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    元スレ京太郎「扉の向こう側」 淡「あはっ」

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    タグ : - 京太郎 + - + 追加: タグについて ※前スレ・次スレは、スレ番号だけ登録。駄スレにはタグつけず、スレ評価を。荒らしタグにはタグで対抗せず、タグ減点を。
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    1 :

    扉があった。


    閉まっていて、もう開かない。


    それだけ。

    2 = 1 :

    http://www.logsoku.com/r/news4vip/1363522032/

    4 :

    待ってた

    5 = 1 :

    弘世菫は、名門白糸台高校の女子麻雀部の部長である。

    その人徳と真面目な気性、そして何より。

    白糸台における最大級の爆弾、宮永照の舵を二年間曲がりなりにも握れていた実績が、彼女が選ばれた最大の理由だ。

    だがそれを彼女に伝えれば、彼女は反吐を吐いてからこちらに告げるだろう。


    「アレの舵を握れる奴なんていない」

    「私の忠告を聞くのは、あいつの気まぐれだよ」

    「ハンドルを握っているように見えても、そもそもだ」

    「ハンドルもブレーキも無視するタイヤが走るのを、誰が止められる?」

    「アレは自分が行きたい方向にしか行かないし、生きたい様にしか生きないさ」



    成程。全くもって正論である。

    6 = 1 :

    では、どう対処するのがいいのか? という問いを彼女にすれば。


    「関わるな」

    「地雷は触らない内は無害だ、わざわざ触りに行くことはない」


    成程。全くもって正論である。

    だがその方法は、提案した彼女自身は絶対に実行できないのだ。


    地雷を処理する人間が必要であるように。
    蜜柑の入った箱の中から、腐った物を選り分け捨てる人間が必要であるように。


    貧乏くじを引く人間は必要で、それは誰かがやらなくてはならない。


    そして彼女がそうする理由を、誰かが彼女に聞けば。


    「誰かがやらなければならない事なら、私がやってもいいだろう」

    「好きでやってる事じゃないが、誰かにやらせようとも思わない」



    そんな風に、答えるに違いない。

    7 :

    お、おう……

    8 = 1 :

    そんな彼女も、全国の頂点に立つ白糸台の部長。

    その実力はお飾りなどではない本物だ。一流と言って良い。


    「……」


    彼女の強さの基点となるのは、人並み外れた観察力と集中力。

    これを用いて、待ちを寄せ相手の浮いた牌を狙い撃つ。

    それが彼女が『シャープシューター』と呼ばれる所以。

    しかし。


    「リーチ。ダブリーね」

    「(……こいつも、か?)」


    そんな彼女も、勝てる相手と勝てない相手は存在する。


    「カン」

    「ツモ。見るまでもなく裏乗って、6000オール!」

    「(少なくとも、普通の麻雀にはなってないな……)」

    9 :

    続きか

    10 = 1 :

    二年間。

    二年間、弘世菫はただ一人、宮永照を近くで見続けてきた。

    離れるでもなく、近づくでもなく。

    その結果、彼女は『宮永照の同類』であるのならその眼を見れば判別する事が出来るようになる。

    他人には絶対に真似できない、彼女だけの特質。

    無論、彼女が望んで手に入れた力ではない。

    そんな彼女が、今卓の向こう側に座る新入生の眼を見た結果。


    「大星、淡といったか」

    「はーい?」

    「先輩には敬語を使え」

    「えー、二つしか歳違わないんだからスミレでいいじ」

    「使え」

    「……はーい、菫先輩」



    弘世菫は、まだこの子は取り返しが付きそうだと、そう思った。

    12 :

    淡の能力ってダブリーしたらカンドラ乗るけどツモれないんじゃなかったっけ?

    13 = 1 :

    一方その頃、菫の胃を激しく痛める二人の内片方は。


    京太郎「……」

    「……」

    京太郎「お茶、美味しいですね。渋谷先輩」

    尭深「そ、そうだね」

    京太郎「……」

    尭深「……」

    京太郎「あ、お茶請け買ってきたんで、どうぞ」

    尭深「わ、ありがとね」

    京太郎「……」

    尭深「……」

    京太郎「……うん、美味い」

    尭深「(……落ち着くなぁ)」


    呑気に暖かいお茶で、胃を安らげていた。

    14 = 1 :

    尭深「(……あ、お茶切れちゃった)」

    京太郎「……ん? あ、お茶淹れてきますね」

    尭深「あ、えと、私がほとんど飲んでたんだから、私が」

    京太郎「良いですって、先輩は座ってて下さい。俺、後輩ですし」

    尭深「……あっ」

    尭深「(……いい子だなぁ)」


    ごく普通の光景だ。
    何もおかしな所はない。
    そう。


    尭深「(私が喋らなくても、嫌な顔しないし)」

    尭深「(……ちょっと、ぺちゃくちゃお喋りするのって苦手なんだよね)」

    尭深「(それに、何も話してなくてもヤな空気にならないし)」

    京太郎「お茶、入りましたー」

    尭深「あ、ありがとう」


    彼女の認識が根本的に間違っているという点に眼をつぶれば、何もおかしな所はない。

    15 :

    咲さんが出てくるまで支援

    16 :

       
    この物語は。作者が別に咲キャラでやる必要なくね?なんていう至極真っ当な突っ込みすら付かねえか荒れるかのどっちかだよっ!私のSSがつまんねーのは、何もかんも政治が悪い!


