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ある王国──
山道を走る馬車。
ガラガラガラガラ……
王子「本当にごめんよ、姫……」
王子「君との結婚式を控え、城に来てもらったとたんこんなことになってしまって」
王子「君にはなんの罪もないというのに……」
姫「いいのです、王子」
姫「私はあなたと一緒なら、それで幸せなんですもの」
山道を走る馬車。
ガラガラガラガラ……
王子「本当にごめんよ、姫……」
王子「君との結婚式を控え、城に来てもらったとたんこんなことになってしまって」
王子「君にはなんの罪もないというのに……」
姫「いいのです、王子」
姫「私はあなたと一緒なら、それで幸せなんですもの」
王子「先代王の暴政で崩れた国を、父上は必死に立て直そうとした」
王子「でも結局、クーデターは起こってしまった」
王子「父は失意で自害したが、クーデターのリーダーはボクたちの命までは取らず」
王子「辺境への追放でとどめてくれた」
王子「ボクたちは感謝すべきなんだろう……あのリーダーに」
姫「えぇ……あの方はお城の人たちの命をむやみに奪うことをせず」
姫「ほとんど無血でクーデターをなしとげました……」
姫「そのことは……私も感謝しております」
王子「でも結局、クーデターは起こってしまった」
王子「父は失意で自害したが、クーデターのリーダーはボクたちの命までは取らず」
王子「辺境への追放でとどめてくれた」
王子「ボクたちは感謝すべきなんだろう……あのリーダーに」
姫「えぇ……あの方はお城の人たちの命をむやみに奪うことをせず」
姫「ほとんど無血でクーデターをなしとげました……」
姫「そのことは……私も感謝しております」
王子「じいや、彼らが用意してくれた辺境の土地には、あとどのぐらいでつく?」
執事「あと二時間ほど……といったところですな」
王子「すまない……じいや」
執事「私も老い先短い身、最後まで王国のために奉公させて下さい」
執事「到着次第、私の孫も手紙で呼び寄せます」
執事「きっと王子の力になることでしょう」
メイド「そうですわね、是非」
執事「あと二時間ほど……といったところですな」
王子「すまない……じいや」
執事「私も老い先短い身、最後まで王国のために奉公させて下さい」
執事「到着次第、私の孫も手紙で呼び寄せます」
執事「きっと王子の力になることでしょう」
メイド「そうですわね、是非」
姫「勇者様…お慕えしています…///」
勇者「ひ…姫…///」
王子「なぁ、あの勇者とか言うの殺しといて」
執事「了解致しました」
展開は燃えた
勇者「ひ…姫…///」
王子「なぁ、あの勇者とか言うの殺しといて」
執事「了解致しました」
展開は燃えた
王子「メイドさんにも、苦労をかけるね」
王子「君にもご家族がいるのに……」
メイド「いえ、家のことなどはよいのです。頼りになる妹もおりますし」
メイド「それに、王子と姫には私も大変よくしていただきました」
メイド「最後まで、お供させていただきますわ」
王子「……ありがとう」
王子「姫……せいいっぱい幸せになろう! 畑を耕して、家族を作って、さ」
姫「はいっ!」
王子「君にもご家族がいるのに……」
メイド「いえ、家のことなどはよいのです。頼りになる妹もおりますし」
メイド「それに、王子と姫には私も大変よくしていただきました」
メイド「最後まで、お供させていただきますわ」
王子「……ありがとう」
王子「姫……せいいっぱい幸せになろう! 畑を耕して、家族を作って、さ」
姫「はいっ!」
ガタンッ!
突如、馬車が止まった。
姫「きゃあっ!」ガクッ
メイド「きゃっ!」ガクン
王子「どうした、じいや!?」バッ
執事「皆さん、お逃げ下さい!」
執事「山賊の集団が馬車の前に立ちふさがって──」
ザシュッ!
執事「か、はっ……」ドサッ
王子「じいやっ!」
突如、馬車が止まった。
姫「きゃあっ!」ガクッ
メイド「きゃっ!」ガクン
王子「どうした、じいや!?」バッ
執事「皆さん、お逃げ下さい!」
執事「山賊の集団が馬車の前に立ちふさがって──」
ザシュッ!
執事「か、はっ……」ドサッ
王子「じいやっ!」
メイド「お二人とも、こちらへ!」バッ
山賊「おっと、逃がさねぇぞぉ~?」シュッ
ドスッ……!
