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    元スレ咲「え? どの学年が一番強いかって?」

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    301 : 以下、名無しにか - 2013/01/10(木) 19:40:58.51 ID:qi3B5FuV0 (+95,+30,-175)
    小走「チー……」タンッ

     海底に――光射すッ!!!

    (えっ……?)

    豊音(は……?)

    南浦(何事……?)

     衣のリーチ宣言牌――その一萬を、下家がチー。

     客観的に見れば、ただそれだけのこと。

     しかし、たったそれだけの出来事を――場の支配者たる衣でさえも、それはあまりに唐突だった――うまく飲み込めない三者。

     そんな魔物と魔人と無名を睥睨するは……奈良に君臨する王者――ッ!!

    小走「なんだ? 揃いも揃って呆けた面をして……そんなに一発消しが珍しいのか? まったくニワカにも程があるな」
    302 : 以下、名無しにか - 2013/01/10(木) 19:41:28.86 ID:IbwmcxFr0 (+22,+29,-3)
    なんでナレーションがバキ風なんだ
    303 : 以下、名無しにか - 2013/01/10(木) 19:42:47.52 ID:0vSIPtmH0 (+24,+29,-5)
    バキつーか福本だろ
    304 : 以下、名無しにか - 2013/01/10(木) 19:43:28.94 ID:QQcI7fGeO (-4,+5,-3)
    しえ
    305 : 以下、名無しにか - 2013/01/10(木) 19:43:54.48 ID:qi3B5FuV0 (+95,+30,-275)
    南浦(いや……一発消しとか……そういうことに驚いているわけではなく……!)タンッ

    豊音(天江さんが海底コースに乗ってから……誰も動けなかったっていうのに……どうしてこの土壇場になって……?)タンッ

    (こいつ……今まで一度たりともテンパイ気配を感じなかったやつが……今だってイーシャンテンに過ぎないというのに……どうしてこの場面で衣の海底を潰せる……? くっ……! 和了れない……のは当然か。なんなんだ……一体こいつ……何をした……!?)タンッ

     そして、鳴きを入れて海底牌を手にした王者は、小さく溜息をつく。

    小走「おっと……まさか今日初のテンパイが海底テンパイなんて……ツいているのかツいてないのかわからんな」

    「晩成の……和了りでないなら早く牌を捨てないか」

    小走「まあまあ……そう睨みなさんな。心配しなくても、これはお返ししてやるさ」タンッ

     小走やえ――その最後の捨て牌は、前巡で衣が捨てた……一萬ッ!!

    南浦(手出しの一萬……!?)

    豊音(喰い替え……!? そんな単純な方法で天江さんの海底を潰したの……?)

    (いや……違う……。そうか……今感じるこの気配……食い下がり千点……そういうことか……! こいつ……萬子ならなんでもよかったのか……!!)
    306 : 以下、名無しにか - 2013/01/10(木) 19:45:03.38 ID:VISDjL2gP (+19,+29,-2)
    くぅ~疲れましたw
    307 : 以下、名無しにか - 2013/01/10(木) 19:45:40.15 ID:qi3B5FuV0 (+95,+30,-292)
    小走「テンパイ」パラッ

    「……テンパイ」パラッ

    豊音・南浦「ノーテン……」パタッ

     明らかになる……小走やえの策略。

     それは、東三局一本場での加槓には劣るが、衣の海底を、約四分の一の確率で無効化する保険――。

     小走手牌:四五六七八九南南①①/(一)二三

    南浦(喰い替えの……鳴き一通……!?)

    豊音(なるほど……そういうことか……考えたねー……!)

    (否……こいつ……それだけじゃない。その捨て牌……衣の海底だけじゃない……『月』までをも的確に掬ってみせたのか……!?)

     三人の視線が、恐らくこの半荘で初めて、小走に集まる。

     小走、思わず、失笑。

    小走「どうした……? そんな感心したような目で見て……別に和了ったわけでもあるまいに。
     それともなにか、ニワカにはこの程度の打ち回しが目新しいのか? オメデタイやつらだな……」

     小走、ノーテン罰符を受け取ると、晒した手牌をさっさと崩し、次の対局へと思考を切り替える。

    小走「さーて……流れ一本場だ」

    南:90900 衣:125600 姉:98000 や:84500
    308 : 以下、名無しにか - 2013/01/10(木) 19:48:53.83 ID:THc2WWXP0 (-5,+6,-3)
    これは良スレ
    309 : 以下、名無しにか - 2013/01/10(木) 19:48:59.81 ID:qi3B5FuV0 (+90,+30,+0)
    @実況室