    などと自分の事は完全に棚に上げた上に逆上した挙句、何書いても同じなら、だったら何書いてもええやないか。いつ書くの?今でしょ!!と後ろ向きに前向きに奮起して書いたものである。

     

    17 = 3 :

    おう、がんばれ

    19 = 1 :

    尭深「(……新入生は、私がお茶飲んでると変な顔するし)」

    尭深「(慣れとかじゃなくて、普通に接してくれるのは嬉しいな)」


    少年は笑顔だ。しかし。

    ……笑顔は善い物だが、笑顔の下もそうであるとは限らない。


    京太郎「(この人、良い人だなぁ)」

    京太郎「(良い人には、丁寧に接するのが常識だっけか)」

    京太郎「(うんうん、それが普通だよな)」


    例えば、目の前で転んだ子供が居たとする。

    「かわいそうだ」「痛そうだ」と考えて、それから「助けてあげよう」と思うのは正常だろう。

    だが、「助けるのが常識」「そうするのが普通」という思考だけで「助けてあげよう」と思うのは、明らかに異常である。

    無論、そういう気持ちは誰の中にもある。
    だが微塵も他人に同情していない状態で他人に向けられる善意は、普通はありえない。

    まるで、人間のフリをしている人形だ。


    京太郎「(この人はどうでもいい人だけど、良い人だし、優しくするのが普通だよな)」

    20 = 12 :

    今の所発動した場合、役がダブリーのみのロン和了だけだからそういう制限が有るんじゃないかって話。知らんけど

    21 = 1 :

    表面上の付き合いをする内はいい。

    それなら『ボロ』は出ないし、互いにいい人だという認識程度で終わる。

    だが一歩踏み込めば、そのおぞましさに恐れおののく以外の結末はありえない。

    ヤマアラシが考え無しに互いに踏み込めば、ただ血まみれになるだけだ。



    京太郎「茶碗熱いんで、気を付けてくださいね」

    尭深「あ、うん。ありがとう」


    特に、相手に対して踏み込もうとしない内気な性格なら。

    あまり喋らない、相手の内心を自分の中で推測して完結しがちな性格なら。


    尭深「(この人、良い人だ。優しい後輩ができたなぁ)」

    京太郎「(この人、本当にいい人だな)」


    下手をすれば、最悪一生。


    『これ』を良い人だと思って、生きていくのではないだろうか。

    23 = 1 :

    『腐りかけ』。

    それが彼女の、とある新入生の眼を見た時の第一印象。


    「(大星淡……まだ、たぶん手遅れじゃない。なら)」

    「淡」

    「なにー?」

    「(念は押しておくべきだ。私は、そういう立場にある)」

    「入部するにあたって、お前に一つ注意しておく事がある。それと敬語を使え」

    「はーい」

    「(……まあ、敬語の方はおいおい定着させていけば良いか)」

    「いいか? 二人、お前が近付くべきじゃない人間が居る」

    「え? なに? 危険人物ってやつ?」

    「いや、触れなければ害はない。だから、近付くな」

    「ふーん……? で、なんて名前?」


    「宮永照。ここのエースと、そいつがいつも連れてるであろう須賀という――」

    25 = 1 :

    「やだ」



    「は?」

    26 = 1 :

    「やだよ、そんなの」

    「待て、詳しく説明をすると長くなるが、お前の為にも……」



    「私、ここに宮永照を倒しに来たんだから」



    「……は?」

    「ふふん」

    27 :

    痒い

    29 = 1 :

    「日本人なら誰だって知ってる、高校生最強!」

    「そいつを倒しちゃえば、誰がなんと言おうと文句なく最強でしょう?」

    「テレビで見た時から、ずーっと思ってたんだ」

    「挑んでみたいって、勝ってみたいって!」

    「あの人が立ってる場所に、私も立ってみたいって!」

    「それが私の夢。だから私、その忠告は聞けないな」



    キラキラした眼で、夢を語る淡。
    腐敗しかけた瞳が、その間だけは真っ当な方向に戻る淡。

    そんな彼女を見て、菫は。
    彼女が腐り切ってはいない理由の一端を見た、菫は。



    「(……ああ、くそったれめ)」

    「(本当に、ままならない)」

    「(神なんてものが本当に居るのなら、例え雲の上だとしても撃ち抜きたい気分だ)」


    苦虫を噛み潰したような顔になりそうな自分を、必死に抑えていた。

    31 = 1 :

