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元スレ勇者「狩人に魔法使いをNTRれたんだよ!」まおう「えぇ!?」
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召喚士「うわぁすご。ふもとが全然見えないや」
勇者「雲海を見るのも久しぶりだな。ずっとこれが南まで続いてるもんだから凄い」
まおう「あれって全部雲なんですか? いつも空に浮いてるあれなんですか!?」
勇者「もうこの山を登ってくる時に何度も雲被ってただろうが」
まおう「あれがそうだったのですか……!」
召喚士「キレイなのは良いんだけど、年がら年中こんな調子だから、霧の国に続く直通の山道が作れていないんだよね」
まおう「海の国に行くのじゃなかったのです?」
勇者「だから海路を通って、雨の国の方から回ってようやく霧の国まで行くんだよ。……火山の国からすぐ海まで行けば早かったのにな……」
勇者「雲海を見るのも久しぶりだな。ずっとこれが南まで続いてるもんだから凄い」
まおう「あれって全部雲なんですか? いつも空に浮いてるあれなんですか!?」
勇者「もうこの山を登ってくる時に何度も雲被ってただろうが」
まおう「あれがそうだったのですか……!」
召喚士「キレイなのは良いんだけど、年がら年中こんな調子だから、霧の国に続く直通の山道が作れていないんだよね」
まおう「海の国に行くのじゃなかったのです?」
勇者「だから海路を通って、雨の国の方から回ってようやく霧の国まで行くんだよ。……火山の国からすぐ海まで行けば早かったのにな……」
召喚士「うん? そういえば、何で故郷に帰るのにいちいち迂回してきたのさ。魔王の国から出発したんでしょ?」
勇者「ああ……それは……(エルフを妖精の国へ送る為だったけど)俺も別の事情を抱えててさ」
召喚士「ふーん……そう」
まおう「とにかくこの山を越えないといけないって事ですね」
勇者「そーゆーこった」
勇者「ああ……それは……(エルフを妖精の国へ送る為だったけど)俺も別の事情を抱えててさ」
召喚士「ふーん……そう」
まおう「とにかくこの山を越えないといけないって事ですね」
勇者「そーゆーこった」
どこまでも針葉樹が続く山道を登り続け、時折小さな湖畔で休みながら、
いつしか景色は雲を抜き遥か平原の向こうまでを見渡せる高さに至っていた。
まおう「まだかかるんですかー……」
勇者「まだかかるんだよ……つっても、この道もだいぶ終盤に近いけどな。
ここから海の国まではロープウェイで繋がってるから、下山に苦慮しなくてもいい」
召喚士「それにしたって、空気がきれいなのは良いけど薄いのは勘弁してほしいわ……気分まで悪くなってきちゃった」
勇者「今さら高山病はないだろうけど……まだ日も高いしそこまで急ぐことはないか。この辺で休もう」
いつしか景色は雲を抜き遥か平原の向こうまでを見渡せる高さに至っていた。
まおう「まだかかるんですかー……」
勇者「まだかかるんだよ……つっても、この道もだいぶ終盤に近いけどな。
ここから海の国まではロープウェイで繋がってるから、下山に苦慮しなくてもいい」
召喚士「それにしたって、空気がきれいなのは良いけど薄いのは勘弁してほしいわ……気分まで悪くなってきちゃった」
勇者「今さら高山病はないだろうけど……まだ日も高いしそこまで急ぐことはないか。この辺で休もう」
まおう「うっはぁー! 白い花のカーペットみたい!」
勇者「こらあんまり走り回ると、どこかに躓いて谷底に墜ちるぞ」
まおう「この辺なら大丈夫ですよー」
勇者「魔物じゃないけど、この辺に自生する生物は獲物を取るために大きい落とし穴を掘ったりするんだよ。
人間を食ったって言う話は聞かないけど、魔族だとどうだろうかなぁ」
まおう「」ぷるっぷる
召喚士「怯えさせてどうするのよ。このままじゃ怖くて下山も出来なくなるわよ」
勇者「それはそれで面白い」
召喚士「クズから鬼畜にレベルチェンジって……なんかもういろいろダメねあんた」
勇者「そーかい。今までそれで困った事はないからな」
召喚士「なんだかもう本格的にダメね」
勇者「こらあんまり走り回ると、どこかに躓いて谷底に墜ちるぞ」
まおう「この辺なら大丈夫ですよー」
勇者「魔物じゃないけど、この辺に自生する生物は獲物を取るために大きい落とし穴を掘ったりするんだよ。