    すばら「天江選手の海底が不発っ!!? 一体何が起きたのでしょうか!! 解説をお願いします、初瀬さんっ!!」

    初瀬「えっ!? 私ですか!?」

    すばら「はい。先輩の仕掛け……種明かしをするなら後輩の初瀬さんが適任かと!!」

    初瀬「頑張りますっ!」

    すばら「その意気やすばら!!」

    初瀬「えっと……まず天江選手が十七巡目リーチをしたときの先輩の手牌ですが……こんな感じです」

     小走手牌:一二三四五六七八九南南①⑥

    「一通確定イーシャンテン。雀頭が場風牌だから、五筒や七筒が入っても平和はつかないな」

    初瀬「はい……で、先輩はここから天江選手のリーチ宣言牌……一萬を鳴きました。これは、萬子ならなんでもよかったんだと思います。
     天江選手が十七巡目に何を切ってくるか……そこまではっきりとわかっていたとは思えませんが、萬子ならどれでも喰い替えで鳴ける一通の形にしておけば、全体の牌の総数的に136分の36……26パーセントの確率で天江選手の海底を防ぐことができます。
     先輩は、恐らく配牌を見て、一通の形に持っていけると判断したんでしょう。できることならそのまま和了りたかったんでしょうが、それはできなかった。
     しかし、たとえ和了れなくても、一通の形さえ出来ていれば海底無効化の布石にはなる……ただでは転ばないのが、先輩のすごいところです」

    「まあ……もちろん天江選手が萬子以外を捨てる可能性もありました。海底を防げたのは、26パーセントが小走選手の作戦勝ち、残りの74パーセントは運と見ていいでしょう」
    310 : 以下、名無しにか - 2013/01/10(木) 19:50:41.07 ID:IbwmcxFr0 (+22,+29,-1)
    にわか先輩すげー
    311 : 以下、名無しにか - 2013/01/10(木) 19:50:46.04 ID:VQQrlZ7o0 (+21,+28,-2)
    圧倒的ニワカっ…!
    312 : 以下、名無しにか - 2013/01/10(木) 19:51:32.00 ID:qi3B5FuV0 (+95,+30,+0)
    初瀬「そうですね。東三局一本場の加槓のときに比べると、先輩にしては運の要素が強い作戦だったと思います。でも、最後に先輩が海底でテンパイできたのは、純粋な先輩の実力だと思います。
     なぜなら……先輩は天江選手の一萬を鳴いたあと、受けの広い六筒ではなく、一筒を手に残したからです」

     小走手牌:一二三四五六七八九南南①⑥:チー一:捨て⑥

    初瀬「先輩は……天江選手の待ちが一筒だと見抜いた。だから先輩は六筒を捨てた。確率に頼らず、テンパイできる道を自力で切り開いたんです。そして次巡……海底を迎えました」

     小走手牌:一四五六七八九南南①/(一)二三:ツモ①

    初瀬「ここまで来れば、あとは天江選手の安牌である一萬を捨てるだけです。姉帯選手と南浦選手は張っていませんでしたから、一パーセントたりとも河底なんて可能性はありません。さすがの先輩です」

    「ちゃちゃを入れるようで悪いが、何も一通の形にしなくても、衣の海底を防ぎたいなら、同じことがこんな形でもできるよな」

     こんな形:二三四六七八*******

    初瀬「そうですね。これならたった六牌で全萬子を鳴くことができます。しかし、先輩は別に、天江選手の海底無効化を目的に打っていたわけじゃありません。海底無効化は、あくまで和了りを目指すついでの保険。
     飜数を高めるために一通の形を残すのは当然です。あと、さっき言った通り、一通の喰い替えは河底の可能性を完全に消してくれますから、防御の面でも上の形より優れている……と私は思います」

    すばら「すばらっ、な解説ありがとうございましたっ!!! そんな初瀬さんの愛する先輩、晩成高校・小走やえ選手っ!! 後半戦開始からチームは最下位を抜け出せていませんが……ここから動きを見せるのでしょうか!!
     それとも天江選手が魔物の力を見せつけ連荘となるのか!? 緊張の南三局流れ一本場ですっ!!」
    313 : 以下、名無しにか - 2013/01/10(木) 19:53:22.38 ID:nah5pqlx0 (+30,+30,-25)
    やっと追いついたわ
    最近見ないなかなかの良SSですわ
    ここからは全力支援させていただく所存
    314 : 以下、名無しにか - 2013/01/10(木) 19:55:15.61 ID:qi3B5FuV0 (+95,+30,+0)
    @対局室

