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元スレ暴君「俺に逆らう奴は、どいつもこいつも死刑だ!」
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暴君「腰と腕がいてぇ~……」シャカシャカシャカシャカ…
メイド「明日は筋肉痛でしょうね。私たちに明日があれば、ですが」シャカシャカシャカシャカ…
ザワザワ…… ドヨドヨ……
敵兵A「なんだよ……なんなんだよ、あれ……」
敵兵B「オイ、矢でも射てみろよ」
敵兵C「イヤだよ、絶対呪われるよ! 黒魔術の儀式かなんかだろ、あれ!」
隊長「なにをやっている! 相手はただの男女二人組だぞ!」
敵兵A「隊長、あれのどこが“ただの”なんですか! よく見て下さいよ!」
隊長「た、たしかに……」ゴクッ…
隊長(今の私の気持ちを率直に表すとするなら──キモイ!)
ザワザワ…… ドヨドヨ……
メイド「明日は筋肉痛でしょうね。私たちに明日があれば、ですが」シャカシャカシャカシャカ…
ザワザワ…… ドヨドヨ……
敵兵A「なんだよ……なんなんだよ、あれ……」
敵兵B「オイ、矢でも射てみろよ」
敵兵C「イヤだよ、絶対呪われるよ! 黒魔術の儀式かなんかだろ、あれ!」
隊長「なにをやっている! 相手はただの男女二人組だぞ!」
敵兵A「隊長、あれのどこが“ただの”なんですか! よく見て下さいよ!」
隊長「た、たしかに……」ゴクッ…
隊長(今の私の気持ちを率直に表すとするなら──キモイ!)
ザワザワ…… ドヨドヨ……
将軍「兵たちに怯えが伝染し始めています!」
将軍「国王様、どうか賢明なるご決断を!」
側近「国王様! こうしてる間にも距離が狭まっています!」
国王「うむむ……」
国王(あのブリッジ二人組にどんな意味があるのかさっぱり分からんし)
国王(仮にあれを兵たちに始末させたところで、むしろ我が軍の恥にしかならんよな)
国王(多少改革が進んだところで、この国が我が国に追いつけるはずもないし──)
国王(ここで兵を退いておけば、周辺国には演習のいきすぎ、ぐらいで説明はつく!)
国王(うん、決まった! よし、決まった! さすがワシ!)
国王「撤退じゃ! 全軍に撤退命令を出せ!」バッ
将軍「了解いたしましたァ! 全軍、撤退! あのブリッジ二人組は放置せよ!」
ワアァァァァァ……!
ザッザッザッザッザッ……!
将軍「国王様、どうか賢明なるご決断を!」
側近「国王様! こうしてる間にも距離が狭まっています!」
国王「うむむ……」
国王(あのブリッジ二人組にどんな意味があるのかさっぱり分からんし)
国王(仮にあれを兵たちに始末させたところで、むしろ我が軍の恥にしかならんよな)
国王(多少改革が進んだところで、この国が我が国に追いつけるはずもないし──)
国王(ここで兵を退いておけば、周辺国には演習のいきすぎ、ぐらいで説明はつく!)
国王(うん、決まった! よし、決まった! さすがワシ!)
国王「撤退じゃ! 全軍に撤退命令を出せ!」バッ
将軍「了解いたしましたァ! 全軍、撤退! あのブリッジ二人組は放置せよ!」
ワアァァァァァ……!
ザッザッザッザッザッ……!
ぽつんと残された二人──
暴君「…………」
メイド「…………」
暴君「どうやら……俺の“誠意”が通じたようだな」
メイド「……そういうことにしておきましょうか」
暴君「トゲのある言い方だな」
暴君「しかし、お前も物好きな奴だ。俺一人で十分だったものを」
メイド「どんな時もお供をするのが、メイドの務めですから」
暴君「ふん……。ただ、なかなかのブリッジだったことだけは認めてやる」
暴君「帰るぞ」クルッ
メイド「服を着るのを忘れないで下さいね」
暴君「いわれなくとも分かっている!」
暴君「…………」
メイド「…………」
暴君「どうやら……俺の“誠意”が通じたようだな」
メイド「……そういうことにしておきましょうか」
暴君「トゲのある言い方だな」
暴君「しかし、お前も物好きな奴だ。俺一人で十分だったものを」
メイド「どんな時もお供をするのが、メイドの務めですから」
暴君「ふん……。ただ、なかなかのブリッジだったことだけは認めてやる」
暴君「帰るぞ」クルッ
メイド「服を着るのを忘れないで下さいね」
暴君「いわれなくとも分かっている!」
< 城下町 >
ワアァァァ……! ワアァァァ……!
暴君「なんだこれは……やかましい」
メイド「城や城下町の方々が集まっていますね」
「陛下、バンザイ!」 「お帰りなさい!」 「ありがとう!」
兵士「ご無事でしたか! よかった……!」
シェフ「今夜は特に腕を振るわせて下さい!」
神父「おお、神よ……感謝いたします」
店主「またリンゴ買って下さいよ!」
国民「陛下……あなたにはまた助けていただきました! ありがとうございます!」
ワアァァァ……! ワアァァァ……!
メイド「みんな、陛下の無事を喜んでいますよ」
暴君「ふん」
ワアァァァ……! ワアァァァ……!
