私的良スレ書庫
不明な単語は2ch用語を / 要望・削除依頼は掲示板へ。不適切な画像報告もこちらへどうぞ。 / 管理情報はtwitterでログインするとレス評価できます。 登録ユーザには一部の画像が表示されますので、問題のある画像や記述を含むレスに「禁」ボタンを押してください。
VIP以外のSS書庫はSS+をご利用ください。
元スレ咲「え? どの学年が一番強いかって?」
SS スレッド一覧へ / SS とは? / 携帯版 / dat(gz)で取得 / トップメニューみんなの評価 : ★★★×4
レスフィルター : (試験中)
まだ先鋒前半でこのボリューム。頑張って完結してくれ。
そして一番おいしいのは解説のひとたちな気がするwww
そして一番おいしいのは解説のひとたちな気がするwww
池田(清澄の片岡も龍門渕も……平滝の南浦ってやつも……あたしが卒業するまで……ずっと長野で戦い続けることになる相手。
天江衣も……清澄の大将だって……長野を制するためには絶対に倒さなきゃいけない相手だ……!)
鏡の中、ライバルたちの顔が浮かんでは、消える。
池田(本当に……この先……あたしはあいつらに勝てるのか……? あたしは……風越の新キャプテンとして……堂々とあいつらの前に立てるのか……?
また清澄や龍門渕や鶴賀と決勝をやったとして……本当にあたしは風越を優勝に導くことができるのか……? こんな……負けてばっかりのあたしが……?)
圧し掛かる、結果という、現実。
福路美穂子は、勝ち続けた。
池田華菜は、負け続けた。
池田(悔しがってる暇はないのはわかってる……! コーチの言う通り……自信がなくても弱くても……キャプテンになるあたしは前に進んでいかなくちゃいけないんだ……!!
けど……けど……!! キャプテン……あたし……どうやったらキャプテンみたいに強くなれますか……!? あたし……できる限り頑張るつもりなんです……!! 胸を張って前を見て……楽しんでいくつもりです……!!
でも……このままじゃ……こんな弱いあたしのままじゃ……麻雀を楽しむことだって……いつか……できなくなってしまいそうです……)
池田、前を見ていることも辛くなって、俯く。
と、背後に人の気配――
小走「池田……? こんなところで何をしている?」
顔を上げる池田。鏡の中には、小走やえの姿。
天江衣も……清澄の大将だって……長野を制するためには絶対に倒さなきゃいけない相手だ……!)
鏡の中、ライバルたちの顔が浮かんでは、消える。
池田(本当に……この先……あたしはあいつらに勝てるのか……? あたしは……風越の新キャプテンとして……堂々とあいつらの前に立てるのか……?
また清澄や龍門渕や鶴賀と決勝をやったとして……本当にあたしは風越を優勝に導くことができるのか……? こんな……負けてばっかりのあたしが……?)
圧し掛かる、結果という、現実。
福路美穂子は、勝ち続けた。
池田華菜は、負け続けた。
池田(悔しがってる暇はないのはわかってる……! コーチの言う通り……自信がなくても弱くても……キャプテンになるあたしは前に進んでいかなくちゃいけないんだ……!!
けど……けど……!! キャプテン……あたし……どうやったらキャプテンみたいに強くなれますか……!? あたし……できる限り頑張るつもりなんです……!! 胸を張って前を見て……楽しんでいくつもりです……!!
でも……このままじゃ……こんな弱いあたしのままじゃ……麻雀を楽しむことだって……いつか……できなくなってしまいそうです……)
池田、前を見ていることも辛くなって、俯く。
と、背後に人の気配――
小走「池田……? こんなところで何をしている?」
顔を上げる池田。鏡の中には、小走やえの姿。
池田「こ……小走さん……!?」
小走「なんだ……池田。泣いてたのか?」
池田「え……う……その……」
小走「別に恥ずかしがることじゃない。負けたら誰だって悔しいものだ。それに……私と池田はこんな機会でもなければまともに会うこともないだろうからな。
よかったら……私に話してみろよ。これでも私は三年、ニワカ二年の悩み相談などお手のものだ」
池田「小走さん……すいません……ありがとうございます」
小走「で……どうした、池田」
池田「はい……なんだか、弱い自分が情けなくて」
小走「弱い……? お前が? まあ……さっきはさすがに相手が相手だから力不足の感はあったが……決して内容は悪くなかったと思うぞ」
池田「でも……負けは負けですから。あたし……今日だけじゃなくて……今年の県大会からずっと負けっぱなしなんです。
そんなあたしが……今度……風越の新キャプテンになるんですけど……これから……本当にこんな弱いあたしが風越を引っ張っていけるのか……不安で……」
小走、腕を組んで、少し考える。
小走「なんだ……池田。泣いてたのか?」
池田「え……う……その……」
小走「別に恥ずかしがることじゃない。負けたら誰だって悔しいものだ。それに……私と池田はこんな機会でもなければまともに会うこともないだろうからな。
よかったら……私に話してみろよ。これでも私は三年、ニワカ二年の悩み相談などお手のものだ」
池田「小走さん……すいません……ありがとうございます」
小走「で……どうした、池田」
池田「はい……なんだか、弱い自分が情けなくて」
小走「弱い……? お前が? まあ……さっきはさすがに相手が相手だから力不足の感はあったが……決して内容は悪くなかったと思うぞ」
池田「でも……負けは負けですから。あたし……今日だけじゃなくて……今年の県大会からずっと負けっぱなしなんです。
そんなあたしが……今度……風越の新キャプテンになるんですけど……これから……本当にこんな弱いあたしが風越を引っ張っていけるのか……不安で……」
小走、腕を組んで、少し考える。
小走「池田は……あのオーラス、なんで流し満貫を狙った?」
池田「えっ? なんですか、いきなり」
小走「いいから。どうしてお前は、あの九種九牌の配牌を見て、国士無双ではなく流し満貫を狙ったんだ?」
池田「それは……確かに国士を和了れれば一発逆転はできますけど……今日のあたしは大将じゃない。先鋒です。一発逆転を狙う必要はありません。
だから……チームのためを思えば……たとえラス確定で……あたし自身が負けることになっても……可能な限り点棒を守って次に繋いだほうがいい。そう判断したからです……」
小走「なんだ……全然弱くないじゃないか、池田」
池田「え……?」
小走「池田はチームのことを考えて最善の選択をした。しかも……それを成し遂げた。十分強いじゃないか。もっと誇っていいと思うぞ」
池田「でも……勝てなかったら意味ないじゃないですか! 一位を取れなきゃ意味ないじゃないですか……!!」
小走「一位ねぇ……県大会ならともかく……私らの学年は宮永照がいたからな……どう足掻いたって全国で一位は取れなかった。それでも、うちの部員は私ら三年についてきてくれたぞ?
池田たちの部――風越さんでは、福路さんが長野で一位を取れるくらい強いから、チームがまとまっていたのか?」
池田「それは……違うと思いますけど……」
小走「だろ? だから、ちょっと負けたくらいでいちいち下を向くな。お前はまだ二年だろうが。私らとは違う。負けても次がある。
そうやって……敗北をバネにして強くなればいいんだよ。ここぞというときに、笑っていられるようにな」
池田「小走さん……」
小走「福路さんだってそうだっただろう? あんな涙脆い人でも……お前たちが弱気になっているときには……強気の笑顔でいたはずだ。だから、お前たちは安心してあの人についていけたんだろう? 違うか?
別に麻雀が強い弱いはさほど関係ないんだよ。どんな苦境に追い込まれても……前を見て笑っていられる――それこそが、部をまとめる者として備えているべき資質なんだと私は思う。
お前らんとこの監督さんだって……きっと池田のそういう資質を見抜いているから……お前を福路さんの後任にしたんだろうさ」
池田「えっ? なんですか、いきなり」
小走「いいから。どうしてお前は、あの九種九牌の配牌を見て、国士無双ではなく流し満貫を狙ったんだ?」
池田「それは……確かに国士を和了れれば一発逆転はできますけど……今日のあたしは大将じゃない。先鋒です。一発逆転を狙う必要はありません。
だから……チームのためを思えば……たとえラス確定で……あたし自身が負けることになっても……可能な限り点棒を守って次に繋いだほうがいい。そう判断したからです……」
小走「なんだ……全然弱くないじゃないか、池田」
池田「え……?」
小走「池田はチームのことを考えて最善の選択をした。しかも……それを成し遂げた。十分強いじゃないか。もっと誇っていいと思うぞ」
池田「でも……勝てなかったら意味ないじゃないですか! 一位を取れなきゃ意味ないじゃないですか……!!」
小走「一位ねぇ……県大会ならともかく……私らの学年は宮永照がいたからな……どう足掻いたって全国で一位は取れなかった。それでも、うちの部員は私ら三年についてきてくれたぞ?
池田たちの部――風越さんでは、福路さんが長野で一位を取れるくらい強いから、チームがまとまっていたのか?」
池田「それは……違うと思いますけど……」
小走「だろ? だから、ちょっと負けたくらいでいちいち下を向くな。お前はまだ二年だろうが。私らとは違う。負けても次がある。
そうやって……敗北をバネにして強くなればいいんだよ。ここぞというときに、笑っていられるようにな」
池田「小走さん……」
小走「福路さんだってそうだっただろう? あんな涙脆い人でも……お前たちが弱気になっているときには……強気の笑顔でいたはずだ。だから、お前たちは安心してあの人についていけたんだろう? 違うか?