人間を食ったって言う話は聞かないけど、魔族だとどうだろうかなぁ」
まおう「」ぷるっぷる
召喚士「怯えさせてどうするのよ。このままじゃ怖くて下山も出来なくなるわよ」
勇者「それはそれで面白い」
召喚士「クズから鬼畜にレベルチェンジって……なんかもういろいろダメねあんた」
勇者「そーかい。今までそれで困った事はないからな」
召喚士「なんだかもう本格的にダメね」
霊峰休憩用のログハウス
召喚士「けっこう整ってるわね。無人だけど」
勇者「食べ物の販売まであるぞ。無人だけど」
まおう「この辺はわるい人がいないんですかね」
勇者「こんな所に盗むような物は大してないし、そもそもこの程度の食糧盗むより、
登頂する経費の方が掛かっちまうからな。そういう微妙なバランスの上で成り立っているんだろ」
召喚士「ま、出せる物は出せるし頂きますか」
まおう「私も、私も手伝いますっ」
勇者「お前料理出来たっけ? そもそもここのキッチン使えるのか? 通気設備は生きてるみたいだけど」
召喚士「どっちでもいいわ。そんな複雑な事する必要はないでしょうに」
召喚士「けっこう整ってるわね。無人だけど」
勇者「食べ物の販売まであるぞ。無人だけど」
まおう「この辺はわるい人がいないんですかね」
勇者「こんな所に盗むような物は大してないし、そもそもこの程度の食糧盗むより、
登頂する経費の方が掛かっちまうからな。そういう微妙なバランスの上で成り立っているんだろ」
召喚士「ま、出せる物は出せるし頂きますか」
まおう「私も、私も手伝いますっ」
勇者「お前料理出来たっけ? そもそもここのキッチン使えるのか? 通気設備は生きてるみたいだけど」
召喚士「どっちでもいいわ。そんな複雑な事する必要はないでしょうに」
勇者「野菜と手持ちの干し肉でそこそこ美味いもんは作れるかな。ほれまおう、干し肉の裁断くらいできるだろ」
まおう「もちろんです。ナイフをしっかり持って、ちゃんと干し肉を押さえて、こう……ふんっ!」グシャ
勇者「何やってんだよ馬鹿」
召喚士「可哀そうなお肉」
まおう「な、な、ナイフが悪いんですよう! こうなったら私の剣で……!」
勇者「アホ、そんな事したら設備がぶっ壊れて俺たちが負担して修理する事になるんだぞ」
召喚士「何気に私を数に入れないでよ!」
まおう「何言ってるんですか! 召喚士さんもついて来てるからには逃れられませんよ」
勇者「てめぇがちゃんとすれば良いだけだっての!」
まおう「もちろんです。ナイフをしっかり持って、ちゃんと干し肉を押さえて、こう……ふんっ!」グシャ
勇者「何やってんだよ馬鹿」
召喚士「可哀そうなお肉」
まおう「な、な、ナイフが悪いんですよう! こうなったら私の剣で……!」
勇者「アホ、そんな事したら設備がぶっ壊れて俺たちが負担して修理する事になるんだぞ」
召喚士「何気に私を数に入れないでよ!」
まおう「何言ってるんですか! 召喚士さんもついて来てるからには逃れられませんよ」
勇者「てめぇがちゃんとすれば良いだけだっての!」
しばらくの手間……
勇者「なんでハーブ炒めにこんな時間かかるんだよ」
召喚士「お腹空き過ぎて食欲なくなった」
まおう「もうすぐできますって!」
勇者「窯から上げるときは気を付けろよ。フライパンけっこう重いはずだから」
まおう「大丈夫ですって――あ、ふぁっ!」
召喚士「ちょっと――!」
勇者「危ねえ!」
勇者「なんでハーブ炒めにこんな時間かかるんだよ」
召喚士「お腹空き過ぎて食欲なくなった」
まおう「もうすぐできますって!」
勇者「窯から上げるときは気を付けろよ。フライパンけっこう重いはずだから」
まおう「大丈夫ですって――あ、ふぁっ!」
召喚士「ちょっと――!」
勇者「危ねえ!」
グワンッ
まおう「…………?」
勇者「ふぅ……無事でよかった、肉」
召喚士「そっち!? ……んでも、まおうもよくそんな格好で止まってられるわね」
まおう「いえ……私なにも」
カッ カッ カッ
神官「まったくそそっかしいままですねまおう様」
召喚士「だ、誰なの!」
神官「気にするに至りません。ここの管理人でございます」
召喚士「あぁそうですか……それは失礼しました。てっきり無人の小屋かと思って」
まおう「…………?」
勇者「ふぅ……無事でよかった、肉」
召喚士「そっち!? ……んでも、まおうもよくそんな格好で止まってられるわね」
まおう「いえ……私なにも」
カッ カッ カッ
神官「まったくそそっかしいままですねまおう様」
