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    元スレカニ「柿欲しさに母さんを殺した猿を倒したけど、物語はまだ終わっていなかった」

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    1 :

    柿欲しさにカニの母親の命を奪った猿は、カニの子と仲間たちによって成敗された。

    ウス「終わったでごわすな……」

    「カニ、コイツの死体はどうするんだ?
      お前にはそのハサミでバラバラに切り刻むくらいの権利はあるぜ」

    カニ「……いや。彼はぼくが責任を持って丁重に葬るよ。復讐はもう終わっている。
       ここから先は、もう恨みが入り込む余地はない」

    「カニ! やっぱおめェいい男だぜ、クゥ~ッ!」

    牛糞「……カニらしい答えだ」

    2 :

    パンツ脱いだ

    3 = 1 :

    カニは猿が住んでいた家の横に墓を建てた。

    カニ「安らかに眠ってくれ……」

    カニ「みんな、ありがとう。おかげで母さんの仇が取れたよ」

    「甘すぎるぜ、お前は。俺だったら全身針で刺して川に捨てるくらいはするぜ」

    ウス「……いや、おいどんたちが協力したのは、復讐鬼のカニどんではなく、
       母想いのカニどんに、でごわす。これでよかったんでごわす」

    「ふん、どいつもこいつも……」

    「クゥ~ッ! まったくカニってやつはホント最ッ高ォだぜ!
      まったく体が熱いったらねぇや!」

    牛糞(さっきまでお前、囲炉裏に入ってたからな)

    4 = 1 :

    カニ「じゃあ皆さん、さようなら」

    ウス「またなにかあったら、呼ぶでごわすよ」

    「ふん、せっかく俺たちが出向いてお袋の仇を討ってやったんだ。
      せいぜい長生きするんだな。俺たちの労力を無駄にすんなよ」

    「あばよッ! 俺たちゃもう切っても切れない親友(マブダチ)だぜ!
      おっかさんと育てた柿の木、大事にしろよなッ!」

    牛糞「またな」

    カニ「うん……」

    カニは争いの火種となった柿の木を見て、少し涙した。

    5 :

    柿の木の根元に埋めればいい肥料になる

    6 = 1 :

    復讐から三日後──

    山奥にある猿だけが暮らす村。

    猿A「大変だ、大変だ!」

    猿B「どうしたんだ?」

    猿A「山向こうにある村に住んでる猿が、殺されたんだってよ!」

    猿B「な、なんだと!?」

    猿A「こんなこと、許せんよな!」

    猿B「あたぼうよ! 大将に復讐してもらおう!」

    猿A「おう!」

    7 = 1 :

    サル「どうした、みんな血相変えて」

    猿A「山向こうの村の猿が殺された! この村の出身者だ!」

    猿B「同族を殺されて、黙ってはいられない! 大将、どうか仇討ちを!」

    猿C「このまま殺されたままじゃ、腹の虫がおさまりません!」

    サル「うむ……(元々アイツは悪辣な性格で、この村にいた時も評判が悪かった)」

    サル(今回の件も、アイツの自業自得な可能性が高いが……。
       同族を殺されたコイツらの怒りは収まりそうもない)

    サル(仇討ちをするか否か、あの人に相談してみるか……)

    8 :

    見てるぞ

    9 = 1 :

    サルは都にある大きな屋敷に向かった。

    桃太郎「──なるほど。だいたい話は分かった」

    サル「はい……。桃太郎さんとの手柄があって、今では俺が大将ですが……
       仇を討たないことには、どうにも収まりそうもなくて」

    サル「……すいません。桃太郎さんも鬼の残存勢力の調査で忙しいというのに、
       こんなしょうもない身内の相談なんか……」

    桃太郎「とにかくその猿がいた村に、行ってみよう」

    サル「えっ!? い、いや、桃太郎さんに迷惑かけるわけには」

    桃太郎「猿が殺された、というのは事実なんだろう?
        相手がかなりの武力を持った悪党集団という可能性もある」

    サル「だったら、なおさら──」

    桃太郎「三年前、お前たちはきび団子一つであの恐ろしい鬼ヶ島に行ってくれた。
        それに比べれば、どうということはないさ」

    サル「も、桃太郎さん……!」

    ザッ

    10 = 1 :