別に麻雀が強い弱いはさほど関係ないんだよ。どんな苦境に追い込まれても……前を見て笑っていられる――それこそが、部をまとめる者として備えているべき資質なんだと私は思う。
お前らんとこの監督さんだって……きっと池田のそういう資質を見抜いているから……お前を福路さんの後任にしたんだろうさ」
池田「前を見て……笑っていること……ですか。確かに……あたしの取り得なんてそれくらいしかないですもんね……」
小走「そんなに卑下するな、池田。池田は麻雀も十分に強いと思うぞ。普通、流し満貫なんて狙ってできるもんじゃない。あれはお前の持ってる才能の一つだと私は分析する。
正直……羨ましいよ。私にはこれといった才能や能力はないしな」
池田「ありがとうございます……お世辞でも嬉しいです」
小走「世辞じゃないさ。本当のことだ」
池田「……小走さんは、次の後半戦、天江衣に勝つつもりですか?」
小走「さあな。打ってみないとわからん。色々噂は聞いてるけど、直に対局するのはこれが初めて。
ま、化け物だろうが魔物だろうがどうということはない。そう心配しなさんな。こっちは小三のときからマメすらできない。そう簡単には負けないさ」
すばら『先鋒戦後半……間もなく始まります!! 選手のみなさんは対局室に集まってください!!』
小走「と……マズい。悪いな、池田、先に戻っててくれ。少しくらいは一人の時間がほしい。こう見えて、私、けっこう緊張するタイプなんだよ」
池田「あっ……すいません、わかりました。小走さんのおかげで……気持ちがかなり楽になりました!! あたし、あたしなりに、できるところまで頑張ってみますっ!
ありがとうございました!!」
小走「いいって、気にするな」
気さくに笑う小走。池田、一礼して、早足にトイレを去る。
小走「そんなに卑下するな、池田。池田は麻雀も十分に強いと思うぞ。普通、流し満貫なんて狙ってできるもんじゃない。あれはお前の持ってる才能の一つだと私は分析する。
正直……羨ましいよ。私にはこれといった才能や能力はないしな」
池田「ありがとうございます……お世辞でも嬉しいです」
小走「世辞じゃないさ。本当のことだ」
池田「……小走さんは、次の後半戦、天江衣に勝つつもりですか?」
小走「さあな。打ってみないとわからん。色々噂は聞いてるけど、直に対局するのはこれが初めて。
ま、化け物だろうが魔物だろうがどうということはない。そう心配しなさんな。こっちは小三のときからマメすらできない。そう簡単には負けないさ」
すばら『先鋒戦後半……間もなく始まります!! 選手のみなさんは対局室に集まってください!!』
小走「と……マズい。悪いな、池田、先に戻っててくれ。少しくらいは一人の時間がほしい。こう見えて、私、けっこう緊張するタイプなんだよ」
池田「あっ……すいません、わかりました。小走さんのおかげで……気持ちがかなり楽になりました!! あたし、あたしなりに、できるところまで頑張ってみますっ!
ありがとうございました!!」
小走「いいって、気にするな」
気さくに笑う小走。池田、一礼して、早足にトイレを去る。
小走、池田が見えなくなったのを確認して、トイレから出て、池田が去ったほうとは逆の廊下の角へ話しかける。
小走「って……こんな感じで大丈夫だった?」
廊下の角から出てきたのは――風越キャプテン・福路美穂子。
美穂子「ありがとうございます。すいません、うちの後輩の面倒を見てもらって……」
小走「いいよいいよ。福路さんの頼みなら、お安い御用。それに、あれでしょ? あいつって福路さんの前では強がるんでしょ? 身内には弱音を吐かなそうなタイプ」
美穂子「そうなんです……本当、強い子なんです」
小走「強がってる子、の間違いじゃない?」
美穂子「ええ……そうとも言いますね」
クスクスと笑い合う、二人。
小走「って……こんな感じで大丈夫だった?」
廊下の角から出てきたのは――風越キャプテン・福路美穂子。
美穂子「ありがとうございます。すいません、うちの後輩の面倒を見てもらって……」
小走「いいよいいよ。福路さんの頼みなら、お安い御用。それに、あれでしょ? あいつって福路さんの前では強がるんでしょ? 身内には弱音を吐かなそうなタイプ」
美穂子「そうなんです……本当、強い子なんです」
小走「強がってる子、の間違いじゃない?」
美穂子「ええ……そうとも言いますね」
クスクスと笑い合う、二人。
小走「そういえばさ、福路さん。清澄の部長って、昔いつだったか福路さんが話してくれた上埜さんだったんだね。
開会式の挨拶聞いてたら突然懐かしい名前がでてきてびっくりしたよ」
美穂子「ああ、そうなんですよ。私も、今年のインターハイで上埜さんを見て……本当に驚きました」
小走「フフ、想い人と再会できてよかったね」
美穂子「もう……そういうこと言わないでください////」
小走「いいなぁ福路さんは……羨ましい。昔馴染みの相手が身近にいるってさ。高三になるともう……インターミドル時代の顔馴染みってどんどん少なくなっていくから」
美穂子「そうですね。高校から急に活躍し始める人もたくさんいますし、色々な理由で麻雀から離れてしまう人もいますから」
小走「お互い古株同士、まだまだ頑張ろうね。次はなんだろう……インカレあたりかな? ま、また機会があったらよろしく、長野最強さん。じゃ、私もう行かないとだから」
言って、軽い足取りで対局室へと向かう小走。
その背中を見送りながら、美穂子は小さく呟く。
美穂子「ええ、また全国の舞台で戦えるのを楽しみにしていますよ…………奈良最強さん」
開会式の挨拶聞いてたら突然懐かしい名前がでてきてびっくりしたよ」
美穂子「ああ、そうなんですよ。私も、今年のインターハイで上埜さんを見て……本当に驚きました」
小走「フフ、想い人と再会できてよかったね」
美穂子「もう……そういうこと言わないでください////」
小走「いいなぁ福路さんは……羨ましい。昔馴染みの相手が身近にいるってさ。高三になるともう……インターミドル時代の顔馴染みってどんどん少なくなっていくから」
美穂子「そうですね。高校から急に活躍し始める人もたくさんいますし、色々な理由で麻雀から離れてしまう人もいますから」
小走「お互い古株同士、まだまだ頑張ろうね。次はなんだろう……インカレあたりかな? ま、また機会があったらよろしく、長野最強さん。じゃ、私もう行かないとだから」
言って、軽い足取りで対局室へと向かう小走。
その背中を見送りながら、美穂子は小さく呟く。
美穂子「ええ、また全国の舞台で戦えるのを楽しみにしていますよ…………奈良最強さん」
@会場某所
我に返った龍門渕透華は、暗い表情で廊下を歩いていた。
そんな透華を、よく知った声が呼び止める。
衣「とーか、どうした、浮かない顔をして」
透華「衣……。申し訳ありませんわ、負けてしまいましたの」
衣「なんだ、そんなことか。あれくらい、すぐに衣が取り返してやる」
透華「ええ……そうですわね。衣のことは心配してないですわ」
衣「ん……? 妙に歯切れが悪いな、とーからしくもない」
透華「わたくしらしくない……そうですわね。確かに、わたくしらしくなかったですわ」
衣「とーか?」
透華「開会式で、衣が言っていたじゃありませんか。わたくしたち二年選抜の今日の目標は、自分が納得できるように……自分らしく打つこと。
それなのに、ですわ。トップバッターのわたくしが、いきなりわたくしらしくない打ち方をしてしまった。わたくし……どんな顔をして控え室に戻ればいいのか……わからなくなってしまいましたの……」
衣「今日のとーかは……そんなにとーからしくなかったのか?」
透華「らしくないですわよ。さっき……対局が終わってすぐにハギヨシを呼びつけて牌譜を見せてもらいましたの。愕然としましたわ……南三局一本場からの連荘……あまりにデジタルとはかけ離れた打ち方……。
あんなの……わたくしは認めませんわ。それに何より、あんな打ち方でしか勝てない自分が……嫌になりますの」
衣「とーか……」
我に返った龍門渕透華は、暗い表情で廊下を歩いていた。
そんな透華を、よく知った声が呼び止める。
衣「とーか、どうした、浮かない顔をして」
透華「衣……。申し訳ありませんわ、負けてしまいましたの」
衣「なんだ、そんなことか。あれくらい、すぐに衣が取り返してやる」
透華「ええ……そうですわね。衣のことは心配してないですわ」
衣「ん……? 妙に歯切れが悪いな、とーからしくもない」
透華「わたくしらしくない……そうですわね。確かに、わたくしらしくなかったですわ」
衣「とーか?」
透華「開会式で、衣が言っていたじゃありませんか。わたくしたち二年選抜の今日の目標は、自分が納得できるように……自分らしく打つこと。
それなのに、ですわ。トップバッターのわたくしが、いきなりわたくしらしくない打ち方をしてしまった。わたくし……どんな顔をして控え室に戻ればいいのか……わからなくなってしまいましたの……」
衣「今日のとーかは……そんなにとーからしくなかったのか?」
透華「らしくないですわよ。さっき……対局が終わってすぐにハギヨシを呼びつけて牌譜を見せてもらいましたの。愕然としましたわ……南三局一本場からの連荘……あまりにデジタルとはかけ離れた打ち方……。
あんなの……わたくしは認めませんわ。それに何より、あんな打ち方でしか勝てない自分が……嫌になりますの」
衣「とーか……」
透華「わたくしの中にも……きっと衣と同じように……魔物がいる。それは薄々気付いてましたわ。けど……だからこそ、わたくしは、普段のデジタル打ちを誇りにしていますの。
わたくしは、わたくし自身の意思と力で勝ちたいんですわ。あんな魔物じみた打ち方で……わたくしの知らないところで勝っても……何も嬉しくありませんの」