召喚士「だ、誰なの!」
神官「気にするに至りません。ここの管理人でございます」
召喚士「あぁそうですか……それは失礼しました。てっきり無人の小屋かと思って」
勇者「…………」
神官「おや、そちらの方どうかされましたか?」
勇者「ど……どうかも何も、神官こそこんな所で何油売ってんだよ!」
神官「売ってるのは高原のハーブと野菜ですが」
勇者「んなボケは要らないよ!」
召喚士「神官……? てことはまさか魔族? まおうの召使いか何かなの?」
神官「あらら、もうお連れさんにはそこまで知れていたのですか」
勇者「そうだぞ。だから身分隠す事はない」
神官「おや、そちらの方どうかされましたか?」
勇者「ど……どうかも何も、神官こそこんな所で何油売ってんだよ!」
神官「売ってるのは高原のハーブと野菜ですが」
勇者「んなボケは要らないよ!」
召喚士「神官……? てことはまさか魔族? まおうの召使いか何かなの?」
神官「あらら、もうお連れさんにはそこまで知れていたのですか」
勇者「そうだぞ。だから身分隠す事はない」
神官「では改めて。元魔王様の側近であり、元まおう様の側近であった神官でございます。
今は無職……といいますか、特定の場所にとどまっておりませぬ。御年800歳を超える老骨ですが、何ぞととよろしく」
まおう「神官さーん! まさかこんな所でまた会えるなんて思っていなかったです!」
神官「私も再びまおう様に会える喜びをかみしめている所でございます」
勇者「……ほいで、その会えて嬉しい輩を押し付けた末にここで何やってんだよ」
神官「何……という訳ではありませんが、まおう様にこれだけはお伝えせねばならないと言う事がございまして、今に至るわけです」
まおう「私に……お話し?」
神官「さようでございます。まおう様、外でお話しする時間を頂けないでしょうか」
今は無職……といいますか、特定の場所にとどまっておりませぬ。御年800歳を超える老骨ですが、何ぞととよろしく」
まおう「神官さーん! まさかこんな所でまた会えるなんて思っていなかったです!」
神官「私も再びまおう様に会える喜びをかみしめている所でございます」
勇者「……ほいで、その会えて嬉しい輩を押し付けた末にここで何やってんだよ」
神官「何……という訳ではありませんが、まおう様にこれだけはお伝えせねばならないと言う事がございまして、今に至るわけです」
まおう「私に……お話し?」
神官「さようでございます。まおう様、外でお話しする時間を頂けないでしょうか」
まおう「もちろんです。でも今はご飯の時間ですよ」
神官「これは失礼しました。ライ麦のパンなら保存してありますので、炙ってお出しししましょう」
召喚士「助かるー。これだけじゃ塩辛くて胃が持たれるからちょっと憂鬱だったのよ」
勇者「おう、それならあんたも食べてから話しなよ。筋金入り魔族の口に合うかどうかは知らないけど」
神官「そうですか……いえ、この神官、まさかまおう様の手作り料理が食べられる日を生きて迎えられるとは……うっうっ……」
召喚士「うわー傍から見たらしわくちゃの爺さんがモロ泣きしているようにしか見えないよ」
勇者「食べづらいから落ち着いてくれないかな……」
神官「失礼……つい感極まってしまいまして」
召喚士「魔族もさして変わらないのね」
勇者「下手な人間より人間っぽいからな」
神官「これは失礼しました。ライ麦のパンなら保存してありますので、炙ってお出しししましょう」
召喚士「助かるー。これだけじゃ塩辛くて胃が持たれるからちょっと憂鬱だったのよ」
勇者「おう、それならあんたも食べてから話しなよ。筋金入り魔族の口に合うかどうかは知らないけど」
神官「そうですか……いえ、この神官、まさかまおう様の手作り料理が食べられる日を生きて迎えられるとは……うっうっ……」
召喚士「うわー傍から見たらしわくちゃの爺さんがモロ泣きしているようにしか見えないよ」
勇者「食べづらいから落ち着いてくれないかな……」
神官「失礼……つい感極まってしまいまして」
召喚士「魔族もさして変わらないのね」
勇者「下手な人間より人間っぽいからな」
ボロいテーブルを囲んでの食事。決して量は多くなく、短い時間ではあったが、
お互いの顔を自然にみられる程に神官と3人の距離は縮まっていた。
召喚士「もーお腹いっぱい。ほら、片づけは私たちがやるから、あなた達は2人きりで話してきなさいな」
勇者「え、2人でやるのかよ」
召喚士「いいからほら。行った行った」