    イヌ「──話は聞かせてもらったワン」

    キジ「水臭いじゃないか。ウォータースメル!」

    サル「……な、なんでお前ら」

    イヌ「ボクの情報網をナメたらいかんワン! この辺一帯の野犬は皆ボクの手下ワン!
       まして猿の大将が単独で都に入ったなんて、すぐ耳に入るワン」

    キジ「そしてミーもイヌに呼ばれてコールされて、はせ参じたというわけさ」

    サル「くっ……! ありがとう……! でもキジ、なんか喋り方変じゃないか?」

    キジ「つい最近まで、この羽根で南蛮まで旅行というトラベルをしててね。
       そこでイングリッシュという言語を学んだのさ」

    サル(いんぐりっしゅ……? きっと南蛮で変なもん拾い食いしたんだな)

    桃太郎「ふふ、久々に鬼退治組が揃ったな。さっそく向かうとしよう」

    11 :

    ほう

    12 = 1 :

    桃太郎といえば、希代の英雄である。
    彼がお供三匹を連れて、山向こうの村に向かうという情報は、すぐに広まった。

    むろん、カニも家でその知らせを聞いていた。

    カニ(おそらくぼくの件だ……。猿は同族の死に対して非常に敏感だ。
       大将であるサルさんに伝わり、彼が桃太郎さんに伝える。
       よくよく考えれば、これは当然の流れだ)

    バタバタバタッ!

    ウス「カニどん!」
    「カニ!」
    「カニィッ!」
    牛糞「カニ」

    復讐を手伝った四人が押しかけてきた。

    カニ「……みんな」

    13 = 1 :

    「桃太郎がこの村に来るそうだな。やっぱあの件か?」

    カニ「間違いないだろう」

    ウス「くっ、うかつでごわしたな。まさか桃太郎さんが出てくるとは……」

    「いわんこっちゃない、墓なんか建てるからだ。
      きっちり証拠隠滅してりゃ、行方不明でカタがついてただろうぜ」

    「蜂ィ! 今更ンなこといってもしょうがねェだろうがよッ!
      こうなりゃ、どうにかして逃げるか、戦うか……」

    牛糞「どちらも無理だな」

    「なんでだよッ!」

    牛糞「かつてあの鬼ヶ島を制圧した一行に、戦闘に勝つのは不可能だ。
       といって、彼らの情報網から逃げ切るのもまた至難」

    14 :

    牛のウンコが喋ってる・・・!!

    15 = 1 :

    「戦おうぜ! 逃げるくらいなら、戦ってくたばった方がマシだッ!」

    ウス「おいどんも賛成でごわす! 桃太郎さんに斬られて薪にされても
       悔いはないでごわす!」

    「いや、逃げた方が賢いだろ。牛糞も至難、っていってるしな。
      不可能ではないってことだろ?」

    牛糞「ああ。この村を捨てて、逃げた方が我々の生存確率は高まるだろう」

    カニ「……いや戦うことも逃げることもないよ」

    「えっ! ンな方法あるのかよ!?」

    カニ「いい方法があるんだ。ちょっと準備するから、君たちはここで待っててくれ」

    「ふん。大口叩いておいて、失望させるなよ」

    16 = 1 :

