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    元スレ女「私すごく不器用ですしっ、つ、つつつ付き合うとかそんにゃっ」

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    301 : 以下、名無しにか - 2011/12/24(土) 14:37:24.12 ID:YYIRmJN10 (+21,+29,+0)
    >>300
    だからいいんじゃないか
    302 : 以下、名無しにか - 2011/12/24(土) 14:38:16.31 ID:BcGksFqt0 (+30,+29,-1)
    >>300
    素質あるくらいが最高なんだろ
    303 : 以下、名無しにか - 2011/12/24(土) 14:39:32.69 ID:lB0mGylY0 (+31,+29,-13)
    >>300
    だからこそロマンチックなんだよ
    304 : 以下、名無しにか - 2011/12/24(土) 14:40:20.71 ID:EcuJPjmn0 (+34,+29,-4)
    >>300
    と言いつつも読むんだろ?
    305 : 以下、名無しにか - 2011/12/24(土) 14:43:03.89 ID:jXpNF4wyP (+60,+30,-281)
    「男くんに『さびしくないの?』って聞かれて、すごく見透かされた気分になった」

    「でも『さびしい』なんて言って、男くんが埋めてくれるの?」

    「私の寂しさ、埋められるの?」

    「ちがうよね……違うんだよ……分かってるよ、求めたって無駄だって」

    「言ったって、無駄だって」

    「でもさぁ……やっぱり、私男くんの前で素直になりたいから……でも、言ったって無駄だから」

    「そういうの、もうごちゃまぜになって、ぐるぐるぐるぐる回っちゃって、苦しくって……っ!」

    「やっぱり私不器用だから……そういうの上手く処理できないんだよ。ヒートアップしちゃうんだよ」

    「耐えられないんだよぉ……!」

    「俺に、女さんの寂しさ。埋められないの?」

    「そうだよ……! 私が欲しい寂しさは……っ、もう、もうっ……」

    「どこにも――――」フラッ

    「……っ!? 女さんっ!!」
    306 : 以下、名無しにか - 2011/12/24(土) 14:48:43.03 ID:jXpNF4wyP (+60,+30,-176)
    「……」クテッ

    「急に倒れて……、っ!? 熱が……?」

    「……かえ、って……いいから……」

    「送る。送ってくから。あ、……病院っ!」

    「いい……びょういん、きら、ぃ」

    「おか、……さん、…………こゎ、ぃ……」

    「え……?」

    「いえ……かえ、……る……」

    「なら、おぶってくから。帰ろ。女さんの家に」

    「や、……だ。きちゃ、や、だ……こなぃ、で」

    「こっちの道でいいんだよね?……んっしょ」

    「……ぁ」

    「ちょっと、どばすから。揺れて気分悪くなったら言ってよ」
    307 : 忍法帖【Lv= - 2011/12/24(土) 14:52:10.74 ID:yJkf4ogM0 (+27,+29,-21)
    親共働きひとりっ子の寂しがり方は屈折してるからなあ。付き合うとなるとハードルが高いぞ。
    この>>1はその辺よくわかってるな
    308 : 以下、名無しにか - 2011/12/24(土) 14:54:14.08 ID:jXpNF4wyP (+60,+30,-84)
    「(女さん、すごく軽い……)」

    「(こんなに細くて、華奢で。でも、すごく暖かくて)」

    「(こんな時に不謹慎だけど。背中の温度が…………幸せだ)」

    「…………ん」ギュッ

    「女……さん?」

    「……と……ん」

    「おと……さん」

    「……ぅぅ」

    「ゃだぁ……」
    309 : 以下、名無しにか - 2011/12/24(土) 15:02:03.93 ID:jXpNF4wyP (+60,+30,-83)
    「このマンション?」

