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元スレ楽「俺、小咲と結婚することになったから」
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春「それに、桐崎さんとの関係は全部、ニセモノだったって……。本当に好きだったのは、お姉ちゃんのことだったって……」
春「『夢が叶った』って……。お姉ちゃんが喜んでる姿を見て……。そんなイメージ、吹き飛んじゃいましたよ」
春「そんなにお姉ちゃんは、その『一条くん』のことが、好きだったんだなって……」
春「お姉ちゃんがそんなに好きになった人なら、悪い人な筈がないって……」
春「……だけど、本当にお姉ちゃんのことが好きなのかどうかは……。好きなんだとしたら、どれくらい好きなのか……」
春「それだけは、直接会って、確かめたかったんです」
楽「……で、どうだった?」
春「さっき言ったでしょ。全く、私のお姉ちゃんトークについてこれるなんて……。どんだけ好きなんですか……」
春「……あなたになら、お姉ちゃんを任せても、いいかもしれないです。合格です。あなたを、認めてあげます」
楽「……妹さんに認めてもらえて、よかったよ」
春「それで、後は私たちの両親だけですね?」
小咲「は、春……」
楽「そうだな。いつかは、挨拶に行かねえと……」
春「いつでもどうぞ……。では、後はお二人で、ごゆっくり」
小咲「えっ? 春、どこに行くの?」
春「さっき、その桐崎さんに呼ばれちゃって……。あの人も実際に会ってみると、意外と接しやすい人だね」
春「やっぱり人をイメージだけで判断しちゃ……、ダメだね」
小咲「……」
春「では、一条さん……。来年から、よろしくお願いしますね。いろいろと、迷惑をかけちゃうかもしれませんが……」
楽「ああ。……そうだ、春ちゃん。その前にさ」
春「はい?」
楽「もうすぐウチの学校で、文化祭が、あるんだけど。良かったら、見にこないか?」
春「本当ですか? それは是非、行きたいですね」
楽「ああ……。案内、してやるよ。迷子になったら、大変だしな」
春「あはは。子供じゃないんですからそんな、迷子になんて」
小咲「でも春、私の中学の文化祭に来た時、迷子になったところを、着ぐるみの人に助けてもらったって……」
春「い、いいからその話はっ!」
楽「着ぐるみ……? じゃあ俺も、手を引いて案内してやろうか」
春「いらないですっ!」
小咲「あ、じゃあ私が逆側の手を……」
春「なんで恋人同士の二人に挟まれて、歩かなきゃならないんですか!」
春「そ、それでは……。あっ。お姉ちゃん」
小咲「……?」
春「素敵な人だね。一条さんって」ボソッ
小咲「は、春っ?」
春「お姉ちゃんが好きになったのも、分かる気がするなぁー」
小咲「も、もぉ……」
楽「ん? 二人して何話してるんだ?」
春「秘密ですよ。一条『先輩』っ!」
楽「えっ」
春「私、今から楽しみにしてますっ! 一条先輩やお姉ちゃんがいる学校に、通う日が来るのをっ!」
楽(……春ちゃんか。小咲と違って結構、活発な感じな子だけど……。まさか彼女の入学がきっかけで、俺の日常が崩れることも、ないだろう)
楽(それどころか、結構仲良くやっていけそうだな……。気が合いそうというか……。特に小咲の話なんか、すごい盛り上がったし)
楽(もしかしたら俺と春ちゃんは、意外と趣味や好みが似てたりとか……。だとしたら良い友達に、なれそうだ――)
ガヤガヤ ガヤガヤ
小咲「……二人に、なっちゃったね」
楽「……ちょっと、外でないか?」
小咲「えっ?」
楽「いや、えっと、よ、酔っちまってさ。風に当たりたいなぁって」
小咲「ら、楽くん、お酒飲んでたの?」
