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    元スレさやか「私達の戦いはこれからだ」

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    タグ : - 魔法少女まどか☆マギカ + 追加: タグについて ※前スレ・次スレは、スレ番号だけ登録。駄スレにはタグつけず、スレ評価を。荒らしタグにはタグで対抗せず、タグ減点を。
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    51 = 2 :

    ほむら、と言う言葉を聞いた瞬間、気持ちにストンと影が落ちた事を悟られぬ様にさやかは言葉を続ける。

    さやか「ごめんごめん。うん、みんなとも絶対行きたいけどさ、まずは二人で行こう。
    あたしもあんたと二人で行きたいよ。」

    杏子『さ、最初っからそう素直に言えばいいんだよ…からかいやがって…』

    さやか「素直じゃないのはあんただけどね」

    杏子『うるせ!じゃあ今度作戦会議するからな!夜更かししないでさっさと寝ろよ!!』

    ガチャリ、とそこで電話が切れた。

    52 = 2 :

    さやか「今度…か…」

    この時さやかは静かに決心をする。
    やるならば一人でやろう、と。
    マミにしろ杏子にしろ今の状況を前向きに受け入れている。
    そこに水を差すような事はしたくない。失敗の可能性を考えたなら尚更だ。
    それでなくても事実を知ったショックでジェムの穢れが進行する可能性は十分にある。
    もし自分だけならば仮に失敗したとしてもそれだけだ…自分が返り討ちにあうだけで、他の皆に影響はない。

    さやか「なんだかな、全部を一人で背負い込むなってわたし自身が散々言ってたのにね」

    さやか「あんたもずっとこんな気持ちだったの…?ほむら…」

    皮肉にもこの状況になって初めて、さやかはほむらの気持ちを少し理解出来た様に思えた。

    さやか「わたしは…一体どうしたいんだろう?」

    53 = 2 :

    ほむら「グッモーニン、まどか。トゥデイもまどかはアルティメットキュートね」

    まどか「ウェヒヒ、ほむらちゃんは英語が上手だね!もう私よりも上手かもしれないよ!」

    ほむら「ほむ・・・」

    さやか(や、そこ照れる所じゃないでしょ)

    あれから三日が経った。
    ここは見滝原中学の教室。朝のHRが始まる前の束の間の団らんである。

    54 = 2 :

    はじめはほむらのクレイジーサイコレズな言動にビビり気味だったまどかだが
    その後の付き合いの中で、あれはほむらなりのジョークなのだと受け止める様になったらしく
    今ではほむらの戯言をまどかが適当に流すというのが二人の定番の絡みになっている。

    さやか(にしたって適当過ぎると思うけどなーあんたはホントにそれでいいのかー?)

    チラリとほむらの方に目をやるさやか。
    ほむらは頬を赤らめながらまどかから何やら英語の指導らしき物を受けている。
    その顔はまごうことなく幸せに満ち満ちた表情であった。もっとも殆ど無表情なのだが。

    55 = 2 :

    さやか(ごめんねほむら…あんたの気持ちも分かるけど)

    さやかは意を決した様にケータイを取りだし、ほむらへとメールを打つ。
    ちょうどよく杏子は今日学校をサボっている。タイミングとしてはまずまずだ。
    放課後に話があるので体育館の裏に来てください。
    送信後、再びほむらに目をやるとそこには彼女の不思議そうな表情があった。どうやら意図は伝わったらしい。

    さやか(やっぱりもうこれしかない。知っておきながら立ち止まるなんて事、わたしには出来ないよ)

    さやかの悲壮な決心をよそに、これで最後になるかもしれない見滝原中学での一日は、
    あっという間に過ぎていった。

    56 = 2 :

    放課後。夕暮れで真っ赤に染まった体育館が影を伸ばす。
    その影の中、さやかは静かにほむらを待っていた。
    途中、杏子からの着信があったが、敢えて無視した。
    今杏子の声を聞けばきっと決心が鈍ってしまうと思ったから。

    ほむら「待たせたわね」

    さやか「ほむら…」

    ほむらがやって来た。どうやら一人らしい。

    57 = 2 :

    ほむら「それでミーにトークって何かしら?カミングアウトオブラブならまどか以外はノーサンキューなのだけど」

    さやか「あんたはルー大柴か!!その変なしゃべり方止めなさいよ!」

    ほむら「ワッツトーキングアバウト?いまや私のイングリッシュスキルは帰国子女のまどかも認めるネイティブアメリカンのそれよ」

    さやか(こいつは本気で受け取ってたのか?!)

