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元スレ滝見春「神代の浄人」
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「……いやや。」
「怜?」
「そんなん嫌や!」
「それしたら一巡先見えんようになるんやろ!?」
「そんなんなったら、以前の……三軍の時と変わらんようになってまうやんか!」
「怜……」
「ウチは竜華のように麻雀上手くない!」
「セーラのように火力も無い!」
「フナQみたいに分析や対策も出来ひん!」
「泉のように伸び代もない!」
「この力は死にそうになってまで手に入れたんよ……」
「ウチから……ウチから一巡先取ったらなんも残らんもん……」
俺には園城寺さんの気持ちがわかる。
力に縋る気持ち……もっと力があったら親父は死なずに済んだんじゃないかと。
過去の事に、しかも俺が餓鬼の頃に何を思っても意味は無いけど思わずに居られなかった。
だから力に縋る園城寺さんの気持ちがわかる。
それと同時に清水谷さんの言う事もわかる。
俺が無茶したせいで小蒔ちゃんやお袋に心配掛けて胸が苦しくなった記憶がある。
自分の事を心配してる時の大切な人の顔って堪えるんだよな。
特に小蒔ちゃんの泣きそうな顔とかのばつの悪さったらない。
だから両方の気持ちがわかる。
だがそれでも清水谷さんの考えは収まらない。
「そんなん言ったって……怜、無理するやん……」
「何言ったって怜は無茶するなら……いっそ使えなくなってまえば良い……」
「須賀君……」
「怜を……怜を助けてぇな!」
「お金が必要なら用意する!」
「それでも足りないならウチが身体で払う!」
「やから……」
「何言うてんの竜華!」
「怜は黙っててぇや!」
「須賀君……お願いや……」
「……清水谷さん、俺からの結論を言いますね。」
「答えはノーです。」
「なん、で……」
「なんでなん!?」
「なんで怜を助けてくれへんの!?」
「理由を言うとですね……」
「一つ、俺は清水谷さんと園城寺さんがどういう関係なのかは知らないけど、貴女は園城寺さんに負い目を背負わせる気ですか?」
「身体で払うっていって自分の価値を安くするような行為も俺は好きじゃない。」
「一つ、これが一番重要ですが……園城寺さん本人の意思が無い。」
清水谷さんが苦虫を噛み潰したかのような顔をする。
「そんなん言われても怜はうんとは言わへん……」
「やったら無理矢理にでも祓ってもらうしか……」
「そこんところの説得は俺に任せてもらえませんか。」
「その後の交渉は清水谷さんに任せますんで。」
「…………わかった。」
渋々と言う感じが否応無しに伝わる。
俺は園城寺さんに向き直って交渉をする。
「園城寺さん。」
「なんや、祓うんやったら嫌やで。」
「まぁ話を聞いてください。」
「俺もはっきり言って麻雀弱いですからオカルトとかに憧れますよ。」
「それに麻雀とは別のところで力を求めた事はありますし。」
「せやったらウチの気持ちわかるやろ?」
「ええ、そしてその結果無茶して倒れた事も死に掛けた事もありますよ。」
「…………」
「……園城寺さん、貴女は母親や大切な人が自分のことで泣いている所見たことありますか?」
「…………ある。」
「だったらわかるでしょう……あんなにバツの悪いものは中々無いですよ。」
「せやけど……ウチは……」
「まぁ別に俺はオカルト全部無くせって言ってる訳じゃないですし。」
「へ?」
「単純に制限を掛けるんです、憑いてる側の方で。」
「そしたら否応無しに使う頻度が限られて体の負担も減ります。」
「そんなん出来るん?」
清水谷さんが話に乗ってきた。
多分この人が一番ここからの交渉に向いているだろう。
「出来ます、けど事前に交渉しとかないといけないんです。」
「なんの交渉や?」
「えっとつまりオカルトを使うのを半荘中何回までにしますか?ってことです。」
「園城寺さん、何回に絞ります?」
とりあえず聞いてみたが園城寺さんが恐る恐る述べる。
「……一巡先20のダブル2回。」
園城寺さんの発言にぴくりと反応した清水谷さんが物申してきた。
そしてそれに対して園城寺さんが反論、もうこうなってしまったら二人の交渉問題だ。
「怜、多い、半荘一巡一回のみや。」
「少なすぎや、一巡15のダブル1。」
「一巡2回。」
「全然増えてへんやん! 一巡12のダブル1回!」
「怜こそなんでそんなに使うねん!? 一巡3回だけや! ダブルは絶対アカン!」