神官「ありがとうございます召喚士さま。ではしばらくの時間を頂きます」
まおう「いってきまー」
お互いの顔を自然にみられる程に神官と3人の距離は縮まっていた。
召喚士「もーお腹いっぱい。ほら、片づけは私たちがやるから、あなた達は2人きりで話してきなさいな」
勇者「え、2人でやるのかよ」
召喚士「いいからほら。行った行った」
神官「ありがとうございます召喚士さま。ではしばらくの時間を頂きます」
まおう「いってきまー」
勇者「はぁ……。しかし突然出て来るとは思わなかったけど、城が崩壊した後も元気みたいで良かった」
召喚士「あの人にまおうの世話を任されたの」
勇者「そうだよ。いろいろ世界情勢が不利だから、力のある奴に任せた方が安全だってね」
召喚士「ふーん……でも旅の途中のあんたならともかく、断る気はなかったの?」
勇者「あのガキ自身からの押しに負けてな。まぁ冷静に考えてみれば、なんで話を受けちゃったのか今でもよく解らん」
召喚士「後悔は?」
勇者「してない……訳じゃないけど、あいつを連れている事自体は、別にそう悪いと思った事はない。問題はそれ以外の話だから」
召喚士「……そう」
小屋の中で2人。妙な間が開く。
召喚士「あの人にまおうの世話を任されたの」
勇者「そうだよ。いろいろ世界情勢が不利だから、力のある奴に任せた方が安全だってね」
召喚士「ふーん……でも旅の途中のあんたならともかく、断る気はなかったの?」
勇者「あのガキ自身からの押しに負けてな。まぁ冷静に考えてみれば、なんで話を受けちゃったのか今でもよく解らん」
召喚士「後悔は?」
勇者「してない……訳じゃないけど、あいつを連れている事自体は、別にそう悪いと思った事はない。問題はそれ以外の話だから」
召喚士「……そう」
小屋の中で2人。妙な間が開く。
召喚士「私……さ、他のメンバーとはあれ以来ずっと会ってないんだよね。勇者は会った?」
勇者「……ああ、まあ。シーフと斧使い以外には全員会ってるかな」
召喚士「それってほとんどの人と会ってるって事じゃない。まるで待たれているみたいね」
勇者「そういう言い方もあるな」
召喚士「みんなどうだった? 元気そうだった?」
勇者「…………」
召喚士「勇者……?」
勇者「…………魔法使いが死んだ」
勇者「……ああ、まあ。シーフと斧使い以外には全員会ってるかな」
召喚士「それってほとんどの人と会ってるって事じゃない。まるで待たれているみたいね」
勇者「そういう言い方もあるな」
召喚士「みんなどうだった? 元気そうだった?」
勇者「…………」
召喚士「勇者……?」
勇者「…………魔法使いが死んだ」
勇者「…………魔法使いが死んだ」
俺がそう呟くと、召喚士の顔が静かに、しかしはっきりと強張っていくのが判った。
召喚士「え、ど……え?」
勇者「あいつは置き土産するつもりだったのか……星の国で、全ての出来事を俺に教えてくれたよ」
召喚士「全てって……その」
勇者「意味そのままだよ。あいつが見ていた世界と、あいつが影響を与えていた世界の全て。
それと、みんなが俺から遠ざけていた現実もな」
召喚士「…………」
俺がそう呟くと、召喚士の顔が静かに、しかしはっきりと強張っていくのが判った。
召喚士「え、ど……え?」
勇者「あいつは置き土産するつもりだったのか……星の国で、全ての出来事を俺に教えてくれたよ」
召喚士「全てって……その」
勇者「意味そのままだよ。あいつが見ていた世界と、あいつが影響を与えていた世界の全て。
それと、みんなが俺から遠ざけていた現実もな」
召喚士「…………」
勇者「お前は、嘘つかないでくれるよな」
召喚士「えっ?」
勇者「除け者にされるのは別に良いんだ。そんな感じのは旅を始める前から慣れてた。
けどな、俺だけ知らないなんてのはもう嫌なんだ。そのせいで魔法使いはあんな死に方をしたんだ」
召喚士「私も……いえ、みんなあなたに悪気があった訳じゃなかった。それだけは間違いない。むしろ羨ましいとすら……」
勇者「それも知ってる。自分らは頭がおかしくなっていくのに、勇者だけはボケたまま常人でいる。
そんな俺をうらやましく思ったのか、ないしは更に嫌悪するようになったのか、はたまた同情心なのか……
とにかくお前たちは俺を避けた。それであのオチだ」
召喚士「…………」
勇者「だから俺はあえてはっきり言う。召喚士、お前は狩人に、麻痺薬で――」
召喚士「止めてッ!」
ただでさえガクついていたテーブルの足が更に軋む。
