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    元スレ里志「昨日部室で何が起こったのか」 摩耶花「気になるわね」

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    1 :

    スレ立て代行です ID:A0NhMMmI0

    2 :

    >>1
    代行ありがとうございます

    3 = 2 :

    放課後。古典部の部室には、わたし一人でした。

    わたしは、花瓶に花を活けていました。

    昨日、部室を整理していると、可愛らしい花瓶が出てきたので、ちょっと思い立ったのです。

    花は、今朝家から持ってきたものです。これで部室も華やぐでしょう。

    える「フ~ンフフ~ン♪ フフフフフ~ンフフ~ン♪ フフ~ン♪」

    気付けば、鼻歌まで口ずさんでいました。

    なにしろ今日のわたしは、ご機嫌なんです。

    だって昨日は……、昨日は……。

    いけませんいけません! 自分でも、顔がだらしなくにやけているのがわかります。

    こんなところ、とても他人様にはお見せ出来ません。

    でも……、でも……。

    ……今日は一日、これを抑えるので精一杯でした。

    4 = 2 :

    える「はぁっ」

    花が形になったので一息吐き、窓の方へ向かいます。

    窓を開けると、爽やかな春の風が舞い込んできました。

    あまりの心地よさに、しばらく身を任せていると、突然部室のドアが開きました。

    摩耶花「おーす、ちーちゃん。元気~?」

    える「あ、摩耶花さん。こんにちは。はい、元気ですよ」

    そして机の上の花に気付くと、言いました。

    摩耶花「わぁ~、綺麗。ねぇねぇ、どうしたの?」

    える「はい、昨日部室の整理をしていたら、この花瓶が出てきたんです。
      それで、花でも飾ろうかってことになったんです」

    摩耶花「そっかそっか。うんうん、やっぱこういうのがあると、部室も華やぐってものよね」

    5 = 2 :

    摩耶花さんは椅子に腰掛け、足をぶらぶらさせながら、しばらく花に見蕩れているようでした。

    やがて、指先で花びらを突付きながら、いたずらっぽく笑ってこう言いました。

    摩耶花「ま、いくら綺麗な花を飾っても、あの朴念仁には猫に小判よね」

    朴念仁。言うまでもなく、折木さんのことです。

    摩耶花さんや福部さんは、時折こうして折木さんのことを、悪し様に言うのです。

    える「ふふっ。いいえ、摩耶花さん。最初に花を飾ろうって言い出したのは、折木さんなんですよ」

    摩耶花「ええ~~~っ!? あの折木が!? あ、あり得ないわまさかそんな……。
       ねぇ、冗談なんでしょ? 冗談って言ってよちーちゃん!」

    摩耶花さん、いくらなんでもうろたえ過ぎです。

    摩耶花「! まさかこの花も折木が!?」

    える「いえ、それは今朝、わたしが……」

    摩耶花「そ、そうよね。流石にそれは冗談が過ぎるってもんだわ……」

    6 = 2 :

    摩耶花「にしても、折木がねえ……。やっぱり信じらんない」

    流石は摩耶花さん。もう落ち着きを取り戻した様子で、続けます。

    摩耶花「これは天変地異の前触れに違いないわっ!」

    える「そんな……、大げさですよ。花瓶を見たら、花を活けようと思うのは、ある種当然の成り行きです」

    摩耶花「そりゃそうなんだけど……。な~んか、腑に落ちないのよねえ」

    そこで会話は途切れ、しばしの沈黙が訪れました。

    沈黙を破ったのは、摩耶花さんでした。

    摩耶花「ねえ、ちーちゃん」

    える「はい」

    摩耶花「昨日さ、何かあった? ……その、折木の奴と」

    今度はわたしが驚く番でした。

    7 = 2 :

    える「えぇっ!? どどどど、どうしてですかっ!?」

    声が裏返ってしまいました。

    でもでも、摩耶花さんが来てからは、ニヤニヤしたりしてませんでしたし、気取られるようなことはしてないはずですっ!

    そういえば以前、折木さんに言われたことがあります。

    『お前は、思ってることがすぐ態度に出やすい』

    昨日のことも、全部わたしの顔に書いてあったりしたんでしょうか?