    南三局流れ一本場

     十一巡目

    (晩成の……先ほどは不意を衝かれたが……しかし、相変わらず気配は微々たるもの。それでも……この南三局に来て……こいつは今日初めて和了れるテンパイにこぎつけた。衣の支配の抜け道を見出したか……?
     だが、所詮は1600の安手……衣の親を流してラス親で連荘する腹積もりか……それとも他に何か狙いが……?)タンッ

    小走(……)タンッ

    豊音(晩成の小走さん……さっきの海底無効化は驚いたけど……嬉しい誤算かな。だって……私が先勝を温存してなくても……小走さんが別のやり方で天江さんの海底を牽制してくれる。
     気分的にすごく楽になったよー……これで心置きなく……友引が使えるっ!!)

    豊音「……ポンッ!!」タンッ

     豊音、小走の手牌から捨てられた三筒を、即座に拾うッ!!

    (宮守の……! 先ほどの失態のせいか……こいつの打牌から迷いが消えている。衣の海底はもう恐くないとでも……?
     しかし……悪いが今回は既に和了りの形を作ってある……四度も鳴かなければ和了れないお前より……速さでも高さでも衣のほうが上だ。それに……晩成の小走……今の一打……さては宮守が鳴くのを待っていたな?
     宮守を相手に先制リーチはかけられない……しかし……宮守が鳴けば話は別だ。好きなようにリーチをかけられるし、安手でも裏や一発で高打点を狙える。悪くない戦略だ。
     しかし……宮守が鳴いたことでリーチをかけられるのようになったのは……何もお前だけではない……!!)

     衣――仕掛けるッ!!
    315 : 以下、名無しにか - 2013/01/10(木) 19:57:47.88 ID:qi3B5FuV0 (+93,+30,+0)
    「リーチッ!!」タンッ

     刹那――衣の下家から放たれる、轟々たる気運ッ!!

    (なっ……!? 待て……そんなバカな……!? こいつが和了れるのは安手だったはず……今の一瞬……宮守の鳴きに衣が気を取られていた間に……何が起きた……!!?)

    小走「拍子抜けだな……これはニワカどころじゃない。まったくのド素人の打ち筋だ。まさかこんな見え見えの染め手に、そんな危険牌でリーチをかけてくるなんてな。長野の魔物は他家の捨て牌を見ないのか……?」

    (染め……手……!? 一巡前まで1600だった手が……たった一巡で染め手だと……!?)

     衣、端から順番に、流れるように晒されていく小走の手牌を見て、その仕掛けに気付く!!

    (はっ……!! そうか……1600……!! 25符2飜――その点数が意味するところは……つまり……!!!)

    小走「ロン。七対子混一赤一……12000は、12300」

     小走手牌:一一二二三三[五]七七白白西西:ロン五

    (先ほど宮守に鳴かせた三筒……あれが衣に対する目晦ましになっていたのか……!! 確かに……この形の七対子なら……三筒を赤五萬に切り替える……たったそれだけの変化で……混一と赤ドラ――計四飜を上乗せすることができる。
     咲が連カンで手を撥ね上げたような特別な力は何も要らない……万人が普通にやってみせる高めへの切り替え。
     しかし……こいつはそれを衣に悟らせなかった。先ほどまでの微々たる気配そのものが……衣を油断させるために張られた伏線……!
     こいつ……今まで大人しくしていたのは……衣の特性を見抜くためだったのか……!!)
    316 : 以下、名無しにか - 2013/01/10(木) 19:58:22.98 ID:QQcI7fGeO (+24,+29,-4)
    追い付くにはまだまだ遠い支援
    317 : 以下、名無しにか - 2013/01/10(木) 20:00:36.53 ID:qi3B5FuV0 (+95,+30,+0)
    小走「龍門渕の……天江衣。片岡や南浦がテンパイしたときの打ち回しからして、他家の和了りの高低を見抜ける便利な感覚を持ってるみたいだが……お前のようなニワカには勿体無い能力だ。
     少なくとも私なら……自分が牌を捨てる毎巡ごとに、他家の手牌をチェックするだろうな」

    「反論の余地は皆無だ。お前の言う通り、今の振り込みは衣の未熟さゆえの結果。正直……ただの人間にここまでの遅れを取ったのは初めてだ。しかし……次があるとは思うなよ」ゴゴゴゴゴゴ