メイド「あ、う……」ドサッ
山賊「さて、残るは王子と姫の二人だけか」
王子「よくも、じいやとメイドさんを……!」
王子「お前たち、なぜボクたちの素性を知っている!?」
山賊「へへへ……だって、事前に教えてもらってたからな」
山賊「お前たちのことも、今日お前たちがここを通るってことも……」
王子「だれに教わった!?」
山賊「王国を滅ぼしたクーデター一派の……副リーダーだよ」
王子「副リーダー……!」
王子(たしか、王家や王家に仕えてた者の徹底的な粛清を唱えていた輩だ……)
王子(結局、リーダーによってそれは実行されなかったが……)
山賊「なんでも負け犬は無様にくたばるべきだから、だそうだ」
山賊「おっと、逃がさねぇぞぉ~?」シュッ
ドスッ……!
メイド「あ、う……」ドサッ
山賊「さて、残るは王子と姫の二人だけか」
王子「よくも、じいやとメイドさんを……!」
王子「お前たち、なぜボクたちの素性を知っている!?」
山賊「へへへ……だって、事前に教えてもらってたからな」
山賊「お前たちのことも、今日お前たちがここを通るってことも……」
王子「だれに教わった!?」
山賊「王国を滅ぼしたクーデター一派の……副リーダーだよ」
王子「副リーダー……!」
王子(たしか、王家や王家に仕えてた者の徹底的な粛清を唱えていた輩だ……)
王子(結局、リーダーによってそれは実行されなかったが……)
山賊「なんでも負け犬は無様にくたばるべきだから、だそうだ」
王子「こんなところでやられるか……!」
王子「じいやとメイドのためにも、姫のためにも、こんなところで死ねるかぁっ!」ダッ
山賊「へっ、小僧が!」
ドゴッ!
王子「ぐあぁ……っ!」ドサッ
山賊「よしてめぇら、俺はコイツにトドメを刺す! 姫はさらっちまえ!」
手下「へいっ!」ガシッ
姫「いやっ、はなしてぇっ! 王子、王子っ!」
王子「じいやとメイドのためにも、姫のためにも、こんなところで死ねるかぁっ!」ダッ
山賊「へっ、小僧が!」
ドゴッ!
王子「ぐあぁ……っ!」ドサッ
山賊「よしてめぇら、俺はコイツにトドメを刺す! 姫はさらっちまえ!」
手下「へいっ!」ガシッ
姫「いやっ、はなしてぇっ! 王子、王子っ!」
王子「姫! 必ずまた会える! 絶対また会おう!」姫「はいっ!」
手下「こっち来いや! たっぷり可愛がってやるからよ!」グイッ
姫「王子! 王子ぃっ!」
王子「姫……姫ぇっ!」
姫「王子……私たちまた会えますわよね……!」
王子「姫! 必ずまた会える! 絶対また会おう!」
姫「はいっ!」
山賊「会えるわけねえだろうが!」ブンッ
ガスッ!
王子「ぐ……っ! 姫……!」
─────
───
─
姫「王子! 王子ぃっ!」
王子「姫……姫ぇっ!」
姫「王子……私たちまた会えますわよね……!」
王子「姫! 必ずまた会える! 絶対また会おう!」
姫「はいっ!」
山賊「会えるわけねえだろうが!」ブンッ
ガスッ!
王子「ぐ……っ! 姫……!」
─────
───
─
五年後、クーデター一派のリーダーが大統領となり、王国は共和国となっていた。
自治都市──
青年「…………」ザッザッ…
浮浪者「ウイ~……ヒック……」
青年「そこの人」
浮浪者「あ、オイラかい?」
青年「この街で一番危険な人間に会いたい」
浮浪者「危険……危険ねぇ」
浮浪者「ここは危険な奴ばっかだが、あえていうなら殺し屋か──」
浮浪者「あるいは毒婦ってとこじゃなあ」
浮浪者「ま、一番危険っていったらなんといっても市長じゃがな!」
浮浪者「ギャハハハハッ!」
青年「……ありがとう」ザッ
自治都市──
青年「…………」ザッザッ…
浮浪者「ウイ~……ヒック……」
青年「そこの人」
浮浪者「あ、オイラかい?」
青年「この街で一番危険な人間に会いたい」
浮浪者「危険……危険ねぇ」
浮浪者「ここは危険な奴ばっかだが、あえていうなら殺し屋か──」
浮浪者「あるいは毒婦ってとこじゃなあ」
浮浪者「ま、一番危険っていったらなんといっても市長じゃがな!」
浮浪者「ギャハハハハッ!」
青年「……ありがとう」ザッ
チンピラ「オイ兄ちゃん、いい身なりしてんじゃねえかよ」
青年「ボクになにか用か」
チンピラ「ちょっと金をよ、恵んでくれねえか」
青年「悪いが、ボクも余裕はない。他を当たってくれ」スッ…
チンピラ「んだとコラァ! スカしやがってよォ!」ブオンッ
ヒュッ!
