やっぱり、こういうことだったでごわすか……」
蜂「いったはずだ。俺たちの労力を無駄にすることは許さん、と」
牛糞「我々は共犯だ」
四人は桃太郎たちに突っ込んでいく。
ドドドドッ
イヌ「な、なんだワン!?」
桃太郎「イヌ、サル、キジ。相手してやれ」
イヌ「分かったワン」
サル「了解です」
キジ「イエッサー!」
カニ「まっ……待って下さい! 彼らはなんの関係も──」
19 = 1 :
ウス「行くでごわす!」ドガッ
サル「いい体当たりだったぞ。だが、長年の戦いで鍛えた俺には到底及ばん」
サルは軽々とウスを投げ飛ばした。
ウス「うわぁ~っ!」ドシン!
蜂「あのウスがあっさりと……!(速さでかき乱してやる!)」
キジ「飛行スピードでミーに勝つなんて、インポッシブルさ!」バシッ
キジの羽で蜂は叩き落とされた。
蜂「ぐぁっ……!」
20 = 1 :
栗「ウスッ! 蜂ッ! ちくしょオオオオッ!」
イヌ「勇敢な突撃だワン。でもわざわざ突っ込んできてくれて助かるワン」パクッ
イヌの歯で栗は噛まれた。
栗「ぐわあぁッ!」
牛糞(やはりこうなるか……。ならば勝てずとも、奴らの口に入って糞の味を
思い知らせてから死んでやる)ダッ
キジ「あいにく、ミーにスカトロジーな趣味はなくてねェ」ビュオッ
羽で風を起こし、牛糞を吹き飛ばす。
イヌ「こうしてやるワン!」ザザザッ
砂をかけて、牛糞を埋める。
サル「終わりだ」ドンッ
埋めた個所に大きめの石を置き、牛糞を完全に封印した。
牛糞「~~~~!」
21 :
カニ「えん罪です!サルだけに」
22 = 1 :
カニ「あ、あ、あ……。みんなァ~!」
桃太郎「安心しろ。四人とも死んではいないよ」
サル「ウスと蜂は気絶してるだけだ」
イヌ「栗も甘噛みにしといたから、生きてるワン(危うく食うところだったけど)」
キジ「牛糞君も大地にドレインされる前に、掘り起こしてやればライフは助かるよ」
カニ(よ、よかった……!)
桃太郎「さてカニ君。今回の殺猿事件について、知ってることを
全て偽りなく話してもらおうか」
桃太郎「嘘を感じた場合はたとえ善意でついた嘘であろうと──斬る」
桃太郎は抜刀し、切っ先をカニに突きつけた。
カニ「分かりました……。全てお話しします……!」
23 :
カニ「まだ泣けるだけの感情は持っているようだ・・」
24 = 1 :
カニは全てを話した。
サル「くっ……! あの猿のツラ汚しめ! 悪いのはこっちじゃないか!
しかも墓まで建ててもらって、むしろ謝りたいくらいだ」
桃太郎「どうする? サル」
サル「なんとか村の連中を説得するしかありません。
ここでこのカニを討てば、それこそ桃太郎さんの名誉にまで傷がつく」
カニ「あの……ぼくをその村に連れて行ってくれませんか」
サル「!」
カニ「サルさんに大将として説得して頂いても、納得しない人は大勢出るはず。
おそらく無視してぼくを狙いに来る者も出るでしょう。ならばいっそ──」
桃太郎「仮に私刑となっても、私は止めないが、いいのか?」
カニ「覚悟の上です」
25 = 1 :
やられた四人が目を覚ました。
栗「あだだ……ッ!」
ウス「痛かったでごわす……」
蜂(ここまで力の差があったとは……)
牛糞「……不覚だった」
カニ「みんな、ぼくはこれから復讐の単独犯として、サルさんの山村に行く」
四人「!」
カニ「たとえぼくが殺されることになっても、ぼくはこの件は今日で幕引きにしたい。
もし友としてぼくの最期を見届けてくれるなら、ついてきてくれるかい?」
牛糞「(カニが殺されても復讐は無し、ということか……)分かった。俺は行こう」
ウス「おいどんも行くでごわす!」
栗「見届けさせてもらうぜ……親友(ダチ)としてな……ッ!」
蜂「行ってやるよ。殻とハサミは拾ってやる」
カニ「みんな、ありがとう」
26 = 1 :
桃太郎とカニたちは猿の村に到着した。
猿A「おお、大将! お帰りなさいませ!