    「……ん」

    「鍵、ポスト、に……」

    「う、うん」

    「男くん」

    「ん?」

    「なにがあって、も、せめて、友達で……いて、ね」

    「……」

    「おねがいだよ」

    「うん」

    「おじゃまします」
    310 : 以下、名無しにか - 2011/12/24(土) 15:04:34.84 ID:EcuJPjmn0 (-7,+2,-2)
    期待
    311 : 忍法帖【Lv= - 2011/12/24(土) 15:05:19.33 ID:yJkf4ogM0 (+14,+21,-2)
    オニのように支援する
    312 : 以下、名無しにか - 2011/12/24(土) 15:11:27.53 ID:ijBTTdPW0 (+19,+29,-3)
    イブになんてもの見せるんだ
    313 : 以下、名無しにか - 2011/12/24(土) 15:11:47.04 ID:jXpNF4wyP (+60,+30,-215)
     マンションの中に入って、女さんをベットに寝かせた。
     さんの(であろう)部屋は、飾りっ気のない質素な雰囲気。
     ただ、大きなペンギンのぬいぐるみが1つ、ベットの脇に転がっていた。
     抱きしめながら寝てるのかな、とか想像したら、思わずにやけてしまう。

     タオルを見つけて、濡らしてから女さんの額に当ててあげる。
     お約束の、身体を拭いてあげる云々をやる勇気は俺にはない。

     でも、女さんは、くるしそうに息を吸ったり吐いたりして、時折「寒い」とか「苦しい」と声をもらしていた。
     そんな女さんを助けたくて、僕は居間にあった電話帳を手に取り、電話をかけた。


     『はい、市立VIP病院コールセンターです」

    「看護士の母さんをお願いします」

    「娘さんの事で、急ぎお伝えしたい事があるんです」
    315 : 以下、名無しにか - 2011/12/24(土) 15:16:27.30 ID:EPEAG10O0 (+4,+14,-12)
    しえん
    316 : 以下、名無しにか - 2011/12/24(土) 15:16:27.42 ID:jXpNF4wyP (+60,+30,-132)
    「女っ!!!」

    「……あ」

    「女は?」

    「ベットで」

    「……っ、ごめん悪いんだけど、水汲んできて」

    「あ、は、はいっ」

    「熱っ。……あーっ、もう! これ、40度近くあるよ……」

    「水ですっ」

    「ん。……いい子だから飲んでね……飲まないと、熱下がらないよ」

    「ん、っ……う……」ゴクゴク

    「うん。いい子だ。……ほんと、女は昔から素直でいい子だ」

    「……」
    317 : 以下、名無しにか - 2011/12/24(土) 15:20:12.54 ID:jXpNF4wyP (+60,+30,-162)
    「薬飲ませたから、多分だいじょうぶだと思う」

    「これで下がらなかったら、明日無理やりにでも病院連れて行くから」

    「そうですか……」ホッ

    「……あ、ごめん。まぁ、分かってると思うけど、女の母です。電話の……男くんだよね?」

    「あ、はい」ペコリ

    「いきなりで失礼だけど、女とは……」

    「友達です」

    「友達?」

    「え、えぇ」

    「嘘じゃないよね? ただのクラスメイトとかじゃなくて?」

    「クラスメイトでもありますけど、今日一緒に買いものにいったりもしましたし」

    「あ!」ピーン

    「キミかぁ!!」

    「え?」
    318 : 以下、名無しにか - 2011/12/24(土) 15:24:57.54 ID:EPEAG10O0 (-22,-12,-1)
    319 : 以下、名無しにか - 2011/12/24(土) 15:28:07.02 ID:jXpNF4wyP (+53,+30,-115)
    「いやあ、なんでもないのさ。なんでもねーっ」

    「はぁ」

    「でもさーでもでもっ、実際のところどうなのさ?」

    「え? といいますと?」

    「どこまですすんでんの?」

    「?」

    「かーーーっ、分かってる癖に分かってないフリたぁあんた分かってるねーーっ!」

    「エロゲの主人公かってーの!」

    「えっとその……決してそういうつもりは」

    「好きなんでしょ?」

    「え」

    「女の事が」
    320 : 以下、名無しにか - 2011/12/24(土) 15:30:05.44 ID:EPEAG10O0 (-22,-12,-1)
    321 : 以下、名無しにか - 2011/12/24(土) 15:32:10.04 ID:jXpNF4wyP (+60,+30,-147)
    「あの……そういう質問に上手く答えられないんですけど……」