     衣の身体から溢れ出る、魔物の気配。

     同卓する者が気配に敏感な者なら、反射的に慄いてもおかしくないはないプレッシャー。

     現に、表情を硬くする南浦と、武者震いを抑える豊音の頬には、冷や汗。

     しかし、奈良の王者は、悠然と微笑む。

    小走「強気な態度も見方によっては虚勢になる。悪いな、牌に愛された子。もはやお前は恐くない」

    「言うじゃないか……一般人。果たして、虚勢を張っているのは衣かお前のどちらか……今にわかるだろう。言っておくが、今のような奇策は二度と通じないぞ」

    小走「ふん、ニワカめ。大体その考えからして甘いんだ。どうせまた私がお前の油断を誘って討ち取るとか……そういう狡い打牌をするものだと決め付けているみたいだが……どうして私が地力で打ってお前を倒せないと……そんなことがお前にわかる?」

    「面白い……! そこまで言うのなら、その力……余すところなく見せてもらおうじゃないか!!」

     衣、出力最大ッ!!

    南:90900 衣:113300 姉:98000 や:97800
    318 : 以下、名無しにか - 2013/01/10(木) 20:02:49.99 ID:Olv5McEj0 (+8,+18,-1)
    支援だよー
    319 : 以下、名無しにか - 2013/01/10(木) 20:02:51.67 ID:0vSIPtmH0 (-25,-15,-2)
    320 : 以下、名無しにか - 2013/01/10(木) 20:03:23.27 ID:bT6VSFdF0 (+13,+23,-9)
    に、わ、か!に、わ、か!
    321 : 以下、名無しにか - 2013/01/10(木) 20:05:55.57 ID:nah5pqlx0 (+29,+29,-3)
    衣のほうが小物臭がするほどにわか先輩がカッコイイ
    322 : 以下、名無しにか - 2013/01/10(木) 20:08:41.80 ID:qi3B5FuV0 (+95,+30,+0)
    南四局・親:小走

    小走(有効牌……という考え方がある。例えば、字牌が一枚あるなら、その字牌の二、三枚目が有効牌になるし、数牌なら、対子・刻子にできる同牌――及び搭子・順子になる前後二つずつの計五種類が有効牌になる。
     そんな……自分にとっての有効牌が……一体この場のどこに潜んでいるのか。それがわかれば……どんな状況にあっても自分に有利に場を進めることができるはずだ……)タンッ

    小走(これまでの天江や姉帯の動き……南浦に関してはさっきの前半戦の分も含めて……総合して考えると、私の有効牌は、恐らく山の中にはほとんど埋まっていない)タンッ

    小走(有効牌を集めるとしたら……せいぜいがこの序盤、イーシャンテンまで持っていければツいているほうだ。中盤以降――海底牌に近付くにつれて、山牌と河は、ある程度選択の自由がある序盤より、強く天江の支配下に置かれるようになる。
     そこに私が付け入る隙はない。強いて言えば……リーチが絡むときの姉帯が、天江の支配に抵抗できる感じだが、そんなオカルトは私には関係ない。東場のときのように天江を削るアシストをするので精一杯だ)タンッ

    小走(山牌がダメで……あとは他家の手牌だが……これも期待は薄い。この重たい場で出和了りができるのは恐らく天江だけだろう。
     また……他家の手から零れてくる浮き牌のうち……天江の有効牌にならないものは……鳴きを駆使する姉帯の有効牌になるはず。
     ということは、いくら他家の手を鳴いて手を進めたところで、姉帯でもなければ和了りにまで持っていくことはできない。手詰まりだ……)タンッ

    小走(で……じゃあ一体私の有効牌はどこにあるのか。ごく僅かな可能性として、場の支配者である天江の手の中だ。しかし、そのカードはさっきの七対子で使ってしまった。もう天江を直撃するのは無理。
     そもそも……天江の支配下において自力でテンパイしようと思っても……少なくともこの先鋒戦後半……七対子か国士無双以外に道はなかった。さすがに国士を狙えるほどの器量は私にはない。
     さっきの七対子は半荘に一回来ればいいほうの偶然。門前でテンパイまで持っていけたこと自体が奇跡だったんだ。あんな和了りはもうできない)タンッ