透華、悔しそうに、拳を握る。
透華「本当に……嬉しくもなんともありませんわよ。わたくしは……わたくしらしく勝つために……日々己の力を磨いているんですの。決して、あんなわけのわからない力で勝つためじゃありませんわ。
それなのに……結局は、あのわけのわからないわたくしのほうが……わたくしが努力して作り上げたわたくしより……強い。本当に、あのわけのわからないわたくしは憎たらしいですわ。
そして、それ以上に……弱い自分が嫌になりますの」
透華、自嘲するように、力なく笑う。
衣、見るに見かねて、透華に抱きつく。
透華「え……衣? なんの真似ですの……?」
衣「元気を分けてる」
透華「わたくしのことはいいですわ。控え室には……観戦室にいる智紀と一に会って気分転換してから戻りますの。あなたは早く次の対局に行ってくださいまし」
衣「嫌だ。悲しんでる家族を置いてはいけない」
家族、という単語を聞いて、透華、何も言えなくなる。
わたくしは、わたくし自身の意思と力で勝ちたいんですわ。あんな魔物じみた打ち方で……わたくしの知らないところで勝っても……何も嬉しくありませんの」
透華、悔しそうに、拳を握る。
透華「本当に……嬉しくもなんともありませんわよ。わたくしは……わたくしらしく勝つために……日々己の力を磨いているんですの。決して、あんなわけのわからない力で勝つためじゃありませんわ。
それなのに……結局は、あのわけのわからないわたくしのほうが……わたくしが努力して作り上げたわたくしより……強い。本当に、あのわけのわからないわたくしは憎たらしいですわ。
そして、それ以上に……弱い自分が嫌になりますの」
透華、自嘲するように、力なく笑う。
衣、見るに見かねて、透華に抱きつく。
透華「え……衣? なんの真似ですの……?」
衣「元気を分けてる」
透華「わたくしのことはいいですわ。控え室には……観戦室にいる智紀と一に会って気分転換してから戻りますの。あなたは早く次の対局に行ってくださいまし」
衣「嫌だ。悲しんでる家族を置いてはいけない」
家族、という単語を聞いて、透華、何も言えなくなる。
衣「とーかの憎むとーかのこと……衣もよく知っている。とーかの言う通り、あれはいつものとーからしくはない。一や純も、あまりあのとーかを好いてはないようだ。二人ともいつものとーかを気に入っているからな。
けど……衣は、少し違う」
衣「衣は……いろんなとーかを知っている。いいとーかも、悪いとーかも、頑張ってるとーかも、ダメなとーかも。強いとーかも、弱いとーかも」
衣「どんなとーかも、衣は好きだ。色んなとーかを……衣はとーかの家族だから……受け入れたいと思う。だから、とーかにも、色んなとーかを好きになってほしい。受け入れてほしい。
とーかが憎むとーかだって、とーかなんだから。とーかが嫌うとーかだって、やっぱりとーかなんだから。衣はとーかの全部が好きだから……今みたいに……とーかが自分を嫌いだって言うのは、聞いていて、悲しい」
衣「衣も……ずっと自分の力が疎ましかった。この力のせいで……みんなが離れていった。こんな力、なければいいのにって思っていた……」
衣「でも……衣はこの力のおかげで……とーかたちに会えた。清澄のノノカや咲とも友達になれた。そんな風にみんなと繋がることができて……この力が……今は、大切な衣の一部なんだと思える。
これが衣らしさなんだと思える」
衣「できれば……とーかにも、そういう風になってほしい。自分らしくあるためには、自分のことを好きじゃないといけないって、衣は思うから。だから、もっと、とーかはとーかのことを認めていいんだ。
わけがわからなくても、憎らしくても、弱くても……」
すばら『先鋒戦後半……間もなく始まります!! 選手のみなさんは対局室に集まってください!!』
けど……衣は、少し違う」
衣「衣は……いろんなとーかを知っている。いいとーかも、悪いとーかも、頑張ってるとーかも、ダメなとーかも。強いとーかも、弱いとーかも」
衣「どんなとーかも、衣は好きだ。色んなとーかを……衣はとーかの家族だから……受け入れたいと思う。だから、とーかにも、色んなとーかを好きになってほしい。受け入れてほしい。
とーかが憎むとーかだって、とーかなんだから。とーかが嫌うとーかだって、やっぱりとーかなんだから。衣はとーかの全部が好きだから……今みたいに……とーかが自分を嫌いだって言うのは、聞いていて、悲しい」
衣「衣も……ずっと自分の力が疎ましかった。この力のせいで……みんなが離れていった。こんな力、なければいいのにって思っていた……」
衣「でも……衣はこの力のおかげで……とーかたちに会えた。清澄のノノカや咲とも友達になれた。そんな風にみんなと繋がることができて……この力が……今は、大切な衣の一部なんだと思える。
これが衣らしさなんだと思える」
衣「できれば……とーかにも、そういう風になってほしい。自分らしくあるためには、自分のことを好きじゃないといけないって、衣は思うから。だから、もっと、とーかはとーかのことを認めていいんだ。
わけがわからなくても、憎らしくても、弱くても……」
すばら『先鋒戦後半……間もなく始まります!! 選手のみなさんは対局室に集まってください!!』
衣「とーか、わかった?」
透華「……わかりましたわよ。衣にこんなに心配されるなんて……わたくしはお姉さん失格ですわね」
衣「とーかは衣の姉じゃない。衣のほうが誕生日が早い」
透華「冗談ですわ。まあ……そうですわね。とりあえず、今度じっくり『あれ』の牌譜を眺めてみようと思いますわ。
去年のインターハイ、四校合同合宿、それから、今日の対抗戦。他にも探せば出てきますでしょ。そうやって……ちゃんと向き合えば、今よりは少し、好きになれるかもしれませんわね」
衣「うむ。その意気だっ!」
透華「衣のほうも、油断せずに頑張ってくださいまし。今日の面子はなかなか手強いですわよ。
よくよく考えたら、あの状態のわたくしがさらりとかわされるのは、去年のインターハイ以来のような気もしますわ。県大会の決勝レベルだと思って戦うと、痛い目を見ますわよ」
衣「案ずるな、誰が相手だろうと蹴散らすまで」
透華「なんだか、えらく気合が入ってますのね」
衣「当然至極。妹の失点を埋めるのは、姉の務めだからなっ!」
透華「ハイハイ。じゃあ……あとはお願いしますわね、お姉さま」
透華「……わかりましたわよ。衣にこんなに心配されるなんて……わたくしはお姉さん失格ですわね」
衣「とーかは衣の姉じゃない。衣のほうが誕生日が早い」
透華「冗談ですわ。まあ……そうですわね。とりあえず、今度じっくり『あれ』の牌譜を眺めてみようと思いますわ。
去年のインターハイ、四校合同合宿、それから、今日の対抗戦。他にも探せば出てきますでしょ。そうやって……ちゃんと向き合えば、今よりは少し、好きになれるかもしれませんわね」
衣「うむ。その意気だっ!」
透華「衣のほうも、油断せずに頑張ってくださいまし。今日の面子はなかなか手強いですわよ。
よくよく考えたら、あの状態のわたくしがさらりとかわされるのは、去年のインターハイ以来のような気もしますわ。県大会の決勝レベルだと思って戦うと、痛い目を見ますわよ」
衣「案ずるな、誰が相手だろうと蹴散らすまで」
透華「なんだか、えらく気合が入ってますのね」
衣「当然至極。妹の失点を埋めるのは、姉の務めだからなっ!」
透華「ハイハイ。じゃあ……あとはお願いしますわね、お姉さま」
@会場某所
シロ「あうー……ダルー」
豊音「シッロー!!! お疲れー! ちょーお疲れー!!」
シロ「ごめん、豊音。正直、私いま、豊音のそのテンションについていけない」
豊音「えー!? だってあの天江さんと戦えるんだよ!? 清澄の先鋒の子もいるし! そりゃテンションも上がるよー!!」
シロ「…………一応、忠告しておくけど、今日の対抗戦は豊音でもそう簡単には勝てないと思うよ。最初から全力でやったほうがいい」
豊音「シロじゃないんだから手なんて抜いたりしないよ。もちろん最初から飛ばしていくよー? 天江さんもいるしね」
シロ「あと、清澄と、長野の南浦さんって子も、けっこうやるよ」
豊音「その二人はさっき見てたから大丈夫。ちゃんと警戒してるって」
すばら『先鋒戦後半……間もなく始まります!! 選手のみなさんは対局室に集まってください!!』
シロ「じゃあ……まあ……いってらっしゃい」
豊音「いってきまーす!」
シロ(あ……そう言えば混成チームは誰が出てくるんだっけ……?
まあ……大丈夫か。聞いたことのない選手だからって油断するような豊音じゃないし。それに……さすがに天江衣以上ってことはないだろう…………たぶん)
シロ「あうー……ダルー」
豊音「シッロー!!! お疲れー! ちょーお疲れー!!」
シロ「ごめん、豊音。正直、私いま、豊音のそのテンションについていけない」
豊音「えー!? だってあの天江さんと戦えるんだよ!? 清澄の先鋒の子もいるし! そりゃテンションも上がるよー!!」
シロ「…………一応、忠告しておくけど、今日の対抗戦は豊音でもそう簡単には勝てないと思うよ。最初から全力でやったほうがいい」
豊音「シロじゃないんだから手なんて抜いたりしないよ。もちろん最初から飛ばしていくよー? 天江さんもいるしね」
シロ「あと、清澄と、長野の南浦さんって子も、けっこうやるよ」
豊音「その二人はさっき見てたから大丈夫。ちゃんと警戒してるって」
すばら『先鋒戦後半……間もなく始まります!! 選手のみなさんは対局室に集まってください!!』
シロ「じゃあ……まあ……いってらっしゃい」
豊音「いってきまーす!」
シロ(あ……そう言えば混成チームは誰が出てくるんだっけ……?