「ダブルはどうしても使わなアカンときがあるねんて!」
完全に蚊帳の外になってしまったので二人の交渉を見ながら江口さんに聞いてみる。
「……こういう場合大体どうなるんですかね?」
「こういう場合は最終的に怜が折れるんがいつも通りやな。」
京ちゃんとかからしてみれば怜はズルいと感じてもおかしくないよなあ
自分を凡人だとことさらに言ってる末原さんとかもそうだし、
そういう意味でも怜がオカルトを捨てる展開ってあんまり見たことないから期待
自分を凡人だとことさらに言ってる末原さんとかもそうだし、
そういう意味でも怜がオカルトを捨てる展開ってあんまり見たことないから期待
慣れた光景だと言わんばかり落ち着き払った江口さんを尻目に二人のやり取りを見ていた。
ギャーギャー喚いていた二人がやがて落ち着き、交渉は終わる。
「終わりましたか?」
「一巡先は半荘4回まで、ダブルは一日1回になった。」
「園城寺さん、見事なフェイスインザドアですね。」
「なんのことやらわからんな~。」
「? 須賀君どういうことや?」
「園城寺さんは交渉で有利になる為に最初に吹っ掛けたってことですよ。」
「んな!? 怜!」
「もう決まったことやからええやんか。」
一度決まったことは決まった事と園城寺さんは断じて話を進める。
清水谷さんは納得行ってない顔だったが構わず進める。
ただ、一つだけ園城寺さんに聞くのを忘れていたことがあった。
「園城寺さん、結構重要なことを聞き忘れていたんですけど……真面目に答えてくれますか?」
「……ええよ。」
「園城寺さん、貴女は神様を信じますか?」
「……今更やわ……信じとるよ。」
「だってうちを助けてくれたのってお狐さんやろ?」
「やったら信じない理由はあらへん。」
「そうですね、わかりました。」
「それじゃあ、今からやりますね。」
「……そうだ、清水谷さん。」
園城寺さんにしてやられた事に気付いた清水谷さんがむすっとした顔をしている。
「……なんや。」
「さっき言った理由の一つを言い忘れてたんですけど……」
「…………理由、まだあるん?」
「最後の一つ、俺は正式な神職でも専門職じゃない。」
「だからお金なんて要りません。」
「…………」
「それじゃあ、今からやりますね。」
「……そうだ、清水谷さん。」
園城寺さんにしてやられた事に気付いた清水谷さんがむすっとした顔をしている。
「……なんや。」
「さっき言った理由の一つを言い忘れてたんですけど……」
「…………理由、まだあるん?」
「最後の一つ、俺は正式な神職でも専門職じゃない。」
「だからお金なんて要りません。」
「…………」
さてここからは俺の出番だ。
開いているところを借りて鞄から白衣を取り出し着替え始める。
今回は大蛇と戦った時みたいに朱色の手袋とかを着けなくても良いから気が楽だ。
浄衣に着替え終わると手と口を濯ぎ部屋へ向かう。
園城寺さんを椅子に座らせ、その前に台を置き、その上に小さな鏡を園城寺さんに向けて置く。
俺はその向かいに立ち、準備を終わらせる。
「園城寺さん、これから始めます。」
園城寺さんはこくりと頷いたのを見て、俺は二拝し懐から紙を出し、それを読み上げる。
『祓ひ給へ 清め給へ』
『守り給へ 幸へ給へ』
これを三回読み上げた。
読み終わると頭の中に声が響き渡る。
《大体話はわかっておるが童から直接用件を聞いておこう。》
(はい、これから宇迦之御魂神の御使いと交渉しようと思います。)
(その際ですが交渉のお手引きをお願いしたく……)
《そのくらいなら構わん。》
二拝二拍一拝を行い終わらせる。
神様と交信(神)して神懸かった状態になった。
がたりと物音が鳴る。
多分分かる人には分かるのだろう。
周りの状態など構わず俺は手に持ってた紙を仕舞い、もう一度二拝して新たな紙を懐から出して読み上げる。
「掛巻も恐き稲荷大神の大前に」
「恐み恐みも白く」
「朝に夕に勤み務る家の産業を」
「緩事無く怠事無く 彌奨め奨め賜ひ」
「彌助に助賜ひて 家門高く令吹興賜ひ」
「堅磐に常磐に命長く 子孫の八十連屬に至まで」
「茂し八桑枝の如く 令立槃賜ひ」
「家にも身にも枉神の枉事不令有」
「過犯す事の有むをば」
「神直日大直日に見直聞直座て」
「夜の守日の守に守幸へ賜へと」
「恐み恐みも白す」
奏上が終わると園城寺さんの背後からひょっこりと白い狐が姿を現した。
そこから主祭神と狐の交信が始まる。
《一つ先を巡るは四度まで、二つ先を巡るは日に一度まで。》