    小走(さて……ようやくイーシャンテンか。中盤までにイーシャンテンに届くかどうかは賭けだったが、どうやら間に合ったみたいだな。
     ここからは……天江の支配下にもない……姉帯に掠め取られる心配もない……そんな場の奥の奥まで手を突っ込むことになる。うまくいけば……天江も姉帯も出し抜ける)タンッ
    323 : 以下、名無しにか - 2013/01/10(木) 20:10:10.46 ID:9VVLJvtU0 (+19,+29,-3)
    やべぇ先輩かっこよすぎんぜ
    324 : 以下、名無しにか - 2013/01/10(木) 20:10:22.36 ID:qi3B5FuV0 (+95,+30,-246)
     着実に思考を積み上げていく、小走。

     しかし、和了りを目指しているのは当然、小走だけではない。

     先鋒戦後半オーラス……四者四様の思惑が交錯する。

    南浦(オーラス……ここで和了れなければ……私がここに来た意味がなくなってしまう。
     しかし……一向に手が進まない……晩成の小走やえや宮守の姉帯豊音は……天江衣の支配の中でも和了ってみせた……なのに……私のこの体たらくはなんだ……!!)タンッ

    豊音(小走さん……特に変わったことをしているようには見えないけど。正直に言って……なんの能力もなく……天江さんを相手にこれ以上何かができるとは思えない。
     私だって色々手を尽くしてみたけど……現状は六曜の力でなんとかするのが限界。一体……今度は何を狙ってるの……?)タンッ

    (晩成の……あれだけ大見得を切ったからには、何か仕掛けてくるはず。それがなんなのか……衣には見当もつかないが……なんであろうと真っ向から受けて立つ……!!)タンッ

     十巡目

    小走(さあ……来たぞ……! この半荘……待ちに待った……千載一遇のチャンス……!! ここが勝負時だ――!!)
    325 : 以下、名無しにか - 2013/01/10(木) 20:12:44.91 ID:hGZJcRfyP BE:420396023-2BP(0) (+65,+30,+0)

    326 : 以下、名無しにか - 2013/01/10(木) 20:13:17.77 ID:qi3B5FuV0 (+95,+30,+0)
     小走手牌:22267③④⑤七八九九白:ツモ2:ドラ二

    小走(山牌はダメ……他家の手牌も望み薄……となれば残るは――王牌しかない。その中でも特に……嶺上牌だ。なぜなら、山牌を支配する天江、他家から牌を拾える姉帯に対し……この下家の一年――南浦数絵は、恐らくドラを味方につけている。
     前半戦で見せた、リーのみを裏ドラで親満に持っていったあの打ち筋。南浦が数牌メインで手を仕上げているなら、当然ドラ表示牌――及び裏ドラ表示牌は、彼女の有効牌に近いものになっているだろう。
     今回で言えば、恐らく南浦の手の内には萬子の低めが集まっているはず。となれば、裏ドラやカンドラ表示牌の辺りには、同じく萬子の低めが眠っているに違いない。つまり……王牌のうち半分は、彼女の有効牌になるわけだ。
     ならば……山牌でも、他家の手牌でも、ドラ表示牌でもないのなら……消去法で――私の有効牌は嶺上牌に眠っていることになる……!!)

     小走、伸るか反るかの大博打――四枚集まった二索を……晒すッ!!

    小走「(来い……私の有効牌――!!!)――カンッ!!!」パラララッ

     小走の突然の暗槓に、三者、動揺ッ!!

    (カン……!? しかもイーシャンテンからの……! まさか……こいつも咲と同じ……? いや、違う……咲の強大な気配とは似ても似つかない……これはただのカン。そうそう嶺上牌で手が進むことなどあるまい……!)

    豊音(暗槓……宮永さんを思い出すなぁ……そういえば、天江さんも県大会で宮永さんと戦ってるんだよね。私もカンには苦い思いをさせられた……嫌でも緊張するよ……!!)

    南浦(カン……!! 小走やえ……私たち三人が宮永咲と対戦経験があることを知っての奇策だろうか……? 否……違う、小走やえは宮永咲じゃない。きっと……彼女には彼女の考えがあって……この場に最適な策として……カンを選んだ……!!)

     奇しくも、カンには思い入れのある三人。

     そうとは露知らず、小走、嶺上牌をツモッ!!

     捲られたカンドラ表示牌は――三萬ッ!!

     それは確かに萬子の低めッ!!

     ここまでは小走の読み通りッ!!

     果たして嶺上牌は――!!?
    327 : 以下、名無しにか - 2013/01/10(木) 20:14:30.55 ID:nah5pqlx0 (+24,+29,-5)
    先鋒戦最大の見せ場だな
    328 : 以下、名無しにか - 2013/01/10(木) 20:18:27.28 ID:qi3B5FuV0 (+95,+30,-254)
    小走(っと………………は……はははは…………!)