チンピラの顔に、剣が突きつけられる。
チンピラ「は、はや……っ!」
青年「用は済んだか? じゃあボクは行くぞ」ザッザッ…
チンピラ(何者だ、アイツ……)
チンピラ(って、あっちには殺し屋のアジトがあったような……)
青年「ボクになにか用か」
チンピラ「ちょっと金をよ、恵んでくれねえか」
青年「悪いが、ボクも余裕はない。他を当たってくれ」スッ…
チンピラ「んだとコラァ! スカしやがってよォ!」ブオンッ
ヒュッ!
チンピラの顔に、剣が突きつけられる。
チンピラ「は、はや……っ!」
青年「用は済んだか? じゃあボクは行くぞ」ザッザッ…
チンピラ(何者だ、アイツ……)
チンピラ(って、あっちには殺し屋のアジトがあったような……)
殺し屋のアジト──
奴隷少女「た、助けて……」ガタガタ…
殺し屋「今日はいい拾いモンをしたなァ……奴隷のクソガキか」
殺し屋「ナイフの切れ味試すにゃ、もってこいだ」ニタァ…
ドンドンッ
殺し屋「あ? 誰だァ!?」
青年「お前がこの街で一番腕が立つといわれる、殺し屋か」ザッ
殺し屋「だったらなんだ? 依頼か? それともその剣で俺に挑みにきたか?」
青年「ボクに……人の殺し方を教えてくれ」
殺し屋「はァ!?」
奴隷少女「た、助けて……」ガタガタ…
殺し屋「今日はいい拾いモンをしたなァ……奴隷のクソガキか」
殺し屋「ナイフの切れ味試すにゃ、もってこいだ」ニタァ…
ドンドンッ
殺し屋「あ? 誰だァ!?」
青年「お前がこの街で一番腕が立つといわれる、殺し屋か」ザッ
殺し屋「だったらなんだ? 依頼か? それともその剣で俺に挑みにきたか?」
青年「ボクに……人の殺し方を教えてくれ」
殺し屋「はァ!?」
殺し屋「テメェ……なにもんだ?」
青年「悪いが、いえない」
殺し屋「ふうん……で、なんで人の殺し方を教わりたいんだ?」
青年「……復讐」
殺し屋「なるほど、復讐ねェ……ふうん」
殺し屋「ちなみに殺したいのは誰だ?」
青年「この自治都市を治めている……市長だ」
殺し屋「ふっ……ハハハハハッ! ハーッハッハッハッハッハッ!」
青年「…………」
殺し屋「自殺志願者かよ、テメェ!?」
殺し屋「ここの市長が何者か、テメェ知ってんのか!?」
青年「悪いが、いえない」
殺し屋「ふうん……で、なんで人の殺し方を教わりたいんだ?」
青年「……復讐」
殺し屋「なるほど、復讐ねェ……ふうん」
殺し屋「ちなみに殺したいのは誰だ?」
青年「この自治都市を治めている……市長だ」
殺し屋「ふっ……ハハハハハッ! ハーッハッハッハッハッハッ!」
青年「…………」
殺し屋「自殺志願者かよ、テメェ!?」
殺し屋「ここの市長が何者か、テメェ知ってんのか!?」
殺し屋「ヤツは元々、この国を共和国に変えたクーデター一派の副リーダーだった」
殺し屋「だが、そのあまりに悪辣な性格を現大統領であるリーダーにとがめられ」
殺し屋「国政にヤツの居場所はなくなり、結局この都市の市長に収まった」
殺し屋「だが、ヤツは相変わらず強引な手口で兵隊を集め」
殺し屋「この自治都市を完全に私物化しちまった」
殺し屋「この都市のルールは、市長に逆らわないこと、これだけだ」
殺し屋「市長にさえ逆らわなきゃ好き放題できる」
殺し屋「俺が、堂々と殺し屋をやれてるのもヤツのおかげ」
殺し屋「この無法地帯っぷりに憧れ、流れてくるアウトローも後を絶たねえ」
殺し屋「もうこの都市は、共和国政府でもうかつに手を出せねえ……ヤツの国さ」
殺し屋「だが、そのあまりに悪辣な性格を現大統領であるリーダーにとがめられ」
殺し屋「国政にヤツの居場所はなくなり、結局この都市の市長に収まった」