まあ……大丈夫か。聞いたことのない選手だからって油断するような豊音じゃないし。それに……さすがに天江衣以上ってことはないだろう…………たぶん)
@会場某所
優希「お疲れだじぇ、数絵」
南浦「削られた。面目ない」
優希「いいってことだじょ! 点数見てみるといいじぇ。我ら一年が暫定トップだじょ」
南浦「それでも……私は負けたから。暫定トップなのは、あなたの手柄」
優希「む……。数絵は……団体戦には興味ないのか?」
南浦「興味がない……わけではないと思うが。ただ、私にとって大切なのは、あくまで私自身が勝つことだから。
みんなで戦うということがどういうことなのか……よくわからない」
優希「そうか……それじゃあ……今日の対抗戦で勝つのは大変かもしれないじょ」
南浦「……どういうことだ?」
優希「お疲れだじぇ、数絵」
南浦「削られた。面目ない」
優希「いいってことだじょ! 点数見てみるといいじぇ。我ら一年が暫定トップだじょ」
南浦「それでも……私は負けたから。暫定トップなのは、あなたの手柄」
優希「む……。数絵は……団体戦には興味ないのか?」
南浦「興味がない……わけではないと思うが。ただ、私にとって大切なのは、あくまで私自身が勝つことだから。
みんなで戦うということがどういうことなのか……よくわからない」
優希「そうか……それじゃあ……今日の対抗戦で勝つのは大変かもしれないじょ」
南浦「……どういうことだ?」
優希「今日の対抗戦――もしこれが個人戦だったら、数絵はきっと勝ち上がれると思うじょ。でも、今日は団体戦だじょ。この違いはけっこう大きいんだじぇ?」
南浦「団体戦だろうが、個人戦だろうが、麻雀を打つことに変わりはない。卓につけば、誰もが一人。強い者が勝ち、弱い者が負ける。それだけだろう?」
優希「ふふん。甘いな、数絵。そんなことを言っているうちは、数絵は私にも勝てないじょ」
南浦「意味がわからない」
優希「今にわかるじぇ」
すばら『先鋒戦後半……間もなく始まります!! 選手のみなさんは対局室に集まってください!!』
南浦「優希……あなたには感謝している。こんな全国区の猛者が集う場所に私を連れてきてくれて……私に戦いの場を与えてくれて、有難く思っている。
けれど、だからといって、あなたに私の価値観まで変えてほしいとは思っていない。
私は私が勝つためにここに来た。別に、団体戦の貴さを学びに来たわけではない。悪いが、あまりその辺りの期待はしないでほしい」
優希「価値観とか、そんな細かいことはどうでもいいんだじぇ。私が数絵を連れてきたのは、単純に数絵がいればチームが勝てると思ったからだじょ。
数絵がいつも通りに打って勝てるならそれで何も問題はない……でも、もし、数絵がいつも通りに打っても勝てないくらい敵が強いときは……私の言葉を思い出してほしいんだじょ」
南浦「…………善処する」
優希「おうっ! さすが数絵は話がわかるじぇ! じゃ、行ってくるじょー! 今度こそ東場で終わらせてやるじぇー!!」
南浦「団体戦だろうが、個人戦だろうが、麻雀を打つことに変わりはない。卓につけば、誰もが一人。強い者が勝ち、弱い者が負ける。それだけだろう?」
優希「ふふん。甘いな、数絵。そんなことを言っているうちは、数絵は私にも勝てないじょ」
南浦「意味がわからない」
優希「今にわかるじぇ」
すばら『先鋒戦後半……間もなく始まります!! 選手のみなさんは対局室に集まってください!!』
南浦「優希……あなたには感謝している。こんな全国区の猛者が集う場所に私を連れてきてくれて……私に戦いの場を与えてくれて、有難く思っている。
けれど、だからといって、あなたに私の価値観まで変えてほしいとは思っていない。
私は私が勝つためにここに来た。別に、団体戦の貴さを学びに来たわけではない。悪いが、あまりその辺りの期待はしないでほしい」
優希「価値観とか、そんな細かいことはどうでもいいんだじぇ。私が数絵を連れてきたのは、単純に数絵がいればチームが勝てると思ったからだじょ。
数絵がいつも通りに打って勝てるならそれで何も問題はない……でも、もし、数絵がいつも通りに打っても勝てないくらい敵が強いときは……私の言葉を思い出してほしいんだじょ」
南浦「…………善処する」
優希「おうっ! さすが数絵は話がわかるじぇ! じゃ、行ってくるじょー! 今度こそ東場で終わらせてやるじぇー!!」
@対局室
すばら『さあ!! 場決めも終わり、各選手席に着きました……!! いよいよ先鋒戦後半のスタートですっ!!』
東家:片岡優希(一年選抜)
優希「よろしくだじぇ!」
南家:姉帯豊音(三年選抜)
豊音「よっろしくー!」
北家:小走やえ(混成チーム)
小走「よろしく頼む」
西家:天江衣(二年選抜)
衣「宜しく」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
再び優希の起家で始まる東南戦。
慣れた様子で最初の賽を回す優希。
前半戦の熱気も冷めやらぬまま。
後半戦――開始ッ!!!
すばら『さあ!! 場決めも終わり、各選手席に着きました……!! いよいよ先鋒戦後半のスタートですっ!!』
東家:片岡優希(一年選抜)
優希「よろしくだじぇ!」
南家:姉帯豊音(三年選抜)
豊音「よっろしくー!」
北家:小走やえ(混成チーム)
小走「よろしく頼む」
西家:天江衣(二年選抜)
衣「宜しく」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
再び優希の起家で始まる東南戦。
慣れた様子で最初の賽を回す優希。
前半戦の熱気も冷めやらぬまま。
後半戦――開始ッ!!!
@実況室
すばら「さて、メンバーも変わって後半戦が始まったわけですが、先鋒戦にして早速一人目の魔物が現れましたね、井上さん!!」
純「さっきの南三局で別の魔物が既に出てたわけだが、まあ……知名度では衣のほうが上だろうな」
菫「天江衣選手……うちの照や淡、それから永水の神代選手と合わせて、『天照大神』なんて呼ばれていますね」
初瀬「天照大神……『牌に愛された子』というフレーズをよく耳にします。どういう意味なんですか?」
純「そうとしか表現できねえんじゃねえか? あいつらの牌譜見てみろよ。デジタルとかオカルトとかの領域を超えてるぜ。オカルト派のオレですら、あの流れは意味不明だ」
菫「強いて共通点を挙げるなら、どの選手も驚異的な『場の支配力』を持っていることですかね」
初瀬「あの……『場の支配』って、さっきもちらっと出てきたんですが、具体的にどういうことなんですか?」
純「例えば、さっきの透華は、他家の鳴きやリーチを封じていたな。同じように、うちの衣は、他家のテンパイ率を劇的に下げることができる。あと、あいつはリーチ一発海底とかを狙ってやったりするな。
それもこれも、他家の手牌や山の状態をある程度把握しているからできる芸当だ。ちなみに、衣は他家の和了りの高低を見抜ける」
菫「うちの照は、連続和了を得意としています。それも、ただの連続和了じゃない。点数が徐々に高くなっていくやつです。これも、ある程度他家の手牌や山を掌握してないと成立しません。
照の連続和了はズラしても和了ったりするからかなり性質が悪いですよ。ちなみに、照は他家の打ち筋やその本質をたった一局で見抜くことができます」
すばら「さて、メンバーも変わって後半戦が始まったわけですが、先鋒戦にして早速一人目の魔物が現れましたね、井上さん!!」
純「さっきの南三局で別の魔物が既に出てたわけだが、まあ……知名度では衣のほうが上だろうな」
菫「天江衣選手……うちの照や淡、それから永水の神代選手と合わせて、『天照大神』なんて呼ばれていますね」
初瀬「天照大神……『牌に愛された子』というフレーズをよく耳にします。どういう意味なんですか?」
純「そうとしか表現できねえんじゃねえか? あいつらの牌譜見てみろよ。デジタルとかオカルトとかの領域を超えてるぜ。オカルト派のオレですら、あの流れは意味不明だ」
菫「強いて共通点を挙げるなら、どの選手も驚異的な『場の支配力』を持っていることですかね」
初瀬「あの……『場の支配』って、さっきもちらっと出てきたんですが、具体的にどういうことなんですか?」
純「例えば、さっきの透華は、他家の鳴きやリーチを封じていたな。同じように、うちの衣は、他家のテンパイ率を劇的に下げることができる。あと、あいつはリーチ一発海底とかを狙ってやったりするな。
それもこれも、他家の手牌や山の状態をある程度把握しているからできる芸当だ。ちなみに、衣は他家の和了りの高低を見抜ける」
菫「うちの照は、連続和了を得意としています。それも、ただの連続和了じゃない。点数が徐々に高くなっていくやつです。これも、ある程度他家の手牌や山を掌握してないと成立しません。
照の連続和了はズラしても和了ったりするからかなり性質が悪いですよ。ちなみに、照は他家の打ち筋やその本質をたった一局で見抜くことができます」
初瀬「あの……なんと言えばいいのか……天江選手やチャンピオンは本当に人間ですか?」
純・菫「人間じゃねえよ(ないですね)」
純「ま、それは冗談で、あいつらは人間だぜ。人間であってもらわないと困る」
初瀬「どういうことですか……?」
純「信じられないかもしれねえが、うちの衣だって負けることはある。他家に振り込むことも、出し抜かれることもある。
それは全部、あいつが人間だからだ。油断も隙もあるんだよ。だから、うまいことやれば、一般人でも魔物を倒すことができる……かもしれねえ」
菫「倒すまではいかなくとも、一矢報いることくらいは私にだってできますよ。それが証拠にほら、どうもあの魔物って人種は序盤は『見』に回る傾向がある。
天江選手も、どうやらその例に漏れないみたいですね」
すばら「来ましたあああああ!! 先鋒戦後半東一局!!! 場を動かすのはやはりこの人ですっ!!!」
純・菫「人間じゃねえよ(ないですね)」
純「ま、それは冗談で、あいつらは人間だぜ。人間であってもらわないと困る」
初瀬「どういうことですか……?」
純「信じられないかもしれねえが、うちの衣だって負けることはある。他家に振り込むことも、出し抜かれることもある。
それは全部、あいつが人間だからだ。油断も隙もあるんだよ。だから、うまいことやれば、一般人でも魔物を倒すことができる……かもしれねえ」
菫「倒すまではいかなくとも、一矢報いることくらいは私にだってできますよ。それが証拠にほら、どうもあの魔物って人種は序盤は『見』に回る傾向がある。
天江選手も、どうやらその例に漏れないみたいですね」
すばら「来ましたあああああ!! 先鋒戦後半東一局!!! 場を動かすのはやはりこの人ですっ!!!」
@対局室
東一局・親:優希
十三巡目
優希「リーチだじぇっ!!」スチャ
優希、前半戦から勢い止まらずッ!!