    まもなく、桃太郎一行がカニたちが住む村に到着した。

    桃太郎「ここか、山向こうの村は……」

    サル「あそこが殺された猿の家とのことです」

    イヌ「ん? だれかいるワン」

    猿の家には、カニが一匹だけ立っていた。

    キジ「カニのチャイルドが、こんなプレイスで何をしてるんだい?」

    カニ「桃太郎さん、サルさん、イヌさん、キジさん。あなた方の用件は分かっています。
       ここの猿を殺した犯人探しと仇討ちに来たのでしょう」

    キジ「おおっ! ミーのクエスチョンがスルーされた! HAHAHA!」

    桃太郎「君は殺人……じゃない殺猿事件について、何か知ってるのか?」

    カニ「知っているもなにも、ぼくが猿を殺した犯人です」

    17 = 1 :

    イヌ「証拠はあるのかワン?」

    カニ「家のそばに墓があるでしょう。あれにぼくのハサミの跡がいっぱいあります」

    サル「しかし、カニに猿を倒せるとは思えんがな……」

    カニ「罠にハメました。よく焼いた石を投げて、針で刺し、つまずかせたところに
       屋根の上から岩を落として殺しました。
       埋まった死体を調べれば、証明できると思います」

    キジ「なかなかクレバーな殺し方だねェ」

    桃太郎「……分かった。とにかく我々にも事情があるんだ。
        君には我々と一緒に来てもらうことになるが、いいか?」

    カニ「はい」
      (よし……これで他の四人に害は及ばない)

    「ちょっと待ったァッ!」

    18 = 1 :

    カニ「な、なんで……」

    「カニィッ! てめェ、俺たちは親友(ダチ)じゃなかったのかよォッ!」

    ウス「やっぱり、こういうことだったでごわすか……」

    「いったはずだ。俺たちの労力を無駄にすることは許さん、と」

    牛糞「我々は共犯だ」

    四人は桃太郎たちに突っ込んでいく。

    ドドドドッ

    イヌ「な、なんだワン!?」

    桃太郎「イヌ、サル、キジ。相手してやれ」

    イヌ「分かったワン」
    サル「了解です」
    キジ「イエッサー!」

    カニ「まっ……待って下さい! 彼らはなんの関係も──」

    19 = 1 :

    ウス「行くでごわす!」ドガッ

    サル「いい体当たりだったぞ。だが、長年の戦いで鍛えた俺には到底及ばん」

    サルは軽々とウスを投げ飛ばした。

    ウス「うわぁ~っ!」ドシン!


    「あのウスがあっさりと……!(速さでかき乱してやる!)」

    キジ「飛行スピードでミーに勝つなんて、インポッシブルさ!」バシッ

    キジの羽で蜂は叩き落とされた。

    「ぐぁっ……!」

    20 = 1 :

    「ウスッ! 蜂ッ! ちくしょオオオオッ!」

    イヌ「勇敢な突撃だワン。でもわざわざ突っ込んできてくれて助かるワン」パクッ

    イヌの歯で栗は噛まれた。

    「ぐわあぁッ!」


    牛糞(やはりこうなるか……。ならば勝てずとも、奴らの口に入って糞の味を
       思い知らせてから死んでやる)ダッ

    キジ「あいにく、ミーにスカトロジーな趣味はなくてねェ」ビュオッ

    羽で風を起こし、牛糞を吹き飛ばす。

    イヌ「こうしてやるワン!」ザザザッ

    砂をかけて、牛糞を埋める。

    サル「終わりだ」ドンッ

    埋めた個所に大きめの石を置き、牛糞を完全に封印した。

    牛糞「~~~~!」

    21 :

    カニ「えん罪です!サルだけに」

    22 = 1 :

    カニ「あ、あ、あ……。みんなァ~!」

    桃太郎「安心しろ。四人とも死んではいないよ」

    サル「ウスと蜂は気絶してるだけだ」

    イヌ「栗も甘噛みにしといたから、生きてるワン(危うく食うところだったけど)」

    キジ「牛糞君も大地にドレインされる前に、掘り起こしてやればライフは助かるよ」

    カニ(よ、よかった……!)