召喚士「えっ?」
勇者「除け者にされるのは別に良いんだ。そんな感じのは旅を始める前から慣れてた。
けどな、俺だけ知らないなんてのはもう嫌なんだ。そのせいで魔法使いはあんな死に方をしたんだ」
召喚士「私も……いえ、みんなあなたに悪気があった訳じゃなかった。それだけは間違いない。むしろ羨ましいとすら……」
勇者「それも知ってる。自分らは頭がおかしくなっていくのに、勇者だけはボケたまま常人でいる。
そんな俺をうらやましく思ったのか、ないしは更に嫌悪するようになったのか、はたまた同情心なのか……
とにかくお前たちは俺を避けた。それであのオチだ」
召喚士「…………」
勇者「だから俺はあえてはっきり言う。召喚士、お前は狩人に、麻痺薬で――」
召喚士「止めてッ!」
ただでさえガクついていたテーブルの足が更に軋む。
勇者が何も知らされてなかったから魔法使いが自殺したってそんな解釈できる展開は一切なかったような
>>75
魔法使いの事情を知ってたら、解散後一緒に暮らしてたかもしれないじゃん
魔法使いの事情を知ってたら、解散後一緒に暮らしてたかもしれないじゃん
ただでさえガクついていたテーブルの足が更に軋む。
召喚士「止めてよ……そんな話……」
勇者「いや、止めないぜ。お前は奴に無理やり犯された。
でも俺が、お前について知っているのはそこまでだ。
後は普通の生活で見せていたような、無駄に意地を張るような子供っぽい面しか知らない」
召喚士「………………」
勇者「……苛めている訳じゃない。魔法使いみたいに、自分で自分を追い込んだ末に壊れてしまうようなのはもう見たくない」
召喚士「私は、そんな事しない!」
勇者「何故だ」
召喚士「何故って……」
勇者「何故そう言いきれる」
召喚士「止めてよ……そんな話……」
勇者「いや、止めないぜ。お前は奴に無理やり犯された。
でも俺が、お前について知っているのはそこまでだ。
後は普通の生活で見せていたような、無駄に意地を張るような子供っぽい面しか知らない」
召喚士「………………」
勇者「……苛めている訳じゃない。魔法使いみたいに、自分で自分を追い込んだ末に壊れてしまうようなのはもう見たくない」
召喚士「私は、そんな事しない!」
勇者「何故だ」
召喚士「何故って……」
勇者「何故そう言いきれる」
>>76
最後の魔法使いのところはけっこう都合良すぎた話の進み具合だったよな
最後の魔法使いのところはけっこう都合良すぎた話の進み具合だったよな
召喚士「私は……そんなに狩人の相手をしなかった」
勇者「でもレイプされたんだろ。それでどうした。
むしろパーティーに歪が広がるはずだ。気付かなかった俺もクズだが、何で俺に伝えなかった」
召喚士「魔法使いが……ダメだって……」
勇者「はぁ?」
召喚士「ダメって言われたの。狩人は絶対に必要な人。
魔王を倒すためには欠かせない力だって。だから勇者には言わないで、ずっとパーティーに置いてあげてと言われたの……」
勇者「責任を投げつけてる……訳じゃないよな。今さら責任なんて問うつもりはないが」
召喚士「当たり前よ! あなたも解ってたでしょ? 自分と同じくらいの近接戦闘が出来る仲間が欠ければどれ程の痛手になるかなんて」
勇者「でもレイプされたんだろ。それでどうした。
むしろパーティーに歪が広がるはずだ。気付かなかった俺もクズだが、何で俺に伝えなかった」
召喚士「魔法使いが……ダメだって……」
勇者「はぁ?」
召喚士「ダメって言われたの。狩人は絶対に必要な人。
魔王を倒すためには欠かせない力だって。だから勇者には言わないで、ずっとパーティーに置いてあげてと言われたの……」
勇者「責任を投げつけてる……訳じゃないよな。今さら責任なんて問うつもりはないが」
召喚士「当たり前よ! あなたも解ってたでしょ? 自分と同じくらいの近接戦闘が出来る仲間が欠ければどれ程の痛手になるかなんて」
勇者「俺が聞きたいのはそんな事じゃない。お前の気持ちそのものだ。あんな事があって、それが今に至って、どう思うか」
召喚士「あんたには解らないでしょ! 動けない体を勝手に弄られて! 感覚のないまま突き破られた心の痛みが!」
勇者「解るかよ。解ったってお前は納得しないだろうし、俺もその心に自信なんて持てない。
真実はどうか俺には見え透かないが……魔法使いは自分に心を置きたがらなかった。
その安置先を狩人に任せていた。でもその狩人が死んでしまって……呆然自失か、拠り所をずっと探して星の国に残っていた」