殺し屋「だが、ヤツは相変わらず強引な手口で兵隊を集め」
殺し屋「この自治都市を完全に私物化しちまった」
殺し屋「この都市のルールは、市長に逆らわないこと、これだけだ」
殺し屋「市長にさえ逆らわなきゃ好き放題できる」
殺し屋「俺が、堂々と殺し屋をやれてるのもヤツのおかげ」
殺し屋「この無法地帯っぷりに憧れ、流れてくるアウトローも後を絶たねえ」
殺し屋「もうこの都市は、共和国政府でもうかつに手を出せねえ……ヤツの国さ」
殺し屋「もちろんヤツの屋敷は、大勢の兵隊で警備されている」
殺し屋「たとえ俺でも、ヤツを殺すのは不可能だ」
殺し屋「まったく、無知ってのはどうしようもねえやな」
青年「そんなことは分かってる」
青年「だけどボクは……やらなきゃならないんだ!」
殺し屋「ふうん……殺る気満々ってとこか」
殺し屋「たとえ俺でも、ヤツを殺すのは不可能だ」
殺し屋「まったく、無知ってのはどうしようもねえやな」
青年「そんなことは分かってる」
青年「だけどボクは……やらなきゃならないんだ!」
殺し屋「ふうん……殺る気満々ってとこか」
殺し屋「聞くが……」
殺し屋「テメェ……人を殺したことあんのか?」
青年「……ない」
殺し屋「ふっ……フハハハハハハハハハハッ!」
殺し屋「ハーッハッハッハッハッ!」
殺し屋「バカにしてんのか、テメェ!」ブンッ
ガゴッ!
青年「ぐはっ!」
殺し屋「人を殺したこともねェヘタレが……俺に殺し方を教えて欲しい、だァ?」
殺し屋「あの市長を殺したい、だァ?」
殺し屋「笑わせんじゃねえよ!」
ガッ! ゴッ! バキッ! ドゴッ! ガッ!
青年「ぐふっ……! ムチャなのは分かってる……でもボクはやるんだ!」
殺し屋「うっ……!」
殺し屋「テメェ……人を殺したことあんのか?」
青年「……ない」
殺し屋「ふっ……フハハハハハハハハハハッ!」
殺し屋「ハーッハッハッハッハッ!」
殺し屋「バカにしてんのか、テメェ!」ブンッ
ガゴッ!
青年「ぐはっ!」
殺し屋「人を殺したこともねェヘタレが……俺に殺し方を教えて欲しい、だァ?」
殺し屋「あの市長を殺したい、だァ?」
殺し屋「笑わせんじゃねえよ!」
ガッ! ゴッ! バキッ! ドゴッ! ガッ!
青年「ぐふっ……! ムチャなのは分かってる……でもボクはやるんだ!」
殺し屋「うっ……!」
殺し屋「……よし、いいだろう」
殺し屋「だったら……あそこに縛りつけてある奴隷のガキ」
殺し屋「あれを殺せ」
奴隷少女「ひっ……!」
殺し屋「俺はナイフ使いでな、ホントはアレで試し斬りするつもりだったんだが」
殺し屋「お前にくれてやるよ」
殺し屋「あのガキ殺したら、俺が市長殺しを全力でバックアップしてやる」
殺し屋「さ、やれ」
青年「断る」
殺し屋「!?」
奴隷少女「え……」
青年「ボクは市長以外……だれも殺すつもりはない!」
殺し屋「…………」ピクピクッ
殺し屋「あまり俺をナメるんじゃねえぞ、テメェ!」
殺し屋「だったら……あそこに縛りつけてある奴隷のガキ」
殺し屋「あれを殺せ」
奴隷少女「ひっ……!」
殺し屋「俺はナイフ使いでな、ホントはアレで試し斬りするつもりだったんだが」
殺し屋「お前にくれてやるよ」
殺し屋「あのガキ殺したら、俺が市長殺しを全力でバックアップしてやる」
殺し屋「さ、やれ」
青年「断る」
殺し屋「!?」
奴隷少女「え……」
青年「ボクは市長以外……だれも殺すつもりはない!」
殺し屋「…………」ピクピクッ
殺し屋「あまり俺をナメるんじゃねえぞ、テメェ!」
殺し屋「アマチュアですらねえ、ド素人がッ!」シュバァッ
ガキィンッ!