    桃太郎「さてカニ君。今回の殺猿事件について、知ってることを
        全て偽りなく話してもらおうか」

    桃太郎「嘘を感じた場合はたとえ善意でついた嘘であろうと──斬る」

    桃太郎は抜刀し、切っ先をカニに突きつけた。

    カニ「分かりました……。全てお話しします……!」

    23 :

    カニ「まだ泣けるだけの感情は持っているようだ・・」

    24 = 1 :

    カニは全てを話した。

    サル「くっ……! あの猿のツラ汚しめ! 悪いのはこっちじゃないか!
       しかも墓まで建ててもらって、むしろ謝りたいくらいだ」

    桃太郎「どうする? サル」

    サル「なんとか村の連中を説得するしかありません。
       ここでこのカニを討てば、それこそ桃太郎さんの名誉にまで傷がつく」

    カニ「あの……ぼくをその村に連れて行ってくれませんか」

    サル「!」

    カニ「サルさんに大将として説得して頂いても、納得しない人は大勢出るはず。
       おそらく無視してぼくを狙いに来る者も出るでしょう。ならばいっそ──」

    桃太郎「仮に私刑となっても、私は止めないが、いいのか?」

    カニ「覚悟の上です」

    25 = 1 :

    やられた四人が目を覚ました。

    「あだだ……ッ!」
    ウス「痛かったでごわす……」
    (ここまで力の差があったとは……)
    牛糞「……不覚だった」

    カニ「みんな、ぼくはこれから復讐の単独犯として、サルさんの山村に行く」

    四人「!」

    カニ「たとえぼくが殺されることになっても、ぼくはこの件は今日で幕引きにしたい。
       もし友としてぼくの最期を見届けてくれるなら、ついてきてくれるかい?」

    牛糞「(カニが殺されても復讐は無し、ということか……)分かった。俺は行こう」
    ウス「おいどんも行くでごわす!」
    「見届けさせてもらうぜ……親友(ダチ)としてな……ッ!」
    「行ってやるよ。殻とハサミは拾ってやる」

    カニ「みんな、ありがとう」

    26 = 1 :

    桃太郎とカニたちは猿の村に到着した。

    猿A「おお、大将! お帰りなさいませ!
       ……おお、桃太郎さんたちまで! ようこそいらっしゃいました!」

    猿B「──と、妙な連中もいるようですが、彼らはいったい?」

    サル「このカニが……今回山向こうの村の猿を殺した犯人だ」

    猿A「なっ……!?」
    猿B「え!?」
    猿C「ど、どういうことです!? なぜ連れてきたんです!」

    サル「今すぐ村の猿を全員集めてくれ」

    カニ「……」

    27 = 1 :

    キジ「モンキーたち、殺気立ってるねェ……」
    イヌ「当然だワン。同族を殺した犯人が、堂々と村に乗り込んできたわけだし」

    サル「カニ君。お手数だが、我々にした話をもう一度してくれ」

    カニ「……分かりました」



    カニは全てを話した。
    ただしカニの意志で、実行犯である四人の名は伏せられ、全ての罪をカニが背負った。
    四人もまたカニの強い意志を汲み、事前にやむなく了承していた。

    カニ「──以上、です」

    サル「俺はこの話を聞き、殺されたアイツにも非があったと判断し、
       カニをその場で討つことはしなかった」

    サル「この村で皆と話したいといったのも、他ならぬカニの意志だ。
       これを踏まえて、みんなで彼をどうするか決めてくれ」

    28 = 1 :

    「ふざけんなッ!」

    猿A「ひどいですぜ大将、なんで殺してくれなかったんですか!」

    猿B「母親を殺した猿を、そいつは殺した。なら、俺たちにも復讐の権利があるッ!」

    猿C「そうだそうだ! 血祭りに上げろッ!」

    怒号が村中に響き渡る。

    サル(くっ……やはりとても抑えられるものではない)