召喚士「それで……」
召喚士「あんたには解らないでしょ! 動けない体を勝手に弄られて! 感覚のないまま突き破られた心の痛みが!」
勇者「解るかよ。解ったってお前は納得しないだろうし、俺もその心に自信なんて持てない。
真実はどうか俺には見え透かないが……魔法使いは自分に心を置きたがらなかった。
その安置先を狩人に任せていた。でもその狩人が死んでしまって……呆然自失か、拠り所をずっと探して星の国に残っていた」
召喚士「それで……」
勇者「どうスイッチが外れたのか……特定はできないが、おそらく原因は俺だ。
あいつを拒絶してしまったせいで、最後の踏切を渡らせてしまったのかも知れない。
……でも、あんな状態にまで至ってしまったのなら、遅かれ早かれの事だったとも思う。
俺が聞きたいのはこの事だ。ずっと真のパーティーの姿を見続けていたお前からすれば、俺の考えは間違っていると思うのか」
召喚士「…………」
勇者「頼む。答えてくれ召喚士」
召喚士「……魔法使いが手遅れだったってのは、私も思ってた。
もし狩人に全身を委ねてしまうような事が無かったら、逆に私は彼女を助ける為に、もっと狩人の相手を……
むしろ進んでしていたのかもしれない。だって彼女は私の親友よ。死と隣り合わせの旅で数少ない女友達。
そして同じ状況にある女の子同士……情が移らない訳なかったけど、深みには嵌まらなかった。
あまりにも魔法使いが――凄かったから」
あいつを拒絶してしまったせいで、最後の踏切を渡らせてしまったのかも知れない。
……でも、あんな状態にまで至ってしまったのなら、遅かれ早かれの事だったとも思う。
俺が聞きたいのはこの事だ。ずっと真のパーティーの姿を見続けていたお前からすれば、俺の考えは間違っていると思うのか」
召喚士「…………」
勇者「頼む。答えてくれ召喚士」
召喚士「……魔法使いが手遅れだったってのは、私も思ってた。
もし狩人に全身を委ねてしまうような事が無かったら、逆に私は彼女を助ける為に、もっと狩人の相手を……
むしろ進んでしていたのかもしれない。だって彼女は私の親友よ。死と隣り合わせの旅で数少ない女友達。
そして同じ状況にある女の子同士……情が移らない訳なかったけど、深みには嵌まらなかった。
あまりにも魔法使いが――凄かったから」
勇者「俺を……クズだと思うか……?」
召喚士「それを言うなら私の方がよっぽどクズよ。旅の中ではずっと魔法使いの親友だったつもりなのに、
いざ拘束を解かれたら私から離れていった。そして1度も会おうと思い直さない内に……。
もう親友だなんて口にするだけ気味が悪いでしょうね」
勇者「そう……こういう事なんだよ。人が死ねばそれまでだけど、因果が絡むとこんな坩堝の中に放り込まれて動けなくなる。
解決するには、結局割り切るしかない」
召喚士「魔法使いの……その、遺体はどうしたの」
勇者「あいつは死に際にアンデット化した。人間だったはずなのに。
だから対ゾンビ用の魔法で砂にしてやった。あんな格好のままこの世に残り続けるなんて、見ている人も本人も耐えられない」
召喚士「どんな……格好だった……」
勇者「皮が全部禿げて、毛なんてもう抜けきってる。全身真っ赤で、日の光を浴びてテカテカと光っていた。
半分になった足が乾燥して黒く固まり、臭いなんてもう言葉にならない」
召喚士「うっ……!」
勇者「何もかも不条理だ。誰も納得がいかない。誰も納得できない。
都合が良いと言えば良いし、悪いと言えば悪い。そんな始末に終えない死に方だ」
召喚士「それを言うなら私の方がよっぽどクズよ。旅の中ではずっと魔法使いの親友だったつもりなのに、
いざ拘束を解かれたら私から離れていった。そして1度も会おうと思い直さない内に……。
もう親友だなんて口にするだけ気味が悪いでしょうね」
勇者「そう……こういう事なんだよ。人が死ねばそれまでだけど、因果が絡むとこんな坩堝の中に放り込まれて動けなくなる。
解決するには、結局割り切るしかない」
召喚士「魔法使いの……その、遺体はどうしたの」
勇者「あいつは死に際にアンデット化した。人間だったはずなのに。
だから対ゾンビ用の魔法で砂にしてやった。あんな格好のままこの世に残り続けるなんて、見ている人も本人も耐えられない」
召喚士「どんな……格好だった……」
勇者「皮が全部禿げて、毛なんてもう抜けきってる。全身真っ赤で、日の光を浴びてテカテカと光っていた。
