元スレ京太郎「扉の向こう側」 淡「あはっ」
SS覧 / PC版 /みんなの評価 : ★
51 = 36 :
しえん
53 :
菫さんが自分の目を見るのはいつになるやら
55 = 1 :
淡「(……なんか、期待ハズレ)」
淡「(弱っちいし、感じるものも無いし)」
淡「(同卓してる二人も、全然強くないし)」
淡「(これならスミレやセーコの方が、ずっと強かった)」
淡「(あーあ、つまんない)」
現代における麻雀のセオリーの一つに、『5向聴ならオリろ』というものがある。
配牌の向聴数の平均値が3~4であるため、そこまで配牌が悪いのならいっそ切ってしまえ、というものだ。
この事からも、絶対安全圏の『他人の配牌を5向聴以下にする』という特性の強力さが伺える。
加えてダブリーに、役を問わない槓裏。
待ちは読めない上に、高火力。まったくもってふざけるなという能力だ。
能力者でなければ抗う事すら出来ず、生半可な能力であれば蹴散らされる。
まるで、王者となるべくして創られたかのような能力だ。
京太郎「凄いな、お前」
淡「ん?」
57 = 1 :
京太郎「『それ』でそこまで強いなんて」
淡「ふふん。まーね、それほどでもあるかな」
京太郎「何か、目標でもあったりするのか?」
淡「もっちろん。アンタにも関係あることだしね」
京太郎「俺?」
淡「私の目標は、打倒宮永照!」
淡「そんでもって、テッペン取る事!」
淡「そのためにも、もっと強くならないとね!」
京太郎「……? お前、強くなりたいのか?」
淡「あったりまえでしょ。強くなりたくない奴なんて居るの?」
京太郎「そうか……強くなりたいのか」
小さな親切。
京太郎「分かった。俺も手伝おう」
大きなお世話。
59 = 1 :
淡「……あれ?」
違和感。
それは、手牌が来る直前に感じた事。
今まで手の中にあったものが、すっぽりと抜けてしまった感覚。
掴めていたものが、急に遠くに行ってしまった感覚。
そして、体内をまさぐられるような不快な悪寒。
手牌を見た瞬間、その正体の一端を彼女は理解した。
淡「(……テンパってない!?)」
淡「(え、ウソ、なんで!?)」
そうしようと、彼女が思ったにも関わらず。
彼女の手牌は、配牌の時点で聴牌してはいなかった。
淡「(三人の捨て牌を見る限り……うん、絶対安全圏は、発動してると思う)」
淡「(何……なんなの、これ)」
61 = 36 :
しえん
62 = 1 :
じわり、じわりと、呑まれる。
足首から泥沼に浸かっていて、徐々に沈んでいく。
そんな感覚だけが、この卓を包んでいく。
淡「(手が……進まない)」
淡「(向聴が、変わらない)」
淡「(ありえないって、これ)」
大星淡の配牌時の向聴は、4向聴。
そして6巡目の現在。彼女の手牌は、いまだ4向聴のままだった。
不動の向聴。何をしようが、一向に手が進まない悪夢。
一度向聴をわざと戻してもみたが、次のツモで戻ってしまった。
淡「(……気持ち悪い)」
淡「(やだ、気持ち悪い)」
足元から這い上がってくる不快感。
蟻の群れが、肌の上を這いずりまわっている錯覚。
大星淡は、この悪夢の発生源をいまだに理解出来ていない。
63 = 36 :
4向聴で止められるとか完全に悪夢ですわ
65 = 1 :
淡「(……流、局)」
淡「(結局、何も出来ないまま、流局)」
淡「ノーテン」
「……ノーテン」
「……ノーテン」
京太郎「テンパイ。連荘だな」
淡「……え?」
淡「……ああ、そういう事」
淡「アンタ、だったんだ」
京太郎「? どうした」
淡「なんて、言うかさ」
淡「……私より終わってる人、この眼で見たの初めてかも」
66 = 36 :
しえん
67 = 1 :
気付けば、周りを見る余裕もできる。
淡「(私と、アイツ以外の二人)」
淡「(ひっどいことになってる)」
熱くもないこの部屋で、汗だくになって震える手で牌を掴む二人の名も無き部員。
……冷や汗、である。
滝のように流れる冷や汗が服を濡らし、椅子に垂れ、水滴となって床に落ちている。
脱水症状で死んでしまうのではないか、とばかりの汗。
語るべくもない。彼女達は、淡よりも先にこの卓の本当の異常さに気付いていたのだから。
淡「(私の、絶対安全圏は……)」
淡「(途中から発動すら、してなかった)」
この卓で、本当に全員の配牌を支配していたのは。
他人の向聴を完全に固定し配牌で聴牌するという、淡にも出来ない事をしてのけたのは。
淡「(この、死骸みたいな笑顔の男)」
70 = 1 :
京太郎「流局だな。テンパイ」
淡「ノーテン」
「…ノーテン」
「…ノーテン」
京太郎「連荘だな」
他家全員の向聴を固定して、自分だけは聴牌できるのなら。
理論上、永遠に連荘を続けられる。
あくまで理論上だ。小学生が考えるような稚拙な論理。
だがその論理が、今現実としてこの場所にある。
これを悪夢と呼ばずして、何を悪夢と呼ぶのだろうか。
淡「(これ、もしかしてずっと続けるつもり?)」
淡「(誰かが、飛ぶまで)」
牌を山から取る。切る。牌を山から取る。切る。
これをただひたすら四人が、山が尽きるまで続ける作業。
これを麻雀と、呼んでいいのだろうか?
