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元スレ照「私に妹はいない」

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1 :

「リンシャンカイホー?」

「麻雀の役の名前だよ」

「『山の上で花が咲く』って意味なんだ」

「咲く?」

「おんなじだ!!私の名前と!!」

「そうだね、咲」

「森林限界を超えた高い山の上」

「そこに花が咲くこともある」


おまえもその花のように――

強く――

2 :

はい

3 = 1 :

宮永母「忘れ物はないわね?」

「さっきから大丈夫だっていってるじゃん」

「そんな子供扱いしないで」

「あんたなんてまだまだ子供よ」

「…それに」

「あんたがいくつになったって私の子供であることに変わりないんだから」

「そういうこと言ってるんじゃないでしょ」

「大人ぶっちゃって」

「……ふん」

「ちゃんとさよならはしたの?」

「したってば」

「お父さんったらほんとにめそめそして泣きそうになっちゃってるんだもん」

「私なんかよりよっぽど子供みたい」

4 = 1 :

「そういうこと言ってあげないの」

「子供と別れるのが親にとってどれだけ辛いことか」

「私だってあの子を置いていくのが……」

「……」

「本当にいいの?」

「あの子、あんなに泣いてあんたと話したがってたわよ」

「……いいの」

「私にはもうあいつのことが理解らない」

「……そう」

(……)

(……咲)

5 = 1 :

~1年前、春~


「咲も中学生になったことだし」

「これからはお金を賭けて打ちましょうか?」

「おいおい」

「たかが家族麻雀でお金を賭けることなんてないじゃないか?」

「だめだめ!」

「負けたときに何か代償がないと真剣になれないじゃない」

「別に振り込んでもいいやなんて癖がついちゃうと高校生やプロになったときに困るわよ」

「気の早い奴だなぁ…」

「私は構わない」

「むしろその方が燃える」

6 :

ふむ

7 = 1 :

「うぅ…私もお金賭けるのは嫌だな」

「そもそも私お金なんて持ってないよ…」

「あの変なペンギンの貯金箱にお年玉とか貯めてたでしょ?」

「そんな心配しなくても安いレートにするからさ」

「負けられないっていう気持ちが大事なのよ気持ちが」

「おまえは言い出したら聞かないからなぁ…」

「分かってるじゃない」

「ルールは今まで通り25000点持ちの30000点返しのウマはなし」

「レートはそうねぇ…最初だし※点1でいいでしょ」 (※1000点=10円)

「そうと決まればさっそく始めるわよ」

8 = 1 :

ジャラジャラ

ジャラジャラ


「ツモ!」

「私のトップで終了ね」

母:+27 咲:+3 照:-8 父:-22

「ふぅ」

「かぁ~」

「相変わらず強いな」

「そもそも元プロ雀士のおまえに俺やこいつらが勝てるわけないだろ」

9 = 1 :

「あら?そんなことないわよ」

「あなたはどうせ無理でしょうけど照も咲もすっごく才能あるもの」

「いつ追い越されるか分からないわ」

「……俺にはどうせ無理かよ」

「お父さんとお母さんは東京で出会ったんだよね」

「そうよ」

「私は東京でプロとして活動していて、お父さんは小さい出版社で麻雀雑誌の記者をしていた」

「小さいは余計だ」

「ある大会前のインタビューで知り合ってすぐに意気投合しちゃってね」

「お父さんったら弱いくせに麻雀のこと大好きなんだもん」

「いいんだよ俺は楽しく打てりゃそれで」

10 :

せやったんか

11 :

金かけて麻雀とかどんだけクズ親だよ

12 :

咲は弟だったまで呼んだ

13 = 1 :

「どうして今はここに住んでるの?」

「お父さんが結婚したら空気のおいしい所でゆっくり暮らしたいって言い出してね」

「あの東京の人の多さはいつまでたっても慣れなくてね」

「結婚後もしばらくは東京に居たんだけどね、プロとして東京で活動することに未練もあったし」

「でも」

「あなたが生まれた、照」

「……」

「生まれた照の顔を見てたら思ったの」

「あぁ、これからはこの子の、家族のために生きようって」

「……」フイ

「プロとして元々ぱっとした成績も残せてなかったしここらが潮時かなってね」

「へぇ~」

「なんだかロマンチックだね」

父&母「そうかな」テレテレ

14 = 1 :