    桃太郎「……」

    「くっ……!」
    ウス「や、やはり……ダメでごわすか」
    (こうなることは分かってたんだ! カニ、お前は愚直すぎるんだよ……!)
    牛糞「ここまでか……」

    カニ(母さん、やるべきことはやりました。息子に悔いはありません。
       すぐ会うことになってしまいますが、どうかお許しを)

    29 = 1 :

    カニ「分かりました。ぼくが彼を殺したように、あなた方にも復讐する権利はあります」

    カニは猿Aの前にやってきた。

    カニ「どうぞ、カニ鍋にして下さい。
       しがないサワガニですが、悪い味ではないはずです」

    猿A「な……!」

    カニ「どうぞ」

    猿A「(このカニ……なんて目をしてやがる)い、いや俺は」

    カニ「では、そちらの方。どうぞ」

    猿B「え!? え……と」

    カニ「では、そちらの方」

    猿C「うわっ! 俺もちょっと……」

    30 :

    嫌いじゃないわ

    31 = 1 :

    カニはほぼ全員の前を回ったが、猿たちは誰も手出しができなかった。

    桃太郎(カニ君の愚直すぎる行動が、逆に猿たちの穴をみごとに突いたようだな)

    桃太郎(殺された猿は同族とはいえ、この村を出ていた他人も同然……。
        猿たちは集団心理で盛り上がってたとはいえ実のところ、
        ひとりひとりの行動意欲はそこまで高くなかった)

    桃太郎(なおかつ、殺された猿に明らかな非があったという話を聞かされた直後、
        この大勢の前で死刑執行者として振る舞うというのは、なかなか難しい。
        みんな『大将、もしくは他の誰かがやる』と思っていただろうからな)

    桃太郎(……カニ君の勝利、か)

    ジャキッ!

    桃太郎が刀を抜き、天に掲げる。

    桃太郎「猿たち!」

    猿たち「は、はいっ!」

    桃太郎「このカニの処遇については、この私、桃太郎が預かりたいと思う!
        異存がある者はあるか!?」

    32 :

    猿D「美味い!」

    33 = 21 :

    サワガニの分際でカニ鍋は図が高い

    34 = 1 :

    猿A「い、いや桃太郎さんがそうおっしゃるなら……なぁ?」
    猿B「うん、俺たちはなにも……」
    猿C「ま、まぁ任せていいんじゃないか? ……桃太郎さんなら」

    桃太郎「かたじけない」チャッ

    こうしてカニは私刑を免れた。

    サル(す、すごい……! カニが作った真空状態をうまくまとめ上げた。
       やはり桃太郎さんには上に立つ者としての天性の素質がある)

    キジ「さっすがミーたちのリーダーだねぇ」
    イヌ「見事だワン」

    「カニの奴、助かったのか……!?」
    牛糞「そのようだな」
    ウス「よ、よかったでごわす!」
    「悪運の強いヤロウだぜ、まったく」

    カニ(ぼくは助かった……のか……?)

    35 = 1 :

    カニたちは桃太郎の屋敷に招待された。

    カニ「本当にありがとうございました」

    桃太郎「私は何もしていないよ。君のまっすぐな行動が、猿たちに届いただけの話さ」

    「今日は最高だぜッ! 酒がうまいッ!」

    ウス「いや~よかったでごわすなぁ~うんうん。メシもうまいでごわす、うんうん」

    「ふん。あの猿ども、とんだ烏合の衆だったな」

    牛糞「──ところで、桃太郎さん。
       カニを助けたのは、単なる正義感や同情心から、というわけではないでしょう?」

    桃太郎「ニオイも鋭いが、頭も鋭いな、君は」

    桃太郎「……実は、君たちを見込んで頼みたいことがあるんだ」

    桃太郎「あ、あと牛糞君。この中に入ってもらっていいかな? やっぱりニオイが……」

    牛糞「あ、すいません」

    牛糞は臭いを遮断する箱の中に入った。

    36 :