青年「ぐう……っ!」ドサァッ
青年(な、なんて一撃だ……! なんの躊躇もなく無駄もなく急所を狙いに来た!)
殺し屋「今の反応……剣をかじってはいるようだが、しょせん俺の前じゃママゴトだ」
殺し屋「立て、この甘ちゃん野郎が……」
青年「ボクが甘いのは分かってるさ……」
青年「でもボクは復讐と同時に……どうしても探し出さねばならない人がいる」
青年「その人に会うまで……ボクはプライドを捨てるわけにはいかない!」
ガキィンッ!
青年「ぐう……っ!」ドサァッ
青年(な、なんて一撃だ……! なんの躊躇もなく無駄もなく急所を狙いに来た!)
殺し屋「今の反応……剣をかじってはいるようだが、しょせん俺の前じゃママゴトだ」
殺し屋「立て、この甘ちゃん野郎が……」
青年「ボクが甘いのは分かってるさ……」
青年「でもボクは復讐と同時に……どうしても探し出さねばならない人がいる」
青年「その人に会うまで……ボクはプライドを捨てるわけにはいかない!」
殺し屋「ケッ……殺し屋に教えを乞おうってのにプライドたぁ、めでてえ野郎だ」
青年「…………」
殺し屋「ふん、ムカつく目をしやがる」
殺し屋「いいだろう、そっちのガキと……殺しのテク……くれてやるよ」
青年「!」
殺し屋「ただし、地獄を見ることにゃなるがな」
殺し屋「いつまでテメェがその目をできるか……楽しみだ」
殺し屋「ハーッハッハッハッハッハ!」
青年「…………」ゴクッ…
青年「…………」
殺し屋「ふん、ムカつく目をしやがる」
殺し屋「いいだろう、そっちのガキと……殺しのテク……くれてやるよ」
青年「!」
殺し屋「ただし、地獄を見ることにゃなるがな」
殺し屋「いつまでテメェがその目をできるか……楽しみだ」
殺し屋「ハーッハッハッハッハッハ!」
青年「…………」ゴクッ…
アジト内の小部屋──
殺し屋に乱暴に放り込まれる二人。
ドサァッ!
青年「ぐっ……!」
奴隷少女「きゃっ!」
殺し屋「テメェとガキにゃ、この部屋をやる」
殺し屋「好きに過ごせばいいが、あんまデカイ音立てんなよ」
青年「どういう意味だ?」
殺し屋「ガキとお楽しみする時は、なるべく静かにやれってこった」
青年「だれがするか! ……ゲスが!」
殺し屋「ふん」
バタンッ!
青年「…………」
奴隷少女「…………」
殺し屋に乱暴に放り込まれる二人。
ドサァッ!
青年「ぐっ……!」
奴隷少女「きゃっ!」
殺し屋「テメェとガキにゃ、この部屋をやる」
殺し屋「好きに過ごせばいいが、あんまデカイ音立てんなよ」
青年「どういう意味だ?」
殺し屋「ガキとお楽しみする時は、なるべく静かにやれってこった」
青年「だれがするか! ……ゲスが!」
殺し屋「ふん」
バタンッ!