優希(龍門渕のお子様……合宿で何度か対局したけど……打ち難さは咲ちゃん以上だじぇ。稼げるときに稼いでおかないとあとが恐いじょ)
衣(清澄の……相変わらず東場の爆発力は大したもの。東一局……様子見のつもりではあったが……決して衣の支配は作用していなかったわけではない。よく自力でテンパイまで持っていったものだ。
しかし……いいのか? 確か、お前の下家にいる宮守の大将の得意技は……)
優希のリーチを受けて、イーシャンテンから伸び悩んでいた豊音の手が、進むッ!!
豊音「んー……追っかけるけどー?」スチャ
優希(あああああっ!? 忘れてたじょ!! こいつより先にリーチしちゃいけないって咲ちゃんにあれほど言われたのにっ!!)
次巡、優希、一発目のツモ牌を手に取る! それは優希の和了り牌ではなく――。
優希(うう……!! 南無三だじぇ……!!)タンッ
無防備に捨てられた牌は、背後から忍び寄る影に刈り取られる!!
豊音「ロン。リーチ一発……裏はなし。2600」
背向の豊音――健在ッ!!
東一局・親:優希
十三巡目
優希「リーチだじぇっ!!」スチャ
優希、前半戦から勢い止まらずッ!!
優希(龍門渕のお子様……合宿で何度か対局したけど……打ち難さは咲ちゃん以上だじぇ。稼げるときに稼いでおかないとあとが恐いじょ)
衣(清澄の……相変わらず東場の爆発力は大したもの。東一局……様子見のつもりではあったが……決して衣の支配は作用していなかったわけではない。よく自力でテンパイまで持っていったものだ。
しかし……いいのか? 確か、お前の下家にいる宮守の大将の得意技は……)
優希のリーチを受けて、イーシャンテンから伸び悩んでいた豊音の手が、進むッ!!
豊音「んー……追っかけるけどー?」スチャ
優希(あああああっ!? 忘れてたじょ!! こいつより先にリーチしちゃいけないって咲ちゃんにあれほど言われたのにっ!!)
次巡、優希、一発目のツモ牌を手に取る! それは優希の和了り牌ではなく――。
優希(うう……!! 南無三だじぇ……!!)タンッ
無防備に捨てられた牌は、背後から忍び寄る影に刈り取られる!!
豊音「ロン。リーチ一発……裏はなし。2600」
背向の豊音――健在ッ!!
優希(ペンチャン待ちのリーのみ……そんなしょぼい手で私のメンタンピン高め三色の三面待ちが打ち負けたんだと思うと……ついもう一回リーチしたくなっちゃうじょ。
でも、やめといたほうがいいっぽいじぇ。もう次はない。どっかの三年とは違うんだじょ)
豊音(んーラッキー! まさか直接戦った清澄の子が先制リーチをかけてくるとは思わなかったよっ!!
にしても……先負が発動できたからよかったけど……今の……イーシャンテンから手が進まなかったのはかなり不自然な感じだったなぁ。これが天江さんの力か。
んー……わくわくするっ!!)
衣(さて……これで衣が南家。遊びは終わりだ。ここからは衣も本気で行く!!)
タ:107600 衣:96800 姉:103600 や:92000
でも、やめといたほうがいいっぽいじぇ。もう次はない。どっかの三年とは違うんだじょ)
豊音(んーラッキー! まさか直接戦った清澄の子が先制リーチをかけてくるとは思わなかったよっ!!
にしても……先負が発動できたからよかったけど……今の……イーシャンテンから手が進まなかったのはかなり不自然な感じだったなぁ。これが天江さんの力か。
んー……わくわくするっ!!)
衣(さて……これで衣が南家。遊びは終わりだ。ここからは衣も本気で行く!!)
タ:107600 衣:96800 姉:103600 や:92000
東二局・親:豊音
十五巡目
豊音(うーん。想像以上に手が進まない。鳴けないから友引も使えないし……。天江さん……この場を意図して作り出しているの……?
永水の霞さんの絶一門もすごいと思ったけど……あれはまだ終盤に付け入る隙があった。でも、これはなぁ……突破口を見つけるのは容易じゃなさそうだ)タンッ
優希(来たじぇ……これは何度経験しても泣きたくなるじょ。まるで南場みたいな感じ。
咲ちゃんはまだカンできるからいいとして……鶴賀の大将や池田なんか……こんなのをどうやって切り抜けたんだじょ)
足元から這い上がり、徐々に高くなっていく水位ッ!
暗く重い海底へと――溺れていくッ!!
十七巡目――!!!
衣「……リーチ」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
優希(このリーチは……本当に心が折れそうになるじぇ……!!)タンッ
豊音(出た……! 噂の十七巡目リーチ!! あっ、リーチ入ったからテンパった!! すごく追っかけたい!! 追っかけられないけどー!!)タンッ
十五巡目
豊音(うーん。想像以上に手が進まない。鳴けないから友引も使えないし……。天江さん……この場を意図して作り出しているの……?
永水の霞さんの絶一門もすごいと思ったけど……あれはまだ終盤に付け入る隙があった。でも、これはなぁ……突破口を見つけるのは容易じゃなさそうだ)タンッ
優希(来たじぇ……これは何度経験しても泣きたくなるじょ。まるで南場みたいな感じ。
咲ちゃんはまだカンできるからいいとして……鶴賀の大将や池田なんか……こんなのをどうやって切り抜けたんだじょ)
足元から這い上がり、徐々に高くなっていく水位ッ!
暗く重い海底へと――溺れていくッ!!
十七巡目――!!!
衣「……リーチ」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
優希(このリーチは……本当に心が折れそうになるじぇ……!!)タンッ
豊音(出た……! 噂の十七巡目リーチ!! あっ、リーチ入ったからテンパった!! すごく追っかけたい!! 追っかけられないけどー!!)タンッ
そして……運命の海底ッ!
魔物の手が――月を掬い上げるッ!!
衣「ツモ。リーチ一発ツモ海底撈月……三暗刻……赤一……裏三!! 4000・8000!!」
天江衣――死角無しッ!!
豊音(リーチ一発海底……!! すごいすごいちょーすごい!! もーすご過ぎて震える!! 涙出てくるっ!!)
優希(裏三とか……さすがの化け物っぷりだじぇ。ま、だからこそ倒し甲斐があるってもんだじょ!!)
タ:103600 衣:112800 姉:95600 や:88000
魔物の手が――月を掬い上げるッ!!
衣「ツモ。リーチ一発ツモ海底撈月……三暗刻……赤一……裏三!! 4000・8000!!」
天江衣――死角無しッ!!
豊音(リーチ一発海底……!! すごいすごいちょーすごい!! もーすご過ぎて震える!! 涙出てくるっ!!)
優希(裏三とか……さすがの化け物っぷりだじぇ。ま、だからこそ倒し甲斐があるってもんだじょ!!)
タ:103600 衣:112800 姉:95600 や:88000
東三局・親:衣
十二巡目
優希「ポンだじょ!!」タンッ
豊音(わっ!? 鳴かれた? って……これで天江さんに海底が行くわけだけど……これも計算のうちなの?)
優希(龍門渕のお子様……これがお前の狙い通りなのは知ってるじょ。けど……だからなんだって言うんだじぇ! そんなに海底が好きならくれてやるじょ!
けど……海底なんて……海底に辿り着かなきゃ和了れないんだじょ!!)
衣(清澄の……いかに東場に自信があるとは言え……そんな通り一遍等の攻めでは衣の支配は抜け出せない。衣の恐ろしさ……その身に刻んでやる……!!)
十六巡目
優希(あ……和了れないじぇ……!!)タンッ
豊音(またイーシャンテン止まりで、天江さんは海底コース。天江さんの力が本物なら……当然ここで……来るんだよね?)タンッ
十七巡目
衣「リーチッ!!」スチャ
衣、再び十七巡目リーチッ!!
他家、動けずッ!!
十二巡目
優希「ポンだじょ!!」タンッ
豊音(わっ!? 鳴かれた? って……これで天江さんに海底が行くわけだけど……これも計算のうちなの?)
優希(龍門渕のお子様……これがお前の狙い通りなのは知ってるじょ。けど……だからなんだって言うんだじぇ! そんなに海底が好きならくれてやるじょ!
けど……海底なんて……海底に辿り着かなきゃ和了れないんだじょ!!)
衣(清澄の……いかに東場に自信があるとは言え……そんな通り一遍等の攻めでは衣の支配は抜け出せない。衣の恐ろしさ……その身に刻んでやる……!!)
十六巡目
優希(あ……和了れないじぇ……!!)タンッ
豊音(またイーシャンテン止まりで、天江さんは海底コース。天江さんの力が本物なら……当然ここで……来るんだよね?)タンッ
十七巡目
衣「リーチッ!!」スチャ
衣、再び十七巡目リーチッ!!
他家、動けずッ!!
優希(頼むじょ……最後のツモ……東場の神よ我に奇跡を――ってだああああ!? これじゃないじょ!! 見放されたじょ!!)タンッ
豊音(東場に強い清澄の子でも和了れないのか。力任せの打牌や運だけじゃダメだってことだね。天江さんの支配ってやつを抜け出すには……もっと別の方法が要る)
衣「ツモ。リーチ一発ツモ断ヤオ……海底撈月……4000オール!!」
優希(じょー………………最悪の展開だじぇ)
魔物・天江衣、二連続海底ッ!!
他の追随を許さない、圧倒的な力ッ!!
しかし……むしろ圧倒的だからこそ、燃え上がるミーハー女子が一人ッ!!