「やめてよ恥ずかしい」

「そんな昔話する暇あったら寝る前にもう一半荘打つよ」

「つれないなぁ~」

「おまえ恋愛小説とか大好きじゃないか?」

「…ぅぐ」

「それとこれとは関係ないでしょ」

「それより私はもっと麻雀が強くなりたいの」

「頼もしいこと言ってくれるじゃない」

「ま、次も私が勝たせてもらうけどね」

(あなたの向上心はほんとにすばらしいわ、照)

(そして咲にも照に負けないくらいの才能がある)

(ほんと将来が楽しみだわ、二人とも)

15 = 1 :

「ただいま」

「おかえり!お姉ちゃん」

「お母さんは?」

「今買い物に行ってるよ」

「そう。咲はまた本読んでるの?」

「うん!『ハリーポッター』っていうの」

「知ってるでしょ?今世界中ですっごい売れてるんだよ!」

「聞いたことはある。魔法使いの話だっけ?」

「そうだよ!終わったらお姉ちゃんに貸してあげよっか?」

「いいや。あんまりファンタジーは好きじゃないもの」

「えぇ~面白いのに」

16 :

久々にまともなてるてるが見れるのか?

17 = 1 :

「お姉ちゃんが好きな恋愛小説の方がよく分かんないよ」

「お子様の咲にはまだ早いかもね」

「何それ!お姉ちゃんだって彼氏もできたこともないくせに」ツン

「なっ…!」

「ク、クラスの男子なんてみんな子供だもん」

「それに、今は麻雀が恋人だからいいの」

「女子中学生がそのセリフは悲し過ぎるよ…お姉ちゃん…」

「うるさい」

「それにさ、ハリーポッターにだってちゃんと恋愛の要素はあるんだよ」

「どうせお子様同士の恋愛ごっこみたいなもんでしょ?」

「違うよ!」

「ずっと暗くて陰湿な奴だと思ってた人が、実は初恋の相手を死んだ後も何年も想い続けてたっていう素敵な話なんだから」

「何それこわい」

18 :

スネープ先生の悪口はやめて

19 :

良SSの予感

21 = 1 :

「それって単なるストーカーじゃ……」

「もお!ほんとにお姉ちゃんは夢がないんだから」

「いや、今の説明でそんなこと言われても……」

「そういえば、もう少ししたら京ちゃんの家に行かなきゃならないから留守番よろしくね」

「!!」

「き、京ちゃんってあの須賀っていう男の子だっけ?」

「そうだよ」

「そ、その、二人っきりで遊ぶ約束でもしているのか?」

「?本を貸しに行くだけだよ。京ちゃんってば全然本とか読まないからさ」

「私のおすすめの本を貸してあげるの」

「そ、そうか……」

22 :

いい流れだ

23 :

先生ェ…

24 = 1 :

(まずい)

(こんなうぶな妹に先を越されては姉としての威厳が…)

「そういえば今日お父さん帰りが早いって言ってたね」

「そうだな」

(男はみんな飢えた魔物だ。油断してたら何があるか分かったもんじゃない)

(私より先にボーイフレンドつくるなんて許さんからな)

「夕食の後は麻雀するだろうし一刻も早く帰ってこいよ」

「う~ん」

「どうした?」

25 = 1 :

「やっぱり私はお金賭けて打つのは嫌だな」

「いいじゃないか。お母さんの次に咲が勝ってるんだし」

「それに、私も咲もだんだんお母さんに勝てるようになってきたじゃないか」

「それはそうだけど……」

「お父さんの心配をしているのか?確かにあのラス率は驚異的だな」

「だが、お父さんはああいう性格だしあのレートならいくら負けても子供が気にするようなことじゃないぞ」

「そうじゃないけど」

「うぅん…何でもないよ」

「?」

26 = 1 :