青年「…………」
奴隷少女「…………」
奴隷少女「ねえ、お兄さん、一緒に逃げよ?」
青年「!」
奴隷少女「アイツは……とんでもないヤツよ」
奴隷少女「ここ数年で一気に街一番の殺し屋にのし上がって」
奴隷少女「仕事以外でも平気で殺しをする……イカれた殺人鬼よ!」
奴隷少女「あんな奴と一緒にいたら……お兄さんも殺されちゃうわ!」
青年「あの殺し屋が、危険なヤツだってことは分かる……分かってる……」
青年「だけどあれぐらい危険な奴の力を借りるぐらいしなきゃ──」
青年「それ以上に危険な市長を殺すなんて、夢のまた夢だ」
青年「だから……ボクは逃げない」
青年「!」
奴隷少女「アイツは……とんでもないヤツよ」
奴隷少女「ここ数年で一気に街一番の殺し屋にのし上がって」
奴隷少女「仕事以外でも平気で殺しをする……イカれた殺人鬼よ!」
奴隷少女「あんな奴と一緒にいたら……お兄さんも殺されちゃうわ!」
青年「あの殺し屋が、危険なヤツだってことは分かる……分かってる……」
青年「だけどあれぐらい危険な奴の力を借りるぐらいしなきゃ──」
青年「それ以上に危険な市長を殺すなんて、夢のまた夢だ」
青年「だから……ボクは逃げない」
青年「でも、君にはこの街は危険すぎる」
青年「ボクも少しは金を持ってるから……これ持って逃げな」ジャラッ…
青年「今の共和国は、この都市以外はすこぶる平和なはずさ」
青年「大統領がうまくやってるからね」
奴隷少女「イヤ!」
青年「へ?」
奴隷少女「あの殺人鬼からお兄さんはあたしを助けてくれたわ!」
奴隷少女「なんの恩も返さずに逃げるなんてイヤ!」
青年「おいおい、なにをいってるんだ」
奴隷少女「お兄さんにプライドがあるように、あたしにもプライドがあるの!」
青年「…………」
青年「分かったよ。それじゃ、ひとつよろしく」スッ…
奴隷少女「うんっ」ガシッ
握手を交わす二人。
青年「ボクも少しは金を持ってるから……これ持って逃げな」ジャラッ…
青年「今の共和国は、この都市以外はすこぶる平和なはずさ」
青年「大統領がうまくやってるからね」
奴隷少女「イヤ!」
青年「へ?」
奴隷少女「あの殺人鬼からお兄さんはあたしを助けてくれたわ!」
奴隷少女「なんの恩も返さずに逃げるなんてイヤ!」
青年「おいおい、なにをいってるんだ」
奴隷少女「お兄さんにプライドがあるように、あたしにもプライドがあるの!」
青年「…………」
青年「分かったよ。それじゃ、ひとつよろしく」スッ…
奴隷少女「うんっ」ガシッ
握手を交わす二人。
翌日──
殺し屋「起きろっ!」
ドカッ!
青年「がっ……!」
殺し屋「おうおう寝不足か? 寝心地悪かったか、この石床は。ハハッ」
青年「ぐっ……!」
奴隷少女「ひどい! 自分だけベッドに寝てるくせに!」
殺し屋「当たり前だ。ここは宿屋じゃねえんだ!」
殺し屋「むしろテメェらは幸運だぜ~?」
殺し屋「このアジトはこの街で二番目か三番目くらいに安全だ」
殺し屋「なんたってこの俺がいるんだからな! だれも近寄ってきやしねえ」
青年「一番安全なのは市長の屋敷ってことか」
殺し屋「そういうこった。ダントツの一番ってやつだ」
殺し屋「起きろっ!」
ドカッ!