     嶺上牌を見て、思わず笑ってしまいそうになる、小走。

    小走「なあ、化け物ども……お前らは……麻雀を打つようになってどのくらいになる?」

     小走、必死に笑いを堪えつつ、まるで世間話を振るように、気さくに三人に話しかける。

     最初に返したのは、魔物・天江衣。

    「衣は……幼い頃より麻雀を含めたあらゆる遊戯に通じてきたが……自ら麻雀を『打つ』ようになったのは、ごく最近のことだ」

     次に返したのは、魔人・姉帯豊音。

    「ルールとかは昔から知ってたけど……私は村のしきたりがあって外に出られなかったから……まともに人と打つようになったのは去年からだね」

     最後に、無名・南浦数絵。

    南浦「私も……麻雀そのものは小さい頃からお祖父さまに仕込まれていましたが……表舞台に出ることはあまりありませんでした。特に団体戦は、編入先の高校が弱小だったので……今は個人戦のみで打っています」
    329 : 以下、名無しにか - 2013/01/10(木) 20:19:11.07 ID:qi3B5FuV0 (+95,+30,+0)
     三人の答えを聞いて、静かに自分の話を始める、小走。

    小走「私は……小さな頃から麻雀を打ってきた。小三の頃からマメすらできないほどに、数々の大会に出場して、強いやつや弱いやつ……異常なやつや普通のやつを相手に……何千何万局と戦いを重ねてきた」

     目を閉じた小走の瞼に映るのは……数多の過去の牌譜。

    小走「その中で……私は気付いたよ。自分には、例えば宮永照のような、麻雀を打つための特別な才能はない。私に打てる麻雀は一般人のそれと何も変わらない。
     だから……強くなるためには……勝ち残るためには……打って打って打って打って――打ちまくるしか道はなかった」

     小走、瞼を開き、三人の化け物を見回し、自嘲気味に微笑む。

    小走「私は……お前らみたいな化け物とは違う。私にはなんの能力もない。お前らみたいな牌に愛されたやつらがふらっと大会に出てきたとき……真っ先に負けていい笑いものになるような……普通の人間だ。
     そんな私は……ただ己の経験と知恵で牌をやりくりすることしかできない……言わばただの蛙だよ。ただし……私は大会を――大海を知っている蛙だ……!!!」

     小走、嶺上牌を手に組み込み、不要牌の白を握るッ!!
    330 : 以下、名無しにか - 2013/01/10(木) 20:19:46.64 ID:qi3B5FuV0 (+95,+30,-171)
    小走「お前らになんの事情があるかは知らん! しかし……今の話では三人とも競技麻雀の経験は浅いようじゃないか!! ならば……お前らがどんな能力や才能を持っていようと関係ない……!!!
     まともな大会経験もないやつらに……百戦錬磨の私が負けるわけなかろう!!!!」

     そのまま白を河に捨て――曲げるッ!!!

    小走「ニワカは相手にならんよ!!!!」

     その口元には、確信と自信に満ちた、王者の笑みッ!!!!

    小走「お見せしよう……!! これが王者の打ち筋だッ!!!!」

     小走手牌:67③④⑤七八九九/2222:嶺上ツモ5:捨て白:ドラ二・四

    小走「リーチッ!!」

     小走、オーラスにして初のリーチッ!!

     静寂から一転、俄かに湧く卓上ッ!!
    331 : 以下、名無しにか - 2013/01/10(木) 20:22:15.48 ID:Olv5McEj0 (+13,+23,-2)
    美しい
    332 : 以下、名無しにか - 2013/01/10(木) 20:22:20.75 ID:0vSIPtmH0 (+29,+29,-14)
    このニワカ先輩、化け物を討ち倒すのはいつだって人間とか言いそうだな
    333 : 以下、名無しにか - 2013/01/10(木) 20:22:34.90 ID:qi3B5FuV0 (+95,+30,+0)
    豊音(私がいるのに先制リーチ……!? 何をするつもりなのかわからないけど……小走さん……この背向の豊音を忘れてもらっちゃ困るよー?)ゴゴゴゴゴゴゴ

    小走(宮守の姉帯豊音……忘れちゃいないよ。けれど……そっちこそ……大事なことを忘れてるんじゃないか? この場を支配する魔物……天江衣の大好きな……海底撈月のことを……!!)

     小走の暗槓――それは嶺上牌と同時に、後の海底牌をも東家の小走に齎す!!