    さやか「調子狂うわね…」

    ほむら「用があるなら早くして、わたしもこう見えてソービジーなの」

    さやか「確かにあんたは今大忙しでしょうね…」

    58 = 2 :

    不思議そうに小首を傾げるほむら。その顔を見つめながらさやかは喋り始める。

    さやか「今のあんたに言っても仕方がないけれど、これだけは言わせて。
    あたしはあんたの事を恨んでなんかない。むしろあんたの気持ち、今では痛いほど分かるよ。
    こんな気持ちを抱えながらずっと戦ってたなんて尊敬の念すら湧いてくるよ」

    ほむら「電波系ジョークはわたしの領分なのだけど…」

    さやか「あんたのした事が悪いことなのか…それだって今はハッキリ分からない。
    だけどやっぱりあたしは、このまま何もせずに流れに身を任せるなんてできないから…」

    ほむら「?あなた、本当に何を言って…」

    59 = 2 :

    カッと体育館裏の闇の中に蒼い閃光が光る。思わず目を瞑るほむら、再び目を開けた時そこに居たのは…

    さやか「だから…ごめん…ここで死んで!!」

    キテレツな衣装に身を包み自らに剣を向けるクラスメートの姿だった。

    ほむら「一体なんの冗…」

    ほむらの言葉を待たず剣を振りかぶるさやか、思わず飛び退くほむら。
    かわす事が出来たのが奇跡に思える、そう思える程の威力、剣圧の余波で体育館の壁が部分的に崩壊する。
    その光景がさやかの言動のすべてが冗談などではない事をほむらに伝えていた。

    61 = 2 :

    ほむら「くっ」

    さやか「よく避けたわね…でも次は外さな…」

    「ほむらちゃん!!」

    背後から聞こえた聞き慣れた親友の声。ギクリとしながら振り返るさやか。
    そこにはなんと、怯えた表情のまどかの姿があった。

    まどか「さやかちゃん…?!」

    さやか「まどか…」

    ほむらが校門にでも待たせていたのだろうか?

    さやか(なんであの文面で人を待たせておけるのよこのバカ…)

    62 = 2 :

    ほむら「まどか!来ちゃダメ!美樹さやかは本気よ!!」

    やむを得ない。今はまだまどかに事の真相は話せない。一旦気を失わせる。
    次の行動を決めたさやかがまどかへ向けて一直線に翔んだその時

    「さやかぁああああああ!!」

    またしても聞き慣れた親友の声。ただし今度は真っ赤な閃光もワンセットである。
    ガキィン!!と凄まじい金属音を立てて、矛が剣の前進を阻む。

    さやか「杏子!!あんたどうしてここに?!」

    杏子「あんたがケータイに出ないから、学校に行けば会えるかと思ってやって来たんだよ。
    そしたらすぐ近くで魔力の反応を感じて…いやそんな事はどーでもいい!!」

    63 = 2 :

    ガン!!と剣を弾いた杏子は矛先をまどかに向けながらさやかに問う。

    杏子「正気かてめえ?まどかは友達だろう?なんだってあいつを襲わなきゃならないんだ?」

    さやか「わたしの狙いはまどかじゃない」

    ヒュッと剣先で指し示す先、そこ居たのは事の成り行きを呆然と見つめる暁美ほむら。

    杏子「ほむら…?いやほむらだって友達には変わりねえだろ?一体なんで…」

    さやか「訳は言えない」

    杏子「ふざけ…!!」

    65 = 2 :