    摩耶花「やっぱり。て言うか落ち着いて! ちーちゃん」

    摩耶花さんは、慌てふためくわたしを、必死になだめようとしてくれます。

    そうです。とにかく落ち着かないと。

    こういうときは、深呼吸です。

    すぅーーー、はぁーーー、すぅーーー、はぁーーー、すぅーーー、はぁーーー。

    摩耶花「どう? 落ち着いた?」

    はい、何とか。

    それでも、その言葉は声にはなりませんでした。

    8 = 2 :

    える「……あの、摩耶花さん」

    摩耶花「ん?」

    える「どうして……、わかったんですか? わたし、そんなにわかりやすい性格してるでしょうか……」

    摩耶花さんはニヤリと笑うと、うーん、と唸って天井を見上げました。

    摩耶花「……何となく、ね」

    える「え?」

    摩耶花「ほんとに何となくなんだけどね。今日のちーちゃん、折木のことを話すとき、何だか熱の篭ったしゃべり方だったから」

    える「……」

    摩耶花「あとは、折木が『花を飾ろう』って言ったってのも、ポイントかな?
       わたしには、折木が花瓶を見ただけで、『花を飾ろう』なんて言う奴には思えないんだ。
       ここは折木の奴にも、何らかの心境の変化があったと見たわけね。
       例えばだけど、照れ隠しに言った、とかいうなら、わからなくはないから」

    ……そう、そうです。確かに昨日、折木さんが花を飾ろうと言ったのは、その……、事後、でした。

    流石は摩耶花さんです。よく人を見ています。

    9 :

    千反田さん目線のSSは珍しい
    支援

    10 = 2 :

    摩耶花「で? で? 何があったの? まさか折木の奴に告白されたとか!?
       ……いやそれはないか。あの省エネ主義者が進んで色恋沙汰に精を出すわけないもんね。
       え? 何? じゃあちーちゃんの方から迫ったの!? きゃーーー!!」

    あの……。

    摩耶花「……あ。ゴ、ゴメンね。何か白熱しちゃって。ちーちゃんが言いたくないなら、言わなくていいのよ。
       無理には、訊かない」

    そう言って摩耶花さんは、バツが悪そうに笑います。

    わたしは、昨日のことを、摩耶花さんに話そうと思いました。

    昨日、折木さんとしてから、わたしの胸の中に、かすかな“痛み”が同居を始めました。

    嬉しくて、幸せで仕方ないのに、痛いんです。

    放っておけば、忘れてしまいそうなくらい、小さなものでしたが、わたしはそれが、気になりました。

    摩耶花さんに話すことで、少しは和らぐかもしれない。そんな期待がありました。

    それに、摩耶花さんは自分の好奇心より、わたしの気持ちを優先してくれました。

    『この人に話したいな』そう思わせてくれたんです。

    11 :

    部室で何やっとんじゃ

    12 = 2 :

    わたしと摩耶花さんは、並んで椅子に腰掛けました。

    える「昨日の放課後は、部室にはわたしと折木さんの二人だけでした。
      わたしが来たときは、既に折木さんがいて、いつも通り折木さんは、椅子に座って本を読んでいました」

    摩耶花「いつもの光景ね」

    える「はい。それでわたしが、たまには部室の整理をしようと言い出したんです。
      折木さんは、最初は嫌がっていましたが、最終的には渋々ながらも、手伝ってくれたんです」

    摩耶花「あいつもものぐさだからねー。ま、腰を上げただけでも上出来ね」

    える「そのときに、この花瓶も出てきたんですよ。折木さんが見付けたんです。
      そして整理整頓が終わって……。実は恥ずかしながら、そのあと何を話したのか、詳しくは覚えていないんです。
      他愛のない、とりとめのない話をしました」

    摩耶花「ふふっ。わかる。ちーちゃんたち、いつもそんな感じだもん」

    える「そ、そうでしょうか。それで例によって、何か気になることがあったんでしょうね。
      わたしが折木さんに、詰め寄ったんです。顔をこう、近づけて……。
      最初折木さんは、文庫本に目を落としたまま、気のない返事をするばかりでした。
      でもやがて、わたしのしつこさに観念した様子で、やっとこちらを向いてくれたんです」

    摩耶花さんは何がおかしいのか、笑いを噛み殺した様子で、わたしの話を聴いています。

    13 = 2 :

    える「そこからです。何だかいつもと調子が違ったのは。
      そうです。折木さん、いつもはわたしの方を見ても、チラチラと視線を外すことが多いんですが、そのときは……」

    摩耶花「?」

    える「その、真っ直ぐわたしの眼を見つめて、話をしてきました。よっぽど自信があったんでしょうか。
      とにかく、わたしも負けじと、折木さんの眼を見つめ返しました。気迫だけでも、負けてはいけないと思ったんです。
      やがて折木さんの話は終わりましたが、わたしたちは、見つめ合ったままでした。
      いえ、にらみ合っていた、といった方が正しいかもしれません。そうしてしばらく経ちました」