    「そうなの? 好きじゃないんだ?」

    「あ、その、決して嫌いじゃないですけど」

    「まだ、しっかり話すようになってからひと月位しかたってないですし」

    「気持ちを定めるには、早いというか、ちょっと失礼っていうか……」

    「ふーん」

    「えー、その……」

    「なんかすいません」

    「私があの人と出会ったときはね、それこそ一瞬だった」

    「……と、いいますと?」

    「話の流れから察しなさいって。女の父親のことに決まってるでしょうがっ!」
    322 : 以下、名無しにか - 2011/12/24(土) 15:36:06.39 ID:N2hmaJs50 (+19,+29,+0)
    母テンション高いの
    323 : 以下、名無しにか - 2011/12/24(土) 15:37:47.84 ID:jXpNF4wyP (+60,+30,-164)
    「女は、父親のこと……なんか言ってた?」

    「えっと……なんとか証券に勤めてるとか」

    「家に殆ど帰って来ないだとか」

    「そう」

    「……違うんですか?」

    「違う」

    「でも、どう違うかは、私の口からいえない」

    「そう、ですか」

    「ごめんね。私は嘘つきなんだ」

    「素直で、正直なことも大切だけど。大人は……親は、嘘をつかなきゃいけない生き物なんだよ」

    「今、私は男くんに、嘘は言えない」

    「だから、黙っておくことにする」
    324 : 以下、名無しにか - 2011/12/24(土) 15:44:14.33 ID:EPEAG10O0 (-22,-12,-1)
    325 : 以下、名無しにか - 2011/12/24(土) 15:44:18.76 ID:GwCm/HKG0 (-25,-10,-1)
    支援
    326 : 以下、名無しにか - 2011/12/24(土) 15:46:07.85 ID:jXpNF4wyP (+60,+30,-105)
     私はお父さんと一緒に公園で遊んでいた。
     私は、今よりもうんとうんと、背が小さかった。
     お父さんは、私の何倍も大きい体をしていた。

     ブランコを押してくれて、私の作った泥だんごをたべてくれて、滑り台で私を乗せてすべってくれた。
     ひとしきり遊んで、日が暮れきったころに、怒ったお母さんがやってきた。

     だめだよ、お母さん。
     お父さんは私と遊んでくれたんだから。
     怒るなら、私を怒って。

     お願い、お母さん。
     お父さんを怒らないで……


    「…………男くん」

    「あ……起きた?」

    「わたし……あれ……?」

    「大丈夫。寝てていいから。のど乾いたよね。水もってくるから」
    327 : 以下、名無しにか - 2011/12/24(土) 15:47:56.65 ID:GwCm/HKG0 (-7,+7,-2)
    泥団子www
    328 : 以下、名無しにか - 2011/12/24(土) 15:48:24.35 ID:xwgDFcnY0 (+22,+29,-4)
    なんか重くなってきたぞ・・・
    329 : 以下、名無しにか - 2011/12/24(土) 15:51:42.65 ID:jXpNF4wyP (+60,+30,-131)
    「……ん」コクコク

    「お母さんは、今夕飯の買い物に行ってる」

    「女さんの好きな桃買ってきてくれるって言ってたよ」

    「こんな季節に桃なんか……」

    「桃缶よりも喜んでくれるから探す、って言ってた」

    「……そう」

    「いいお母さんだね」

    「ちょっと怒りっぽくて、だらしないけどね」

    「でも、女さんの事をすごく大切にしてくれてる」

    「……うん、それは、…………そうかも」

    330 : 以下、名無しにか - 2011/12/24(土) 15:57:37.99 ID:jXpNF4wyP (+60,+30,-103)
    「調子はどう?」

    「まだちょっと、ボーッとするけど……」

    「布団、かぶってたほうがいいよ」

    「うん……」

    「ほら。タオル、さっきぬらした奴」

    「ありがと」

    「……ん。きもちー」

    「そっか」

    「えへへ」

    「男くん、やさしーんだ?」

    「病人に優しくしない奴がどこにいる」

    「ふーん……」
    331 : 以下、名無しにか - 2011/12/24(土) 16:01:30.94 ID:jXpNF4wyP (+60,+30,-143)
    「ねぇ……いつまで、いるの?」

    「さぁ」

    「今日、このまま泊まっちゃったら?」

    「さすがにそれは……、明日も学校あるし」

    「そっか」

    「でも、女さんがどうしてもって言うなら」

    「ううん、ちょっと言ってみただけ。そしたら少し面白いかなって」

    「もし男くんが泊まっちゃったら、わくわくしすぎて、身体治すどころじゃなくなっちゃうし」

    「そっか」

    「そうだよ」

    「じゃあ、お母さんが帰ってきたら帰ろうかな」

    「……うん」
    332 : 以下、名無しにか - 2011/12/24(土) 16:06:04.41 ID:jXpNF4wyP (+58,+30,-143)
    「でも……でも、帰っちゃう前に」