半分になった足が乾燥して黒く固まり、臭いなんてもう言葉にならない」
召喚士「うっ……!」
勇者「何もかも不条理だ。誰も納得がいかない。誰も納得できない。
都合が良いと言えば良いし、悪いと言えば悪い。そんな始末に終えない死に方だ」
さすが自分達のクズっぷりを棚に上げて勇者をクズ呼ばわりした仲間たち
自分だって責任を感じてるとアピールしつつの責任転嫁とかマジパネェっす
自分だって責任を感じてるとアピールしつつの責任転嫁とかマジパネェっす
召喚士「私は……どうすれば」
勇者「それは俺が聞きたいし、自分がどうすればいいか分らない。
だからまおうを故郷へ連れて帰るだなんて、特に中身のない旅を続けてるのさ」
召喚士「なんか、良いね。羨ましい」
勇者「そう思ったから砂漠から付いてきたのか?」
召喚士「今の気持ちではそうじゃないけど、本心はそう思っているかもしれない。
ずっとずっと、私は1人のままだったし……」
勇者「海の国まで行くって言うのは……」
召喚士「あなたにずっと付いていくことは出来ないって思ってるから。
これは多分本心も一緒。だってあんなにまおうとイチャイチャされてるんだもん。私が耐え切れない」
勇者「まおうはまおうだぞ。何考えてやがる」
召喚士「女の感――じゃなくて、普通の感想よ。とにかくずっとは無理」
勇者「それは俺が聞きたいし、自分がどうすればいいか分らない。
だからまおうを故郷へ連れて帰るだなんて、特に中身のない旅を続けてるのさ」
召喚士「なんか、良いね。羨ましい」
勇者「そう思ったから砂漠から付いてきたのか?」
召喚士「今の気持ちではそうじゃないけど、本心はそう思っているかもしれない。
ずっとずっと、私は1人のままだったし……」
勇者「海の国まで行くって言うのは……」
召喚士「あなたにずっと付いていくことは出来ないって思ってるから。
これは多分本心も一緒。だってあんなにまおうとイチャイチャされてるんだもん。私が耐え切れない」
勇者「まおうはまおうだぞ。何考えてやがる」
召喚士「女の感――じゃなくて、普通の感想よ。とにかくずっとは無理」
勇者「俺に負い目とか、そんなんじゃないよな」
召喚士「……正直それが1番大きいかな。
あなたの国まで帰るほど、私の足は軽くないわ」
勇者「そっか……ありがとな、こんな話に付き合ってくれて」
召喚士「……正直それが1番大きいかな。
あなたの国まで帰るほど、私の足は軽くないわ」
勇者「そっか……ありがとな、こんな話に付き合ってくれて」
お前がクズなせいで魔法使いは離れたんだろプギャーって言ってた神官さんは今頃どんな顔をしているんでしょうか
―――……ログハウスからしばらく離れた丘の上で
神官「まおう様は、この旅を始めれてよかったと思いますか」
まおう「もちろんです。……でも、良いことばっかりじゃないよ。でもそれは、もっと良い事のためにあるんだと思って我慢してる」
神官「その通りですぞまおう様。短い間によく成長されました」
まおう「それで神官さん。私にお話って何ですか?」
神官「……まおう様の失脚と、魔城崩壊によるバランスの変化についてずっと世界を監視しておりましたが……
あまりに予想を上回る強さで、世界は変わり始めております」
まおう「え、え、なんで?」
神官「まおう様は、この旅を始めれてよかったと思いますか」
まおう「もちろんです。……でも、良いことばっかりじゃないよ。でもそれは、もっと良い事のためにあるんだと思って我慢してる」
神官「その通りですぞまおう様。短い間によく成長されました」
まおう「それで神官さん。私にお話って何ですか?」
神官「……まおう様の失脚と、魔城崩壊によるバランスの変化についてずっと世界を監視しておりましたが……
あまりに予想を上回る強さで、世界は変わり始めております」
まおう「え、え、なんで?」
神官「魔王様は今まで、世界のエネルギーを私利私欲のために占有していた……というのが人間たちの見識です。
しかし実態は我々が知っていたように、エネルギーを多く占有する事で、世界の平静を長らく守ってきたのであります。
魔城はその拠点であり、魔王様に次ぐ世界の重要な栓であった訳です」
まおう「だからお父さんが死んじゃって、おうちが壊れちゃったから……」
神官「エネルギーバランスは人に、妖精に、そして残された魔族に散らばりました。
個人がおおよそ等しく力を持つようになれば、勝つのは進んで法を破り、そして自分で法を作った者です。