    わたしは、話のラストスパートに向けて、ほうっ、と息を吐きました。

    摩耶花さんも、もう笑うこともなく、真剣に話を聴いてくれています。

    える「だんだん頭がぼうっとしてきました。多分折木さんもそうだったと思います。眼が虚ろでしたから。
      何分くらい、そうしていたでしょうか。5分? 10分?
      もっと長かったような気もしますし、本当はもっと短かったのかも知れません。
      そして、わたし達は……」

    摩耶花「ゴクッ……」

    える「どちらからともなく、顔を寄せ合って、そ、その……。くち、唇と唇を、重ね合わせたんです……」

    14 = 2 :

    こうして改めて思い返すと、顔から火が出そうです。多分今、わたしの顔は真っ赤でしょう。

    える「その後は至って普通でした。そんなことがあったのに、わたしも折木さんも、何事もなかったかのように振舞いました。
      帰り際、折木さんが言いました。そのときの会話だけは、何故だかよく憶えています。
      『なあ、さっき花瓶が出てきただろ。あれに花でも活けたらどうだ?』
      『いいですね。折木さん、どんなお花がいいですか?』
      『千反田に任せる。俺は花に詳しいわけじゃないからな』
      『わかりました。明日早速持ってきます。楽しみにしててくださいね』」

    以上です。小さく言うと、摩耶花さんは。

    摩耶花「そっか」

    同じく小さく呟きました。

    16 :

    ほう

    17 = 2 :



    摩耶花「ちーちゃんは、折木のことが好きなのね」

    える「……」

    ……そう、なんでしょうか。いえ、そうなんでしょうね。

    折木さんとキスをしたことが嬉しくて、舞い上がってしまったわたし。

    もとより客観的に見れば、明らかなことでした。

    摩耶花さんにお話ししたことで、わたしの、折木さんへの気持ちが、はっきりと、形を成していくようです。

    と、同時に、胸の痛みが大きくなっていって……、わたしは……。

    摩耶花「ちーちゃん? 泣いてるの?」

    泣いてません。返事は、嗚咽で言葉になりませんでした。

    える「ふっ、ふえええぇぇっ、うわあああぁん」

    摩耶花さんは、黙って肩を抱いていてくれました。

    18 :

    見てるぞ

    21 = 2 :



    える「おっ、お見苦じいところを、ひくっ、お見せしましたぁ」

    摩耶花「ううん。ほら、涙拭いて」

    そう言って、摩耶花さんは、ハンカチを差し出してくれました。

    ありがとうございます。―――――ちーーーん。

    える「………………、ふぅ」

    泣いたことで、わたしの心は晴れやかでした。いつの間にか、胸の痛みも消えていました。

    える「すみません、摩耶花さん……。ハンカチ、洗ってお返ししますね」

    摩耶花「落ち着いたみたいで、よかった。どう? スッキリしたでしょ」

    える「はい、とても」

    摩耶花さんは、優しい笑顔を向けてきました。わたしも、笑顔で応えました。

    22 = 2 :

    わたしは、折木さんのことが、好きです。

    昨日のことは、わたし、一生忘れないでしょう。そして、今日のことも。

    摩耶花「……さてと、それじゃ、わたしそろそろ」

    える「え、もうお帰りですか?」

    摩耶花「うん。このまま折木が来たら、なんか色々言いたくなっちゃいそうだし。それに……」

    える「?」

    摩耶花「ううん、何でもない。それじゃあね、ちーちゃん!」

    える「さようなら、摩耶花さん」

    そうして摩耶花さんは、元気よく部室を出て行きました。

    ……と思ったら、ヒョイと顔だけ覗かせて。

    摩耶花「……あいつも、ちーちゃんのこと、好きだと思うな。言っとくけど、気休めじゃないから。じゃ、頑張ってね」

    わたしは、自分の頬が染まるのがわかりました。

    23 = 2 :

    その日の放課後、俺は図書室にいた。

    といっても、特に用があったわけではない。何となく、古典部には足が向かなかったのだ。

    ……いや、何となくではないな。俺は自嘲気味に笑う。

    決まっている。原因は昨日の千反田とのことだ。

    バカなことをした、とは思わないが、何であんなことをしたのか、とは思う。

    俺は百科事典のページを繰った。

    ……昨日。俺は、二人きりの部室で、千反田とキスをした。

    千反田が迫ってきたわけではない。かといって、俺から求めたわけでもない。

    何故だかそんな雰囲気になったので、どちらからともなく、というのが正しい。

    昨日の、その後の様子から察するに、千反田は別に怒ったり、悲しんだりはしていないだろう。

    というか、いつも通りだった。まったくいつもと変わることなく、俺と接していたのだ。

    そのことが、今になって、俺の心をざわつかせている。

    24 = 2 :

    いや、でもそれは、俺の望むところではないのか?