    「ひとつ、男くんに言わなきゃ。」

    「嘘、もう一個ついてたから」

    「今ならきっとね、静かに言える」

    「なにかな」

    「……言っても、嫌わないでね」

    「友達で居てね」

    「絶対だ」

    「私、お父さん居ないの」

    「私が小さい頃に事故で死んじゃったらしくて」

    「ほんとは、共働きじゃなくって、片親ってだけなんだ」

    「どうでもいいことだけどね……でも、みんなにこの嘘、ついちゃうんだ……」

    333 : 忍法帖【Lv= - 2011/12/24(土) 16:10:45.60 ID:yJkf4ogM0 (+22,+29,-1)
    ふむふむ。引き続き支援中
    334 : 以下、名無しにか - 2011/12/24(土) 16:11:27.54 ID:jXpNF4wyP (+56,+30,-141)
    「理由はね、わかってるの」

    「クラスメイトの子が……小学校の頃の話だけど、私と同じ片親の娘を馬鹿にしてた」

    「それだけなんだ」

    「ほんと、理由なんてそれだけ。それだけで、怖くて……」

    「バレるの怖くて」

    「だれにも、家に呼べなくなっちゃって」

    「ふふ」

    「あー、すっきりした」

    「俺は女さんの事を、そんなことで絶対に馬鹿にしないよ」

    「絶対。絶対だから。信じて」

    「……男くんはいちいち優しいなぁ、もう。……ふふ」
    336 : 以下、名無しにか - 2011/12/24(土) 16:16:46.14 ID:jXpNF4wyP (+60,+30,-208)
    「……俺さ、思ったんだ」

    「今までの人生で、……起伏のない、それこそなんとなく過ごしてた人生だったけど」

    「俺の貧弱なこれまでの十数年間で、一番、……一番だよ?」

    「強く思ったんだ。願ったんだ」

    「女さんの、寂しさを埋めたいって」

    「……私の……寂しさ……」

    「女さんを抱きしめて、背負って、感じたんだ。確信したんだ」

    「ほんとは、俺……ちゃんと話すようになってからひと月足らずでこんな事言うの、無責任だってずっと思ってたけど」

    「つまり、その……」

    「……えっと」

    「ねえ男くん」

    「私は時々、分からなくなるの」

    「私が、男くんに、何を求めてるのか」
    337 : 以下、名無しにか - 2011/12/24(土) 16:20:07.10 ID:Bzm+v77S0 (+22,+29,-16)
    男はまじで不器用なのか??だが支援
    339 : 以下、名無しにか - 2011/12/24(土) 16:26:09.46 ID:jXpNF4wyP (+60,+30,-231)
    「私はすごく勝手なんだよ」

    「自分に足りないものがなんなのか、すごく明確に分かってるのに」

    「それを男くんで、埋めようとしてる」

    「でもそれは、絶対にはまらない……そう、パズルのピースみたいなものなの」

    「もうね、これは、私に決定的にかかってる、呪いなの」

    「たぶん、一生、この呪いを解くことはできないの」

    「不器用だから」

    「俺に、女さんの父親の代わりはできないかもしれないし」

    「―――っ」

    「女さんが俺の事を、男としてみてくれてるかも分からない」

    「でも、これだけははっきりと言えるんだ」

    「いっちゃ、だめっ」

    「女さんが、誰よりも」

    「やだ!」

    「好きだって」
    341 : 以下、名無しにか - 2011/12/24(土) 16:30:15.05 ID:kpbjWapg0 (-27,-15,+0)
    342 : 以下、名無しにか - 2011/12/24(土) 16:33:45.97 ID:jXpNF4wyP (+60,+30,-187)
    「呪いなんて、知らない。パズルなんて、無理に完成させる必要ない」