……おお、桃太郎さんたちまで! ようこそいらっしゃいました!」
猿B「──と、妙な連中もいるようですが、彼らはいったい?」
サル「このカニが……今回山向こうの村の猿を殺した犯人だ」
猿A「なっ……!?」
猿B「え!?」
猿C「ど、どういうことです!? なぜ連れてきたんです!」
サル「今すぐ村の猿を全員集めてくれ」
カニ「……」
27 = 1 :
キジ「モンキーたち、殺気立ってるねェ……」
イヌ「当然だワン。同族を殺した犯人が、堂々と村に乗り込んできたわけだし」
サル「カニ君。お手数だが、我々にした話をもう一度してくれ」
カニ「……分かりました」
~
カニは全てを話した。
ただしカニの意志で、実行犯である四人の名は伏せられ、全ての罪をカニが背負った。
四人もまたカニの強い意志を汲み、事前にやむなく了承していた。
カニ「──以上、です」
サル「俺はこの話を聞き、殺されたアイツにも非があったと判断し、
カニをその場で討つことはしなかった」
サル「この村で皆と話したいといったのも、他ならぬカニの意志だ。
これを踏まえて、みんなで彼をどうするか決めてくれ」
28 = 1 :
「ふざけんなッ!」
猿A「ひどいですぜ大将、なんで殺してくれなかったんですか!」
猿B「母親を殺した猿を、そいつは殺した。なら、俺たちにも復讐の権利があるッ!」
猿C「そうだそうだ! 血祭りに上げろッ!」
怒号が村中に響き渡る。
サル(くっ……やはりとても抑えられるものではない)
桃太郎「……」
栗「くっ……!」
ウス「や、やはり……ダメでごわすか」
蜂(こうなることは分かってたんだ! カニ、お前は愚直すぎるんだよ……!)
牛糞「ここまでか……」
カニ(母さん、やるべきことはやりました。息子に悔いはありません。
すぐ会うことになってしまいますが、どうかお許しを)
29 = 1 :
カニ「分かりました。ぼくが彼を殺したように、あなた方にも復讐する権利はあります」
カニは猿Aの前にやってきた。
カニ「どうぞ、カニ鍋にして下さい。
しがないサワガニですが、悪い味ではないはずです」
猿A「な……!」
カニ「どうぞ」
猿A「(このカニ……なんて目をしてやがる)い、いや俺は」
カニ「では、そちらの方。どうぞ」
猿B「え!? え……と」
カニ「では、そちらの方」
猿C「うわっ! 俺もちょっと……」
30 :
嫌いじゃないわ
31 = 1 :
カニはほぼ全員の前を回ったが、猿たちは誰も手出しができなかった。
桃太郎(カニ君の愚直すぎる行動が、逆に猿たちの穴をみごとに突いたようだな)
桃太郎(殺された猿は同族とはいえ、この村を出ていた他人も同然……。
猿たちは集団心理で盛り上がってたとはいえ実のところ、
ひとりひとりの行動意欲はそこまで高くなかった)
桃太郎(なおかつ、殺された猿に明らかな非があったという話を聞かされた直後、
この大勢の前で死刑執行者として振る舞うというのは、なかなか難しい。
みんな『大将、もしくは他の誰かがやる』と思っていただろうからな)
桃太郎(……カニ君の勝利、か)
ジャキッ!
桃太郎が刀を抜き、天に掲げる。
桃太郎「猿たち!」
猿たち「は、はいっ!」
桃太郎「このカニの処遇については、この私、桃太郎が預かりたいと思う!
異存がある者はあるか!?」
32 :
猿D「美味い!」
33 = 21 :
サワガニの分際でカニ鍋は図が高い
34 = 1 :
猿A「い、いや桃太郎さんがそうおっしゃるなら……なぁ?」
猿B「うん、俺たちはなにも……」
猿C「ま、まぁ任せていいんじゃないか? ……桃太郎さんなら」
桃太郎「かたじけない」チャッ
こうしてカニは私刑を免れた。
サル(す、すごい……! カニが作った真空状態をうまくまとめ上げた。
やはり桃太郎さんには上に立つ者としての天性の素質がある)
キジ「さっすがミーたちのリーダーだねぇ」
イヌ「見事だワン」
栗「カニの奴、助かったのか……!?」
牛糞「そのようだな」
ウス「よ、よかったでごわす!」
蜂「悪運の強いヤロウだぜ、まったく」
カニ(ぼくは助かった……のか……?)