暴君「なんだこれは……やかましい」
メイド「城や城下町の方々が集まっていますね」
「陛下、バンザイ!」 「お帰りなさい!」 「ありがとう!」
兵士「ご無事でしたか! よかった……!」
シェフ「今夜は特に腕を振るわせて下さい!」
神父「おお、神よ……感謝いたします」
店主「またリンゴ買って下さいよ!」
国民「陛下……あなたにはまた助けていただきました! ありがとうございます!」
ワアァァァ……! ワアァァァ……!
メイド「みんな、陛下の無事を喜んでいますよ」
暴君「ふん」
大臣「陛下!」
暴君「大臣か。なにを青ざめている」
大臣「なにを考えているんですか、メイドと二人だけで隣国軍に乗り込むなんて!」
暴君「お前らが不甲斐ないから、挨拶しに行っただけだ」
少女「お部屋、ちゃんとキレイにしておきましたから!」
暴君「チリ一つでも残っていたら、大目玉喰らわすからな!」
ワアァァァァァ……! ワアァァァァァ……!
暴君「…………」
メイド「どうしました?」
暴君「いや……」
暴君「大臣か。なにを青ざめている」
大臣「なにを考えているんですか、メイドと二人だけで隣国軍に乗り込むなんて!」
暴君「お前らが不甲斐ないから、挨拶しに行っただけだ」
少女「お部屋、ちゃんとキレイにしておきましたから!」
暴君「チリ一つでも残っていたら、大目玉喰らわすからな!」
ワアァァァァァ……! ワアァァァァァ……!
暴君「…………」
メイド「どうしました?」
暴君「いや……」
< 寝室 >
暴君「…………」
メイド「どうしました、さっきから黙ったままで」
メイド「シェフ会心の夕食にも、なにもリアクションせずに……」
暴君「…………」
暴君「……お前になら話してもいいか。ブリッジした仲だしな」
メイド「どうぞ」
暴君「さっき……町に戻って、市民どもが俺たちを迎えてくれた時──」
メイド(愚民ではなく、市民……?)
暴君「俺としたことが……」
暴君「こういうのも悪くないな、などと思ってしまってな」
暴君「フフッ……おかしくなっちまったのかな、俺……」
暴君「あれだけ、愚民愚民いってたはずなのにな……」
メイド「いいえ」
暴君「…………」
メイド「どうしました、さっきから黙ったままで」
メイド「シェフ会心の夕食にも、なにもリアクションせずに……」
暴君「…………」
暴君「……お前になら話してもいいか。ブリッジした仲だしな」
メイド「どうぞ」
暴君「さっき……町に戻って、市民どもが俺たちを迎えてくれた時──」
メイド(愚民ではなく、市民……?)
暴君「俺としたことが……」
暴君「こういうのも悪くないな、などと思ってしまってな」
暴君「フフッ……おかしくなっちまったのかな、俺……」
暴君「あれだけ、愚民愚民いってたはずなのにな……」
メイド「いいえ」
メイド「やっと心の底から笑って下さいましたね、陛下」
メイド「横暴で身勝手で、無理なバカ笑いを繰り返す陛下も嫌いではありませんが」
メイド「今の陛下の微笑みが、今までで一番ステキでしたよ」クスッ
暴君「な……! バカ笑いだと!?」
暴君「しかもお前こそ、笑ったところ初めて見たぞ!」
メイド「陛下が心から笑うまでは私も笑うまい、と心に決めていたものですから」
暴君「なんだそりゃ……意味あるのかよそれ」
暴君「だがお前こそ……笑ったツラも悪くないな」
メイド「ありがとうございます」
メイド「横暴で身勝手で、無理なバカ笑いを繰り返す陛下も嫌いではありませんが」
メイド「今の陛下の微笑みが、今までで一番ステキでしたよ」クスッ
暴君「な……! バカ笑いだと!?」
暴君「しかもお前こそ、笑ったところ初めて見たぞ!」
メイド「陛下が心から笑うまでは私も笑うまい、と心に決めていたものですから」
暴君「なんだそりゃ……意味あるのかよそれ」
暴君「だがお前こそ……笑ったツラも悪くないな」
メイド「ありがとうございます」
暴君「ま、ここらで──」
暴君「目指してみるのもいいかもな……“名君”ってやつを」
メイド「迷う方の“迷君”にならなければいいですがね」
暴君「なんだと!? お前は死刑だ! 死刑にしてやる!」
メイド「もう陛下にそんな権限はありませんよ」
メイド「もしあったとしても、私は死刑を受け入れたりはしません」
メイド「私はこれからこの国をよりよくしていく陛下に、お供したいのですから」
メイド「できるかぎり、ずっと」ニコッ
暴君「…………」
暴君「勝手にしやがれ!」
これこそが──
後にこの国の“中興の祖”とも呼ばれることになる、名君誕生の瞬間であった。
─ 完 ─
暴君「目指してみるのもいいかもな……“名君”ってやつを」
メイド「迷う方の“迷君”にならなければいいですがね」
暴君「なんだと!? お前は死刑だ! 死刑にしてやる!」
メイド「もう陛下にそんな権限はありませんよ」
メイド「もしあったとしても、私は死刑を受け入れたりはしません」
メイド「私はこれからこの国をよりよくしていく陛下に、お供したいのですから」
メイド「できるかぎり、ずっと」ニコッ
暴君「…………」
暴君「勝手にしやがれ!」
これこそが──
後にこの国の“中興の祖”とも呼ばれることになる、名君誕生の瞬間であった。
─ 完 ─
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