    菫の心中は、嬉々として崖に向かう者を見る心境だ。

    菫は黙して見るには責任感がありすぎて。
    淡を止めるには、力が足りなすぎた。

    言葉だけでは『彼等』の危険性を伝えるには足りなすぎて。
    実際会わせるには、淡にとって危険過ぎる。

    だから菫が選んだ答えは、結局ベターな選択肢。


    「……わかった、もう止めない」

    「マジで!? やたっ」

    「だが一つ、条件がある」

    「なにー?」

    「照と最初に会う時、私も同席させてもらう」

    「……もー、心配症だなぁ」

    「立場に付属する責任というものがある。約束できなければ、私もしつこく食い下がるぞ」

    「はいはい、約束するよ」

    「……本当に、分かってるのか?」

    「私だって、菫先輩が本気で心配して言ってくれてる事くらい分かってるもん」

    32 :

    こうやって目が腐る面子が増えていくのか……

    33 :

    お、新作

    35 = 1 :

    菫が心配しているのは、似ているからこそ、近いからこそ淡が引っ張られる可能性。

    あちら側に半歩踏み出している淡が、完全に向こう側に行ってしまうかもしれない可能性。


    「約束する。それは、ちゃんと守るから」

    「……そうか。それなら、良かった」

    「何か、私のお母さんみたい」

    「それは若く見えんということか」

    「痛い痛い、グリグリしないでー!」

    「(……まあ、心配は要らないか)」


    こんなにも真っ直ぐなら。

    こんなにも素直なバカなら、きっと大丈夫。

    淡は向こう側には行かないし、自分がそうならないように止めてみせる。

    弘世菫は心の片隅で、そう誓いを立てた。




    彼女はこの時の見通しの甘さを、長い間後悔し、苦悩し続ける事になる。

    36 :

    支援させていただく

    38 = 1 :

    「それじゃあ、私は職員室に行ってくる」

    「いってらっしゃーい」

    「……すまん、危なっかしいコイツを頼む」

    「はい、部長」

    「おまかせですよっ」


    部長として、部の用事を片づけに職員室に向かう菫。
    見送る淡。
    菫に頼まれた、名も無き部員二人。

    結果的に言えば、これが運命の分岐点だったのかもしれない。

    分かれ道の良し悪しなど、行ってみなければ分からないのは当然だが。


    「……ん? アレ、誰?」

    「あー、あの子? 宮永先輩の幼馴染さんだって」

    「ふっつーの子だよ。麻雀弱っちいけど。あと私達先輩だから敬語ね」

    「ふーん……?」


    道の先に崖が待っているのなら、その選択は間違いだったと、断じて言える。

    40 :

    淡も行っちゃうのか

    41 = 1 :

    ――いいか? 二人、お前が近付くべきじゃない人間が居る

    ――宮永照。ここのエースと、そいつがいつも連れてるであろう須賀という

    ――照と最初に会う時、私も同席させてもらう


    「もしかして、須賀ってやつ?」

    「そうだねー。須賀京太郎君」

    「部長から聞いてたの?」

    「(……スミレとの約束は、宮永照とだけだしね)」

    「(なら、別に良いよね? あのチャンピオンの幼馴染ってんだから、弱くはないでしょ)」

    「(スミレがあれだけ危険視してるヤツが、どんなのかすっごく気になるし)」


    結果的に言えば。


    「よっす、そこの少年!」

    「私も新入生なんだけどさ、ちょっと打ってみない?」


    弘世菫が出かけた隙の、この一局。

    42 = 1 :

     



    これが彼女の人生、最後にして最大の失敗だった。



     

    44 = 36 :

    淡の扉が開けられるのか

    46 = 1 :

    大星淡は、片足を邪道、もう片足を王道に突っ込んで歩いている。

    扉を開きつつも、扉の向こう側の素晴らしさを知りつつも、その誘惑に負ける事無く。

    今まで培って来た物をないがしろにする事も無く。

    人を大事にして、人の気持ちを理解して、人に心から優しくしてきた。

    そんな彼女は無邪気で、無垢で、今までの人生において無敵であった。


    完全に向こう側に行ってはいないから、どちら側の気持ちも理解できる。

    かと言ってこちら側でもないから、常人では歯が立たない。


    そんな彼女は意識せずとも生来の性格で周囲に好かれ、彼女も周囲に好意を向ける。


    腐りかけとはそういう事だ。


    人の理の外側と内側の丁度境界に彼女は立っている。


    夢、友情、絆、信頼、愛。
    そういったものを、彼女は捨てては来なかった。


    だから彼女にとって、完全に『向こう側』の人間と相対するのはこれが初体験である。

    49 :

    腐りかけって「くさりかけ」か
    何か知らんが「ふりかけ」って読んでた

    50 = 1 :

    「(手は、抜かないから)」

    「(弱かったら、さっさと飛んでいいよ)」

    「リーチっ!」

    「え、嘘ダブリー!?」

    「安牌とか無いって、勘弁してよ……」

    京太郎「(……んー)」


    大星淡には、二つの武器がある。
    最強の盾と、最強の矛だ。
    矛盾は、その二つを一人の人間が持つのなら矛盾しない。

    盾は『絶対安全圏』。
    そこに最速であるダブリーと、槓裏の火力を乗せた矛。

    常人であれば何も出来ず、ただ蹴散らされるだけの圧倒的な力だ。


    「カン」

    京太郎「(……どれだ?)」

    「ツモ! ダブリー裏四、3000・6000!」

    「(なんで裏ドラも見ないで、この子……)」


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