楽「の、飲んでないけど……」
小咲「……」
小咲「ふふっ。いいよ、いこっ?」
楽「お、おうっ」
――
小咲「わぁ……。星が、きれい……」
楽「だなぁ……。雲一つ、ねえじゃん」
小咲「……」
楽「……」
小咲「……今日は、ありがとう。私のために、こんな大きなパーティを、開いてくれて……」
楽「いや、えっと……。ど、どうだった? 楽しめたか?」
小咲「うんっ……。すっごく、楽しかったよ。ヤクザの人たちも、怖い人たちばかりかと思ったら、みんな優しい人たちばかりだったし」
楽「そうなのか……。なら、よかったよ」
小咲「一生の思い出だよ。私、こんなにたくさんの人とパーティなんて、したことなかったし……」
楽「……『初めて』、か?」
小咲「うん。『初めて』をありがとう、楽くん」
楽「喜んでもらえて、嬉しいよ」
小咲「……」
楽「……て、てを、にぎっても……?」
小咲「……ふふっ。どうぞ?」
ギュッ……
楽「……あったかい」
小咲「うん……」
楽「……」
小咲「……」
楽「……」
楽(幸せ、だなぁ……)
楽(俺、本当に、叶えたんだなぁ……夢を)
楽(……つってももう一方の夢は、まだだけどな)
楽(『一流大学を卒業して、公務員』かぁ……。今まで後回しにしてたけど、こっちも頑張らないとなぁ)
楽(はぁ……。明日からまた勉強かぁ……。今この時間が、永遠に、続けばいいのに……)
楽(でもやらなきゃしょうがないよなぁ……。ていうか今の俺の学力って、どうなんだろ? ちゃんと良い大学に、行けるんだろうか)
楽(千棘に勉強教えてもらうか。あいつあれで結構、頭いいしな――)
小咲「楽くん?」
楽「うおっ!?」
小咲「どうしたの? ぼーっとして」
楽「い、いや、なんでも……」
小咲「へんな楽くん」クスッ
楽「あ、あはは……」
楽(か、かわいい……)
楽(なんだよこれ……。幸せすぎんだろ……)
小咲「楽くん。何考えてたの?」
楽「い、いやぁ? えっと……」
楽(こんな可愛い娘が……。俺の、彼女なんだよな? ゆ、夢じゃ、ないんだよな……?)
小咲「うーん。あっ、分かった。挨拶のこと、考えてたんでしょ? 私のお父さん、お母さんへの、挨拶」
楽「え、あっ。えーと」
楽(い、今の、顎に指を当てて、考えてる時の仕種……。『分かった』って、閃いた時の表情……)
楽(ぜ、全部かわいいっ! いちいちかわいいっ! こ、このペースで来られたら、俺の身体がもたねぇ……っ!)
小咲「ふふっ。別に急がなくても、いいんだよ? 私たちまだ、付き合いたてだし……」
楽(そうっ! その『ふふっ』ってヤツ……っ! それが、かわいいんだよなぁ……っ!)
小咲「……ううん。もう付き合いたてでも、ないかな。私たち、もうそろそろ……」
小咲「立派な恋人同士に、なれたのかな? なんて……」
楽「……た」
小咲「た?」
楽(たまんねえ……っ!!)
楽「たっ! たぶん、まだ、その、立派ってほどでは、ないかも?」
小咲「そ、そうかな?」
楽「お、おうっ! だけど、それでいいじゃん! まだまだこれからだよっ! 俺たちはこれから、立派になっていくんだからっ!」
小咲「……そうだよねっ! あの、これからもよろしくね、楽くんっ!」
楽「おうっ! よろしくな、小咲っ!」
楽(死んでまうわ……。ドキドキしすぎて、死んでしまう……)
楽(毎回毎回……。小咲の言うとおり、もう付き合いたてでもないんだから……。いい加減慣れろよ、俺)
小咲「……それで、当たり?」
楽「え? あ、ああ……。俺が、何を考えてたか、だっけ……。ううん、外れ」
小咲「あれ。じゃあ、正解は?」
楽「小咲は可愛いなぁって、ずっと考えてた」
小咲「……」
小咲「もぉ……」カァァァ
楽(うがぁっ! 可愛い過ぎるっ! 慣れるかこんなもんっ!)