青年「がっ……!」
殺し屋「おうおう寝不足か? 寝心地悪かったか、この石床は。ハハッ」
青年「ぐっ……!」
奴隷少女「ひどい! 自分だけベッドに寝てるくせに!」
殺し屋「当たり前だ。ここは宿屋じゃねえんだ!」
殺し屋「むしろテメェらは幸運だぜ~?」
殺し屋「このアジトはこの街で二番目か三番目くらいに安全だ」
殺し屋「なんたってこの俺がいるんだからな! だれも近寄ってきやしねえ」
青年「一番安全なのは市長の屋敷ってことか」
殺し屋「そういうこった。ダントツの一番ってやつだ」
笑いながら殺しについて語る殺し屋。
殺し屋「ま、殺しなんつうもんは結局アレだ」
殺し屋「誰もいない暗いところで、後ろからグサリ」シュッ
殺し屋「俺の今までの仕事は、ほとんどコレよ」
殺し屋「もちろん一撃で仕留めなきゃ、色々面倒なことになる」
殺し屋「反撃されたり、助けを呼ばれたりな」
殺し屋「だから、背面から急所を正確に射抜く必要がある」
青年「…………」
殺し屋「よって、殺しで重要なのは次の三つになる」
殺し屋「一つ目はターゲットの下調べ!」
殺し屋「二つ目は気配を完全に殺すこと!」
殺し屋「三つ目は急所を正確に射抜く技術!」
殺し屋「どうだ? 殺しってのも結構奥が深いだろ?」
青年「……アンタはこれらを誰に教わったんだ?」
殺し屋「ハッハッハ、独学に決まってんだろ、ボケが!」
殺し屋「ま、殺しなんつうもんは結局アレだ」
殺し屋「誰もいない暗いところで、後ろからグサリ」シュッ
殺し屋「俺の今までの仕事は、ほとんどコレよ」
殺し屋「もちろん一撃で仕留めなきゃ、色々面倒なことになる」
殺し屋「反撃されたり、助けを呼ばれたりな」
殺し屋「だから、背面から急所を正確に射抜く必要がある」
青年「…………」
殺し屋「よって、殺しで重要なのは次の三つになる」
殺し屋「一つ目はターゲットの下調べ!」
殺し屋「二つ目は気配を完全に殺すこと!」
殺し屋「三つ目は急所を正確に射抜く技術!」
殺し屋「どうだ? 殺しってのも結構奥が深いだろ?」
青年「……アンタはこれらを誰に教わったんだ?」
殺し屋「ハッハッハ、独学に決まってんだろ、ボケが!」
殺し屋「それじゃ特訓開始だ」
殺し屋「この人型の板切れを、ナイフの一刺しで貫けるようになれ」
青年「それだけか……?」
殺し屋「ああ、それだけだ」
殺し屋「ただし、条件が一つ」
殺し屋「構えから刺す瞬間まで、絶対に音を立てないこと」
青年「音を……!」
殺し屋「音を立てたら罰として、石を投げつける」
殺し屋「貫けなくても投げつける」
殺し屋「んじゃ、始めっ!」
殺し屋「この人型の板切れを、ナイフの一刺しで貫けるようになれ」
青年「それだけか……?」
殺し屋「ああ、それだけだ」
殺し屋「ただし、条件が一つ」
殺し屋「構えから刺す瞬間まで、絶対に音を立てないこと」
青年「音を……!」
殺し屋「音を立てたら罰として、石を投げつける」
殺し屋「貫けなくても投げつける」
殺し屋「んじゃ、始めっ!」
青年「はっ!」シュッ
ガッ……!
殺し屋「バカが、かけ声なんか上げんな! 剣術の試合じゃねえんだぞ!」
殺し屋「板も貫けてねえしな!」ビュンッ
ガンッ!
青年「ぐっ……!」
青年(この板、かなり頑丈だ……! 相当力を込めないと──)
青年(でも力を込めると──どうしてもなにかしら音が出てしまう)グッ
殺し屋「オラ、ナイフ握る時、音鳴ってんぞ! ボケが!」ビュンッ
ガスッ!
殺し屋「力じゃなく、流れと勢いで刺すんだよ!」ビュンッ
ゴッ!
ガッ……!
殺し屋「バカが、かけ声なんか上げんな! 剣術の試合じゃねえんだぞ!」
殺し屋「板も貫けてねえしな!」ビュンッ
ガンッ!
青年「ぐっ……!」
青年(この板、かなり頑丈だ……! 相当力を込めないと──)
青年(でも力を込めると──どうしてもなにかしら音が出てしまう)グッ
殺し屋「オラ、ナイフ握る時、音鳴ってんぞ! ボケが!」ビュンッ
ガスッ!
殺し屋「力じゃなく、流れと勢いで刺すんだよ!」ビュンッ
ゴッ!