ジャラジャラ


「ツモ」

「最後は照のトップで終了か」

「強くなったなぁ」

「まぁこれだけ打ってればね」

「トータルでは相変わらずお母さんのトップだけど」

「そう簡単に追い越されるわけにはいかないわよ」

「咲はほぼトントンか」

「最近の咲はずっとこんな調子だな」

「う、うん……」

(……)

27 = 1 :

「レートが安いとはいえこの調子じゃ俺の負け分もあんまり笑ってられんなぁ」

「いいじゃない。あんたたちから巻き上げたお金はおかずを豪華にしたりしてちゃんと還元してるのよ」

「分かってるさ」

「しかし、そんな下手な打ち方してるわけでもないのに何でこんな勝てないかね」

「あなたはセオリー通りに打ってるだけだからね」

「手牌も読みやすいし何よりもっと流れを感じなきゃ」

「さすが元プロは言うことが違うなぁ」

「俺には流れなんて全くもって見えないよ」

「それはあなたに才能にないって証拠よ」

「はは、返す言葉もないよ」

「それじゃ私はシャワー浴びてくるから」

「夜も遅いしあんたたちは早く寝なさいよ」

照&咲「うん」

(流れ……か)

28 = 1 :

~浴室~

ジャー

(……最近の咲)

(明らかに萎縮してあまり勝たないような打ち方をしてる……)

(それは恐らく私のせいね……)

(なんて情けないのかしら)

(必死に殺してるつもりでもどうしても胸がざわつくのを抑えられない)

(プロとして私が積み上げてきた麻雀がまだ高校生にもならない我が子に追い抜かれようとしている)

(……照にはもうすぐ)

(……そして、咲にはもう)

29 = 1 :

「咲」

「何?お母さん」

「最近麻雀打ってるときあまり楽しそうじゃないね?」

「そ、そんなことないよ…麻雀大好きだよ?」

「いいの。子供が親に隠し事したって無駄なんだから」

「……うぅ」

「ごめんね。気なんて遣ったりせずあんたは伸び伸び打てばいいんだから」

「……」

「分かったよ、お母さん」

30 :

家族の関係壊れるくらいなら家族麻雀なんてするなよ

31 = 1 :

「ツモ、嶺上開花」

「……」

「……」

「…い、いやぁ最近の咲はめちゃくちゃ強いなぁ」

「ここ数週間ずっとトップじゃないか」

「そんな、たまたまだよ」


ガシャッ!!


「!!」ビクッ

32 = 1 :

「ご、ごめんごめん。ちょっと疲れてるみたい」

「先に寝かせてもらうわ」

「悪いけど片づけよろしくね」スタスタ

「はぁ…」

(……うぅ)

「……」

33 = 1 :

~寝室~

「……」ボフッ

(何て弱いんだ私は)

(自分で自分が嫌になる)

(咲にあんな言葉掛けといてこんな姿を見せちゃうなんて)

(……誓ったはずなのに)

(照が生まれたとき)

(麻雀への未練を捨てこれからは家族のために生きるって……)

35 :

やっぱすべての諸悪の根源はこの母親だったか

36 = 1 :

(……でも)

(プロとして戦ってきた誇りが)

(麻雀を大好きだって気持ちが)

(あの日の誓いの邪魔をする)

(子供に負けて本気で悔しがるなんて母親失格だ、私)

(私の夢を子供に託すなんてエゴが)

(そもそも最初から間違いだったんだ……)

37 = 1 :

ガチャッ

「落ち着いたかい?」

「うん。本当にごめんなさい」

「ほんとは怒らないといけないところなんだろうけどさ」

「おまえの麻雀に対する気持ちを否定することはできないよ」

「……」

「もう家族で麻雀をするのはやめよう」

「……」

「このまま続けても咲もおまえも苦しいだけだ」

「そうね」

「咲の性格なら、何を言ってもあの子はもう本気で打とうとしないでしょうね」

「ああ」

39 = 1 :