    杏子の言葉ごと両断するかの様な勢いで、さやかの剣が横なぎに叩きつけられる。
    咄嗟に矛で受け止めるも衝撃を受け流しきれず。
    杏子は轟音と共に壁をぶち破って体育館の中へと叩き込まれた。

    すぐさま後を追うさやかをまどかとほむらはただ見送る事しか出来なかった。

    まどか「さやかちゃん…杏子ちゃん、どうして…一体何がどうなってるの…?」

    ほむら「逃げましょうまどか。あの二人は本気よ。
    しかもどう見たってまともな人間じゃない、わたし達に出来る事は何もないわ。」

    そうこうしているうちにも体育館の中からはけたたましい金属音と衝撃波が響く。
    中でどのような戦闘が繰り広げられているのか、想像するだけでも恐ろしい。

    66 = 2 :

    まどか「でも、二人とも止めなきゃ!友達同士なのに…こんなの絶対おかしいよ!」

    ほむら「本当に変わらないわね、そういう所」

    まどか「ほむらちゃん…?」

    そこまでだった。何の前触れもなく、まどかはその意識を失った。
    崩れ落ちるまどかを優しく受け止めるほむら。その目に光る眼光は既に女子中学生のそれではなく…

    ほむら「そしてあなたもね…美樹さやか…」

    溜め息を付くように、悪魔は静かに囁いた。

    68 = 2 :

    杏子「ぐあ…」

    体育館内に叩き込まれた杏子は全身の痛みに耐えながら体勢を立て直す。
    砂煙に目を凝らすとその中から一つの影が、音もなく飛び出して来た。

    杏子「さやか!」

    縦一線に降り下ろされた斬撃を矛で受け止める。
    耳をつんざくような金属音、衝撃波は漂っていた砂煙を円状に一掃し、
    杏子の全身を伝わって体育館の床板を破損させた。

    杏子「あんた、本気であたしとやろうってのか?!」

    さやかは答えない。杏子の矛から剣を引くとそのまま空中で体を切り返し
    更に斬撃の雨を畳み掛ける。

    69 = 2 :

    矛を回転させながら両端を用い斬撃を捌く杏子。
    その凄まじさたるや、音と空気圧で体育館の窓が次々と弾けていく程である。

    杏子「なめるなよ!ガチであたしとやりあって勝てるとでも…」

    しかし言葉とは裏腹に杏子はさやかの戦闘力に心底驚いていた。
    勿論さやかの事を弱いなどとは思っていなかった。だがそれにしてもこの力、このスピード。
    こんな戦い方をしていては魔力が持たないのではないか?

    70 = 2 :

    杏子「死ぬ気かよさやか!なんでだよ!一緒に旅行に行こうって決めたじゃないか!!」

    さやか「ごめん杏子。あたしも本当に行きたかったよ。旅行」

    杏子「だったらこんな事してる場合じゃ…分かってんのか?!
    もうあたしらは魔力を使っても回復出来ないんだぞ?!」

    さやか「だったら無駄な抵抗しないで。抵抗すればするほど、追い詰められるのはあんたの方だよ」

    杏子「なにぃ?」

    その時杏子はさやかのジェムを見て驚愕した。
    ここまで派手な魔力の使い方をしているにも関わらず、さやかのジェムの濁りは驚くほど少ない。

    71 = 2 :

    さやかは円環の使いとしての力に目覚めた訳ではなかったが、その記憶と自覚が彼女の精神的強さを補強した。
    また魔力の使い方の巧みさにおいても、かつて魔力の権化とも言える存在であった時の経験によって、
    既に老練の域に達していた。
    もはやさやかは魔法少女としては地上最強と言っても過言ではない実力者となっていたのだ。

    さやか「お願い、今ならあんたのジェムの穢れもそこまでじゃあない。もう大人しくやられてよ!」

    杏子「なんで、なんでだよさやか。なんであたしにまで何も教えてくれないんだよ…」

    杏子の赤い瞳は気丈な光を失わない。だが今、その光は涙に揺らめき始めている。
    それを認めたさやかもまた心臓を握り潰されるよう思いだった。

    72 = 2 :