    カニは肉食だから食べちゃうんじゃないのか

    37 = 1 :

    桃太郎「単刀直入にいおう。鬼退治を手伝ってくれないか?」

    カニ「鬼」
    「退」
    「治」
    牛糞「で」
    ウス「ごわすか!?」

    桃太郎「私のお供との戦いや、これまでのやり取りを見ていて、
        君たちは鬼に対抗できる逸材だと感じられた」

    「ちょっと待てよ。鬼はあんたらが退治したんじゃなかったのか?」

    桃太郎「ああ。三年前、私はイヌ、サル、キジを連れて鬼ヶ島に攻め込んだ。
        彼らは降伏し、大部分は改心して世を苦しめるようなことはなくなった」

    桃太郎「だが……」

    牛糞「一部、まだ過激な鬼たちが残っていた、と……」

    桃太郎「うむ。派手に暴れて攻め込まれたことを反省してか、水面下で活動しており
        なかなか尻尾を見せない。私も手を尽くして根城を調査させているが
        どこにあるかすら分かっていない」

    38 = 1 :

    桃太郎「しかも、彼らはどうやら鬼以外の力も集めているらしく、
        おそらくは三年前よりも強大な軍勢になっているはずだ」

    桃太郎「いたずらに戦力を増やせば、無駄に犠牲者を増やすばかりだろう。
        だから三年前のように数名程度の少数精鋭で臨みたい」

    桃太郎「君たちならば、私とお供三名で鍛えれば、短期間のうちに
        立派な戦力になると踏んだ。
        ──いかがだろうか」

    カニたちは一瞬お互いに顔を見合わせると、同時に返事をした。

    カニ「やります」
    「やってやらァッ!」
    「やるぜ」
    ウス「やるでごわす!」
    牛糞「引き受けましょう」

    39 :

    猿だけ一族居るのズルい

    40 = 1 :

    翌日から、カニたちの厳しい特訓が始まった。
    師匠には、それぞれの適正にあった者がつくことになった。

    空中戦タイプの蜂の師匠は、キジ。

    キジ「力で飛ぶんじゃない! もっとウインドに乗らなければ!」

    (ういんど、って何……?)


    俊敏さが長所の栗の師匠は、イヌ。

    イヌ「速いだけではダメワン! 攻撃に緩急をつけてこそ速さが生きるワン!」

    「うおおおおッ! 緩急つけるってすっげェ難しいぜェッ!」


    肉弾戦が得意なウスは、サル。

    サル「生まれながらの体格に頼りすぎだ! 技を身につけるのだ!」

    ウス「うっす!」

    41 = 1 :

    特殊タイプの牛糞は、おじいさんとおばあさん。

    おじいさん「さてと、始めようか。ばあさんや」
    おばあさん「そうだねえ、おじいさん」

    牛糞「……ゴクリ(いったい何が始まるんだ!?)」


    そしてカニは直々に桃太郎が鍛えることになった。

    桃太郎「君の最大の武器は、そのハサミだ。さぁ遠慮なくかかってこい」

    カニ「はいっ!」

    ガキン! ガキン!

    桃太郎「甘いっ! ──胴ッ!」

    ドゴッ!

    カニ「ぐぁっ!」

    43 = 1 :

    こうして瞬く間に一ヶ月が過ぎた。

    桃太郎「……今日、奴らの根城が見つかった」

    カニ「本当ですか!? ──ついに戦いですね」

    桃太郎「君はこの一ヶ月よく頑張った。本当に強くなったよ。
        だが君を連れていくかどうかは、今から行う試験で決める」

    カニ「試験?」

    桃太郎「これから君に本気で打ち込む。むろん、真剣でな」

    カニ(真剣……!)

    桃太郎「これを防げれば合格だ。心の準備はいいか?」

    カニ「はい!」

    桃太郎「行くぞッ!」

    ビュオッ!