    今どき、キスひとつで、惚れた腫れたでもあるまい。

    何より俺は、自分の信条として、省エネ主義を掲げている。その心は。

    『やらなくてもいいことなら、やらない。やらなければいけないことなら手短に』

    キスしたからといって、何か変わらなきゃいけないことも、しなけりゃならないことも、ないのだ。

    それは千反田だって同じだ。千反田は俺のように、省エネ主義を信奉しているわけではない。

    だが、世間一般的に言っても、それは同じことだろう。

    人は、変わりたければ変えようとするものだし、きっかけがあれば、変わっていくものだろう。

    同じように、きっかけがあっても変わらないことも、いくらでもあるのだ。

    千反田の態度は、そのことを雄弁に物語っている。

    26 = 2 :

    俺はまた笑った。

    俺は変わりたいのか? 何かを変えたかったのだろうか?

    神山高校に入学して、俺は古典部に入り、千反田と出会った。

    それ以来、いくつかの事件に遭遇し、自分で言うのもなんだが、俺はそれらの事件の解決に、主導的な役割を果たした。

    それらは、まったく、やらなくてもいいことに違いなかった。

    結果だけ見れば、俺は自分の主義に、大いに反し続けている。

    だが事件の陰には、いつも千反田がいた。

    不思議なことだが、千反田がいたから、もっと言えば、千反田の為に俺は事件に挑み続けたのだろうか。

    27 = 2 :

    顔を上げ、息を吐くと、里志と目が合った。

    奴は、頭を掻き、ニコニコ笑みを浮かべて、近づいてくる。

    こいつ、さては今まで、俺を観察していたな?

    里志「やあ、ホータロー。辞典を眺めながら、独りでニヤニヤするのは、いい趣味とは言えないね」

    奉太郎「やっぱり見ていたのか……。お前こそ、趣味が悪いな」

    里志「ゴメンゴメン。悪いとは思ったんだけどね、面白かったんで、つい、ね」

    まったく、見世物じゃないぞ、と呟きながら、ふと、さっき思ったことを訊いてみる気になった。

    奉太郎「なあ、里志。お前はこの一年で、俺が何か変わったと思うか?」

    里志は、一瞬きょとんとしたが、すぐに元の顔に戻って言った。

    里志「う~ん、正直ね、この一年で、ホータローに意外と思わされたことは何度かあったよ。
      でもホータローはやっぱりホータローだよ。基本的には変わってないね」

    奉太郎「そうか……」

    29 = 2 :

    里志「何だい? 千反田さんと何かあったのかい?」

    ぐっ、鋭い奴め。

    奉太郎「いや、何かってわけじゃない……」

    あいまいな返事をする。

    奉太郎「お前はこれから古典部に?」

    里志「いや、今日は別の用事があるんだ。と言っても、急ぎじゃないから、親友の生態観察に勤しんでいたわけさ」

    奉太郎「お前は、伊原の観察でもしてろよ」

    里志「ハハハ、それは勘弁。そう言うホータローこそ、部活には行かないのかい。
      外はこんなに晴れてるのに、帰りもせず、部活にも行かないなんて、ホータローらしくないじゃないか」

    奉太郎「たまには、蓄えられた知を取り込む行為も、悪くないと思ってな」

    里志「そうかい。ま、したいことをするのが、一番いいよ。
      それじゃ、僕はそろそろ行こうかな……」

    見送ろうと、手を上げようとすると、思い出したように里志が言った。

    30 = 2 :

    里志「そう言えば登校するとき、千反田さんを見かけたんだけど、手に花束を持っていたな。
      あれ、どうしたんだろう」

    ああ、それはな、と言いかけたところで言葉を飲み込む。

    本当に持ってきたのか。確かに、今日持ってくると言っていたが……。

    いや、千反田はちょっとしたことでも、いい加減なことを言う奴ではない。

    今日持ってくると言ったら、最初からそのつもりだったのだろう。

    里志は、そんな俺の様子を見ていたが、やがて言った。

    里志「じゃ、行こうかな。ホータロー、考え事もいいけど、たまには自分の思う様生きてみるのもいいんじゃないかな。
      それじゃあね!」

    奉太郎「ああ、じゃあな」

    どうやらお見通しだったようだ。俺も、人のことは言えないかも知れないな。

    31 = 2 :