    さやか「ごめん!!」

    杏子「!!」

    矛に斬劇を残したまま杏子の視界からさやかが消えた。
    次の瞬間、杏子の下腹部にボーリング玉の様な重い衝撃がめり込んだ。
    剣を敢えて放棄したさやかの、潜り込むような低姿勢から繰り出した右ストレートが直撃したのである。

    切りもみ状に回転しながら杏子は体育館のステージを越え、壁に激突した。

    杏子「さやかの…バカ野郎…」

    消え入る様な声を絞り出した杏子、彼女はそこで限界を迎え、静かに気を失った。

    73 = 2 :

    さやか「杏子!!」

    さやかはすぐさま杏子の下へ駆け寄ると、ボロボロになった彼女の体を抱えた。

    さやか「ごめん…ごめんね杏子…許して…」

    呟きながら彼女は本来の力である回復魔術を杏子に施す。
    魔力の消費を回復させる事は勿論出来ないが、身体的なダメージはこれで消えるだろう。

    さやか「こんな事ならあの時電話に出て、適当に帰らせればよかった…
    せめてあんたには…静かな時間を過ごさせてあげたかったのに…」

    「その通りだわ、美樹さやか」

    75 = 2 :

    その声を聴いた瞬間、さやかは総毛立つ程の戦慄を感じた。
    まるで自分を取り囲む世界の総てが変貌してしまったような…
    そしてそれは実際に比喩には終わらなかった。
    もはや懐かしささえ覚える、奇抜な彩りと造形で満たされた空間が、声の聞こえた方向を中心に広がっていく。

    「QBに何を吹き込まれたのか知らないけれど、わたしはこれでもあなた達の事を慮っていたわ」

    「その気になれば魔獣だろうと魔法少女だろうと、消し去る事なんてなんでもなかった」

    「魔獣を自らの手で滅ぼしたという達成感と、報酬としての静かな余生は
    わたしからあなた達へのせめてもの手向けだったのよ」

    76 = 2 :

    さやかは無言で声の方向を見つめる。
    結界の奥から表れた少女は、少女と形容するにはあまりにも妖艶で、同時に禍々しかった。

    ほむら「どこまであなたは愚かなの?」

    確認しなくても分かった。悪魔だ。
    悪魔、暁美ほむらがそこに立っていた。
    その腕に愛すべき我らが女神を抱きながら。

    さやか「やっとこさおでましって訳ね」

    77 = 2 :

    ほむら「ええ、でもあなたのその様子を見ていると、誘い出されたと言った方が正しいかしら?」

    さやか「いくらあんたが大仕事に掛かりきりって言っても、あんた自身やまどかに危害が及ぶ様な事態になったらさすがに戻ってくるはずだと思ったのよね」

    ほむら「おかげで仕事は一時中断よ…本当にあなたは昔から面倒ばかりかけてくれるわ」

    さやか「おやおやー誰かさんが自分で作っちゃった結界から助け出してあげたのをもう忘れたのかなー?」

    ほむら「そう…そんな事もあったわね…ふふ…」

    79 = 2 :

    微笑を浮かべるほむら。
    さやかは油断は禁物と己に言い聞かせながらも意外な反応を見せるほむらに少なからず驚いていた。
    もっととりつく島もない様子を想像していたのだ。

    ほむら「それで、何のためにわたしをわざわざ呼んだのかしら?」

    さやか「いやー…あんたと一回話がしたくてね」

    ほむら「話?」

    さやか「あんたもお察しのとおり、QBの奴から色々と聞かされてはいたんだけどさ、
    それだけで判断するのはどうかと思ったから」

    80 = 2 :