「でも、家族麻雀はやめないわ」

「どうして!?」

「照がいる」

「……」

「あの子は私の意志なんて関係なしに純粋に麻雀が好きで、本気で強くなりたいと願ってる」

「咲や私と打つことは必ずあの子にとって大きな財産になる」

「今あの子から麻雀を遠ざけるなんて、そんな残酷なマネ私にはできないわ」

「じゃあ咲はどうなるんだ」

「咲が将来麻雀を続けるかどうかはもう私から何も言えない」

「でも、いっしょに暮らしてるうちは姉妹仲良く麻雀を打っていてもらいたい」

「いつ離れ離れになるか分からないし」

40 :

めんどくせえ母親だな

41 = 1 :

「どういうことだ?」

「照を東京の高校に進学させようかと思ってるの」

「知ってるでしょ。白糸台高校の監督が私の友達で、照をうちに預けてみないかって誘われてるの」

「そんな話聞いてないぞ!」

「もう少ししたら言うつもりだったわ」

「そのときはあなたを説得して、家族みんなで東京に引っ越すつもりだった」

「……」

「でも、それももう難しそうね」

「叶うなら咲も白糸台へ行って二人手を繋いで麻雀を続けてほしかったけど」

「今の咲はきっとそんなこと望まない」

「東京の激しい競争の中で好きでもない麻雀を続けるより」

「長野で穏やかに暮らしたいとあの子は思うでしょうね」

42 = 1 :

「照には進学のこともう話したのか?」

「まだよ」

「でも照はこの話を聞いたら東京に行きたいって言うんじゃないかな」

「咲はあなたに似て、照は私に似てるもの」

「……そうだな」

「とにかく」

「さすがに私も吹っ切れたわ」

「もう子供たちに自分の夢を重ねたりしない」

「後はただ、あの子たちが望むように……」

43 = 10 :

ふむ

44 = 1 :

(……咲)

(あの日以来ずっとプラマイゼロか)

(おまえには一体何が見えてるんだ)

(お母さんには勝ち越せるようになってきたが、おまえの強さに届く気がしない)

(私のほうがずっと麻雀が好きで、強くなりたいと思ってるはずなのに)

(お母さんも同じ気持ちだったんだろう)

(私よりずっと麻雀を打ってきたから、私よりよっぽど悔しかったんだ)

(どうすれば、咲のように強くなれる……)

45 = 1 :

「お姉ちゃん、こんな暑いのに窓も閉め切って何ぼんやりしてるの?」

「ああ、ちょっと考え事をな」

「窓開けるよ。それに扇風機ぐらいつけようよ」ポチ

「悪いね」

ブオオオオオオン

「ふぃ~涼しい」

(普段はほんと無邪気なやつだな)

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」

「……」

「中学生にもなって何をやってるんだ」

「え~やりたくならない?」

「ならん。だから咲は子供っぽいと言ってるんだ」

「ふん。お姉ちゃんはすぐ大人ぶるんだもん」

46 = 1 :

(でも、確かに風が気持ち良いな……)

(風……扇風機……空気の流れ……)

(『流れ』か……いつかお母さんが言ってたな)

(お父さんは場の流れが読めてないから弱いって)

(麻雀が強いか弱いかの差は流れを感じ取れるかどうかにある)

(それじゃあ強者と更にその上の領域にいる者とを隔てるものは何だ……?)

(それは、お母さんがトッププロになれなかった理由……私と咲とを分けるもの……)

(……)

(流れに乗るだけじゃだめなんだ)

(咲は樌一つで場の流れを自分のものにし、自らの点数をプラマイゼロに収束させる)

(場の流れを自ら作り出す力……すなわち……)

「どうしたのお姉ちゃん、またぼぉーっとして?」

「お姉ちゃん……?」

(場の支配……!)

47 :

つづけるんだ

48 = 23 :

これが修羅旋風拳誕生秘話か

49 :

悲しみを背負うため犠牲になるのは誰だ

50 = 1 :

ジャラジャラ


「ロン」

「今日はこれでおしまいにしましょうか」

母:+23 父:+3 咲:±0 照:-26

「久しぶりに浮いたなぁ」

「ほんと、あなたがプラスなんていつ以来かしら」

「うーん、今日も勝てなかったよー」

「……」

「……」

「……」


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