35 = 1 :
カニたちは桃太郎の屋敷に招待された。
カニ「本当にありがとうございました」
桃太郎「私は何もしていないよ。君のまっすぐな行動が、猿たちに届いただけの話さ」
栗「今日は最高だぜッ! 酒がうまいッ!」
ウス「いや~よかったでごわすなぁ~うんうん。メシもうまいでごわす、うんうん」
蜂「ふん。あの猿ども、とんだ烏合の衆だったな」
牛糞「──ところで、桃太郎さん。
カニを助けたのは、単なる正義感や同情心から、というわけではないでしょう?」
桃太郎「ニオイも鋭いが、頭も鋭いな、君は」
桃太郎「……実は、君たちを見込んで頼みたいことがあるんだ」
桃太郎「あ、あと牛糞君。この中に入ってもらっていいかな? やっぱりニオイが……」
牛糞「あ、すいません」
牛糞は臭いを遮断する箱の中に入った。
36 :
カニは肉食だから食べちゃうんじゃないのか
37 = 1 :
桃太郎「単刀直入にいおう。鬼退治を手伝ってくれないか?」
カニ「鬼」
蜂「退」
栗「治」
牛糞「で」
ウス「ごわすか!?」
桃太郎「私のお供との戦いや、これまでのやり取りを見ていて、
君たちは鬼に対抗できる逸材だと感じられた」
蜂「ちょっと待てよ。鬼はあんたらが退治したんじゃなかったのか?」
桃太郎「ああ。三年前、私はイヌ、サル、キジを連れて鬼ヶ島に攻め込んだ。
彼らは降伏し、大部分は改心して世を苦しめるようなことはなくなった」
桃太郎「だが……」
牛糞「一部、まだ過激な鬼たちが残っていた、と……」
桃太郎「うむ。派手に暴れて攻め込まれたことを反省してか、水面下で活動しており
なかなか尻尾を見せない。私も手を尽くして根城を調査させているが
どこにあるかすら分かっていない」
38 = 1 :
桃太郎「しかも、彼らはどうやら鬼以外の力も集めているらしく、
おそらくは三年前よりも強大な軍勢になっているはずだ」
桃太郎「いたずらに戦力を増やせば、無駄に犠牲者を増やすばかりだろう。
だから三年前のように数名程度の少数精鋭で臨みたい」
桃太郎「君たちならば、私とお供三名で鍛えれば、短期間のうちに
立派な戦力になると踏んだ。
──いかがだろうか」
カニたちは一瞬お互いに顔を見合わせると、同時に返事をした。
カニ「やります」
栗「やってやらァッ!」
蜂「やるぜ」
ウス「やるでごわす!」
牛糞「引き受けましょう」
39 :
猿だけ一族居るのズルい
40 = 1 :
翌日から、カニたちの厳しい特訓が始まった。
師匠には、それぞれの適正にあった者がつくことになった。
空中戦タイプの蜂の師匠は、キジ。
キジ「力で飛ぶんじゃない! もっとウインドに乗らなければ!」
蜂(ういんど、って何……?)
俊敏さが長所の栗の師匠は、イヌ。
イヌ「速いだけではダメワン! 攻撃に緩急をつけてこそ速さが生きるワン!」
栗「うおおおおッ! 緩急つけるってすっげェ難しいぜェッ!」
肉弾戦が得意なウスは、サル。
サル「生まれながらの体格に頼りすぎだ! 技を身につけるのだ!」
ウス「うっす!」
41 = 1 :
特殊タイプの牛糞は、おじいさんとおばあさん。
おじいさん「さてと、始めようか。ばあさんや」
おばあさん「そうだねえ、おじいさん」
牛糞「……ゴクリ(いったい何が始まるんだ!?)」
そしてカニは直々に桃太郎が鍛えることになった。
桃太郎「君の最大の武器は、そのハサミだ。さぁ遠慮なくかかってこい」
カニ「はいっ!」
ガキン! ガキン!
桃太郎「甘いっ! ──胴ッ!」
ドゴッ!