    ほむら「そんな事のために?仮にわたしの考えがあなたの意にそぐわなかったとして、
    こうしてわたしが戻ってきた以上、あなたに勝ち目はないわよ?」

    さやか「ま、それはもしかしたらその通りなのかもしれないけどさ」

    さやか「あたしって、ほんと、バカだからさ」

    天使と悪魔の視線が交差する。
    一瞬の緊張の後、口を開いたのはほむら。

    ほむら「いいわ…実はわたしも、あなたとは一度ゆっくり話すのもいいと思っていたのよ」

    81 = 2 :

    ズズズとおぞましい音を立てて結界の地面から生えてきたのは
    可愛らしいテーブルをはさんで向かい合わせの長椅子、その傍らには不自然に大きな揺りかご。
    ほむらは抱いていたまどかを揺りかごに寝かせると背中越しにさやかを呼ぶ。

    ほむら「この椅子なら佐倉杏子も寝かせておけるでしょう?何か飲む?
    紅茶でもハーブティーでも大抵の物は揃っているわよ?」

    さやか「至れり尽くせりで恐悦至極ですなー、そんじゃあまあ…」

    さやか「エキナセアで」

    82 :

    >>1
    俺を登場させてはくれないか?
    名前は、ヴィッペルで頼む
    無理ならスルーしてくれ

    83 = 2 :

    ほむら「すっぱいわね、これ」

    さやか「ほむらはお子さまだからね」

    ほむら「そうね、そうかもしれないわね」

    さやか「マミさんの淹れたお茶…おいしかったよね」

    ほむら「あら、わたしの腕も捨てたものじゃないでしょう?」

    さやか「や、おもいっきり使い魔に淹れさせてたじゃん!!」

    ほむら「だまりなさい」

    結界の中に束の間の穏やかな時間が流れる。
    かつて死線を共にした者同士の再会がそうさせたのかもしれない。
    しかしながらいつまでもこうしている訳にもいかない。
    さやかは意を決し話の核心を切り出す。

    84 = 2 :

    さやか「本当に円環の理を消滅させる気?」

    ほむら「ええ」

    さやか「まどかのため?」

    ほむら「正直、今となってはわからないわ」

    ほむら「あなたもそうなんでしょう?美樹さやか」

    さやか「そう…かもしれないね」

    美樹さやかも暁美ほむらも、共に鹿目まどかの親友である。
    彼女の為に幾度となく戦いに身を投じてきた二人、だがその二人が見つめてきた鹿目まどかは、
    必ずしも同じ姿ではない。

    86 = 2 :

    さやか「わたしもね、あんたの気持ち分かった気がするんだ、この子の…」

    膝の上に乗せた杏子の頭を撫でながらさやかは続ける。

    さやか「この子の事を考えた時ね、あんたが用意したシナリオに乗るのもいいかもしれないって思った。
    この子にわざわざ辛い現実なんて伝えたくないって。
    穏やかな時間を二人で過ごして、静かに消えていく、その方が幸せなのかもしれないってね…」

    ほむら「でもあなたはそうはしなかった」

    さやか「そうだね、どんな現実の中でもやるべき事を全力でやる。
    それがまどかがわたしに教えてくれた事、わたしの信じているまどかの真意だから」

    88 = 2 :

    ほむら「…」

    さやか「あんたのしている事がまどかの願いを踏みにじってるかもしれないって考えた事はある?
    まどかを守ると言いながら、結局まどかを自分の鳥かごの中に閉じ込めているだけかもしれないって
    考えなかったの?」

    ほむら「考えたに決まってるじゃない」

    さやか「だったら…」

    ほむら「でも、わたしにとってのまどかの本音は、あの結界の中で聞いた、
    一人になりたくないっていうあの言葉だわ。
    だってそうでしょう?あの子の置かれた現実は眉間に突きつけられた銃口の様なものよ。
    それがなければあんな事を願う程強くなる必要なんてなかった。
    どうしてまどかだけがそんなものと向き合わなければならないの?」

    89 = 2 :

    さやか「それは…」

    ほむら「分かってる。現実なんていつもそんな物よ、いつだって理不尽で突然で、
    その場その場で乗り越えていくしかないものだわ。わたしだってそうしてきた。
    結果あの子の悲壮な願いの片棒を担ぐ事になるとも知らずにね」