夜になった。
奴隷少女「大丈夫? お兄さん……」ペタペタ…
青年「ありがとう……手当てしてくれて」
青年「これくらい、なんてことないよ」
奴隷少女「でもこのままじゃ、目的を果たす前にアイツに殺されちゃうわよ!」
青年「たしかに……そうかもしれない」
青年「でも今のボクが少しでも早く力を手に入れるには」
青年「こういう嫌でも必死になれる……命がけの環境の方がいいしね」
奴隷少女「でも……」
青年「大丈夫、ボクだって復讐も人探しもできないまま、殺されるつもりはないよ」
奴隷少女「大丈夫? お兄さん……」ペタペタ…
青年「ありがとう……手当てしてくれて」
青年「これくらい、なんてことないよ」
奴隷少女「でもこのままじゃ、目的を果たす前にアイツに殺されちゃうわよ!」
青年「たしかに……そうかもしれない」
青年「でも今のボクが少しでも早く力を手に入れるには」
青年「こういう嫌でも必死になれる……命がけの環境の方がいいしね」
奴隷少女「でも……」
青年「大丈夫、ボクだって復讐も人探しもできないまま、殺されるつもりはないよ」
翌日──
殺し屋「午後は仕事があるからな。それまでは見てやる」
青年「仕事……殺しか?」
殺し屋「殺し屋の仕事が他にあんのか?」ニッ
青年「…………」
殺し屋「オラ、とっとと始めろやっ! グズがっ!」
青年「…………」シュッ
ガッ!
殺し屋「ナイフを構えた瞬間、微妙に音が出てる!」ビュンッ
青年「…………」サッ
殺し屋「あ……テメェ……!」
殺し屋「午後は仕事があるからな。それまでは見てやる」
青年「仕事……殺しか?」
殺し屋「殺し屋の仕事が他にあんのか?」ニッ
青年「…………」
殺し屋「オラ、とっとと始めろやっ! グズがっ!」
青年「…………」シュッ
ガッ!
殺し屋「ナイフを構えた瞬間、微妙に音が出てる!」ビュンッ
青年「…………」サッ
殺し屋「あ……テメェ……!」
殺し屋「テメェ、なによけてんだよ!」
青年「石をよけるなとは一言もいわれてないぞ」
殺し屋「なんだと……」
青年「それにこれも、敵の攻撃をよけるいい訓練だと思ったんだが」
青年「ちがうのか?」
殺し屋「……チィッ!」
青年「石をよけるなとは一言もいわれてないぞ」
殺し屋「なんだと……」
青年「それにこれも、敵の攻撃をよけるいい訓練だと思ったんだが」
青年「ちがうのか?」
殺し屋「……チィッ!」
午後──
板に向かってナイフを突き続ける青年。
青年(ふう……石をよけるようになって、怪我も少なくなった)ガッ
青年(アイツは今頃どこかでターゲットを殺しているんだろうか……)ガッ
青年(散歩にでも行くかのように、殺しに出かける……恐ろしい奴だ)ガッ
青年(本当はあんな奴の力なんか借りたくないけど……)ガッ
青年(あの冷酷な目と腕はまちがいなく本物だ)ガッ
青年(どんな手だって使ってみせる)ガッ
青年(市長を殺し、必ずどこかで生きている、あの人に会うまでは……!)ガッ
板に向かってナイフを突き続ける青年。
青年(ふう……石をよけるようになって、怪我も少なくなった)ガッ
青年(アイツは今頃どこかでターゲットを殺しているんだろうか……)ガッ
青年(散歩にでも行くかのように、殺しに出かける……恐ろしい奴だ)ガッ
青年(本当はあんな奴の力なんか借りたくないけど……)ガッ
青年(あの冷酷な目と腕はまちがいなく本物だ)ガッ
青年(どんな手だって使ってみせる)ガッ
青年(市長を殺し、必ずどこかで生きている、あの人に会うまでは……!)ガッ
二週間後──
青年(ナイフを握り……)
青年(突くっ!)
トンッ……
青年(石が飛んでくる!)ババッ
青年(飛んで……来ない?)
殺し屋「フン……今のはブッ刺す瞬間まで音はなかった……」
殺し屋「第一段階クリアーってとこか」
青年「……ありがとう」
殺し屋「バカかテメェ、こんなもんは序章だ。地獄はまだまだこれからだ!」
青年(ナイフを握り……)
青年(突くっ!)
トンッ……
青年(石が飛んでくる!)ババッ
青年(飛んで……来ない?)
殺し屋「フン……今のはブッ刺す瞬間まで音はなかった……」
殺し屋「第一段階クリアーってとこか」
青年「……ありがとう」
殺し屋「バカかテメェ、こんなもんは序章だ。地獄はまだまだこれからだ!」
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