その為、現在各国において激しい紛争――それと戦争が起きています」
まおう「そんなことまで……」
神官「もう、この星で安全な場所は数限られています。少なくとも人の多いところは安全でありません。
しかしこのままであったら、新たな魔王かそれに及ぶ者が1人現われてくれればよかったのです……」
まおう「それじゃだめなのです?」
神官「……これはハッキリ言っておきましょう。それではダメなのです。
魔族たちが結託して強大な力を生み出そうとしているのは確かですが、
人間たちはその数十倍――いえ、数万数千万倍もの力を持つようなものを開発しています」
まおう「い、イメージがもう沸かない……」
神官「でしょうね。実際私も掴み切れていないですし、開発している人間は1番理解していないでしょう。
その恐ろしさと、利用による世界の改変がどれほどのもになるのかを」
しかし実態は我々が知っていたように、エネルギーを多く占有する事で、世界の平静を長らく守ってきたのであります。
魔城はその拠点であり、魔王様に次ぐ世界の重要な栓であった訳です」
まおう「だからお父さんが死んじゃって、おうちが壊れちゃったから……」
神官「エネルギーバランスは人に、妖精に、そして残された魔族に散らばりました。
個人がおおよそ等しく力を持つようになれば、勝つのは進んで法を破り、そして自分で法を作った者です。
その為、現在各国において激しい紛争――それと戦争が起きています」
まおう「そんなことまで……」
神官「もう、この星で安全な場所は数限られています。少なくとも人の多いところは安全でありません。
しかしこのままであったら、新たな魔王かそれに及ぶ者が1人現われてくれればよかったのです……」
まおう「それじゃだめなのです?」
神官「……これはハッキリ言っておきましょう。それではダメなのです。
魔族たちが結託して強大な力を生み出そうとしているのは確かですが、
人間たちはその数十倍――いえ、数万数千万倍もの力を持つようなものを開発しています」
まおう「い、イメージがもう沸かない……」
神官「でしょうね。実際私も掴み切れていないですし、開発している人間は1番理解していないでしょう。
その恐ろしさと、利用による世界の改変がどれほどのもになるのかを」
まおう「なんなんですそれは」
神官「人の手にして人のものに非ず、神の力にして神の所在有らず、と言ったところでしょうか。
おそらくそう遠くない未来に、まおう様はそれと関わることになるでしょう」
まおう「私が……」
神官「それはもう間違いありません。あなたに世界のエネルギーを支配する能力はまだありませんが、
その基礎や潜在能力は既にあります。それに……」
まおう「まだあるんですかっ!」
神官「私が今言った事も、ほんの序章に過ぎないと言う事も忘れないでください。
始まりは静かに、そして火が付いた時に周りは気付き、爆発してから世界は加速します」
まおう「そんな……なんでお父さん、死んじゃったのかなぁ……私にはまだ無理だよぅ」
神官「魔王様については本当に今でも悔やみきれませぬ。
そもそもこのような事態になるのを防ぐために戦争を始め、勇者様らが旅に出て、その末に力尽きてしまったのです。
あなたは娘として遺志を継がなければなりません。私が来たのは、その意思を確かめるためにありますぞまおう様」
神官「人の手にして人のものに非ず、神の力にして神の所在有らず、と言ったところでしょうか。
おそらくそう遠くない未来に、まおう様はそれと関わることになるでしょう」
まおう「私が……」
神官「それはもう間違いありません。あなたに世界のエネルギーを支配する能力はまだありませんが、
その基礎や潜在能力は既にあります。それに……」
まおう「まだあるんですかっ!」
神官「私が今言った事も、ほんの序章に過ぎないと言う事も忘れないでください。
始まりは静かに、そして火が付いた時に周りは気付き、爆発してから世界は加速します」
まおう「そんな……なんでお父さん、死んじゃったのかなぁ……私にはまだ無理だよぅ」
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そもそもこのような事態になるのを防ぐために戦争を始め、勇者様らが旅に出て、その末に力尽きてしまったのです。
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