    奉太郎「さて、どうするか……」

    とは言ったが、答えはもう、決まっているようなものだった。

    古典部に行こう。

    ……もう少し、自分の考えをまとめてから。

    里志はさっき、『自分のやりたいことをやれ』というような意味のことを、言った。

    やりたいこと。

    俺の生活信条には、登場しない言葉だ。

    しかしだからといって、俺は全ての事柄を、やらなくていいことか、やらなければいけないことか、で処理してきたわけではない。

    伊原や里志が、よく俺のことを、『何の趣味も目的もない、つまらない男』のように言うことがあるが、それは全面的には正しくない。

    ちなみに里志の場合は、半分冗談だが、伊原は本気で言っているかも知れない。

    だが俺とて、人生に何の楽しみも感じていないかといえば、そうではない。

    32 = 2 :

    趣味は強いて言えば、読書がそうだと言えるだろう。

    テレビや映画は観るし、音楽だって聴く。

    それに学校で、部活動にも入っている。

    美味いものを食べれば、美味いなと思うし、四季の移り変わりや、風景に趣を見出したりもする。

    この一年で関わった事件だって、千反田のせいにするのは簡単だが、最終的には俺がそうしようと思ったから、関わったのだ。

    昨日のことだってそうだ。多少雰囲気に流された感はあるが、俺は千反田と、キスがしたいと思ったから、した。

    そう。やりたいことだったから、やったのだ。

    そして今、俺は千反田に会いたいと思っている。千反田は、まず部室にいるだろう。ならば俺も、部室に行けばよい。

    しかしそこで、俺の心は再びざわついた。

    その正体に、俺はもう気付いていた。

    33 = 2 :

    俺が、いくら千反田とキスをしたいからといって、いくら会いたいからといって、千反田にその気があるとは限らない。

    昨日は偶然そうなっただけだ。現に昨日の、その後の千反田の態度は、芳しいものではなかった。

    あれは、俺と気まずくなるのを避けていたのだろうと思える。

    俺はみたび笑った。

    ここまで来ると、もう認めざるを得ないだろう。

    俺は、千反田えるのことが、異性として気になっているようだ。好きと言っても、いいかも知れない。

    だから千反田に、そのことで拒絶されるのが、怖かったのだ。

    けど、別にそれでいいじゃないか。

    千反田が、俺のことをどう思っていようと、俺が千反田に会いたいと思うことには、何の関係もない。

    もちろん、千反田の意思を無視してまで、自分を押し通すことはしないが。

    千反田は、いつものように、接してくれるだろう。

    35 = 2 :

    俺は百科事典を、元の棚に戻してくると、カバンを肩に掛けた。

    確かに、千反田が俺の気持ちを受け入れてくれるなら、それはどんなにか嬉しいことだろう。

    しかしそのためには、兎にも角にも、千反田に会わなければ始まらない。

    幸い俺は、千反田に会いたいと思っている。ならばもう、迷うことは何もない。

    自分のしたいことを、するだけだ。

    そうして俺は、この後千反田に会ったときの会話を、頭の中でシミュレートするのだった。

    36 = 16 :

    コミュ障かよ

    37 = 2 :

    お終いです

    支援してくれた方々、ありがとうございました
    最後まで貼れてよかった

    38 = 9 :

    終わりかい

    39 = 16 :

    えっ
    もう終わりかよしかも貼るの速いし


    てかこの時間のSSはひどいなあ

    40 :

    おい












    おい

    41 = 2 :

    すいませんこんな時間になってしまいまして

    いつの時間帯が良かったですかね

    42 :

    は?(威圧)

    最後まで書けよホラホラホラホラ

    43 = 2 :

    ガラガラ

    部室のドアを開けると、千反田はそこにいた。

    少しホッとする。

    だが千反田は、俺がドアを開けると同時に、顔を背けて窓辺の方に行ってしまった

    44 = 16 :

    えるたそ・・・・・

    45 = 9 :

    きた

    47 = 2 :

    なんだろう? と、少しいぶかしげに思うが、俺の目はそこで机の上の花瓶と、それに活けられた花に向く。

    奉太郎「へえ、いいじゃないか」

    える「えっ?」

    奉太郎「花、飾ったんだな」

    える「あ、ああ、そうですね。ありがとうございます」

    48 = 40 :

    最後まで頼んだぞ

    49 = 16 :

    えるたそ絶対これ真顔だろ

    50 = 2 :

    千反田は、顔を窓の外に向けたまま、答えた。

    なんだ? やっぱり様子がおかしい。

    ……昨日のことを、気にしてるのか?

    奉太郎「なあ、千反田」

    える「はい」


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