     必然、餌というには巨大過ぎる『月』に喰らいつく――魔物・天江衣ッ!!

    「ポンッ!!」タンッ

    豊音(ちょっ……私のツモ番が飛ばされた……!? こんなことって……小走さん……じゃあ今までの言動や態度は……全てここで天江さんを鳴かせるための布石……!? 私の先負を無効化するための!? まさか……信じられないよ……!!)

    小走(誘いに乗ってきたな……天江衣!! あそこまで煽ったんだ……この勝負……プライドの高いお前なら……一度私に潰された海底撈月で応えてくれるはずだって……信じてたよ!!)

    (わかっている……晩成の……これでいいのだろう……? 別に挑発など回りくどいことはしなくとも……貴様の誘い程度……衣はいくらでも乗ってやるというのに。
     それがたとえ衣の弱点だとしても……それが衣らしさなら……衣は衣らしさを貫く……!! それが天江衣の打ち筋だ……!!)
    334 : 以下、名無しにか - 2013/01/10(木) 20:23:46.80 ID:nah5pqlx0 (+17,+27,-2)
    激熱展開
    335 : 以下、名無しにか - 2013/01/10(木) 20:26:44.63 ID:an2Hztk20 (+19,+29,-4)
    小走先輩がカッコイイだと・・・
    336 : 以下、名無しにか - 2013/01/10(木) 20:27:31.52 ID:B9GRdkVm0 (+22,+29,-6)
    文句なしで小走先輩が主人公だな
    337 : 以下、名無しにか - 2013/01/10(木) 20:27:55.01 ID:qi3B5FuV0 (+95,+30,-173)
     交錯する、衣と小走の視線ッ!!

     衝突する、意地と矜持ッ!!

     衣の支配を振り切るように、力強く山牌に手を伸ばす小走ッ!!

    小走(ここから先は……なんの保険も保障もない運任せ……! こういう場面は初めてじゃないが……所詮私はなんの力もない一般人……どちらかと言えば競り負けることのほうが多い……!)

     ツモ牌を握り、その慣れ親しんだ感触を、マメすらできない指先で確かめるッ!!

    小走(ただ……それでもたまに勝てるときがあって……これだから……麻雀はやめられないんだよ――!!)

     小走、牌を手牌の右に置き、安堵の溜息。

    小走「ツモ……! リーチツモ……1300オール……!」

    衣・豊音・南浦「!!!?」

     王者――辛勝ッ!!

    小走「まったく……麻雀って楽しいよな……! 一本場……ッ!!」ゴッ

    南:89600 衣:112000 姉:96700 や:101700
    338 : 以下、名無しにか - 2013/01/10(木) 20:28:53.55 ID:aNyTRWWp0 (+27,+29,-6)
    小走先輩はかっこいいってずっと思ってました!
    339 : 以下、名無しにか - 2013/01/10(木) 20:29:02.60 ID:fHEIgzki0 (+48,+29,-34)
    >>194
    天鳳やと流し満貫でも親が聴牌してたら流局せず親継続やったが
    ここでは流し満貫やと流局するんやな
    340 : 以下、名無しにか - 2013/01/10(木) 20:29:55.08 ID:nah5pqlx0 (+24,+29,-5)
    なんやこの先輩 ぐうかっこええやん
    341 : 以下、名無しにか - 2013/01/10(木) 20:30:22.12 ID:QQcI7fGeO (-25,-15,-2)
    342 : 以下、名無しにか - 2013/01/10(木) 20:31:58.33 ID:/PEDu4Bc0 (+22,+29,-1)
    これはまさしく王者
    343 : 以下、名無しにか - 2013/01/10(木) 20:33:37.70 ID:8yvt2lOnP (+40,+29,-3)
    >>339
    子が上がってるんだから流れるのが一般的
    344 : 以下、名無しにか - 2013/01/10(木) 20:36:54.50 ID:nah5pqlx0 (+24,+29,-3)
    天鳳ルールだと連荘になるんだとさ
    http://dora12.net/modules/faq/ryukyoku/04.html
    345 : 以下、名無しにか - 2013/01/10(木) 20:36:55.45 ID:qi3B5FuV0 (+95,+30,-215)
     先鋒戦後半、ここまで場は終始、魔物・天江衣の支配下にあった。