    ほむら「でも現実は自分の力で変えていける、それもまた事実でしょう?
    まどかの二つの願い、どちらも本当なのだとして、わたしにそれを選ぶ力があるのなら
    わざわざ辛い思いをさせる選択肢を取る道理なんてないわ」

    さやか「円環の理が消滅したら、そこに導かれた魂はどうなるの?」

    ほむら「別に、再びこの世の因果と合流するだけよ。普通の人間の魂と同じ、本来の流れの中に戻るだけだわ」

    90 = 2 :

    さやか「そんな事、まどかが望んでいると思うの?」

    ほむら「そもそもムシが好すぎるのよ、奇跡なんて大それた物を願っておいて、数年も戦えば天国に行ける?
    そんなものがあの子の犠牲の上に成り立っている。それがあの子の望んだ事だとしても、
    あの子がそれを望まざるを得なかった現実ごと今度はわたしがねじ曲げて見せる」

    さやか「ほむら…」

    ほむら「それをあの子は怒るかもしれないけど…あの子が魔法少女のために
    自らを犠牲にしてルールをねじ曲げた事と、わたしのやろうとしている事、
    一体何が違うっていうの?責められる言われなんてないわ」

    92 = 2 :

    さやか「犠牲って…やっぱりあんた円環の理を消滅させた後は…」

    ほむら「再びQBを使って魔獣を生み出すわ。人びとの呪いを浄化し続ける運命はわたしが一人で背負う」

    さやか「QBの本当の狙いはなんなわけ?」

    ほむら「あいつはそもそも、もう人類からは手を引きたいのよ。
    隙を見て逃げ出せるだけのゴタゴタさえ起こせれば何でもいいんでしょうね」

    さやか「なるほどね…」

    ほむら「それで、結局あなたはどうするの?」

    さやか「なんかさ、あんた達って本当に似た者同士だよね」

    93 = 2 :

    ほむら「…」

    さやか「結局あんた達は、誰かに辛い思いをさせるなら、自分がした方が楽だって、
    そういう考え方なだけなのよ。あたしも人の事言えないけどね。
    ただ、まどかはそれが皆に向けた気持ちで、あんたはまどかだけに向けた気持ち、それがあんた達の違い」

    ほむら「だからまどかの方が正しいって言いたいの?」

    さやか「別にそうじゃないよ。だってさ、何が正しいかなんてその人の立ってる場所によって変わるじゃない。
    世界を救ったスーパーヒーローだって、もしかしたらその人の奥さんは寂しくて心配で、
    毎晩泣いてたのかもしれない。まあそこで涙こらえて夫を支えますって方がいい女なんだろうけどね」

    94 = 2 :

    さやかの言葉を聞いて、ほむらは自嘲気味に笑みを浮かべる。

    ほむら「それじゃまるでわたしがみじめったらしい女みたいに聞こえるわ」

    さやか「それか子離れできない母親だね」

    ほむら「ふふふ…だまりなさい」

    さやか「へっへっへ」

    ひとしきり笑う二人。一息ついた所でさやかが言う。

    さやか「でもね、どっちが正しいとか言う気はないけど、わたしも一個だけどうしてもやりたい事がある。
    そのためにはどうやらあんたと一戦交えないといけないみたい。」

    ほむら「そう、あなた、本気なのね」

    95 = 2 :

    二人が席を立つ。同時にお茶会セットが干渉遮断フィールドの様な物で包まれ、二人の下から遠くへ移動していく。
    これでまどかと杏子が戦闘に巻き込まれる事はないだろう。

    さやか「なんだかんだでほむらちゃんは優しいですねぇ」

    ほむら「あくまでもわたしだもの」

    さやか「笑えないっつーの!!」

    突如としてさやかの全身から蒼い炎の様な光が迸る。
    円状の楽譜を模した魔法陣がさやかの背後に浮かび上がる。
    かつてない魔力の高まりに無数の音符が躍り狂う。
    だがその様を見つめるほむらの表情には変化はない。


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