カニ「ぐぁっ!」
43 = 1 :
こうして瞬く間に一ヶ月が過ぎた。
桃太郎「……今日、奴らの根城が見つかった」
カニ「本当ですか!? ──ついに戦いですね」
桃太郎「君はこの一ヶ月よく頑張った。本当に強くなったよ。
だが君を連れていくかどうかは、今から行う試験で決める」
カニ「試験?」
桃太郎「これから君に本気で打ち込む。むろん、真剣でな」
カニ(真剣……!)
桃太郎「これを防げれば合格だ。心の準備はいいか?」
カニ「はい!」
桃太郎「行くぞッ!」
ビュオッ!
44 :
熱いな
45 = 1 :
翌日、桃太郎の家に全員が集合した。
桃太郎「みんな、連絡した通り新しい鬼ヶ島の場所が分かった。
出発は明朝だ。各自今日一日で思い残すことのないよう準備してくれ」
サル「三年前の戦いを思い出すよ」
キジ「久々に、ミーのソウルがバーニングしてきたねェ」
イヌ「今度こそやっつけてやるワン!」
栗「燃えてきたぜェッ!」
ウス「おいどんを見込んでくれたみなさんのためにも、絶対勝つでごわす!」
蜂「鬼どもがいると、色々面倒だしな」
牛糞「カワニセンタク……ヤマニシバカリ……」
カニ「明日か……」
(一度、村に戻っておこうかな)
46 :
サワガニ程の的に胴を当てるの激難やな足もたくさんあるし
47 = 1 :
カニたちは身辺整理のため、山向こうの村に戻った。
そして、村では奇妙なことが起こっていた。
カニ「猿の家に建てた墓が掘り返されて、埋めていた死体がなくなってる!」
牛糞「ドンブラコ……ドンブラコ……」
蜂「なんだと? どういうことだよ」
カニ「分からない……。でも、なんだか嫌な予感がする」
栗「ハッハッハ、気にしすぎじゃねぇのか?
おおかた猿村の連中が、別の場所に弔うとかしたんだろうぜ」
カニ「……ならいいんだけど」
ウス「心配いらんでごわすよ!」
牛糞「不可解ではあるが、今は鬼退治に意識を集中すべきだな」
カニ「(あ、戻った)うん……」
48 = 1 :
こうして一抹の不安を抱えつつ、翌日となった。
おばあさん「桃太郎、みんな、気をつけてな。これを持ってゆき」
きび団子を受け取る桃太郎。
桃太郎「ありがとう、おばあさん。行ってきます!」
おばあさん「無理するんじゃないよ。危なくなったらお逃げ」
おじいさん「気をつけてな、みんな」
桃太郎一行の旅は、順調に続いた。
49 = 1 :
三日後、鬼のアジトに最も近い海岸に到着した。
桃太郎「あれが新しい鬼ヶ島だ。ほとんど人気のない地域なので発見が遅れた。
これから小舟で乗り込むが、きび団子を食べて力を蓄えよう」
蜂「これから暴れるってのに、食べて大丈夫か?」
桃太郎「心配いらない。すぐ腹ごなしすることになるさ。
栄養も味も抜群だから、食べておいた方がいい」
パクパクモグモグ
イヌ「やっぱりきび団子は最高ワン!」
栗「ンめえエエエエッ! こんな美味い団子始めてだッ!」
ウス「うまいでごわす! たまらんでごわす!」
蜂「ま、悪くはないな(美味すぎる……!)」
キジ「う~ん、デェ~リシャスだねェ」
サル「おばあさんの腕は全く衰えてないな。むしろ上がってるくらいだ」
カニ「柿にも負けないくらい美味しいや……。ところで牛糞は食べないの?」
牛糞「糞が食事をしてどうする」
50 = 1 :
一方、新鬼ヶ島では──
赤鬼「桃太郎どもが、舟でこちらに向かってきやす!」
鬼大将「くくく、ついにここを突きとめたか。桃太郎!」
鬼大将「知らぬお供もいるようだが、こちらにも新戦力がいるのだ!
桃太郎に敗れ、地獄に逃げ帰った時に見つけた強力な戦士が四人もな。
名づけて“地獄四天王”!」
赤鬼「(うわっ、安易……)ではあっしは青鬼とともに奴らを迎え討ちます」
鬼大将「うむ、頼んだぞ! ガッハッハ!」
みんなの評価 : ○
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