     しかし、衣の支配は強大ではあっても、絶対ではない。

     魔人――宮守・姉帯豊音。

     王者――晩成・小走やえ。

     両名、その能力と技術をいかんなく発揮し、衣の独走に待ったをかける。

     一方で、一つの和了りもなく、完封に甘んじた者が、二人。

     一人は、既に戦場を後にした、東場最強――清澄・片岡優希。

     そしてもう一人は、今なお苦悶する、無名――平滝・南浦数絵。

    南浦(南四局一本場……今現在……私の個人成績はマイナス14500点……まさか全国の化け物たちと自分の間にこれほどの差があるとは……思ってもみなかった)

     自分と自分の祖父の麻雀の正しさを証明するため、ただ自らが勝つことを目的にこの戦いに臨んだ、南浦数絵。

     しかし、もはやその目的を果たすことは、絶望的。

     この場に自分がいる意味を、見失ってもおかしくはない、最悪の状況。
    346 : 以下、名無しにか - 2013/01/10(木) 20:39:25.86 ID:qi3B5FuV0 (+95,+30,+0)
    南浦(私なりに手は尽くしたつもりだ。それでも……届かない。触れられない。それほどに……この敵は強い。正直なところ……全く勝てる気がしない……)

     南浦、遠くでこの対局を見ているであろう、自らの師――祖父に思いを馳せる。

    南浦(お祖父さま……申し訳ありません。数絵は……今の数絵の麻雀では……この人たちには敵いません……。未熟な私を……お許しください)

     祖父との約束を果たせないことに、潤む、数絵の瞳。

     それでも、南浦は、滲む視界の中、前を見据えていた。

    『とにかく……私は今度こそ……勝つ――!!』

     それは、つい先ほど交わした、新しい、もう一つの約束。

     正反対な性質ゆえに、不思議と惹かれ合う、気の置けない友人との、大切な約束。

    南浦(せめて……優希との約束だけは……嘘にしたくない……!!)

     友人は、言った。

    『今日の対抗戦――もしこれが個人戦だったら、数絵はきっと勝ち上がれると思うじょ。でも、今日は団体戦だじょ。この違いはけっこう大きいんだじぇ?』

     その言葉の意味を、南浦はしかし、決して十全に理解しているわけではない。

    『もし、数絵がいつも通りに打っても勝てないくらい敵が強いときは……私の言葉を思い出してほしいんだじょ』

     南浦、苦笑。
    347 : 以下、名無しにか - 2013/01/10(木) 20:40:07.61 ID:rnndXIHD0 (+24,+29,-8)
    咲世界において無能力なのに能力者と対等にやりあってる方々はマジ尊敬ですわ
    348 : 以下、名無しにか - 2013/01/10(木) 20:42:03.83 ID:dp56JXTF0 (+27,+29,-29)
    現時点での無能力最強は愛宕姉かセーラ辺りか
    これ読んだら小走先輩最強っぽいけどww
    349 : 以下、名無しにか - 2013/01/10(木) 20:43:01.09 ID:qi3B5FuV0 (+95,+30,+0)
    南浦(思い出しても……何も変わらないよ。わからない。優希……悪いが……やっぱり私は団体戦に向いていないんだ。私は……団体戦に出ない理由を……チームが弱小だからだと言ってきたが……そうじゃなかったんだな。
     恐らく……私は……チームが強い弱いに関係なく……団体戦には出れないだろう……私には……チームを思う心が……欠けている……)

     涙が溢れそうになる、南浦。しかし、気丈に、目元を拭う。

    『私が泣くのは、先鋒戦で私が負けたときじゃない。大将戦が終わってチームが負けたときだって決めたんだじょ』

    南浦(確かに……私はもう負けを認めてしまった……この人たちには敵わないと思ってしまった……けど……まだ泣くようなときではないと……なぜか思える)

    『私が先鋒戦でやるべきことは、一位を取ることじゃない。みんなの点棒を少しでも守って、できることなら増やすこと。そして、最後まで諦めずに全力で打つこと……そういう風に思えたんだじぇ』

    南浦(優希……優希は負けても笑顔で私を送り出してくれた……! ならば……私も……笑顔で優希のところに戻りたい……!)

     先鋒戦後半南場、激しい逆風に倒れそうになった南浦を支えたのは、暖かい南風ではなかった。

     それは、爽やかで軽やかな、東の風。

     南風よりも暖かな――友人の笑顔。

    南浦(優希……! 私はまだ……諦めない……! 最後まで……戦い抜く……!!)

     南浦、不屈ッ!!
    350 : 以下、名無しにか - 2013/01/10(木) 20:45:41.42 ID:p/OEBB+V0 (+27,+29,-16)
    大将戦にふさわしい名局だな
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