《それでよいな。》
(はい。)
狐もこくりと頷いた。
なんとも呆気なく終った。
《俺はこれで帰るぞ。》
(ありがとうございました。)
気配が消える。
狐は首を振って挨拶をした後、園城寺さんの中に消えて行った。
俺は二拝二拍一拝をして終らせた。
「お疲れ様でした。」
「終ったん?」
「ええ、これで終わりですよ。」
「なんか今後うちがすることってある?」
「出来れば家の神棚でいいので毎日お供えと御参りして下さい。」
「そんなんでええの?」
「それをするだけで園城寺さんに憑いている狐も喜びますよ。」
「そっか……これからはお供え物は油揚げやな。」
「それがいいですね。」
「あ、良子さん、俺の用事ってこれで終わりですよね?」
「イエス、この後は特に無いよ。」
「じゃあ先に着替えて帰りますね。」
「なんやもう帰るんか?」
「今、凄くつかれてるんで。」
「京太郎、少しウェイトしてて、私も一緒に戻るから。」
「はい。」
「須賀。」
「はい?」
良子さんが色々としている内に江口さんがやってきた。
何とも言えないが心なしか申し訳なさそうな表情だ。
「さっきはすまんかったな、胡散臭いなんて言うて。」
「怜になんか変な事されるんちゃうかと思ったら頭が熱くなってやな……」
「別に気にしてませんよ。」
「今度お詫びにどっか連れてったるから許してくれや。」
「期待しておきます。」
「ほなな。」
「なぁなぁ須賀君。」
江口さんとのやり取りが終わった後、清水谷さんが話しかけてきた。
何か思うことがあるのか悩んだ顔をしている。
「結局断られたけどさっき須賀君に身体で支払うって言ったやんか?」
「はぁ……」
「男の子ってその……大きい胸とか好きって言うやん?」
「一般的に言えばそうですね。」
「でもあっさり須賀君に断られたやん……もしかしてうちって魅力無いんかなって……」
「そんな事はないですよ、ただ俺は周りの環境が特別ですから耐性があるんです。」
「なんや……そうなんか。」
「それに俺には好きな人がいるんで。」
「へ~そんな人がおるんや……どんな人なん?」
「頑張り屋さんのおっちょこちょいな女の人ですよ。」
「俺はその人を一生護りたいと思っています。」
「はぁ……」
「男の子ってその……大きい胸とか好きって言うやん?」
「一般的に言えばそうですね。」
「でもあっさり須賀君に断られたやん……もしかしてうちって魅力無いんかなって……」
「そんな事はないですよ、ただ俺は周りの環境が特別ですから耐性があるんです。」
「なんや……そうなんか。」
「それに俺には好きな人がいるんで。」
「へ~そんな人がおるんや……どんな人なん?」
「頑張り屋さんのおっちょこちょいな女の人ですよ。」
「俺はその人を一生護りたいと思っています。」
「その人は須賀君にそこまで思われる人なんや……」
「ええなぁ……そういう人がおるやなんて。」
「その人のためにもちゃんと守ってあげるんやで?」
「当たり前ですよ、なんたって俺は。」
「神代小蒔の守人ですから。」
【京太郎「神代の守人~霊浄め編(大阪)~」】
カン
「ええなぁ……そういう人がおるやなんて。」
「その人のためにもちゃんと守ってあげるんやで?」
「当たり前ですよ、なんたって俺は。」
「神代小蒔の守人ですから。」
【京太郎「神代の守人~霊浄め編(大阪)~」】
カン
「さて、これからどこに行くんですか?」
「奈良で温泉に浸かろう。」
「なんでまた……奈良の温泉に……」
「リフレッシュの為だよー。」
(胡散臭い……)
「あれ、春はどうするんですか?」
「後で合流。」
「それより京太郎、良く誘惑に勝ったね。」
「ああそれですか。」
「清水谷さんにはまだ果実が青いって言っておきました。」
(清水谷さんには霞さんとか小蒔ちゃんとか春や良子さんのを見てたから耐性がついてたって言っちゃったけど……)
(一部例外はいるんだよな。)
「奈良で温泉に浸かろう。」
「なんでまた……奈良の温泉に……」
「リフレッシュの為だよー。」
(胡散臭い……)
「あれ、春はどうするんですか?」
「後で合流。」
「それより京太郎、良く誘惑に勝ったね。」
「ああそれですか。」
「清水谷さんにはまだ果実が青いって言っておきました。」
(清水谷さんには霞さんとか小蒔ちゃんとか春や良子さんのを見てたから耐性がついてたって言っちゃったけど……)
(一部例外はいるんだよな。)
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