豊音(きゃー! 天江さんちょーカッコいー!! 本当に狙って海底が和了れるんだ!! 生で体験すると迫力が全然違うっ!! って……さすがにそろそろ点数がヤバいけどー)
長野の魔物を目の前にして、岩手の魔人が微笑む……ッ!!
豊音(天江さんは出和了りもある。けれど……気分的なものなのかな……今のところは海底に拘るみたい。ただ……さすがに三連続はいただけないかなー。
次も海底を狙うようなら……悪いけど……潰させてもらうよー?)ゴゴゴゴゴゴゴ
姉帯豊音、秘策ありッ!!
タ:99600 衣:124800 姉:91600 や:84000
豊音(東場に強い清澄の子でも和了れないのか。力任せの打牌や運だけじゃダメだってことだね。天江さんの支配ってやつを抜け出すには……もっと別の方法が要る)
衣「ツモ。リーチ一発ツモ断ヤオ……海底撈月……4000オール!!」
優希(じょー………………最悪の展開だじぇ)
魔物・天江衣、二連続海底ッ!!
他の追随を許さない、圧倒的な力ッ!!
しかし……むしろ圧倒的だからこそ、燃え上がるミーハー女子が一人ッ!!
豊音(きゃー! 天江さんちょーカッコいー!! 本当に狙って海底が和了れるんだ!! 生で体験すると迫力が全然違うっ!! って……さすがにそろそろ点数がヤバいけどー)
長野の魔物を目の前にして、岩手の魔人が微笑む……ッ!!
豊音(天江さんは出和了りもある。けれど……気分的なものなのかな……今のところは海底に拘るみたい。ただ……さすがに三連続はいただけないかなー。
次も海底を狙うようなら……悪いけど……潰させてもらうよー?)ゴゴゴゴゴゴゴ
姉帯豊音、秘策ありッ!!
タ:99600 衣:124800 姉:91600 や:84000
東三局一本場・親:衣
十三巡目
優希(相変わらず手が重いじぇ。けど、龍門渕のお子様はまだ動いてないじょ。海底狙いはやめた……? だとしたら、出和了り注意だじぇ……慎重に……慎重に……)タンッ
小走「ポン」タンッ
優希(じょ!? 混成の……誰だっけ!? いや、そんなことよりその鳴きは……!!)タンッ
豊音(天江さん……この巡目で海底コースに乗った。既にテンパイはしてるみたいだけど……これはまた海底を狙うかな……?)タンッ
衣(奈良の……晩成高校・先鋒――小走やえとか言ったか。鳴いて特に手が進んだ様子はないが……衣の支配の中で紛れを求めたのか? それとも……わざわざ衣に海底を差し向けた……?
生意気な。今局……出和了りでもよかったが……そんなに地獄が見たいのなら……いいだろう。何度でも見せてやる……!!)タンッ
十六巡目
優希(デジャヴだじょ!! ヤバいじょ!! なんにもできないじょー!! せめて……誰かが鳴けそうな牌……って、そんなんわかったら苦労しないじょ!!)タンッ
衣の支配に翻弄される優希。どうにか衣を海底からズラそうと、手を崩してまで豊音にパスを送る。
しかし……今の豊音の目に、海底ズラしなどといったその場凌ぎの捨て牌は、映らない。
豊音、あくまで、正面から天江衣を打ち倒す構えッ!!
十三巡目
優希(相変わらず手が重いじぇ。けど、龍門渕のお子様はまだ動いてないじょ。海底狙いはやめた……? だとしたら、出和了り注意だじぇ……慎重に……慎重に……)タンッ
小走「ポン」タンッ
優希(じょ!? 混成の……誰だっけ!? いや、そんなことよりその鳴きは……!!)タンッ
豊音(天江さん……この巡目で海底コースに乗った。既にテンパイはしてるみたいだけど……これはまた海底を狙うかな……?)タンッ
衣(奈良の……晩成高校・先鋒――小走やえとか言ったか。鳴いて特に手が進んだ様子はないが……衣の支配の中で紛れを求めたのか? それとも……わざわざ衣に海底を差し向けた……?
生意気な。今局……出和了りでもよかったが……そんなに地獄が見たいのなら……いいだろう。何度でも見せてやる……!!)タンッ
十六巡目
優希(デジャヴだじょ!! ヤバいじょ!! なんにもできないじょー!! せめて……誰かが鳴けそうな牌……って、そんなんわかったら苦労しないじょ!!)タンッ
衣の支配に翻弄される優希。どうにか衣を海底からズラそうと、手を崩してまで豊音にパスを送る。
しかし……今の豊音の目に、海底ズラしなどといったその場凌ぎの捨て牌は、映らない。
豊音、あくまで、正面から天江衣を打ち倒す構えッ!!
豊音(六曜の中でも……『これ』はかなり使い勝手が悪いほうだからねー。公式戦で使うのは初めてかも。まあ……普通の人が相手だったら背向で十分対応できるんだけど……さすがに下家の十七巡目リーチは追っかけられない。
でも……追っかけられないなら……追っかけてもらえばいいだけの話だよねー?)ツモッ
豊音、イーシャンテンだった手が、この土壇場に来て、進むッ!!
衣(む……宮守の大将がテンパイした……? 妙だな。衣は手を進ませるつもりなんてなかったのに。さては……こいつ……何かしたな……?)
豊音(これで発動条件の一つ目――自分がテンパイしたときに他家がリーチを掛けていない――はクリア。
そして……あともう一つの条件――他家が、自分がリーチしてからツモるまでの間に、追っかけリーチを放ってくること――も、海底狙いの天江さんなら……この誘い……乗ってくれるよね……!?)
豊音、イーシャンテンからテンパイ、その不要牌を捨て……曲げるッ!!
豊音「リーチ……!!」スチャ
豊音、明らかに衣を意識して、不敵に微笑む。
豊音「さあ……追っかけてみー?」ゴゴゴゴゴゴゴ
でも……追っかけられないなら……追っかけてもらえばいいだけの話だよねー?)ツモッ
豊音、イーシャンテンだった手が、この土壇場に来て、進むッ!!
衣(む……宮守の大将がテンパイした……? 妙だな。衣は手を進ませるつもりなんてなかったのに。さては……こいつ……何かしたな……?)
豊音(これで発動条件の一つ目――自分がテンパイしたときに他家がリーチを掛けていない――はクリア。
そして……あともう一つの条件――他家が、自分がリーチしてからツモるまでの間に、追っかけリーチを放ってくること――も、海底狙いの天江さんなら……この誘い……乗ってくれるよね……!?)
豊音、イーシャンテンからテンパイ、その不要牌を捨て……曲げるッ!!
豊音「リーチ……!!」スチャ
豊音、明らかに衣を意識して、不敵に微笑む。
豊音「さあ……追っかけてみー?」ゴゴゴゴゴゴゴ
衣(宮守の大将……何か狙っているな。得意技は追っかけリーチだと思っていたが、追っかけられるのも望むところなのか。衣の支配を打ち破るような局所的な力を感じる……。
そのせいかはわからないが……この海底はいつもの海底と感覚が違う。和了れるかどうかは五分五分といったところ。感覚を信じるなら、ここはダマで通したほうが無難かもしれない。さて……どうする……?)
衣、しかし、逡巡は一瞬。
衣(わかっている。ここで感覚に従って様子見に回るような……そんな戦う意思のない麻雀は……衣らしくない!! まだ結果が見えたわけではない……なら、ここは当然勝負するところ……!!
宮守の大将……好きなだけ罠を張るがいい! 策を巡らせるがいい!! その全てを……衣はねじ伏せる……!!)
衣、ツモった牌をそのまま卓に叩きつけ、宣言ッ!
衣「通らば――リーチ……!!」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
瞬間、先負と対をなす六曜――『先勝』が発動ッ!!!
それは、先制リーチをかけた者の第一ツモで和了る先負と、真逆の能力!!!
先勝は――追っかけリーチをかけた者の第一ツモで、和了る!!!
豊音(天江さん……退くつもりはないってわけねー? それがあなたたち魔物の誇りなんだろうけど……誇りとは同時に……驕りでもある……!!)ゴゴゴゴゴゴ
十七巡目リーチを放った魔人と魔物……!!
両者ともに、狙うは闇に包まれた海の底――!!
そのせいかはわからないが……この海底はいつもの海底と感覚が違う。和了れるかどうかは五分五分といったところ。感覚を信じるなら、ここはダマで通したほうが無難かもしれない。さて……どうする……?)
衣、しかし、逡巡は一瞬。
衣(わかっている。ここで感覚に従って様子見に回るような……そんな戦う意思のない麻雀は……衣らしくない!! まだ結果が見えたわけではない……なら、ここは当然勝負するところ……!!
宮守の大将……好きなだけ罠を張るがいい! 策を巡らせるがいい!! その全てを……衣はねじ伏せる……!!)
衣、ツモった牌をそのまま卓に叩きつけ、宣言ッ!
衣「通らば――リーチ……!!」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
瞬間、先負と対をなす六曜――『先勝』が発動ッ!!!
それは、先制リーチをかけた者の第一ツモで和了る先負と、真逆の能力!!!
先勝は――追っかけリーチをかけた者の第一ツモで、和了る!!!
豊音(天江さん……退くつもりはないってわけねー? それがあなたたち魔物の誇りなんだろうけど……誇りとは同時に……驕りでもある……!!)ゴゴゴゴゴゴ
十七巡目リーチを放った魔人と魔物……!!
両者ともに、狙うは闇に包まれた海の底――!!
優希(じょー……なんか魔物が増えたじぇ……)タンッ
豊音(さあ……天江さん……勝負……!!)タンッ
衣、運命の海底をその手に掴む――!!
瞬間、盲牌ッ!!
衣の表情は……!!?
衣(――!? くっ……五萬じゃ……ない……!!?)
苦渋ッ!!
衣、唇をかみ締めて、逃した魚を河に流す!!