小咲「な、なに言ってるの、楽くん……」
楽「悪い悪い、でも、ホントだから……」
小咲「……うぅ」
楽(かわいいなぁ……。小咲は、ほんとに)
楽(そうだ……。小咲は、どうなんだろう)
楽「……小咲」
小咲「は、はいっ!?」
楽「あ、あのさ、えっと……」
小咲「ど、どうしたの?」
楽「小咲は、さ……。その……」
楽「……小咲には『夢』とかって、ある?」
小咲「夢……?」
楽「そう……。夢……」
小咲「……夢ならもう、叶っちゃった」
楽「……そっか」
小咲「……だけど私、今日……。新しい夢を、見ちゃったの」
楽「っ! えっ!?」
小咲「すっごく、幸せな夢だったなぁ……。起きるのが、もったいないくらいに」
楽「起きる……? ああ、そっちの夢か……。ちなみに、どんな夢?」
小咲「……知りたい?」
楽「そりゃあ、まあ」
小咲「じゃ、じゃあちょっと、恥ずかしいけど……。教えて、あげるね」
楽「恥ずかしい……?」
小咲「楽くんと結婚して、夫婦になって、一緒に暮らしてる……。そんな夢を、見たの」
『おかえりなさい。あなた』
楽「……」
小咲「あはは……。す、すごく、幸せな夢だったよ……。なんで、起きちゃったのかなぁ」
『お食事の準備、出来てますよ。お風呂もわいてるけど……どっちがいい?』
小咲「なんか、け、結婚記念日だったみたいで……。料理、作って……。あんな豪華な料理、私作れないよ……」
『えへへ……あなたの為に、頑張ったから』
楽「……」
これは…小野寺さんだけ一緒にお風呂まで入ったとこまで見たやつじゃないか!
小咲「ワンちゃんも、飼ってたの。楽くんには懐いてなかったみたいだけど……。そういえばあの子、誰かに似てたような」
『あらあら大丈夫? やっぱりあなたにはなつかないわね、この子……』
小咲「そ、それで、えっと、そ、その後は……」
『ねぇ、あなた。良かったら、ご飯の後……』
『久しぶりに……一緒にお風呂に入らない……?』
小咲「ご、ごめんっ! これ以上は……っ!」
楽「一緒に風呂に、入った……?」
小咲「えっ……?」
ドクン
楽「……俺も、見た。その夢」
小咲「えっ!? う、うそ……」
楽「そうだ。思いだした。そうだよ、すっげぇ幸せな夢だった、ってことは、うっすら覚えてたんだが……」
楽「小咲と俺、夫婦になってたっ! そんで、幸せそうに、一緒に暮らしてたんだっ!」
小咲「う、うん……。あの……」カァァァ
楽「それでっ! その後小咲が、一緒に風呂に入ろうって、言い出して……」
小咲「わ、わぁーっ!」ボンッ!
楽「それで、それで……。えっと……」
楽「……あれ? 思いだせない……。あ、そうか」
楽「ここで俺、起きちまったんだ……。そうか。ちくしょう……。俺のバカ……」
小咲「そ、そっか……。楽くんはそこで、目が覚めちゃったんだね」
楽「……楽くん『は』?」ピクッ
小咲「え」
楽「こ、小咲は続きを見たのかっ!? 教えてくれっ! 一体どんな――」
小咲「わーっ! ひみつ、ひみつですっ!」
楽「……でも、そうか。俺ら二人して、同じ夢を……」
楽「同じ……夢を……」
楽(……見ていた……?)
小咲「そうだね。これって、すごいことだよね。こんなの、まるで――」
小咲「――えっと、なんだろ……?」
楽「……」
楽(……まさか)
小咲「あ、そうだっ!」
楽(まさか……そんな――)
小咲「まるで……、『漫画』みたい、だよねっ!」
もう伏線も大筋も何もかも投げ出して
楽「俺達のラブコメはこれからだ!」にした方が
幸せなような気がしてきた
楽「俺達のラブコメはこれからだ!」にした方が
幸せなような気がしてきた
ドクンッ
楽「……」
小咲「すごいなぁ。あはは、もしかして『なにか』、『不思議な力』が、働いたのかな?」
小咲「なんて――楽くん?」
楽「こ、さき……」
小咲「ど、どうしたの? 楽くん。あっ。汗が……。ちょっと待って、今ハンカチを」
楽「……どうし、よう」
小咲「えっ?」
楽「この世界は、やっぱり本当に……『漫画』の中なのかも、しれない……」
楽「は……はは……」
楽「……なんだ、よ、ちくしょう……っ!」
楽「あんまりだろ、そんなの……。じゃあ俺が今までやってきたことは、なんだったんだよっ!」
楽「やっと全部、終わったと思ったのに……。なんだよ、まだなにか、あるってのか……?」
小咲「楽くん……? どうしたの? この世界が、『漫画』の中……?」
楽「小咲、聞いてくれ……。これからまたなにか、おかしなことが、起きるかも……」
小咲「えっ。な、なんで……?」
楽「この世界が、『漫画』だからだっ! 『なにか』の……いや――」
楽「『作者』の都合で、異常なことも、不自然なことも、平気で起きる、狂った世界だからだ……っ!」
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