    「そんなの分かってるよ! でもこればっかりはどうしようもないんだよ……」

    「なのに、なんでそんな『好き』だとか言うの?」

    「男くんは両親がしっかりいて、姉妹もいて、円満に暮らしてるから分からないんだよ」

    「私の気持ちが……」

    「……うん、ごめん。分かってあげれてないかもしれない」

    「でも、寄り添うことはできると思う」

    「女さんに」

    「…………え、へへ」

    「あのね、男さんにおんぶしてもらった時、お父さんを思い出したんだ」

    「おんぶしてもらった記憶なんて、ちっとも無いのにね」

    「これって、おかしいよね。……おかしいんだよ。私は、おかしいんだ」

    「おかしくなんかないよ。これから、少しずつ……」

    「ごめん」

    「今日は、帰って欲しいな」
    343 : 以下、名無しにか - 2011/12/24(土) 16:38:26.26 ID:Q2nrzVqT0 (+24,+29,-15)
    支援

    偶然だが踊るのオルゴール音がBGMになって何とも言えずいい雰囲気になってしもた
    344 : 以下、名無しにか - 2011/12/24(土) 16:39:16.66 ID:c9vx+0O5i (-12,+0,-12)
    しえん
    はよ
    345 : 以下、名無しにか - 2011/12/24(土) 16:40:15.35 ID:jXpNF4wyP (+60,+30,-142)
    「わかった」

    「……ごめんね、悪いのは、私だから」

    「でも、友達で居て欲しいのは本当なの……」

    「男くんといると、すごく、幸せだから」

    「……ペンギンってさ、鳥なんだよね」

    「……え?」

    「鳥が好きかって、昨日、聞いたよね?」

    「……」

    「そのペンギンのぬいぐるみ、どうしたの?」

    「わからない……。ものごころつく前からあったから」

    「よく抱いて寝てるけど」

    「そのぬいぐるみをプレゼントしてくれた人は、きっと女さんの事をすごく大切に思ってくれてるはずだよ」

    「きっと」
    346 : 以下、名無しにか - 2011/12/24(土) 16:48:36.97 ID:jXpNF4wyP (+60,+30,-99)
    「ただいま」

    「お帰りなさい」

    「悪いね、待たせちゃって。桃はちゃんと見つかったよ」

    「きっと、女さん喜びます」

    「……帰る? 夕飯食べてってもいいけど」

    「遠慮しておきます。その……女さんに追い出されちゃいましたし」

    「……まさか、手ェ出したんじゃないだろうね?」

    「そんな。俺にそんな甲斐性ないですよ」

    「また心にもないこと言って」

    「信じて下さいってば!」
    347 : 以下、名無しにか - 2011/12/24(土) 16:52:00.38 ID:EPEAG10O0 (-22,-12,-1)
    348 : 以下、名無しにか - 2011/12/24(土) 16:54:36.79 ID:jXpNF4wyP (+60,+30,-178)
    「ひとつだけ、聞いてもいいですか?」

    「あのペンギンの人形、お父さんからじゃ……?」

    「ん? あー、まぁ、そうだわな。あいつの置き土産……みたいなもんかな」

    「だとしたら、お父さんは立派な人です」

    「ぷっ」

    「え?」

    「いやいや。なんでもない。どうしてそう思った?」

    「あのペンギン……コウテイペンギンです」

    「世界で最も過酷な子育てをする、っていう」

    「そういう話もあるねぇ」

    「コウテイペンギンは、卵がヒナになるまで、オスが極寒の中じっと卵を温め続けてるんです」

    「だから……きっと、お父さんはコウテイペンギンのオスと自分を重ねて……」
    349 : 以下、名無しにか - 2011/12/24(土) 17:01:24.89 ID:jXpNF4wyP (+60,+30,-181)
    「おしい。……けどね、考え方がアマちゃんだよ」

    「え……?」

    「現実は、そんな夢物語みたいにして動かないんだ」

    「飛び越えたくても飛び越えられない、持ち上げたくても持ち上がらない」

    「どうしようもなく理不尽にできてるんだ」

    「……」

    「だから」

    「あんたがどんなにこれから努力しても」

    「……オリンピックで金メダルとろうが、ノーベル賞を総舐めにしようが」

    「あの子に……女に、父親が居ないっていう事実はどうしようもないんだよ」

    「……そう……です、けど……」

    「お願いだから、あの子に夢を見せないでやってほしい」

    「ピースの足りないパズルである自分を、どうか女に受け入れさせて欲しい」

    「勝手なお願いだって分かってるけどね。こんなこと頼めるの、あんたくらいしか居なくて」
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