即座、魚は魔人の手によって吊り上げられる……ッ!!
豊音「ロン……!! リーチ……河底撈魚!! 2600は2900!!」パラララ
衣「~~~~~~っ!!」
かくして、魔物と魔人の一騎打ちは、ひとまず魔人に軍配が上がる!!
しかし、その勝敗は、決して結果ほどはっきりしたものではなく、白とも黒とも言いがたい、グレーッ!!
豊音(さあ……天江さん……勝負……!!)タンッ
衣、運命の海底をその手に掴む――!!
瞬間、盲牌ッ!!
衣の表情は……!!?
衣(――!? くっ……五萬じゃ……ない……!!?)
苦渋ッ!!
衣、唇をかみ締めて、逃した魚を河に流す!!
即座、魚は魔人の手によって吊り上げられる……ッ!!
豊音「ロン……!! リーチ……河底撈魚!! 2600は2900!!」パラララ
衣「~~~~~~っ!!」
かくして、魔物と魔人の一騎打ちは、ひとまず魔人に軍配が上がる!!
しかし、その勝敗は、決して結果ほどはっきりしたものではなく、白とも黒とも言いがたい、グレーッ!!
豊音(今の……本気でヤバかったよー。先勝がまともに発動しているのに……何もかも根こそぎ持っていかれそうな感じがした。
天江さんがリーチをかけた時点では八割方いけると思ってたんだけどな……蓋を開けてみたら五分五分……まるでトシさんを相手にしてるみたい。できれば、もうこんな心臓に悪い真似はしたくないねー……)
衣(宮守の大将……一点突破とはいえ……一時的に衣の支配を上回るとは。身近によほど強い指導者でもいるのだろうか……鍛え抜かれた粘り強さを感じた。
確か……インターハイでは咲がこいつと戦ったのだったな。今更ながら、とーかたちと全国で戦えなかったことが悔やまれる……衣も公式戦でこいつと戦ってみたかった……!!)
衣、失点はしたものの、強敵を前に、気分は高揚。
豊音、渾身の一撃も、火に油。
しかし、豊音の一撃は、決して軽くはない。
それは点数以上に、衣に重く圧し掛かる。
天江さんがリーチをかけた時点では八割方いけると思ってたんだけどな……蓋を開けてみたら五分五分……まるでトシさんを相手にしてるみたい。できれば、もうこんな心臓に悪い真似はしたくないねー……)
衣(宮守の大将……一点突破とはいえ……一時的に衣の支配を上回るとは。身近によほど強い指導者でもいるのだろうか……鍛え抜かれた粘り強さを感じた。
確か……インターハイでは咲がこいつと戦ったのだったな。今更ながら、とーかたちと全国で戦えなかったことが悔やまれる……衣も公式戦でこいつと戦ってみたかった……!!)
衣、失点はしたものの、強敵を前に、気分は高揚。
豊音、渾身の一撃も、火に油。
しかし、豊音の一撃は、決して軽くはない。
それは点数以上に、衣に重く圧し掛かる。
衣(しかし……こいつに追っかけリーチが通じないとなると……迂闊に十七巡目リーチはかけられない。恐らく、こちらの海底狙いに気付けば……また今の力を使うだろう。
力は拮抗しているが……拮抗しているだけあって……確実に勝てる保障はない。厄介だ……衣は海底で和了るのが好きなのに……!)
豊音(天江さん……これで得意の十七巡目リーチは封じた……よね? ま、意地でもう一回くらいはやってくるかもしれないし、そもそも先勝はリーチをかけてもらえないと発動しないから、ダマで海底狙いをされたらそれまでなんだけど。
まあ……ダマの海底なら、リーチも一発も裏も消える。県予選の天江さんの牌譜を見たけど……たまに海底でしか和了できないような無茶な形を作るときもあった。
でも……ダマの海底のみなんてさほど脅威にならない。その辺りまで牽制できたのは大きいかな……)
他方、魔人と魔物の駆け引きが繰り広げられる中で、やや置いていかれ気味の優希は――、
優希(東場が……東場が終わっちゃうじょ!! 私が東場で焼き鳥断ラスなんて……あのオカルトノッポと風越のタコさんウィンナーにやられたときを思い出すじぇ。
ううう……困ったじょ。どうすればいいんだじょー……)
優希、打つ手無しッ!!
タ:99600 衣:120900 姉:95500 や:84000
力は拮抗しているが……拮抗しているだけあって……確実に勝てる保障はない。厄介だ……衣は海底で和了るのが好きなのに……!)
豊音(天江さん……これで得意の十七巡目リーチは封じた……よね? ま、意地でもう一回くらいはやってくるかもしれないし、そもそも先勝はリーチをかけてもらえないと発動しないから、ダマで海底狙いをされたらそれまでなんだけど。
まあ……ダマの海底なら、リーチも一発も裏も消える。県予選の天江さんの牌譜を見たけど……たまに海底でしか和了できないような無茶な形を作るときもあった。
でも……ダマの海底のみなんてさほど脅威にならない。その辺りまで牽制できたのは大きいかな……)
他方、魔人と魔物の駆け引きが繰り広げられる中で、やや置いていかれ気味の優希は――、
優希(東場が……東場が終わっちゃうじょ!! 私が東場で焼き鳥断ラスなんて……あのオカルトノッポと風越のタコさんウィンナーにやられたときを思い出すじぇ。
ううう……困ったじょ。どうすればいいんだじょー……)
優希、打つ手無しッ!!
タ:99600 衣:120900 姉:95500 や:84000
東四局・親:小走
優希(配牌は決して悪くないんだじぇ……ドラは毎回一、二枚は入ってるし……染め手か平和を狙いやすい形になってる……けど……)タンッ
優希(それもこれも……龍門渕のお子様の手の平の上……東一局のあれは半分くらいマグレだったじょ。このままじゃまたイーシャンテン止まりだじぇ……何か……少しでも……前へ……!)タンッ
優希(ぬ……これでイーシャンテン。混一中ドラ三……いつもなら手広く待ってテンパイ即リーだじょ。それとも……部長みたいに悪待ちでもしてみるか……? 咲ちゃんみたいに大明槓とか……?
なんて……無理無理だじぇ。私には……のどちゃんみたいな頭もないし……染谷先輩みたいな眼鏡もないじょ。どうせ槓材だって寄ってこないし、悪待ちしたって裏目るだけだじぇ……!)
優希(いつか……もっともっといっぱい練習して……もっともっとたくさん強い相手と戦って……三年生になる頃には……もうちょっと器用に打てるようになってるのかもしれない……!
でも……今の私には……これが精一杯だじょ……!!)タンッ
優希、それが衣の支配下にあるとわかっていても、頑なに真っ直ぐ進むッ!!
優希(東場で自分を曲げたくはないじょ……!! そうやって……いつも部長や染谷先輩や……咲ちゃんやのどちゃん相手に食らいついてきたんだじぇ……!!
これくらいのピンチは……もう慣れっこなんだじょ!!)タンッ
それは、決して思考放棄でも、自暴自棄でもないッ!
優希はただ、どこまでも自分を信じて、全力で、真っ直ぐに和了りを目指す!!
果たして、場が動いたのは……十三巡目ッ!!!
優希(配牌は決して悪くないんだじぇ……ドラは毎回一、二枚は入ってるし……染め手か平和を狙いやすい形になってる……けど……)タンッ
優希(それもこれも……龍門渕のお子様の手の平の上……東一局のあれは半分くらいマグレだったじょ。このままじゃまたイーシャンテン止まりだじぇ……何か……少しでも……前へ……!)タンッ
優希(ぬ……これでイーシャンテン。混一中ドラ三……いつもなら手広く待ってテンパイ即リーだじょ。それとも……部長みたいに悪待ちでもしてみるか……? 咲ちゃんみたいに大明槓とか……?
なんて……無理無理だじぇ。私には……のどちゃんみたいな頭もないし……染谷先輩みたいな眼鏡もないじょ。どうせ槓材だって寄ってこないし、悪待ちしたって裏目るだけだじぇ……!)
優希(いつか……もっともっといっぱい練習して……もっともっとたくさん強い相手と戦って……三年生になる頃には……もうちょっと器用に打てるようになってるのかもしれない……!
でも……今の私には……これが精一杯だじょ……!!)タンッ
優希、それが衣の支配下にあるとわかっていても、頑なに真っ直ぐ進むッ!!
優希(東場で自分を曲げたくはないじょ……!! そうやって……いつも部長や染谷先輩や……咲ちゃんやのどちゃん相手に食らいついてきたんだじぇ……!!
これくらいのピンチは……もう慣れっこなんだじょ!!)タンッ
それは、決して思考放棄でも、自暴自棄でもないッ!
優希はただ、どこまでも自分を信じて、全力で、真っ直ぐに和了りを目指す!!
果たして、場が動いたのは……十三巡目ッ!!!
小走「……」タンッ
優希「チーだじぇ!!」タンッ
優希、混一中ドラ三……テンパイ!!
優希手牌:7899西西西中中中/(5)34:ドラ西
優希(できれば門前で進めたかったけど……贅沢は言ってられないじょ。とにかくこれで張ったじぇ!! 全員覚悟するがいいじょ!! 東場の主役は絶対に譲らないじょ!!)
豊音(うわー……張ったのかな? この状態でよく張れるな……さすがシロと張り合うだけのことはあるねー……)タンッ
衣(清澄のテンパイ……12000といったところか。テンパイに持っていけるだけで十分なこの場において……リーチに頼らずハネ満手を仕上げてくるとは……全国大会を経て一段と力が磨かれている……)タンッ
小走「……」タンッ
衣「(だが……それでもまだ衣には及ばない……!!)ポンッ!!」タンッ
優希(うっ……龍門渕のお子様が海底とは無関係に鳴いてきたじょ……これは……下手に打つと刺されるパターンだじぇ……)
衣の鳴きを受けた次巡、優希が引いてきたのは……一索ッ!!