    44 :

    熱いな

    45 = 1 :

    翌日、桃太郎の家に全員が集合した。

    桃太郎「みんな、連絡した通り新しい鬼ヶ島の場所が分かった。
        出発は明朝だ。各自今日一日で思い残すことのないよう準備してくれ」

    サル「三年前の戦いを思い出すよ」

    キジ「久々に、ミーのソウルがバーニングしてきたねェ」

    イヌ「今度こそやっつけてやるワン!」

    「燃えてきたぜェッ!」

    ウス「おいどんを見込んでくれたみなさんのためにも、絶対勝つでごわす!」

    「鬼どもがいると、色々面倒だしな」

    牛糞「カワニセンタク……ヤマニシバカリ……」

    カニ「明日か……」
      (一度、村に戻っておこうかな)

    46 :

    サワガニ程の的に胴を当てるの激難やな足もたくさんあるし

    47 = 1 :

    カニたちは身辺整理のため、山向こうの村に戻った。
    そして、村では奇妙なことが起こっていた。

    カニ「猿の家に建てた墓が掘り返されて、埋めていた死体がなくなってる!」

    牛糞「ドンブラコ……ドンブラコ……」

    「なんだと? どういうことだよ」

    カニ「分からない……。でも、なんだか嫌な予感がする」

    「ハッハッハ、気にしすぎじゃねぇのか?
      おおかた猿村の連中が、別の場所に弔うとかしたんだろうぜ」

    カニ「……ならいいんだけど」

    ウス「心配いらんでごわすよ!」

    牛糞「不可解ではあるが、今は鬼退治に意識を集中すべきだな」

    カニ「(あ、戻った)うん……」

    48 = 1 :

    こうして一抹の不安を抱えつつ、翌日となった。

    おばあさん「桃太郎、みんな、気をつけてな。これを持ってゆき」

    きび団子を受け取る桃太郎。

    桃太郎「ありがとう、おばあさん。行ってきます!」

    おばあさん「無理するんじゃないよ。危なくなったらお逃げ」
    おじいさん「気をつけてな、みんな」

    桃太郎一行の旅は、順調に続いた。

    49 = 1 :

    三日後、鬼のアジトに最も近い海岸に到着した。

    桃太郎「あれが新しい鬼ヶ島だ。ほとんど人気のない地域なので発見が遅れた。
        これから小舟で乗り込むが、きび団子を食べて力を蓄えよう」

    「これから暴れるってのに、食べて大丈夫か?」

    桃太郎「心配いらない。すぐ腹ごなしすることになるさ。
        栄養も味も抜群だから、食べておいた方がいい」

    パクパクモグモグ

    イヌ「やっぱりきび団子は最高ワン!」

    「ンめえエエエエッ! こんな美味い団子始めてだッ!」

    ウス「うまいでごわす! たまらんでごわす!」

    「ま、悪くはないな(美味すぎる……!)」

    キジ「う~ん、デェ~リシャスだねェ」

    サル「おばあさんの腕は全く衰えてないな。むしろ上がってるくらいだ」

    カニ「柿にも負けないくらい美味しいや……。ところで牛糞は食べないの?」

    牛糞「糞が食事をしてどうする」

    50 = 1 :

    一方、新鬼ヶ島では──

    赤鬼「桃太郎どもが、舟でこちらに向かってきやす!」

    鬼大将「くくく、ついにここを突きとめたか。桃太郎!」

    鬼大将「知らぬお供もいるようだが、こちらにも新戦力がいるのだ!
        桃太郎に敗れ、地獄に逃げ帰った時に見つけた強力な戦士が四人もな。
        名づけて“地獄四天王”!」

    赤鬼「(うわっ、安易……)ではあっしは青鬼とともに奴らを迎え討ちます」

    鬼大将「うむ、頼んだぞ! ガッハッハ!」


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