73 = 1 :
牌を切る音だけが流れる。
鳴いても無駄だ。結果的に、向聴は戻ってしまう。
よって全員、流れるまで無言となる。
牌を取って、切って、流れるのだけの作業。
既にこの卓を囲む四人の内二人は、心が折れている。
しかし、折れていない者も居る。
淡「(こんな所で折れてちゃ、てっぺんまで届かない!)」
淡「(私の目標は、もっと高いんだ)」
淡「(こんな所で躓いてなんて……!)」
そんな彼女の諦めない、強く輝く思考は。
京太郎「これも、閉じておくか」
そんな彼の発した、意味の分からない言葉で停止した。
74 = 36 :
しえん
78 = 1 :
淡「(……あれ?)」
大星淡も、扉を開けた人間だ。
だから扉と鍵という概念も、しっかりと分かっている。
淡「(……あれ?)」
だから彼の言葉から扉を連想し、ふと見直してみた。
自分の扉。自分の中の、自分を構成する要素である扉。
淡「……あれ?」
気付けば、何故か扉が片っ端から閉じられている。
閉じた覚えはない。閉じる理由がない。
淡「……あれ?」
そして、気付く。
目の前の男が牌を打つ度に、己の扉が一枚締まっていく事に。
79 :
新作まってたぜ
80 = 53 :
すこやんはよ来るんだ…
82 = 1 :
淡「やめて」
鍵を持つ者なら、開く事も閉じる事も出来る。
そしてこの瞬間、須賀京太郎は鍵を司る力に関して、大星淡の上位に居た。
淡「やめてよ」
閉じられていく。もう開けない。
本人の意志と関係無く。
淡「やめて、やめて」
家族愛。
中学時代の友人。
進路の相談に乗ってくれた先生。
優しい近所の住人。
それらに対する感情が、扉を閉められる度に、削がれていく。
淡「やめてってば」
愛も、友情も、信頼も、絆も。
人間の中にある、扉の向こう側にあるものの一つでしか無い。
83 = 36 :
しえん
84 = 12 :
おいおい他人の扉も操作できるとか升過ぎるだろ
85 :
これは外道の所業
86 :
この扉も閉じちゃいましょうねー
87 :
須賀京太郎しまっちゃうおじさん説
88 :
菫さんは元から無能力者だしテルーも能力なくてもある程度は強そうだけど、他三人は能力無くなったらダメダメだと思う
特に牌配から能力通りに打ってるだけの淡
89 = 1 :
淡「お願いだから、やめて」
彼がこの卓をこういう状況にした目的は、ただ一つ。
時間が必要だったのだ。予想以上に、淡の中の『余分』な扉が多かったために。
淡「やめて、やめて、やめて」
もう逃げる事すら出来ない。
全員足に根が生えてしまったかのように、立ち上がる事すら出来ない。
ただ、牌を切っていくしか無い。
淡「だめ、だめだってば、やめて、お願い」
そして彼の手番が来れば、彼女の扉が一つ閉まる。
彼女の大切なものが、扉の向こう側に取り残される。
淡「いや、いやだ、いやだってば!」
そして彼女の心も、一つ欠ける。
90 = 53 :
強くなりたい→自分と同じ状態にすればいい
ってなってそうだな ここまで来たらもはや怖いわw
91 :
勃ってきた
92 = 49 :
なんか背中がむず痒くなってくる文章だな
94 = 86 :
麻雀ってなんか一局でも残ってれば勝てそうかなーって思っちゃうから
どうしても途中で立てないよな
95 = 40 :
あわあわ……
96 = 36 :
自分と同じ状態まで持って行ってあげるのか
やさしいなー()
98 = 1 :
京太郎「ああ、分かるぜその感覚。すっげー怖いんだよな、自分が自分でなくなるみたいで」
京太郎「大丈夫だ、最初は怖いけどそのうちだんだんどうでも良くなるから」
京太郎「そしてその内、余分なものが無くなって、素晴らしい景色が視えるようになる」
京太郎「経験者の体験談だ、信じろよ」
淡「そんな事して欲しいなんて、頼んでない!」
京太郎「? 強くなりたいんだろ?」
京太郎「それなら足を引っ張る余分な扉は閉めて、さっさと扉の先に進んだほうが早いんだよ」
京太郎「お前は俺より見込みがあるのに、俺より弱いのがその証拠だ」
淡「余分なものなんかじゃない! 私には大切なもので、捨てたくなんかない!」
淡「こんなものまで捨てたら、本当に『人間』じゃなくなっちゃう!」
淡「だからやめてってば! 私は、こんな――」
京太郎「大丈夫だ。やる前は俺もそんな事言ってたけど」
京太郎「やった後はどうでも良くなって悩む事も無くなった奴が、ここにいるだろ?」
京太郎「心配するな。終われば、どうでもよくなる」
99 = 85 :
泣きながら懇願する女の子って可愛いね!
100 :
地の文書くなら「」の前にキャラ名書くのやめて欲しい
本当に気持ち悪い
みんなの評価 : ★
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