優希「チーだじぇ!!」タンッ
優希、混一中ドラ三……テンパイ!!
優希手牌:7899西西西中中中/(5)34:ドラ西
優希(できれば門前で進めたかったけど……贅沢は言ってられないじょ。とにかくこれで張ったじぇ!! 全員覚悟するがいいじょ!! 東場の主役は絶対に譲らないじょ!!)
豊音(うわー……張ったのかな? この状態でよく張れるな……さすがシロと張り合うだけのことはあるねー……)タンッ
衣(清澄のテンパイ……12000といったところか。テンパイに持っていけるだけで十分なこの場において……リーチに頼らずハネ満手を仕上げてくるとは……全国大会を経て一段と力が磨かれている……)タンッ
小走「……」タンッ
衣「(だが……それでもまだ衣には及ばない……!!)ポンッ!!」タンッ
優希(うっ……龍門渕のお子様が海底とは無関係に鳴いてきたじょ……これは……下手に打つと刺されるパターンだじぇ……)
衣の鳴きを受けた次巡、優希が引いてきたのは……一索ッ!!
優希手牌:7899西西西中中中/(5)34:ツモ1:ドラ西
優希(これはまた……ビミョーなところを引いたじぇ。いつもなら何も考えずに捨てるところだけど……これを抱えても同打点のままでテンパイを維持できる。
龍門渕のお子様が鳴いた直後に引いた牌……いかにも当たりっぽい……一応抱えておくってのもアリな気がするじぇ。でも、抱えたら抱えたで、こっちの待ちが狭くなる。
どっちが正解か……んー……考えてもわからんじょ!!!)
優希、思い悩んだ末、ツモ牌を抱えることを選択ッ!!
しかし、全ては、魔物の手の平の上ッ!!
二つの分かれ道――その先にあるのはどちらも……死ッ!!
衣「ロン。対々北……5200ッ!!」パララッ
衣手牌:①①①⑤⑤⑤1199/北北(北):ロン9:ドラ西
優希(じょーー!!? 悪魔のシャンポン待ち……!!? どっち切っても不正解だったじょ……!!!)
優希、思わず天を仰ぐ。
優希(うう……散々な東場だったじょ……。龍門渕のお子様と……宮守の超ノッポ……咲ちゃんは本当にこんなの相手によく勝ってきたじぇ……本当に……すごいと思うじょ……)
優希、悔しさが込み上げる……!
しかし、涙は見せないッ!!
優希(これはまた……ビミョーなところを引いたじぇ。いつもなら何も考えずに捨てるところだけど……これを抱えても同打点のままでテンパイを維持できる。
龍門渕のお子様が鳴いた直後に引いた牌……いかにも当たりっぽい……一応抱えておくってのもアリな気がするじぇ。でも、抱えたら抱えたで、こっちの待ちが狭くなる。
どっちが正解か……んー……考えてもわからんじょ!!!)
優希、思い悩んだ末、ツモ牌を抱えることを選択ッ!!
しかし、全ては、魔物の手の平の上ッ!!
二つの分かれ道――その先にあるのはどちらも……死ッ!!
衣「ロン。対々北……5200ッ!!」パララッ
衣手牌:①①①⑤⑤⑤1199/北北(北):ロン9:ドラ西
優希(じょーー!!? 悪魔のシャンポン待ち……!!? どっち切っても不正解だったじょ……!!!)
優希、思わず天を仰ぐ。
優希(うう……散々な東場だったじょ……。龍門渕のお子様と……宮守の超ノッポ……咲ちゃんは本当にこんなの相手によく勝ってきたじぇ……本当に……すごいと思うじょ……)
優希、悔しさが込み上げる……!
しかし、涙は見せないッ!!
優希(今回は完敗だじぇ。でも、いいんだじぇ……目標は高いほうが燃えるんだじょ。まだまだ……今は届かなくたって……これから追いつけばいいんだじょ!!)
優希、静かに席を立って、場の面子に一礼する。
優希「私はこれで失礼するじょ。色々と……勉強になったじぇ。けど……!! 私に勝ったくらいでいい気になるのは早いんだじょ! 私のあとには数絵がいる! のどちゃんも咲ちゃんもいるんだじぇ! 勝負はまだ終わってないんだじょ!」
優希の強気な言葉に、衣が座ったままで返す。
衣「無論、そのつもりだ。最後まで手抜かりなく勝たせてもらう」
優希「ふふん、せいぜい束の間のトップを楽しんでるといいじょ!」
優希、そのまま踵を返して、対局室を去っていく。
唯一手合わせの経験がある衣、やけに堂々とした優希の後ろ姿を見て、後輩の成長を喜ぶ先輩のように、抑えがちに笑む。
衣(清澄の……力は伸びている……少しは知恵も回るようになった……しかし、それでもまだまだ甘過ぎる。もっと腕を磨いて出直してくるがいい……! 衣はいつでも受けて立つぞ!!)
タ:94400 衣:126100 姉:95500 や:84000
優希、静かに席を立って、場の面子に一礼する。
優希「私はこれで失礼するじょ。色々と……勉強になったじぇ。けど……!! 私に勝ったくらいでいい気になるのは早いんだじょ! 私のあとには数絵がいる! のどちゃんも咲ちゃんもいるんだじぇ! 勝負はまだ終わってないんだじょ!」
優希の強気な言葉に、衣が座ったままで返す。
衣「無論、そのつもりだ。最後まで手抜かりなく勝たせてもらう」
優希「ふふん、せいぜい束の間のトップを楽しんでるといいじょ!」
優希、そのまま踵を返して、対局室を去っていく。
唯一手合わせの経験がある衣、やけに堂々とした優希の後ろ姿を見て、後輩の成長を喜ぶ先輩のように、抑えがちに笑む。
衣(清澄の……力は伸びている……少しは知恵も回るようになった……しかし、それでもまだまだ甘過ぎる。もっと腕を磨いて出直してくるがいい……! 衣はいつでも受けて立つぞ!!)
タ:94400 衣:126100 姉:95500 や:84000
片岡優希、先鋒戦後半、衣の支配下にありながら二度大物手をテンパイするも、和了れず。
結果、自らが前半戦に作った貯金を吐き出す、マイナス16800の大失点。
しかし、その表情に、絶望の色はない。
清澄高校一年・自称切り込み隊長・片岡優希。
価値ある敗北を手に、戦線離脱ッ!!
結果、自らが前半戦に作った貯金を吐き出す、マイナス16800の大失点。
しかし、その表情に、絶望の色はない。
清澄高校一年・自称切り込み隊長・片岡優希。
価値ある敗北を手に、戦線離脱ッ!!
@会場某所
南浦、モニターで東場が終えたのを確認し、対局室へ。
途中、南浦を迎えに来た優希と鉢合わせる。
数絵「お疲れ、優希」
優希「数絵……ごめんだじょ。負けちったじぇ」
数絵「……その割りに、ヘラヘラと締まりのない顔をしているな。悔しくはないのか?」
優希「そりゃ悔しいじょ。東南戦ならともかく、東風戦で負けるなんて……プライドズッタズタだじぇ」
数絵「なら……どうしてそんな風に笑っていられる? どうして……前を向いていられる……?」
優希「そりゃ、みんなを信じてるからだじぇ!」
南浦、怪訝そうに目を細める。
優希「前までの私なら……今頃大泣きしてたと思うじょ。県大会の決勝も、前半に出てきた手抜き眉毛と戦ったときも……私は負けて……控え室で泣いたじょ。
部長は、原点で帰ってきただけ十分って言ってくれたけど……私はもっとチームの役に立ちたかったし……練習に付き合ってくれたみんなの期待に応えたかったじょ。
なのに……私は試合でいっつも勝てなかったんだじょ」
数絵「それで……今度は開き直ったというのか?」
優希、南浦の棘のある言い方に、笑顔で首を振る。
南浦、モニターで東場が終えたのを確認し、対局室へ。
途中、南浦を迎えに来た優希と鉢合わせる。
数絵「お疲れ、優希」
優希「数絵……ごめんだじょ。負けちったじぇ」
数絵「……その割りに、ヘラヘラと締まりのない顔をしているな。悔しくはないのか?」
優希「そりゃ悔しいじょ。東南戦ならともかく、東風戦で負けるなんて……プライドズッタズタだじぇ」
数絵「なら……どうしてそんな風に笑っていられる? どうして……前を向いていられる……?」
優希「そりゃ、みんなを信じてるからだじぇ!」
南浦、怪訝そうに目を細める。
優希「前までの私なら……今頃大泣きしてたと思うじょ。県大会の決勝も、前半に出てきた手抜き眉毛と戦ったときも……私は負けて……控え室で泣いたじょ。
部長は、原点で帰ってきただけ十分って言ってくれたけど……私はもっとチームの役に立ちたかったし……練習に付き合ってくれたみんなの期待に応えたかったじょ。
なのに……私は試合でいっつも勝てなかったんだじょ」
数絵「それで……今度は開き直ったというのか?」
優希、南浦の棘のある言い方に、笑顔で首を振る。
類似してるかもしれないスレッド
- 咲「え? どの学年が一番強いかって??」 (474) - [94%] - 2013/1/12 14:30 ★
- 和「え? どの学年が一番強いかですか?」 (530) - [89%] - 2013/1/11 17:15 ★★
- 咲「まさかこれが最終試験ですか?」 (266) - [50%] - 2013/6/6 14:45 ☆
- 塞「えっ、シロ大樹になっちゃったの?」 (179) - [47%] - 2014/1/26 0:00 ☆
- 男「幼馴染、世の中で一番大切なのは?」 (223) - [47%] - 2012/1/26 21:30 ★★
- 姉「え?弟君ってど、童貞なんですか?」 (126) - [47%] - 2011/12/3 7:45 ☆
- 咲「え!?キスじゃ子供はできないの!?」 (306) - [47%] - 2013/7/18 23:45 ☆
トップメニューへ / →のくす牧場書庫について